IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 澁谷工業株式会社の特許一覧

特開2024-35694透析装置および補液通路の接続チェック方法
<>
  • 特開-透析装置および補液通路の接続チェック方法 図1
  • 特開-透析装置および補液通路の接続チェック方法 図2
  • 特開-透析装置および補液通路の接続チェック方法 図3
  • 特開-透析装置および補液通路の接続チェック方法 図4
  • 特開-透析装置および補液通路の接続チェック方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035694
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】透析装置および補液通路の接続チェック方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A61M1/34 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140313
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇
(72)【発明者】
【氏名】松崎 光正
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐貴
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD22
4C077EE01
4C077EE03
4C077EE04
4C077GG17
4C077HH05
4C077HH13
4C077HH20
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】 補液通路の接続先を簡易かつ確実に検出する。
【解決手段】 補液通路27Aは、上記血液回路3における動脈側通路21(プレ補液)または静脈側通路22(ポスト補液)に対して選択的に接続可能に設けられている透析装置1に関する。
透析液供給通路54の圧力を計測する供給側圧力センサS3と、透析液回収通路55の圧力を計測する回収側圧力センサS4と、一端が上記血液回路3の動脈側通路21または静脈側通路22と連通し、他端が上記透析液回収通路55に接続される接続通路(24A、24B、25)とを備え、
さらに、透析液ポンプ63(送液手段)が透析液を上記補液通路27Aから血液回路3に流入させた状態で、上記供給側圧力センサS3および回収側圧力センサS4が測定した圧力の差圧から、上記補液通路27Aが上記動脈側通路21または静脈側通路22のいずれかに接続されているかを判定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路と、透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路と、上記透析液供給通路と上記血液回路との間に設けられた補液通路と、上記補液通路を介して上記透析液供給通路の透析液を血液回路へと送液する送液手段とを備え、
上記補液通路は、上記血液回路の動脈側通路または静脈側通路に選択的に接続可能に設けられている透析装置において、
上記透析液供給通路を流通する液体の圧力を計測する供給側圧力センサと、上記透析液回収通路を流通する液体の圧力を計測する回収側圧力センサと、一端が上記血液回路の動脈側通路または静脈側通路と連通し、他端が上記透析液回収通路に連通する接続通路とを備え、
さらに、上記送液手段が液体を上記補液通路から血液回路に流入させ、当該液体が動脈側通路または静脈側通路から上記接続通路を介して透析液回収通路に流通した状態で、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧から、上記補液通路が上記動脈側通路または静脈側通路のいずれに接続されているかを判定する判定手段を設けたことを特徴とする透析装置。
【請求項2】
上記判定手段は、上記送液手段が上記補液通路から血液回路に送液した液体を、上記動脈側通路の端部から上記接続通路を介して上記透析液回収通路へと流出させた状態で、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧を算出し、
上記差圧が第1閾値よりも小さい場合には、上記補液通路が上記動脈側通路に接続されていると判定し、上記差圧が第1閾値よりも大きい場合には、上記補液通路が上記静脈側通路に接続されていると判定することを特徴とする請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
上記判定手段は、上記送液手段が上記補液通路から血液回路に送液した液体を、上記静脈側通路の端部から上記接続通路を介して上記透析液回収通路へと流出させた状態で、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧を算出し、
上記差圧が第2閾値よりも小さい場合には、上記補液通路が上記静脈側通路に接続されていると判定し、上記差圧が第2閾値よりも大きい場合には、上記補液通路が上記動脈側通路に接続されていると判定することを特徴とする請求項1に記載の透析装置。
【請求項4】
血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路と、透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路と、上記透析液供給通路と上記血液回路との間に設けられた補液通路と、上記補液通路を介して上記透析液供給通路の透析液を血液回路へと送液する送液手段とを備え、上記補液通路が上記血液回路における動脈側通路または静脈側通路のいずれに接続されているかを判定する補液通路の接続チェック方法であって、
上記透析液供給通路内の圧力を計測する供給側圧力センサと、上記透析液回収通路内の圧力を計測する回収側圧力センサとを設け、
上記血液回路の動脈側通路または静脈側通路のいずれか一方を上記透析液回収通路に連通させるとともに、上記送液手段が液体を上記補液通路から血液回路に流入させ、当該液体を動脈側通路または静脈側通路から上記透析液回収通路へと流通させた状態で、
上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧から、上記補液通路の接続先が上記動脈側通路または静脈側通路のいずれであるかを判定することを特徴とする補液通路の接続チェック方法。
【請求項5】
上記送液手段によって上記補液通路から血液回路に送液した液体を、上記動脈側通路の端部から上記接続通路を介して上記透析液回収通路へと流出させた状態で、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧を算出し、
