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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035685
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】配線シート
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H05K3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140299
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大史
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
(72)【発明者】
【氏名】塚田 孝高
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA26
5E314BB06
5E314BB10
5E314BB11
5E314BB13
5E314CC06
5E314FF06
5E314FF12
5E314GG19
(57)【要約】
【課題】ベース基材上に導電性配線が形成されてロール状に巻き取られた配線シートにおいて、導電性配線上に保護層を積層しながらも導電性配線が断線することを回避する。
【解決手段】ベース基材10と、ベース基材10の一方の面に形成された検知用配線20a,20bとを有し、ロール状に巻き取られた配線シート1であって、検知用配線20a,20b上に積層された第1の保護層31と、ベース基材10の検知用配線20a,20bが形成された面のうち、検知用配線20a,20bが形成されていない領域に積層された第2の保護層32とを有し、第2の保護層32のベース基材10の表面からの積層高さh2が、第1の保護層31のベース基材10の表面からの積層高さh1よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材と、前記ベース基材の一方の面に形成された導電性配線とを有し、ロール状に巻き取られた配線シートであって、
前記導電性配線上に積層された第1の保護層と、
前記ベース基材の前記一方の面のうち、前記導電性配線が形成されていない領域に積層された第2の保護層とを有し、
前記第2の保護層の前記ベース基材の表面からの積層高さが、前記第1の保護層の前記ベース基材の表面からの積層高さよりも高い、配線シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記第2の保護層は、前記導電性配線を挟むように積層されている、配線シート。
【請求項3】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記導電性配線は、前記ベース基材上に2本形成され、
前記第2の保護層は、前記2本の導電性配線間に積層されている、配線シート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線シートにおいて、
前記第2の保護層は、熱可塑性樹脂を含む、配線シート。
【請求項5】
請求項4に記載の配線シートにおいて、
前記第1の保護層と前記第2の保護層とは、物理的に繋がっていない、配線シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース基材上に導電性配線が形成され、ロール状に巻き取られた配線シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大量の油が利用される発電所や化学メーカーでは、配管や計器からの油漏れは重大な事故につながる可能性があり、早期に検出する必要がある。一方で油は導電性を有さないため、油漏れを検出するためには誘電率やインピーダンスを測定する必要があり、そのための測定器が高価なものとなる。
【0003】
ここで、ベース基材上に導電性配線を形成し、水分や油分が付着した場合に、導電性配線を短絡させたり断線させたり、あるいは抵抗値を変化させたりすることで、水分や油分の漏れを検出する技術が考えられており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
このような技術においては、導電性配線が物理的な外力によって断線してしまうと、その後の水分や油分の検出を行うことができなくなってしまう。特に、油分が付着した場合に導電性配線を断線させることで油分の漏れを検出するものにおいては、油分が付着した場合に導電性配線を断線させるため、導電性配線が元々断線しやすい構成を有している場合が多く、物理的な外力によって断線してしまう可能性が高い。
【0005】
