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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035746
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20240307BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240307BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20240307BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240307BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/088 E
H01L27/088 C
H01L27/088 H
H01L27/11556
H01L29/78 371
H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140406
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】海野 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】池野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北村 政幸
(72)【発明者】
【氏名】梶田 明広
【テーマコード(参考)】
4M104
5F048
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104BB18
4M104BB30
4M104DD43
4M104GG16
4M104HH20
5F048AA07
5F048AB01
5F048BA01
5F048BB09
5F048BB11
5F048BB12
5F048BB13
5F048BB14
5F048BC16
5F048BD01
5F048BD07
5F048CB02
5F048CB07
5F083EP02
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA02
5F083GA10
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR03
5F083PR05
5F083PR21
5F083PR34
5F083ZA01
5F083ZA13
5F101BA01
5F101BA45
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH14
5F101BH15
5F101BH16
(57)【要約】
【課題】 本実施形態は、高抵抗化が抑制可能に設けられた配線層を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る半導体装置は、第1の絶縁膜と、第2の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に設けられ、前記第1の絶縁膜から前記第2絶縁膜に向かう第1の方向における厚さをTとし、平均粒径をAPSとするとき、APS/T≦2であるタングステン膜と、を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁膜と、
第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に設けられ、前記第1の絶縁膜から前記第2の絶縁膜に向かう第1の方向における厚さをTとし、平均粒径をAPSとするとき、APS/T≦2であるタングステン膜と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記タングステン膜の厚さTは、60nm以下である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記タングステン膜の平均粒径APSは、50nm以下である請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記タングステン膜は、(110)の配向性のピーク及び(211)の配向性のピークを有する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記タングステン膜を覆うバリアメタル膜を更に備える、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バリアメタル膜は、TiNを含有する、請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記タングステン膜は、Bを含有する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記タングステン膜を覆うバリアメタル膜を更に備え、
前記タングステン膜は、前記バリアメタル膜に相対的に近い位置Pにおいて、第1濃度のBを含有し、前記位置Pよりも前記バリアメタル膜に相対的に遠い位置Qにおいて、前記第1濃度よりも低い第2濃度のBを含有する、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記タングステン膜の厚さTに対する平均粒径APSの比APS/Tは1以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記タングステン膜の厚さTに対する平均粒径APSの比APS/Tは0.3以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜と、前記タングステン膜と、を貫通し、前記第1の方向に延伸する半導体チャネルと、
前記タングステン膜と前記半導体チャネルとの間に設けられる電荷蓄積膜と、
を備える、
請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の絶縁層と複数の金属層とが積層されて設けられた3次元構造を有するNAND型フラッシュメモリが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016―201407号公報
【特許文献2】特開2020―150147号公報
【特許文献3】特開2020―150218号公報
【特許文献4】特開2020―150225号公報
【特許文献5】特開2021―028950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、高抵抗化が抑制可能に設けられたワード線を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態は、第1の絶縁膜と、第2の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に設けられ、前記第1の絶縁膜から前記第2の絶縁膜に向かう第1の方向における厚さをTとし、平均粒径をAPSとするとき、APS/T≦2であるタングステン膜と、を備える半導体装置を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態のメモリシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の半導体装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態の半導体装置の等価回路を示す回路図である。
図4図4は、実施形態の半導体装置の断面斜視構造を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態のメモリピラーの断面構造を示す断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿った断面構造を示す断面図である。
図7図7は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図8図8は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図9図9は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図10図10は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図11図11は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図12図12は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図13図13は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図14図14は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図15図15は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図16図16は、実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