上記差圧が第1閾値よりも小さい場合には、上記補液通路が上記動脈側通路に接続されていると判定し、上記差圧が第1閾値よりも大きい場合には、上記補液通路が上記静脈側通路に接続されていると判定することを特徴とする請求項4に記載の補液通路の接続チェック方法。
【請求項6】
上記送液手段によって上記補液通路から血液回路に送液した液体を、上記静脈側通路の端部から上記接続通路を介して上記透析液回収通路へと流出させた状態で、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧を算出し、
上記差圧が第2閾値よりも小さい場合には、上記補液通路が上記静脈側通路に接続されていると判定し、上記差圧が第2閾値よりも大きい場合には、上記補液通路が上記動脈側通路に接続されていると判定することを特徴とする請求項4に記載の補液通路の接続チェック方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透析装置および補液通路の接続チェック方法に関し、詳しくは透析液回路の透析液を血液回路に供給して補液を行うための補液通路を備えた透析装置および、上記補液通路の接続位置をチェックするための補液通路の接続チェック方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析等において使用される透析装置は、血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路と、透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路とを備えている。
また、透析治療中に患者に対して補液を行うため、上記透析液供給通路と上記血液回路との間に補液通路を設けた透析装置が知られ、このうち上記補液通路を動脈側通路または静脈側通路に対して選択的に接続可能にしたものも知られている(特許文献1)。
ここで、血液回路における透析器よりも上流側となる動脈側通路に上記補液通路を接続して補液を行う場合をプレ補液(前希釈方式)と呼び、透析器よりも下流側となる静脈側通路に上記補液通路を接続して補液を行う場合をポスト補液(後希釈方式)と呼ぶが、これらポスト補液またはプレ補液の選択は患者の体調等に応じて医師が判断するものとなっている。
しかしながら、透析装置は図1に示すように多くの配管によって構成されていることから、医療従事者が医師の指示に従って補液通路を動脈側通路または静脈側通路に接続する際に、接続ミスが生じる恐れがあった。
そこで特許文献1では、液体の充満していない血液回路に向けて透析液を流通させるとともに、気泡検知器により気泡が検知されたか否かを検出することで、補液通路が動脈側通路に接続されているか静脈側通路に接続されているかを判定するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6900756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで上記特許文献1では、動脈側通路の一端側と静脈側通路の他端側とを接続し、かつこれらの液体が満たされていない状態から、血液回路に液体を流入させることで、気泡の検知を行うようになっている。
このため、仮に補液通路の接続ミスが判定された場合、補液通路の接続を直してから再度当該特許文献1にかかる判定方法を用いようとすると、血液回路にはすでに液体が充満されているため、血液回路から液体を除去しなければならず、操作が煩雑になるという問題があった。
しかも、血液回路から液体を完全に排除することは困難であり、血液回路に残存した液体に気泡が含まれている場合があることから、再度上記判定方法を実行した場合に、誤検出が発生してしまう恐れがあった。
このような問題に鑑み、本発明はより簡易かつ確実に補液通路の接続先を判定することが可能な透析装置および補液通路の接続チェック方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる透析装置は、血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路と、透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路と、上記透析液供給通路と上記血液回路との間に設けられた補液通路と、上記補液通路を介して上記透析液供給通路の透析液を血液回路へと送液する送液手段とを備え、
上記補液通路は、上記血液回路の動脈側通路または静脈側通路に選択的に接続可能に設けられている透析装置において、
上記透析液供給通路を流通する液体の圧力を計測する供給側圧力センサと、上記透析液回収通路を流通する液体の圧力を計測する回収側圧力センサと、一端が上記血液回路の動脈側通路または静脈側通路と連通し、他端が上記透析液回収通路に連通する接続通路とを備え、
さらに、上記送液手段が液体を上記補液通路から血液回路に流入させ、当該液体が動脈側通路または静脈側通路から上記接続通路を介して透析液回収通路に流通した状態で、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧から、上記補液通路が上記動脈側通路または静脈側通路のいずれかに接続されているかを判定する判定手段を設けたことを特徴としている。
また請求項4の発明にかかる補液通路の接続チェック方法は、血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路と、透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路と、上記透析液供給通路と上記血液回路との間に設けられた補液通路と、上記補液通路を介して上記透析液供給通路の透析液を血液回路へと送液する送液手段とを備え、上記補液通路が上記血液回路における動脈側通路または静脈側通路のいずれかに接続されているかを判定する補液通路の接続チェック方法であって、
上記透析液供給通路内の圧力を計測する供給側圧力センサと、上記透析液回収通路内の圧力を計測する回収側圧力センサとを設け、
上記血液回路の動脈側通路または静脈側通路のいずれか一方を上記透析液回収通路に連通させるとともに、上記送液手段が液体を上記補液通路から血液回路に流入させ、当該液体を動脈側通路または静脈側通路から上記透析液回収通路へと流通させた状態で、
上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との差圧から、上記補液通路の接続先が上記動脈側通路または静脈側通路のいずれかであるかを判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、送液手段が透析液を上記補液通路から血液回路に流入させると、当該透析液は動脈側通路または静脈側通路から上記接続通路を介して透析液回収通路に流通することとなる。
このとき、補液通路が接続されている位置に応じて、当該液体が血液回路に設けられた透析器を通過する場合と、通過しない場合とが生じるが、液体が透析器を通過する場合には、透析器に設けられた無数の中空糸を通過することにより圧力損失が生じることとなる。
