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特開2024-3573プレキャスト部材及びプレキャスト部材の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003573
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】プレキャスト部材及びプレキャスト部材の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20240105BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240105BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240105BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102798
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】石関 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎司
(72)【発明者】
【氏名】郷 富雄
(72)【発明者】
【氏名】田口 拓望
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】3Dプリンタでモルタルの積層により形成されるとともに、引張力を他の構造材に伝達可能にしたプレキャスト部材及びプレキャスト部材の形成方法を提供する。
【解決手段】構造物10は、2つのプレキャスト部材15を用いて構成される。プレキャスト部材15は、内周部材21、外周部材22、1対の端部鋼板35及び内部構造体24を備える。内周部材21及び外周部材22は、3Dプリンタのノズルを移動させながらノズルから吐出させたモルタル材料を積層させて構成される。内周部材21及び外周部材22には、これら端部に設けられた開口部に配置される端部鋼板35が、間詰め部材を介して接続される。内部構造体24は、内周部材21、外周部材22及び端部鋼板35によって形成された内部空間にセメント含有材料を充填されて構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタのノズルを移動させながら前記ノズルから吐出させたモルタル材料を積層させて、端部に開口部を有する外形部材と、
前記開口部に配置され、前記外形部材に密閉構造を介して接続される端部材と、
前記外形部材及び前記端部材によって形成された内部空間に充填されたセメント含有材料で構成される内部構造体と、を備えることを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項2】
前記外形部材は、第1部材と、前記第1部材と別体の第2部材とを備え、
前記端部材は、前記第1部材の端部と前記第2部材の端部との間を覆う部材であることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材。
【請求項3】
前記内部構造体には、前記端部材の内部に当接した複数の鉄筋が埋設されており、
前記複数の鉄筋の隙間を貫通し、前記第1部材及び前記第2部材を貫通するセパレータが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプレキャスト部材。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材の端部は、前記端部材側に屈曲した屈曲部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のプレキャスト部材。
【請求項5】
前記密閉構造は、前記外形部材の端部を折り返した部分と、前記端部材の端部を折り返した部分とを嵌合させることにより構成したことを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材。
【請求項6】
3Dプリンタのノズルを移動させながら前記ノズルから吐出させたモルタル材料を積層させて、端部に開口部を有する外形部材を備えたプレキャスト部材の製造方法であって、
前記外形部材に密閉構造を介して接続される端部材を、前記開口部に配置することにより、前記外形部材及び前記端部材によって内部空間を形成し、
