(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035722
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】光センサ
(51)【国際特許分類】
H01L 31/12 20060101AFI20240307BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20240307BHJP
G01J 1/44 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L31/12 E
G01J1/42 N
G01J1/44 E
H01L31/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140364
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆行
(72)【発明者】
【氏名】井上 高広
(72)【発明者】
【氏名】濱口 弘治
(72)【発明者】
【氏名】平松 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】野田 和夫
【テーマコード(参考)】
2G065
5F889
【Fターム(参考)】
2G065AB16
2G065AB22
2G065AB28
2G065BA09
2G065BC02
2G065BC05
2G065BC17
2G065BC22
2G065BC28
2G065BC30
2G065CA05
2G065CA12
2G065DA15
5F889BA02
5F889BB02
5F889CA21
5F889FA06
(57)【要約】
【課題】周囲環境の明るさに関わらず安定した測定を可能な光センサを提供する。
【解決手段】光センサは、時間的に変化する光を照射する発光素子と、pn接合を含み、発光素子から照射された光を直接または間接的に受光する受光素子と、受光素子で受光された光の受光量に基づいた電流を測定する測定部と、受光素子にバイアスを印加するバイアス印加部とを備え、バイアス印加部は、発光素子により光を照射して受光量に基づいた電流を測定する動作の前に、受光素子にバイアスを印加することにより、受光素子がオン状態とされた際に流れる順方向電流をpn接合に流し、またはpn接合において降伏現象が生じた際に流れる降伏電流をpn接合に流す光センサ。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的に変化する光を照射する発光素子と、
pn接合を含み、前記発光素子から照射された光を直接または間接的に受光する受光素子と、
前記受光素子で受光された前記光の受光量に基づいて発生する電流を測定する測定部と、
前記受光素子にバイアスを印加するバイアス印加部と
を具備し、
前記受光量に基づいて発生する電流を測定する動作の前に前記バイアス印加部は、前記受光素子に前記バイアスを印加することにより、前記受光素子がオン状態とされた際に流れる順方向電流を前記pn接合に流し、または前記pn接合において降伏現象が生じた際に流れる降伏電流を前記pn接合に流す、光センサ。
【請求項2】
pn接合を含み、光を受光する受光素子と、
前記受光素子で受光された前記光の受光量に基づいて発生する電流を測定する測定部と、
前記受光素子にバイアスを印加するバイアス印加部と、
前記受光素子が受光する光信号を外部の発光素子から発光させるための制御信号出力部と
を具備し、
前記受光量に基づいて発生する電流を測定する動作の前に、前記バイアス印加部は、前記受光素子に前記バイアスを印加することにより、前記受光素子がオン状態とされた際に流れる順方向電流を前記pn接合に流し、または前記pn接合において降伏現象が生じた際に流れる降伏電流を前記pn接合に流す、光センサ。
【請求項3】
前記バイアス印加部によって流れる前記順方向電流及び前記降伏電流の絶対値は、前記受光素子がオフ状態において流れるリーク電流の絶対値よりも大きい、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項4】
前記バイアス印加部によって流れる前記順方向電流及び前記降伏電流の絶対値は、前記受光素子の暗電流の絶対値よりも大きい、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項5】
前記光センサは、前記発光素子により前記光を照射して前記受光量に基づいた電流を測定する第1動作と、前記受光量に基づいた電流を測定しない第2動作とを繰り返し、
前記第2動作時において、前記バイアス印加部は、前記受光素子の前記pn接合に前記順方向電流または前記降伏電流を流す、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項6】
前記受光素子と前記測定部とを電気的に接続または非接続とするスイッチ部を更に備え、
前記スイッチ部は、前記受光素子の前記pn接合に前記順方向電流または前記降伏電流を流す期間、前記受光素子と前記測定部とを電気的に非接続とし、
前記光を照射して前記受光量に基づいた電流を測定する期間、前記受光素子と前記測定部とを電気的に接続する、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項7】
前記受光素子は、アノードが接地されたフォトダイオードであり、
前記バイアス印加部は、負電圧発生回路を含み、
前記負電圧発生回路は、前記フォトダイオードのカソードに負電圧を印加することにより前記フォトダイオードの前記pn接合に順方向電圧を印加して、前記順方向電流を流す、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項8】
前記受光素子は、アノードが接地されたフォトダイオードであり、
