(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035715
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】工業炉の加熱構造
(51)【国際特許分類】
F27D 7/02 20060101AFI20240307BHJP
F27D 11/00 20060101ALI20240307BHJP
F27B 5/14 20060101ALI20240307BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240307BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F27D7/02 A
F27D11/00
F27B5/14
F27D17/00 101A
F27B17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140352
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】龍頭 昭廣
(72)【発明者】
【氏名】三河 直矢
(72)【発明者】
【氏名】塚本 輝
【テーマコード(参考)】
4K056
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056BA02
4K056BB01
4K056BB05
4K056CA02
4K056CA04
4K056DA02
4K056DA27
4K056DA36
4K056DC17
4K056FA02
4K061AA05
4K061BA02
4K061DA03
4K061DA05
4K061GA02
4K063AA05
4K063AA12
4K063AA13
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA01
(57)【要約】
【課題】加熱効率に優れ、ファンの寿命も長い工業炉の加熱構造を提供する。
【解決手段】排気通路51に設けられるとともにエアブロア60から送風される常温空気がエアヒータ11とバーナ21に到達する前に取り込まれ、炉体10からの排熱によって常温空気を予熱するレキュペレータ50を備え、低出力時には第一開閉弁12を開放しかつ第二開閉弁22及び第三開閉弁25を閉じてエアヒータ11から送風される空気で被加熱材Tを加熱し、高出力時には第一開閉弁12,第二開閉弁22及び第三開閉弁25を開放してバーナ21による加熱を追加した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体の内部に空気を循環させて被加熱材を加熱処理する工業炉であって、
前記炉体の側面外部に設けられ、前記空気を加熱して前記炉体の内部に送風するエアヒータと、
前記炉体の側面に設けられ、前記空気を加熱するバーナと、
常温空気を取り込み前記エアヒータと前記バーナに送風するエアブロアと、
前記炉体の外部に設けられた排気搭と前記炉体を接続する排気通路と、
前記排気通路に設けられるとともに前記エアブロアから送風される常温空気が前記エアヒータと前記バーナに到達する前に取り込まれ、前記炉体からの排熱によって前記常温空気を予熱するレキュペレータと、
前記レキュペレータと前記エアヒータとの間に設けられた第一開閉弁と、
前記レキュペレータと前記バーナとの間に設けられた第二開閉弁と、
前記バーナにガス燃料が送られる経路に設けられた第三開閉弁と、を備え、
低出力時には前記第一開閉弁を開放しかつ前記第二開閉弁及び前記第三開閉弁を閉じて前記エアヒータから送風される空気で前記被加熱材を加熱し、高出力時には前記第一開閉弁,前記第二開閉弁及び前記第三開閉弁を開放して前記バーナによる加熱を追加したことを特徴とする工業炉の加熱構造。
【請求項2】
炉体の内部に空気を循環させて被加熱材を加熱処理する工業炉であって、
前記炉体の側面外部に設けられ、前記空気を加熱して前記炉体の内部に送風するエアヒータと、
常温空気を取り込み前記エアヒータと前記バーナに送風するエアブロアと、
前記炉体の外部に設けられた排気搭と前記炉体を接続する排気通路と、
前記排気通路に設けられるとともに前記エアブロアから送風される常温空気が前記エアヒータに到達する前に取り込まれ、前記炉体からの排熱によって前記常温空気を予熱するレキュペレータと、を備えることを特徴とする工業炉の加熱構造。
【請求項3】