特許文献1に開示されたものにおいては、導電ラインが形成されたベース層の全面に、微細な孔を有する保護層が貼り付けられている。このように導電性配線が形成されたベース基材の全面に保護層を貼り付けることで、導電性配線が物理的な外力によって断線してしまう可能性を低減することができる。しかしながら、導電性配線が形成されたベース基材の全面に保護層を貼り付けることで導電性配線が表出する面積が小さくなると、水分や油分が導電性配線に付着しにくくなり、水分や油分を検出しにくくなってしまう。そこで、樹脂層を印刷等により導電性配線上にパターン塗工し、導電性配線が表出する面積を大きくすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-525380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような技術においては、水分や油分の漏れを検出するセンシングエリアを広範囲に広げるために、長尺状のベース基材に導電性配線を長尺方向に延びるように形成した構成の配線シートが考えられる。そのような構成の配線シートは、長尺方向にロール状に巻き取られることで、保管や持ち運びが容易なものとなる。
【0008】
しかしながら、上述したように、ベース基材上に導電性配線が形成されるとともに導電性配線上に樹脂層が積層された配線シートにおいては、ロール状に巻き取った場合、ロール状に巻き取られることで重ね合わされた配線シート間に巻き取りによる圧力がかかるとともに、重ね合わされた配線シートどうしが擦れることで、導電性配線が樹脂層とともに損傷を受けて断線してしまう虞がある。
【0009】
また、ロール状に巻き取られた状態で外部から熱が加わった場合、樹脂層が溶解し、巻き取られることで重なっているベース基材の裏面に貼り付いてしまう。そしてその後、ロール状から配線シートを引き出す時に、溶解してしまった樹脂層を貼り付いていた側のベース基材から剥がそうとすると、樹脂層が貼り付いていた側のベース基材ではなく、樹脂層が積層されていた側のベース基材の積層面から剥がれ、それとともに導電性配線がベース基材の形成面から剥がれ、導電性配線が断線して機能を果たさなくなってしまうという問題点がある。例えば、ベース基材上に形成された導電性配線においては、抵抗値改善のため加温加湿処理を施す場合があり、その場合、導電性配線上に樹脂層が積層されていると、加温加湿処理によって樹脂層が溶解し、上述したような問題が生じてしまう。
【0010】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、ベース基材上に導電性配線が形成されてロール状に巻き取られた配線シートにおいて、導電性配線上に保護層を積層しながらも導電性配線が断線することを回避できる配線シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材と、前記ベース基材の一方の面に形成された導電性配線とを有し、ロール状に巻き取られた配線シートであって、
前記導電性配線上に積層された第1の保護層と、
前記ベース基材の前記一方の面のうち、前記導電性配線が形成されていない領域に積層された第2の保護層とを有し、
前記第2の保護層の前記ベース基材の表面からの積層高さが、前記第1の保護層の前記ベース基材の表面からの積層高さよりも高い配線シートである。
【0012】
上記のように構成された本発明においては、ベース基材の一方の面に形成された導電性配線上に積層された第1の保護層によって導電性配線が保護される。またその際、ベース基材の導電性配線が形成された面のうち、導電性配線が形成されていない領域に第2の保護層が積層されており、この第2の保護層のベース基材の表面からの積層高さが、第1の保護層のベース基材の表面からの積層高さよりも高いことにより、ロール状に巻き取られた状態では、巻き取りによって重なっているベース基材の裏面には第2の保護層が接触して第1の保護層が接触しにくい状態となり、それにより、重なっているベース基材の裏面にて第1の保護層が擦られることで導電性配線が第1の保護層とともに損傷を受けて断線してしまう虞がなくなる。また、外部からの熱が加わって保護層が溶解した場合でも、巻き取りによって重なっているベース基材の裏面に貼り付くのは、導電性配線が形成されていない領域に積層された第2の保護層であり、導電性配線上に積層された第1の保護層はベース基材の裏面に貼り付かず、それにより、その後、ロール状から引き出す時に導電性配線がベース基材の形成面から剥がれて断線してしまうことがない。
【0013】
また、第2の保護層が導電性配線を挟むように積層されていれば、ロール状に巻き取られた状態において、第1の保護層が、巻き取りによって重なっているベース基材の裏面にさらに接触しにくくなる。
【0014】
また、導電性配線がベース基材上に2本形成され、第2の保護層が2本の導電性配線間に積層された構成とすることも考えられる。
【0015】
また、第2の保護層が熱可塑性樹脂を含むものであれば、ロール状に巻き取られた状態において外部からの熱が加わると、第2の保護層が溶解して巻き取りによって重なっているベース基材の裏面に貼り付くことで、ロール状に巻き取られた状態からばらけてしまうことが抑制される。
【0016】