液体が透析器を通過した場合、上記供給側圧力センサが測定した圧力と回収側圧力センサが測定した圧力との間に差圧が生じるため、このような差圧の大小によって、上記補液通路が上記動脈側通路または静脈側通路のいずれかに接続されているかを判定することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例にかかる透析装置の正面図
図2】透析装置の回路図であって、ポスト補液を行う場合の回路図
図3】透析装置の回路図であって、ポスト補液を行う場合の回路図
図4】透析装置の回路図であって、プレ補液を行う場合の回路図
図5】透析装置の回路図であって、プレ補液を行う場合の回路図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施形態について説明すると、図1は本実施形態にかかる透析装置1の正面図を、図2~5は当該透析装置1の回路図を示しており、特に上記透析装置1におけるプライミング作業時の状態を示している。
上記プライミング作業とは、透析治療を行う前に上記透析装置1に透析器2および血液回路3を接続して、当該透析器2および血液回路3に透析液を充満させる作業を言う。
また本実施例の透析装置1では、透析治療中に患者に対して透析液による補液をすることが可能となっており、このような補液として、図2図3に示す補液通路を血液回路3の静脈側通路に接続して行うポスト補液と、図4図5に示す動脈側通路に接続して行うプレ補液とを選択的に行うことが可能となっている。
これらポスト補液およびプレ補液は、患者の体調等に応じて医師が指示するものとなっているが、医療従事者が補液通路の接続を行うため、接続ミスを防止する必要があった。
そこで本実施例の透析装置1は、プライミング作業と並行して、補液通路が血液回路3の静脈側通路または動脈側通路のいずれかに接続されているかを判定することにより、医師の指示通りの接続がされているか否かを確認できるようにしたものとなっている。
【0009】
上記透析装置1は、血液透析を行う透析器2と、透析器2に血液を流通させる血液回路3と、透析器2に透析液を流通させる透析液回路4とを備え、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等の計算機からなる制御手段5によって制御されるようになっている。
図1において、上記透析器2および血液回路3のほとんどは、透析装置1を構成する本体部6の前面に露出するように設けられ、これに対し、透析液回路4のほとんどは透析装置1の内部に収容されたものとなっている。
上記本体部6の上部には、透析治療中の患者の状態等を表示するとともに、必要な操作を行うための上記制御手段5を構成するタッチパネル5aが設けられており、側面には上記透析器2を保持する透析器ホルダ7が設けられている。
また本体部6の正面には、血液回路3の血液を送液するための血液ポンプ8が設けられており、併せて血液回路3を構成するドリップチャンバ9や、薬剤注入用のシリンジ10が保持されるようになっている。
【0010】
さらに上記本体部6の正面には、血液回路3と透析液回路4とを接続するために設けられた第1~第3接続ポートP1~P3や、血液回路3の圧力を測定するために血液回路3の一部の配管を接続するための第1、第2センサ用ポートP4、P5が設けられている。
これらの接続ポートPは例えば特許第5920575公報に記載されている構成を使用可能であり、透析液回路4を構成する配管の端部に設けられたコネクタと、本体部6の正面に回転可能に設けられた蓋部材とから構成されている。
このような構成により、例えばプライミング作業時には上記蓋部材を回転させて上記コネクタを外部に露出させ、血液回路3の配管を接続するとともに、透析作業時には配管を取り外して、上記コネクタが外部に露出しないように覆うことが可能となっている。
【0011】
上記透析器2は樹脂製の筒状部の内部に無数の中空糸を備えており、中空糸の内部は血液が流通する血液室2aを、中空糸の外部は透析液が流通する透析液室2bを形成している。
上記透析器2の両端部にはキャップが設けられており、キャップの中央には上記血液回路3が接続されて上記血液室2aに連通し、またキャップの側部には上記透析液回路4が接続されて上記透析液室2bに連通するようになっている。
そして図1に示すように、透析器2は上記キャップが上下に位置するように上記透析器ホルダ7に保持され、透析治療中は、血液が上記血液室2aを図示上方から下方に向けて流通(図2においては図示左方から右方)し、透析液は透析液室2bを図示下方から上方に向けて流通(図2においては図示右方から左方)するようになっている。
【0012】
上記血液回路3は、患者の動脈から透析器2の血液室2aに血液を送液するための動脈側通路21と、血液室2aから患者の静脈に血液を戻すための静脈側通路22とを備えている。図1において、動脈側通路21は上記透析器2の上部に接続され、静脈側通路22が透析器2の下部に接続されている。
図2において、上記動脈側通路21の端部には治療時に穿刺針が装着されるコネクタ21aが設けられており、当該コネクタ21aに対して隣接した位置から順に、動脈側クランプV1と、透析治療後に患者に血液を戻すための返血通路23Aと、動脈側通路21の圧力を測定する動脈側圧力センサS1と、血液回路3に薬剤を投入するためのシリンジ10と、プレ補液を行う際に補液通路を接続するためのプレ補液用コネクタC1とが設けられている。
【0013】
プライミング中の透析装置1において、上記動脈側通路21のコネクタ21aには接続通路としての第1プライミング用配管24Aの一端が接続され、当該第1プライミング用配管24Aの他端は、上記透析液回路4を構成する接続通路24Bの端部に設けられた上記第3接続ポートP3に接続されるようになっている。
上記動脈側クランプV1は本体部6の正面に設けられたケース6a内に収容されており、制御手段5によって制御される図示しない駆動手段により、自動的に動脈側通路21の開閉が行われるようになっている。
【0014】
上記返血通路23Aは、透析治療後に血液回路3の血液を患者に戻す際に使用され、基部である動脈側通路21との分岐部分の近傍には逆止弁Bが設けられ、先端は上記透析液回路4を構成する返血通路23Bの端部に設けられた第1接続ポートP1に接続されるようになっている。
返血通路23Aの途中にはプライミングの際に使用する接続通路としての第2プライミング用配管25が分岐して設けられており、プライミング時には上記静脈側通路22の端部のコネクタ22aに接続されるようになっている。また第2プライミング用配管25は手動クランプ26によって閉鎖可能となっている。
【0015】
図1において、動脈側圧力センサS1は本体部6の正面に第1センサ用ポートP4を備えており、動脈側通路21より分岐した配管を当該第1センサ用ポートP4に連結して使用するようになっている。
上記血液ポンプ8はいわゆるチューブポンプによって構成され、ロータの回転に伴って動脈側通路21を構成する配管を圧迫することにより、配管内の液体を押し出すようにして送液するものとなっている。