前記バイアス印加部は、
前記フォトダイオードのカソードにカソードが接続されたダイオードと、
前記ダイオードのアノードに接続された電流源と、
前記フォトダイオード及び前記ダイオードの前記カソードと第1ノードとの間を接続または非接続とするスイッチ部と
を更に備え、
前記スイッチ部は、前記フォトダイオード及び前記ダイオードの前記カソードを前記第1ノードに接続することにより、前記フォトダイオードのpn接合に降伏電流を流す、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項9】
前記第1ノードは接地されている、請求項8記載の光センサ。
【請求項10】
前記受光素子の前記pn接合に前記順方向電流または前記降伏電流を流す期間を制御する制御部を更に備える、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項11】
前記pn接合に前記順方向電流または前記降伏電流を流した後において欠陥準位にトラップされているキャリアの数は、前記pn接合に前記順方向電流または前記降伏電流を流す前において欠陥準位にトラップされているキャリアの数よりも大きい、請求項1または2記載の光センサ。
【請求項12】
不純物が存在する半導体基板上で構成されており、前記不純物により発生する欠陥準位を低減するために、前記半導体基板に電流を流すためのバイアス印加回路を備えた光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光センサとして、検知対象物体の距離を測定する近接センサが知られている。このような近接センサでは、LEDから発光された光を検知対象物体に照射し、検知対象物体からの反射光をフォトダイオードで受光し、受光した光の強度に応じて検知対象物体の有無、及び検知対象物体までの距離を測定できる。
【0003】
また特許文献1には、光電変換素子としてフォトダイオードを用いたイメージセンサが開示されている。特許文献1の構成では、フォトダイオードへの入射光量が低下した際に、フォトダイオードに流れるセンサ電流を電圧に変換するMOSトランジスタの抵抗値が大きくなり、その結果、残像が長時間にわたって観測されることを防止するために、フォトダイオードの接合容量に蓄積された電荷を放電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、フォトダイオードを用いた近接センサが知られている。しかし、近接センサにより安定した測定が可能となるまでには、明るい環境よりも、暗い環境の方が時間を要する場合があった。この点、特許文献1は、センサ電流が大きい場合と小さい場合とでMOSトランジスタの抵抗値が異なり、フォトダイオードの接合容量との時定数が異なることに起因する残像の観測時間を問題としている。従って、特許文献1の構成を適用しても、上記課題を解決することはできない。
【0006】
本発明の一態様は、周囲環境の明るさに関わらず安定した測定を可能な光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る光センサは、時間的に変化する光を照射する発光素子と、pn接合を含み、発光素子から照射された光を直接または間接的に受光する受光素子と、受光素子で受光された光の受光量に基づいて発生する電流を測定する測定部と、受光素子にバイアスを印加するバイアス印加部とを具備し、受光量に基づいて発生する電流を測定する動作の前にバイアス印加部は、受光素子にバイアスを印加することにより、受光素子がオン状態とされた際に流れる順方向電流をpn接合に流し、またはpn接合において降伏現象が生じた際に流れる降伏電流を前記pn接合に流す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光センサの模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る光センサの回路図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る光センサにおける各種信号のタイミングチャートである。
【
図4A】本発明の第1実施形態に係る光センサの待機動作時における回路図である。
【
図4B】本発明の第1実施形態に係る光センサの備えるフォトダイオードの電圧・電流特性を示すグラフである。
【
図5A】本発明の第1実施形態に係る光センサの近接動作時における回路図である。
【
図5B】本発明の第1実施形態に係る光センサの近接動作時における積分回路及びカウンタ回路の出力を示すグラフである。
【
図6A】比較例に係る光センサの近接動作時における、測定回数とカウント数との関係を示すグラフである。
【
図6B】本発明の第1実施形態に係る光センサの近接動作時における、測定回数とカウント数との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るフォトダイオードの断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るフォトダイオードの断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るフォトダイオードの断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るフォトダイオードの断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る光センサの回路図である。
【
図12A】本発明の第2実施形態に係る光センサの待機動作時における回路図である。
【
