(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035752
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20240307BHJP
B60R 21/0134 20060101ALI20240307BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
B60R21/0134 311
B60R21/0134 313
B60R21/0134 312
B60R21/0134 314
B60R21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140417
(22)【出願日】2022-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】大丸 祥平
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054EE01
3D054EE02
3D054EE30
3D054FF09
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】衝突後の適切なタイミングで、非可逆拘束体を展開させる。
【解決手段】自車両の衝突を予測する衝突予測部110と、自車両の衝突を検知する衝突検知部120と、非可逆的に乗員を拘束可能な非可逆拘束部130と、衝突予測部110あるいは衝突検知部120からの信号に基づいて非可逆拘束部130の作動を制御する制御部140と、を含み、衝突検知部120は、プリクラッシュゾーンにおける衝突を検知する第1の衝突検知部121と、クラッシャブルゾーンにおける衝突を検知する第2の衝突検知部122とからなり、制御部140は、衝突予測部110からの予測信号を取得可能な場合には、第1の衝突検知部121からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させ、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能な場合には、予測信号を参照しつつ、第2の衝突検知部122からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の衝突を予測する衝突予測部と、
自車両の衝突を検知する衝突検知部と、
非可逆的に乗員を拘束可能な非可逆拘束部と、
前記衝突予測部あるいは前記衝突検知部からの信号に基づいて前記非可逆拘束部の作動を制御する制御部と、
を含み、
前記衝突検知部は、プリクラッシュゾーンにおける衝突を検知する第1の衝突検知部と、クラッシャブルゾーンにおける衝突を検知する第2の衝突検知部とからなり、
前記制御部は、前記衝突予測部からの予測信号を取得可能な場合には、前記第1の衝突検知部からの検知信号に基づいて、前記非可逆拘束部を作動させ、前記衝突予測部からの予測信号を取得が不可能な場合には、前記予測信号を参照しつつ、前記第2の衝突検知部からの検知信号に基づいて、前記非可逆拘束部を作動させることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記衝突予測部は、撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサを含み、前記制御部は、前記衝突予測部からの情報に基づいて、衝突予測の判定精度が十分でないと判断する場合には、前記衝突予測部からの予測信号を取得が不可能であると判定することを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記第1の衝突検知部は、フロントバンパーに設けられたセンサからなり、前記制御部は、前記センサから、衝突の有無および衝突速度、衝突方向を判定することを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両衝突時において、乗員を拘束して保護するシートベルトやエアバッグに代表される乗員保護装置が車両に装備され、その機能も日々進化を遂げている。
【0003】
一般に、車両の前面衝突時には、車両が大きく左右に振られるヨーイング挙動や、硬い物体と衝突した際の強い減速度が発生する。
その際、車室内の乗員は左右に振られ、内装物に強く衝突する2次衝突を招く場合もあり、この種の衝突を低減されるために、エアバッグ等は様々な乗員の挙動を想定して、大型化する傾向にある。
【0004】
一方で、現状の衝突衝撃検知システムでは、エアバッグが大型化すると、エアバッグをフル展開した状態で乗員の衝突に備える事が難しくなりつつある。
そのため、どのような体型あるいは、着座姿勢であっても、エアバッグをフル展開した状態で、乗員を待ち構える事ができるセンシングシステムが求められている。
【0005】
