(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035716
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】工業炉の加熱構造
(51)【国際特許分類】
F27D 7/04 20060101AFI20240307BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240307BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240307BHJP
F27D 11/00 20060101ALI20240307BHJP
F27B 5/14 20060101ALI20240307BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F27D7/04
F27D17/00 101A
F27B17/00 B
F27D11/00
F27B5/14
F27D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140358
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】龍頭 昭廣
(72)【発明者】
【氏名】三河 直矢
(72)【発明者】
【氏名】塚本 輝
【テーマコード(参考)】
4K056
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056BA02
4K056BB06
4K056CA01
4K056DA02
4K056DA27
4K056DA36
4K056DC17
4K056FA06
4K056FA10
4K061AA05
4K061BA02
4K061DA03
4K063AA05
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA01
4K063FA01
(57)【要約】
【課題】加熱効率に優れ、ファンの寿命も長い工業炉の加熱構造を提供する。
【解決手段】低出力時には、第一開閉弁21及び第四開閉弁24の開閉状態と第二開閉弁22及び第三開閉弁23の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、空気を、送風ファン20から第一通路15を通過して第一蓄熱器13に送り、第二蓄熱器14から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第一循環経路P1と、送風ファン20から第一通路15を通過して第二蓄熱器14に送り、第一蓄熱器13から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第二循環経路P2に交互に循環させて、被加熱材Tに対して加熱された空気を左右方向から交互に送り、高出力時にはバーナを追加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体の内部に空気を循環させて被加熱材を加熱処理する工業炉であって、
前記炉体の内部の左右方向の一方側に設けられ、前記空気を加熱する第一ヒータと、
前記炉体の内部の左右方向の他方側に設けられ、前記空気を加熱する第二ヒータと、
前記炉体の外部の左右方向の一方側に、前記第一ヒータに連通して設けられた第一蓄熱器と、
前記炉体の外部の左右方向の他方側に、前記第二ヒータに連通して設けられた第二蓄熱器と、
前記炉体の外部において前記第一蓄熱器と第二蓄熱器とをそれぞれ別々に連通する第一通路および第二通路と、
前記第一通路および第二通路の双方に接続され、前記第二通路側から吸い込んだ前記空気を前記第一通路側に送風可能な一台の送風ファンと、
前記第一通路の前記送風ファンの接続位置と前記第一蓄熱器との間に設けられた第一開閉弁と、
前記第一通路の前記送風ファンの接続位置と前記第二蓄熱器との間に設けられた第二開閉弁と、
前記第二通路の前記送風ファンの接続位置と前記第一蓄熱器との間に設けられた第三開閉弁と、
前記第二通路の前記送風ファンの接続位置と前記第二蓄熱器との間に設けられた第四開閉弁と、
前記炉体の左右方向の一方側又は他方側のいずれか一つあるいは両方に設けられ、前記空気を加熱するバーナと、を備え、
低出力時には、前記バーナを止めて、前記第一開閉弁及び前記第四開閉弁の開閉状態と前記第二開閉弁及び前記第三開閉弁の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、前記空気を、前記送風ファンから前記第一通路を通過して前記第一蓄熱器に送り、前記第二蓄熱器から前記第二通路を通過して前記送風ファンに戻す第一循環経路と、前記送風ファンから前記第一通路を通過して前記第二蓄熱器に送り、前記第一蓄熱器から前記第二通路を通過して前記送風ファンに戻す第二循環経路に交互に循環させて、前記被加熱材に対して加熱された空気を左右方向から交互に送り、
高出力時には、前記バーナによる加熱を追加したことを特徴とする工業炉の加熱構造。
【請求項2】
外気を取り込んで前記第一蓄熱器と前記第二蓄熱器に送風可能なブロワと、
前記ブロワと前記第一蓄熱器との間に設けられた第五開閉弁と、
前記ブロワと前記第二蓄熱器との間に設けられた第六開閉弁と、をさらに備え、
前記バーナは、前記第一蓄熱器及び前記第二蓄熱器のうち最寄りの蓄熱器に対して前記ブロワから送風された外気を燃焼空気とし、
前記高出力時には、前記第五開閉弁及び前記第六開閉弁のうち前記バーナに対して最寄りの蓄熱器側の開閉弁を開いて前記バーナによる加熱を追加したことを特徴とする請求項1に記載の工業炉の加熱構造。
【請求項3】
前記送風ファンは、外気を取り込み送風可能で、
前記バーナは、前記第一蓄熱器及び前記第二蓄熱器のうち最寄りの蓄熱器に対して前記送風ファンから送風された外気を燃焼空気とし、
前記高出力時には、前記送風ファンは前記空気の送風に加えて外気を取り込み送風するとともに、前記第一開閉弁及び前記第二開閉弁のうち前記バーナに対して最寄りの蓄熱器側の開閉弁を開いて前記バーナによる加熱を追加した特徴とする請求項1に記載の工業炉の加熱構造。
【請求項4】
炉体の内部に空気を循環させて被加熱材を加熱処理する工業炉であって、