図12B】本発明の第2実施形態に係る光センサの近接動作時における回路図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る光センサシステムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態に係る光センサについて説明する。以下では光センサの例として、近接センサを例に挙げて説明する。
【0011】
まず、本実施形態に係る近接センサの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る近接センサの構成を簡単に示す模式図であり、近接センサとしての主要な要素のみを図示している。
【0012】
図示するように近接センサ(光センサ)100は、基板110、発光ダイオード(発光素子)120、フォトダイオード(受光素子)130、測定部140、投光レンズ150、及び受光レンズ160を備えている。基板110は、例えばPCB(Printed Circuit Board)基板などであり、基板110上に発光ダイオード120、フォトダイオード130、及び測定部140が設けられている。発光ダイオード120は、図示せぬ制御部によって駆動されて光を出力し、検知対象物200に対して当該光を照射する。なお、本例では発光ダイオード120を用いた場合を例に説明するが、レーザダイオード等、光を照射可能な発光素子であれば発光ダイオードに限定されない。より具体的には、発光ダイオード120から出力された光は、投光レンズ150によって、検知対象物体200に照射される(光170)。検知対象物体200からの反射光180は、受光レンズ160によって集光され、フォトダイオード130に入射する。フォトダイオード130は、検知対象物体200からの反射光180を受光し、受光した光を電流に変換する。測定部140は、フォトダイオード130に流れる電流により、検知対象物体200の有無や距離を測定する。なお測定部140は、例えばProximity-Sensor(PS)-ADC(Analog-to-Digital Converter)である。PS-ADCは、フォトダイオード130からのアナログ値である入力電流をデジタル値に変換するためのアナログ/デジタル変換回路である。アナログ/デジタル変換方式としては一例として積分回路を用いた方式がある。もちろん、測定部140はPS-ADCに限定されるものではなく、フォトダイオード130からの入力電流に基づいて、検知対象物体200の有無や距離を測定できる構成であれば限定されない。またフォトダイオード130とPS―ADC140は、近年では同一の半導体チップ上で構成される事が多いが、同一の半導体チップ上で構成される場合であっても、それぞれが別個の半導体チップ上で構成される場合であってもよく、いずれの構成であっても下記で説明する効果を同様に得られる。
【0013】
上記構成において、検知対象物体200が近接センサ100の近くにある場合、フォトダイオード130が受光する反射光180の強度は強くなり、フォトダイオード130に流れる電流は大きくなる。一方、検知対象物体200が近接センサ100に対して遠くにある場合、フォトダイオード130が受光する反射光180の強度は弱くなり、フォトダイオード130に流れる電流は小さくなる。つまりフォトダイオード130に流れる電流量を検出する事で検知対象物体200が近接センサ100に対して一定距離内に存在しているかどうかを判断することが可能となる。
【0014】
図2は、
図1で説明した近接センサ100の、より詳細な回路図である。図示するように近接センサ100は、大まかには、制御部300、発光部310、フォトダイオード130、測定部140、バイアス印加部320、及びスイッチ部330を備えている。
【0015】
発光部310は、電源311、スイッチ素子312、電流源313、及び
図1で説明した発光ダイオード120を備えている。スイッチ素子312は、制御部300から与えられる信号S3によって制御され、発光ダイオード120のカソードを電流源313と接続する。また発光ダイオード120のアノードは電源311と接続される。そして、信号S3が例えば“H”レベルとされることによりスイッチ素子312がオン状態になると、発光ダイオード120に電流が印加され、発光ダイオード120は検知対象物体200に向けて光を照射する。このように、スイッチ素子312により、発光ダイオード120はオフ(消灯)状態とオン(発光)状態を繰り返す。換言すれば、発光ダイオード120は、時間的に変化する光を照射する。また発光ダイオード120は、近接センサ100の消費電流を低減させるために間欠動作を行ってもよい。
【0016】
フォトダイオード(受光素子)130は、
図1を用いて説明したとおりであり、検知対象物体200からの反射光180が、フォトダイオード130のpn接合に入射することにより電流が流れる。フォトダイオード130は、例えばアノードが接地され、カソードがノードN10に接続される。
【0017】
バイアス印加部320はフォトダイオード130にバイアスを印加する。具体的には、発光ダイオード120により光を照射して検知対象物体200までの距離を測定する動作の前に、フォトダイオード130にバイアスを印加することにより、フォトダイオード130がオン状態とされた際に流れる順方向電流をpn接合に流す。より具体的には、バイアス印加部320は、負電圧発生回路321とスイッチ素子322とを備えている。負電圧発生回路321は、制御部300の制御に従って負電圧を発生する。この負電圧は、後述する待機動作において、フォトダイオード130に印加されることにより、フォトダイオードがオン状態とされた際に流れる順方向電流を、フォトダイオード130のpn接合に流すための電圧である。当該動作の詳細は後述する。スイッチ素子322は、制御部300から与えられる信号S1によって制御され、負電圧発生回路321とノードN10との間を接続する。そして、信号S1が例えば“H”レベルとされることによりスイッチ素子322がオン状態になると、負電圧発生回路321で発生された負電圧がノードN10、すなわちフォトダイオード130のカソードに印加される。他方で、信号S1が例えば“L”レベルとされることによりスイッチ素子322がオフ状態になると、負電圧発生回路321とノードN10とは電気的に非接続とされる。