この種の乗員保護装置として、コントロールユニット30に接続され衝突を検知又は予測する前方監視レーダ、側方監視レーダ11、前面衝突用加速度計及び側面衝突用加速度計、可逆的に乗員を拘束可能なモータ駆動リトラクタ及びアクティブパッド、非可逆的に乗員を拘束可能なエアバッグ及びサイドエアバッグを備え、コントロールユニットの作動タイミング判断部が、レーダによる衝突予測の信頼度を判定し、判定した信頼度に基づき、モータ駆動リトラクタ及びアクティブパッドについての作動優先度を変更して、作動を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、レーダ装置の検知範囲の端部に障害物が存在して検出精度が低下するような状況においては、制駆動力の補正量を算出する際の制御パラメータを変更し、これにより、検出精度が低下する状況では、制駆動力制御の制御タイミングを遅らせるとともに、制駆動力の補正量の増加の傾きを大きくして、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において制駆動力制御の制御方法を変更することにより、検出精度の低下によるシステムの性能低下を補償する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-145179号公報
【特許文献2】特許第4144538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、車両への衝突を予測してから実際に衝突する前までの可逆拘束手段の作動タイミングについて開示するものであって、衝突後に展開する非可逆拘束手段の作動タイミングを変更するものではなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術は、レーザレーダおよびカメラの双方の検出精度を評価し、検出精度のパフォーマンスの高いセンサの検出値を用いてリスクに応じた車両制御(操作反力、制駆動力の制御)を行うものであり、検出精度のパフォーマンスの高いセンサの検出値を用いて、非可逆拘束手段の作動タイミングを変更するものではなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、衝突後の適切なタイミングで、非可逆拘束体を展開させる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、自車両の衝突を予測する衝突予測部と、自車両の衝突を検知する衝突検知部と、非可逆的に乗員を拘束可能な非可逆拘束部と、前記衝突予測部あるいは前記衝突検知部からの信号に基づいて前記非可逆拘束部の作動を制御する制御部と、を含み、前記衝突検知部は、プリクラッシュゾーンにおける衝突を検知する第1の衝突検知部と、クラッシャブルゾーンにおける衝突を検知する第2の衝突検知部とからなり、前記制御部は、前記衝突予測部からの予測信号を取得可能な場合には、前記第1の衝突検知部からの検知信号に基づいて、前記非可逆拘束部を作動させ、前記衝突予測部からの予測信号を取得が不可能な場合には、前記予測信号を参照しつつ、前記第2の衝突検知部からの検知信号に基づいて、前記非可逆拘束部を作動させることを特徴とする乗員保護装置を提案している。
【0012】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記衝突予測部は、撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサを含み、前記制御部は、前記衝突予測部からの情報に基づいて、衝突予測の判定精度が十分でないと判断する場合には、前記衝突予測部からの予測信号を取得が不可能であると判定することを特徴とする乗員保護装置を提案している。
【0013】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1の衝突検知部は、フロントバンパーに設けられたセンサからなり、前記制御部は、前記センサから、衝突の有無および衝突速度、衝突方向を判定することを特徴とする乗員保護装置を提案している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、衝突後の適切なタイミングで、非可逆拘束体を展開させることにより、衝突による乗員の身体の負担を軽減させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る乗員保護装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る衝突時点をゼロとした時間経過と車両に加わるGとの関係を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両におけるプリクラッシュゾーンおよびクラッシャブルゾーンを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る乗員保護装置の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1から
図4を用いて、本実施形態に係る乗員保護装置1について説明する。
【0017】
<乗員保護装置1の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る乗員保護装置1は、衝突予測部110と、衝突検知部120と、非可逆拘束部130と、制御部140と、を含んで構成されている。
【0018】
衝突予測部110は、自車両の衝突を予測する。
衝突予測部110は、例えば、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)に用いられるセンサであって、撮像装置、LIDAR(Light Detection And Rating)、ミリ波レーダ、超音波センサを含む。
ここで、撮像装置は、例えば、ステレオカメラであって、自車両前方の車両や障害物あるいは地物までの距離情報を取得することができ、正確に物体の種別を識別しやすいという利点がある。
