(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035727
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/31 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
B65G47/31 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140372
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 詢太郎
【テーマコード(参考)】
3F081
【Fターム(参考)】
3F081AA10
3F081BA01
3F081BC13
3F081CC12
(57)【要約】
【課題】より確実に搬送物の重なりが解消可能であり、搬送物を適宜に搬送可能な搬送装置を提供することである。
【解決手段】搬送面が傾斜する傾斜部を有する搬送装置であって、前記傾斜部は、搬送方向に複数の搬送ゾーンa乃至hに分割されており、少なくとも一組の隣接する搬送ゾーンは、下流側の搬送ゾーンの搬送速度が上流側の搬送ゾーンの搬送速度よりも大きく、少なくとも一部の搬送ゾーンに凹凸を備えたローラがある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面が傾斜する傾斜部を有する搬送装置であって、
前記傾斜部は、搬送方向に複数の搬送ゾーンに分割されており、少なくとも一組の隣接する搬送ゾーンは、下流側の搬送ゾーンの搬送速度が上流側の搬送ゾーンの搬送速度よりも大きく、
少なくとも一部の搬送ゾーンに凸部を備えたローラがあることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ローラの少なくとも一つは、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられた偏り型凹凸ローラであることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ローラの少なくとも一つは、長手方向の略全域に凸部が設けられた全域型凹凸ローラであることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記ローラには、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられた偏り型凹凸ローラと、長手方向の略全域に凸部が設けられた全域型凹凸ローラが混在していることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
少なくとも一つの搬送ゾーンが、搬送物を逆方向に付勢する動作を一時的に実行することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
凸部の高さが異なるローラがあり、搬送方向上流側のローラの凸部の高さは下流側の凸ローラの凸部の高さよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を搬送する搬送装置に関するものであり、特に、搬送物の重なりの解消が可能な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配送場や集荷場、倉庫等では、搬送物を搬送する搬送装置が使用されている。このような搬送装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1には、搬送方向の下流側に向かうにつれて下り勾配となる下向き傾斜部分と、搬送方向の下流側に向かうにつれて上り勾配となるように傾斜した傾斜部分を有する下向き傾斜積降ろし装置が開示されている。
特許文献1の下向き傾斜積降ろし装置では、複数の傾斜コンベヤ装置を並べることで上記した傾斜部分を形成している。そして、傾斜部分で搬送物を搬送する際、搬送物の重なりを解消するため、各傾斜コンベヤ装置では、上流側の傾斜コンベヤ装置よりも下流側の搬送速度を速くして搬送物を搬送することが開示されている。すなわち、傾斜部分では、搬送物が各傾斜コンベヤ装置によって搬送され、下流側の傾斜コンベヤ装置に進むにつれて搬送速度が速くなっていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した下向き傾斜積降ろし装置では、より確実に搬送物の重なりを解消するという観点から改良の余地があった。
【0006】
本発明は、より確実に搬送物の重なりが解消可能であり、搬送物を適宜に搬送可能な搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、搬送面が傾斜する傾斜部を有する搬送装置であって、前記傾斜部は、搬送方向に複数の搬送ゾーンに分割されており、少なくとも一組の隣接する搬送ゾーンは、下流側の搬送ゾーンの搬送速度が上流側の搬送ゾーンの搬送速度よりも大きく、少なくとも一部の搬送ゾーンに凸部を備えたローラがあることを特徴とする搬送装置である。
【0008】
搬送物が上下に重なっている場合、下側の搬送物は全面的に搬送装置の搬送面と接し、上側の搬送物は、少なくとも一部が下の搬送物と接している。
ここで搬送物と搬送面の間の摩擦係数と、搬送物同士の摩擦係数は異なる。また搬送面が傾斜しているから、搬送中に上側の搬送物と下側の搬送物が相対移動し、上側の搬送物が下側の搬送物に対してずれた位置関係になる。
さらに本態様の搬送装置では、搬送部の少なくとも一部が凸部を備えたローラによって構成されている。そのため当該ローラ上を通過するとき、搬送物が上下に振動し、上下の搬送物の間に瞬間的に隙間ができる。そのため、下側の搬送物と上側の搬送物の搬送速度に差が生じ、上側の搬送物と下側の搬送物の間のずれは大きなものとなる。
その結果、一部に重なり部分があるものの、複数の搬送物が搬送方向に対して前後の位置関係となる。
一方、少なくとも一組の隣接する搬送ゾーンにおいて、下流側の搬送ゾーンの搬送速度が上流側の搬送ゾーンの搬送速度よりも大きいから、搬送方向の前側(下流側)の搬送物が、搬送方向の後側(上流)の搬送物よりも早く移動し、複数の搬送物の間が引き離される。
【0009】
上記した態様において、前記ローラの少なくとも一つは、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられた偏り型凹凸ローラであることが望ましい。
【0010】
本態様の搬送装置で採用されるローラは、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられた偏り型凹凸ローラである。そのため、偏り型凹凸ローラの上に乗った搬送物は、全体的に上下移動するものでなく、一部が上下に移動することとなる。従って重なり状態の搬送物は、搬送方向に対して左右方向の一方が持ち上がり、全体的に搬送方向に対して右方向又は左方向に傾く。
そのため上の搬送物は、下の搬送物に対して横方向に相対移動する。
また偏り型凹凸ローラは、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられているので搬送速度が部位によって異なる。すなわち、凸部が設けられた領域は、凸部が障害となるので搬送速度が遅く、上に乗った搬送物の移動速度が遅い。そのため、搬送装置の幅方向の領域で搬送速度が相違し、横並びになった搬送物の一方が先行して進む。その結果、搬送物が並走状態となることが防がれる。