【0018】
スイッチ部330は、スイッチ素子331を含む。スイッチ素子331は、制御部300から与えられる信号S2によって制御され、測定部140と、ノードN10すなわち発光ダイオード120との間を接続する。そして、信号S2が例えば“H”レベルとされることによりスイッチ素子331がオン状態になると、フォトダイオード130と測定部140とが電気的に接続され、信号S2が例えば“L”レベルとされることによりスイッチ素子331がオフ状態になると、フォトダイオード130と測定部140とが電気的に非接続とされる。
【0019】
測定部140は、前述の通り、例えばPS-ADCであり、フォトダイオード130で受光された光に基づいて、検知対象物体200までの距離を測定する。測定部140は、電流源400、nチャネルMOSトランジスタ410、420、オペアンプ(増幅器)430、コンパレータ(比較器)440、容量素子(キャパシタ)450、及びカウンタ回路460を備えている。MOSトランジスタ410は、電流源400から電流がドレインに供給され、ソースはノードN20(オペアンプ430の反転入力端子(-))に接続され、ゲートには電圧Vdisが印加される。MOSトランジスタ420は、ソースがスイッチ素子331に接続され、ドレインがノードN20、すなわちオペアンプ430の反転入力端子に接続され、ゲートに電圧Vchが印加される。オペアンプ430は、反転入力端子(-)がノードN20に接続され、正転入力端子(+)に基準電圧Vrefが印加される。そして、ノードN20と基準電圧Vrefとの差動増幅信号を電圧Vintとして、ノードN21に出力する。容量素子450は、一方電極がノードN20に接続され、他方電極がノードN21に接続される。コンパレータ440は、正転入力端子(+)がノードN21に接続され、反転入力端子(-)に基準電圧Vrefが印加される。そして、ノードN21と基準電圧Vrefとの比較結果を出力する。カウンタ回路460は、コンパレータ440の出力に基づいてカウント動作を実行し、カウント結果を出力する。このように測定部140は、主にオペアンプ430と容量素子450とで積分回路が構成され、フォトダイオード130で発生した電荷量に基づいてカウンタ回路460のカウント数が変動する。
【0020】
制御部300は、上記構成の近接センサ100全体の動作を制御する。例えば、信号S1、S2、S3、電圧Vdis、Vch、及び負電圧発生回路321等の動作タイミングを制御する。
【0021】
次に、本実施形態に係る近接センサ100の動作について説明する。
図3は、近接センサ100の動作フェーズ、電圧Vch、Vdis、及び信号S1、S2、S3のタイミングチャートである。
【0022】
図示するように、近接センサ100は、制御部300の命令に従って、検知対象物体200までの距離を測定しない待機動作(第2動作)と、検知対象物体200までの距離を測定する近接動作(第1動作)とを繰り返す。近接動作の前には、待機動作が行われる。まず、待機動作について説明する。待機動作は、バイアス印加部320によりフォトダイオード130にバイアスを印加して、フォトダイオード130のpn接合に電流を流すことにより、後述する格子欠陥の状態を明環境と暗環境とで略等しくする動作であり、近接動作の前に行われる。なお、
図3の例では、説明の簡単化のために1度の近接動作のたびに待機動作が行われる場合を示しているが、近接動作が複数回連続して実行されてもよい。
【0023】
図3に示すように、待機動作(時刻t0~t1、t3~t4)の期間、制御部300は電圧Vch及びVdisを“L”レベルとして、MOSトランジスタ420及び410をオフ状態とすることにより、測定部140を非動作状態とする。また制御部300は、信号S1を“H”レベル、信号S2及びS3を“L”レベルとすることにより、バイアス印加部320とフォトダイオード130とを電気的に接続すると共に、フォトダイオード130と測定部140とを電気的に非接続とする。また、発光部310においてスイッチ素子312をオフ状態として、発光ダイオード120による光の照射を停止する。
【0024】
図4Aは、待機動作時におけるバイアス印加部320、フォトダイオード130、スイッチ部330、及び測定部140の接続関係を簡単に示す回路図である。前述の通り、スイッチ素子322がオン状態、スイッチ素子331がオフ状態となることで、フォトダイオード130は負電圧発生回路321に接続され、測定部140とは非接続とされる。そして、制御部300の命令に基づいて、負電圧発生回路321は負電圧を出力し、フォトダイオードのカソードに印加する。この際、負電圧発生回路321の出力する負電圧は、アノードが接地されているフォトダイオード130において順方向バイアスとなる電圧(例えば-0.7V)である。その結果、フォトダイオード130はオン状態となりオン電流I
ONが流れる。
【0025】
図4Bは、フォトダイオード130の電圧・電流特性を示すグラフである。図示するように、フォトダイオードに順方向(正)の電圧が印加されると、ある順方向バイアスV
ONが印加された時点から、オン電流I
ONがアノードからカソードに向かって流れる。オン電流I
ONは、電圧と共に急峻に増加する順方向電流である。待機動作時において負電圧発生回路321は、フォトダイオード130のカソードに負電圧を印加する。すると、フォトダイオード130のアノードは接地されているので、フォトダイオード130のpn接合には順方向バイアスが印加される。その結果、フォトダイオード130のpn接合には、
図4Bに示す順方向電流I