また、第1の保護層と第2の保護層とが物理的に繋がっていなければ、外部からの熱が加わって保護層が溶解した場合に、巻き取りによって重なっているベース基材の裏面に貼り付いた第2の保護層をベース基材の貼り付いた面から剥がそうとした際に、導電性配線がベース基材の形成面から剥がれてしまうことを回避できる効果がさらに向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性配線上に積層された第1の保護層によって導電性配線を保護することができながらも、ベース基材に積層された第2の保護層のベース基材の表面からの積層高さが、第1の保護層のベース基材の表面からの積層高さよりも高いことにより、ロール状に巻き取られた状態にて巻き取りによって重なっているベース基材の裏面にて第1の保護層が擦られたり、外部から熱が加わることで第1の保護層が溶解して巻き取りによって重なっているベース基材の裏面に貼り付いてその後に第1の保護層とともに導電性配線もベース基材の形成面から剥がれてしまったりすることがなくなり、それにより、導電性配線が断線してしまうことを回避できる。
【0018】
また、第2の保護層が導電性配線を挟むように積層されているものにおいては、ロール状に巻き取られた状態において、第1の保護層を、巻き取りによって重なっているベース基材の裏面にさらに接触させにくくすることができる。
【0019】
また、第2の保護層が熱可塑性樹脂を含むものにおいては、ロール状に巻き取られた状態において外部からの熱が加わると、第2の保護層が溶解して巻き取りによって重なっているベース基材の裏面に貼り付くことで、ロール状に巻き取られた状態からばらけてしまうことを抑制できる。
【0020】
また、第1の保護層と第2の保護層とが物理的に繋がっていないものにおいては、外部からの熱が加わって保護層が溶解した場合に、巻き取りによって重なっているベース基材の裏面に貼り付いた第2の保護層をベース基材の貼り付いた面から剥がそうとした際に、導電性配線がベース基材の形成面から剥がれてしまうことを回避できる効果をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の配線シートの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は外観図、(b)はベース基材上の構成を示す図、(c)は(b)に示したA-A断面図である。
図2図1に示した配線シートの使用方法の一例を説明するための図である。
図3図1に示した配線シートがロール状に巻き取られた場合の作用を説明するための図である。
図4】本発明の配線シートの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は外観図、(b)はベース基材上の構成を示す図、(c)は(b)に示したA-A断面図である。
図5図4に示した配線シートの使用方法の一例を説明するための図である。
図6図4に示した配線シートがロール状に巻き取られた場合の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
〈配線シートの構成〉
図1は、本発明の配線シートの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は外観図、(b)はベース基材10上の構成を示す図、(c)は(b)に示したA-A断面図である。
【0024】
本形態は図1に示すように、ベース基材10上に2本の検知用配線20a,20bが形成されるとともに保護層31,32が積層されて構成された配線シート1である。
【0025】
ベース基材10は、フィルム等の絶縁性材料から構成され、長尺状の形状を有している。
【0026】
検知用配線20a,20bは、本願発明にて導電性配線となるものである。検知用配線20a,20bは、ベース基材10の一方の面において、導電性インクを用いて形成され、ベース基材10の長尺方向の一方の端部から他方の端部まで一定の幅を具備して互いに並行して延びている。
【0027】
保護層31は、本願発明にて第1の保護層となるものである。保護層31は、検知用配線20a,20b上に所定の間隔を隔てて島状に積層されている、保護層31のベース基材10の短尺方向の幅は、検知用配線20a,20bの幅よりも広く、それにより、検知用配線20a,20bをベース基材10の短尺方向の全幅に亘って覆っている。このようにベース基材10上において検知用配線20a,20bの一部を覆うように保護層31が積層されていることにより、検知用配線20a,20bが保護される。
【0028】
保護層32は、本願発明にて第2の保護層となるものである。保護層32は、検知用配線20a,20bとベース基材10の長尺方向に延びる端辺との間のそれぞれに、検知用配線20a,20bを挟むようにして検知用配線20a,20bに並行して延びて積層されている。保護層32のベース基材10の表面からの積層高さh2は、保護層31のベース基材10の表面からの積層高さh1よりも高くなっている。
【0029】
保護層31,32は、例えば、熱可塑性樹脂(例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)系、アクリル系等)が分散されている水性インクを用いた印刷によってパターン塗工することで積層することが考えられ、材料の一例としてはユニチカ株式会社製のアローベース(SE-1030N)等が挙げられる。なお、後述するように油分の漏れを検出する場合は、漏れた油分によって検知用配線20a,20bの抵抗値が変化したり断線したりすることを検出することになるため、油性インクを用いた印刷によって保護層31を積層すると、油性インク中に含まれる有機性溶媒が検知用配線20a,20bにしみ込むことで油分が漏れている場合と同じ状態となってしまい、誤検出が生じてしまう虞がある。そのため、油分の漏れを検出する場合は、水性インクを用いた印刷によって保護層31を積層することが好ましい。