なお図2図4に示すプライミング中において、動脈側通路21に透析液を充満させる際には動脈側通路21を血液ポンプ8に装着せず、動脈側通路21における液体の流通を阻害しないようにしている。
上記シリンジ10には薬剤が収容されており、制御手段5によって制御される押圧手段によってプランジャが前進されるようになっており、透析治療時にはシリンジ10から薬剤が自動的に血液回路3に供給されるようになっている。
【0016】
上記プレ補液用コネクタC1には、図4図5に示すように、プレ補液を行う際に補液通路27Aが接続され、当該補液通路27Aの両端にはコネクタが設けられている。
補液通路27Aの一方のコネクタは、上記透析液回路4を構成する補液通路27Bの端部に設けられた第2接続ポートP2に接続され、他端のコネクタは、上記プレ補液用コネクタC1または、静脈側通路22に設けた後述するポスト補液用コネクタC2のいずれかに接続されるようになっている。
上記プレ補液用コネクタC1は、上記動脈側通路21から分岐した位置に設けられており、当該プレ補液用コネクタC1と上記動脈側通路21との間には逆止弁Bが設けられ、血液回路4からの逆流を防止するようになっている。
【0017】
上記静脈側通路22は、図1において透析器2の下端部に接続され、端部には透析治療時に穿刺針が装着されるコネクタ22aが設けられている。静脈側通路22には、透析器2側から順に、ポスト補液を行う際に上記補液通路27Aが接続されるポスト補液用コネクタC2と、上記ドリップチャンバ9と、静脈側クランプV2とが設けられている。
上記ポスト補液用コネクタC2には、図2図3に示すように、ポスト補液を行う際に補液通路27Aが接続されるようになっている。
また上記ポスト補液用コネクタC2は上記プレ補液用コネクタC1と同じ構造を有しており、当該ポスト補液用コネクタC2と上記静脈側通路22との間に設けられた逆止弁Bによって血液回路4からの逆流を防止するようになっている。
【0018】
上記ドリップチャンバ9は図1に示すように透析装置1の本体部6の正面に保持された筒状の容器とキャップとを備えており、上記キャップには静脈側通路22の圧力を測定する静脈側圧力センサS2が接続されている。
図1において、上記静脈側圧力センサS2は本体部6の正面に第2センサ用ポートP5を備えており、静脈側通路22より分岐した配管を当該第2センサ用ポートP5に連結して使用するようになっている。
【0019】
上記透析液回路4は、ダイアフラムによって内部に供給室51a、52aおよび回収室51b、52bが形成された第1、第2透析液チャンバ51、52と、上記供給室51a、52aに透析液を供給する給液通路53と、供給室51a、52aから透析器2へと新鮮な透析液を供給する透析液供給通路54と、透析器2から回収室51b、52bへと使用済み透析液を回収する透析液回収通路55と、上記回収室51b、52bから使用済み透析液を排出する排液通路56とを備えている。
上記給液通路53は、上流側の端部が清浄水を供給する図示しない給水源に接続され、給水源側の上流側から順に、制御手段5によって制御される給水弁V4、上記排液通路56と連通する第1バイパス通路57、給水源の清浄水を送液する給液ポンプ58、透析液の原液を供給する透析液原液供給手段59が設けられている。
給液通路53の下流側の端部は上記第1、第2透析液チャンバ51、52に向けて分岐しており、分岐した通路には制御手段5によって制御される給液弁V5、V6がそれぞれ設けられている。
【0020】
上記第1バイパス通路57は上記給液ポンプ58の上流側で分岐するように設けられており、その他端は上記排液通路56に接続されている。また第1バイパス通路57の途中には制御手段5によって制御される第7開閉弁V7と、当該第7開閉弁V7の上流側で分岐する第2バイパス通路60とが設けられている。
上記第2バイパス通路60の他端は上記排液通路56に接続されており、また当該第2バイパス通路60には制御手段5によって制御される第8開閉弁V8が設けられている。
【0021】
上記透析液原液供給手段59は、図示しないが透析液の原料となるA原液およびB原液を収容する原液タンクと、原液タンクのA原液およびB原液を所定量ずつ供給する送液ポンプを備えている。
上記送液ポンプによって送液されたA原液およびB原液は、上記給液ポンプ58によって送液された清浄水と共に給液通路53を流通し、上記第1、第2透析液チャンバ51、52の供給室51a、52aに流入するようになっている。
これらA原液およびB原液は上記供給室51a、52aの内部や後述する2つのフィルタCF1、CF2等の内部で清浄水と攪拌され、これにより所定濃度の透析液が調製されるようになっている。
【0022】
上記透析液供給通路54の上流部分は2方向に分岐して、それぞれ上記第1、第2透析液チャンバ51、52の供給室51a、52aに接続されており、下流側の端部は図1における透析器2の下方側の端部に接続されて、上記透析液室2bに連通するようになっている。
さらに透析液供給通路54における上記分岐部分にはそれぞれ供給弁V9、V10が設けられ、当該分岐部分よりも下流側となる位置には、上流側から順に、透析液中のエンドトキシンなどを吸着する2つのフィルタCF1、CF2、透析液供給通路54を流通する透析液の圧力を測定する供給側圧力センサS3、第1流量絞り手段MV1、透析液供給通路54内を流通する透析液等の液体の流量を計測する流量計FM1、上記補液通路27Aが接続される補液通路27B、上記返血通路23Aが接続される返血通路23B、上記透析液回収通路55との間に設けられた第3バイパス通路61、制御手段5によって制御される第11開閉弁V11が設けられている。
【0023】
上記補液通路27Bは上記供給側圧力センサS4の下流側となる位置で透析液供給通路54より分岐するように設けられ、当該補液通路27Bには制御手段5によって制御される第2流量絞り手段MV2および第12開閉弁V12が設けられている。
また補液通路27Bの端部には図1において本体部6の正面に配置された第2接続ポートP2が設けられており、上述したように上記補液通路27Aのコネクタが接続されるようになっている。
透析治療中に補液を行う際には、透析液供給通路54の透析液を補液通路27Bおよび補液通路27Aを介して血液回路3の動脈側通路21または静脈側通路22に供給することにより、患者への補液を行うようになっている。
その際、上記制御手段5が上記第1流量絞り手段MV1および第2流量絞り手段MV2の開度を調整することで、所要量の透析液が血液回路3に供給されるようになっている。なおこのような制御は例えば特開2021-062067号公報に記載されており、従来公知となっている。
【0024】
上記返血通路23Bは上記補液通路27Bの下流側となる位置で透析液供給通路54より分岐して設けられ、制御手段5によって制御される第13開閉弁V13が設けられている。