一方で、ステレオカメラは、天候などの外乱に左右されやすく、特に、直射日光が入る朝夕の時間帯や、濃霧あるいは大雨、雪などの荒天では、十分な機能を発揮できないという特徴もある。
LIDARは、中距離エリアで有効なセンサであり、自車両前方の車両や障害物あるいは地物までの距離情報を取得するとともに、それらの三次元形状を把握するための情報を得ることができる。
一方で、LIDARは、濃霧あるいは大雨、雪などの荒天では、十分な機能を発揮できないという特徴もある。
ミリ波レーダは、長距離エリアで有効なセンサであり、自車両前方の車両や障害物あるいは地物までの距離情報あるいは前方車両との相対速度を取得することができる。
また、ミリ波レーダは、夜間やトンネル内などの暗い環境や、雨、雪、霧などの天候にも左右されにくい一方で、非金属材等は検知できないという特徴もある。
超音波センサは、近距離エリアで有効なセンサであり、雨、雪、霧などの天候にも左右されにくい一方で、音を吸収する発泡材等は検知できないという特徴もある。
なお、衝突予測部110からの情報は、後述する制御部140に出力される。
【0019】
衝突検知部120は、自車両の衝突を検知する。
衝突検知部120は、プリクラッシュゾーンにおける衝突を検知する第1の衝突検知部121と、クラッシャブルゾーンにおける衝突を検知する第2の衝突検知部122とを含んで構成されている。
衝突検知部120は、例えば、加速度センサであり、第1の衝突検知部121は、例えば、フロントバンパーの車幅方向中央部のセンサまたは車幅方向両端部に、この加速度センサが配設されている。
また、第2の衝突検知部122は、例えば、ラジエーターサイドであって車両の最前部近傍位置に取り付けられ、この取り付け部位に生じる前後加速度を検出する加速度センサである。
なお、衝突検知部120からの情報は、後述する制御部140に出力される。
【0020】
非可逆拘束部130は、非可逆的に乗員を拘束するものであり、例えば、主として、エアバッグ131と、インフレータ132とから構成されている。
ここで、エアバッグ131は、膨らんだ袋体を用いて、車両の運動エネルギーを吸収、もしくは衝撃緩和する装置である。
また、インフレータ132は、エアバッグ131に高圧ガスを供給するものであり、点火装置によって、ガス発生剤を瞬時に点火して、その後、高圧の窒素ガスを発生させ、エアバッグを膨らませる。
なお、インフレータ132は、後述する制御部140からの作動信号により作動する。
【0021】
制御部140は、図示しないROM(Read Only Memory)等に格納された制御プログラムにより、乗員保護装置1全体の制御を実行する。
本実施形態においては、制御部140は、例えば、衝突予測部110からの情報および外部の車外環境情報取得装置200からの情報等に基づいて、衝突予測の判定精度を分析する。
具体的には、制御部140は、例えば、外部の車外環境情報取得装置200から取得する天候情報や時間帯情報等から、衝突予測部110を構成する撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等の特徴を考慮して、現在の車外環境に最適なセンサを組み合わせ、予め保有する同車外環境における判定精度や過去のデータに基づく同車外環境における判定精度により、現在の車外環境における衝突予測の判定精度を分析する。
そして、制御部140は、衝突予測部110からの予測信号を取得可能、つまり、十分な判定精度が期待できる場合には、第1の衝突検知部121からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させ、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能、つまり、十分な判定精度が期待できない場合には、衝突予測部110からの予測信号を参照しつつ、第2の衝突検知部122からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させる。
また、制御部140は、例えば、第1の衝突検知部121におけるフロントバンパーの車幅方向中央部のセンサまたは車幅方向両端部のセンサから、衝突の有無および衝突速度、衝突方向を判定して、どのエアバッグ131をどのように展開させるのかを制御する。
具体的には、制御部140は、
図2に示すように、衝突予測部110からの予測信号を取得可能、つまり、十分な判定精度が期待できる場合には、衝突前(
図2の「1次判断」(予備判別))に、衝突の可能性および危険性を判断し、衝突の可能性および危険性があると判断した場合には、プリクラッシュゾーンの衝突時(
図2および
図3の2次判断(1))に、非可逆拘束部130を作動させる。
一方で、制御部140は、
図2に示すように、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能、つまり、十分な判定精度が期待できない場合には、クラッシャブルゾーンにおける衝突時(
図2および
図3の2次判断(2))に、非可逆拘束部130を作動させる。
【0022】
<乗員保護装置1の処理>
図4を用いて、本実施形態に係る乗員保護装置1の処理について説明する。
【0023】