【0030】
このように構成された配線シート1は、ベース基材10の長尺方向に巻き芯40を中心としてロール状に巻き取られている。
【0031】
〈配線シートの使用方法〉
以下に、上記のように構成された配線シート1の使用方法について説明する。
【0032】
図2は、図1に示した配線シート1の使用方法の一例を説明するための図である。
【0033】
図1に示した配線シート1は、例えば、配管に取り付けられ、配管からの油分の漏れを検出するために使用される。
【0034】
その場合、まず、上述したようにロール状に巻き取られた状態から引き出され、配管における油分の漏れを検出する範囲に応じた長さに切断される。
【0035】
その後、図2に示すように、検知用配線20a,20bの一方の端部に電気的に接続されるように接続コネクタ3を接続するとともに、検知用配線20a,20bの他方の端部に接続部材7を接続する。接続部材7は、1本の配線の両端に2つの接続端子を有しており、この2つの接続端子に検知用配線20a,20bの端部がそれぞれ接続されることで、検知用配線20a,20bが電気的に接続された状態となる。接続コネクタ3は、切断された長尺状のベース基材10の長尺方向の一方の端部が突き当られた場合に検知用配線20a,20bと電気的に接続される端子(不図示)を有しており、接続コネクタ3にベース基材10の長尺方向の一方の端部を突き当てることで、検知用配線20a,20bの一方の端部を接続コネクタ3に電気的に接続することができる。接続コネクタ3には、ケーブル6a,6bを介してRFIDタグ8が接続されている。接続コネクタ3の検知用配線20a,20bと電気的に接続される端子は、ケーブル6a,6bと電気的に接続されているため、検知用配線20a,20bの一方の端部を接続コネクタ3に電気的に接続することで、検知用配線20a,20bが接続コネクタ3及びケーブル6a,6bを介してRFIDタグ8と電気的に接続されることになる。
【0036】
このように検知用配線20a,20bが接続部材7を介して互いに電気的に接続されることで1本の導電性配線となるとともに、検知用配線20a,20bが接続コネクタ3及びケーブル6a,6bを介してRFIDタグ8と電気的に接続された配線シート1を配管に取り付け、2本の検知用配線20a,20bの導通状態を検査する。具体的には、RFIDタグ8と非接触通信が可能な検査装置5からRFIDタグ8に電力を供給することで、RFIDタグ8からケーブル6a,6b及び接続コネクタ3を介して検知用配線20a,20bに電流を供給して抵抗値を検出する。配管にて油分の漏れが発生していない場合は、2本の検知用配線20a,20bが接続部材7を介して導通している。そのため、検査装置5からRFIDタグ8を介して検知用配線20a,20bに電流が供給された場合、検知用配線20a,20bに電流が流れ、それにより、検査装置5にて所定のしきい値以下の抵抗値がRFIDタグ8を介して検出されることになる。なお、所定のしきい値としては、検知用配線20a,20bと接続部材7とケーブル6a,6bとを合わせた抵抗値以上のものとなる。
【0037】
一方、配管にて油分の漏れが発生している場合は、検知用配線20a,20bが油分で断線し、それにより、検査装置5からRFIDタグ8を介して検知用配線20a,20bに電流が供給されても検知用配線20a,20bには電流が流れず、検査装置5にてRFIDタグ8を介して検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0038】
検査装置5においては、このようにしてRFIDタグ8を介して検出した抵抗値に基づいて、検知用配線20a,20bが導通状態であるか非導通状態であるかを判断し、さらにこの判断に基づいて、配管に油分の漏れが発生しているかどうかを判断することになる。なお、油分の漏れが発生した場合に導電性配線が断線する構成ではなく、検出される抵抗値が変化する構成を用いて油分の漏れが発生しているかどうかを判断してもよい。その場合においても、図2に示したように、検知用配線20a,20bにRFIDタグ8を接続し、RFIDタグ8と非接触通信が可能な検査装置5からRFIDタグ8を介して検知用配線20a,20bに電流を供給することで抵抗値を検出し、検出した抵抗値に基づいて、配管に油分の漏れが発生しているかどうかを判断することになる。
【0039】
なお、検知用配線20a,20bを接続コネクタ3及びケーブル6a,6bを介してRFIDタグ8に接続し、検査装置5にてRFIDタグ8を介して抵抗値を検出するのではなく、検知用配線20a,20bを接続コネクタ3及びケーブル6a,6bを介して検査装置5に直接接続し、検査装置5にて抵抗値を検出する構成としてもよい。
【0040】
〈ロール状に巻き取られた場合の作用〉
以下に、上記のように構成された配線シート1がロール状に巻き取られた場合の作用について説明する。
【0041】
図3は、図1に示した配線シート1がロール状に巻き取られた場合の作用を説明するための図である。
