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  • 特開-電磁式燃料噴射弁 図1
  • 特開-電磁式燃料噴射弁 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035691
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】電磁式燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F02M51/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140310
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸彦
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA49
3G066CC06U
3G066CC56
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】可動コア及び開弁側ストッパの当接部の摩耗を防ぎ,耐久信頼性の高い電磁式燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】開弁側ストッパ48の前端面に,該前端面の外周寄りに位置し且つ該開弁側ストッパ48と同心の環状凸曲面部50が設けられる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部に弁座(27)を有する弁ハウジング(9)と,該弁ハウジング(9)の後端に連設される中空の固定コア(14)と,該固定コア(14)の外周に配設されるコイル(32)と,前記弁座(27)と協働する弁部(42)にロッド(43)が連設されてなる弁体(40)と,前記固定コア(14)の前端面に対向しながら前記弁ハウジング(9)の内周及び前記ロッド(43)の外周に摺動可能に嵌装され,前記弁ハウジング(9)内での燃料の流通を許容する可動コア(41)と,前記ロッド(43)に固定されて前記可動コア(41)の後端面に対向し,前記コイル(32)の通電時,前記固定コア(14)に吸引される前記可動コア(41)により押動されて前記弁体(40)を開弁作動させる開弁側ストッパ(48)と,前記可動コア(41)の前端面に対向して配設される閉弁側ストッパ(49)と,前記弁体(40)を閉弁方向に付勢する弁ばね(54)と,前記コイル(32)の非通電時,前記可動コア(41)を前記開弁側ストッパ(48)から離反させて前記閉弁側ストッパ(49)に当接させるように付勢する補助ばね(55)とを備える電磁式燃料噴射弁において,
前記開弁側ストッパ(48)の前端面に,該前端面の外周寄りに位置し且つ該開弁側ストッパ(48)と同心の環状凸曲面部(50)が設けられることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】
前記開弁側ストッパ(48)の前端面に,前記環状凸曲面部(50)の内周縁から前記ロッド(43)に向かう凹状テーパ面(51)が設けられることを特徴とする,請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主として内燃機関の燃料供給系に使用される電磁式燃料噴射弁に関し,特に,前端部に弁座を有する弁ハウジングと,該弁ハウジングの後端に連設される中空の固定コアと,該固定コアの外周に配設されるコイルと,前記弁座と協働する弁部にロッドが連設されてなる弁体と,前記固定コアの前端面に対向しながら前記弁ハウジングの内周及び前記ロッドの外周に摺動可能に嵌装され,前記弁ハウジング内での燃料の流通を許容する可動コアと,前記ロッドに固定されて前記可動コアの後端面に対向し,前記コイルの通電時,前記固定コアに吸引される前記可動コアにより押動されて前記弁体を開弁作動させる開弁側ストッパと,前記可動コアの前端面に対向して配設される閉弁側ストッパと,前記弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,前記コイルの非通電時,前記可動コアを前記開弁側ストッパから離反させて前記閉弁側ストッパに当接させるように付勢する補助ばねとを備える電磁式燃料噴射弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