前記炉体の内部の左右方向の一方側に設けられ、前記空気を加熱する第一ヒータと、
前記炉体の内部の左右方向の他方側に設けられ、前記空気を加熱する第二ヒータと、
前記炉体の外部の左右方向の一方側に、前記第一ヒータに連通して設けられた第一蓄熱器と、
前記炉体の外部の左右方向の他方側に、前記第二ヒータに連通して設けられた第二蓄熱器と、
前記炉体の外部において前記第一蓄熱器と第二蓄熱器とをそれぞれ別々に連通する第一通路および第二通路と、
前記第一通路に設けられ、一方方向に前記空気を送風するとともに外気を取り込み送風可能な第一ファンと、
前記第二通路に設けられ、他方方向に前記空気を送風するとともに外気を取り込み送風可能な第二ファンと、
前記炉体の左右方向の一方側又は他方側のいずれか一つあるいは両方に設けられ、前記空気を加熱し、前記第一蓄熱器及び前記第二蓄熱器のうち最寄りの蓄熱器に対して前記第一ファン又は前記第二ファンから送風された外気を燃焼空気とするバーナと、を備え、
低出力時には、前記バーナを止めて、前記第一ファンと第二ファンを交互に一定時間回転させることで、前記空気を、前記第一通路を通過する第一循環経路と、前記第二通路を通過する第二循環経路に交互に循環させて、前記被加熱材に対して加熱された空気を左右方向から交互に送り、
高出力時には、前記第一ファン及び前記第二ファンのうち前記バーナに対して最寄りの蓄熱器側に前記空気を送風するファンから外気を送風させて前記バーナによる加熱を追加したことを特徴とする工業炉の加熱構造。
【請求項5】
前記バーナは、前記炉体の内部の左右方向の一方側又は他方側の両方に設けられ、交互に加熱するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の工業炉の加熱構造。
【請求項6】
前記炉体の外部に設けられた排気搭と前記炉体を接続する直接排気通路と、
前記直接排気通路に設けられた炉圧ダンパーと、をさらに備え、
前記高出力時には、前記炉圧ダンパーを開状態にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の工業炉の加熱構造。
【請求項7】
前記炉体の外部に設けられた排気搭と前記送風ファンを接続する間接排気通路と、
前記間接排気通路に設けられた第七開閉弁と、をさらに備え、
前記高出力時には、前記第七開閉弁を開状態にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の工業炉の加熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属や非鉄金属を加熱処理するために使用される工業炉の加熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や非鉄金属を加熱処理する炉として、電気を熱源として利用した電気炉が存在する(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に示す電気炉は、炉体の外部に冷却ファンを設け、この冷却ファンに、外気を炉体の内部に供給して炉体内部の加熱空気を外部に放散させるという冷却機能を持たせている。
【0003】
また、こうした従来の電気炉としては、例えば、
図9と
図10に示すものが知られている。
図9に示す電気炉は、炉体30の内部の左右それぞれに金属ヒータ31を設けるとともに、炉体30の上部中央に回転ファン32を設け、これらの金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、回転ファン32でその加熱した空気を対流させることによって被加熱材Tを加熱している。
【0004】
また、
図10に示す電気炉は、炉体40の外部にエアヒータ41を取付け、外部の空気をそのエアヒータ41を通して加熱して炉体40の内部に取り入れ、その加熱した空気で被加熱材Tを加熱している。なお、加熱された空気は、炉体40の外部に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および
図9と
図10に示す従来技術の電気炉は、いずれも電気を加熱源として利用しているので、カーボンニュートラルの観点から極めて好ましい。
【0007】
しかしながら、これら電気炉のいずれにも加熱効率のさらなる向上が求められる。すなわち、特許文献1に示す電気炉は、冷却ファンによる冷却機能を持たせているので、自ずと加熱効率が低下する。
【0008】
また、
図9に示す電気炉は、炉体30の内部の左右に設けた金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、それを回転ファン32で対流させるので、加熱された空気の攪拌効果が十分とはいえず、加熱効率に課題が残る。また、被加熱材Tには加熱された空気が常に一定の方向から作用することからも加熱効率に問題がある。これらは、特に、被加熱材Tの形状が複雑な場合に顕著である。
【0009】
また、この電気炉における回転ファン32は、高温である炉体30の内部に設けられているので、変形やインペラバランスの崩れによる振動などの損傷が発生し易く、その寿命が短いといった問題もある。
【0010】
また、
図10に示す電気炉は、炉体40の外部の空気(すなわち常温の空気)をエアヒータ41で加熱し、その加熱した空気を被加熱材Tに作用させた後、排気するので、常に常温の空気を必要な高温まで加熱する必要がある。したがって、エネルギーの損失が大きく、加熱効率が低い。
【0011】
さらに電気炉は電気を熱源とするため、高温用の熱処理炉や加熱炉などのように高出力が要求される場合には対応することが困難であるといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的とするところは、加熱効率に優れ、ファンの寿命も長い工業炉の加熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の工業炉の加熱構造は、炉体(10)の内部に空気を循環させて被加熱材(T)を加熱処理する工業炉(1)であって、
前記炉体(10)の内部の左右方向の一方側に設けられ、前記空気を加熱する第一ヒータ(11)と、