制御部140は、外部の車外環境情報取得装置200から取得する天候情報や時間帯情報等から、衝突予測部110を構成する撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等の特徴を考慮して、現在の車外環境に最適なセンサを組み合わせ、予め保有する同車外環境における判定精度や過去のデータに基づく同車外環境における判定精度により、現在の車外環境における衝突予測の判定精度を分析し、衝突予測部110からの衝突予測信号を取得可能、つまり、十分な判定精度が期待できるか否かを判定する(ステップS110)。
【0024】
そして、制御部140は、衝突予測部110からの衝突予測信号に十分な判定精度が期待できると判定した場合(ステップS110の「YES」)には、衝突検知部120の第1の衝突検知部121から第1の検出信号を取得したか否かを判定する(ステップS120)。
このとき、制御部140は、衝突検知部120の第1の衝突検知部121から第1の検出信号を取得できていないと判定した場合(ステップS120の「NO」)には、処理を元に戻して、待機モードに移行する。
【0025】
一方で、制御部140は、衝突検知部120の第1の衝突検知部121から第1の検出信号を取得できていると判定した場合(ステップS120の「YES」)には、非可逆拘束部130としてのインフレータ132に起動信号を送出して(ステップS130)、エアバッグ131を膨張展開させて(ステップS140)、処理を終了する。
【0026】
また、制御部140は、ステップS110において、衝突予測部110からの衝突予測信号に十分な判定精度が期待できないと判定した場合(ステップS110の「NO」)には、衝突検知部120の第2の衝突検知部122から第2の検出信号を取得したか否かを判定する(ステップS150)。
このとき、制御部140は、衝突検知部120の第2の衝突検知部122から第2の検出信号を取得できていないと判定した場合(ステップS150の「NO」)には、処理を元に戻して、待機モードに移行する。
【0027】
一方で、制御部140は、衝突検知部120の第2の衝突検知部122から第2の検出信号を取得できていると判定した場合(ステップS150の「YES」)には、衝突予測部110からの予測信号を参照しつつ、非可逆拘束部130としてのインフレータ132に起動信号を送出して(ステップS130)、エアバッグ131を膨張展開させ(ステップS140)、処理を終了する。
【0028】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る乗員保護装置1は、自車両の衝突を予測する衝突予測部110と、自車両の衝突を検知する衝突検知部120と、を含み、衝突検知部120は、第1の衝突検知部121と第2の衝突検知部122と、を含んで構成されている。
ここで、第1の衝突検知部121は、例えば、フロントバンパーの車幅方向中央部または車幅方向両端部に配設された加速度センサであり、第2の衝突検知部122は、例えば、車両右側あるいは左側のサイドメンバであって、車両の最前部近傍位置に取り付けられ、この取り付け部位に生じる前後加速度を検出する加速度センサである。
つまり、第1の衝突検知部121は、所謂、プリクラッシュゾーンにおける衝突を検知し、第2の衝突検知部122は、クラッシャブルゾーンにおける衝突を検知する。
そして、制御部140は、衝突予測部110からの予測信号を取得可能な場合には、第1の衝突検知部121からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させ、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能な場合には、予測信号を参照しつつ、第2の衝突検知部122からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部を作動させる。
つまり、制御部140は、衝突予測部110からの予測信号を取得可能な場合には、衝突予測部110からの予測信号を得た後、第1の衝突検知部121からの検知信号を受信するまでの間、時々刻々と得られる衝突予測部110からの予測信号に基づいて、衝突方向や衝突速度等のより精度の高い分析を実施する。
そのため、どの非可逆拘束部130を作動すべきなのか、エアバッグ131の膨張展開をどのように制御すべきなのか等を判断することができることから、衝突後の適切なタイミングで、エアバッグ131を適切に展開し、乗員を保護することができる。
一方で、制御部140は、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能な場合には、衝突予測部110からの予測信号も参照しつつ、第1の衝突検知部121からの検知信号に基づいて、例えば、第1の衝突検知部121におけるフロントバンパーの車幅方向中央部のセンサまたは車幅方向両端部のセンサから、衝突の有無および衝突速度、衝突方向を判定して、どのエアバッグ131をどのように展開させるのかを制御することから、衝突後の適切なタイミングで、エアバッグ131を適切に展開し、乗員を保護することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る乗員保護装置1における衝突予測部110は、撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサを含み、制御部140は、衝突予測部110からの情報に基づいて、衝突予測の判定精度が十分でないと判断する場合には、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能であると判定する。