電磁式燃料噴射弁は,下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6788085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる電磁式燃料噴射弁では,可動コアを閉弁側ストッパ側に付勢する補助ばねのセット荷重が,弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねのセット荷重よりも小さく設定されるので,コイルの通電時,固定コアの,可動コアに対する吸引力の上昇過程で,可動コアは素早く補助ばねのセット荷重に抗して固定コアに近接し,それに伴い急増する固定コアの吸引力により可動コアは,直ちに弁ばねのセット荷重に抗して開弁側ストッパを突き上げながら固定コアに吸着されることで,弁体を素早く開弁させる。これにより弁体の開弁応答性を高めると共に,コイルの消費電力を軽減し得る利点がある。
【0005】
ところで,従来の電磁式燃料噴射弁では,可動コアと開弁側ストッパとの対向面が平坦面になっており,可動コアが,補助ばねの横振れ等により傾いた状態で開弁側ストッパを突き上げると,最初に開弁側ストッパ平坦面外周のエッジ部が可動コアの平坦面に衝撃的に当接してから,可動コアは傾きを修正しながら固定コアに吸着されていく。
【0006】
而して,開弁側ストッパの平坦面外周のエッジ部が可動コアの平坦面に衝撃的に当接することや,可動コアが傾きを修正する際,開弁側ストッパの平坦面外周のエッジ部が可動コアの平坦面を擦ることで,可動コア及び開弁側ストッパの当接部に形成される燃料油膜が破れて,その当接部に摩耗を生じ,これが電磁式燃料噴射弁の耐久信頼性を低下させる要因となる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,可動コア及び開弁側ストッパの当接部の摩耗を防ぎ,耐久信頼性の高い前記電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために,本発明は,前端部に弁座を有する弁ハウジングと,該弁ハウジングの後端に連設される中空の固定コアと,該固定コアの外周に配設されるコイルと,前記弁座と協働する弁部にロッドが連設されてなる弁体と,前記固定コアの前端面に対向しながら前記弁ハウジングの内周及び前記ロッドの外周に摺動可能に嵌装され,前記弁ハウジング内での燃料の流通を許容する可動コアと,前記ロッドに固定されて前記可動コアの後端面に対向し,前記コイルの通電時,前記固定コアに吸引される前記可動コアにより押動されて前記弁体を開弁作動させる開弁側ストッパと,前記可動コアの前端面に対向して配設される閉弁側ストッパと,前記弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,前記コイルの非通電時,前記可動コアを前記開弁側ストッパから離反させて前記閉弁側ストッパに当接させるように付勢する補助ばねとを備える電磁式燃料噴射弁において,前記開弁側ストッパの前端面に,該前端面の外周寄りに位置し且つ該開弁側ストッパと同心の環状凸曲面部が設けられることを第1の特徴とする。
【0009】
また,本発明は,第1の特徴に加えて,前記開弁側ストッパの前端面に,前記環状凸曲面部の内周縁から前記ロッドに向かう凹状テーパ面が設けられることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば,コイルの通電により,可動コアが開弁側ストッパを突き上げるときに,可動コアは,開弁側ストッパの前端面に設けられる環状凸曲面部に当接する。このような曲面当接部には,燃料油膜による潤滑状態を維持して,当接部の摩耗を防ぐことができ,また可動コアが傾きを修正するときでも,摩擦部の摩耗を防ぐことができる。しかも,前記環状凸曲面部は,開弁側ストッパの前端面の外周寄りに配置されるので,開弁側ストッパは,充分大径の環状凸曲面で可動コアからの突き上げ力を受けることから,環状凸曲面が受ける面圧を極力下げて,その耐久信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