図17A図17Aは、実施形態の半導体装置10の断面の顕微鏡画像である。
図17B図17Bは、比較例の半導体装置200の断面の顕微鏡画像である。
図18図18は、実施形態の半導体装置10および比較例の半導体装置200の回折X線スペクトルを示す。
図19図19は、実施形態の半導体装置10および比較例の半導体装置200のワード線の厚さ方向の比抵抗の値の変化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態に係る半導体装置10の構成について説明する。本実施形態に係る半導体装置10は、半導体記憶装置として用いることができ、以下の説明においては、半導体記憶装置10とも称する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、以下では、各図面には、X軸、Y軸及びZ軸を示すことがある。X軸、Y軸及びZ軸は、右手系の3次元の直交座標を形成する。以下、X軸の矢印方向をX軸前方、矢印とは逆方向をX軸後方と呼ぶことがある。その他の軸についても同様である。なお、Z軸前方及びZ軸後方を、それぞれ「上側」乃至「上方」及び「下側」乃至「下方」と呼ぶこともある。また、Z軸方向を「積層方向」と呼ぶこともある。また、X軸、Y軸又はZ軸にそれぞれ直交する面を、YZ面、ZX面又はXY面と呼ぶことがある。ただしこれら方向等は相対的位置関係を説明するために便宜的に用いられているものである。従ってこれら方向等は絶対的位置関係を規定するものではない。
【0008】
<実施形態>
(メモリシステムの構成)
【0009】
図1に示されるように、本実施形態に係るメモリシステムは、メモリコントローラ1、及び半導体装置2を備えている。半導体装置2は、NAND型のフラッシュメモリとして構成される不揮発性の記憶装置である。メモリシステムはホストと接続可能である。ホストは例えばパーソナルコンピュータや携帯端末等の電子機器である。なお、図1では半導体装置2が一つのみ図示されているが、メモリシステムには半導体装置2が複数設けられていてもよい。
【0010】
メモリコントローラ1は、ホストからの書き込みリクエストに従って半導体装置2へのデータの書き込みを制御する。また、メモリコントローラ1は、ホストからの読み出しリクエストに従って半導体装置2からのデータの読み出しを制御する。
【0011】
メモリコントローラ1と半導体装置2との間では、チップイネーブル信号/CE、レディービジー信号/RB、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE,/RE、ライトプロテクト信号/WP、データ信号DQ<7:0>、及びデータストローブ信号DQS,/DQSの各信号が送受信される。
【0012】
チップイネーブル信号/CEは、半導体装置2をイネーブルにするための信号である。レディービジー信号/RBは、半導体装置2がレディ状態であるか、あるいはビジー状態であるかを示すための信号である。「レディ状態」とは、外部からの命令を受け付ける状態である。「ビジー状態」とは、外部からの命令を受け付けない状態である。コマンドラッチイネーブル信号CLEは、信号DQ<7:0>がコマンドであることを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、信号DQ<7:0>がアドレスであることを示す信号である。ライトイネーブル信号/WEは、受信した信号を半導体装置2に取り込むための信号であり、メモリコントローラ1によりコマンド、アドレス、及びデータを受信する都度アサートされる。メモリコントローラ1は、信号/WEが“L(Low)”レベルである間に信号DQ<7:0>を取り込むように半導体装置2に指示する。
【0013】
リードイネーブル信号RE,/REは、メモリコントローラ1が半導体装置2からデータを読み出すための信号である。リードイネーブル信号RE,/REは、例えば信号DQ<7:0>を出力する際の半導体装置2の動作タイミングを制御するために使用される。ライトプロテクト信号/WPは、データ書き込み及び消去の禁止を半導体装置2に指示するための信号である。信号DQ<7:0>は、半導体装置2とメモリコントローラ1との間で送受信されるデータの実体であり、コマンド、アドレス、及びデータを含む。データストローブ信号DQS,/DQSは、信号DQ<7:0>の入出力のタイミングを制御するための信号である。
【0014】
メモリコントローラ1は、RAM11、プロセッサ12、ホストインターフェイス13、ECC回路14、及びメモリインターフェイス15を備えている。RAM11、プロセッサ12、ホストインターフェイス13、ECC回路14、及びメモリインターフェイス15は互いに内部バス16で接続されている。
【0015】
ホストインターフェイス13は、ホストから受信したリクエスト及びユーザデータ(書き込みデータ)等を内部バス16に出力する。また、ホストインターフェイス13は、半導体装置2から読み出されたユーザデータ、及びプロセッサ12からの応答等をホストへ送信する。
【0016】
メモリインターフェイス15は、プロセッサ12の指示に基づいて、ユーザデータ等を半導体装置2へ書き込む処理、及び半導体装置2から読み出す処理を制御する。
【0017】
プロセッサ12はメモリコントローラ1を統括的に制御する。プロセッサ12は例えばCPUやMPU等である。プロセッサ12は、ホストからホストインターフェイス13を介してリクエストを受信した場合に、そのリクエストに従った制御を行う。例えば、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、半導体装置2へのユーザデータ及びパリティの書き込みをメモリインターフェイス15へ指示する。また、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、半導体装置2からのユーザデータ及びパリティの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0018】
プロセッサ12は、RAM11に蓄積されるユーザデータに対して、半導体装置2上の格納領域(メモリ領域)を決定する。ユーザデータは、内部バス16を介してRAM11に格納される。プロセッサ12は、メモリ領域の決定を、書き込み単位であるページ単位のデータ(ページデータ)に対して実施する。半導体装置2の1ページに格納されるユーザデータのことを、以下では「ユニットデータ」とも称する。ユニットデータは、一般的には訂正符号を付加することにより符号化されて、符号語(Codeword)として半導体装置2に格納される。本実施形態では、符号化は必須ではない。メモリコントローラ1は、符号化せずにユニットデータを半導体装置2に格納してもよいが、図1では一例として符号化を行う構成を示している。メモリコントローラ1が符号化を行わない場合には、ページデータはユニットデータと一致する。また、1つのユニットデータに基づいて1つの符号語が生成されてもよいし、ユニットデータが分割された分割データに基づいて1つの符号語が生成されてもよい。また、複数のユニットデータを用いて1つの符号語が生成されてもよい。
【0019】
プロセッサ12は、ユニットデータ毎に書き込み先の半導体装置2のメモリ領域を決定する。半導体装置2のメモリ領域には物理アドレスが割当てられている。プロセッサ12は、ユニットデータの書き込み先のメモリ領域を、物理アドレスを用いて管理する。プロセッサ12は、決定したメモリ領域(物理アドレス)を指定してユーザデータを半導体装置2へ書き込むようにメモリインターフェイス15へ指示する。プロセッサ12は、ユーザデータの論理アドレス(ホストが管理する論理アドレス)と物理アドレスとの対応を管理する。プロセッサ12は、ホストからの論理アドレスを含む読み出しリクエストを受信した場合に、論理アドレスに対応する物理アドレスを特定するとともに、物理アドレスを指定してユーザデータの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0020】
ECC回路14は、RAM11に格納されたユーザデータを符号化して、符号語を生成する。また、ECC回路14は、半導体装置2から読み出された符号語を復号する。
【0021】
RAM11は、ホストから受信したユーザデータを半導体装置2へ記憶するまでに一時格納、または半導体装置2から読み出したデータをホストへ送信するまでに一時格納する。RAM11は、例えばSRAMやDRAM等の汎用メモリである。
【0022】
図1では、メモリコントローラ1が、ECC回路14とメモリインターフェイス15とをそれぞれ備える構成例が示されている。しかしながら、ECC回路14がメモリインターフェイス15に内蔵されていてもよい。また、ECC回路14が半導体装置2に内蔵されていてもよい。図1に示される各要素の具体的な構成や配置は特に限定されない。
【0023】
ホストから書き込みリクエストを受信した場合、図1のメモリシステムは次のように動作する。プロセッサ12は、書き込み対象となるデータをRAM11に一時記憶させる。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを読み出してECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力されたデータを符号化して、符号語をメモリインターフェイス15に入力する。メモリインターフェイス15は、入力された符号語を半導体装置2に書き込む。