【0011】
上記した態様において、前記ローラの少なくとも一つは、長手方向の略全域に凸部が設けられた全域型凹凸ローラであることが望ましい。
【0012】
全域型凹凸ローラは、長手方向の略全域に凸部があるので、搬送物が全域型凹凸ローラのどの位置を通過しても凸部に当たり、振動する。
【0013】
上記した態様において、前記ローラには、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられた偏り型凹凸ローラと、長手方向の略全域に凸部が設けられた全域型凹凸ローラが混在していることが望ましい。
【0014】
本態様の搬送装置では、偏り型凹凸ローラと全域型凹凸ローラが混在しているので、各種の重なり方をした搬送物に対応し、搬送物の重なりを解消することができる。
【0015】
上記した態様において、少なくとも一つの搬送ゾーンが、搬送物を逆方向に付勢する動作を一時的に実行することが望ましい。
【0016】
本態様によると、搬送物を逆方向に付勢することにより、上側の搬送物がしゃくられてずれ動く。その結果、上側の搬送物が下側の搬送物に対してずれた位置関係になる。
【0017】
上記した態様において、凸部の高さが異なるローラがあり、搬送方向上流側のローラの凸部の高さは下流側の凸ローラの凸部の高さよりも高いことが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、より確実に搬送物の重なりが解消可能であり、搬送物を適宜に搬送可能な搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は本発明の実施形態に係る搬送装置の側面図であり、(b)はその平面図である。
【
図2】
図1で示す傾斜部の搬送用ローラの一つたる通常型ローラを示す説明図であり、(a)は通常型ローラの斜視図であり、(b)は通常型ローラの一部破断斜視図であり、(c)は(a)をA方向からみた説明図であって高摩擦材にハッチングを入れて示すものである。
【
図3】
図1で示す傾斜部の搬送用ローラの一つたる全域型凹凸ローラを示す説明図であり、(a)は全域型凹凸ローラの斜視図であり、(b)は全域型凹凸ローラの一部破断斜視図であり、(c)は(a)をA方向からみた説明図であって高摩擦材にハッチングを入れて示すものである。
【
図4】
図1で示す傾斜部の搬送用ローラの一つたる偏り型凹凸ローラを示す説明図であり、(a)は偏り型凹凸ローラの斜視図であり、(b)は偏り型凹凸ローラの一部破断斜視図であり、(c)は(a)をA方向からみた説明図であって高摩擦材にハッチングを入れて示すものである。
【
図5】(a)乃至(d)は、
図1の搬送装置の上に搬送物が重なった状態で乗った場合における搬送物の挙動を側面側から見た説明図である。
【
図6】(a)乃至(d)は、搬送装置の上に搬送物が重なって乗った場合における搬送物の挙動を上から見た説明図であり、(e)は、側方から見た説明図である。
【
図7】(a)、(b)、(c)は、搬送装置の上に搬送物が4個重なって乗った場合における搬送物の挙動を上から見た説明図である。
【
図8】(d)、(e)は、搬送装置の上に搬送物が4個重なって乗った場合における
図7に続く搬送物の挙動を上から見た説明図である。
【
図9】(a)乃至(e)は、搬送用ローラの変形例を示す斜視図である。
【
図10】(a)乃至(d)は、
図9(e)の搬送用ローラを使用した搬送装置の動作を示す説明図である。
【
図11】本発明の他の実施形態の搬送装置の斜視図である。
【
図12】(a)は、
図11の傾斜部を示す平面図であり、(b)は、
図11の上側連結部及び傾斜部の一部を側方から見た様子を模式的に示す説明図である。
【
図14】
図11の搬送装置で搬送物を搬送する様子を示す説明図であり、導入部及び導入部に近接する部分を示す。
【
図15】
図14に続いて搬送物を搬送する様子を示す説明図であり、導入部及び導入部に近接する部分を示す。
【
図16】
図15に続いて搬送物を搬送する様子を示す説明図であり、導入部及び導入部に近接する部分を示す。
【
図17】
図16に続いて搬送物を搬送する様子を示す説明図であり、導入部及び導入部に近接する部分を示す。
【
図18】
図17に続いて搬送物を傾斜部で搬送する様子を示す図であり、(a)は、傾斜部の一部を上方からみた平面図であり、(b)は、(a)の状態の傾斜部の一部を側方から見た様子を模式的に示す説明図である。
【
図19】
図18に続いて搬送物を傾斜部で搬送する様子を示す図であり、(a)は、傾斜部の一部を上方からみた平面図であり、(b)は、(a)の状態の傾斜部の一部を側方から見た様子を模式的に示す説明図である。
【
図20】
図19に続いて搬送物を傾斜部で搬送する様子を示す図であり、(a)は、傾斜部の一部を上方からみた平面図であり、(b)は、(a)の状態の傾斜部の一部を側方から見た様子を模式的に示す説明図である。
【
図21】搬送物を傾斜部で搬送する様子を示す図であり、重なり解消動作の実行時に下側の搬送物の一部が第二領域に侵入した後に搬送物の重なりが解消されていく様子を示す説明図であって、(a)乃至(c)の順に重なりが解消されていく。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の搬送装置100は、
図1の様に傾斜した領域があり、搬送物は、傾斜した搬送面108を登って搬送されてゆく。
搬送装置100の傾斜領域は、a乃至hの8搬送ゾーンに区切られており、各搬送ゾーンが独立して起動・停止する。
すなわち各搬送ゾーンは、常時停止している。各搬送ゾーンには、図示しない在荷センサーがあり、当該搬送ゾーンに搬送物が到達して在荷センサーが搬送物を検知すると、当該搬送ゾーンが起動し、搬送物を下流側の搬送ゾーンに搬送する。
【0021】
各搬送ゾーンは短尺のローラコンベヤであり、それぞれ4個のローラ101を備えている。
4個のローラ101のいずれか一つはモータが内蔵されたモータ内蔵ローラであり、他は空転ローラである。ソーン内のローラ101には、
図1の様に隣接するローラ101の間にベルト部材107が巻回されており、一つのモータ内蔵ローラの回転力が他のローラに伝動され、搬送ゾーン内の全てのローラが回転する。
【0022】
本実施形態で採用するローラ101は、
図2乃至
図4で示されるように、ローラ本体102に高摩擦材103(滑落防止手段)を取り付けて形成されている。高摩擦材103は、ウレタン樹脂やゴム等(本実施形態ではゴム)の摩擦係数の高い材質によって形成される部材であり、ローラ本体102の外周面を覆っている。つまり、高摩擦材103は、内部にローラ本体102が位置する筒状の部材であり、ローラ本体102の周方向に環状(円環状)に連続している。
【0023】
本実施形態では、三種類のローラ101が使用されている。
ローラ101aは通常型ローラであり、
図2の様に円柱状であって表面は平滑である。他の二種類のローラは、表面に凹凸がある。
凹凸を有するローラ101の一つは、
図3の様に、長手方向の略全域に至る凸部が設けられた全域型凹凸ローラ101bである。
全域型凹凸ローラ101bは、表面に長手方向に延びる凸条105が2本設けられている。
2本の凸条105は、対向する位置にある。全域型凹凸ローラ101bの突条105の部分は凸部であり、それ以外の部分は、凹部106である。
【0024】
凹凸を有するローラ101の他の一つは、