また本発明の第2の特徴によれば,開弁側ストッパの前端面に,前記環状凸曲面部の内周側に連なる凹状テーパ面が設けられるので,可動コアが開弁側ストッパを突き上げる過程で,可動コアから凹状テーパ面に付与される燃料圧力により弁体のロッドに調心作用が働き,弁体の横振れを防ぎ,弁体の姿勢の安定化を図ることができる。そして凹状テーパ面から溢流した燃料は可動コアと開弁側ストッパの環状凸曲面部との当接部の燃料油膜形成に関与し,その当接部の摩耗防止に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る内燃機関用電磁式燃料噴射弁の実施形態を示す縦断面図。
図2】上記燃料噴射弁の閉弁状態を示す,図1の2矢視部拡大断面図。
図3】上記燃料噴射弁の開弁状態を示す,図2との対応図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について添付の図1図3を参照しながら説明する。
【0014】
先ず図1及び図2において,内燃機関Eのシリンダヘッド5には,燃焼室6に開口する装着孔7が設けられており,燃焼室6に向かって燃料を噴射し得る本発明の電磁式燃料噴射弁Iが前記装着孔7に装着される。本発明の電磁式燃料噴射弁Iでは,燃料噴射側を前方,その反対側を後方とする。
【0015】
この電磁式燃料噴射弁Iの弁ハウジング9は,中空円筒状のハウジングボディ10と,このハウジングボディ10の前端部内周に嵌合して溶接される弁座部材11と,ハウジングボディ10の後端部外周に前端部を嵌合させてハウジングボディ10に溶接される磁性円筒体12と,この磁性円筒体12の後端部に前端部が同軸に結合される非磁性円筒体13とで構成される。非磁性円筒体13の後端部には,中空部15を有する円筒状の固定コア14の前端部が同軸に結合され,この固定コア14の後端部に,前記中空部15に通じる燃料供給筒16が一体に且つ同軸に連設される。
【0016】
磁性円筒体12は,その軸方向中間部にフランジ状のヨーク部12aを一体に有しており,装着孔7の外端を囲繞するようにしてシリンダヘッド5に設けられる環状凹溝17に収容されるクッション材18が,シリンダヘッド5及びヨーク部12a間に介装される。
【0017】
燃料供給筒16の入口には,オリフィス部材24と,その下流側に位置する燃料フィルタ19とが装着される。この燃料供給筒16には,図示しない燃料ポンプの吐出口に連なる燃料分配管20から分岐した燃料供給キャップ21が環状のシール部材22を介して嵌合される。燃料供給キャップ21の頂部にはブラケット23が係止され,このブラケット23は,シリンダヘッド5に立設される不図示の支柱に適当な固定手段(例えばボルト)を以てシリンダヘッド5に着脱可能に締結される。
【0018】
燃料供給キャップ21と,燃料供給筒16の中間部に設けられて燃料供給キャップ21側に臨む環状段部25との間には,板ばねからなる弾性部材26が介装される。この弾性部材26が発揮する弾発力で電磁式燃料噴射弁Iがシリンダヘッド5に保持される。
【0019】
弁座部材11は,端壁部11aを前端部に有して有底円筒状に形成されており,前記端壁部11aには,円錐状の弁座27が形成されると共に,その弁座27の中心近傍に開口する複数の燃料噴孔28が設けられる。この弁座部材11は,燃料噴孔28を燃焼室6に向けて開口するようにしてハウジングボディ10の前端部に嵌合,溶接される。即ち弁ハウジング9が,その前端部に弁座27を有するように構成される。
【0020】
磁性円筒体12の後端部から固定コア14に至る外周面にはコイル組立体30が嵌装される。このコイル組立体30は,上記外周面に嵌合するボビン31と,このボビン31に巻装されるコイル32とからなり,このコイル組立体30を囲繞する磁性体のコイルハウジング33の前端部が磁性円筒体12と結合される。
【0021】
固定コア14の後端部外周は,コイルハウジング33の後端部に連なってモールド成形される合成樹脂製の被覆層34で被覆されており,この被覆層34には,コイル32に連なる端子35を保持するカプラ34aが電磁式燃料噴射弁Iの一側方に突出するようにして一体に形成される。
【0022】
固定コア14の前端小径部に,固定コア14に外周面を連ならせるようにして非磁性円筒体13の後端部が嵌合され,液密に溶接される。
【0023】
弁座部材11から非磁性円筒体13に至る弁ハウジング9内には,弁体40の一部と可動コア41とが収容される。弁体40は,弁座27と協働して燃料噴孔28を開閉する弁部42に,固定コア14内まで延びるロッド43が連設されてなる。そして,弁部42は,弁座部材11内で摺動するように,球状に形成され,ロッド43は弁部42よりも小径に形成される。弁座部材11及びロッド43間には環状の燃料通路44が画成され,弁部42の外周面には,弁座部材11との間に燃料通路を画成する複数の平面部45が形成される。したがって弁座部材11は,弁体40の開閉動作を案内しながら燃料の通過を許容する。
