(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035700
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01N27/327 353Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140321
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 凱
(57)【要約】
【課題】端子がセンサの接触面から受ける垂直抗力をする。
【解決手段】センサが挿入される挿入口とセンサと接触する複数の端子とを備え、センサの挿入完了までの間、端子はセンサの接触面の上を摺動し、センサが挿入口に挿入された状態でセンサに付着された液体試料が含有する測定対象成分を測定する測定装置であって、センサの接触面には、挿入方向の後端側に位置する第一電極群と、より先端側に位置する第二電極群とが設けられ、複数の端子は、挿入領域の挿入により接触面から垂直抗力を受けるとともに、挿入口に近い側において第一電極群と接触する第一端子群と、挿入口から遠い側において第二電極群と接触する第二端子群と、を含み、センサが挿入口に挿入された状態で、第一端子群が接触面から受ける垂直抗力の総和は、第二端子群が接触面から受ける垂直抗力の総和よりも小さい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサが挿入される挿入口と、前記挿入口の内部で前記センサと接触する複数の端子と、を備え、前記センサの挿入開始から挿入完了までの間、前記端子は前記センサが該端子と相対する接触面の上を摺動し、前記センサが前記挿入口に挿入された状態で、前記センサに付着された液体試料が含有する測定対象成分を測定する測定装置であって、
前記センサのうち、前記挿入口の内部に挿入される部分である挿入領域において前記端子と接触する前記接触面には、挿入方向の後端側に位置する第一電極群と、前記第一電極群よりも先端側に位置する第二電極群とが設けられ、
前記複数の端子は、前記接触面を押圧することで該接触面から垂直抗力を受けるとともに、前記挿入口に近い側において前記第一電極群と接触する第一端子群と、前記挿入口から遠い側において前記第二電極群と接触する第二端子群と、を含み、
前記センサが前記挿入口に挿入された状態で、前記第一端子群が前記接触面から受ける垂直抗力の総和は、前記第二端子群が前記接触面から受ける垂直抗力の総和よりも小さい、
測定装置。
【請求項2】
前記第一端子群の端子の各々について前記挿入領域の挿入により生ずる撓み量は、前記第二端子群の端子の各々について前記挿入領域の挿入により生ずる撓み量よりも小さい、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記複数の端子の各々は、
取付基部と、
前記取付基部から前記挿入口の方向へ延伸する延伸部と、
前記延伸部の先端側で前記接触面の位置する方向へ屈曲して該接触面と接触する接触部と、
を有し、
前記第二端子群の端子の前記延伸部は、前記第一端子群の端子の前記延伸部より前記接触面の位置する側の近くに位置している、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第二端子群の端子の一部の接触部は二股に分かれている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサが挿入された状態で、このセンサに付着させた液体試料が含有する測定対象成分を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスポーザブルタイプのセンサと自己血糖測定装置(以下、測定装置)とを利用した血糖測定システムが広く利用されている。このようなシステムでは、測定装置内にセンサが挿入されて、両者は電気的に接続される。このような接続の具体例として、下記特許文献1に記載の技術のように、センサの測定用電極から連続して延びる導電性の端子部分に、測定装置のコネクタの揺動側端子を接触することで電気的に接続されるものが挙げられる。
