(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035755
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ソレノイド駆動装置およびスイッチ駆動制御回路
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20240307BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H01F7/18 B
F16K31/06 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140420
(22)【出願日】2022-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信秀
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106EE04
3H106FA04
3H106FB47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オフ時間中に生じる還流電流を遮断することにより、ソレノイドの復帰遅れ時間を短縮し、復帰動作の遅延を少なくすることができるとともに、ソレノイド通電時の通電率制御を可能にすることができるソレノイド駆動装置およびスイッチ駆動制御回路を提供する。
【解決手段】ソレノイド100に電流i1および還流電流i2を流すことによりソレノイド100を駆動するソレノイド駆動装置1であって、ソレノイド100の電流i1遮断時に生じる還流電流i2が流れる還流ラインLRに第1スイッチ21を設けている。第1スイッチ21は、駆動信号27aがHiの状態である第1スイッチ21のオン時間中は、還流電流i2をソレノイド100に流し、駆動信号27aがLowの状態である第1スイッチ21のオフ時間中は、還流電流i2を遮断する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドに電流および還流電流を流すことによりソレノイドを駆動するソレノイド駆動装置であって、
前記ソレノイドの電流遮断時に生じる還流電流が流れる還流ラインに第1スイッチを設け、
前記第1スイッチは、前記第1スイッチのオン時間中は、前記還流電流を前記ソレノイドに流し、前記第1スイッチのオフ時間中は、前記還流電流を遮断することを特徴とする請求項1に記載のソレノイド駆動装置。
【請求項2】
前記還流ラインの外側に前記第2スイッチを設け、前記第2スイッチは、前記第1スイッチのオン時間中はオンオフを交互に繰り返し行い、
前記第1スイッチのオン時間中において、前記第2スイッチのオン時間中は、前記ソレノイドおよび前記第1スイッチに前記電流が流れ、
前記第1スイッチのオン時間中において、前記第2スイッチのオフ時間中は、前記ソレノイドおよび前記第1スイッチに前記還流電流が流れることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド駆動装置。
【請求項3】
前記第2スイッチに対し並列接続されるサージ電圧吸収部を備え、前記サージ電圧吸収部は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオフ時間中に前記電流および前記還流電流が遮断された際に生じるサージ電圧を吸収することを特徴とする請求項1に記載のソレノイド駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のスイッチを駆動するスイッチ駆動部を有することを特徴とするスイッチ駆動制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動装置およびスイッチ駆動制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドは、駆動電流を流してコイルを励磁することにより、電気エネルギーをプランジャの機械的運動に変換する機能部品であり、バルブの開閉に用いられる等広く一般に利用されている。このようなソレノイドの駆動電流の制御は、例えば特許文献1に開示されるようにPWM制御信号を用いたスイッチング制御により行われることがある。同制御装置においては、ソレノイドに生じるフライホイル電流が流れる循環回路を形成しながらPWM制御動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ソレノイドを用いたバルブ(ソレノイドバルブ)においては、バルブを閉塞する速度を上げたい場合がある。
【0005】