前記内部空間にセメント含有材料を充填させて硬化させることにより内部構造体を形成することを特徴とするプレキャスト部材の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメント系材料であるモルタル材料を積層して形成した部分を有するプレキャスト部材及びプレキャスト部材の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタは、水平移動するノズルから材料を吐出させて各層を形成し、各層を積み重ねることにより立体形状を形成する。更に、各層の形状を変更することにより、複雑な立体形状の構造物や大きい構造物等を自由に形成することもできる。この場合、コンクリート等のセメント系材料は、高い圧縮強度を有するが、引張強度は低い。このため、3Dプリンタを用いてセメント系材料で形成したコンクリート構造物について、高い引張強度を有する構造が検討されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の構造物の形成方法においては、複数の板状部材と、これらを連結する柱状部材とを備えたブロックを用いる。このブロックは、表面に複数の孔が形成されるとともに、高い引張強度を有する材料で構成される。このブロックに、3Dプリンタのノズルの吐出口を向けた状態でノズルを配置する。そして、吐出口からのモルタルがブロックの表面の孔に押し込まれるように、モルタルを吐出させながらノズルを移動させる。更に、特許文献2に記載の構造物は、孔部を有し構造物の外形を構成する外形成体と、外形成体の孔部に、第2モルタルを注入して形成される内構造体とを備える。外形成体は、3Dプリンタのノズルから第1モルタルを吐出させながら経路に沿って移動させて、奇数層部及び偶数層部を交互に積層させて形成する。内構造体は、外形成体を構成する第1モルタルよりも高強度の部材を構成する第2モルタルで構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-142093号公報
【特許文献2】特開2020-26686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、橋脚等の大きな構造物に用いるプレキャスト部材を形成する場合、この大きさに対応した型枠が必要になる。そこで、プレキャスト部材を、3Dプリンタにより形成することができれば、型枠が不要になる。
【0006】
一方、プレキャスト部材の内部には、耐荷力のための鉄筋部材が埋設される。そして、この埋設された鉄筋部材の耐荷力を、他の構成材に伝達する必要がある。しかし、3Dプリンタのノズルから吐出したモルタルを積層することにより形成した部材を用いる場合、鉄筋部材の周囲に密接してモルタルを積層させることが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するプレキャスト部材は、3Dプリンタのノズルを移動させながら前記ノズルから吐出させたモルタル材料を積層させて、端部に開口部を有する外形部材と、前記開口部に配置され、前記外形部材に密閉構造を介して接続される端部材と、前記外形部材及び前記端部材によって形成された内部空間に充填されたセメント含有材料で構成される内部構造体と、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決するプレキャスト部材の製造方法は、3Dプリンタのノズルを移動させながら前記ノズルから吐出させたモルタル材料を積層させて、端部に開口部を有する外形部材を備えたプレキャスト部材の製造方法であって、前記外形部材に密閉構造を介して接続される端部材を、前記開口部に配置することにより、前記外形部材及び前記端部材によって内部空間を形成し、前記内部空間にセメント含有材料を充填させて硬化させることにより内部構造体を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、3Dプリンタでモルタルを積層することにより形成したプレキャスト部材において、引張力を他の構造材に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態におけるプレキャスト部材を組み合わせて形成した構造物の斜視図である。
図2】実施形態における内部構造体を除いた構造物の平面図である。
図3】実施形態におけるプレキャスト部材の要部の拡大平面図である。
図4】実施形態におけるプレキャスト部材に用いられるセパレータの構成を説明する説明図である。
図5】実施形態における骨格部材の構成を説明する斜視図である。
図6】実施形態におけるプレキャスト部材の形成方法を説明する流れ図である。
図7】実施形態において3Dプリンタを用いてモルタルで形成した外形部材を説明する斜視図である。
図8】実施形態において外形部材に骨格部材を取り付けた斜視図である。
図9】第1変更例におけるプレキャスト部材の要部の拡大平面図である。
図10】第2変更例におけるプレキャスト部材の要部の拡大平面図である。
図11】第2変更例におけるプレキャスト部材の要部を説明する説明図であって、(a)は図10の要部の拡大図、(b)は(a)における11b-11b線における要部の断面図である。
図12】第3変更例におけるプレキャスト部材の要部の拡大平面図である。
図13】第4変更例におけるプレキャスト部材の要部の拡大平面図である。