図4の様に、長手方向の一部であって一方に寄った位置に凸部が設けられた偏り型凹凸ローラ101cである。
本実施形態で採用する偏り型凹凸ローラ101cは、表面に長手方向に延びる凸条105が2本設けられている。
凸条105の長さは、ローラ本体102の長さの約半分であり、一方に寄った位置にある。偏り型凹凸ローラ101cの2本の凸条105は、対向する位置にある。偏り型凹凸ローラ101cの突条105の部分は凸部であり、それ以外の部分は、凹部106である。
【0025】
前記した様に搬送装置100の傾斜領域は、a乃至hの8搬送ゾーンに区切られており、互い違いの搬送ゾーンに、全域型凹凸ローラ101b又は偏り型凹凸ローラ101cが一本ずつ配置されている。
すなわち、一番上流(下側)の搬送ゾーンaには全域型凹凸ローラ101bがあり、続く搬送ゾーンbには偏り型凹凸ローラ101cがあり、続く搬送ゾーンcには全域型凹凸ローラ101bがあり、続く搬送ゾーンdには偏り型凹凸ローラ101cがあり、続く搬送ゾーンeには全域型凹凸ローラ101bがあり、続く搬送ゾーンfには偏り型凹凸ローラ101cがあり、続く搬送ゾーンgには全域型凹凸ローラ101bがあり、続く搬送ゾーンhには偏り型凹凸ローラ101cがある。他はすべて通常型ローラ101aである。
【0026】
なお本実施形態では、一番上流(下側)の搬送ゾーンaの全域型凹凸ローラ101bは、凸条105の高さが他の搬送ゾーンの物に比べて高い。
この理由は、一番上流(下側)の搬送ゾーンaの搬送面が、上に向かってカーブしているため、搬送物200の底面の一部にしかローラ101が接しない可能性があるので、凸条105の高さを高くして搬送物200との接触機会を確保するためである。
【0027】
変形例の一つとして、凸条105の高さが搬送方向の下流側に向かうほど(上に向かうほど)低くなっていてもよい。
後記するように各搬送ゾーンは下流側に向かうほど搬送速度が速くなり、ローラ101の回転速度が増加するので、搬送物200に突条105が衝突する回数が増える。そのため各搬送ゾーンは下流側に向かうほど凸条105の高さを低くして搬送物200に与える衝撃を弱めることが考えられる。
同様の理由から、凸条105の条数を下流側に向かうほど少なくすることも有効である。
【0028】
次に搬送装置100の機能について説明する。
搬送装置100を構成する各搬送ゾーンのローラ101は、常時停止しており、当該搬送ゾーンに搬送物が到達するか、その手前の搬送ゾーンに搬送物が到達すると、当該搬送ゾーンが起動し、搬送物を下流側の搬送ゾーンに搬送する。各搬送ゾーンの搬送速度はすべて相違し、下流側に行くほど速い。
すなわち最も上の搬送ゾーンhの搬送速度が最も大きく、最も下の搬送ゾーンaの搬送速度が最も小さい。
搬送速度の関係は、次の様になっている。
【0029】
a<b<c<d<e<f<g<h
【0030】
搬送装置100は、搬送対象となる搬送物として、はがき、封筒、冊子等の最大厚さが2cm以下となる薄い搬送物200、201(薄物搬送物)を想定している。
また搬送物200、201が重った状態で運ばれてくることを想定しており、傾斜部分で重なりを解消するものである。
【0031】
図5aの様に搬送物200、201が重った状態で搬送装置100に搬送されて、全域型凹凸ローラ101bまたは偏り型凹凸ローラ101cに至ると、全域型凹凸ローラ101b等の回転によって凸条105が下の搬送物200の下面をたたき、搬送物200、201が振動する。その結果、
図5cの様に搬送物200、201が跳ねて、搬送物200と、搬送物201の間がわずかに離れる。また離れないまでも、上の搬送物201の荷重が軽減される。
搬送装置100は、下流側が上となる様に傾斜しているので、振動によって上の搬送物201が相対的に下方向にずれる。
また搬送物200と上の搬送物201との間の摩擦係数は、ローラ101と下の搬送物200の間の摩擦係数よりも低いことからも上の搬送物201が相対的に下方向にずれる。すなわちローラ101と下の搬送物200の間の摩擦係数が高くて滑りにくいので、下の搬送物200は、ローラ101の回転に従い、ローラ101の回転に対して同期的に移動する。これに対して上の搬送物201と下の搬送物200の間の摩擦係数は低く、滑りやすいので、上の搬送物201は下の搬送物200に追従できずにずれ動く。
その結果、上の搬送物201は一部が下の搬送物200に乗り、残部が上流側(下側の)の搬送ゾーンに乗る。
また下の搬送物200は、下面が全体的に搬送面と接した状態を維持する。
【0032】
ここで各搬送ゾーンは、下流に向かうほど速いので、下の搬送物200は、速いローラ101に引かれて早く進み、上の搬送物201は遅いローラ101に乗っているので進みが遅い。その結果、
図5dの様に搬送物200、201が引き離される。
【0033】
次に、重なった状態の搬送物200、201が偏り型凹凸ローラ101cの上に乗った場合の挙動について
図6を参照しつつ説明する。
重なった状態の搬送物200、201が偏り型凹凸ローラ101cの上に乗ると、
図6(e)の様に、搬送物200、201の一部だけが凸条105によって持ち上げられ、搬送物200が進行方向に対して横方向に傾く。そのため上の搬送物201は、
図6(b)の様にやや横方向にずれ、
図6(c)の様に、搬送物200の斜め後ろに落ちる。
その結果、搬送物201は偏り型凹凸ローラ101cの凸条105が無い部分と接する。一方、下にあった搬送物200は、依然として凸条105が存在する領域にある。
【0034】
ここで凸条105がある領域の搬送物200と、凸条105が無い領域の搬送物201は、移動速度が相違し、凸条105が無い領域の搬送物201の方が速い。
すなわち、凸部が設けられた領域は、凸条105が障害となるので搬送物200の移動が遅い。そのため、搬送物200と搬送物201は、
図6(c)の様に一時的に並走状態となるが、進むうちに、
図6(d)の様に搬送物201が先行し、搬送物200と搬送物201は直列状に並ぶ。
【0035】
次に、複数の搬送物が複雑に重なった場合の挙動について
図7、
図8を参照しつつ説明する。
図7、
図8は、4個の搬送物200、201、202、203が重なって搬送装置100に搬送されてきた場合の挙動を示す。
図7(a)の様に、4個の搬送物200、201、202、203は、搬送物200の上に搬送物201が乗り、搬送物202の上に搬送物203が乗っている。また搬送物200、搬送物201の山の一部と、搬送物202、搬送物203の山の一部が重なっている。
【0036】
また前記した様に、搬送装置100では、互い違いの搬送ゾーンに、全域型凹凸ローラ101b又は偏り型凹凸ローラ101cが一本ずつ配置されている。
すなわち、搬送ゾーンaには全域型凹凸ローラ101bがあり、搬送ゾーンbには偏り型凹凸ローラ101cがあり、搬送ゾーンcには全域型凹凸ローラ101bがあり、搬送ゾーンdには偏り型凹凸ローラ101cがあり、搬送ゾーンeには全域型凹凸ローラ101bがあり、搬送ゾーンfには偏り型凹凸ローラ101cがあり、搬送ゾーンgには全域型凹凸ローラ101bがあり、搬送ゾーンhには偏り型凹凸ローラ101cがある。
【0037】
4個の搬送物200、201、202、203は、
図7(a)の様に、重なった状態でゾーンaに入る。そしてゾーンaを通過すると、
図7(b)の様に、ゾーンaの全域型凹凸ローラ101bによって、搬送物200の上にあった搬送物201が上流側(下側)にずれ、搬送物202の上にあった搬送物203も同様に上流側にずれる。