上記のような制御回路においては、PWM制御信号がオフとなった後にもフライホイル電流がソレノイドに流れて制御遅れを生じてしまいバルブが閉塞に至るまで一定の時間を要することがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、オフ時間中に生じる還流電流を遮断することにより、ソレノイドの復帰遅れ時間を短縮し、復帰動作の遅延を少なくすることができるとともに、ソレノイド通電時の通電率制御を可能にすることができるソレノイド駆動装置およびスイッチ駆動制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るソレノイド駆動装置は、ソレノイドに電流および還流電流を流すことによりソレノイドを駆動するソレノイド駆動装置であって、ソレノイドの電流遮断時に生じる還流電流が流れる還流ラインに第1スイッチを設け、第1スイッチは、第1スイッチのオン時間中は、還流電流をソレノイドに流し、第1スイッチのオフ時間中は、還流電流を遮断することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、上記の構成により、オフ時間中に生じる還流電流を遮断することにより、ソレノイドの復帰遅れ時間を短縮し、復帰動作の遅延を少なくすることができる。
【0009】
還流ラインの外側に第2スイッチを設け、第2スイッチは、第1スイッチのオン時間中はオンオフを交互に繰り返し行い、第1スイッチのオン時間中において、第2スイッチのオン時間中は、ソレノイドおよび第1スイッチに電流が流れ、第1スイッチのオン時間中において、第2スイッチのオフ時間中は、ソレノイドおよび第1スイッチに還流電流が流れることにより、第2スイッチのオンオフによるソレノイド通電時の通電率制御を可能とする。
【0010】
第2スイッチに対し並列接続されるサージ電圧吸収部を備え、サージ電圧吸収部は、第1スイッチおよび第2スイッチのオフ時間中に電流および還流電流が遮断された際に生じるサージ電圧を吸収することにより、サージ電圧から第2スイッチを保護することができる。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るスイッチ駆動制御回路は、上記の還流ラインに設けられたスイッチを駆動するスイッチ駆動部を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オフ時間中に生じる還流電流を遮断することにより、ソレノイドの復帰遅れ時間を短縮し、復帰動作の遅延を少なくすることができるとともに、ソレノイド通電時の通電率制御を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のソレノイド駆動装置の構成を示す回路図である。
【
図2】ソレノイド駆動装置により駆動されるソレノイドの構成を示す図である。
【
図3】ソレノイド駆動装置の利用例を示す図である。
【
図4】ソレノイド駆動装置の各部の電圧・電流・オンオフタイミングを示す図であり、(a)はトランジスタのベース電圧(駆動信号源の電圧)を示す図、(b)は第1スイッチのオンオフタイミングを示す図である。
【
図5】ソレノイド駆動装置の各部の電圧・電流・オンオフタイミングを示す図で、(a)は第1スイッチのオンオフタイミングを示す図、(b)はAND回路の出力電圧(第2スイッチの入力電圧)を示す図である。
【
図6】ソレノイド駆動装置の各部の電圧・電流・オンオフタイミングを示す図で、(a)はソレノイドの入力電圧を示す図、(b)はソレノイドの電流値を示す図、(c)はダイオード(フライホイルダイオード)の電流を示す図である。
【
図7】ソレノイド駆動装置の各部の電圧・電流・オンオフタイミングを示す図で、(a)は第2スイッチのドレイン電圧を示す図、(b)はサージ電圧吸収部の電圧を示す図である。
【
図8】ソレノイド駆動装置の時間T3における電流の流れを示す回路図である。
【
図9】ソレノイド駆動装置の時間T4における電流の流れを示す回路図である。
【
図10】ソレノイド駆動装置の時間T2における電流の流れを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のソレノイド駆動装置の構成を示す回路図、
図2は、ソレノイド駆動装置により駆動されるソレノイドの構成を示す図、
図3は、ソレノイド駆動装置の利用例を示す図、
図4乃至
図7は、ソレノイド駆動装置の各部の電圧・電流・オンオフタイミングを示す図、
図8は、ソレノイド駆動装置の時間T3における電流の流れを示す回路図、
図9は、ソレノイド駆動装置の時間T4における電流の流れを示す回路図、
図10は、ソレノイド駆動装置の時間T2における電流の流れを示す回路図である。
【0015】
図1を参照して本発明のソレノイド駆動装置1の構成の概要を説明すると、ソレノイド駆動装置1は電流i1および還流電流i2(フライホイル電流に基づく還流電流i2)をソレノイド100に流すことによりソレノイドを駆動することができる(後述するように、第1スイッチ21のオン時間T1中であって、第2スイッチ22のオン時間T3中に、ソレノイド100に電流i1が流れ、第1スイッチ21のオン時間T1中であって、第2スイッチ22のオフ時間T4中に、還流電流i2が流れる)。
【0016】
ソレノイド100は、