また返血通路23Bの端部には、図1において本体部6の正面に設けられた上記第1接続ポートP1が設けられており、血液回路3の動脈側通路21より分岐して設けられた上記返血通路23が接続されるようになっている。
透析治療後に血液回路3の血液を患者に戻す返血作業を行う際には、上記第13開閉弁V13を開放することにより、新鮮な透析液を透析液供給通路54から返血通路23を介して血液回路3へと流入させ、透析液によって血液回路3内の血液を患者に押し戻すようになっている。
【0025】
上記第3バイパス通路61は上記返血通路23Bの下流側で分岐して上記透析液回収通路55に接続されており、制御手段5によって制御される第14開閉弁V14および第15開閉弁V15を備えている。
上記第3バイパス通路61における第14開閉弁V14および第15開閉弁の間には、上記接続通路24Bが分岐して設けられており、当該接続通路24Bには制御手段5によって制御される第16開閉弁V16が設けられている。
上記接続通路24Bの端部には、図1において本体部6の正面に設けられた上記第3接続ポートP3が設けられており、上記血液回路3の動脈側通路21に接続された上記第1プライミング用配管24Aが接続されるようになっている。
【0026】
上記透析液回収通路55は、上流側の端部が上記透析器2に接続され、図1においては図示上方側に接続されたものとなっており、当該透析器2側から順に、制御手段5によって制御される第17開閉弁V17、透析液回収通路55の透析液の圧力を測定する回収側圧力センサS4、透析液中の気泡を除去する除気槽62、上記給液通路53に連通している上記第1バイパス通路57、透析液を送液する送液手段としての透析液ポンプ63、治療時に除水を行うための除水通路64を備えている。
また透析液回収通路55の下流側の端部は2方向に分岐しており、それぞれ上記第1、第2透析液チャンバ51、52の回収室51b、52bに接続され、当該分岐部分には回収弁V18、V19が設けられている。
【0027】
上記除気槽62には他端が上記排液通路56に接続された排気通路65が設けられており、当該排気通路65には制御手段5によって制御される第20開閉弁V20が設けられている。
上記除気槽62は従来公知であり、透析治療中に使用済み透析液が流入すると、当該使用済み透析液に含まれる気体を分離し、これを上記排気通路65を介して上記排液通路56より排出するものとなっている。
上記第1バイパス通路57は上記除気槽62と透析液ポンプ63との間に接続されており、プライミング作業時には給液通路53の清浄水を透析液回収通路55に補充するために用いられる。
【0028】
上記除水通路64は透析液ポンプ63の下流側に接続され、また除水通路64には除水ポンプ66が設けられている。上記除水ポンプ66と透析液原液供給手段59との間には第2給液通路67が設けられており、当該第2給液通路には制御手段によって制御される第21開閉弁V21が設けられている。
透析治療時に上記除水ポンプ66を作動させることで、透析器2において透析液室2bと血液室2aとの間に差圧を生じさせ、これにより血液中の水分を中空糸の膜を介して透析液回路4側へと移動させて取り除くものとなっている。
なお本発明において、上記除水ポンプ66を送液手段として用いることも可能である。この場合には、第2給液通路67を介して清浄水の供給を受け、この清浄水が上記除水通路64を流通した後、上記透析液回収通路55を流通して第1、第2透析液チャンバ51、52の回収室51b、52bへと流入する。
すると、回収室51bの容積が徐々に拡大するため、これに伴って供給室51a、52aの容積が縮小し、供給室51a、52aから透析液供給通路54へと透析液を排出させることができる。
【0029】
上記排液通路56は、上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ51、52の回収室51b、52bに接続され、当該分岐部分には排液弁V22、V23が設けられている。
また排液通路56には、上記分岐部分から下流側に向けて、上記透析液回収通路55と連通する上記除水通路64と、透析液回収通路55の除気槽62と連通する上記排気通路65と、制御手段5によって制御される第24開閉弁V24と、上記第1バイパス通路57に接続された上記第2バイパス通路60とが設けられている。
【0030】
以下、上記構成を有する透析装置1を用いて、プライミングと同時に上記補液通路27Aがポスト補液もしくはプレ補液のいずれかに対応して接続されているかを判定する方法について説明する。
なお、以下に説明するプライミング動作は、プライミング動作全体の一部を示しており、また以下に説明する動作は一例にすぎず、上記構成を用いて他の動作を行っても、プライミングならびに補液通路27Aの接続判定を行うことも可能となっている。
また図2以下の各図では、透析液(または清浄水)の流通する部分を太線にして示している。ただし、透析液回路4における透析液の流通については、透析治療時のような通常動作に伴う透析液の流通については太線を省略し、プライミング作業に伴って生じる液体の流れを太線にして説明するものとする。
さらに、特に指示する場合を除き、図中における各バルブやクランプのうち、黒色のものは閉鎖状態を、白色のものは開放状態を示している。
【0031】
まず、図2図3を用いて、補液通路27Aをポスト補液に対応して接続した場合の動作について説明する。このとき上記補液通路27Aは血液回路3の静脈側通路22の上記ポスト補液用コネクタC2に接続されたものとなる。
最初に、図2に示すように、透析装置1に透析器2および血液回路3を装着する。ただし、動脈側通路21は血液ポンプ8に装着されておらず、動脈側通路21における液体の流通が阻害されないようになっている。
上記血液回路3の返血通路23Aは、透析液回路4の返血通路23Bと第1接続ポートP1を介して接続されている。また血液回路3の動脈側通路21のコネクタ21aには第1プライミング用配管24Aが接続され、当該第1プライミング用配管24Aは上記透析液回路4を構成する接続通路24Bの第3接続ポートP3に接続されている。
また、上記血液回路3の静脈側通路22のコネクタ22aには、上記返血通路23Bより分岐した第2プライミング用配管25が接続され、当該第2プライミング用配管25の手動クランプ26は開放された状態となっている。
【0032】
このように補液通路27Aがポスト補液に対応した静脈側通路22に接続されている状態から、医療従事者はタッチパネル5aを操作してプライミング作業の開始を指示する。
なお以下の説明では、透析液回路4における透析液の送液動作についての説明は省略するが、図2の状態は、第1透析液チャンバ51の供給室51aにおいて既に透析液が調製され、供給弁V9および回収室51bの回収弁V18が開放されている状態となっている。
上記給液通路53では、給水弁V4が開放され、上記第1透析液チャンバ51の供給室51aへの給液弁V5が閉鎖され、給液通路53と透析液回収通路55との間に設けられた第1バイパス通路57の第7開閉弁V7が開放されている。