前記炉体(10)の内部の左右方向の他方側に設けられ、前記空気を加熱する第二ヒータ(12)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の一方側に、前記第一ヒータ(11)に連通して設けられた第一蓄熱器(13)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の他方側に、前記第二ヒータ(12)に連通して設けられた第二蓄熱器(14)と、
前記炉体(10)の外部において前記第一蓄熱器(13)と第二蓄熱器(14)とをそれぞれ別々に連通する第一通路(15)および第二通路(16)と、
前記第一通路(15)および第二通路(16)の双方に接続され、前記第二通路(16)側から吸い込んだ前記空気を前記第一通路(15)側に送風可能な一台の送風ファン(20)と、
前記第一通路(15)の前記送風ファン(20)の接続位置(X)と前記第一蓄熱器(13)との間に設けられた第一開閉弁(21)と、
前記第一通路(15)の前記送風ファン(20)の接続位置(X)と前記第二蓄熱器(14)との間に設けられた第二開閉弁(22)と、
前記第二通路(16)の前記送風ファン(20)の接続位置(Y)と前記第一蓄熱器(13)との間に設けられた第三開閉弁(23)と、
前記第二通路(16)の前記送風ファン(20)の接続位置(Y)と前記第二蓄熱器(14)との間に設けられた第四開閉弁(24)と、
前記炉体(10)の左右方向の一方側又は他方側のいずれか一つあるいは両方に設けられ、前記空気を加熱するバーナ(51,52)と、を備え、
低出力時には、前記バーナ(51,52)を止めて、前記第一開閉弁(21)及び前記第四開閉弁(24)の開閉状態と前記第二開閉弁(22)及び前記第三開閉弁(23)の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、前記空気を、前記送風ファン(20)から前記第一通路(15)を通過して前記第一蓄熱器(13)に送り、前記第二蓄熱器(14)から前記第二通路(16)を通過して前記送風ファン(20)に戻す第一循環経路(P1)と、前記送風ファン(20)から前記第一通路(15)を通過して前記第二蓄熱器(14)に送り、前記第一蓄熱器(13)から前記第二通路(16)を通過して前記送風ファン(20)に戻す第二循環経路(P2)に交互に循環させて、前記被加熱材(T)に対して加熱された空気を左右方向から交互に送り、
高出力時には、前記バーナ(51,52)による加熱を追加したことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、外気を取り込んで前記第一蓄熱器(13)と前記第二蓄熱器(14)に送風可能なブロワ(81)と、
前記ブロワ(81)と前記第一蓄熱器(13)との間に設けられた第五開閉弁(83)と、
前記ブロワ(81)と前記第二蓄熱器(14)との間に設けられた第六開閉弁(84)と、をさらに備え、
前記バーナ(51,52)は、前記第一蓄熱器(13)及び前記第二蓄熱器(14)のうち最寄りの蓄熱器(13,14)に対して前記ブロワ(81)から送風された外気を燃焼空気とし、
前記高出力時には、前記第五開閉弁(83)及び前記第六開閉弁(84)のうち前記バーナ(51,52)に対して最寄りの蓄熱器(13,14)側の開閉弁(83,84)を開いて前記バーナ(51,52)による加熱を追加したことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記送風ファン(20)は、外気を取り込み送風可能で、
前記バーナ(51,52)は、前記第一蓄熱器(13)及び前記第二蓄熱器(14)のうち最寄りの蓄熱器(13,14)に対して前記送風ファン(20)から送風された外気を燃焼空気とし、
前記高出力時には、前記送風ファン(20)は前記空気の送風に加えて外気を取り込み送風するとともに、前記第一開閉弁(21)及び前記第二開閉弁(22)のうち前記バーナ(51,52)に対して最寄りの蓄熱器側(13,14)の開閉弁(21,22)を開いて前記バーナ(51,52)による加熱を追加した特徴とする。
【0016】
また本発明は、炉体(10)の内部に空気を循環させて被加熱材(T)を加熱処理する工業炉(1)であって、
前記炉体(10)の左右方向の一方側又は他方側のいずれか一つあるいは両方に設けられ、前記空気を加熱するバーナ(51,52)と、
前記炉体(10)の内部の左右方向の一方側に設けられ、前記空気を加熱する第一ヒータ(11)と、
前記炉体(10)の内部の左右方向の他方側に設けられ、前記空気を加熱する第二ヒータ(12)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の一方側に、前記第一ヒータ(11)に連通して設けられた第一蓄熱器(13)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の他方側に、前記第二ヒータ(12)に連通して設けられた第二蓄熱器(14)と、
前記炉体(10)の外部において前記第一蓄熱器(13)と第二蓄熱器(14)とをそれぞれ別々に連通する第一通路(15)および第二通路(16)と、
前記第一通路(15)に設けられ、一方方向に前記空気を送風するとともに外気を取り込み送風可能な第一ファン(25)と、
前記第二通路(16)に設けられ、他方方向に前記空気を送風するとともに外気を取り込み送風可能な第二ファン(26)と、
前記炉体(10)の左右方向の一方側又は他方側のいずれか一つあるいは両方に設けられ、前記空気を加熱し、前記第一蓄熱器(13)及び前記第二蓄熱器(14)のうち最寄りの蓄熱器(13,14)に対して前記第一ファン(25)又は前記第二ファン(26)から送風された外気を燃焼空気とするバーナ(51,52)と、を備え、
低出力時には、前記バーナ(51,52)を止めて、前記第一ファン(25)と第二ファン(26)を交互に一定時間回転させることで、前記空気を、前記第一通路(15)を通過する第一循環経路(P1)と、前記第二通路(16)を通過する第二循環経路(P2)に交互に循環させて、前記被加熱材(T)に対して加熱された空気を左右方向から交互に送り、