図2に示すように、ハウジング110と、励磁するコイル120と、固定的磁極である中心コア130と、中心コア130に吸引されて直動するプランジャ140と、プランジャ140に固定されたワイヤ150と、プランジャ140を中心コア130から離隔する方向に付勢するスプリング160と、を有している。
【0017】
ソレノイド100は、電流i1および還流電流i2が流れることによりコイル120が励磁し、プランジャ140が中心コア130に吸引されて直動して、スプリング160の付勢力に抗してワイヤ150がハウジング110の外側に突出するようにプランジャ140が動作する構成となっている。
【0018】
ソレノイド100は、電流i1および還流電流i2を遮断することによりコイル120の励磁が解除されて、プランジャ140がスプリング160の付勢力により初期位置に復帰する構成となっている。
【0019】
このようなソレノイド100は、
図3に示すように、例えば、バルブ210の開閉に利用される。
【0020】
ここで、ソレノイド100に電流i1および還流電流i2を流すソレノイド駆動装置1は、第1スイッチ21、第2スイッチ22、トランジスタ23、ダイオード24(還流ダイオード24)、サージ電圧吸収部26、駆動信号源27、AND回路28、駆動回路29、第1抵抗R1乃至第6抵抗R6、第1スイッチ駆動部31、第2スイッチ駆動部32を有している。
【0021】
第1スイッチ駆動部31および第2スイッチ駆動部32によりスイッチ駆動制御回路30が構成される。ソレノイド駆動装置1は、これら機器21乃至29,30,31,32,R1乃至R6を接続ラインL1乃至L10および還流ラインLRにより電気的に接続している。
【0022】
第1接続ラインL1は、電源10(ソレノイド電源)とソレノイド100の入力側100Aとを接続し、電流i1および還流電流i2をソレノイド100に流すための接続ラインである。第1接続ラインL1には、第1スイッチ21が設けられている。第1スイッチ21は、Pチャネル型MOSFETトランジスタとなっている。第1スイッチ21は、ソース電極21sが電源10と接続されている。第1スイッチ21は、ドレイン電極21dがソレノイド100の入力側100Aと接続されている。
【0023】
第2接続ラインL2は、ソレノイド100の出力側100Bと接続し、電流をソレノイド100から出力するための接続ラインである。第2接続ラインL2には、第2スイッチ22が設けられている。
【0024】
第2スイッチ22は、Nチャネル型MOSFETトランジスタとなっている。第2スイッチ22は、ドレイン電極22dがソレノイド100の出力側100Bと接続されている。第2スイッチ22は、ソース電極22sが接続ラインL2´を介してグランドに接続されている。第2スイッチ22は、接続ラインL2における還流ラインLRの外側の接続ラインに設けられている。
【0025】
第3接続ラインL3は、ソレノイド100と並行するように、第1接続ラインL1と第2接続ラインL2とを接続する接続ラインである。第3接続ラインL3は、第1接続ラインL1と接続点L1Aを介して接続し、第2接続ラインL2と接続点L2Aを介して接続している。第3接続ラインL3は、第1接続ラインL1および第2接続ラインL2とともにソレノイド100の電流i1遮断時に生じる還流電流i2が流れる還流ラインLRを形成している(ソレノイド100の電流i1遮断時とは、第1スイッチ21のオン時間T1中において第2スイッチ22がオフとなりソレノイド100への通電が遮断される時間T4を言う)。
【0026】
すなわち、ソレノイド100の電流i1遮断時に生じる還流電流i2が流れる還流ラインLRには、第1スイッチ21が設けられている。第3接続ラインL3すなわち還流ラインLRには、ダイオード24(還流ダイオード24)が設けられている。ダイオード24は、還流電流i2が流れる方向を順方向としている。
【0027】
つまり、第3接続ラインL3は、ソレノイド100の電流i1を遮断した際に生じる還流電流i2を流すための経路を形成するダイオード24を接続するラインである。還流ラインLRは、ソレノイド100の出力側100B、接続ラインL2(ソレノイド100の出力側100Bから接続点L2Aに至る接続ラインL2)、ダイオード24を含む接続ラインL3、第1スイッチ21を含む接続ラインL1(接続点L1Aからソレノイド100の入力側100Aに至る接続ラインL1)を含む接続ラインである。
【0028】
第4接続ラインL4は、第2スイッチ22の入力側つまり第2スイッチ22のドレイン電極22d側において第2接続ラインL2から接続点L2Bを介して分岐しグランドに接続される接続ラインである。第4接続ラインL4には、サージ電圧吸収部26が設けられている。
【0029】
つまり、第1スイッチ21と第2スイッチ22がともにオフとなった際にはソレノイド100は還流電流i2の経路が絶たれるためにサージ電圧を生じる。このサージ電圧は第2スイッチ22のドレイン電極22dに加わるために第2スイッチ22が破壊されることがある。これを防止するために第4接続ラインL4により、第2スイッチ22に対し並列接続されるサージ電圧吸収部26を備えている。つまり、サージ電圧吸収部26は、第1スイッチ21のオフ時(タイミングY時)に還流ラインLRが遮断された際に生じるサージ電圧を吸収することができる。