【0038】
続いて、4個の搬送物200、201、202、203がゾーンbを通過すると、
図7(c)の様に、ゾーンbの偏り型凹凸ローラ101cを通過する際に、進行方向に向かって右列の搬送物200、201の進行が突条105に妨げられて遅れ、進行方向に向かって左列の搬送物202、203が先行する。
【0039】
続いて、4個の搬送物200、201、202、203がゾーンcを通過すると、
図8(d)の様に、ゾーンcの全域型凹凸ローラ101bによって、搬送物200の上にあった搬送物201がさらに上流側にずれ、搬送物202の上にあった搬送物203も同様にさらに上流側にずれる。その結果、4個の搬送物200、201、202、203が完全に分離された状態となる。
【0040】
続いて、4個の搬送物200、201、202、203がゾーンdを通過すると、
図8(e)の様に、ゾーンdの偏り型凹凸ローラ101cを通過する際に、進行方向に向かって右列の搬送物200、201の進行が突条105に妨げられて遅れ、進行方向に向かって左列の搬送物202、203が先行する。その結果、4個の搬送物200、201、202、203の併進状態が解消され、4個の搬送物200、201、202、203が直列的に搬送されてゆく。
【0041】
以上説明した搬送装置100は8搬送ゾーンに分かれているが、搬送ゾーン数は任意である。
以上説明した搬送装置100では、全域型凹凸ローラ101bと偏り型凹凸ローラ101cが混在しているが、いずれか一方だけでもよい。
以上説明した搬送装置100では、搬送ゾーンb、d、f、hの偏り型凹凸ローラ101cは、いずれも進行方向に対して右側に寄った位置に凸条105があるが、右側に寄ったものと左側に寄ったものが混在していてもよい。なお右側に寄った位置に凸条105がある偏り型凹凸ローラ101cの本数と、左側に寄った位置に凸条105がある偏り型凹凸ローラ101cの本数は、異なっていることが望ましい。
【0042】
以上説明した実施形態では、凸条105によってローラ101の表面に凹凸を設けたが、凹凸の形状や配列は任意である。例えば
図9(a)に示すローラ101dの様な独立した突起120が配列されているものであってもよい。また例えば
図9(b)に示すローラ101eの様に全体的に楕円形であったり、
図9(c)に示すローラ101fの様な多角形であってもよい。
図9(b)に示す楕円形のローラ101eでは、楕円の長円の部分が凸部である。
図9(c)に示すローラ101fでは、突端部分が凸部である。
図9(d)に示すローラ101gは、凸条105の数が異なる例を示すものである。
【0043】
また
図9(e)の様に突起が柔らかく大きいものであってもよい。
図9(e)に示すローラ110は、
図9(e)、
図10の様に、ローラ101の間隔よりも凸条111の高さが高い。
ローラ110が回転すると、
図10(b)の様に隣接するローラ101に当たって撓み、隣接するローラ101との間をすり抜けて搬送物200に当たる。
【0044】
次に、付帯設備を含む実施形態について説明する。また以下に説明する搬送装置1は、搬送物200、201を凹凸によって振動させる機能に加えて、搬送物を短時間だけ逆方向に付勢する機能も備えている。
本実施形態の搬送装置1は、
図11に示すように、導入部2と傾斜側部3を有している。
【0045】
導入部2は、上流側の搬送路であり、収容部材5を搬送する搬送路を形成する部分であり、上流側から第一コンベヤ装置10、第二コンベヤ装置11、第三コンベヤ装置12を有する。
傾斜側部3は、下流側の搬送路であり、収容部材5内から排出された搬送物(詳しくは後述する)を搬送する搬送路を形成する部分であり、上流側から上流側連結部20、傾斜部21(上り傾斜部)、下流側連結部22を有する。
なお、導入部2の一部(第二コンベヤ装置11、第三コンベヤ装置12)と、傾斜側部3の一部(上流側連結部20)は、互いに平行となるように並走する搬送路を形成する。
また、以下の説明において、各部(第一コンベヤ装置10、第二コンベヤ装置11、第三コンベヤ装置12、上流側連結部20、傾斜部21、下流側連結部22)を平面視したとき、搬送方向と直交する方向を幅方向とも称す。幅方向は、搬送方向及び上下方向と直交する方向である。
【0046】
第一コンベヤ装置10は、ローラコンベヤであり、主要構成部材として、
図11で示されるように、複数のローラ30と、フレーム部材31を備えている。
なお、作図の都合上、一部のローラ30にのみ符号を付し、他への符号を省略する。また、以下の説明においても、同様の部材が複数存在する場合、必要に応じて符号を省略する。
【0047】
ローラ30は、搬送物を搬送する搬送ローラであり、一又は複数のローラ30が駆動ローラであり、他のローラ30が従動ローラである。なお、本実施形態の駆動ローラは、ローラ本体の中にモータと減速機が内蔵されたモータ内蔵ローラであり、モータが稼働することでローラ本体が回転する。そして、駆動ローラが回転することで、ベルト部材を介して動力が従動ローラに伝達され、従動ローラが回転する構造となっている。
【0048】
フレーム部材31は、互いに平行となるように搬送方向に延びた片側フレーム部31aと、他方側フレーム部31bによって構成されている。そして、片側フレーム部31a、他方側フレーム部31bにより、それぞれのローラ30の一方端側の部分と他方端側の部分が支持されている。
【0049】
第一コンベヤ装置10は、図示しない傾動手段を有しており、水平姿勢(
図11参照)と、傾斜姿勢(
図14参照)の切り替えが可能となっている。すなわち、第一コンベヤ装置10は、複数のローラ30とフレーム部材31によって形成される主要部分(本体部分)が、搬送方向と同方向に延びる軸回りに回動自在となっている。そして、水平姿勢の状態から幅方向の一方側(片側フレーム部31a側)を上方に移動させることで、本体部分が幅方向の他方側(他方側フレーム部31b側)に位置する軸回りに回動し、傾斜姿勢に切り替わる。反対に、傾斜姿勢の状態から、幅方向の一方側(片側フレーム部31a側)を下方に移動させることで、本体部分が上記軸回りに回動して水平姿勢に切り替わる。すなわち、傾動手段は、片側フレーム部31a側の部分を上下動させる片側フレーム昇降機構を有しており、傾動手段を駆動させることで片側フレーム部31a側の部分が上下動し、水平姿勢(
図11参照)と、傾斜姿勢(
図14参照)が切り替わる。
【0050】
ここで、第一コンベヤ装置10では、それぞれのローラ30の上側に搬送面が形成される。「搬送面」とは、搬送物又は搬送用部材(本実施形態では収容部材5)との接触部分を繋ぐ仮想面である。すなわち、本実施形態のように第一コンベヤ装置10をローラコンベヤとした場合、搬送面は、水平姿勢におけるそれぞれのローラ30の上部を含む仮想面となる。これに対し、仮に第一コンベヤ装置10にベルトコンベヤを採用した場合には、ベルト上の面を含む仮想面となる。また、上記した「搬送用部材」は、本実施形態の収容部材5やトレーといった、搬送物の搬送に使用する部材である。
【0051】
したがって、第一コンベヤ装置10が水平姿勢であるとき、搬送面は、収容部材5を搬送する部分(各ローラ30の上端部分)の高さと同一の高さに形成される仮想面であり、水平方向に広がりを持つ平面となる。
対して、第一コンベヤ装置10が傾斜姿勢であるとき、搬送面は、第一コンベヤ装置10の幅方向の片側から他方側に向かって下り勾配となるように傾斜した仮想面となる。すなわち、各ローラ30が傾斜することで、それぞれのローラ30で水平姿勢時に上端となる部分も傾斜し、搬送面も傾斜した状態となる。本実施形態では、他方側フレーム部31b側(傾斜側部3側であり、上流側連結部20側)に向かうにつれて下り勾配となるように傾斜した仮想面となる。