高出力時には、前記第一ファン(25)及び前記第二ファン(26)のうち前記バーナ(51,52)に対して最寄りの蓄熱器(13,14)側に前記空気を送風するファン(25,26)から外気を送風させて前記バーナ(51,52)による加熱を追加したことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記バーナ(51,52)は、前記炉体の内部の左右方向の一方側又は他方側の両方に設けられ、交互に加熱するようにしたことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記炉体(10)の外部に設けられた排気搭(70)と前記炉体(10)を接続する直接排気通路(61)と、
前記直接排気通路(61)に設けられた炉圧ダンパー(63)と、をさらに備え、
前記高出力時には、前記炉圧ダンパー(63)を開状態にすることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記炉体(10)の外部に設けられた排気搭(70)と前記送風ファン(20)を接続する間接排気通路(62)と、
前記間接排気通路(62)に設けられた第七開閉弁(64)と、をさらに備え、
前記高出力時には、前記第七開閉弁(64)を開状態にすることを特徴とする。
【0020】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0021】
本発明の工業炉によれば、
低出力時には第一ヒータ及び第二ヒータを使用し、高出力時にはこれにバーナによる加熱を追加して熱源をハイブリッド化したので高温用の熱処理炉や加熱炉にも適用することができる。
【0022】
低出力時には、第一開閉弁及び第四開閉弁の開閉状態と第二開閉弁及び第三開閉弁の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、被加熱材に対して加熱された空気を左右方向から交互に送るので、高い加熱効率を得ることができる。
すなわち、加熱された空気を左右方向から交互に送ることにより、炉体の内部の空気を効果的に攪拌することができる。したがって、被加熱材の全体を、短時間で均等に加熱することができる。また、加熱された空気を左右方向から交互に送ることにより、被加熱材を、常に一定の方向から送る場合と比較して、より効果的に加熱することができる。
また、加熱された空気を工業炉の外部に放散させることなく循環させるので、外部の空気を取り入れる場合と比較して、エネルギーの損失が少なく、加熱効率に優れる。
また、第一通路と第二通路は、第一蓄熱と第二蓄熱器に連通しているので、これら第一蓄熱器および第二蓄熱器に蓄えられた熱を利用することにより、加熱効率をさらに高めることができる。
さらに、送風ファンを炉体の外部に設けているので、炉体の内部に設けた場合と比較して、熱の影響による故障を軽減でき、その寿命を延ばすことができる。
【0023】
高出力時には、ヒータによる加熱にバーナによる加熱が加わるので炉内温度を瞬時に高温にすることができ効果的である。
【0024】
また本発明によれば、外気を取り込んで第一蓄熱器と第二蓄熱器に送風可能なブロワを設けて、高出力時にバーナは、第一蓄熱器及び第二蓄熱器のうち最寄りの蓄熱器に対してブロワから送風された外気を燃焼空気とするので、効率的で、しかもバーナの火力を十分維持することができる。
【0025】
また本発明によれば、送風ファンは、外気を取り込み送風可能で、高出力時にバーナは、第一蓄熱器及び第二蓄熱器のうち最寄りの蓄熱器に対して送風ファンから送風された外気を燃焼空気とするので、効率的で、しかもバーナの火力を十分維持することができる。また、送風ファンは炉体の内部を循環する空気を第一蓄熱器や第二蓄熱器に送風することに加えて取り込んだ外気も送風する兼用型であるので設備を抑えたコストダウン化が図れる。
【0026】
また本発明によれば、第一ファンと第二ファンを交互に一定時間回転させることで、空気を、第一通路を通過する第一循環方向と、第二通路を通過する第二循環方向に交互に循環させて、被加熱材に対して加熱された空気を左右方向から交互に送るので、高い加熱効率を得ることができる。また、加熱された空気を放散させることなく循環させること、および第一蓄熱器および第二蓄熱器の熱を利用することによっても高い加熱効率を得ることができる。また、第一ファンと第二ファンを炉体の外部に設けているので、熱の影響を回避して、それらの寿命を延ばすことができる。
【0027】
また本発明によれば、バーナは、炉体の内部の左右方向の両方に設けられ、交互に加熱するようにしたので、第一蓄熱器と第二蓄熱器を効果的に運用することができる。
【0028】
また本発明によれば、炉体の外部に設けられた排気搭と炉体を接続する炉圧ダンパー付きの直接排気通路を設け、高出力時には、炉圧ダンパーを開状態にするので、バーナの使用により炉内に発生した燃焼ガスを炉外に排気させることができる。
【0029】
また本発明によれば、炉体の外部に設けられた排気搭と送風ファンを接続する第七開閉弁付きの間接排気通路を設け、高出力時には、第七開閉弁を開状態にするので、上述したような炉圧ダンパー付きの直接排気通路を設けなくても、バーナの使用により炉内に発生した燃焼ガスを炉外に排気させることができ、コストダウンとなる。
【0030】
このように、低出力時には第一ヒータ及び第二ヒータを使用し、高出力時にはこれにバーナによる加熱を追加して熱源をハイブリッド化した構成は、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、低出力時に炉内で空気を右から左方向へ送る状態を示したものである。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、低出力時に炉内で空気を左から右方向へ送る状態を示したものである。
【0032】
【
図3】本発明の第一実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、高出力時に炉内で空気を右から左方向へ送る状態を示したものである。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、高出力時に炉内で空気を左から右方向へ送る状態を示したものである。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、低出力時の状態を示すものである。
【
図6】本発明の第二実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、高出力時の状態を示すものである。