【0042】
図1に示した配線シート1は、上述したように、ベース基材10の長尺方向に巻き芯40を中心としてロール状に巻き取られており、ロール状に巻き取られた状態から引き出されて使用される。
【0043】
ここで、図1に示した配線シート1がロール状に巻き取られた状態においては、ベース基材10の検知用配線20a,20bが形成された面が、巻き取り状態における一周内側となるベース基材10の検知用配線20a,20bが形成されていない面と対向することになる。その際、検知用配線20a,20b上には保護層31が積層されているものの、検知用配線20a,20bとベース基材10の長尺方向に延びる端辺との間のそれぞれには保護層32が検知用配線20a,20bに並行して延びて積層されており、この保護層32のベース基材10の表面からの積層高さが、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31のベース基材10の表面からの積層高さよりも高くなっている。
【0044】
そのため、配線シート1がロール状に巻き取られた状態では、図3に示すように、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面には、検知用配線20a,20bとベース基材10の長尺方向に延びる端辺との間のそれぞれに積層された保護層32が接触し、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31は接触しにくい状態となる。そのため、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面にて保護層31が擦られることで検知用配線20a,20bが保護層31とともに損傷を受けて断線してしまう虞がなくなる。また、外部からの熱が加わって保護層31,32が溶解した場合でも、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面に貼り付くのは、検知用配線20a,20bが形成されていない領域に積層された保護層32であり、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31はベース基材10の裏面には貼り付かない。それにより、その後、ロール状から引き出す時に、保護層32をベース基材10の貼り付けられた面から剥がそうとしても、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31はそもそも重なっているベース基材10の裏面に貼り付いていないことで、保護層31とともに検知用配線20a,20bがベース基材10の形成面から剥がれて断線してしまうことがない。
【0045】
その際、保護層32が検知用配線20a,20bを挟むように積層されていることで、ロール状に巻き取られた状態において、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31を、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面にさらに接触させにくくすることができる。
【0046】
なお、保護層32として、例えば80℃以上の高温多湿環境下で接着性を帯びるようになる熱可塑性樹脂を含むものを用いれば、上述したように、配線シート1がロール状に巻き取られた状態において、検知用配線20a,20bの耐熱性を向上させるために高温多湿処理を施す等のために外部からの熱が加わると、保護層32が溶解して接着性を帯びることで、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面に貼り付くことになる。それにより、保護層32が、ロール状に巻き取られることで重ね合わされたベース基材10間の接着剤の役割を果たし、ロール状に巻き取られた状態からばらけてしまうことを抑制できる。そのため、この作用を利用して、上述した高温多湿処理を施さない場合であっても、ロール状に巻き取られた状態において意図的に例えば80℃以上の熱を加えることで、保護層32に接着性を発現させ、上記作用を故意的に生じさせることができる。
【0047】
また、検知用配線20a,20bとベース基材10の長尺方向に延びる端辺との間のそれぞれに積層された保護層32が、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31と物理的に繋がっていないことで、ロール状から引き出す際に保護層32がベース基材10の積層面から剥がれたとしても、それにつられて保護層31がベース基材10の積層面から剥がれることがなく、それにより、検知用配線20a,20bがベース基材10の形成面から剥がれてしまうことを回避できる効果をさらに向上させることができる。
【0048】
〈実施例〉
ここで、上記作用について以下のような実験を行った。
【0049】
ベース基材10としてフィルムを使用し、フィルムの保護層31が積層された検知用配線20a,20b間に、保護層32として、ユニチカ株式会社製のアローベース(SE-1030N)の水性コート剤を検知用配線20a,20b間に触れないようにスポイトで塗布したのち乾燥させた。なお、保護層31のベース基材10の表面からの積層高さは、12~13μm、保護層32の乾燥後の膜厚は100~200μm程度であった。