【0052】
第二コンベヤ装置11は、ローラコンベヤであり、主要構成部材として、
図11で示されるように、複数のローラ35と、フレーム部材36を備えている。そして、ローラ35は、搬送物を搬送する搬送ローラであり、一又は複数のローラ35が駆動ローラであり、他のローラ35が従動ローラである。そして、駆動ローラが回転することで、ベルト部材を介して動力が従動ローラに伝達され、従動ローラが回転する構造となっている。
【0053】
また、フレーム部材36は、互いに平行となるように搬送方向に延びた片側フレーム部36aと、他方側フレーム部36bによって構成されている。そして、片側フレーム部36a、他方側フレーム部36bにより、それぞれのローラ35の一方端側の部分と他方端側の部分が支持されている。
【0054】
第二コンベヤ装置11は、第一コンベヤ装置10と略同様の構造であるので、重複する詳細な説明を省略する。この第二コンベヤ装置11は、第一コンベヤ装置10が搬送物の搬送動作時に水平姿勢と傾斜姿勢を切り替えるのに対し、傾斜姿勢を常時とるという点が第一コンベヤ装置10と異なる。さらに、押上部材昇降装置(詳しくは後述する、図示しない)を有するという点が第一コンベヤ装置10と異なる。
【0055】
すなわち、第二コンベヤ装置11は、片側フレーム部36aが上方に位置するように傾斜した姿勢をとるコンベヤ装置である。そして、この第二コンベヤ装置11の搬送面は、傾斜姿勢をとる第一コンベヤ装置10の搬送面と同一平面上(略同一平面上)に位置した状態となっている。すなわち、いずれの搬送面も傾斜側部3側に向かうにつれて下り勾配となる面であり、傾斜角度(水平面に対する傾斜角度であり、水平面と搬送面のなす角)が同じ(略同じ)となる。
【0056】
ここで、収容部材5は、上方が解放された箱状体である本体部5aと、押上板部5bを有する(
図15、
図16参照)。本体部5aは、4つの立壁状部が環状に連続する側壁部と底壁部(図示しない)を有する。底壁部(図示しない)には、貫通孔(図示しない)が複数設けられており、それぞれ底壁部を厚さ方向に貫通している。また、押上板部5bは、底壁部上に位置しており、押し上げられていない状態において、底壁部に載置されている。そして、第二コンベヤ装置11の押上部材昇降装置(図示しない)は、押上板部5bを昇降させる装置である。
【0057】
詳細には、押上部材昇降装置は、複数本の棒状部を有しており、それぞれの棒状部を昇降させることが可能となっている。そして、押上板部5bを上昇させる場合には、収容部材5を第二コンベヤ装置11上の規定位置に配した状態で、複数本の棒状部を上方に移動させる。すると、それぞれの棒状部の上側部分がローラ35の間を通って搬送面よりも上方に移動し、収容部材5の底壁部の貫通孔に下方側から挿通され、押上板部5bに下側から接触する。そして、そのまま複数の棒状部を上方に移動させることで押上板部5bが上方に移動していく。反対に押上板部5bを下降させる場合には、上記とは逆の手順で複数本の棒状部を下方に移動させる。このことにより、押上板部5bも下方に移動していく。
【0058】
また、第二コンベヤ装置11と上流側連結部20の境界部分を跨ぐように補助部材40が設けられている。
補助部材40は、傾斜板部と空転ローラ部を有しており、平面視で第二コンベヤ装置11側(導入部2側)から上流側連結部20側(傾斜側部3側)へ向かってこの順で並んでいる。傾斜板部は、上流側連結部20側へ向かって下り勾配となる傾斜面を有する部分である。
【0059】
第三コンベヤ装置12は、第一コンベヤ装置10と略同様の構造であるので、重複する詳細な説明を省略する。
【0060】
上流側連結部20、傾斜部21、下流側連結部22は、一連のローラコンベヤ(コンベヤ装置)であり、上流側連結部20は傾斜部21の上流側に連結する部分であり、下流側連結部22は、傾斜部21の下流側に連結する部分である。
【0061】
上流側連結部20は、複数のローラ45と、上流側フレーム部46を有している。そして、上流側フレーム部46は、互いに平行となるように搬送方向に延びた上流側第一フレーム片46aと、上流側第二フレーム片46bによって構成される。
【0062】
ローラ45は、搬送物を搬送する搬送ローラであり、一又は複数のローラ45が駆動ローラであり、他のローラ45が従動ローラである。なお、本実施形態の駆動ローラは、ローラ本体の中にモータと減速機が内蔵されたモータ内蔵ローラであり、モータが稼働することでローラ本体が回転する。そして、駆動ローラが回転することで、ベルト部材を介して動力が従動ローラに伝達され、従動ローラが回転する構造となっている。
それぞれのローラ45は、上流側第一フレーム片46aと、上流側第二フレーム片46bによって一方端側の部分と他方端側の部分が支持されている。
【0063】
上流側連結部20では、搬送面が水平方向に広がりを持つ平面であり、搬送物を搬送する部分(各ローラ45の上端部分)の高さと同一の高さに形成される。
【0064】
傾斜部21は、ローラ部材(搬送ローラであり、以下、傾斜部ローラ部材50とも称する)と、傾斜側フレーム部51を有している。傾斜部21の主要部分(本体部分)は、複数の傾斜部ローラ部材50と傾斜側フレーム部51によって構成されるローラコンベヤであり、下流側に向かうにつれて搬送位置が高くなるように全体が傾斜した上向き傾斜コンベヤである。
言い換えると、複数の傾斜部ローラ部材50は、下流側に向かうにつれて上端の位置が高位置となるようにそれぞれ配されて並べられている。また、傾斜側フレーム部51も下流側に向かうにつれて上方に向かう方向に延びている。
【0065】
詳細には、傾斜部21は、
図11、
図12(b)で示されるように、下端側部分(上流端部分)と上端側部分(下流端部分)が、中途部分よりもなだらかに傾斜した状態となるように形成されている。言い換えると、下端側部分と上端側部分では、隣接する2つの傾斜部ローラ部材50の上端部分同士の高低差であって、且つ、2つの傾斜部ローラ部材50の水平方向の離間距離当たりの高低差が小さくなる。
ここで、傾斜部21は、中途部分の搬送面が下流側に向かうにつれて上り勾配となる傾斜面となる。そして、水平方向に広がりを持つ上流側連結部20の搬送面と、傾斜部21の中途部分の搬送面の間に、傾斜部21の上流側部分の搬送面が位置する。このため、上流側連結部20の搬送面と、傾斜部21の中途部分の搬送面とがなだらかに連続する。
同様に、傾斜部21の中途部分の搬送面と、下流側連結部22の搬送面の間に傾斜部21の下流側部分の搬送面が位置する。このため、傾斜部21の中途部分の搬送面と、下流側連結部22の搬送面とがなだらかに連続する。以上のことから、本実施形態の傾斜部21では、搬送時に搬送物が引っ掛かり難い構造となる。
【0066】
複数の傾斜部ローラ部材50は、一部の傾斜部ローラ部材50が駆動ローラであり、他の傾斜部ローラ部材50が従動ローラとなっている(詳しくは後述する)。なお、本実施形態の駆動ローラは、ローラ本体の中にモータと減速機が内蔵されたモータ内蔵ローラであり、モータが稼働することでローラ本体が回転する。傾斜側フレーム部51は、互いに平行となるように搬送方向に延びた傾斜側第一フレーム片51aと、傾斜側第二フレーム片51bによって構成される。
【0067】