【
図7】本発明の第三実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、高出力時の状態を示すものである。
【
図8】本発明の第四実施形態に係る工業炉の加熱構造を示す正面構成図で、高出力時の状態を示すものである。
【
図9】従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【
図10】他の従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1乃至
図4を参照して、本発明の第一実施形態に係る工業炉1を説明する。
図1及び
図3は、炉体10の内部において、空気を右から左方向へ送る状態の工業炉1を示し、
図2及び
図4は、
図1及び
図3とは逆側、つまり、炉体10の内部において、空気を左から右方向へ送る状態の工業炉1を示す。また、
図1及び
図2は低出力時のものであり、
図3及び
図4は高出力時のものである。
【0034】
本実施形態に係る工業炉1は、ヒータの電気による加熱とバーナの火炎による加熱を熱源としたハイブリッド型の熱源で、炉体10の内部に空気を循環させて、炉体10の内部に載置した被加熱材Tを加熱処理する。被加熱材Tは固定状態で載置しても良いし、移動(回転など)できる状態で載置しても良い。
【0035】
この工業炉1は、第一ヒータ11,第二ヒータ12,第一蓄熱器13,第二蓄熱器14,第一通路15,第二通路16,送風ファン20,第一開閉弁21,第二開閉弁22,第三開閉弁23,第四開閉弁24,第一バーナ51,第二バーナ52,直接排気通路61,関接排気通路62,炉圧ダンパー63,第七開閉弁64,ブロワ81,第三通路82,第五開閉弁83,第六開閉弁84を備える。
【0036】
第一ヒータ11は、炉体10の内部の右側に設けられ、炉体10の内部を循環させる空気を、電力によって加熱する。
第二ヒータ12は、炉体10の内部の左側に設けられ、前記空気を同じく電力によって加熱する。
これら第一ヒータ11および第二ヒータ12は、耐熱性に優れるシリコンカーバイド(SiC)などで構成することが好ましい。
【0037】
第一蓄熱器13は、炉体10の外部の右側に設けられ、第一ヒータ11と連通する。
第二蓄熱器14は、炉体10の外部の左側に設けられ、第二ヒータ12に連通する。
これら第一蓄熱器13および第二蓄熱器14はそれぞれその内部に蓄熱材を設けている。
【0038】
第一通路15は、炉体10の外部に配置され、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14とを連通する状態で設けられる。
第二通路16も同様に炉体10の外部に配置され、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14とを連通する状態で設けられる。
【0039】
送風ファン20は一台設けられ、第一通路15および第二通路16の双方に、それぞれのほぼ中間部分に介在する状態で接続され、第一開閉弁21,第二開閉弁22,第三開閉弁23および第四開閉弁24の操作によって、空気を、第一通路15を介して右側の第一蓄熱器13側、または第一通路15を介して左側の第二蓄熱器14のうちいずれか一方に送風する。第一通路15に対する送風ファン20の接続位置を符号Xでし、第二通路16に対する送風ファン20の接続位置を符号Yで示した。
【0040】
この送風ファン20は、吐出口20aと吸引口20bを備え、吐出口20aから空気を第一通路15に送り、吸引口20bから第二通路16からの空気を受け入れる。吐出口20aと第一通路15の間には第一接続管K1が設けられ、吸引口20bと第二通路16の間には第二接続管K2が設けられている。
【0041】
第一開閉弁21は、第一通路15に対する送風ファン20の接続位置Xと第一蓄熱器13との間に設けられ、第二開閉弁22は、同じ第一通路15に対する送風ファン20の接続位置Xと第二蓄熱器14との間に設けられる。第三開閉弁23は、第二通路16に対する送風ファン20の接続位置Yと第一蓄熱器13との間に設けられ、第四開閉弁24は同じ第二通路16に対する送風ファン20の接続位置Yと第二蓄熱器14との間に設けられる。
【0042】
第一バーナ51は、炉体10の右側で第一ヒータ11の下方に火炎が噴射されるように設けられ、炉体10の内部を循環させる空気を、火力によって加熱する。第一バーナ51には、燃料となるガスが供給され、そのガス供給路には、ガス用の流量計53,調整弁55,第一バーナ開閉弁57が設けられている。また、第一バーナ51は第一蓄熱器13の上方に近接して設けられ、第一蓄熱器13から炉内に送られる空気を燃焼用空気として使用する。
第二バーナ52は、炉体10の左側で第二ヒータ12の下方に火炎が噴射されるように設けられ、炉体10の内部を循環させる空気を、火力によって加熱する。第二バーナ52には、燃料となるガスが供給され、そのガス供給路には、ガス用の流量計54,調整弁56,第二バーナ開閉弁58が設けられている。また、第二バーナ52は第一蓄熱器14の上方に近接して設けられ、第二蓄熱器14から炉内に送られる空気を燃焼用空気として使用する。
【0043】
直接排気通路61は、炉体10の外部に設けられた排気搭70と、炉体10の上部を接続して、炉内に発生した燃焼ガスを炉外に排気するもので、直接排気通路61には開閉式の炉圧ダンパー63が設けられている。
【0044】
関接排気通路62は、送風ファン20の吐出口20aにおいて第二接続管K2から分岐して炉圧ダンパー63と排気搭70の間に接続して、炉内に発生した燃焼ガスが送風ファン20側に入った場合に炉外に排気するもので、関接排気通路62には第七開閉弁64が設けられている。
【0045】
ブロワ81は外気を取り込んで第三通路82を介して第一蓄熱器13側と第二蓄熱器14側に空気を送るもので、ブロワ81と第一蓄熱器13の間には第五開閉弁83が設けられ、ブロワ81とう第二蓄熱器14の間には第六開閉弁84が設けられている。
【0046】
この工業炉1は低出力時と高出力時では使用する熱源が相違する。すなわち、低出力時には、熱源を第一ヒータ11及び第二ヒータ12による加熱とし、高出力時には、これに第一バーナ51及び第二バーナ52の加熱を追加する。