これにより、上記透析液回収通路55の透析液ポンプ63が送液を行うと、上記給液通路53の清浄水が上記第1バイパス通路57を流通した後、上記第1透析液チャンバ51の回収室51bへと流入する。
すると、上記回収室51bの容積が徐々に拡大し、これに伴って供給室51aの容積が縮小するため、供給室51aから透析液供給通路54へと透析液が排出されることとなる。
【0033】
排出された透析液は透析液供給通路54を流通するが、このとき透析液供給通路54の第11開閉弁V11、返血通路23Bの第13開閉弁V13、第3バイパス通路61の第14開閉弁V14が閉鎖されていることから、透析液は上記透析液供給通路54から補液通路27Bへと流れるようになっている。
また、上記補液通路27Bには補液通路27Aが接続され、またポスト補液に対応するために当該補液通路27Aは静脈側通路22のポスト補液用コネクタC2に接続されている。
したがって、補液通路27Bを流通した透析液は、上記ポスト補液用コネクタC2を介して静脈側通路22に流入することとなる。
一方、血液回路3では、上記動脈側通路21の動脈側クランプV1が開放されており、静脈側通路22の静脈側クランプV2が閉鎖されている。
したがって、静脈側通路22に流入した透析液はポスト補液用コネクタCから上流側に向って流れることとなるが、これは透析治療時とは逆方向の流れとなり、その後透析液は透析器2の内部を通過した後、上記動脈側通路21を流通するようになっている。
これにより、上記動脈側通路21の内部が透析液によって満たされ、当該動脈側通路21のプライミングを完了させることができる。
【0034】
上記動脈側通路21を流通した透析液は、その後上記第1プライミング用配管24Aを流通した後、上記透析液回路4に設けられた接続通路24Bに流入する。
透析液回路4では、透析液回収通路55の第17開閉弁V17が閉鎖されており、また上記第3バイパス通路61の第15開閉弁V15が開放され、除気槽62に接続された排気通路65の第20開閉弁V20が開放されている。
これにより、透析液は上記第1プライミング用配管24Aから上記接続通路24Bを介して第3バイパス通路61に流入し、その後上記透析液回収通路55を流通して上記除気槽62に流入すると、上記排気通路65を流通した後、上記排液通路56から排出される。
【0035】
そして上記動作中、制御手段5は上記透析液供給通路54に設けた供給側圧力センサS3と、上記透析液回収通路55に設けた回収側圧力センサS4とを用いて、流通する透析液の圧力を測定している。
上述したように、図2の状態では、補液通路27Aがポスト補液に対応して静脈側通路22に接続されており、また透析液は透析治療時に対して逆方向に流通することから、透析液は静脈側通路22から透析器2を通過した後、上記動脈側通路21より排出されることとなる。
透析液が透析器2を通過すると、透析器2に設けられた中空糸を通過する際に圧力損失が発生するため、透析器2よりも上流側に位置している供給側圧力センサS3が測定した圧力に対し、透析器2よりも下流側に位置している回収側圧力センサS4が測定した圧力は低くなる。
また、血液回路3における静脈側クランプV2が閉鎖されていることから、制御手段5は、透析液が血液回路3を透析治療時とは逆方向に流通していることを認識している。
この状態、つまり透析液が逆方向に流通している状態において、上記供給側圧力センサS3が測定した圧力と回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ1が以下に説明する第1閾値を超えている場合には、制御手段5は透析液が透析器2を流通しているものと判断し、上記補液通路27Aが静脈側通路22、すなわちポスト補液に対応して接続されているものと判定するようになっている。
【0036】
図2に示す動脈側通路21のプライミングが完了すると、制御手段5は続いて図3に示すように静脈側通路22のプライミング動作を開始する。
制御手段5は、上記静脈側通路22の静脈側クランプV2を開放し、また動脈側通路21を上記血液ポンプ8に装着して、当該血液ポンプ8によって動脈側通路21を閉塞する。また上記静脈側通路22に接続した第2プライミング用配管25の手動クランプ26を開放しておく。
この状態で、図2の状態に引き続き上記補液通路27Aから透析液を血液回路3に流入させると、透析液は静脈側通路22に設けたポスト補液用コネクタC2から流入し、透析治療時と同じ順方向に流通することとなる。
透析液が静脈側通路22を流通することにより、ポスト補液用コネクタC2よりも下流側の部分が透析液によって満たされ、図2の作業においてポスト補液用コネクタC2よりも上流側の部分のプライミングが完了していることから、静脈側通路22のプライミングが完了する。
そして静脈側通路22を流通した透析液は、その後第2プライミング用配管25を流通した後、上記返血通路23Bの一部を通過して一旦動脈側通路21へと流入し、その後は上記第1プライミング用配管24Aを流通して、上記透析液回収通路55を流通し、その後排液通路56より排液される。
つまり図3の状態においても、上記静脈側通路22は接続通路としての第1プライミング用配管24や第2プライミング用配管25ならびに接続通路24Bを介して、透析液回収通路55に連通しているものと言える。
【0037】
この図3に示す動作では、透析液は静脈側通路22のみを流通して透析液回収通路55へと排出されているため、透析液は透析器2を通過しておらず、したがって動脈側通路21のプライミングとは異なり、透析器2による圧力損失は発生していないこととなる。
一方、透析液は静脈側通路22に設けられたドリップチャンバ9と、上記第2プライミング用配管25を介して流入した返血通路23Aに設けられた逆止弁Bを通過しており、これらを通過したことによる圧力損失が発生している。ただし、この場合の圧力損失は透析器2を通過することによる圧力損失よりも低いものとなる。
そして制御手段5は、透析液が順方向に流通している状態において、上記差圧Δ2が以下に説明する第2閾値を超えない場合には、制御手段5は透析液が透析器2を流通しておらず、上記補液通路27Aが静脈側通路22、すなわちポスト補液に対応した接続であると判定する。
【0038】
ここで、ポスト補液の指示があったにも関わらず、接続間違いにより補液通路27Aを図4図5に示すように動脈側通路21のプレ補液用コネクタC1に接続してしまった場合について説明する。
先ず図2に対応する図4において、透析液は補液通路27Aから、動脈側通路21に設けられたプレ補液用コネクタC1から流入し、その後透析治療時とは逆方向に流通する。
透析液は動脈側通路21から流入し、透析器2を通過せずに上記第1プライミング用配管24Aから排出されることから、上述したような透析器2を通過することによる圧力損失が発生しないこととなる。
したがって、供給側圧力センサS3が測定した圧力と回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ3は、ポスト補液に対応した接続の場合よりも小さくなり、上記第1閾値を超えないこととなる。