本実施形態の傾斜部ローラ部材50の構造は、前記した実施形態で採用した通常型ローラ101a及び全域型凹凸ローラ101bと同じである。
すなわち、傾斜部21は通常型ローラ101aと全域型凹凸ローラ101bが混在しており、通常型ローラ101aの中に一定間隔をおいて全域型凹凸ローラ101bが配されている。
【0068】
傾斜部21は、
図11、
図12(a)で示されるように、複数(本実施形態では2つ)のセンサユニット55(搬送物検知手段)を有している。詳細には、搬送方向の上流側から第一センサユニット55a、第二センサユニット55bの順に搬送方向で間隔を開けて並べられた状態となるように配設されている。
【0069】
2つのセンサユニット55は、いずれも同様の構造である。
センサユニット55は、
図13で示されるように、外郭部材60と、複数のセンサ部材61を有している。このセンサユニット55は、複数のセンサ部材61が外郭部材60に固定され、一体化(ユニット化)されたものである。本実施形態のセンサユニット55は、全体の外形を棒状に延びた形状としている。言い換えると、センサユニット55は、その全体が直線状又は略直線状に延びた部分(延設部)であるといえる。つまり、センサユニット55は、延設部を有し、複数のセンサ部材61が延設部に配され、延設部の長手方向に並んだものとなっている。
【0070】
このセンサユニット55では、複数(6つ)のセンサ部材61が間隔を開けて直線状に並列配置され、センサ列を形成している。このとき、センサ部材61の並び方向(並列方向)は、センサユニット55の長手方向と同方向としている。
【0071】
センサ部材61は、物体の存在を検知可能なセンサであり、本実施形態では、反射式の光電センサを採用している。すなわち、センサ部材61は、投光部と受光部を有しており、投光部から投光された光が検知対象となる物体によって反射し、受光部に到達することで、検知対象が所定の場所に存在することを検知する。すなわち、センサ部材61は、所定の場所における検知対象の有無を非接触で検知する検知動作を実行する。
なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、受光部を構成するセンサ素子として、フォトダイオードを採用している。
【0072】
センサ部材61は、検知動作の結果(以下、単に検知結果とも称す)を示す信号、すなわち、物体が存在するか否かを示す信号を生成する。本実施形態のセンサユニット55は、複数(本実施形態では6つ)のセンサ部材61のそれぞれが個別に検知動作を実行し、個別にセンサ信号を生成する。そして、センサユニット55は、この複数(6つ)のセンサ信号をシリアル信号に変換し、搬送装置1の制御装置(図示しない)に送信する。このため、制御装置は、センサユニット55に属する複数のセンサ部材61のセンサ情報、すなわち、それぞれのセンサ部材61の検知結果に関する情報を個別に取得できる。
【0073】
なお、センサユニット55は、それぞれのセンサ部材61の投光方向が上方に向かう方向となるように取り付けられている。すなわち、センサユニット55では、それぞれのセンサ部材61の投光方向が同方向となるように、複数のセンサ部材61が配されている。
本実施形態のセンサユニット55は、それぞれのセンサ部材61が上方を通過する搬送物の底面を検知対象としており、詳細には、設置位置の鉛直上方であって搬送面上となる位置に、搬送物の底面の一部が存在しているか否かを検知する。
【0074】
それぞれのセンサユニット55は、傾斜部21の搬送面よりも下方側となる位置に取り付けられている(
図18参照)。つまり、センサユニット55の上端部分は、搬送面よりも下側に位置しており、センサユニット55に属する複数のセンサ部材61もまた、これらの搬送面よりも下側に位置する。
なお、このセンサユニット55は、長手方向の一端側を傾斜側フレーム部51の一対のフレーム片(傾斜側第一フレーム片51a、傾斜側第二フレーム片51b)の一方側に固定し、他方側を一対のフレーム片の他方側に固定する。上記したように、センサユニット55は、複数のセンサ部材61がユニット化されており、それぞれのセンサ部材61を個別に取り付ける場合に比べて取り付け作業が容易である。
【0075】
付言しておくと、本実施形態では、上記したようにセンサユニット55を搬送面よりも下側に取り付けている。このため、傾斜側フレーム部51のうち、搬送面と同じ高さとなる部分、並びに、搬送面よりも上側に位置する部分にセンサを配置するための加工をする必要がない。このことから、傾斜側フレーム部51のそれぞれのフレーム片では、搬送面以上の高さに位置する部分であり、搬送物が搬送される部分と隣接する部分の面(立壁状部分の内側面の上部、
図11参照)を凹凸のない構造にできる。すなわち、搬送物が引っ掛かり難い構造とすることができる。
【0076】
また、センサユニット55は、
図12(a)等で示されるように、全体の長手方向(延設部の長手方向)が、平面視で傾斜部21の搬送方向を横切る方向となるように配されている。言い換えると、センサユニット55は、平面視において、全体の長手方向が傾斜部21の幅方向と同方向となるように配されている。
【0077】
センサユニット55は、平面視で2つの傾斜部ローラ部材50の間となる位置に取り付けられる。より詳細には、センサユニット55の少なくとも一部がこの2つの傾斜部ローラ部材50の間となる位置に配される。このとき、センサユニット55の長手方向は、傾斜部ローラ部材50の長手方向(軸方向)と同方向となる。
【0078】
本実施形態のセンサユニット55によると、傾斜部21で搬送物が搬送される際(詳しくは後述する)、センサユニット55上を搬送物が通過したことを検知可能である。また、この際に、搬送物の幅方向の位置を特定することができる。例えば、複数のセンサ部材61のうち、幅方向の片側よりの位置に配されたセンサ部材61が物体の存在を検知した(オンとなった)一方で、他のセンサ部材61が物体の存在を検知しなかった(オフのままであった)とする。この場合、搬送物が幅方向の片側よりの位置を通過したことがわかる。つまり、複数のセンサ部材61のうち、物体の存在を検知した(オンとなった)センサ部材61と、物体の存在を検知しなかった(オフのままであった)センサ部材61を特定することで、傾斜部21の幅方向における搬送物の位置が検知できる。
【0079】
なお、センサ部材61がオンとなった時間を検知することで、搬送物がセンサユニット55の上方となる位置からどの程度下流側に進入したのかを判別できる。また、特に限定されるものではないが、それぞれのセンサ部材61のオンオフが時間の経過と共にどのように変化したのかを検知することで、搬送物の姿勢も検知できる。
【0080】
ここで、本実施形態の傾斜部21は、
図12(a)で示されるように、第一ゾーン75、第二ゾーン76(動作非実行部)、第三ゾーン77(動作非実行部)からなる複数(3つ)のゾーンに区画されている。これらは、平面視において、傾斜部21の下流側から第一ゾーン75、第二ゾーン76、第三ゾーン77の順に並んでいる。
そして、第一ゾーン75がさらに第一小ゾーン75a(動作非実行部)、第二小ゾーン75b(動作実行部)からなる複数(2つ)のゾーンに区画されている。これらは、平面視において、傾斜部21の下流側から第一小ゾーン75a、第二小ゾーン75bの順に並んでいる。
【0081】