【0003】
近年、1つのセンサで血糖だけではなく、ヘマトクリットのような第2、第3の情報を得ることが求められている。このため、センサにおいて導電性の端子部分の数を多くするニーズがある。そこで、下記特許文献2に記載の技術のように、センサの挿入方向に延びる第1の導電部群(コネクタ内部揺動側金属端子群)と、センサの挿入方向と交わる方向に伸びる第2の導電部群(コネクタ群)を備えた測定装置が提案されている。また、下記特許文献3に記載の技術のように、長手方向に2列の導電部群を備えた測定装置及びそれに対応するテストストリップが提案されている。
【0004】
一方、測定装置と試験片との摩擦を低減する技術として、下記特許文献4に記載されているように、コネクタのアーム部の形状を工夫した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2004/112200 A1
【特許文献2】特開2019-215343号公報
【特許文献3】US 2018/0172616 A1
【特許文献4】WO 2007/121966 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような先行技術においては、センサを測定装置に挿入する際、挿入開始位置から挿入完了位置に至るまでに、測定装置側に設けられた端子と、センサ表面との間に摩擦が不可避的に生ずる。この摩擦によってセンサ表面の配線や、端子表面のメッキが損傷を受けることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、センサが挿入される挿入口と、挿入口の内部でセンサと接触する複数の端子と、を備え、センサの挿入開始から挿入完了までの間、端子は前記センサが端子と相対する接触面の上を摺動し、センサが挿入口に挿入された状態で、センサに付着された液体試料が含有する測定対象成分を測定する測定装置であって、センサのうち、挿入口の内部に挿入される部分である挿入領域において端子と接触する接触面には、挿入方向の後端側に位置する第一電極群と、第一電極群よりも先端側に位置する第二電極群とが設けられ、複数の端子は、接触面を押圧することで接触面から垂直抗力を受けるとともに、挿入口に近い側において第一電極群と接触する第一端子群と、挿入口から遠い側において第二電極群と接触する第二端子群と、を含み、前記センサが前記挿入口に挿入された状態で、第一端子群が接触面から受ける垂直抗力の総和は、第二端子群が接触面から受ける垂直抗力の総和よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本願の実施態様によれば、端子がセンサの接触面から受ける垂直抗力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の測定装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】センサの概略構成を模式的に示す平面図(A)及びIIの方向から見た上流部分の断面図(B)である。
【
図3】測定装置の挿入口の内部における端子の形状の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図3の端子の形状の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図3の端子の形状の概略構成を模式的に示す平面図である。
【
図6】測定装置にセンサが挿入され始めた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図7】測定装置にセンサが挿入され終わった状態を模式的に示す斜視図である。
【
図9】センサと第一端子群との接触状態を模式的に示す平面図である。
【
図10】センサと第二端子群との接触状態を模式的に示す平面図である。
【
図11】端子がセンサの接触面から受ける垂直抗力とセンサに生ずる重力との関係を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。さらに、下記で言及した各電極の機能についてはあくまで一例であって、本発明の構成はそれに限定されるものではない。