【0024】
前記可動コア41は,その後端面(被吸引面41a)を固定コア14の前端面(吸引面14a)に対向させながら,弁ハウジング9の内周面とロッド43の外周面とに摺動及び回転可能に嵌装される。したがって,可動コア41の外周面及び弁ハウジング9の内周面間には摺動間隙56aが,また可動コア41の内周面及びロッド43の外周面間には摺動間隙56bがそれぞれ設けられる。また,可動コア41は,磁性円筒体12及び非磁性円筒体13に跨がって配置される。
【0025】
この可動コア41のロッド43上での摺動ストロークを一定に規制するために,可動コア41を挟むように並ぶ開弁側ストッパ48及び閉弁側ストッパ49がロッド43に溶接により固着される。その際,開弁側ストッパ48は,可動コア41の,固定コア14に対向する被吸引面41aに当接可能に対向し,閉弁側ストッパ49は,可動コア41の,被吸引面41aと反対側の前端面に当接可能に対向するように配置される。
【0026】
而して,弁体40の閉弁状態では(図2参照),可動コア41は,閉弁側ストッパ49に当接していて,開弁側ストッパ48との間に前記摺動ストロークに対応する間隔を置いて対向し,この間隔,即ち摺動ストロークは,閉弁側ストッパ49に当接状態の可動コア41と固定コア14との間に設けられる間隔よりも小さく設定される。したがって,コイル32の通電に伴い固定コア14が可動コア41を吸引したときは,可動コア41は,先ず開弁側ストッパ48に当接し,次いで固定コア14に吸着されるタイミングとなる。
【0027】
開弁側ストッパ48は,固定コア14の内周面に摺動自在に嵌合するフランジ部48aと,このフランジ部48aから可動コア41側に突出する円筒状の軸部48bとで構成される。そして,フランジ部48aが溶接によりロッド43に固着され,弁体40の閉弁位置では軸部48bの一部が吸引面14aよりも可動コア41側に突出するように配置される。
【0028】
開弁側ストッパ48の軸部48bの,可動コア41の後端面に対向する前端面には,環状凸曲面部50と凹状テーパ面51とが設けられる。環状凸曲面部50は,軸部48bの前端面の外周寄りで軸部48bと同心状に形成される。この環状凸曲面部50の断面形状は,軸部48bの外周に近接した中心を有する円弧状をなしている。また,凹状テーパ面51は,環状凸曲面部50の内周縁からロッド43に向かってテーパ状に延びている。
【0029】
再び図1及び図2において,固定コア14の中空部15にはパイプ状のリテーナ53が嵌挿されてかしめ固定される。このリテーナ53と,開弁側ストッパ48のフランジ部48aとの間には弁体40を弁座27への着座方向,即ち閉弁方向へ付勢する弁ばね54が縮設される。
【0030】
また開弁側ストッパ48のフランジ部48aと可動コア41との間には,開弁側ストッパ48の軸部48bを囲繞する補助ばね55が縮設される。この補助ばね55は,弁ばね54のセット荷重よりも小さいセット荷重を付与されており,可動コア41を開弁側ストッパ48から離反させて閉弁側ストッパ49に当接させる側に付勢する。
【0031】
ロッド43の後端部は,開弁側ストッパ48のフランジ部48aよりも突出し,弁ばね54の可動端部の内周面に嵌合して,その位置決めの役割を果たしている。また開弁側ストッパ48の軸部48bは,補助ばね55の内周面に嵌合して,その位置決めの役割を果たしている。また,可動コア41の後端面には,補助ばね55の前端部を収容する位置決め凹部41bが設けられる。
【0032】
開弁側ストッパ48のフランジ部48aの外周の複数箇所には,固定コア14の内周面との間に燃料通路を画成する平面部57が設けられ,また可動コア41には,環状配列の複数の燃料通孔58が設けられる。これら燃料通孔58は,前記位置決め凹部41bの外周部と重なっている。したがって,位置決め凹部41bは,複数の燃料通孔58と連通状態にある。
【0033】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0034】