つまり、透析液が逆方向に流通している状態において、上記差圧Δ3が第1閾値を超えない場合には、制御手段5は補液通路27Aが動脈側通路21、すなわちプレ補液に対応した接続になっているものと判定し、接続に誤りがある旨の警告を上記タッチパネル5a等に表示する。
【0039】
なお、このような接続チェックは、図5に示すように透析液が透析治療時と同じ順方向に流通している場合にも行うことができる。
すなわち、透析液が動脈側通路21に設けられたプレ補液用コネクタC1から流入し、透析治療時と同じ順方向に流通すると、透析液は透析器2を通過した後、静脈側通路22のドリップチャンバ9および、第2プライミング用配管25を通過した後に返血通路23Aの逆止弁Bを通過することによる圧力損失が発生するため、供給側圧力センサS3が測定した圧力と回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ4が上記第2閾値を超えることとなる。
したがって、透析液が順方向に流通している状態において、上記差圧Δ4が第2閾値を超えた場合には、制御手段5は補液通路27Aが動脈側通路21、すなわちプレ補液に対応した接続であると判定することができる。
【0040】
次に、図4図5を用いて、補液通路27Aがプレ補液に対応して接続されている場合の動作について説明する。このとき図2図3の状態に対し、補液通路27Aは動脈側通路21の上記プレ補液用コネクタC1に接続されている。
この状態からプライミング作業の開始を指示すると、透析液回路4の第1透析液チャンバ51の供給室51aから排出された透析液は、上記透析液供給通路54から補液通路27Aへと流れるようになっている。
図4の状態において、血液回路3では上記動脈側通路21の動脈側クランプV1が開放され、静脈側通路22の静脈側クランプV2が閉鎖されている。
これにより、補液通路27Aからプレ補液用コネクタC1を介して動脈側通路21に流入した透析液は、透析治療時と逆方向に流通して、上記第1プライミング用配管24Aを流通した後、上記透析液回収通路55を流通し、上記除気槽62から排気通路65を流通した後、上記排液通路56から排出される。
このように、通常の透析治療に対して逆方向に透析液を流通させることで、血液回路3における上記動脈側通路21のプレ補液用コネクタC1よりも上流側となる部分に透析液を充満させることができる。
【0041】
一方、上記動作中、制御手段5は上記透析液供給通路54に設けた供給側圧力センサS3と、上記透析液回収通路55に設けた回収側圧力センサS4とを用いて、流通する透析液の圧力を測定している。
ここで、上述したように、図4の状態においては、補液通路27Aがプレ補液に対応した動脈側通路21に設けられており、透析液は透析治療時とは逆方向に流通することから、透析液は動脈側通路21から流入した後、透析器2を通過せずに上記動脈側通路21より排出されることとなる。
したがって、上記透析液が透析器2を通過する際の圧力損失は発生せず、また図3のようにドリップチャンバ9や逆止弁Bによる圧力損失も発生していないこととなる。
以上のことから、図4のように補液通路27Aがプレ補液に対応して接続されており、透析液が逆方向に流通した場合には、透析器2に対して上流側に位置している供給側圧力センサS3が測定した圧力と、透析器2に対して下流側に位置している回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ3の値は小さなものとなる。
制御手段5は、これら供給側圧力センサS3が測定した圧力と回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ3が、上記図2の状態で使用した第1閾値を超えない場合には、上記補液通路27Aが動脈側通路21、すなわちプレ補液に対応して接続されているものと判定する。
【0042】
このようにしてプレ補液に対応して動脈側通路21に接続された補液通路27Aから透析液を排出し、動脈側通路21のプライミングが完了したら、続いて図5に示すように透析液を透析治療時と同じ順方向に流通させる。
この場合、制御手段5は、上記静脈側通路22の静脈側クランプV2を開放し、また動脈側通路21を上記血液ポンプ8に装着して、当該血液ポンプ8によって動脈側通路21を閉塞する。また上記静脈側通路22に接続した第2プライミング用配管25の手動クランプ26を開放しておく。
この状態で、上記補液通路27Aを介して透析液を血液回路3に流入させると、動脈側通路21のプレ補液用コネクタC1から流入した透析液は、動脈側通路21を透析治療時と同じ順方向に流通することとなる。
透析液は、上記透析器2を通過した後上記静脈側通路22を流通し、その後は第2プライミング用配管25および動脈側通路21の一部を通過して、上記第1プライミング用配管24Aを流通し、その後透析液回収通路55から排液通路56を介して排液される。
この図5に示す動作では、透析液は透析器2を通過するとともに、静脈側通路22のドリップチャンバ9および返血通路23Aの逆止弁を通過することによる圧力損失が発生している。
したがって、制御手段5は、透析液が順方向に流通している状態において、供給側圧力センサS3が測定した圧力と回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ4が上記図3で用いた上記第2閾値を超えた場合には、透析液が透析器2を流通したものと判断し、上記補液通路27Aが動脈側通路21、すなわちプレ補液に対応して接続されているものと判定する。
【0043】
ここで、接続間違いにより補液通路27Aが静脈側通路22のポスト補液用コネクタC2に接続してしまった場合の動作を説明する。
補液通路27Aがポスト補液用コネクタC2に接続された状態で、透析液を逆方向に流通させると、図2に示すように透析器2を通過することで圧力損失が発生し、図2で説明したように差圧Δ1が測定されることとなる。
そして、上記差圧Δ1は上記第1閾値を超えることから、制御手段5は接続に誤りがあることを認識することができる。
これと同様、補液通路27Aをポスト補液用コネクタC2に接続した状態で、透析液を順方向に流通させると、図3に示すように透析液は静脈側通路22から流入し、透析器2を通過せずに排出されることから、図3で説明した通り上記差圧Δ2が測定されることとなる。
そして、上記差圧Δ2は上記第2閾値を超えないことから、制御手段5は接続に誤りがあることを認識することができる。
【0044】
以下、上記第1閾値、第2閾値の設定方法を説明する。
先ず第1閾値について、図2に示すように、ポスト補液に対応して補液通路27Aを静脈側通路22のポスト補液用コネクタC2に接続し、透析液を逆方向に流通させる。
そして、供給側圧力センサS3が測定した圧力と、回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ1を測定する。
続いて、図4に示すように、プレ補液に対応して補液通路27Aを動脈側通路21のプレ補液用コネクタC2に接続し、透析液を逆方向に流通させる。