【0011】
以下の説明では、センサに点着された液体試料が流路内で流動する方向に沿って、「上流側」及び「下流側」を定義している。
【0012】
本実施形態の測定装置は、センサが挿入される挿入口と、挿入口の内部でセンサと接触する複数の端子と、を備え、センサの挿入開始から挿入完了までの間、端子はセンサが端子と相対する接触面の上を摺動し、センサが挿入口に挿入された状態で、センサに付着された液体試料が含有する測定対象成分を測定する。
【0013】
液体試料とは、測定装置による測定に供される液体状の試料であって、たとえば、生体から採取される体液であって、具体的には、血液及び尿がその例として挙げられる。測定対象成分とは、液体試料に含有され、測定装置によって定量的または定性的に測定可能な成分である。液体試料が血液の場合、測定対象成分としては、血糖、ヘモグロビン又はHbA1c等が挙げられる。液体試料が尿の場合、測定対象成分としては、尿糖、ビリルビン又は尿蛋白等が挙げられる。以下、液体試料としての血液について、測定対象成分として血糖値を測定する例について述べる。
【0014】
ここで、センサのうち、前記挿入口の内部に挿入される部分である挿入領域において端子と接触する接触面には、挿入方向の後端側に位置する第一電極群と、第一電極群よりも先端側に位置する第二電極群とが設けられている。
【0015】
換言すると、センサを測定装置へ挿入する側から見れば、第一電極群はセンサの手前側に位置し、第二電極群はセンサの奥側に位置する。第一電極群及び第二電極群は、センサの接触面に形成された基板上に、金属材料又は炭素材料で形成された電極層として形成することができる。ここで、第一電極群と第二電極群とは、それぞれ異なる目的で使用されるものであって、互いに絶縁されていることが望ましい。
【0016】
また、測定装置において、複数の端子は、センサの挿入領域の挿入で生ずる応力、たとえば弾性変形により前記接触面を押圧することで該接触面から垂直抗力を受ける。さらに、複数の端子は、挿入口に近い側において第一電極群と接触する第一端子群と、挿入口から遠い側において第二電極群と接触する第二端子群と、を含む。加えて、センサが挿入口に挿入された状態で、第一端子群がセンサの接触面から受ける垂直抗力の総和は、第二端子群がセンサの接触面から受ける垂直抗力の総和よりも小さい。
【0017】
複数の端子はそれぞれ、銅、黄銅、リン青銅、鉄若しくはステンレス鋼のような金属材料、又は炭素材料のような導電材料により形成することができ、さらに、ニッケルメッキ、スズメッキ、クロムメッキ、パラジウムメッキ又は金メッキ等の表面処理が施される。
【0018】
複数の端子はそれぞれ、センサが挿入されると、センサが挿入されていない状態に比べ、センサの厚みの分だけ弾性変形のような応力を被る。この応力の復元力によって、端子はセンサの接触面を押圧し、この反力として接触面から垂直抗力を受ける。
【0019】
センサが測定装置に挿入された状態で、第一端子群は第一電極群と接触し、第二端子群は第二電極群と接触する。センサの挿入が開始されると、第一端子群がまずセンサの先端に接触する。さらにセンサの接触面が第一端子群と摺動しながら、センサは挿入口の奥へ挿入されていく。そして、センサの挿入が完了する間際になって初めて、第二端子群がセンサの先端に接触することになる。よって、第一端子群がセンサの接触面上で移動する距離は、第二端子群がセンサの接触面上で移動する距離よりも長くなっている。
【0020】
したがって、センサの接触面上でより長い距離を移動する第一端子群と、センサの接触面との間で生ずる損傷を低減させるため、第一端子群がセンサの接触面から受ける垂直抗力の総和を、第二端子群がセンサの接触面から受ける垂直抗力の総和よりも小さくしている。
【0021】
なお、上記した第一端子群及び第二端子群が受ける垂直抗力の相違についての構成は、たとえば、第一端子群の端子の各々について挿入領域の挿入により生ずる撓み量を、第二端子群の端子の各々について挿入領域の挿入により生ずる撓み量よりも小さくすることで実現することができる。
【0022】