【0050】
その後、図1に示したように、配線シート1がロール状に巻き取られた状態においては重なり合ったベース基材10間に一定の圧力が加わるため、同じような環境とするために上記のようにして保護層31,32が積層されたベース基材10を3枚重ねてその上に400gの重りを載せ、温度85℃、湿度65%の環境試験機に2時間静置した。
【0051】
2時間静置後、保護層32は、重ねたフィルムの裏面に貼り付いていたが、保護層31は、重ねたフィルムの裏面に貼り付いていなかった。
【0052】
このように、ベース基材10上に検知用配線20a,20bが形成されるとともに、検知用配線20a,20b上に保護層31が積層された構成において、ベース基材10の検知用配線20a,20bが形成されていない領域に、ベース基材10の表面からの積層高さが保護層31よりも高い保護層32を積層することで、ロール状に巻き取られた状態で高温多湿環境下に置かれた場合でも、保護層31が、重ねられたベース基材10に貼り付くことがなく、それにより、その後、ロール状から引き出す時に、保護層32をベース基材10の貼り付けられた面から剥がそうとしても、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31はそもそも重なっているベース基材10の裏面に貼り付いていないことで、保護層31とともに検知用配線20a,20bがベース基材10の形成面から剥がれて断線してしまうことがない。
【0053】
なお、本形態においては、保護層32が、検知用配線20a,20bとベース基材10の長尺方向に延びる端辺との間のそれぞれに、検知用配線20a,20bを挟むようにして積層されているが、保護層32は、さらにベース基材10の検知用配線20a,20b間の領域にも積層されていてもよい。すなわち、保護層32は、1本の検知用配線を挟むようにベース基材10に積層されていてもよいし、2本以上の検知用配線を挟むようにベース基材10に積層されていてもよい。
【0054】
(第2の実施の形態)
〈配線シートの構成〉
図4は、本発明の配線シートの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は外観図、(b)はベース基材10上の構成を示す図、(c)は(b)に示したA-A断面図である。
【0055】
本形態は図4に示すように、図1に示したものに対して、第2の保護層が積層された領域が異なる配線シート101である。
【0056】
本形態における第2の保護層132は、2本の検知用配線20a,20b間に、検知用配線20a,20bに並行して延びて積層されている。保護層132のベース基材10の表面からの積層高さh2は、図1に示したものと同様に、保護層31のベース基材10の表面からの積層高さh1よりも高くなっている。
【0057】
保護層132も、図1に示した保護層32と同様に、例えば、熱可塑性樹脂(例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)系、アクリル系等)が分散されている水性インクを用いた印刷によってパターン塗工することで積層することが考えられ、材料の一例としてはユニチカ株式会社製のアローベース(SE-1020N)等が挙げられる。
【0058】
このように構成された配線シート101は、ベース基材10の長尺方向に巻き芯40を中心としてロール状に巻き取られている。
【0059】
〈配線シートの使用方法〉
以下に、上記のように構成された配線シート101の使用方法について説明する。
【0060】
図5は、図4に示した配線シート101の使用方法の一例を説明するための図である。
【0061】
図4に示した配線シート101も、図1に示した配線シート1と同様に、例えば、配管に取り付けられ、配管からの油分の漏れを検出するために使用される。
【0062】
その場合、まず、上述したようにロール状に巻き取られた状態から引き出され、配管における油分の漏れを検出する範囲に応じた長さに切断され、その後、図5に示すように、検知用配線20a,20bの一方の端部に電気的に接続されるように接続コネクタ3が接続されるとともに、検知用配線20a,20bの他方の端部に接続部材7が接続される。
【0063】
そして、検知用配線20a,20bが接続部材7を介して互いに電気的に接続されるとともに、検知用配線20a,20bが接続コネクタ3及びケーブル6a,6bを介してRFIDタグ8と電気的に接続された配線シート101を配管に取り付け、図1に示したものと同様に、検査装置5において、2本の検知用配線20a,20bの導通状態に基づいて配管に油分の漏れが発生しているかどうかを判断することになる。
【0064】
〈ロール状に巻き取られた場合の作用〉
以下に、上記のように構成された配線シート101がロール状に巻き取られた場合の作用について説明する。
【0065】
図6は、図4に示した配線シート101がロール状に巻き取られた場合の作用を説明するための図である。
【0066】
図4に示した配線シート101は、上述したように、ベース基材10の長尺方向に巻き芯40を中心としてロール状に巻き取られており、ロール状に巻き取られた状態から引き出されて使用される。