ONが流れる。待機動作時においてフォトダイオード130に電流を流す理由は、フォトダイオード130内に含まれる格子欠陥に電子をトラップさせることで、暗い環境下であるか明るい環境下であるかに関わらず、安定した近接動作を可能とするためである。この点については、後に詳細に説明する。
【0026】
なお、フォトダイオード130の特性として、逆バイアスが印加された際、逆バイアスの電圧値の絶対値が一定値(降伏電圧VB)を超えると、pn接合に降伏現象が生じて、降伏電流Ibreakが流れる。降伏電流Ibreakは、アノードからカソードに向かって流れる逆方向電流であり、順方向電流と同様に、電圧と共に急峻に増加する電流である。また、逆バイアスの電圧値の絶対値が降伏電圧VB未満であり、フォトダイオードがオフ状態である期間においても、逆方向のリーク電流Ioffがわずかに流れる。前述した待機動作においてフォトダイオードに流れる電流IONの絶対値は、リーク電流Ioffの絶対値よりも大きく、また、光がフォトダイオード130に入射しない際に流れる暗電流の絶対値よりも大きい。
【0027】
次に、近接動作について説明する。
図3に示すように、近接動作(時刻t1~t3、t4~t6)の期間、制御部300はまず、時刻t1~t2(及びt4~t5)の期間に電圧Vchを“H”レベルとしてMOSトランジスタ420をオン状態とし、電圧Vdisを“L”レベルとしてMOSトランジスタ410をオフ状態とする。引き続き制御部300は、時刻t2~t3(及びt5~t6)の期間に電圧Vchを“L”レベルとしてMOSトランジスタ420をオフ状態とし、電圧Vdisを“H”レベルとしてMOSトランジスタ410をオン状態とする。また制御部300は、信号S1を“L”レベルとし、信号S2を“H”レベルとすることにより、近接動作の期間、バイアス印加部320と測定部140とを電気的に非接続とし、フォトダイオード130と測定部140とを電気的に接続する。また制御部300は、時刻t1~t2(及びt4~t5)の期間、信号S3を“H”レベルとすることにより、発光ダイオード120により検知対象物体200に光を照射する。
【0028】
図5Aは、近接動作時におけるバイアス印加部320、フォトダイオード130、スイッチ部330、及び測定部140の接続関係を簡単に示す回路図である。前述の通り、スイッチ素子322がオフ状態、スイッチ素子331がオン状態となることで、フォトダイオード130は測定部140に接続され、負電圧発生回路321とは非接続とされる。また、時刻t1(及びt4)において発光ダイオード120が光を検知対象物体200に照射し、その反射光がフォトダイオード130に入射し、フォトダイオード130には電流が流れる。そして、時刻t1~t2(及びt4~t5)の期間にMOSトランジスタ420がオン状態とされるため、フォトダイオード130に流れる電流に応じた電荷が容量素子450に充電される。その後、時刻t2(及び時刻t5)において発光ダイオード120による光の照射が終了すると、時刻t2~t3(及びt5~t6)の期間にMOSトランジスタ410がオン状態とされるため、電流源400を介して、容量素子450に充電された電荷が放電される。このように発光ダイオード120は、オン状態とオフ状態とを繰り返す、すなわち時間的に変化する光を検知対象物体200に照射する。
【0029】
上記近接動作時の動作につき、
図5Bを用いて説明する。
図5Bは、オペアンプ430の出力電圧Vintと、カウンタ回路460のカウント値を示すグラフである。図示するように、MOSトランジスタ420がオン状態とされて電荷が容量素子450に充電される期間(時刻t0~t10)、電圧Vintは上昇する。そして、MOSトランジスタ420がオフ状態とされてMOSトランジスタ410がオン状態とされて容量素子450に充電されている電荷の放電が開始すると、電圧Vintは低下する。なお、オペアンプ430に入力される電圧Vrefは例えばゼロVである。そして、カウンタ回路460が、時刻t10から電圧VintがゼロVとなる時刻t11までの期間をカウントし、このカウント値を、検知対象物体200までの距離に相当する値として出力する。このように、フォトダイオード130に流れる電流を容量素子450に充電し、この電荷が放電されるまでの時間をカウンタ回路460がカウントし、容量素子450の電荷がなくなるまでの時間、つまりカウンタ回路460のカウント数が、検知対象物体200までの距離と相関のあるデジタル値として出力される。このように測定部140は、フォトダイオード130における受光量に基づいて発生する電流を測定し、この電流量に基づいて検知対象物体200までの距離を判定する。
【0030】
上記のように本実施形態に係る近接センサによれば、周囲環境の明るさに関わらず安定した測定が可能となる。本効果につき、以下説明する。
【0031】
本願発明者らは、明るい環境(明環境)と暗い環境(暗環境)とで測定を行った場合、暗環境で安定して測定ができるまでに時間がかかるという課題を発見した。
図6Aは、本実施形態の比較例に係る近接センサにおける、測定回数とカウント数との関係を示すグラフである。本比較例では、上記実施形態で説明した待機動作を行わなかった場合において、検知対象物体200が存在する場合の近接動作時の測定結果を示している。明環境では1回目からの測定で、例えば約900カウント程度の検知を確認でき、その後もカウント数はほぼ一定である。これに対して暗環境では、1回目の測定でのカウント数は例えば約600カウントであり、以降カウント数は徐々に増えていき、例えば約25回目の測定で、明環境の結果と同等になる。このように、暗環境においては、複数回の測定を待たなければ、正確な測定結果を得られない場合がある。
【0032】
図6Bは、本実施形態に係る近接センサにおける、測定回数とカウント数との関係を示すグラフであり、
図6Aと同様の条件下で測定を行った結果である。図示するように、本実施形態では、暗環境においても、1回目の測定で明環境と同等のカウント数が得られた。