さらに、複数の端子の各々は、取付基部と、取付基部から挿入口の方向へ延伸する延伸部と、延伸部の先端側で接触面の位置する方向へ屈曲して接触面と接触する接触部と、を有する構成として、第二端子群の端子の延伸部は、第一端子群の端子の延伸部より接触面の位置する側の近くに位置しているように構成することが望ましい。この構成により、上記したような、第一端子群の撓み量を、第二端子群の撓み量より小さくする構成を実現しやすくすることができる。
【0023】
さらに、前記第二端子群の端子の一部は二股に分かれている構成とすることが望ましい。このような構成とすることで、第二端子群の個々の接触部に生ずる垂直抗力を低減させつつ、第二端子群に生ずる垂直抗力の総和を大きくすることが可能となる。
【0024】
図1は、本実施形態に係る測定装置1の外観を示す斜視図である。本実施形態は、一例として、測定装置1を、携帯型の血糖値計とした場合の例である。
図1において、測定装置1としての携帯型の血糖値計と、この測定装置1に着脱可能に構成されたセンサ2とが設けられている。センサ2は、本開示の試験用具の一例である。このセンサ2には、後述の流路2a内に液体試料(たとえば、患者の血液)が導入されるように流路2aの導入口としての試料供給口2dと、液体試料が導入されたことによる流路2a内の空気を排出するための空気孔2eが形成されており、液体試料中の測定対象成分(たとえば、血糖)を検出するための機能を有するように構成されている。
図1に示す測定装置1は、センサ2を装着した状態で、たとえば、液体試料が患者の血液の場合、携帯型の血糖測定器又は血糖自己測定メータなどの血糖値計として使用することができる。
【0025】
また、測定装置1は、本体1aを備えており、この本体1aには、短冊状のセンサ2を挿入するための挿入口1bが設けられている。また、本体1aには、センサ2に所定の電圧信号を供給し、センサ2から測定結果を示す電流信号を受け取ってA/D変換する電圧印加器(図示せず)が設けられている。また、本体1aには、たとえばマイクロプロセッサにて構成されるとともに、測定装置1の各部の制御を行う制御部(図示せず)が設けられている。制御部は、センサ2に対して、所定の電圧信号を電圧印加器から供給させるとともに、電圧信号の供給に応じたセンサ2からの電流値に基づいて、測定値を示す測定データを生成する。測定部で得られた測定データは記録部(図示せず)に記録される。制御部で得られた測定データは、測定時間又は患者IDなどと関連付けて、記録部に記録されるようになっている。
【0026】
また、本体1aには、測定データを表示する表示画面1cと、外部機器とデータ通信するためのコネクタ1dとが設けられている。このコネクタ1dは、外部機器としてのスマートフォンなどの携帯機器又はパーソナルコンピュータなどとの間で、測定データ、測定時間、患者IDなどのデータを送受信するようになっている。すなわち、測定装置1では、コネクタ1dを介在させて、外部機器に測定データ又は測定時間を転送したり、外部機器から患者ID等を受信して測定データなどと関連付けたりすることができるように構成されている。
【0027】
なお、上記の説明以外に、たとえば上記制御部をセンサ2の端部に設けて、センサ2の側で測定データを生成する構成でもよい。また、測定装置1の本体1aにおいて、患者などのユーザがデータを入力するためのボタン、タッチパネル等の入力部を含むユーザインタフェースを備えてもよい。また、表示画面1c又は記録部などを本体1aに設けずに、本体1aと接続可能な外部装置に設ける構成であってもよい。
【0028】
図2は、本実施形態の測定装置1で使用されるセンサ2を模式的に示す平面図(A)及びIIの方向から見た上流部分の断面図(B)である。なお、図中において、上側が上流側であり、下側が下流側である。センサ2においては、たとえば、合成樹脂(プラスチック)を用いて形成された基板2h上に、たとえば、金(Au)のような金属材料、又はカーボンのような炭素材料を用いて形成された電極層が形成される。電極層の上に、被覆領域として矩形状の切抜部を有するスペーサ2i、さらにその上に空気孔2eが形成された合成樹脂製のカバー2jが積層される。基板2h、スペーサ2i、及びカバー2jの積層により、スペーサ2iの切抜部によって形成された試料供給口2dを有する空間が形成され、この空間が流路2aとなる。空気孔2eは流路2aの下流端付近に形成されている。センサ2の下流端付近は、カバー2jで覆われずに電極が露出した領域となっていて、上流側の第一測定領域2bと、下流側の第二測定領域2cとに截然と分割されている。また、センサ2の下流端側の、測定装置1の挿入口1bに挿入される領域が挿入領域2fであり、第一測定領域2b及び第二測定領域2cに加えカバー2jの下端部分までも含んでいる。