図14】第5変更例におけるプレキャスト部材の要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図8を用いて、プレキャスト部材及びプレキャスト部材の形成方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、橋梁等に用いられる全体として中空の略円筒形状を有した構造物を構成するプレキャスト部材として説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のプレキャスト部材を用いた構造物の斜視図、図2は、図1の構造物の平面図であり、後述する内部構造部を取り除いた状態の図である。
図1及び図2に示す構造物10は、例えば、橋梁等に用いられる全体として中空の略円筒形状を有した構造物である。この構造物10は、例えば、数メートルの直径を有し、2つのプレキャスト部材15を用いて構成されている。各プレキャスト部材15は、鉄筋コンクリートで構成され、複数のシース管37の上端部が露出した略半円形状を有する。このプレキャスト部材15は、シース管37の中央部分及び後述する鉄筋(31~34)を埋設した内部構造体24を備える。この内部構造体24は、内部空間に、セメント含有材料としてのコンクリートを充填して硬化させることにより構成される。この内部空間は、プレキャスト部材15の内周部材21、外周部材22、1対(2つ)の端部鋼板35及び間詰め部材41,42によって囲まれた空間である。また、内周部材21及び外周部材22はモルタル材料(以下、「モルタル」という)で構成される。このプレキャスト部材15の構成の詳細は、後述する。
【0013】
更に、構造物10は、接続プレート45,46及びモルタル充填部47,48を備えている。接続プレート45,46は、2つのプレキャスト部材15の端部鋼板35の内側及び外側に、それぞれ当接した状態で配置される。この接続プレート45,46は、鋼等の金属材料で構成され、プレキャスト部材15の軸方向に離間して延在するように複数設けられている。
【0014】
モルタル充填部47,48は、モルタル(あるいはグラウト)により、接続プレート45,46の間に充填されて形成されるとともに、接続プレート45,46が露出しないように覆っている。更に、モルタル充填部47,48は、プレキャスト部材15の外表面とほぼ面一になるように形成されている。
【0015】
(プレキャスト部材15の構成)
図3は、プレキャスト部材15を説明する要部の平面図である。この図においては、プレキャスト部材15の約半分(1/4円弧部分)を示しており、プレキャスト部材15は線対称の構造を有する。更に、この図においても、内部構造体24を除いて示している。
【0016】
図4は、プレキャスト部材15に用いられるセパレータ25の構成を説明する説明図、図5は、プレキャスト部材15に用いる骨格部材30を説明する斜視図である。
図2及び図3に示すように、プレキャスト部材15は、内周部材21、外周部材22、セパレータ25、骨格部材30、シース管37及び間詰め部材41,42を備えている。更に、内周部材21及び外周部材22は、プレキャスト部材15の内周側と及び外周側をそれぞれ形成する外形部材である。内周部材21及び外周部材22の間に形成された開口には、骨格部材30の端部鋼板35が配置される。
【0017】
内周部材21及び外周部材22は、別体であり、それぞれ第1部材及び第2部材に対応する。内周部材21及び外周部材22は、水平断面が円弧形状を有し、埋設型枠として機能する。そして、内周部材21及び外周部材22は、特開2020-26686号公報等に示される3Dプリンタを用いて、モルタルを積層することにより構成される。
【0018】
セパレータ25は、内周部材21と外周部材22との間隔を保つための器具である。
図4に示すように、セパレータ25は、埋設ボルト26a,26b、全ねじのスタッドボルト27、座金28及びロックナット29を有している。スタッドボルト27は、3分割されて構成され、3個のねじ部材27a,27b,27cを有する。スタッドボルト27のねじ部材27a,27bの端部は、内周部材21の孔に配置された埋設ボルト26aに螺合して配置される。スタッドボルト27のねじ部材27b,27cの端部は、外周部材22の孔に配置された埋設ボルト26bに螺合して配置される。ロックナット29は、座金28を介して、それぞれ内周部材21の内側及び外周部材22の外側に配置されて、内周部材21の内側から外周部材22の外側までの間隔を固定する。
【0019】
図3及び図5に示すように、内周部材21及び外周部材22の間には、骨格部材30として、内側帯鉄筋31、外側帯鉄筋32、中間帯鉄筋33、組立鉄筋34、1対(2個)の端部鋼板35が配置される。更に、内側帯鉄筋31と外側帯鉄筋32との間には、複数のシース管37が配置される。各シース管37は、上下に配置されるプレキャスト部材15を接続する鉄筋を配置するために用いられる。
【0020】