第一ゾーン75は、平面視において、第一センサユニット55aよりも上流側に位置する傾斜部ローラ部材50が配された領域である。そして、第一小ゾーン75aは、第一ゾーン75に属する傾斜部ローラ部材50のうち、上流側の複数(本実施形態では4つ)の傾斜部ローラ部材50が属する領域である。そして、第二小ゾーン75bは、第一ゾーン75に属する傾斜部ローラ部材50のうち、他の複数(本実施形態では下流側の2つ)の傾斜部ローラ部材50が属する領域である。
本実施形態では、第一小ゾーン75aに全域型凹凸ローラ101bが一本設けられている。他はすべて通常型ローラ101aである。
第二ゾーン76は、平面視において、第一センサユニット55aよりも下流側であり、第二センサユニット55bよりも上流側に位置する傾斜部ローラ部材50が配された領域である。
第三ゾーン77は、平面視において第二センサユニット55bよりも下流側に位置する傾斜部ローラ部材50が配された領域である。
第二ゾーン76及び第三ゾーン77にはそれぞれ一本ずつ全域型凹凸ローラ101bが設けられている。他はすべて通常型ローラ101aである。
【0082】
本実施形態の傾斜部21は、それぞれのゾーン毎に傾斜部ローラ部材50の回転速度と回転方向の制御(設定及び設定変更)が可能となっている。すなわち、第一ゾーン75に属する傾斜部ローラ部材50に回転力を付与する駆動ローラと、第二ゾーン76に属する傾斜部ローラ部材50に回転力を付与する駆動ローラはそれぞれ異なる。言い換えると、それぞれのゾーンに属するローラ群は、異なる動力源から動力を得て回転する。同様に、これらのゾーン(第一ゾーン75、第二ゾーン76)に属する傾斜部ローラ部材50に回転力を付与する駆動ローラと、第三ゾーン77に属する傾斜部ローラ部材50に回転力を付与する駆動ローラはそれぞれ異なる。
【0083】
さらに、第一小ゾーン75aに属する傾斜部ローラ部材50に回転力を付与する駆動ローラと、第二小ゾーン75bに属する傾斜部ローラ部材50に回転力を付与する駆動ローラとはそれぞれ異なる。言い換えると、第一ゾーン75は、第一小ゾーン75aの傾斜部ローラ部材50を回転させる駆動ローラと、第二小ゾーン75bの傾斜部ローラ部材50を回転させる駆動ローラからなる複数の駆動ローラを有する。上記したように、傾斜部21のそれぞれの駆動ローラは、モータ内蔵ローラである。
そして、第一小ゾーン75a、第二小ゾーン75b、第二ゾーン76、第三ゾーン77のそれぞれの領域では、その領域の駆動ローラが回転することで、ベルト部材を介して動力がそのゾーンの従動ローラに伝達され、そのゾーンの従動ローラが回転する構造となっている。以上のことから、それぞれのゾーン毎に傾斜部ローラ部材50の回転速度と回転方向を決定できる。
【0084】
下流側連結部22は、複数のローラ80と、下流側フレーム部81を有している。そして、下流側フレーム部81は、互いに平行となるように搬送方向に延びた下流側第一フレーム片81aと、下流側第二フレーム片81bによって構成される。
【0085】
ローラ80は、搬送物を搬送する搬送ローラであり、一又は複数のローラ80が駆動ローラであり、他のローラ80が従動ローラである。なお、本実施形態の駆動ローラは、ローラ本体の中にモータと減速機が内蔵されたモータ内蔵ローラであり、モータが稼働することでローラ本体が回転する。そして、駆動ローラが回転することで、ベルト部材を介して動力が従動ローラに伝達され、従動ローラが回転する構造となっている。
それぞれのローラ80は、下流側第一フレーム片81aと、下流側第二フレーム片81bによって一方端側の部分と他方端側の部分が支持されている。
【0086】
下流側連結部22では、搬送面が水平方向に広がりを持つ平面であり、搬送物を搬送する部分(各ローラ80の上端部分)の高さと同一の高さに形成される。
【0087】
続いて、本実施形態の搬送装置1で搬送物を搬送する際の動作について説明する。
【0088】
図11で示されるように、搬送物(搬送対象物)が収容された収容部材5が上流側に位置する外部の搬送用の装置から水平姿勢をとる第一コンベヤ装置10に導入されると、第一コンベヤ装置10が水平姿勢から傾斜姿勢に移行する(
図14参照)。
この状態で、第一コンベヤ装置10のローラ30が回転駆動することで、収容部材5が第一コンベヤ装置10から第二コンベヤ装置11に導入される(
図15参照)。すなわち、
図15で示されるように、収容部材5が第二コンベヤ装置11上の規定位置まで搬送される。
【0089】
続いて、第二コンベヤ装置11の押上部材昇降装置(図示しない)により、押上板部5bが押し上げられる(
図16参照)。このことにより、搬送物が収容部材5の本体部5a内から外部に排出される。そして、搬送物が補助部材40上を経て傾斜側部3(上流側連結部20)に導入される。なお、その一方で、第一コンベヤ装置10が傾斜姿勢から水平姿勢へ移行する
【0090】
その後、
図17で示されるように、上流側連結部20に導入された搬送物は、ローラ45が回転駆動することで、上流側連結部20の下流側に搬送されていく。
その一方で、第二コンベヤ装置11では、押上部材昇降装置(図示しない)により、押上板部5bが押し上げられた状態から下降した状態となる(図示しない)。すなわち、押上板部5bが本体部5aの底壁部(図示しない)の近傍まで下降する。この後、第二コンベヤ装置11のローラ35が回転駆動することで、空の収容部材5が第二コンベヤ装置11から第三コンベヤ装置12まで搬送される(
図17参照)。そして、第三コンベヤ装置12が傾斜姿勢から水平姿勢となり、第三コンベヤ装置12のローラ30が回転駆動することで、空の収容部材5が第三コンベヤ装置12上から外部に搬出される。すなわち、空の収容部材5が第三コンベヤ装置12の下流側に位置する外部の搬送用の装置に導入される。
【0091】
また、搬送物は、上流側連結部20の下流まで搬送された後、
図18で示されるように、上流側連結部20から傾斜部21に導入される。すなわち、搬送物が傾斜部21によって斜め上方に搬送されていく。
【0092】
ここで、本実施形態の搬送装置1では、前記した実施形態と同様に、全域型凹凸ローラ101bによって搬送物200、201の重なりが解消される。さらに本実施形態の搬送装置1では、特徴的な動作である重なり解消動作が実行される。
以下、重なり解消動作について説明する。
搬送物が傾斜部21に導入されたとき、傾斜部21のそれぞれのゾーンでは、
図18(b)で示されるように、傾斜部ローラ部材50が搬送物を下流側に搬送する方向(
図18(b)における時計回りの方向)に回転駆動する。
なお、「傾斜部ローラ部材50が搬送物を下流側に搬送する方向」は、傾斜部ローラ部材50の上側部分が上流側から下流側へ向かって動くように回転駆動させる際の回転方向である。以下の説明では、この「傾斜部ローラ部材50が搬送物を下流側に搬送する方向」を正方向とも称し、その反対方向を逆方向とも称す。そして、傾斜部ローラ部材50が正方向に回転駆動する動作を正回転動作とも称し、傾斜部ローラ部材50が逆方向に回転駆動する動作を逆回転動作とも称する。
【0093】
そして、それぞれのゾーンで傾斜部ローラ部材50が正回転動作を実行することで、
図19(a)で示されるように、搬送物が第一センサユニット55a(センサユニット)上の位置まで到達する。また、このことが第一センサユニット55aによって検知される。
【0094】
第一センサユニット55a(センサユニット)によって搬送物が所定位置(本実施形態では第一センサユニット55a上の位置)に到達したことが検知されると、重なり解消動作が実行される。つまり、重なり解消動作は、搬送物が所定位置に到達したことが検知されたことを条件として開始される動作である。