【0029】
本実施形態において、電極層は、第一電極群10としての第一測定電極11、第二測定電極12、第三測定電極13、第四測定電極14及び第五測定電極15、並びに第二電極群20としての第一参照電極21、第二参照電極22及び第三参照電極23として形成される。
【0030】
第一電極群10は、液体試料が含有する測定対象成分の測定に用いられる電極である。第一電極群10の各電極は、第一測定領域2bにおいて、長手方向に平行に配され、
図2中の左から、第四測定電極14、第二測定電極12、第五測定電極15、第一測定電極11及び第三測定電極13となっている。なお、第四測定電極14、第五測定電極15及び第三測定電極13はいずれも第一測定領域2bの下流端まで達しているが、第二測定電極12及び第一測定電極11は第一測定領域2bの下流端の手前で止まっている。
【0031】
第一電極群10の各電極は、カバー2jの下でセンサ2の上流端側の流路2a内まで延伸し、流路2aの長手方向と直交する方向にそれぞれが平行して流路2a内に露出している。すなわち、流路2a内には、上流側から、第三点着端13a、第四点着端14a、第一点着端11a、第二点着端12a及び第五点着端15aが平行して配されており、これらはそれぞれ、第三測定電極13、第四測定電極14、第一測定電極11、第二測定電極12及び第五測定電極15の上流端である。なお、隣接する各電極間は絶縁されている。たとえば、物理蒸着によって形成された金属材料によって電極層が形成されている場合には、レーザ光で所定の電極パターンを描くこと(以下、「トリミング」という。)により各電極間が絶縁されている。また、炭素材料を用いて形成された電極層の場合では所定の間隔を空けてそれぞれの電極が形成される。
【0032】
第一測定領域2bの下流側には、第一測定領域2bとトリミングによって絶縁された第二測定領域2cが設けられている。第二測定領域2cには、電極層と同じく導電性材料によって第二電極群20が形成される。第二電極群20は、測定対象成分の測定には直接関与しないが、センサ2のロット若しくは個体識別、センサ2の挿入検知又は品質管理等の周辺情報の取得に用いられる電極である。
【0033】
第二電極群20には、レーザ光でトリミングされた切断線25によって、
図2中において、右側の第一参照電極21、左側の第二参照電極22及び中央の略矩形状の第三参照電極23の3つの領域に画されている。ただし、第一参照電極21と第二参照電極22とは、第三参照電極23の下流側では切断線25で隔てられ直接は導通していないものの上流側では導通している。また、第二参照電極22と第三参照電極23とは、第三参照電極23の下流縁左側で導通している。第一参照電極21と第三参照電極23とは、切断線25で隔てられ直接は導通していない。
【0034】
図3は、測定装置1の挿入口1bの内部における端子の形状の概略構成を示す斜視図である。また、
図4は、
図3の端子の形状の概略構成を模式的に示す側面図である。測定装置1の内部には、挿入口1bから挿入されるセンサ2を支持するセンサ支持台1eが設けられている。そして、このセンサ支持台1eの上方に、測定装置1の奥側に取付基部50(
図4参照)を有するとともに、挿入口1bに向かって延設される複数の端子が位置している。複数の端子のうち、より挿入口1bの近くまで先端が延伸しているのが第一端子群30である。また、複数の端子のうち、先端がより挿入口1bから遠くに位置しているのが第二端子群40である。換言すると、挿入口1bから第二端子群40までの距離は、挿入口1bから第一端子群30までの距離よりも長い。