前記炉内の温度を計測する温度計と、前記温度計の温度を目標設定値に近づけるように前記エアヒータを制御する温度調節器を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の工業炉の加熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属や非鉄金属を加熱処理するために使用される工業炉の加熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や非鉄金属を加熱処理する炉として、電気を熱源として利用した電気炉が存在する(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に示す電気炉は、炉体の外部に冷却ファンを設け、この冷却ファンに、外気を炉体の内部に供給して炉体内部の加熱空気を外部に放散させるという冷却機能を持たせている。
【0003】
また、こうした従来の電気炉としては、例えば、
図4と
図5に示すものが知られている。
図4に示す電気炉は、炉体30の内部の左右それぞれに金属ヒータ31を設けるとともに、炉体30の上部中央に回転ファン32を設け、これらの金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、回転ファン32でその加熱した空気を対流させることによって被加熱材Tを加熱している。
【0004】
また、
図5に示す電気炉は、炉体40の外部にエアヒータ41を取付け、外部の空気をそのエアヒータ41を通して加熱して炉体40の内部に取り入れ、その加熱した空気で被加熱材Tを加熱している。なお、加熱された空気は、炉体40の外部に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および
図4と
図5に示す従来技術の電気炉は、いずれも電気を加熱源として利用しているので、カーボンニュートラルの観点から極めて好ましい。
【0007】
しかしながら、これら電気炉のいずれにも加熱効率のさらなる向上が求められる。すなわち、特許文献1に示す電気炉は、冷却ファンによる冷却機能を持たせているので、自ずと加熱効率が低下する。
【0008】
また、
図4に示す電気炉は、炉体30の内部の左右に設けた金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、それを回転ファン32で対流させるので、加熱された空気の攪拌効果が十分とはいえず、加熱効率に課題が残る。また、被加熱材Tには加熱された空気が常に一定の方向から作用することからも加熱効率に問題がある。これらは、特に、被加熱材Tの形状が複雑な場合に顕著である。
【0009】
また、この電気炉における回転ファン32は、高温である炉体30の内部に設けられているので、変形やインペラバランスの崩れによる振動などの損傷が発生し易く、その寿命が短いといった問題もある。
【0010】
また、
図5に示す電気炉は、炉体40の外部の空気(すなわち常温の空気)をエアヒータ41で加熱し、その加熱した空気を被加熱材Tに作用させた後、排気するので、常に常温の空気を必要な高温まで加熱する必要がある。したがって、エネルギーの損失が大きく、加熱効率が低い。
【0011】
さらに電気炉は電気を熱源とするため、高温用の熱処理炉や加熱炉などのように高出力が要求される場合には対応することが困難であるといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的とするところは、加熱効率に優れ、ファンの寿命も長い工業炉の加熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の工業炉の加熱構造は、炉体(10)の内部に空気を循環させて被加熱材(T)を加熱処理する工業炉(1)であって、
前記炉体(10)の側面外部に設けられ、前記空気を加熱して前記炉体(10)の内部に送風するエアヒータ(11)と、
前記炉体(10)の側面に設けられ、前記空気を加熱するバーナ(21)と、
常温空気を取り込み前記エアヒータ(11)と前記バーナ(21)に送風するエアブロア(60)と、
前記炉体(10)の外部に設けられた排気搭(100)と前記炉体(10)を接続する排気通路(51)と、
前記排気通路(51)に設けられるとともに前記エアブロア(60)から送風される常温空気が前記エアヒータ(11)と前記バーナ(21)に到達する前に取り込まれ、前記炉体(10)からの排熱によって前記常温空気を予熱するレキュペレータ(50)と、
前記レキュペレータ(50)と前記エアヒータ(11)との間に設けられた第一開閉弁(12)と、
前記レキュペレータ(50)と前記バーナ(21)との間に設けられた第二開閉弁(22)と、
前記バーナ(21)にガス燃料が送られる経路に設けられた第三開閉弁(25)と、を備え、
低出力時には前記第一開閉弁(12)を開放しかつ前記第二開閉弁(22)及び前記第三開閉弁(25)を閉じて前記エアヒータ(11)から送風される空気で前記被加熱材(T)を加熱し、高出力時には前記第一開閉弁(12),前記第二開閉弁(22)及び前記第三開閉弁(25)を開放して前記バーナ(21)による加熱を追加したことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、炉体(10)の内部に空気を循環させて被加熱材(T)を加熱処理する工業炉(1)であって、