内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32は、略半円形状を有している。外側帯鉄筋32は、内側帯鉄筋31の外側を覆うように設けられる。内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32は、シース管37が挿入可能な間隔であって、内周部材21及び外周部材22から十分な被り厚を設けて配置される。内側帯鉄筋31と外側帯鉄筋32は、その端部が、端部鋼板35の内面に溶接するように設けられている。
【0021】
中間帯鉄筋33は、両端部が内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32に固定されており、内側帯鉄筋31と外側帯鉄筋32とを橋渡ししている。図5では中間帯鉄筋33を棒形状で示しているが、中間帯鉄筋33の端部にフックや定着体を設けてもよい。この場合、これらフックや定着体を、内側帯鉄筋31,外側帯鉄筋32に引っ掛けることにより、中間帯鉄筋33を設置する。組立鉄筋34は、シース管37の配置位置に対応する位置で、シース管37の軸方向に延在するように配置され、内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32に固定される。
複数のシース管37は、ほぼ等間隔に離間して、内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32の間に配置される。
【0022】
図2に示すように、端部鋼板35は、プレキャスト部材15の両端部に、それぞれ設けられている。端部鋼板35は、内周部材21及び外周部材22の間を覆う板形状の端部材である。各端部鋼板35は、中央側が開口した箱形状(コ字形状)の水平断面を有した軸方向に延在する板状部材である。端部鋼板35の内側には、内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32が溶接される。更に、この内側には、シース管37が配置されている。
【0023】
更に、端部鋼板35の開口した側の水平方向の端部は、内周部材21及び外周部材22の端部と重なっている。そして、端部鋼板35の端部と内周部材21の端部との間に、間詰め部材41が配置され、端部鋼板35の端部と外周部材22の端部との間に、間詰め部材42が配置されている。
【0024】
間詰め部材41,42は、シール部材や変形等により密閉可能な材料の発泡ウレタンやスポンジ等の合成樹脂製の部材、接着剤等で構成される。これにより、間詰め部材41,42は、モルタルの積層により表面に凹凸が形成された内周部材21及び外周部材22と、端部鋼板35との間を密閉する。
【0025】
(プレキャスト部材の製造方法)
次に、図6図8を用いて、上述した構成を有するプレキャスト部材15の製造方法について説明する。この場合、骨格部材30を予め組み立てた後、内部にシース管37を配置しておく。
【0026】
図6に示すように、まず、3Dプリンタで外形部材を積層形成する(ステップS1)。
具体的には、プレキャスト部材15の内周部材21と外周部材22を、上述した3Dプリンタを用いて形成する。ここでは、3Dプリンタのノズルを移動させながら、ノズルから吐出させたモルタルを積層して形成する。本実施形態では、モルタルを吐出するノズルを円弧形状のループ状の一筆書きの経路で移動させながら1周する毎にノズルの高さを少しずつ高くすることにより、モルタルで形成する層を積み上げる。
【0027】
図7に示すように、本実施形態では、内周部材21(外周部材22)は、吐出されたモルタルによって2重の経路によって構成される外側部21a(22a)及び内側部21b(22b)が当接するように並んで構成される。
【0028】
その後、積層により形成された内周部材21と外周部材22に、複数の孔を形成する。この複数の孔は、セパレータ25を配置する位置に対応して設ける。
【0029】
次に、骨格部材及び外形部材を配置する(ステップS2)。
具体的には、骨格部材30を立設し、この立設した骨格部材30の内側及び外側に、形成した内周部材21及び外周部材22を、それぞれ配置する。この場合、内周部材21と骨格部材30との間、外周部材22と骨格部材30との間には、それぞれ間詰め部材41,42を配置する。
【0030】
これにより、図2及び図8に示すように、内周部材21、外周部材22、間詰め部材41,42、端部鋼板35によって、内部に密閉された空間が形成される。この場合、内部には、骨格部材30の各鉄筋(31~34)やシース管37が配置される。
【0031】
次に、セパレータを設置する(ステップS3)。
この場合、埋設ボルト26a,26bを取り付けたスタッドボルト27を、予め組み立てて一体化しておく。具体的には、埋設ボルト26a,26bにねじ部材27a,27b,27cの端部をそれぞれ螺合させる。
そして、内周部材21及び外周部材22の孔に、埋設ボルト26a,26bが配置するように、埋設ボルト26a,26bと一体化したスタッドボルト27を配置する。更に、スタッドボルト27において、内周部材21の内側に、座金28を介してロックナット29を締め付け、外周部材22の外側に、座金28を介してロックナット29を締め付ける。