【0095】
本実施形態の重なり解消動作は、
図19(b)で示されるように、第二小ゾーン75bに属する傾斜部ローラ部材50に正回転動作と逆回転動作を実行させる動作である。このとき、第二小ゾーン75bと隣接するゾーン(平面視において搬送方向で隣接する領域)である第一小ゾーン75a、第二ゾーン76では、これらのゾーンに属する傾斜部ローラ部材50が正回転動作を実行する。
【0096】
具体的には、重なり解消動作は、第二小ゾーン75bに属する傾斜部ローラ部材50に第一所定時間t1(本実施形態では1秒)に亘って正回転動作を実行させた後、第二所定時間t2(本実施形態では0.5秒)に亘って逆回転動作させる。本実施形態では、第一所定時間t1を第二所定時間t2よりも長くしている。第一所定時間t1に亘る正回転動作と、第二所定時間t2に亘る逆回転動作とを順に実行させる動作を正逆回転動作としたとき、規定回数(例えば5回)だけ正逆回転動作を実行する。
【0097】
したがって、重なり解消動作では、隣接するゾーンに属する傾斜部ローラ部材50が正回転動作を続ける一方で、第二小ゾーン75bに属する傾斜部ローラ部材50が規定回数だけ正逆回転動作を実行する。なお、このことから第二小ゾーン75bでは、傾斜部ローラ部材50は、正回転動作、逆回転動作、正回転動作、・・・といった具合に正回転動作と逆回転動作を交互に実行することとなる。
【0098】
この重なり解消動作を実行することで、搬送物は、一旦下流側に付勢された後、上流側に付勢され、さらにその後に再度下流側に付勢されるといった具合に、揺さぶられたような状態となる。このことから、複数の搬送物が重なっていた場合、重なりが解消される。
そして、重なり解消動作が終了すると、傾斜部21のそれぞれのゾーンで傾斜部ローラ部材50が正回転動作を実行する(
図20参照)。このことにより、搬送物が傾斜部21の下流側に搬送されていく。
【0099】
本実施形態の傾斜部21では、特定の領域で、正回転動作、逆回転動作、正回転動作、・・・といった具合に正回転動作と逆回転動作を交互に実行される。また本実施形態の傾斜部21では、下流側に向かうにつれて搬送速度が速くなっている。すなわち、第二ゾーン76に属する傾斜部ローラ部材50の回転速度は、第一ゾーン75に属する傾斜部ローラ部材50よりも速く、第三ゾーン77に属する傾斜部ローラ部材50の回転速度は、第二ゾーン76に属する傾斜部ローラ部材50よりも速い。
なお、第一ゾーン75では、第二小ゾーン75bに属する傾斜部ローラ部材50の回転速度を第一小ゾーン75aに属する傾斜部ローラ部材50よりも速くしてもよい。すなわち、同一ゾーン内においても下流側の傾斜部ローラ部材50の回転速度を上流側よりも速くしてもよい。
また、複数の搬送物が重なるとき、下側の搬送物と上側の搬送物の間に働く摩擦力は、下側の搬送物と傾斜部ローラ部材50の間に働く摩擦力よりも小さい。
【0100】
本実施形態のように、特定の位置で重なり解消動作を実行し、さらに下流側に向かうにつれて搬送速度を速くすることにより、搬送物の重なりをより確実に解消することが可能となる。
すなわち、
図21で示されるように、重なった状態で搬送物200、201が第二小ゾーン75bに侵入すると、重なり解消動作が実行され、短時間の内に前進と後退を繰り返す。
一方、搬送面は傾斜している。さらに下側の搬送物200は、加速度に追従して前後に移動するが、上側の搬送物201は加速度に追従できずに遅れる。そのため、上側の搬送物201は、傾斜に従って下側(上流側)にずれる。
【0101】
この状態で、第二ゾーン76に入ると、二つの搬送物200、201がより速い速度で付勢される。ここで下側の搬送物200と傾斜部ローラ部材50の間の摩擦係数は高いので、下側の搬送物200は加速度に追従するが、上側の搬送物200と下側の搬送物200の間は摩擦係数が小さいので、加速度に追従できず、下側の搬送物200に対して下側(上流側)にずれる。
このように、下側の搬送物200と上側の搬送物201とで移動距離(追従距離)が異なることにより、上側の搬送物201は、下側の搬送物200の上からずり落ちる方向に相対移動することとなる。
その結果、搬送物200、201の重なりが解消されて二つの搬送物200、201が、直列状に並ぶ。
また傾斜部21は下流側に向かうにつれて搬送速度を速くなっているので、二つの搬送物200、201の間隔は次第に広がってゆく。
このように、上流側のゾーンよりも下流側のゾーンで傾斜部ローラ部材50の回転速度よりも速くし、2つのゾーンの上流側に隣接する部分を動作実行部として、重なり解消動作を実行することで、より確実に搬送物の重なりを解消させることができる。
【0102】
上記した実施形態の重なり解消動作では、傾斜部21のうち、第二小ゾーン75bに属する傾斜部ローラ部材50が正逆回転動作を実行する例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、第二ゾーン76を複数の小ゾーンに区画し、第二ゾーン76の下流側の小ゾーンを動作実行部として、この動作実行部に属する傾斜部ローラ部材50が正逆回転動作してもよい。この場合、第二センサユニット55bの上に搬送物が到達したことを条件として動作を実行してもよい。
上記した第一センサユニット55aの上に搬送物が到達したことを条件に実行する動作と、第二センサユニット55bの上に搬送物が到達したことを条件に実行する動作は、いずれか一方を実行してもよく、双方を実行してもよい。すなわち、重なり解消動作では、傾斜部21の複数個所で傾斜部ローラ部材50が正逆回転動作を実行してもよい。
【0103】
また、傾斜部21と下流側連結部22の境界部分にセンサユニット55を配し、第三ゾーン77を複数の小ゾーンに区画し、第三ゾーン77の下流側のゾーン(傾斜部21全体の下流側のゾーン)を動作実行部としてもよい。この場合、境界部分のセンサユニット55上(センサ部材61上)に搬送物が到達したことを条件として、第三ゾーン77の下流側のゾーンに属する傾斜部ローラ部材50が正逆回転動作を実行してもよい。
【0104】
上記した実施形態では、重なり解消動作の際に、動作実行部に属する傾斜部ローラ部材50に正逆回転動作を実行させる例について説明したが、本発明にこれに限るものではない。重なり解消動作の際に、動作実行部に属する傾斜部ローラ部材50に逆回転動作のみを実行させることも考えられる。
【0105】
上記した実施形態では、重なり解消動作の際に、動作実行部に属する傾斜部ローラ部材50に第一所定時間t1に亘る正回転動作と、第二所定時間t2に亘る逆回転動作を交互に実行させる例について説明したが、本発明にこれに限るものではない。正回転動作と逆回転動作を交互に実行するのではなく、2回の正回転動作の後、3回の逆回転動作を実行し、さらに1回の正回転動作を実行するといった具合に、正回転動作と逆回転動作を適宜実行することも考えられる。また、第一所定時間t1、第二所定時間t2は適宜変更してもよく、第二所定時間t2を第一所定時間t1よりも長くすることも考えられる。さらに、複数回の正回転動作、複数回の逆回転動作を実行する場合、実行ごとに第一所定時間t1、第二所定時間t2の長さを異なる長さとすることも考えられる。
【符号の説明】
【0106】
100 搬送装置
101 ローラ
101b 全域型凹凸ローラ
101c 偏り型凹凸ローラ
105 凸条
110 ローラ
111 凸条
200 搬送物
201 搬送物
a、b、c、d、e、f、g、h 搬送ゾーン