【0047】
(低出力時の動作)
低出力時において、工業炉1は次のように作動させることができる。
すなわち、この工業炉1は、空気を、送風ファン20から第一通路15を通過して第一蓄熱器13に送り、第二蓄熱器14から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第一循環経路P1と、送風ファン20から第一通路15を通過して第二蓄熱器14に送り、第一蓄熱器13から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第二循環経路P2に一定時間毎(例えば、30秒毎あるいは1分毎)で交互に切り替えて循環させる。
【0048】
空気を、第一循環経路P1(炉体10の内部を右から左方向)(
図1参照)に送る場合は、第一通路15の第一開閉弁21と第二通路16の第四開閉弁24を開放するとともに、第一通路15の第二開閉弁22と第二通路16の第三開閉弁23を閉じる。
その逆に、空気を第二循環経路P2(炉体10の内部を左から右方向)(
図2参照)に送る場合は、第一通路15の第一開閉弁21と第二通路16の第四開閉弁24を閉じるとともに、第一通路15の第二開閉弁22と第二通路16の第三開閉弁23を開放する。
このいずれの場合も、一台の送風ファン20を同一の方向に回転させる。
【0049】
このとき、第一バーナ開閉弁57及び第二バーナ開閉弁58は閉じられ、第一バーナ51及び第二バーナ52による加熱は止められている。また、炉圧ダンパー63,第七開閉弁64,第五開閉弁83,第六開閉弁84も閉じられる。ブロワ81も停止されるが、第五開閉弁83,第六開閉弁84が閉じられるのでブロワ81は稼働状態であってもよい。
なお、これら開閉弁21~24,57,58,64,83,84や炉圧ダンパー63の開閉やブロワ81のオンオフは、制御装置によって自動的に行うことができる。
【0050】
空気を第一循環経路P1に送る場合、送風ファン20で送られた空気は、第一通路15を通り、第一開閉弁21を通過して第一蓄熱器13に達し、第一蓄熱器13に蓄えられた熱によって加温され、さらに第一ヒータ11で加熱される。この第一ヒータ11で加熱された空気によって炉体10の内部の被加熱材Tに加熱処理を加える。この際、被加熱材Tには右方向からの熱が強く作用する。
【0051】
被加熱材Tに加熱処理を加えた空気は、第二ヒータ12によって再び加熱された後、第二蓄熱器14に達し、第二蓄熱器14と熱交換した後(第二蓄熱器14に熱を蓄えた後)、第二通路16を通り、第四開閉弁24を通過して送風ファン20に戻る。こうした循環を一定時間(例えば、30秒あるいは1分)継続する。
【0052】
そして一定時間経過後に、空気を第二循環経路P2に送る場合、送風ファン20で送られた空気は、第二通路15を通り、第二開閉弁22を通過して第二蓄熱器14に達し、第二蓄熱器14に蓄えられた熱によって加温され、さらに第二ヒータ12で加熱される。この第二ヒータ12で加熱された空気によって炉体10の内部の被加熱材Tに加熱処理を加える。このとき、被加熱材Tには左方向からの熱が強く作用する。
【0053】
被加熱材Tに加熱処理を加えた空気は、第一ヒータ11によって再び加熱された後、第一蓄熱器13に達し、第一蓄熱器13と熱交換した後、第二通路16を通り、第三開閉弁23を通過して送風ファン20に戻る。こうした循環を一定時間(例えば、30秒あるいは1分)継続する。
【0054】
低出力時には、第一バーナ51及び第二バーナ52による加熱は止められていて、炉内に燃焼ガスは発生しないので排気搭70から燃焼ガスを排気させることもなく、空気は炉体10の内部を循環するように構成される。
【0055】
これによれば、被加熱材Tに右方向と左方向からの強い熱を交互に作用させることができると同時に、空気の流れを第一循環経路P1(第二循環経路P2)と第二循環経路P2(第一循環経路P1)とに交互に切り替えるので、炉体10の内部の空気を効果的に攪拌させることができる。したがって、被加熱材Tの全体に、より均等な加熱処理を加えることができる。
【0056】
また、加熱した空気を工業炉1の外部に放散させることなく循環させるので、少ない電気エネルギーで効率的に空気を加熱することができる。
また、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14を設けているので、これらに蓄えられた熱を利用して空気をさらに効率的に加熱することができる。
さらに、送風ファン20を炉体10の外部に設けているので、炉体10の内部の熱の影響を避けることができ、その寿命を延ばすことができる。
【0057】
(高出力時の動作)
次に高出力時には、工業炉1は次のように作動させることができる。
すなわち、第一バーナ51及び第二バーナ52による加熱を追加するものであるが、より具体的には、空気が第一蓄熱器13側から炉内を通り第二蓄熱器14側に流される場合には、
図3に示すように、一方側の第一バーナ51だけによる加熱を追加する。
【0058】
このとき、第一バーナ開閉弁57は開放され、第二バーナ開閉弁58は閉じられている。また、炉圧ダンパー63,第七開閉弁64,第五開閉弁83は開放され、第一開閉弁21,第二開閉弁22,第七開閉弁84は閉じられ、ブロワ81は稼働状態である。
第一バーナ51による燃焼で炉内には燃焼ガスが発生するが、燃焼ガスは直接排気通路61を介して排気搭70から外に排気させられる。また、燃焼ガスが送風ファン20側に入ってきたとしても関接排気通路62を介して同じく排気搭70から外に排気させられる。排気搭70から燃焼ガスが排気されることで全体的に空気の量が減るが、第五開閉弁83が開放されることによりブロワ81から外気が第一蓄熱器13に送られ、第一バーナ51の燃焼用空気として使用される。
【0059】
逆に、空気が第二蓄熱器14側から炉内を通り第一蓄熱器13側に流される場合には、
図4に示すように、他方側の第二バーナ52だけによる加熱を追加する。
【0060】
このとき、第二バーナ開閉弁58は開放され、第一バーナ開閉弁57は閉じられている。また、炉圧ダンパー63,第七開閉弁64,第六開閉弁84は開放され、第一開閉弁21,第二開閉弁22,第五開閉弁83は閉じられ、ブロワ81は稼働状態である。