【0024】
ホストから読み出しリクエストを受信した場合、図1のメモリシステムは次のように動作する。メモリインターフェイス15は、半導体装置2から読み出した符号語をECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力された符号語を復号して、復号されたデータをRAM11にストアする。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを、ホストインターフェイス13を介してホストに送信する。
【0025】
(半導体装置の構成)
図2に示されるように、半導体装置2は、メモリセルアレイ21、入出力回路22、ロジック制御回路23、レジスタ24、シーケンサ25、電圧生成回路26、ロウデコーダ27、センスアンプ28、入出力用パッド群30、ロジック制御用パッド群31、及び電源入力用端子群32を備えている。
【0026】
メモリセルアレイ21は、データを記憶する部分である。メモリセルアレイ21は、複数のビット線及び複数のワード線に関連付けられた複数のメモリセルトランジスタを有して構成されている。
【0027】
入出力回路22は、信号DQ<7:0>、及びデータストローブ信号DQS,/DQSをメモリコントローラ1との間で送受信する。また、入出力回路22は、信号DQ<7:0>内のコマンド及びアドレスをレジスタ24に転送する。さらに、入出力回路22は、書き込みデータ及び読み出しデータをセンスアンプ28との間で送受信する。
【0028】
ロジック制御回路23は、メモリコントローラ1からチップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE,/RE、及びライトプロテクト信号/WP等の制御信号を受信する。また、ロジック制御回路23は、レディービジー信号/RBをメモリコントローラ1に転送して、半導体装置2の状態を外部に通知する。
【0029】
レジスタ24は各種データを一時的に保持する。例えば、レジスタ24は、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作等を指示するコマンドを保持する。このコマンドは、メモリコントローラ1から入出力回路22に入力された後、入出力回路22からレジスタ24に転送されて保持される。また、レジスタ24は、上記のコマンドに対応するアドレスも保持する。このアドレスは、メモリコントローラ1から入出力回路22に入力された後、入出力回路22からレジスタ24に転送されて保持される。さらに、レジスタ24は、半導体装置2の動作状態を示すステータス情報も保持する。ステータス情報は、メモリセルアレイ21等の動作状態に応じて、シーケンサ25によって都度更新される。ステータス情報は、メモリコントローラ1からの要求に応じて、状態信号として入出力回路22からメモリコントローラ1に出力される。
【0030】
シーケンサ25は、メモリコントローラ1から入出力回路22及びロジック制御回路23に入力された制御信号に基づいて、メモリセルアレイ21を含む各部の動作を制御する。
【0031】
電圧生成回路26は、メモリセルアレイ21におけるデータの書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作のそれぞれに必要な電圧を生成する部分である。この電圧には、例えばメモリセルアレイ21の複数のワード線及び複数のビット線にそれぞれ印加される電圧等が含まれる。電圧生成回路26の動作はシーケンサ25により制御される。
【0032】
ロウデコーダ27は、メモリセルアレイ21の複数のワード線に電圧をそれぞれ印加するためのスイッチ群により構成される回路である。ロウデコーダ27は、レジスタ24からブロックアドレス及びロウアドレスを受け取り、当該ブロックアドレスに基づいてブロックを選択するとともに、当該ロウアドレスに基づいてワード線を選択する。ロウデコーダ27は、選択されたワード線に対して電圧生成回路26からの電圧が印加されるようにスイッチ群の開閉状態を切り替える。ロウデコーダ27の動作はシーケンサ25により制御される。
【0033】
センスアンプ28は、メモリセルアレイ21のビット線に印加される電圧を調整したり、ビット線の電圧を読み出してデータに変換したりするための回路である。センスアンプ28は、データの読み出し時には、メモリセルアレイ21のメモリセルトランジスタからビット線に読み出されたデータを取得するとともに、取得した読み出しデータを入出力回路22に転送する。センスアンプ28は、データの書き込み時には、ビット線を介して書き込まれるデータをメモリセルトランジスタに転送する。センスアンプ28の動作はシーケンサ25により制御される。
【0034】
入出力用パッド群30は、メモリコントローラ1と入出力回路22との間で各信号の送受信を行うための複数の端子(パッド)が設けられた部分である。それぞれの端子は、信号DQ<7:0>、及びデータストローブ信号DQS,/DQSのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0035】
ロジック制御用パッド群31は、メモリコントローラ1とロジック制御回路23との間で各信号の送受信を行うための複数の端子が設けられた部分である。それぞれの端子は、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE,/RE、ライトプロテクト信号/WP、及びレディービジー信号/RBのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0036】
電源入力用端子群32は、半導体装置2の動作に必要な各電圧の印加を受けるための複数の端子が設けられた部分である。それぞれの端子に印加される電圧には、電源電圧Vcc,VccQ,Vpp、及び接地電圧Vssが含まれている。電源電圧Vccは、動作電源として外部から与えられる回路電源電圧であり、例えば3.3V程度の電圧である。電源電圧VccQは例えば1.2Vの電圧である。電源電圧VccQは、メモリコントローラ1と半導体装置2との間で信号を送受信する際に用いられる電圧である。電源電圧Vppは、電源電圧Vccよりも高圧の電源電圧であり、例えば12Vの電圧である。
【0037】
(メモリセルアレイの電子回路的な構成)
次に、メモリセルアレイ21の電子回路的な構成について説明する。図3に示されるように、メモリセルアレイ21は複数のストリングユニットSU0~SU3を有している。各ストリングユニットSU0~SU3は複数のNANDストリングSRを有している。各NANDストリングSRは、例えば8つのメモリセルトランジスタMT0~MT7、及び2つのセレクトトランジスタSTD,STSを有している。なお、NANDストリングSRが有するメモリセルトランジスタの数及びセレクトトランジスタの数は任意に変更可能である。
【0038】
複数のストリングユニットSU0~SU3は全体で1つのブロックを構成している。なお、図3では単一のブロックのみが図示されているが、実際には、メモリセルアレイ21には、このようなブロックが複数設けられている。
【0039】
以下では、ストリングユニットSU0~SU3のそれぞれを区別せずに「ストリングユニットSU」とも称する。また、メモリセルトランジスタMT0~MT7のそれぞれを区別せず「メモリセルトランジスタMT」とも称する。
【0040】
メモリセルアレイ21はN本のビット線BL0~BL(N-1)を有している。なお、「N」は正の整数である。各ストリングユニットSUは、ビット線BL0~BL(N-1)の数Nと同数のNANDストリングSRを有している。NANDストリングSRに設けられるメモリセルトランジスタMT0~MT7は、セレクトトランジスタSTDのソースとセレクトトランジスタSTSのドレインとの間において直列に配置されている。セレクトトランジスタSTDのドレインは複数のビット線BL0~BL(N-1)のいずれかに接続されている。セレクトトランジスタSTSのソースはソース線SLに接続されている。以下の説明においては、ビット線BL0~BL(N-1)のそれぞれを区別せず「ビット線BL」とも表記することがある。
【0041】
各メモリセルトランジスタMTは、ゲート部分に電荷蓄積層を有するトランジスタとして構成されている。電荷蓄積層に蓄積された電荷量が、メモリセルトランジスタMTに保持されるデータに相当する。メモリセルトランジスタMTは、例えば窒化シリコン膜等を電荷蓄積層に用いるチャージトラップ型のものであってもよく、シリコン膜等を電荷蓄積層に用いるフローティングゲート型のものであってもよい。
【0042】
ストリングユニットSU0に設けられる複数のセレクトトランジスタSTDのゲートは、いずれもセレクトゲート線SGD0に接続されている。セレクトゲート線SGD0には、各セレクトトランジスタSTDの開閉を切り換えるための電圧が印加される。ストリングユニットSU1~SU3も同様にセレクトゲート線SGD1~SGD3にそれぞれ接続されている。
【0043】