【0033】
本願発明者らは、
図6Aに示すように暗環境において初期の測定で正確な測定結果が得られない現象につき、次のように検討した。
図7はフォトダイオード130の断面図である。図示するようにフォトダイオード130は、例えばp型のシリコン基板500上にn型ウェル501を設けることにより形成される。シリコン基板500では、光を受光する事でキャリア(電子)が励起される。その電子が、p型基板500から、エネルギー準位の低いn型ウェル501に移動する事でフォトダイオード130に電流が流れる。またシリコン基板500内には、一定数の格子欠陥が存在していることが知られている。すると、
図8の、比較例に係るフォトダイオード130の断面図に示すように、暗環境で近接信号光(検知対象物体200からの反射光)により発生したキャリアの一部は、格子欠陥によりトラップ(再結合)されるため、全てのキャリアが信号成分として出力されないと考えられる。
【0034】
一方、
図9のフォトダイオード130の断面図に示すように、明環境では常時キャリアが発生しており格子欠陥にキャリアがトラップされている状態である。従って、近接信号光により発生したキャリアの大部分は格子欠陥にトラップされることなく、信号成分として出力されていると考えられる。
【0035】
次に暗環境から近接動作を連続で行った時に近接の測定結果が上昇していくメカニズムについて説明する。これは暗環境から近接動作を連続して動作していくことでフォトダイオード130の状態が明環境の状態に変化していると考える事ができる。
図10は比較例に係るフォトダイオード130の断面図であり、暗環境から連続して近接動作を行った時のフォトダイオード130の状態変化を示す図である。図示するように、暗環境では格子欠陥が最も多い状態であり、この状態で近接動作を行うと近接信号光により発生したキャリアの多くは信号成分としてフォトダイオードから出力されるが、格子欠陥が存在する事でキャリアは確率的に格子欠陥にトラップ(再結合)されることで、信号として出力されないと考えられる。そして、近接動作を繰り返して行うことで格子欠陥の多くがキャリアと再結合され、最終的に明環境の格子状態に近づいていくと考えられる。
【0036】
上記の検討結果に基づき、本実施形態では、近接動作前の格子欠陥の状態を暗環境と明環境で合わせておくことで、本課題(暗環境で近接測定結果が安定するまでに時間がかかる)を解決できる。具体的には、待機動作時において、フォトダイオード130に電圧を印加し電流を流すことで、シリコン基板500内の格子欠陥を減らすことが可能である。すなわち、発光素子により光を照射して検知対象物体までの距離を測定する動作(近接動作)の前に、バイアス印加部320により、フォトダイオード(受光素子)130にバイアス(本例では負電圧)を印加する。これにより、フォトダイオード130がオン状態とされた際に流れる順方向電流IONを、当該フォトダイオードのpn接合に流す。換言すれば、フォトダイオード130のpn接合に電子を注入する。これにより、シリコン基板500内の格子欠陥に電子をトラップさせる。つまり、フォトダイオード130のpn接合に順方向電流を流した後において欠陥準位にトラップされているキャリアの数は、pn接合に順方向電流を流す前において欠陥準位にトラップされているキャリアの数よりも大きい。上記の結果、近接動作を行う前に、フォトダイオード130の格子欠陥に予め電子をトラップさせることで、暗環境であっても、明環境と同等の格子状態が得られる。よって、暗環境であっても、測定当初から、反射光により発生したキャリアのほとんどを信号成分として取り出すことができる。このように、近接動作の前にフォトダイオード130に電圧を印加して電流を流すことにより、暗環境であっても明環境であっても同等の条件で検知対象物体200の距離を測定できるため、周囲環境の明るさに関わらず安定した測定が可能となり、本課題を解決できる。
【0037】
なお、ダイオードには、電流を流すことで微弱ではあるが光を放出する特性があることも知られている。そのフォトダイオード自身が発する微弱光によりフォトダイオード内にキャリアが発生している可能性もあることも考えられるが、この場合であってもフォトダイオード130にバイアスを印加することで、明環境と暗環境にシリコン基板500内の格子状態の差を低減することが可能である。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る光センサについて説明する。本実施形態は、上記第1実施形態で説明したバイアス印加部320を、負電圧発生回路321の代わりにバイポーラトランジスタを形成することにより実現するものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0039】
図11は、本実施形態に係る近接センサ100においてバイアス印加部320、フォトダイオード130、スイッチ部330、及び測定部140を示す回路図である。図示するように、本実施形態に係るバイアス印加部320は、電流源323、ダイオード324、及びスイッチ素子325、326、327を備えている。電流源323は、スイッチ素子325を介して、ダイオード324のアノードに接続される。スイッチ素子325は、例えば制御部300から与えられる信号S4によって制御され、信号S4が例えば“H”レベルとされることでオン状態となる。ダイオード324は、カソードがノードN10、すなわちフォトダイオード130のカソードに接続される。従って、ダイオード324とフォトダイオード130は、それぞれのカソードがベース電極に相当するpnp型バイポーラトランジスタとして機能する。スイッチ素子326は、ダイオード324のアノードとノードN10との間を接続する。スイッチ素子326は、例えば制御部300から与えられる信号S6によって制御され、信号S6が例えば“H”レベルとされることでオン状態となる。スイッチ素子327は、ノードN10、すなわちダイオード324のカソードとフォトダイオード130のカソードとの接続ノードと、例えば接地ノード(第1ノード)との間を接続する。スイッチ素子327は、例えば制御部300から与えられる信号S5によって制御され、信号S5が例えば“H”レベルとされることでオン状態となる。