【0032】
次に、骨格部材、間詰め部材、外形部材によって囲まれた空間にコンクリートを充填する(ステップS4)。この場合、充填されたコンクリートによって、内周部材21及び外周部材22は、離間する方向に圧力が加わる。しかし、加わった圧力にセパレータ25が抗するため、内周部材21及び外周部材22の間隔が一定に維持される。
【0033】
そして、充填したモルタルを硬化させることにより内部構造体24が構成される。これにより、内部構造体24と一体化された骨格部材30を備えるプレキャスト部材15が完成する。この場合、骨格部材30は内部構造体24に埋設された状態になる。
【0034】
構造物10を形成する場合には、形成した2つのプレキャスト部材15の端部鋼板35の内側及び外側に、離間した複数の接続プレート45,46を配置し、溶接する。その後、外側に型枠を設置してモルタル(あるいはグラウト)を充填することにより、モルタル充填部47,48を形成する。
【0035】
(作用)
本実施形態では、端部鋼板35と、内周部材21及び外周部材22とは、間詰め部材41,42によって接続する。3Dプリンティングにより製造した内周部材21及び外周部材22の端部に凹凸が生じた場合にも、内周部材21及び外周部材22の間に、内部構造体24を形成するコンクリートを充填しても漏れない。
【0036】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプレキャスト部材15は、3Dプリンタを用いてモルタルを積層させて構成する構成においても、端部鋼板35を介して、骨格部材30に加わった耐荷力を伝達することができる。この場合、3Dプリンタにより、内周部材21及び外周部材22を大きく作成することが容易であるため、従来のように大きな型枠を準備することが不要であり、迅速に形成することができる。
【0037】
(2)本実施形態のプレキャスト部材15は、内周部材21及び外周部材22と端部鋼板35との間に、間詰め部材41,42を設ける。これにより、内周部材21及び外周部材22の表面に凹凸が生じていても、内周部材21及び外周部材22と端部鋼板35との間の隙間を塞ぐことができるので、内部構造体24を形成するコンクリートの漏れを抑制しながら充填することができる。
【0038】
(3)本実施形態のプレキャスト部材15は、内周部材21及び外周部材22を連結する複数のセパレータ25を備える。これにより、内部構造体24を構成するコンクリートを充填する際におけるコンクリートの圧力によって内周部材21及び外周部材22の間隔が広がることを抑制することができる。
【0039】
(4)本実施形態の内周部材21(外周部材22)は、吐出されたモルタルによって2重の経路によって構成される外側部21a(22a)及び内側部21b(22b)が当接するように並んで構成される。これにより、3Dプリンタのノズルを停止することなく、モルタルを積層させることにより、内周部材21及び外周部材22を形成することができる。
【0040】
(5)本実施形態のプレキャスト部材15は、端部鋼板35に、骨格部材30の内側帯鉄筋31及び外側帯鉄筋32を内側から当接させる。これにより、端部鋼板35を介して、鉄筋(31~34)に加わる引張力を、他のプレキャスト部材15に伝達することができる。
【0041】
(6)本実施形態の構造物10は、2つのプレキャスト部材15の端部鋼板35を突き合せた後、接続プレート45,46で挟み込む。これにより、2つのプレキャスト部材15の端部鋼板35に加わる引張力を相互に伝達することができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態のプレキャスト部材15は、内周部材21及び外周部材22と、端部鋼板35との間に、間詰め部材41,42を配置することにより密閉した。プレキャスト部材15の端部材が外形部材と接続するための密閉構造は、間詰め部材41,42を配置する場合に限られない。例えば、間詰め部材を設ける代わりに、内周部材及び外周部材と端部鋼板との端部が重なるように折り曲げる(折り返す)ことにより、接触面積を大きくして密閉構造を形成してもよい。
【0043】
具体的には、図9に示すように、プレキャスト部材50は、内周部材51、外周部材52、骨格部材55及びシース管37を備える。
内周部材51及び外周部材52は、内周部材21及び外周部材22と同様に、上述した3Dプリンタを用いてモルタルを積層して形成される。この場合、内周部材51及び外周部材52は、水平断面が略半円形状を有するとともに、端部が折り返された形状で構成される。この端部が折り返された屈曲部51a,52aには、後述する端部鋼板58の端部部分58a,58bが挟まれるように嵌合して配置される。
【0044】