ストリングユニットSU0に設けられる複数のセレクトトランジスタSTSのゲートは、いずれもセレクトゲート線SGS0に接続されている。セレクトゲート線SGS0には、各セレクトトランジスタSTSの開閉を切り換えるための電圧が印加される。ストリングユニットSU1~SU3も同様にセレクトゲート線SGS1~SGS3にそれぞれ接続されている。なお、1つのブロックを構成するストリングユニットSU0~SU3においてセレクトゲート線が共有され、ストリングユニットSU0~SU3のそれぞれのセレクトトランジスタSTSのゲートが共通のセレクトゲート線に接続されていてもよい。
【0044】
メモリセルトランジスタMT0~MT7のそれぞれのゲートはワード線WL0~WL7に接続されている。ワード線WL0~WL7には、メモリセルトランジスタMT0~MT7の開閉を切り換えたり、メモリセルトランジスタMT0~MT7の各電荷蓄積層に蓄積された電荷量を変化させたりする等の目的で電圧が印加される。
【0045】
半導体装置2におけるデータの書き込み及び読み出しは、いずれかのストリングユニットSUにおける、いずれかのワード線WLに接続される複数のメモリセルトランジスタMTに対して、「ページ」と称される単位ごとに一括して行われる。一方、半導体装置2におけるデータの消去は、ブロックに含まれる全てのメモリセルトランジスタMTに対して、一括して行われる。このようなデータの書き込み、読み出し、及び消去を行うための具体的な方法としては、公知となっている様々な方法を採用することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0046】
(半導体装置の構造)
次に、半導体装置2の構造、特にメモリセルアレイ21の近傍の構造について具体的に説明する。図4に示されるように、半導体装置2は、基板40、絶縁体層41、半導体層42、及び積層体50を備えている。
【0047】
基板40は、Z軸方向側に平坦面を有する板状の部材である。基板40は例えばシリコンウェハである。基板40の上面には、絶縁体層41及び半導体層42が例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により複数層の膜として形成されている。基板(半導体基板)40の表面には、例えば、素子分離領域40iが設けられている。素子分離領域40iは、例えばシリコン酸化物を含む絶縁領域であり、その一部において、トランジスタTrのソース領域およびドレイン領域を区画する部分である。
【0048】
絶縁体層41は、例えばシリコン酸化物のような絶縁性の材料により形成されている。絶縁体層41において基板40に接触する底部には、例えばトランジスタTrや配線LN等を含む周辺回路が形成されている。この周辺回路は、図2に示されるセンスアンプ28やロウデコーダ27等を構成する。絶縁体層41は、この周辺回路の全体を覆っている。
【0049】
半導体層42は、図3のソース線SLとして機能する層である。半導体層42は、例えば、不純物がドープされた多結晶シリコンのような、シリコンを含む材料により形成されている。半導体層42はメモリセルアレイ21の下方において絶縁体層41に埋め込まれている。
【0050】
なお、半導体層42は、その全体がシリコンのような半導体材料により形成されていてもよいが、図4に示されるように半導体層42a及び導電層42bを含む少なくとも2層の積層構造により形成されていてもよい。半導体層42aは例えばシリコン(ポリシリコン)のような半導体材料により形成されている。導電層42bは例えばタングステンのような金属材料により形成されている。
【0051】
積層体50は半導体層42の上面に設けられている。積層体50は、絶縁体層51及び導電体層52がZ軸方向に交互に複数積層された構造を有している。絶縁体層51及び導電体層52は、半導体層42の上面に例えばCVD法を用いた成膜法により複数層の膜として形成される。
【0052】
導電体層52は、例えばタングステンを含む材料を用いて形成された、導電性を有する層である。各導電体層52は、図3におけるワード線WL0~WL7やセレクトゲート線SGS1,SGD1等として用いられる。絶縁体層51は、互いに隣り合う導電体層52,52の間に配置されており、それらの間を電気的に絶縁している。絶縁体層51は本実施形態における「絶縁膜」に相当し、導電体層52は本実施形態における「タングステン膜」に相当する。本実施形態における絶縁体層51および導電体層52の製造方法については後に詳述する。
【0053】
積層体50には、Z軸方向に貫通するように複数のメモリホールMHが形成されている。各メモリホールMHの内側にはメモリピラー60が形成されている。各メモリピラー60は、Z軸方向において最も上方に位置する絶縁体層51から半導体層42までの領域に形成されている。各メモリピラー60は、図3に示されるNANDストリングSRに対応するものである。
【0054】
図5は、メモリピラー60をその中心軸を通る面(Y-Z平面)で切断した際の積層体50の断面構造を示したものである。図6は、図5のVI-VI線に沿った断面構造を示したものである。
【0055】
図6に示されるように、メモリピラー60は、円形又は楕円形の断面形状を有している。メモリピラー60は、ボディ61、及び積層膜62を有している。
【0056】
ボディ61は、コア部61a、及び半導体部61bを有している。半導体部61bは半導体材料を含み、例えばアモルファスシリコンを含む材料又はポリシリコンを含む材料によって形成されている。半導体部61bは、メモリセルトランジスタMT等のチャネルを形成する部分であり、本実施形態の半導体チャネルとして機能する。コア部61aは、半導体部61bの内側に設けられている。コア部61aは、例えばシリコン酸化物のような絶縁性の材料により形成されている。なお、ボディ61は、その全体が半導体部61bになっており、内側のコア部61aが設けられていない構造であってもよい。
【0057】
積層膜62は、ボディ61の外周を覆うような位置に形成された複数層の膜である。積層膜62は、例えばトンネル絶縁膜62a、及び電荷蓄積層62bを有している。トンネル絶縁膜62aは、ボディ61の外周の位置に設けられる膜である。トンネル絶縁膜62aは、例えばシリコン酸化物、又はシリコン酸化物及びシリコン窒化物を含む。トンネル絶縁膜62aは、ボディ61と電荷蓄積層62bとの間の電位障壁である。例えばボディ61から電荷蓄積層62bへ電子を注入するとき(書き込み動作)には、電子がトンネル絶縁膜62aの電位障壁を通過(トンネリング)する。また、ボディ61から電荷蓄積層62bへ正孔を注入するとき(消去動作)には、正孔がトンネル絶縁膜62aの電位障壁を通過する。
【0058】
電荷蓄積層62bは、トンネル絶縁膜62aの外側を覆うように形成された膜である。電荷蓄積層62bは、例えばシリコン窒化物を含む。電荷蓄積層62bは、膜中に電荷をトラップするトラップサイトを有する。電荷蓄積層62bにおいて導電体層52とボディ61との間に挟み込まれている部分は、電荷を蓄積する電荷蓄積層を、すなわちメモリセルトランジスタMTの記憶領域を構成している。メモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、電荷蓄積層62bにおける電荷の有無、又は当該電荷の量によって変化する。
【0059】
図5に示されるように、導電体層52の外周面はブロック絶縁膜53により覆われている。ブロック絶縁膜53は、導電体層52から積層膜62側への電荷のバックトンネリングを抑制するための膜である。ブロック絶縁膜53は、例えばシリコン酸化物及びアルミニウム酸化物を含む材料により形成される。
【0060】
絶縁体層51と電荷蓄積層62bとの間にはカバー絶縁膜54が設けられている。カバー絶縁膜54は、例えばシリコン酸化物を含む材料を用いて形成されてもよい。カバー絶縁膜54は、犠牲層(後述する犠牲層55)を導電体層52に置き換えるリプレイス工程において電荷蓄積層62bがエッチングされないように保護するための膜である。例えば、導電体層52の形成にリプレイス工程が利用されない場合には、カバー絶縁膜54はなくてもよい。
【0061】
メモリピラー60において各導電体層52の内側に位置する部分はトランジスタとして機能する。すなわち、各メモリピラー60では、その長手方向に沿って複数のトランジスタが電気的に直列に接続された状態になっている。各導電体層52は積層膜62を介して各トランジスタのゲートに接続されている。トランジスタの内側にある半導体部61bは、当該トランジスタのチャネルとして機能する。
【0062】
メモリピラー60の長手方向に沿って直列に並ぶ各トランジスタの一部は、図3に示される複数のメモリセルトランジスタMTとして機能する。また、直列に並ぶ複数のメモリセルトランジスタMTの両端にそれぞれ形成されるトランジスタは、図3に示されるセレクトトランジスタSTD,STSとしてそれぞれ機能する。
【0063】
図4に示されるように、それぞれのメモリピラー60の上方には複数のビット線BLが設けられている。各ビット線BLは、X方向に延びる直線状の配線として形成されている。各ビット線BLはY方向に並ぶように配置されている。メモリピラー60の上端はコンタクトCbを介して複数のビット線BLのうちのいずれかに接続されている。このような構造により、各メモリピラー60の半導体部61bがビット線BLに対し電気的に接続されている。