【0035】
図4に示すように、第一端子群30及び第二端子群40のいずれも、取付基部50と、取付基部50からセンサ支持台1eに向かって90°屈曲した屈曲部51と、屈曲部51の下端から、センサ支持台1eとの間で距離を保ちつつ挿入口1bに向かって延伸する延伸部52と、延伸部52の先端で、センサ支持台に向かって略V字状に屈曲する接触部53とで構成される。第一端子群30及び第二端子群40のいずれも、センサ2が挿入されていない状態では、接触部53とセンサ支持台1eとの間には、センサ2の厚みに満たない距離の間隙が保たれている。また、第二端子群40の端子の延伸部52は、第一端子群30の端子の延伸部52よりもセンサ支持台1eの近くに位置している。さらに、第一端子群30の接触部53とセンサ支持台1eとの間の間隙Δ
1、及び、第二端子群40の接触部53とセンサ支持台1eとの間の間隙Δ
2はいずれも、センサ2の第一測定領域2b及び第二測定領域2cの厚さT(
図8参照)よりも短く、かつ、間隙Δ
1は間隙Δ
2よりも長い。
【0036】
図5は、
図3の端子の形状の概略構成を模式的に示す平面図である。図中、上方は挿入口1bの側を示す。第一端子群30は、図中左から、第四測定端子34、第二測定端子32、第五測定端子35、第一測定端子31及び第三測定端子33となっていて、それぞれ、
図2に示す第四測定電極14、第二測定電極12、第五測定電極15、第一測定電極11及び第三測定電極13と接触することとなっている。第一測定端子31及び第二測定端子32の先端は、第三測定端子33、第四測定端子34及び第五測定端子35の先端よりも、より挿入口1bの側に位置している。
【0037】
一方、第二端子群40は、図中左から、第二参照端子42、第三参照端子43及び第一参照端子41となっていて、それぞれ、
図2に示す第二参照電極22、第三参照電極23及び第一参照電極21と接触することとなっている。第三参照端子43の先端は、第一参照端子41及び第二参照端子42の先端よりも、より挿入口1bの側に位置している。また、第二端子群40のうち、第一参照端子41及び第二参照端子42の先端は二股に分かれている。
【0038】
図5の図面下方に位置する取付基部50の位置では、図中左から、第一端子群30のうちの第四測定端子34、第二測定端子32及び第五測定端子35、次いで第二端子群40のうちの第二参照端子42、第三参照端子43及び第一参照端子41、さらに第一端子群30のうちの第一測定端子31及び第三測定端子33の順に配列されている。そして、第一端子群30のうちの第四測定端子34、第二測定端子32及び第五測定端子35は、左寄りの位置から中心に寄りつつ、挿入口1bの方へ延伸する。一方、第一端子群30のうちの第一測定端子31及び第三測定端子33は、右寄りの位置から中心に寄りつつ、挿入口1bの方へ延伸する。第二端子群40の3本はいずれも、真っ直ぐに挿入口1bの方へ延伸する。
【0039】
図6は、測定装置1にセンサ2が挿入され始めた状態を模式的に示す斜視図である。センサ2が測定装置1に挿入され始めると、接触面2g上の電極のうち、第二電極群20がまず挿入口1bの内部に挿入される。そして、挿入口1bに近い側に位置する第一端子群30を上方へ弾性変形で撓ませながら、第一端子群30とセンサ支持台1eとの間にセンサ2の先端が進入する。さらにセンサ2を挿入していくと、第一電極群10が挿入口1bの内部に進入する。そして、挿入口1bから遠い側に位置する第二端子群40を上方へ弾性変形で撓ませながら、第二端子群40とセンサ支持台1eとの間にセンサ2の先端が進入する。この状態で、
図7の斜視図及び
図8の側面図に示すように、第一端子群30が第一電極群10と接触し、同時に、第二端子群40が第二電極群20と接触したところで、センサ2の挿入口1bへの挿入は完了する。
【0040】
ここで、第一端子群30のうち最も挿入口1bに近い端子(すなわち、第一測定端子31及び第二測定端子32、
図5参照)が接触面2g上を摺動する距離D
1は、第二端子群40のうち最も挿入口1bから遠い端子(すなわち、第一参照端子41及び第二参照端子42、
図5参照)が接触面2g上を摺動する距離D