【0040】
図12Aは、待機動作時におけるバイアス印加部320の動作について示している。図示するように、待機動作時において制御部300は、信号S4及びS5を“H”レベルとし、信号S6を“L”レベルとする。これにより、スイッチ素子325及び327がオン状態となる。すると、ノードN10、すなわちダイオード324とフォトダイオード130から構成されるバイポーラトランジスタのベース電位がゼロVとなり、当該バイポーラトランジスタがオン状態となる。これにより、電流源323からダイオード324及びノードN10を介してフォトダイオード130に電流が流れる。この際、フォトダイオード130におけるpn接合には逆バイアスが印加されるため、当該pn接合では降伏現象が発生し、
図3Bで説明した降伏電流Ibreakが流れる。降伏電流Ibreakの絶対値は、第1実施形態で説明した電流I
ONと同様に、リーク電流Ioffの絶対値よりも大きく、また、光がフォトダイオード130に入射しない際に流れる暗電流の絶対値よりも大きい。なお、上記バイポーラトランジスタのベースがスイッチ素子327によって接続される第1ノードの電位が接地電位(ゼロV)である場合を例に説明したが、必ずしも接地電位に限らず、バイポーラトランジスタをオン状態として、フォトダイオード130に降伏電流を流すことができる電位であればよい。
【0041】
図12Bは、近接動作時におけるバイアス印加部320の動作を示している。図示するように、近接動作時において制御部300は、信号S4及びS5を“L”レベルとし、信号S6を“H”レベルとする。これにより、スイッチ素子325及び327がオフ状態となり、スイッチ素子326がオン状態となる。この結果、ダイオード324のアノード及びカソードは同電位となり、ダイオード324及びフォトダイオード130のカソードも第1ノードから電気的に非接続とされる。このため、ダイオード324とフォトダイオード130から構成されるバイポーラトランジスタはオフ状態となり、電流源323からフォトダイオード130には電流は流れない。そして、スイッチ素子331がオン状態とされ、検知対象物体200からの反射光によって流れる電流に基づく電荷が、測定部140の容量素子450に充電される。
【0042】
上記のように、バイポーラトランジスタを構成することによりバイアス印加部320を実現してもよい。第1実施形態では、バイアス印加部320として、負電圧発生回路321を用いる場合を説明した。しかし、使用する半導体プロセスや許容されるチップサイズによっては負電圧回路の使用が困難な場合がある。その際はフォトダイオード130に対して逆方向にバイアスを印加して、降伏電流を流すことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。しかし、通常の電源電圧(例えば1.8~3.6V程度)では十分な電流を流すことが出来ない場合がある。そのような場合において、本実施形態のように、フォトダイオード130のカソードに別のダイオード(フォトダイオード)のカソードを接続することでpnp型バイポーラトランジスタを形成すればよい。これにより、通常の電源電圧であっても、フォトダイオード130に電流を流すことが可能である。
【0043】
そして本方法によれば、フォトダイオード130に降伏電流Ibreakを流すことにより、第1実施形態と同様に、フォトダイオード130のpn接合にキャリアを注入できる。これにより、暗環境であっても、近接動作を行う前に、フォトダイオード130の格子欠陥に予めキャリアをトラップさせることで、明環境と同等の格子状態が得られる。よって、暗環境であっても、測定当初から、反射光により発生したキャリアのほとんどを信号成分として取り出すことができる。
【0044】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る光センサについて説明する。上記第1及び第2実施形態では、近接センサ100が発光素子120を備える場合を例に説明した。これに対して本実施形態は、上記第1及び第2実施形態において、近接センサ100が発光素子を備えず、発光素子及び発光素子駆動回路が近接センサ100の外部に設けられる構成に関する。以下では、上記第1及び第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0045】
図13は、本実施形態に係る光センサシステムの回路図である。図示するように、光センサシステムは、近接センサ100及び発光素子駆動回路1000を備えている。近接センサ100の構成は、上記第1及び第2実施形態とほぼ同様の構成であるが、第1実施形態で説明した
図2の構成において、発光部310が廃されると共に、新たに出力回路600を備えている。なお、
図13ではバイアス印加部320として、第1実施形態で説明した負電圧発生回路321を用いる場合を示しているが、第2実施形態の
図11で説明したようにバイポーラトランジスタを構成する場合であってもよい。制御部300は、第1実施形態で説明した例えば
図3に示すタイミングで発光素子を駆動するための信号S3を出力回路600に出力する。出力回路600は、受信した信号S3を、近接センサ100外部の発光素子駆動回路1000に出力する。
【0046】
発光素子駆動回路1000は、第1実施形態で説明した発光部310に相当し、発光部と同様の構成を有している。図示するように発光素子駆動回路1000は、発光ダイオード(発光素子)1120、スイッチ素子1312、及び電流源1313を備えている。本例では、発光ダイオード1120が、