【0064】
積層体50はスリットSTにより複数に分断されている。スリットSTは、図4のY方向に沿って延びるように形成された直線状の溝であり、例えば半導体層42に達する深さで形成されている。
【0065】
積層体50の上方部分はスリットSHEにより分断されている。スリットSHEは、Y方向に延びるように形成される浅い溝である。スリットSHEは、複数の導電体層52のうち、セレクトゲート線SGDとして設けられた導電体層52のみを分断する深さまで形成されている。
【0066】
メモリピラー60の下端部では積層膜62が除去されている。これにより、半導体部61bの下端部は半導体層42に接続されている。このような構造により、ソース線SLとして機能する半導体層42と、各トランジスタのチャネルとが電気的に接続されている。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る半導体記憶装置10は、絶縁膜に相当する複数の絶縁体層51と、複数の絶縁体層51の間に設けられた例えばタングステン膜で形成された導電体層52とを備える(以下、導電体層52をタングステン膜52とも称する)。すなわち、本実施形態に係る半導体記憶装置10は、複数の絶縁体層51のうちの一の絶縁膜(本実施形態における第1の絶縁膜)51aと、一の絶縁膜に対してZ軸方向(Z方向)に離間する他の絶縁膜(本実施形態における第2の絶縁膜)51bと、一の絶縁膜51aと他の絶縁膜51bとの間に設けられたタングステン膜52と、を備える。本実施形態に係る半導体記憶装置10においては、タングステン膜52の厚さをT、タングステン膜52の平均粒径をAPSとすると、APS/T≦2の関係を満足するようにタングステン膜52が設けられている。ここで、本実施形態において、タングステン膜52の厚さTは、後述のように、タングステン膜52のZ軸方向における厚さである。図5に示すように、本実施形態に係る半導体記憶装置10においては、複数の絶縁膜51と、複数のタングステン膜52とが、絶縁膜51(第1の絶縁膜51a)、タングステン膜52(図5において第1の絶縁膜51aと第2の絶縁膜51bとの間のタングステン膜52)、絶縁膜51(第1の絶縁膜51b)、タングステン膜52(図5において第2の絶縁膜51bのZ軸方向の上側に設けられたタングステン膜52)…の順にZ軸方向に積層されている。従って、本実施形態におけるタングステン膜52の厚さTは、タングステン膜52の、ある絶縁膜51(例えば第1の絶縁膜51a)から他の絶縁膜51(例えば第2の絶縁膜51b)に向かう方向(本実施形態において第1の方向)に相当するZ軸方向における厚さである。なお、図5に示す例においては、一の絶縁膜51aと、タングステン膜52と、他の絶縁膜51bとは、後述のシリコン酸化膜53aおよび酸化アルミニウム膜53bを含むブロック絶縁膜53等を介して、この順に積層されている。
【0068】
本発明者等は、半導体記憶装置の製造工程において、ワード線としてタングステン膜を成膜後、基板として用いられた半導体基板のシリコンウェハの下凸方向への反りが発生することがあるという問題があることを見出した。シリコンウェハの反りは、近年の半導体記憶装置の高積層化に伴い、さらに問題になると考えられる。
【0069】
本発明者等は、鋭意検討の結果、タングステン膜を比較的小粒径となるように設けることにより、反りの原因となる応力を低減することが可能であることを見出した。小粒径化することにより、応力の方向の偏りの発生が抑制され、応力分布が平均化されるからであると考えられる。本発明者等の検討によると、上記のように、タングステン膜の厚さをT、タングステン膜の平均粒径をAPSとすると、APS/T≦2の関係を満足する場合に好適に応力の低減が可能であることがわかった。
【0070】
また、APS/T≦2を満足すると応力を低減することができるが、例えばAPS/T≦1の場合にさらに顕著な効果が得られることがわかった。また、0.3≦APS/Tの場合にもタングステン膜の反りの原因となる応力を低減する効果が得られることがわかった。タングステン膜52は、例えばタングステン膜52の平均粒径APSが120nm以下、好ましくは80nm以下、あるいは好ましくは50nm以下または40nm以下となるように設けられてもよい。また、タングステン膜52は、膜厚Tが60nm以下、好ましくは40nm以下、あるいは好ましくは25nm以下または20nm以下となるように設けられてもよい。このような平均粒径APS、膜厚Tの範囲において、APS/T≦2となるようにタングステン膜52が形成されることが好ましい。例えば、タングステン膜52が、膜厚Tが60nmとなるように設けられる場合、APS/T≦2を満たすように、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の平均粒径が120nm以下となるように設けられてもよく、APS/T≦1を満たすように、平均粒径が60nm以下(例えば50nm)となるように設けられることがさらに好ましい。同様に、タングステン膜52が、膜厚Tが40nmとなるように設けられる場合、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の平均粒径が80nm以下となるように設けられてもよく、平均粒径が40nm以下となるように設けられることがさらに好ましい。また、タングステン膜52が、膜厚Tが25nmとなるように設けられる場合には、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の平均粒径が50nm以下となるように設けられてもよく、平均粒径が25nm以下となるように設けられることがさらに好ましい。また、タングステン膜52が、膜厚Tが20nmとなるように設けられる場合には、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の平均粒径が40nm以下となるように設けられてもよく、平均粒径が20nm以下となるように設けられることがさらに好ましい。また、上述のように、0.3≦APS/Tとなるようにタングステン膜52が形成されてもよい。例えば、タングステン膜52が、膜厚Tが60nmとなるように設けられる場合、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の平均粒径が20nm以上となるように設けられてもよい。
【0071】
なお、図5に示すように、本実施形態において膜厚Tは、タングステン膜52の成膜後のZ軸方向における厚さを意味する。後述するように、本実施形態のタングステン膜52の製造過程においては、タングステン膜を構成するタングステン結晶がZ軸方向の上方向および下方向にそれぞれ成長するように成膜されるので、タングステン膜52の膜厚Tは、成膜時に成長させる厚さにより調整されてもよい。従って、例えば膜厚Tのタングステン膜52を形成する場合、Z軸方向の上方向に成長させるタングステン膜およびZ軸方向の下方向に成長させるタングステン膜の厚さがそれぞれ例えば約T/2となるように成膜工程において調整されてもよい。例えば、膜厚60nmのワード線として機能するタングステン膜を形成する場合、Z軸方向の上方向および下方向に成長するタングステン膜をそれぞれ30nmずつ形成してもよい。また、Z軸方向の上方向または下方向のいずれか一方向にのみ成長させるように成膜してもよく、その場合についても、上述のAPS/Tが2以下となるようにタングステン膜を成膜することにより、本実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、例えば、60nmの膜厚のタングステン膜をZ軸方向の上方向に成長させて成膜する過程において、タングステン膜を構成するタングステン結晶粒の平均粒径が120nm以下となるように成膜されてもよい。また、好ましくはタングステン結晶粒の平均粒径が60nm以下となるようにタングステン膜52がZ軸方向の上方向に成膜されてもよい。
【0072】
本実施形態においては、タングステン膜52の膜厚Tは導電体層52の厚さに相当する。例えば、タングステン膜52の厚さTは、図5において符号Tで示すように、メモリピラー60を中心軸を通る面(Y-Z平面)で切断した際に示される導電体層52のZ軸方向の大きさであってもよい。タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の粒径は公知の方法により測定することができる。例えば、結晶粒の粒径は、導電体層52の断面(例えば、図5においてXZ面に平行な断面)の顕微鏡画像(光学顕微鏡画像又は走査型乃至透過型電子顕微鏡画像の場合を含む)を取得し、顕微鏡画像を用いて断面における結晶粒の最大寸法を測定することにより、取得してもよい。また、例えば、電子線後方散乱解析法(EBSD:Electron BackScatter Diffraction)によって粒径を測定することもできる。例えば、結晶粒の断面積が測定できる場合には、例えば、EBSD法によって得られる結晶粒マップに基づいて画像解析を行い測定した結晶粒の断面積を、結晶粒の断面を正円形としたときの直径に換算して取得してもよい。例えば、結晶粒の断面積をSとし、結晶粒の半径をrとしたとき、S=πrの関係から半径rを算出し、半径rの2倍を粒径としてもよい。また、例えば、測定した粒径の平均値を算出することにより、導電体層52内の結晶粒の平均粒径を算出してもよい。あるいは、取得した個々の結晶粒の粒径の加重平均を算出することにより平均粒径を取得してもよい。加重平均は、例えば、タングステン膜52の断面の顕微鏡画像において、粒径に加え、個々の結晶粒の断面積も算出し、個々の結晶粒における粒径と断面積との積の、全ての結晶粒についての和を、全ての結晶粒の断面積の和で除することにより算出することができる。