前記炉体(10)の側面外部に設けられ、前記空気を加熱して前記炉体(10)の内部に送風するエアヒータ(11)と、
常温空気を取り込み前記エアヒータ(11)に送風するエアブロア(60)と、
前記炉体(10)の外部に設けられた排気搭(100)と前記炉体(10)を接続する排気通路(51)と、
前記排気通路(51)に設けられるとともに前記エアブロア(60)から送風される常温空気が前記エアヒータ(11)に到達する前に取り込まれ、前記炉体(10)からの排熱によって前記常温空気を予熱するレキュペレータ(50)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記炉内の温度を計測する温度計(71)と、前記温度計の温度を目標設定値に近づけるように前記エアヒータ(11)を制御する温度調節器(72)を備えることを特徴とする
【0016】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の工業炉によれば、低出力時にはエアヒータを使用し、高出力時にはこれにバーナによる加熱を追加して熱源をハイブリッド化したので高温用の熱処理炉や加熱炉にも適用することができる。
【0018】
また、レキュペレータを利用して炉体からの排熱によって常温空気を予熱し、その予熱した空気を、エアヒータ及びバーナに送風するようにしたので、加熱効率に優れ省エネルギー化が図れる。
さらに、送風用のエアブロアを炉体の外部に設けているので、炉体の内部に設けた場合と比較して、熱の影響による故障を軽減でき、その寿命を延ばすことができる。
【0019】
また本発明によれば、エアヒータを使用し、バーナを設けない場合であっても、常温の空気をエアヒータ用空気として送るのではなく、レキュペレータを利用して炉体からの排熱によって常温空気を予熱し、その予熱した空気を、エアヒータに送風するようにしたので、加熱効率に優れ省エネルギー化が図れる。
【0020】
また本発明によれば、炉内の温度を目標設定値に近づけるようにエアヒータを制御するようにしたので、炉内の温度の均一化が図れる。
【0021】
このように、低出力時にはエアヒータを使用し、高出力時にはこれにバーナによる加熱を追加して熱源をハイブリッド化し、さらにレキュペレータを利用した構成は、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、低出力時の状態を示したものである。
【
図2】本発明の実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、高出力時の状態を示したものである。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図である。
【
図4】従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【
図5】他の従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る工業炉1の加熱構造について説明する。
図1は低出力時のものであり、
図2は高出力時のものである。
【0024】
本実施形態に係る工業炉1の加熱構造は、エアヒータ11の電気による加熱とバーナ21の火炎による加熱を熱源としたハイブリッド型の熱源で、炉体10の内部に空気を循環させて、炉体10の内部に載置した被加熱材Tを加熱処理する。被加熱材Tは固定状態で載置しても良いし、移動(回転など)できる状態で載置しても良い。
【0025】
この工業炉1の加熱構造は、エアヒータ11,第一開閉弁12,バーナ21,第二開閉弁22,第三開閉弁25,レキュペレータ50,排気通路51,第一通路52,第二通路53,第三通路54,第四通路55,ブロア60,熱電対センサー71,温度指示調節器72を備える。
【0026】
エアヒータ11は、炉体10の側面外部(ここでは右側)に設けられ、空気を電力によって加熱して炉体10の内部に送風する。エアヒータ11にはエアブロア60から送風される常温空気の一部がエアヒータ用空気として第一開閉弁12を介して送られる。
【0027】
バーナ12は、炉体10の側面(ここでは右側)でエアヒータ11から炉内に送風される熱風の下方に火炎が噴射されるように設けられ、炉体10の内部を循環させる空気を、火力によって加熱する。バーナ12には、燃料となるガスと燃焼空気が取り込まれ、ガスは、その量を測定する流量計27と調整弁26と第三開閉弁25を介して接続され、燃焼空気は、その量を測定する流量計24と調整弁23と第二開閉弁22を介して接続されている。燃焼空気はエアブロア60から送風される常温空気で、エアヒータ用空気を除いたものが第二開閉弁22を介して送られる。
【0028】