図1で説明した発光素子120と同様の機能を果たす。スイッチ素子312は、出力回路600から与えられる信号S4によって制御され、発光ダイオード1120のカソードを電流源1313と接続する。また発光ダイオード1120のアノードは電源と接続される。そして、信号S4すなわち信号S3が例えば“H”レベルとされることによりスイッチ素子1312がオン状態になると、発光ダイオード1120に電流が印加され、発光ダイオード1120は検知対象物体200に向けて光を照射する。また、発光素子駆動回路1000は、発光ダイオード1120を制御するための図示せぬ駆動回路を備えていてもよいし、図示はしないが逆にスイッチ素子1312と電流源1313は近接センサ100の内部に具備し、発光ダイオード1120だけを近接センサ100外部に設けてもよい。
【0047】
本実施形態によれば、近接センサ100と発光素子1120とが互いに独立して設けられる。従って、発光素子1120と受光素子130との距離を大きくしたいアプリケーションにおいて特に有用である。
<変形例など>
上記のように、第1及び第2実施形態に係る光センサによれば、暗環境であるか明環境であるかに関わらず、近接動作の信頼性を向上できる。なお、上記では種々の実施形態を用いて説明を行なったが、実施形態は上記に限定されず、種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、フォトダイオード130としてpn接合ダイオードの場合を例に説明したが、p型層とn型層との間に真性半導体層を設けたPIN型ダイオードであってもよい。また第1実施形態では、バイアス印加部320として負電圧発生回路321を用いる場合を例に説明した。しかし、フォトダイオード130のアノードの電位によっては、正電圧発生回路を用いてもよく、フォトダイオード130に順方向バイアスを印加できる構成であればよい。これは第2実施形態でも同様であり、仮想的なpnp型バイポーラトランジスタのベース電位はゼロVに限らず、バイポーラトランジスタがオン状態となる電位であれば限定されない。また、待機動作時においてフォトダイオード130に電流を流す期間は、例えば制御部300によって制御可能としてもよい。また、ユーザが電流を流す期間を制御部300に設定してもよい。電流を流す期間の一例としては、例えば100μsなどであるが、これはフォトダイオード130のサイズや、格子欠陥の程度に依存する。従って制御部300には、出荷前のテスト動作で適切とされた期間が設定されてもよいし、または近接センサを搭載したデバイスに電源が投入されたタイミングなどにおいて、制御部300が近接動作のテストを実施し、その結果に基づいて適切な期間を得る構成であってもよい。このような近接センサを搭載するデバイスとしては、例えばスマートフォンや、ワイヤレスイヤホンなどが挙げられる。例えばスマートフォンに搭載される場合、スマートフォンの前面はタッチパネルであることが一般的である。従って、電話の着信があって、ユーザがスマートフォンを自身の耳に近づけた際に、近接センサがそれを検知し、タッチパネル機能を無効にしてもよい。また、近接センサは、スマートフォン等の電子機器のパネル下に配置されることが一般的である。このような場合には、電子機器のパネルからの反射光を検知対象物体として判断して誤作動する可能性がある。このような問題の対策としては、発光素子と受光素子との間の距離を離すことが有効であり、第3実施形態で説明した構成を採用することが好ましい。またワイヤレスイヤホンの場合には、ワイヤレスイヤホンがユーザの耳に近づいたことを近接センサが検知し、これに基づいてワイヤレスイヤホンが音を出力するようにしてもよい。また、
図3を用いて説明したタイミングチャートも一例に過ぎず、待機動作及び近接動作が可能であれば、電圧Vch、Vdis、及び信号S1~S3のタイミングは適宜変更可能である。更に、測定部140としてPS-ADCを用いる場合を例に説明したが、フォトダイオード130に流れる電流に基づいて検知対象物体200との距離を演算可能な構成であれば、特に限定されない。
【0049】
上記では、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上述した形態に限定されるものではなく、適宜変形可能である。そして上記の構成は、実質的に類似の構成、類似の作用効果を奏する構成または類似の目的を達成できる構成で置き換えることができる。また、上記実施形態では光センサとして近接センサを例に説明してきたが、検知物の有無を判定するフォトインタラプタや電気信号の通電有無を判定するフォトカプラ等の発光素子から照射される光を受光する全ての半導体光センサに対して本発明は有効である。更に、上記実施形態では、光センサを例に説明したが、不純物が存在する半導体基板または半導体層において、当該不純物の存在が問題なるようなあらゆる場面において適用可能であり、このような場合にバイアス印加部320を設けることにより、欠陥順位を低減し、または完全に無くすことができる。
【符号の説明】
【0050】
100…近接センサ、110…基板、120、1120…発光ダイオード、130…フォトダイオード、140…測定部、150、160…レンズ、170、180…光、200…検知対象物体、300…制御部、310…発光部、311…電源、312、322、325、326、327、331…スイッチ素子、313、1313…電流源、320…バイアス印加部、321…負電圧発生回路、323、400…電流源、324…ダイオード、330…スイッチ部、410、420…MOSトランジスタ、430…オペアンプ、440…コンパレータ、450…容量素子、460…カウンタ回路、500…p型基板、501…n型ウェル、600…出力回路、1000…発光素子駆動回路