【0073】
本実施形態においては、タングステン膜の結晶粒の粒径として、膜厚T(成膜方向)に垂直あるいは略垂直な断面における粒径を取得してもよい。例えば、図5において、膜厚Tを導電体層52のZ軸方向の大きさとすると、粒径としては、XY面に平行な断面における粒径を取得してもよい。
【0074】
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。本実施形態に係る半導体記憶装置10の製造方法は、絶縁膜51(絶縁体層51)を設ける工程と、絶縁膜51上にバリアメタル膜56を設ける工程と、バリアメタル膜56上に、タングステンのニュークリエーション膜57を設ける工程と、ニュークリエーション膜57上に、厚さT1を有する第1タングステン膜52aを設ける工程と、少なくともニュークリエーション膜57及び第1タングステン膜52aをアニールする工程と、アニールされた第1タングステン膜52a上に、厚さT1より大きい厚さT2の第2タングステン膜52bを設けることにより、厚さをTとし、平均粒径をAPSとするとき、APS/T≦2であるタングステン膜52を設ける工程と、を含む。本実施形態においてタングステン膜52の厚さTは、例えば図5を参照して上述のように、タングステン膜52のZ軸方向における厚さである。本実施形態に係る半導体記憶装置10の製造方法においては、ある絶縁膜51(本実施形態において第1の絶縁膜51a)と、タングステン膜52と、他の絶縁膜51(本実施形態において第2の絶縁膜51b)とが、この順に、バリアメタル膜56やニュークリエーション膜57等を介して積層され、タングステン膜52の厚さTは、第1の絶縁膜51aから第2の絶縁膜51bに向かう方向(本実施形態において第1の方向)に相当するZ軸方向における厚さである。
【0075】
以下、図7図16を参照して、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法を詳細に説明する。図7図16は、本実施形態に係る半導体装置10の製造工程の一部を模式的に示す断面図である。図7に示されるように、まず、基板40上に絶縁体層41および半導体層42を形成し、半導体層42上に、複数の絶縁体層51および犠牲層55を交互に含む積層体50を形成する。基板40は、Z軸方向側において平坦な面を有する板状の部材であり、例えば、シリコン基板などの半導体基板である。絶縁体層41は、例えばシリコン酸化物のような絶縁性の材料により形成されてもよい。半導体層42は、例えば、不純物がドープされた多結晶シリコンのような、シリコンを含む材料により形成されてもよい。積層体50を構成する絶縁体層51は、本実施形態における絶縁膜に相当し、例えばシリコン酸化物を含む材料を用いて形成される。絶縁体層51は、例えば、TEOS層であってもよい。TEOS層は、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を原料としたシリコン酸化物層であり、例えば、CVD法を用いて形成されてもよい。犠牲層55は、後の置換工程において、導電体層52に置き換えられる。犠牲層55は、例えば、シリコン窒化物を含む材料を用いてCVD法により形成されてもよい。後の工程において犠牲層55が導電体層52に置換されると、絶縁体層51は、互いに隣り合う導電体層52、52の間に配置されて、それらの間を電気的に絶縁する。なお、図7では、絶縁体層51および犠牲層55は、それぞれ4層および3層が積層される場合を模式的に示しているが、積層体50の積層数はこれらに限られない。例えば、絶縁体層51および犠牲層55(後述の犠牲層55を除去した後に形成される、ワード線として機能する導電体層52)は、3層以下、または5層以上が積層されてもよい。特に近年の半導体記憶装置のように高積層の半導体記憶装置においては、100層以上の導電体層52が積層され、このような高積層の半導体記憶装置においても本実施形態を適用可能である。また、後述するように、本実施形態により、特に高積層の半導体記憶装置の製造プロセスを効率良く進めることが可能となる。
【0076】
次に、図8に示されるように、絶縁体層41、半導体層42、および積層体50を貫通するように、積層体50にメモリホールMHが形成される。メモリホールMHは、例えばRIE(Reactive Ion Etching)による異方性エッチングを行うことにより形成されてもよい。
【0077】
続いて、図9に示されるように、メモリホールMH内の絶縁体層51および導電体層52のそれぞれの内面に、カバー絶縁膜54、積層膜62、およびボディ61がこの順に形成される。カバー絶縁膜54は、例えばシリコン酸化物を含む材料を用いて形成されてもよい。積層膜62として、カバー絶縁膜54の内側に、電荷蓄積層62bおよびトンネル絶縁膜62aがそれぞれ形成される。電荷蓄積層62bは、例えばシリコン窒化物を含む材料を用いて形成されてもよい。トンネル絶縁膜62aは、例えばシリコン酸化物を含む材料、またはシリコン酸化物およびシリコン窒化物を含む材料を用いて形成されてもよい。ボディ61として、トンネル絶縁膜62aの内側に、半導体部61bおよびコア部61aがそれぞれ形成される。半導体部61bは、例えば半導体材料を含み、例えばアモルファスシリコンを含む材料を用いて形成されてもよい。コア部61aは、例えばシリコン酸化物のような絶縁性の材料を用いて形成されてもよい。
【0078】
次に、積層体50に不図示の溝を形成した後、この溝を利用して犠牲層55を除去する。この溝は、例えばRIEにより半導体層42に達するように深さ方向(Z軸方向)に形成されてもよい。犠牲層55は、例えば、リン酸等の薬液を用いた、溝を介したウェットエッチングにより除去されてもよい。これにより、図10に示されるように、隣り合う絶縁体層51、51の間に空隙Cが形成される。図10に示されるように、空隙C内には絶縁体層51のZ軸方向の表面およびカバー絶縁膜54の表面(Y軸方向の表面)が露出する。上述のように、カバー絶縁膜54が設けられていることにより、犠牲層55を除去する工程において電荷蓄積層62bがエッチングされないように保護される。
【0079】
続いて、空隙C内に露出するカバー絶縁膜54を除去することにより、図11に示されるように、電荷蓄積層62bのY方向の表面が露出される。
【0080】
次に、絶縁体層51のZ軸方向の表面および電荷蓄積層62bのY方向の表面に、シリコン酸化膜53aおよび酸化アルミニウム膜53bがこの順に形成される。これにより、図12に示されるように、空隙C内にブロック絶縁膜53が形成される。シリコン酸化膜53aおよび酸化アルミニウム膜53bは、例えば熱CVD法またはALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成されてもよい。
【0081】
次に、図13に示されるように、酸化アルミニウム膜53bの表面(Z軸方向の表面およびY方向の表面)にバリアメタル膜56が形成される。バリアメタル膜56は、例えば、窒化チタン(TiN)を含む材料を用いてCVD法またはALD法により形成されてもよい。
【0082】
続いて、図14に示されるように、バリアメタル膜56の表面(Z軸方向の表面およびY方向の表面)に初期タングステン膜としてのニュークリエーション膜57が形成される。ニュークリエーション膜57は、例えば、六フッ化タングステン(WF)ガスとジボラン(B)ガスとを主成分として含む処理ガスを用いて、CVD法により形成されてもよい。ニュークリエーション膜57は、例えば厚さが1nm以上5nm以下となるように形成されてもよい。ニュークリエーション膜57の厚さは、例えば2nm以上4nm以下となるように形成されることが好ましい。
【0083】
続いて、図15に示されるように、ニュークリエーション膜57の表面(Z軸方向の表面およびY方向の表面)に、第1の厚さT1となるように第1タングステン膜52aが形成される。第1タングステン膜52aは、例えば、成膜ガスとしての六フッ化タングステン(WF)ガスと還元ガスとしての水素(H)ガスとを含む処理ガスを用いて、CVD法により形成されてもよい。第1タングステン膜52aは、例えば厚さT1が0.1nm以上5nm以下となるように形成されてもよい。第1タングステン膜52aの厚さは、例えば0.5nm以上3nm以下であることが好ましい。
【0084】
次に、必要に応じて成膜工程に使用される処理容器を大気開放した後、第1タングステン膜52aに対し、高速熱処理、例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)法によりアニール処理が施される。アニール処理は、例えば、窒素(N)ガスまたは酸素(O)ガス雰囲気中で、600℃以上900℃以下の温度範囲で、例えば5秒以上20秒以下の時間、行われてもよい。
【0085】