骨格部材55は、円弧形状を有する内側帯鉄筋56及び外側帯鉄筋57と1対の端部鋼板58とを備える。端部鋼板58は、プレキャスト部材15の中央側に開口するように水平断面が箱形状を有し、開口側の端部が折り返した形状を有する。そして、端部鋼板58の折り返された端部部分58a,58bには、内周部材51及び外周部材52の折り返された屈曲部51a,52aが嵌合して収容されている。
【0045】
従って、内周部材51及び外周部材52の折り返された屈曲部51a,52aと、端部鋼板58の折り返された端部部分58a,58bによって密閉構造が形成される。これにより、内部構造体24を形成するコンクリートが、充填時に、内周部材51及び外周部材52と端部鋼板58との隙間から漏れることを抑制することができる。
【0046】
更に、このプレキャスト部材50を形成する際には、骨格部材55を設置した後に、3Dプリンタを用いてモルタルを積層することにより、内周部材51及び外周部材52を構成する。これにより、このような密閉構造を形成することができる。
【0047】
また、内側帯鉄筋56及び外側帯鉄筋57の間隔は、中間部においてはシース管37が配置される大きさであって、端部では狭くなっている。これにより、内側帯鉄筋56及び外側帯鉄筋57の端部は、端部鋼板58の内側面に溶接している。
【0048】
・上記実施形態のプレキャスト部材15は、水平断面が円弧形状の内周部材21及び外周部材22を備える。内周部材21及び外周部材22は、この形状に限られず、例えば、内周部材21及び外周部材22の端部を折り曲げた形状であってもよい。
【0049】
具体的には、図10に示すように、プレキャスト部材60は、内周部材61、外周部材62、骨格部材65及びシース管37を備える。内周部材61及び外周部材62は、内周部材21及び外周部材22と同様に、上述した3Dプリンタを用いてモルタルを積層して形成される。この場合、内周部材61及び外周部材62は、水平断面が略半円形状を有するとともに、屈曲部61a,62aが、それぞれ対向する外周部材62側及び内周部材61側に突出するように折り曲げた形状を有する。
【0050】
この場合には、図11(a)に示すように、内周部材61及び外周部材62と、骨格部材65の端部鋼板68との間に、間詰め部材71,72を配置してもよい。この場合、間詰め部材71,72として、鉄筋や角鋼を用いてもよい。
【0051】
・上記実施形態のプレキャスト部材15は、内周部材21及び外周部材22を貫通するセパレータ25を備える。セパレータ25は、内部構造体24のコンクリートを充填する際に内周部材21及び外周部材22の間隔が広がる可能性がない場合においては、省略してもよい。更に、内周部材21及び外周部材22を貫通しないセパレータを用いてもよい。例えば、端部鋼板や鉄筋に係合するセパレータを用いてもよい。
【0052】
図10に示すように、プレキャスト部材60の骨格部材65は、円弧形状を有する内側帯鉄筋66及び外側帯鉄筋67と、1対の端部鋼板68とを備える。そして、端部鋼板68において、セパレータ75を設置する箇所にめねじを形成しておく。
【0053】
図11に示すように、プレキャスト部材60は、セパレータ75を備える。このセパレータ75は、セパレータ25のスタッドボルト27の約半分の長さを有する。そして、セパレータ75の先端を端部鋼板68のめねじに螺合させる。これにより、内周部材21及び外周部材22の間隔を、端部鋼板68を介して保持する。
【0054】
更に、プレキャスト部材60は、セパレータ76を備えてもよい。このセパレータ76は、図11(a)及び図11(b)に示すように、先端に鉄筋固定具77を備える。
図11(b)に示すように、鉄筋固定具77は、内側帯鉄筋66を覆う第1固定部77aと、内側帯鉄筋66を第1固定部77aに締め付けを行なうボルト部77bとを備える。これにより、内周部材21及び外周部材22の間隔を、内側帯鉄筋66及び外側帯鉄筋67を介して保持するようにしてもよい。
【0055】
・上記実施形態においては、プレキャスト部材15の端部鋼板35は、水平断面が箱形状を有する。プレキャスト部材のモルタルを積層することにより形成される外形部材の開口に配置される端部材は、箱形状の水平断面を有する形状に限定されない。
【0056】
例えば、図12に示すように、端部鋼板88を備えるプレキャスト部材80でもよい。具体的には、プレキャスト部材80は、内周部材81、外周部材82及び骨格部材85を備える。骨格部材85は、円弧形状の複数の内側帯鉄筋86及び外側帯鉄筋87と端部鋼板88とを備える。端部鋼板88は、例えばH型鋼をウェブの中央で長手方向に2つに切断した一方を用いることができる。端部鋼板88の両端部88aを、それぞれ内周部材81及び外周部材82に埋設する。この場合、設置した骨格部材85に対して、3Dプリンタでモルタルを積層することにより内周部材81及び外周部材82を形成する。そして、プレキャスト部材80の端部鋼板88の先端88b同士を溶接することにより、複数のプレキャスト部材80で1つの構造物を形成する。
【0057】