2よりも長い。そして、第一端子群30の接触部53を、センサ2が撓ませる距離、換言すると第一端子群30の撓み量(T-Δ
1)は、第二端子群40の撓み量(T-Δ
2)よりも小さい。
【0041】
図7及び
図8に示す、センサ2の挿入が完了した状態を、
図9及び
図10の平面図に示す。ただし、
図9では第二端子群40が省略され、
図10では第一端子群30が省略されている。センサ2が測定装置1に挿入された状態では、
図9に示すように、第一測定端子31は第一測定電極11に接触し、第二測定端子32は第二測定電極12に接触し、第三測定端子33は第三測定電極13に接触し、第四測定端子34は第四測定電極14に接触し、第五測定端子35は第五測定電極15に接触する。同時に、
図10に示すように、第一参照端子41は第一参照電極21に接触し、第二参照端子42は第二参照電極22に接触し、第三参照端子43は第三参照電極23に接触する。
【0042】
センサ2が挿入された測定装置1によって、液体試料としての血液が含有する測定対象成分(たとえば、血糖)が測定可能となる。ここで、具体的な測定対象成分の測定に関与する第一電極群10のうちの上流側のいずれか(たとえば、第一点着端11a)の上に、測定対象成分と反応する試薬を塗布しておいて、液体試料によりこの試料が溶解されて測定対象成分と反応することにより生ずる電位差を第一端子群30を通じて検知することによって測定対象成分の含有量を測定することが可能となる。本実施形態の例でいえば、センサ2の試料供給口2dに血液を点着させると、上流側から第三点着端13a、第四点着端14a、第一点着端11a、第二点着端12a及び第五点着端15aを浸漬しつつ、毛細管力によって流路2aを下流に向かって流れる。この間、たとえば、第一測定電極11及び第二測定電極12によって血糖値(すなわち、グルコース濃度)が測定され、流路2aにおいてその上流側に位置する第三測定電極13及び第四測定電極14によって血液のその他の指標(たとえば、ヘマトクリット値)が測定され、流路2aにおいて最も下流側に位置する第五測定電極15を用いて血液の流路2aへの点着量が十分であるかが検出される。一方、第二電極群20は、測定対象成分の測定には直接関与しないが、センサ2の個体識別又は品質管理等の周辺情報の取得に用いられる。なお、液体試料をあらかじめ点着させておいたセンサ2を測定装置1に挿入することとしてもよい。
【0043】
ここで、
図4に示すように、第一端子群30及び第二端子群40の各電極は、取付基部50を支点とする片持ち梁とみなすことができる。そして、各電極の長さをL、縦弾性係数をE、断面二次モーメントをI、接触部53に加えられる力をPとすると、接触部53の撓み量δは下記式(1)にて与えられる。
【0044】
δ=(PL3)/(3EI) ・・・(1)
【0045】
上記式(1)をPについて変形すると、下記式(2)が導出される。
【0046】
P=(3EI/L3)・δ ・・・(2)
【0047】
すなわち、同じ電極においては、力Pは撓み量δに比例することになる。ここで、
図4に示す状態から、センサ2が挿入されて
図8に示すように各電極が上方に距離δだけ撓まされたときに、各電極の接触部53は、センサ2の接触面2gから、上記式(2)で求められる力Pの垂直抗力を受けることになる。
【0048】
ここで、各電極の材質及び断面積が同一であると仮定すれば、第一端子群30の撓み量(T-Δ1)は第二端子群40の撓み量(T-Δ2より)より小さく、さらに、第一端子群30は第二端子群40より長いので、上記式(2)より、第一端子群30に生ずる垂直抗力は、第二端子群40に生ずる垂直抗力よりも小さくなる。
【0049】
図11は、センサ2を装着した状態の測定装置1を模式的に示す。本図に示すように、第一端子群30にかかる垂直抗力の総和N
1は、第二端子群40にかかる垂直抗力の総和N
2よりも小さい。
【0050】