さらに必要に応じて成膜工程に使用される処理容器を再度大気開放した後、図16に示されるように、第1タングステン膜52aの表面(Z軸方向の表面およびY方向の表面)に、厚さが第1タングステン膜52aの厚さT1より大きいT2となるように、第2タングステン膜52bが形成される。第2タングステン膜52bは、例えば第1タングステン膜52aと同様の方法により形成されてもよく、成膜ガスとしての六フッ化タングステン(WF)ガスと還元ガスとしての水素(H)ガスとを含む処理ガスを用いて、CVD法により形成されてもよい。また、第2タングステン膜52bは、タングステン膜52の厚さをT(すなわち、第1タングステン膜52aの厚さT1の2倍と、第2タングステン膜52bの厚さT2との和)とし、タングステン膜52を構成する平均粒径をAPSとするとき、APS/T≦2という関係を満たすように形成される。上述のように、こうして形成されたタングステン膜52は、本実施形態における導電体層52に相当し、ワード線として機能する。なお、導電体層52は、他の実施形態においては、例えばモリブデンを含む材料により形成されてもよい。タングステン膜52が形成された後にさらに他の工程が必要に応じて行われてもよい。例えば、必要であれば、さらにアニール処理が行われてもよい。また、本実施形態においては、第2タングステン膜52bは、第1タングステン膜52aのZ軸方向上側の表面からZ軸方向の上方向にタングステン結晶を成長させると共に、第1タングステン膜52aのZ軸方向下側の表面からZ軸方向の下方向にタングステン結晶を成長させることにより形成される。第1タングステン膜52aのZ軸方向上側の表面からZ軸方向の上方向およびZ軸方向下側の表面からZ軸方向の下方向に、それぞれT2/2の厚さとなるようにタングステン膜を成膜することにより、厚さT2の第2タングステン膜52bを形成してもよい。
【0086】
以上により、本実施形態の半導体装置10が形成される。
【0087】
以下、図17Aおよび図17Bを参照して、本実施形態に係る半導体装置10におけるタングステン膜52の厚さTおよび平均粒径APSについて説明する。
【0088】
図17Aに本実施形態に係る実施例の半導体装置(半導体記憶装置)10の導電体層52の断面のEBSD法により得られた結晶粒マップを示す。また、図17Bに比較例の半導体記憶装置(以下、半導体装置200とも称する)の導電体層の断面の結晶粒マップを示す。比較例の半導体装置200は、上述の本実施形態に係る半導体装置10の製造工程のような、タングステン膜52を、厚さが小さい第1タングステン膜52aを形成後に熱処理を実施した上で第2タングステン膜52bを形成する工程によっては形成しない点において本実施形態に係る実施例の半導体装置10と異なる製造工程により製造された。すなわち、比較例の半導体装置200は、例えば、上述のような絶縁体層(以下、絶縁体層251とも称する)上に、バリアメタル膜(以下、バリアメタル膜256とも称する)が形成され、ニュークリエーション膜(以下、ニュークリエーション膜257とも称する)が形成された後、真空状態を維持したまま、タングステン膜(以下、タングステン膜252とも称する)が形成され、続いてアニール処理を施すことにより形成された。
【0089】
図17Aおよび図17Bに示すように、本実施形態に係る実施例の半導体装置10においては、比較例の半導体装置200に比べ、粒径を小さくすることができた。結晶粒マップにおいて粒径を測定し、平均粒径(ここでは、上述の加重平均粒径)を算出したところ、本実施形態に係る実施例の半導体装置10のタングステン膜52および比較例の半導体装置200のタングステン膜252のタングステン結晶粒の平均粒径は、それぞれ、50nmおよび170nmであった。
【0090】
すなわち、本発明者等は、鋭意検討により、上述してきた製造工程により、ニュークリエーション膜57を成膜後、厚さが比較的小さい第1タングステン膜52aを形成した後、熱処理を施し、第2タングステン膜52bを形成することにより、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の粒径を小さくすることができた。すなわち、厚さが比較的小さい第1タングステン膜52aを形成した後に第2タングステン膜52bを形成することにより、構成するタングステン結晶粒の粒径が比較的小さい第1タングステン膜52aを形成し、その後に形成される第2タングステン膜52bを構成するタングステン結晶粒の粒径も前の工程で形成された第1タングステン膜52aのタングステン結晶の影響を受けるので、第2タングステン膜52bの結晶粒の粒径も比較的小さくすることができたと考えられる。さらに、本実施形態においては、ニュークリエーション膜57が形成された後、第1タングステン膜52aを形成し、第2タングステン膜52bを形成する前に熱処理(高速熱処理)が施される。アモルファス状態であったニュークリエーション膜57および第1タングステン膜52aのタングステンは、高速熱処理を施すことにより、ニュークリエーション膜57および第1タングステン膜52aが一体化されることに伴い、多結晶化したので、第1タングステン膜52aのタングステン結晶を小粒径化することができたと考えられる。その後形成される第2タングステン膜52bは、第1タングステン膜52aの材質および結晶性等の影響を受けやすいので、第2タングステン膜52bは、第1タングステン膜52aを構成する小粒径のタングステン結晶の影響を受け、粒径の小さいタングステン結晶により構成されるように成膜されたと考えられる。
【0091】
本実施形態に係る半導体装置10の製造工程のタングステンの結晶性への影響を確認する目的で、結晶の配向性についても調べた。図18は、本実施形態に係る実施例の半導体装置10および比較例の半導体装置200の回折X線スペクトルを示す。図18では、本実施形態に係る実施例の半導体装置10および比較例の半導体装置200に対して、回折X線強度の測定を行い、回折角度2θ(横軸)に対する回折X線強度(縦軸:所定時間に検出器が取り込んだ回折X線数Counts)が図示される。図18に示す回折X線強度は、Rigaku社製SmartLab(3kW封入管タイプ)を用いて、XRD(X-ray Diffraction)法により測定された。
【0092】
図18に示すように、比較例の半導体装置200に比べ、本実施形態に係る実施例の半導体装置10のタングステン膜においては、例えば(110)、(200)、および(211)面にそれぞれ相当する3つの極大値が現れ(図18において、それぞれ、W(110)、W(200)、およびW(211)で示す)、そのうち特に(110)および(211)の配向性のピークが強く現れた。また、図18に示されるように、特に(211)については、比較例の半導体装置200においてはほぼピークが見られなかったが、本実施形態に係る実施例の半導体装置10においては(211)で強いピークが現れた。これは、本実施形態に係る実施例の半導体装置10においては、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒径が小さくなるようにタングステン膜が形成された結果、配向性がランダムになり主方位である(110)だけでなく(211)等の他の方位にもピークが現れやすくなったと考えられる。
【0093】
本実施形態によると、以下に説明するように、半導体装置10のワード線の比抵抗値の増大も抑制されることがわかった。半導体記憶装置においては、一般的にワード線の抵抗が低いことが好ましい。ワード線の抵抗を低下させる目的で、例えばタングステン膜によりワード線を設ける場合、タングステン膜を構成するタングステン結晶粒の粒径が大きくなるように設けることが好ましいと考えられる。しかしながら、本発明者等の検討によれば、タングステン結晶粒の大粒径化に伴って、シリコンウェハの反りが増大すると考えられた。
【0094】
本実施形態によれば、半導体装置10のワード線の比抵抗についても低減できる。図19にワード線の厚さ方向の比抵抗の値の変化のグラフを示す。図19に示すように、本実施形態に係る実施例の半導体装置10および比較例の半導体装置200のワード線における比抵抗値は厚さ方向に亘ってあまり差がないという結果となった。すなわち、本実施形態に係る実施例の半導体装置10においては、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒を小粒径化したことに起因して比抵抗が増大する可能性が懸念されるが、本実施形態に係る半導体装置10の製造プロセスを用いることにより、比較例の半導体装置200に比べ比抵抗値を増大させることなくタングステン膜52を形成することができた。なお、実施例のタングステン膜52および比較例のタングステン膜252の比抵抗は、例えば四端子法等の公知の方法により測定することができる。
【0095】