第二バーナ52による燃焼で炉内には燃焼ガスが発生するが、燃焼ガスは直接排気通路61を介して排気搭70から外に排気させられる。また、燃焼ガスが送風ファン20側に入ってきたとしても関接排気通路62を介して同じく排気搭70から外に排気させられる。排気搭70から燃焼ガスが排気されることで全体的に空気の量が減るが、第六開閉弁84が開放されることによりブロワ81から外気が第二蓄熱器14に送られ、第二バーナ52の燃焼用空気として使用される。
【0061】
このように第一バーナ51及び第二バーナ52をいわゆるリジェネバーナとして稼働させ、空気の流れを第一蓄熱器13側から炉内を通り第二蓄熱器14側にする経路と、第二蓄熱器14側から炉内を通り第一蓄熱器13側に流される経路とに交互に切り替えるものに追従させたものである。
【0062】
これによれば、高出力時には、第一ヒータ11,第二ヒータ12による加熱に第一バーナ51,第二バーナ52による加熱が加わるので炉内温度を瞬時に高温にすることができ効果的である。
【0063】
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の第二実施形態に係る工業炉1を説明する。
図5は、低出力時のもので
図6は高出力時のものである。
【0064】
この工業炉1も、ヒータの電気による加熱とバーナの火炎による加熱を熱源としたハイブリッド型の熱源で、炉体10の内部に空気を循環させて被加熱材Tを加熱処理する構成であり、第一ヒータ11,第二ヒータ12,第一蓄熱器13,第二蓄熱器14,第一通路15,第二通路16,第一ファン25,第二ファン26,第一バーナ51,第二バーナ52,直接排気通路61,関接排気通路62,炉圧ダンパー63,第七開閉弁64を備える。なお、第一実施形態に係る工業炉1のように外気を取り込むブロワ81を設けて空気の供給を増加させるようにしてもよい。
【0065】
第一ヒータ11は、炉体10の内部の右側に設けられ、空気を電力によって加熱する。第二ヒータ12は、炉体10の内部の左側に設けられ、空気を同じく電力によって加熱する。
【0066】
第一蓄熱器13は、炉体10の外部の右側に設けられ、第一ヒータ11に連通する。第二蓄熱器14は、炉体10の外部の左側に設けられ、第二ヒータ12に連通する。第一蓄熱器13および第二蓄熱器14は、熱を蓄えることのできる蓄熱材を内蔵する。
【0067】
第一通路15は、炉体10の外部に設けられ、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14とを連通する。第二通路16も炉体10の外部に設けられ、第二蓄熱器14と第一蓄熱器13とを連通する。
【0068】
第一ファン25は、第一通路15のほぼ中間部に設けられ、空気を、炉体10の内部において右から左方向へ送風する。また第一ファン25は、外気を取り込み前記空気とともに送風することができる。第二ファン26は、第二通路16のほぼ中間部に設けられ、空気を、炉体10の内部において左から右方向へ送風する。また第二ファン26は、外気を取り込み前記空気とともに送風することができる。第一ファン25および第二ファン26は、それぞれ一方方向に回転する。
【0069】
第一バーナ51は、炉体10の右側で第一ヒータ11の下方に火炎が噴射されるように設けられ、炉体10の内部を循環させる空気を、火力によって加熱する。第一バーナ51には、燃料となるガスが供給され、そのガス供給路には、ガス用の流量計53,調整弁55,第一バーナ開閉弁57が設けられている。また、第一バーナ51は第一蓄熱器13の上方に近接して設けられ、第一蓄熱器13から炉内に送られる空気を燃焼用空気として使用する。
第二バーナ52は、炉体10の左側で第二ヒータ12の下方に火炎が噴射されるように設けられ、炉体10の内部を循環させる空気を、火力によって加熱する。第二バーナ52には、燃料となるガスが供給され、そのガス供給路には、ガス用の流量計54,調整弁56,第二バーナ開閉弁58が設けられている。また、第二バーナ52は第一蓄熱器14の上方に近接して設けられ、第二蓄熱器14から炉内に送られる空気を燃焼用空気として使用する。
【0070】
直接排気通路61は、炉体10の外部に設けられた排気搭70と、炉体10の上部を接続して、炉内に発生した燃焼ガスを炉外に排気するもので、直接排気通路61には開閉式の炉圧ダンパー63が設けられている。
【0071】
関接排気通路62は、送風ファン20の吐出口20aにおいて第二接続管K2から分岐して炉圧ダンパー63と排気搭70の間に接続して、炉内に発生した燃焼ガスが第一ファン25や第二ファン26側に入った場合に炉外に排気するもので、関接排気通路62には第七開閉弁64が設けられている。
【0072】
この工業炉1は低出力時と高出力時では使用する熱源が相違する。すなわち、低出力時には、熱源を第一ヒータ11及び第二ヒータ12による加熱とし、高出力時には、これに第一バーナ51及び第二バーナ52の加熱を追加する。
【0073】
(低出力時の動作)
この工業炉1の作動は、第一ファン25と第二ファン26を交互に一定時間回転させることで行うことができる。すなわち、第一ファン25を回転させることによって、空気を、第一通路15を通過する第一循環経路P1に一定時間(例えば、30秒~1分程度)循環させる。これにより、空気は、第一蓄熱器13で加温された後、第一ヒータ11で加熱され、その加熱された空気で被加熱材Tを加熱する。ここでは、被加熱材Tの右側に強い熱を作用させることができる。被加熱材Tを加熱した空気は、第二ヒータ12を通過する際に加熱された後、第二蓄熱器14で熱交換を行い、第一通路15を通って第一ファン25に戻される。
【0074】
空気を第一循環経路P1へ一定時間循環させた後、第一ファン25の回転を停止させた状態で第二ファン26を回転させる。これにより、空気を、第二通路16を通過する第二循環経路P2に一定時間(例えば、30秒~1分程度)循環させる。これにより、空気は、第二蓄熱器14で加温された後、第二ヒータ12で加熱され、その加熱された空気で被加熱材Tを加熱する。ここでは、被加熱材Tの左側に強い熱を作用させることができる。被加熱材Tを加熱した空気は、第一ヒータ11を通過する際に加熱された後、第一蓄熱器13で熱交換を行い、第二通路16を通って第二ファン26に戻される。
【0075】
このとき、第一バーナ開閉弁57及び第二バーナ開閉弁58は閉じられ、第一バーナ51及び第二バーナ52による加熱は止められている。また、炉圧ダンパー63,第七開閉弁64も閉じられる。