【0067】
ここで、図4に示した配線シート101がロール状に巻き取られた状態においては、ベース基材10の検知用配線20a,20bが形成された面が、巻き取り状態における一周内側となるベース基材10の検知用配線20a,20bが形成されていない面と対向することになる。その際、検知用配線20a,20b上には保護層31が積層されているものの、検知用配線20a,20b間の領域には保護層132が検知用配線20a,20bに並行して延びて積層されており、この保護層132のベース基材10の表面からの積層高さが、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31のベース基材10の表面からの積層高さよりも高くなっている。
【0068】
そのため、配線シート101がロール状に巻き取られた状態では、図6に示すように、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面には、検知用配線20a,20b間の領域に積層された保護層132が接触し、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31は接触しにくい状態となる。そのため、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面にて保護層31が擦られることで検知用配線20a,20bが断線してしまう虞がなくなる。また、外部からの熱が加わって保護層31,132が溶解した場合でも、巻き取りによって重なっているベース基材10の裏面に貼り付くのは、検知用配線20a,20bが形成されていない領域に積層された保護層132であり、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31はベース基材10の裏面には貼り付かない。それにより、その後、ロール状から引き出す時に、保護層132をベース基材10の貼り付けられた面から剥がそうとしても、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31はそもそも重なっているベース基材10の裏面に貼り付いていないことで、保護層31とともに検知用配線20a,20bがベース基材10の形成面から剥がれて断線してしまうことがない。
【0069】
なお、本形態においても、保護層132として、例えば80℃以上の高温多湿環境下で接着性を帯びるようになる熱可塑性樹脂を含むものを用いれば、上述したように、配線シート101をロール状に巻き取った状態において外部からの熱が加わると、保護層132が溶解して接着性を帯びることで、重なっているベース基材10の裏面に貼り付くことになる。それにより、保護層132が、ロール状に巻き取られることで重ね合わされたベース基材10間の接着剤の役割を果たし、ロール状に巻き取られた状態からばらけてしまうことを抑制できる。
【0070】
また、検知用配線20a,20b間の領域に積層された保護層132が、検知用配線20a,20b上に積層された保護層31と物理的に繋がっていないことで、ロール状から引き出す際に保護層132がベース基材10の積層面から剥がれたとしても、それにつられて保護層31がベース基材10の積層面から剥がれることがなく、それにより、検知用配線20a,20bがベース基材10の形成面から剥がれてしまうことを回避できる効果をさらに向上させることができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態においては、保護層31が、ベース基材10上に形成された検知用配線20a,20b上に所定の間隔を隔てて島状に積層されているが、保護層31を、孔部を有する構成とすれば、検知用配線20a,20bの全部を覆うように積層されている構成としてもよい。
【0072】
また、上述した実施の形態においては、油分の漏れを検出する場合の構成及び作用を説明したが、検査装置5において、接続コネクタ3及びケーブル6a,6bを介して検知用配線20a,20bに接続されたRFIDタグ8を介して検知用配線20a,20b間の導通状態を検査することで水分の漏れを検出する構成としてもよい。その場合、検知用配線20a,20bを互いに接続されていない状態としておき、水分が付着した場合に検知用配線20a,20b間が導通する作用を利用することになるため、接続部材7によって検知用配線20a,20bを互いに接続する必要はない。そのように水分の漏れを検出する場合は、検知用配線20a,20b間に保護層が積層された構成においては、保護層を島状に積層したり、ベース基材10や保護層に吸水性を有するものを用いたりすることで、発生した水分によって検知用配線20a,20b間を導通させることができる。ベース基材10や保護層に吸水性を有するものを用いた場合は、さらに、少量の水分の漏れでも検出することができるという効果も奏する。
【符号の説明】
【0073】
1,101 配線シート
3 接続コネクタ
5 検査装置
6a,6b ケーブル
7 接続部材
8 RFIDタグ
10 ベース基材
20a,20b 検知用配線
31,32,131 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6