また、第二端子群40より小さい垂直抗力の第一端子群30は、接触面2g上で摺動する距離(D1)は第二端子群40より長い。よって、第一端子群30の摺動による、接触面2g及び接触部53の表面損傷の可能性を低減させることができる。一方、より大きい垂直抗力の第二端子群40は接触面2g上で摺動する距離(D2)はより短いので、第二端子群40の垂直抗力による表面損傷の影響はより小さい。なお、接触面2gにおいて、第一端子群30が摺動する領域の一部(たとえば、第三測定端子33、第四測定端子34及び第五測定端子35において端子が接触する部位と、第三参照端子43において端子が接触する部位との間の表面)を摩擦力を低減させる物質(たとえば、潤滑オイル)でコーティングしたり、あるいは、表面粗さを低減させる表面処理を施したりすることで、第一端子群30と接触面との摩擦力を低減させ表面損傷を低減させることが望ましい。
【0051】
なお、
図4及び
図8に示すように、接触面2gとの摺動距離がより長い第一端子群30が上段に配置され、接触面2gとの摺動距離がより短い第二端子群40が下段に配置されているので、第一端子群30のバネ弾性係数を第二端子群40のバネ弾性係数より低くしやすくできる。この構成も、第一端子群30にかかる垂直抗力を第二端子群40に係る垂直抗力より小さくすることに寄与している。
【0052】
また、第二端子群40の一部、具体的には第一参照端子41及び第二参照端子42の接触部53は、
図5に示すように先端が二股に分かれている。これにより、接触部53の先端の個々に生ずる垂直抗力をより小さく設定しても、垂直抗力の総和を一定に設定することができる。
【0053】
なお、本開示の実施態様においては、第一端子群30のうち、最も挿入口1bに近い端子(具体的には、第一測定端子31及び第二測定端子32)に生ずる垂直抗力の総和より、第二端子群40のうち、最も挿入口1bから遠い端子(具体的には、第一参照端子41及び第二参照端子42)に生ずる垂直抗力の総和が大きいことが望ましく、後者が前者の2倍以上であることがより望ましい。
【実施例0054】
(1)実施例1
実施例1のセンサでは、
図5に示す各端子の諸元を下記表1のように設定した。なお、垂直抗力は、下記表1に掲げた撓み量だけ各端子を撓ませるのに要する力をフォースゲージ(DPX-0.5T、IMADA)を用いて測定した値を示している(以降の表においても同様)。
【0055】
【0056】
なお、上記表1中の第一参照端子及び第二参照端子の数値は、各々二股となっている先端のそれぞれについてのものである。上記表1より、第一端子群の垂直抗力の総和は1.0N(=0.2N×5)となり、第二端子群の垂直抗力の総和は1.8N(=0.2N+0.4N×4)となった。よって、第一端子群の垂直抗力の総和は、第二端子群の垂直抗力の総和よりも小さい。
【0057】
また、センサの質量は0.1gであるから、センサにかかる重力Gは9.8×10-4Nとなる。ここで、接触面の静止摩擦係数をμ′とすると、第一端子群の垂直抗力の総和は上記したように1.0Nなので、第一端子群と接触面との間に生ずる静止摩擦力F1は1.0μ′(N)となる。同様に、第二端子群の垂直抗力総和は上記したように1.8Nなので、第二端子群と接触面との間に生ずる静止摩擦力F2は1.8μ′(N)となる。そして、この静止摩擦係数μ′は、F1<G、かつ、F2>Gとなるように設定すること、換言すると下記式(3)の数値範囲に設定することが望ましい。
【0058】
5.4×10-4<μ′<9.8×10-4 ・・・(3)
【0059】
(2)実施例2
実施例1のセンサでは、
図5に示す各端子の諸元を下記表2のように設定した。
【0060】
【0061】
本実施例では、最も挿入口に近く、接触面上の移動距離が最も長い端子(すなわち、第一測定端子及び第二測定端子)の垂直抗力の総和(0.2N×2=0.4N)より、最も挿入口から遠く、接触面上の移動距離が最も短い端子(すなわち、第一参照端子及び第二参照端子)の垂直抗力の総和(0.8N×4=3.2N)の方が大きく、具体的には2倍以上である。
【0062】
(3)実施例3
最も単純には、第一端子群を、接触面上の移動距離が等しい4本とし、第二端子群も、接触面上の移動距離が等しい4本として、下記表3に示す諸元に設定することもできる。
【0063】
【0064】
すなわち、本実施例では、第二端子群の垂直抗力の総和(0.6N×4=2.4N)は、第一端子群の垂直抗力の総和(0.3N×4=1.2N)の2倍となっている。