また、図13に示すように、端部材94,95を備えるプレキャスト部材90,91でもよい。具体的には、プレキャスト部材90(91)は、内周部材81、外周部材82及び骨格部材92(93)を備える。骨格部材92(93)は、内側帯鉄筋86及び外側帯鉄筋87の先端に溶接されている端部材94(95)を備える。端部材94,95として、P-T型の継手を有した鋼管をそれぞれ用いる。具体的には、端部材94は、水平断面がT字形状の継手94Tが固定された鋼管本体を備える。この端部材94は、内周部材81及び外周部材82に埋設される連結部94aを備える。また、端部材95は、水平断面がP字形の継手95Pが固定された鋼管本体を備えるとともに、内周部材81及び外周部材82に埋設される連結部95aを備える。この場合においても、端部材94,95の連結部94a,95aを、それぞれ内周部材81及び外周部材82に埋設するように、内周部材81及び外周部材82を3Dプリンタでモルタルを積層することにより形成する。そして、プレキャスト部材90の端部材94,95の継手94T,95Pを係合することにより複数のプレキャスト部材90で1つの構造物を形成する。
【0058】
更に、図14に示すように、端部材104,105を備えるプレキャスト部材100,101でもよい。具体的には、プレキャスト部材100(101)は、内周部材81、外周部材82及び骨格部材102(103)を備える。骨格部材102(103)は、内側帯鉄筋86及び外側帯鉄筋87の先端に溶接されている端部材104(105)を備える。端部材104,105として、P-P型の継手を有した鋼管をそれぞれ用いる。具体的には、端部材104,105は、水平断面が略P字形状の継手104P,105Pが固定された鋼管本体を備える。各端部材104,105は、内周部材81及び外周部材82に埋設される連結部104a,105aを備える。この場合においても、設置した骨格部材102(103)に対して3Dプリンタでモルタルを積層することにより内周部材81及び外周部材82を形成する。プレキャスト部材100の端部材104,105の継手104P,105Pを係合することにより複数のプレキャスト部材90で1つの構造物を形成する。
【0059】
・上記実施形態のプレキャスト部材15においては、2つの内周部材21及び外周部材22の両端に形成された1対(2つ)の開口にそれぞれ端部鋼板35を設けた。これに代えて、1つの開口を有する水平断面が箱形状をした外形部材を形成し、開口部に1つの端部材を設けてもよい。更に、3Dプリンタによってモルタル積層される外形部材を3以上に分割し、それぞれの開口に端部鋼板を設けることにより、3つ以上の端部材を有するプレキャスト部材としてもよい。
【0060】
・上記実施形態のプレキャスト部材15は、円筒形状の構造物10の半分を構成する。プレキャスト部材は、半筒形状以外であってもよい。例えば、断面が1/3の円弧形状を連続した部材であってもよいし、長方形状の平面断面を有する壁部材を形成してもよい。後者の場合、対向する1対の長辺部を、3Dプリンタを用いて、ノズルを移動させながらノズルから吐出したモルタルを積層することにより構成し、対向する1対の短辺部を、端部鋼板を用いて構成してもよい。また、プレキャスト部材を、構造物10を3分割以上に分割した形状で形成してもよい。
【0061】
・上記実施形態のプレキャスト部材15は、コンクリートを硬化させて構成され内部構造体24を備える。この内部構造体24は、セメント、水、砂、砂利で構成されるコンクリートで構成される場合に限られず、セメントを含有する硬化材料であればよい。例えば、セメント、水、砂で構成されるモルタルで、内部構造体を構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…構造物、15,50,60,80,90,91,100,101…プレキャスト部材、21,51,61,81…第1部材としての内周部材、21a,22a…外側部、21b,22b…内側部、22,52,62,82…第2部材としての外周部材、24…内部構造体、25,75,76…セパレータ、26a,26b…埋設ボルト、27…スタッドボルト、27a,27b,27c…ねじ部材、28…座金、29…ロックナット、30,55,65,85,92,93,102,103…骨格部材、31,56,66,86…内側帯鉄筋、32,57,67,87…外側帯鉄筋、33…中間帯鉄筋、34…組立鉄筋、35,58,68,88…板部材としての端部鋼板、37…シース管、41,42,71,72…密閉構造としての間詰め部材部材、45,46…接続プレート、47,48…モルタル充填部、51a,52a…密閉構造を構成する折り返された屈曲部、58a,58b…密閉構造を構成する端部部分、61a,62a…屈曲部、77…鉄筋固定具、77a…第1固定部、77b…ボルト部、88a…端部、88b…先端、94,95,104,105…端部材、94a,95a,104a,105a…連結部、94T,95P,104P,105P…継手。
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