なお、これら開閉弁21~24,57,58,64や炉圧ダンパー63の開閉は、制御装置によって自動的に行うことができる。
【0076】
低出力時には、第一バーナ51及び第二バーナ52による加熱は止められていて、炉内に燃焼ガスは発生しないので排気搭70から燃焼ガスを排気させることもなく、空気は炉体10の内部を循環するように構成される。
【0077】
このように、空気を第一循環経路P1と第二循環経路P2へ交互に循環させることによって、被加熱材Tの右側部分および左側部分を含めた全体を効果的に加熱することができる。また、これにより炉体10の内部の空気を効果的に攪拌することができるので、被加熱材Tにさらに効果的な加熱処理を加えることができる。
【0078】
また、この工業炉1では、第一ファン25と第二ファン26を炉体10の外部に設けているので、炉体10の熱による影響を回避することができる。したがって、第一ファン25および第二ファン26の損傷を軽減し、その寿命を延ばすことができる。
【0079】
(高出力時の動作)
次に高出力時には、工業炉1は次のように作動させることができる。
すなわち、第一バーナ51及び第二バーナ52による加熱を追加するものであるが、より具体的には、空気が第一循環経路P1を循環する場合には、
図6に示すように、一方側の第一バーナ51だけによる加熱を追加する。
【0080】
このとき、第一バーナ開閉弁57は開放され、第二バーナ開閉弁58は閉じられている。また、炉圧ダンパー63,第七開閉弁64は開放されている。
第一バーナ51による燃焼で炉内には燃焼ガスが発生するが、燃焼ガスは直接排気通路61を介して排気搭70から外に排気させられる。また、燃焼ガスが第一ファン25側に入ってきたとしても関接排気通路62を介して同じく排気搭70から外に排気させられる。
また、第一ファン25から外気が第一蓄熱器13に送られ、第一バーナ51の燃焼用空気として使用される。
【0081】
逆に、空気が第二循環経路P2を循環する場合には、図示は省略するが、他方側の第二バーナ52だけによる加熱を追加する。
【0082】
このとき、第二バーナ開閉弁58は開放され、第一バーナ開閉弁57は閉じられている。また、炉圧ダンパー63,第七開閉弁64は開放されている。
第二バーナ52による燃焼で炉内には燃焼ガスが発生するが、燃焼ガスは直接排気通路61を介して排気搭70から外に排気させられる。また、燃焼ガスが第二ファン26側に入ってきたとしても関接排気通路62を介して同じく排気搭70から外に排気させられる。
また、第二ファン26から外気が第二蓄熱器14に送られ、第二バーナ52の燃焼用空気として使用される。
【0083】
これによれば、高出力時には、第一ヒータ11,第二ヒータ12による加熱に第一バーナ51,第二バーナ52による加熱が加わるので炉内温度を瞬時に高温にすることができ効果的である。
【0084】
次に、
図7を参照して、本発明の第三実施形態に係る工業炉1を説明する。
図7は、高出力時のものであり、低出力時のものは省略した。
これは、第一実施形態のものから、直接排気通路61とそれに設けられた炉圧ダンパー63を取り除き、炉内からの排気は、すべて間接排気通路62を介して排気搭70から外部にでるようにしたものである。
【0085】
これによれば、直接排気通路61及び炉圧ダンパー63を省くことができるので設備が簡素化されその分、コストダウンを図れる。
【0086】
次に、
図8を参照して、本発明の第四実施形態に係る工業炉1を説明する。
図8は、高出力時のものであり、低出力時のものは省略した。
これは、第一実施形態のものから、ブロワ81,第三通路82,第五開閉弁83,第六開閉弁84を取り除き、送風ファン20について外気を取り込み送風可能にしたものである。
【0087】
高出力時には、送風ファン20は炉内を循環する空気の送風に加えて外気を取り込み送風するとともに、第一開閉弁21及び第二開閉弁22のうちバーナ51,52に対して最寄りの蓄熱器側13,14の開閉弁21,22を開いて、外気を燃焼用空気とするバーナ51,52による加熱を追加したものである。
【0088】
これによれば、ブロワ81,第三通路82,第五開閉弁83,第六開閉弁84を省くことができるので設備が簡素化されその分、コストダウンを図れる。
【0089】
なお、第一,第二,第三,第四実施形態では、炉体の左右両方に第一バーナ51と第二バーナ52を設けて、高出力時には、空気が第一循環経路P1を循環する場合に第一バーナ51だけによる加熱を追加し、空気が第二循環経路P2を循環する場合には第二バーナ52だけによる加熱を追加するようにしたが、第一バーナ51と第二バーナ52のいずれか一方だけを炉体に設けるようにして、高出力時には、空気が循環する第一循環経路P1や第二循環経路P2に関係なくその一つのバーナによる加熱を追加させるようにすることもできる。
【0090】
また、第一,第二,第三,第四実施形態では、第一バーナ51は、第一蓄熱器13から炉内に送り込まれる空気(取り込まれた外気を主とする)を燃焼空気とし、第二バーナ52は、第二蓄熱器14から炉内に送り込まれる空気(取り込まれた外気を主とする)を燃焼空気としたが、第一バーナ51,第二バーナ52それぞれに対して燃焼用の空気を外気から取り込んで送るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 工業炉
10 炉体
11 第一ヒータ
12 第二ヒータ
13 第一蓄熱器
14 第二蓄熱器
15 第一通路
16 第二通路
20 送風ファン
20a 吐出口
20b 吸引口
21 第一開閉弁
22 第二開閉弁
23 第三開閉弁
24 第四開閉弁
25 第一ファン
26 第二ファン
30 炉体
31 金属ヒータ
32 回転ファン
40 炉体
41 エアヒータ
51 第一バーナ
52 第二バーナ
53,54 ガス用の流量計
55,56 調整弁
57 第一バーナ開閉弁
58 第二バーナ開閉弁
61 直接排気通路
62 間接排気通路
63 炉圧ダンパー
64 第七開閉弁
70 排気搭
81 ブロワ
82 第三通路
83 第五開閉弁
84 第六開閉弁
K1 第一接続管
K2 第二接続管
P1 第一循環経路
P2 第二循環経路
T 被加熱材
X 接続位置
Y 接続位置