電磁式燃料噴射弁Iにおいて,コイル32の非通電状態では,弁体40は,弁ばね54のセット荷重によって押圧されることで,弁座27に着座して燃料噴孔28を閉鎖する閉弁状態となる。この閉弁状態では,図示しない燃料ポンプから燃料分配管20に吐出される高圧燃料が燃料供給キャップ21を通して燃料供給筒16に供給され,燃料噴射弁Iの内部,即ち燃料供給筒16,パイプ状のリテーナ53,固定コア14,可動コア41,弁ハウジング9等の内部を満たして待機する。
【0035】
その際,燃料ポンプの吐出圧変動等に起因して燃料分配管20内に発生する燃料圧力の脈動は,燃料供給筒16の入口のオリフィス部材24のオリフィスにより減衰され,燃料噴射弁I内部への影響を解消,もしくは軽減している。
【0036】
一方,図2に示すように,可動コア41は,このような閉弁状態では,補助ばね55のセット荷重によって,可動コア41は,閉弁側ストッパ49に支承された状態に保持され,固定コア14との間に所定の間隔を保っている。
【0037】
このような閉弁状態でコイル32に通電すると,固定コア14及び可動コア41間に生じる磁力により,可動コア41は,固定コア14に吸引されるので,先ず,補助ばね55を圧縮しながら,ロッド43上を上方へ摺動して,位置決め凹部41bの底面を開弁側ストッパ48に当接させる。即ち可動コア41は,その初動時,弁ばね54よりセット荷重が小さい補助ばね55を素早く圧縮しながら固定コア14に近接して,固定コア14からの吸引力の急増を得て,位置決め凹部41bの底面により開弁側ストッパ48を勢いよく突き上げる。
【0038】
したがって,図3に示すように,可動コア41は,開弁側ストッパ48を伴いながら,弁ばね54の大なるセット荷重に抗して速やかに更に後方へ移動して可動コア41の吸引面14aに吸着される。
【0039】
こうして可動コア41と共に後方へ移動する開弁側ストッパ48は,弁体40のロッド43に固定されているので,弁部42を弁座27から離座させ,開弁状態とすることができる。弁体40が開弁すると,弁ハウジング9等の内部で待機する高圧燃料が燃料噴孔28から内燃機関Eの燃焼室6に直接噴射される。このようにして,弁体40の開弁応答性が高められると共に,コイル32の消費電力の軽減を図ることができる。
【0040】
ところで,可動コア41が開弁側ストッパ48を突き上げるときに,可動コア41の位置決め凹部41bの底面は,開弁側ストッパ48の前端面に設けられる環状凸曲面部50に当接する。このような曲面当接部には,燃料油膜による潤滑状態を維持して,当接部の摩耗を防ぐことができ,また可動コア41が傾きを修正するときでも,摩擦部の摩耗を防ぐことができる。しかも,環状凸曲面部50は,開弁側ストッパ48の前端面の外周寄りに配置されるので,開弁側ストッパ48は,充分大径の環状凸曲面部50で可動コア41からの突き上げ力を受けることから,環状凸曲面部50が受ける面圧を極力下げて,その耐久性の向上を図ることができる。
【0041】
また,可動コア41が開弁側ストッパ48を突き上げる過程で,可動コア41から凹状テーパ面51に付与される燃料圧力により弁体40のロッド43に調心作用が働き,弁体40の横振れを防ぎ,弁体40の姿勢の安定化を図ることができる。そして凹状テーパ面51から溢流した燃料は可動コア41と開弁側ストッパ48の環状凸曲面部50との当接部の燃料油膜の形成に関与する。
【0042】
かくして,電磁式燃料噴射弁Iの耐久信頼性を高めることができる。
【0043】
次に,コイル32への通電を遮断すると,弁ばね54の大なるセット荷重により開弁側ストッパ48が押動されるので,開弁側ストッパ48は可動コア41及び弁体40を伴なって弁座27側に直ちに移動し,弁部42を弁座27に着座させ,閉弁状態となって燃料噴孔28からの燃料噴射を停止する。この弁体40の閉弁状態は,弁ばね54の大なるセット荷重により確実に保持される。
【0044】
一方,可動コア41は,補助ばね55のセット荷重により押圧され,閉弁側ストッパ49に支承される。
【0045】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。例えば,前記閉弁側ストッパ49は,弁ハウジング9の内周面に嵌合,固定することもできる。
【符号の説明】
【0046】
I・・・・電磁式燃料噴射弁
9・・・・弁ハウジング
14・・・固定コア
27・・・弁座
32・・・コイル
40・・・弁体
41・・・可動コア
42・・・弁部
43・・・ロッド
48・・・開弁側ストッパ
49・・・閉弁側ストッパ
50・・・環状凸曲面部
51・・・凹状テーパ面
54・・・弁ばね
55・・・補助ばね
図1
図2
図3