つまり、制御部140は、外部の車外環境情報取得装置200から取得する天候情報や時間帯情報等から、衝突予測部110を構成する撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等の特徴を考慮して、現在の車外環境に最適なセンサを組み合わせ、予め保有する同車外環境における判定精度や過去のデータに基づく同車外環境における判定精度により、現在の車外環境における衝突予測の判定精度を分析する。
そして、制御部140は、衝突予測部110からの予測信号を取得可能、つまり、十分な判定精度が期待できる場合には、第1の衝突検知部121からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させ、衝突予測部110からの予測信号を取得が不可能、つまり、十分な判定精度が期待できない場合には、第2の衝突検知部122からの検知信号に基づいて、非可逆拘束部130を作動させる。
そのため、衝突予測部110からの予測信号の判定精度を分析して、衝突後の適切なタイミングで、エアバッグ131を適切に展開し、乗員を保護することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る乗員保護装置1における衝突検知部120の第1の衝突検知部121は、例えば、フロントバンパーの車幅方向中央部または車幅方向両端部に設けられたセンサからなり、制御部140は、車幅方向中央部のセンサまたは車幅方向両端部のセンサから、衝突の有無および衝突速度、衝突方向を判定する。
つまり、制御部140は、例えば、第1の衝突検知部121のフロントバンパーに配設された加速度センサからのセンサ出力により、衝突の有無および衝突速度、衝突方向を判定する。
そのため、どの非可逆拘束部130を作動すべきなのか、エアバッグ131の膨張展開をどのように制御すべきなのか等を判断することができることから、衝突後の適切なタイミングで、エアバッグ131を適切に展開し、乗員を保護することができる。
【0031】
また、制御部140が、衝突予測部110からの予測信号を取得可能、つまり、十分な判定精度が期待できると判断した場合には、その時点で、予備判別(1次判断)が可能となることから、衝突方向や衝突速度等の分析に加えて、乗員の体格の判別や衝突形態あるいは、衝撃の大きさ等の詳細なデータ処理を行うことによって、乗員のより安全な保護を図ることができる。
【0032】
また、従来の一般的な乗員保護システムにおいては、左右対称衝突と非対象衝突とを正確に判別することができないという課題があったが、本実施形態のように、衝突判定にADASセンサを用いることにより、衝突瞬間速度、衝突ラップ量(Y方向、Z方向)、衝突角度、衝突対象物の判別等の情報を取得することが期待できるため、今後、更なる衝突判定の精度向上が期待できる。
また、従来の一般的な乗員保護システムにおいては、衝突速度の違いによるTTF(Time to Fire)時間の制御についても課題があったが、上記のように、衝突判定の精度向上が図られれば、TTF時間の制御についても、より高度な制御が期待できる。
【0033】
<変形例1>
本実施形態においては、エアバッグ131の展開態様について、詳細な言及をしなかったが、制御部140は、第1の衝突検知部121から得られる衝突速度等の情報から、エアバッグ131の展開速度を調整するようにしてもよい。
また、インフレータ132を多段式の形態とし、制御部140は、段階的に、エアバッグ131が展開するようにしてもよい。
さらに、制御部140は、1次展開でエアバッグ131を、ある程度の展開形状にさせた後に、2次展開するようにしてもよい。
制御部140が、このようなエアバッグ131の展開制御を実行することにより、乗員のより安全な保護を図ることができる。
【0034】
<変形例2>
本実施形態においては、衝突予測部110が、撮像装置、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等を備え、制御部140が、これらの特徴を考慮して、現在の車外環境に最適なセンサを組み合わせることに言及したが、組み合わされるセンサのうち、特に、精度に問題のあるいくつかのセンサについては、衝突判定の閾値を下げて、制御部140が、総合的な衝突判定を行うようにしてもよい。
上記のような処理は、特に、衝突加速度が小さい場合に有効である。
【0035】
なお、制御部140の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを制御部140に読み込ませ、実行することによって本発明の乗員保護装置1を実現することができる。
ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0036】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0037】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0038】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1;乗員保護装置
110;衝突予測部
120;衝突検知部
121;第1の衝突検知部
122;第2の衝突検知部
130;非可逆拘束部
131;エアバッグ
132;インフレータ
200;車外環境情報取得装置