そして、供給側圧力センサS3が測定した圧力と、回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ3を測定する。
このようにして測定した差圧Δ1と差圧Δ3との間となる値を第1閾値とすることができ、例えば差圧Δ1と差圧Δ3との中間値を第1閾値とすることができる。
【0045】
これと同様、第2閾値について、図3に示すように、ポスト補液に対応して補液通路27Aを静脈側通路22のポスト補液用コネクタC2に接続し、透析液を順方向に流通させる。
そして、供給側圧力センサS3が測定した圧力と、回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ2を測定する。
続いて、図5に示すように、プレ補液に対応して補液通路27Aを動脈側通路21のプレ補液用コネクタC2に接続し、透析液を順方向に流通させる。
そして、供給側圧力センサS3が測定した圧力と、回収側圧力センサS4が測定した圧力との差圧Δ4を測定する。
このようにして測定した差圧Δ2と差圧Δ4との間となる値を第2閾値とすることができ、例えば差圧Δ2と差圧Δ4との中間値を第2閾値とすることができる。
【0046】
ここで、図2図4に示すように透析液を逆方向に流通させた場合において、図2におけるポスト補液に対応した接続では、透析液は透析器2を通過しており、この時の差圧Δ1を実際に測定したところ、差圧Δ1=45kPaであった。
これに対し、図3におけるプレ補液に対応した接続では、透析液は透析器2を通過しておらず、この時の差圧Δ3を測定したところ、差圧Δ3=40kPaであった。
したがって、これら差圧Δ1と差圧Δ3との差は5kPaであり、これらの中間値である中間値42.5kPaを第1閾値として設定することができる。
しかしながら、差圧Δ1と差圧Δ3との差は5kPaしかなく、このため供給側圧力センサS3と回収側圧力センサS4の測定状況(血液回路の取り回し状態等)によっては、図2の状態において差圧Δ1が42kPaしか検出されない場合が生じる。
その場合、当該差圧Δ1は第1閾値を下回るため、制御手段5は補液通路27Aがポスト補液に対応した接続がなされていないと判断してしまい、誤判定が生じることとなる。
これは、透析液を順方向に流通させた場合も同様であり、実際に図3の配管に基づいて測定したところ、差圧Δ2=60kPa、図5の配管に基づいて測定した差圧Δ4=65kPaによれば、差圧Δ2と差圧Δ4との差は5kPaしかない。
【0047】
そこで、補液通路27Aの接続チェックをより高精度に行うため、以下に説明する第3閾値を用いた接続チェックを行うことが可能となっている。
図2図3に示す、補液通路27Aをポスト補液に対応した接続した状態において、図2に示す透析液を逆方向に流通させた場合の差圧Δ3=45kPaと、順方向に流通させた場合の差圧Δ4=60kPaとの差は、Δpost=15kPa(絶対値)となる。
これに対し図4図5に示す、補液通路27Aをプレ補液に対応した接続した状態において、図4に示す透析液を逆方向に流通させた場合の差圧Δ1=40kPaと、順方向に流通させた場合の差圧Δ2=65kPaとの差は、Δpre=25kPa(絶対値)となる。
そして、上記ポスト補液に対応した場合のΔpost=15kPaと、プレ補液に対応した場合のΔpre=25kPaとの差は10kPaとなり、これは上述した差圧Δ1と差圧Δ3との差や、差圧Δ2と差圧Δ4との差よりも大きくなる。
そのうえで、ΔpostとΔpreとの中間値である20kPaを第3閾値として使用すればよい。このときポスト補液に対応したΔpostは上記第3閾値よりも低くなり、プレ補液に対応したΔpreは上記第3閾値よりも高くなることとなる。
第3閾値は、上記ΔpostとΔpreとの差が10kPaあることから、上述した第1閾値や第2閾値よりも、測定誤差の許容範囲が広がることとなり、より確実に接続チェックを行うことが可能となる。
【0048】
以下、実際に第3閾値を用いた接続チェック方法について説明する。
まず図2図3に示すポスト補液に対応して補液通路27Aをポスト補液用コネクタC2に接続した場合について説明する。
図2に示すように透析液を逆方向に流通させた状態で、上記供給側圧力センサS3と回収側圧力センサS4とによって差圧Δ1を測定し、さらに図3に示すように透析液を順方向に流通させた状態で差圧Δ2を測定する。
そして差圧Δ2を測定したら、制御手段5は上記差圧Δ1と差圧Δ2との差Δpostを算出するとともに、当該差Δpostを第3閾値と比較し、当該Δpostが第3閾値よりも低い場合には、制御手段5は補液通路27Aがポスト補液に対応して接続されていると判定することができる。
【0049】
逆に、図4図5に示すプレ補液に対応して補液通路27Aをプレ補液用コネクタC1に接続した場合も、同様に判定をすることができる。
図4に示すように透析液を逆方向に流通させた状態で、上記供給側圧力センサS3と回収側圧力センサS4とによって差圧Δ3を測定し、さらに図5に示すように透析液を順方向に流通させた状態で差圧Δ4を測定する。
そして差圧Δ4を測定したら、制御手段5は上記差圧Δ3と差圧Δ4との差Δpreを算出するとともに、当該差Δpreを第3閾値と比較し、当該Δpreが第3閾値を超えている場合、制御手段5は補液通路27Aがプレ補液に対応して接続されていると判定することができる。
【0050】
なお上記実施形態では、給液手段によって給液された清浄水に、透析原液供給手段から透析原液を追加して供給することで透析液を調製する、いわゆる個人用透析装置1について説明したが、上記給液手段によってあらかじめ調製された透析液を供給する、いわゆるコンソール型の透析装置1であってもよい。
なお、上記実施形態ではプライミング動作と並行して補液通路27Aの接続チェックを判定するため、動脈側通路21および静脈側通路22の双方を透析液で満たすために図2図3(または図4図5)に示す作業を行う必要がある。
しかしながら、プライミング動作が完了してから、上記判定動作を行うようにすれば、図2または図3のいずれか一方(または図4図5のいずれか一方)の動作で判定を行うことが可能である。
つまり、例えば図2に示す透析液を逆方向に流通させた状態における、供給側圧力センサS3と回収側圧力センサS4とが測定した圧力の差圧Δ1について、予め設定した所要の閾値を用いれば、図2に示す動作だけで判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 透析装置 2 透析器
3 血液回路 4 透析液回路
21 動脈側通路 22 静脈側通路
24A 第1プライミング用配管(接続通路) 24B 接続通路
25 第2プライミング用配管(接続通路) 27A、B 補液通路
54 透析液供給通路 55 透析液回収通路
65 透析液ポンプ(送液手段) C1 プレ補液用コネクタ
C2 ポスト補液用コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5