排気通路51は、炉体10の外部に設けられた排気搭100と炉体10の下部を接続するもので、途中にレキュペレータ50が設けられている。レキュペレータ50と排気搭100の間には炉圧ダンパー56が設けられている。
レキュペレータ50には、エアブロア60から第一通路52を通して常温空気が送られ、第一通路52には、エアブロア60から送風される常温空気の量を測定する流量計63と調整弁62とエア用開閉弁61が設けられている。
また、レキュペレータ50には第二通路53が接続され、第二通路53は分岐して一方の第三通路54がエアヒータ11側に接続され、他方の第四通路55がバーナ21側(燃焼空気供給側)に接続されている。
【0029】
レキュペレータ50は、排熱回収熱交換器であり、第一通路52を通じてエアブロア60から送風される常温空気が、エアヒータ11とバーナ21に到達する前に取り込まれ、レキュペレータ50に取り込まれた常温空気が、炉体10から排気通路51を通じて送られる排熱によって予熱され、予熱された空気が、第二通路53及び第三通路54を通じてエアヒータ11にエアヒータ用空気として、第二通路53及び第四通路55を通じてバーナ21に燃焼空気としてそれぞれ送られるようになっている。
【0030】
熱電対センサー71は炉内に設けられ炉内温度を計測する温度計であり、その温度は、炉外に設けられた温度指示調節器72に送られ、温度が予め入力された目標設定値に近づけるようにエアヒータ11を制御させるようになっている。この制御は、エアヒータ11をオンオフさせる制御であってもよいし、比例的に出力を可変させるような比例制御(位相制御)であってもよく特に限定されるものではない。
【0031】
この工業炉1の加熱構造は低出力時と高出力時では使用する熱源が相違する。すなわち、低出力時には、
図1に示すように、熱源をエアヒータ11による加熱とし、高出力時には、
図2に示すように、これにバーナ21の加熱を追加する。
【0032】
(低出力時の動作)
低出力時において、工業炉1の加熱構造は次のように作動させることができる。
すなわち、この工業炉1の加熱構造は、第一開閉弁12を開放しかつ第二開閉弁22及び第三開閉弁25を閉じてエアヒータ11から送風される空気で被加熱材Tを加熱する。
このとき、エアヒータ11には、エアブロア60から常温空気がエアヒータ用空気として直接送られるのではなく、レキュペレータ50を利用して炉体10からの排熱によって常温空気を予熱し、その予熱された高温の空気が送られる。
これにより、加熱効率に優れ省エネルギー化が図れる。
【0033】
また、送風用のエアブロア60を炉体の外部に設けているので、炉体10の内部に設けた場合と比較して、熱の影響による故障を軽減でき、その寿命を延ばすことができる。
【0034】
(高出力時の動作)
次に高出力時には、工業炉1の加熱構造は次のように作動させることができる。
すなわち、第一開閉弁12の開放に加えて、第二開閉弁22及び第三開閉弁25についても開放してバーナ21による加熱を追加して、エアヒータ11から送風される空気に加えてバーナ21による火炎で被加熱材Tを加熱する。
このとき、エアヒータ11に送られるエアヒータ用空気及びバーナ21に送られる燃焼空気は、エアブロア60から直接送られる常温空気ではなく、レキュペレータ50を利用して炉体10からの排熱によって常温空気が予熱された高温の空気であるので、加熱効率に優れ省エネルギー化が図れる。
【0035】
これによれば、高出力時には、エアヒータ11による加熱にバーナ21による加熱が加わるので炉内温度を瞬時に高温にすることができ効果的である。
【0036】
なお、
図3に示すように、バーナ21の構成を省いてエアヒータ11だけで被加熱材Tを加熱処理する構成にすることもできる。
この場合も、排気経路51にレキュペレータ50が設けられ、エアブロア60から送風される常温空気がエアヒータ11に到達する前に取り込まれ、炉体10からの排熱によって常温空気を予熱し、予熱された高温の空気がエアヒータ用空気として、第二通路53を通じて送られるようになっている。
これにより、エアヒータ11だけによる加熱であっても加熱効率に優れた工業炉を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 工業炉
10 炉体
11 エアヒータ
12 第一開閉弁
21 バーナ
22 第二開閉弁
23 調整弁
24 流量計(燃焼空気用)
25 第三開閉弁
26 調整弁
27 流量計(ガス燃料用)
30 炉体
31 金属ヒータ
32 回転ファン
40 炉体
41 エアヒータ
50 レキュペレータ
51 排気通路
52 第一通路
53 第二通路
54 第三通路
55 第四通路
56 炉圧ダンパー
60 エアブロワ
61 エア用開閉弁
62 調整弁
63 流量計(常温空気用)
71 熱電対センサー(温度計)
72 温度指示調節器
100 排気搭