本発明者等の考察によると、比較例の半導体装置200のように、タングステン膜252のタングステン結晶粒の粒径が比較的大きくなる場合、タングステン膜252の表面の粗さが大きくなりやすいと考えられる。タングステン膜252の形成過程においては、空隙(本実施形態に係る半導体装置10の製造過程において形成される空隙Cに相当)の内側に形成されたニュークリエーション膜257のZ軸方向の上側の表面およびZ軸方向の下側の表面にタングステン結晶粒が、それぞれZ軸方向の上方向およびZ軸方向の下方向に成長していき、Z軸方向の上方向に成長したタングステン結晶の層の表面と、Z軸方向の下方向に成長したタングステン結晶の層の表面とが接近していくようにしてタングステン膜252が形成される。タングステン結晶の層を構成するタングステン結晶の粒径が比較的大きくなると、タングステン結晶の層の表面の粗さが大きくなると考えられるので、Z軸方向の上方向に成長したタングステン結晶の層の表面と、Z軸方向の下方向に成長したタングステン結晶の層の表面との間に間隙が生じやすくなると考えられる。このような間隙は、Z軸方向の上方向に成長したタングステン結晶の層の表面と、Z軸方向の下方向に成長したタングステン結晶の層の表面との間に生じるので、例えば特にタングステン膜252においてZ軸方向の中央付近の領域に生じる可能性があると考えられる。また、タングステン膜の表面の粗さが大きいため、タングステン膜252の成膜が完了する前にZ軸方向の上方向に成長したタングステン結晶のタングステン膜の表面とZ軸方向の下方向に成長したタングステン結晶のタングステン膜の表面との間に生じた間隙の開口部分が閉塞してしまい、成膜ガスとして用いられる六フッ化タングステン(WF)ガスを間隙部分に行き渡らせることができず、十分な成膜ができなくなるとも考えられる。結果として、タングステン膜252の内部のタングステン量が低下し、ワード線としての比抵抗が大きくなると考えられる。
【0096】
本実施形態においては、タングステン膜52の形成過程において、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒の粒径を小さくすることができる。従って、タングステン膜52の形成過程においてZ軸方向の上方向に成長したタングステン結晶の層の表面およびZ軸方向の下方向に成長したタングステン結晶の層の表面の粗さが比較的小さくなると考えられるので、形成されたタングステン膜52には、例えばタングステン膜52内のZ軸方向において中央付近の領域に間隙が生じにくくなり、また、間隙の開口部分の閉塞も生じにくくなると考えられる。その結果、比較例の半導体装置200に比べ、本実施形態に係るタングステン膜52におけるタングステン結晶の充填率が向上し、タングステン膜52を構成するタングステン結晶粒を小粒径化したとしても、ワード線としての比抵抗の上昇を抑制することができたと考えられる。
【0097】
さらに、比較例の半導体装置200のように、タングステン膜252を構成するタングステン結晶粒の粒径が比較的大きい場合、タングステン膜252の膜厚方向(Z軸方向)の中央付近の領域に間隙が生じるときは、間隙近傍に存在する、成膜時に使用された六フッ化タングステン(WF)に起因するフッ素原子の拡散を誘発する可能性も考えられる。フッ素原子は特にタングステン膜の表面から拡散すると考えられるが、上述のようにZ軸方向の上方向に成長したタングステン結晶の層の表面と、Z軸方向の下方向に成長したタングステン結晶の層の表面との間に間隙が生じる結果、Z軸方向の上方向に成長したタングステン結晶の層の表面およびZ軸方向の下方向に成長したタングステン結晶の層の表面が露出しやすくなるので、タングステン膜表面からのフッ素原子の拡散が生じやすくなると考えられる。フッ素原子は例えばシリコン酸化物を含む材料を用いて形成された絶縁体層251内へと拡散し、絶縁体層251を損傷する可能性があると考えられる。本実施形態においては、上述のようにタングステン膜52の膜厚方向(Z軸方向)の中央付近の領域で間隙が生じにくくなる結果、フッ素原子の拡散を抑制することができる。
【0098】
上述した半導体基板のシリコンウェハの下凸方向への反りの発生、および/またはフッ素原子の拡散に起因する絶縁膜(絶縁体層)に発生し得る損傷により、特に高積層の半導体装置の製造工程が効率良く進められないことがあった。本実施形態に係る半導体装置10の製造方法によれば、半導体基板のシリコンウェハの下凸方向への反りの発生が抑制され、および/またはフッ素原子の拡散に起因する絶縁膜の損傷の発生が抑制されるので、半導体装置10の製造効率を向上することができる。従って、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法は、特に近年の高積層(例えば100層以上)の半導体装置の複雑化した製造工程において有効である。
【0099】
なお、上述してきたように、本実施形態に係る半導体装置10においては、ニュークリエーション膜57は、例えば、六フッ化タングステン(WF)ガスとジボラン(B)ガスとを主成分として含む処理ガスを用いて形成される。従って、半導体装置10のニュークリエーション膜57の表面側および裏面側にそれぞれ形成されるバリアメタル膜56およびタングステン膜52に、ジボラン(B)ガスに起因するボロン(B)を含有する層が存在してもよい。ジボラン(B)ガスに起因するボロン(B)が、ニュークリエーション膜57上に形成されるタングステン膜52に拡散すると考えられ、タングステン膜52においては、バリアメタル膜56に比較的近い領域においてボロン濃度が高く、バリアメタル膜56に比較的遠い領域においてボロン濃度が低くなる。従って、タングステン膜52は、バリアメタル膜56に相対的に近い位置Pにおいて、第1濃度のBを含有し、位置Pよりもバリアメタル膜56に相対的に遠い位置Qにおいて、第1濃度よりも低い第2濃度のBを含有してもよい。すなわち、タングステン膜52においては、バリアメタル膜56に比較的近い領域において、ボロンの高濃度の領域が形成されてもよい。
【0100】
タングステン膜52におけるボロンの濃度の分布は、例えば二次イオン質量分析器(SIMS:Secondary Ion Mass Spetcrometry)を用いて測定してもよい。例えば、タングステン膜52の膜厚方向(Z軸方向)のバリアメタル膜56に近い側からバリアメタル膜56から離れる方向に沿ってボロン濃度の分布を測定してもよい。
【0101】
本実施形態に係る半導体装置10においては、タングステン膜52が設けられることにより導電体層52が形成されている。しかしながら、タングステン膜52には、上記のように、例えばボロン(B)等、例えば製造工程で使用される材料に含有されるタングステン以外の物質が含まれていてもよい。
(付記1)
複数の絶縁膜と、
複数の前記絶縁膜上にそれぞれ設けられ、(110)の配向性のピーク及び(211)の配向性のピークを有する複数のタングステン膜と、
を備える半導体装置。
(付記2)
前記複数の絶縁膜と、
前記複数のタングステン膜と、
前記複数の絶縁膜及び前記複数のタングステン膜を貫通する方向に延伸する半導体チャネルと、
前記複数のタングステン膜と前記半導体チャネルとの間に設けられる電荷蓄積膜と、
を備える付記1記載の半導体装置。
(付記3)
絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられ、厚さをTとし、平均粒径をAPSとするとき、APS/T≦2であるタングステン膜と、
を備える半導体装置。
(付記4)
複数の前記絶縁膜と、
複数の前記絶縁膜上にそれぞれ設けられる複数の前記タングステン膜と、
前記複数の絶縁膜及び前記複数のタングステン膜を貫通する方向に延伸する半導体チャネルと、
前記複数のタングステン膜と前記半導体チャネルとの間に設けられる電荷蓄積膜と、
を備える、
付記3に記載の半導体装置。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 メモリコントローラ
2 半導体装置
10 半導体装置(半導体記憶装置)
12 プロセッサ
13 ホストインターフェイス
14 ECC回路
15 メモリインターフェイス
16 内部バス
21 メモリセルアレイ
22 入出力回路
23 ロジック制御回路
24 レジスタ
25 シーケンサ
26 電圧生成回路
27 ロウデコーダ
28 センスアンプ
30 入出力用パッド群
31 ロジック制御用パッド群
32 電源入力用端子群
40 基板
40i 素子分離領域
41 絶縁体層
42 半導体層
42a 半導体層
42b 導電層
50 積層体
51、51 絶縁体層
51 絶縁体層(絶縁膜)
51a 第1の絶縁膜
51b 第2の絶縁膜
52 導電体層
52 タングステン膜
52a 第1タングステン膜
52b 第2タングステン膜
53 ブロック絶縁膜
53a シリコン酸化膜
53b 酸化アルミニウム膜
54 カバー絶縁膜
55 犠牲層
56 バリアメタル膜
57 ニュークリエーション膜
60 メモリピラー
61 ボディ
61a コア部
61b 半導体部
62 積層膜
62a トンネル絶縁膜
62b 電荷蓄積層
70 積層体
200 半導体装置(半導体記憶装置)
251 絶縁体層
252 タングステン膜
256 バリアメタル膜
257 ニュークリエーション膜
ALE アドレスラッチイネーブル信号
BL ビット線
C 空隙
Cb コンタクト
CLE コマンドラッチイネーブル信号
DQS データストローブ信号
LN 配線
MH メモリホール
MT メモリセルトランジスタ
RE リードイネーブル信号
SGD セレクトゲート線
SHE スリット
SL ソース線
SR NANDストリング
ST スリット
STD セレクトトランジスタ
STS セレクトトランジスタ
SU ストリングユニット
T 膜厚
Tr トランジスタ
WL、WL0~WL7 ワード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19