【0030】
このサージ電圧吸収部26は、バリスタ、ツェナーダイオード、ダイオードと抵抗の組み合わせ等で構成することができる。第4接続ラインL4は、第2接続ラインL2における還流ラインLR内で分岐し、サージ電圧吸収部26は、還流ラインLR内に設けられている。
【0031】
第5接続ラインL5は、第1接続ラインL1から接続点L1Bを介して分岐し、電源10側と第1スイッチ21のゲート電極21gとを接続する接続ラインである。第5接続ラインL5には、第1抵抗R1および第2抵抗R2が設けられている。第1抵抗R1の入力側R1Aは、電源10側と接続し、第1抵抗R1の出力側R1Bは、第2抵抗R2の入力側R2Aと接続している。第2抵抗R2の出力側R2Bは、第1スイッチ21のゲート電極21gと接続している。第1抵抗R1は、第6接続ラインL6の分岐前に設けられ、第2抵抗R2は、第6接続ラインL6の分岐後に設けられている。
【0032】
第6接続ラインL6は、第5接続ラインL5から接続点L5Aを介して分岐してグランドに接続する接続ラインである。第6接続ラインL6には、トランジスタ23および第3抵抗R3が設けられている。トランジスタ23は、NPN型バイポーラトランジスタとなっている。トランジスタ23は、コレクタ電極23cが第1抵抗R1と第2抵抗R2との間の第5接続ラインL5(接続点L5A)に接続されている。トランジスタ23は、エミッタ電極23eが第3抵抗R3の入力側R3Aと接続されている。第3抵抗R3は、出力側R3Bがグラウンドと接続されている。駆動信号源27における駆動信号27aがHiの状態でトランジスタ23のコレクタ電極23c、エミッタ電極23eにともに電流が流れ、電源10、第1抵抗R1、トランジスタ23、第3抵抗R3、グランドに至る電路が形成される。これにより、第1スイッチ21のゲート電圧がLowとなり、第1スイッチ21がオンとなる。
【0033】
トランジスタ23には、接続ラインL8によって駆動信号源27からの駆動信号27aが加えられている。トランジスタ23のエミッタ電極23eには、接続ラインL6により第3抵抗R3が接続されている。
【0034】
ここで、駆動信号源27からの駆動信号27aは、所定のロジック回路の出力であり、例えば、Low(オフ)の状態で0V、Hi(オン)の状態で5Vの値をとる。駆動信号27aがLow(オフ)の状態で0Vであればトランジスタ23のベース電極23bの入力はなしの状態でコレクタ電流、エミッタ電流はともに流れない。駆動信号27aがHi(オン)の状態で5Vが加えられると、トランジスタ23は導通をはじめ、ベース電極23bの電圧が約5Vの状態となる。このとき、エミッタ電極23eの電圧は5Vからベースエミッタ飽和電圧だけ低い値となる。
【0035】
ベースエミッタ飽和電圧を例えば0.6Vとすれば、エミッタ電極23eの電圧は5V-0.6V=4.4Vとなる。また、エミッタ電極23eに流れる電流はIe=4.4V/r3(r3は、第3抵抗R3の抵抗値)となる。このとき、コレクタ電極23cを流れる電流はエミッタ電極23eを流れる電流とほぼ同じ値となる。第1抵抗R1を流れる電流はトランジスタ23のコレクタ電極23cを流れる電流Icが支配的となるので、第1抵抗R1の両端に生じる電圧Vr1はVr1=Ic×r1(r1は、第1抵抗R1の抵抗値)となる。トランジスタ23のコレクタ電極23cの電圧はVc=電源10の電圧-Vr1となる。
【0036】
つまり、電源10の電圧が変動したとき、Vcがこれを吸収することになる。このようにVr1は電源10の電圧に依存しないので、第1抵抗R1の両端に生じる電圧Vr1を駆動源とするトランジスタ21は電源10の電圧に関係なく、常に一定条件で駆動されることになる。トランジスタ23のベース電極23bには、Hiの駆動信号27aが時間T1中出力される。
【0037】
一方、駆動信号27aがLowのときはトランジスタ23のコレクタ電極23c、エミッタ電極23eにはともに電流が流れず、接続ラインL6が遮断され、電源10、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第1スイッチ21に至る電路が形成される。これにより、第1スイッチ21のゲート電圧がHiとなり、第1スイッチ21がオフとなる。すなわち、駆動信号27aのHi、Lowにより第1スイッチ21のオンオフを制御することができる。
【0038】
第8接続ラインL8は、駆動信号源27とトランジスタ23のベース電極23bとを接続する接続ラインである。トランジスタ23のベース電極23bは、駆動信号源27からの駆動信号27aを第8接続ラインL8を介して入力することができる。
【0039】
すなわち、トランジスタ23は、駆動信号源27の駆動信号27aのHi、Lowに基づいて導通、非導通が制御される(第1スイッチ21のオンオフが駆動信号源27の駆動信号27aに基づいて制御される)。第8接続ラインL8には、第4抵抗R4が設けられている。
【0040】
なお、トランジスタ23、駆動信号源27,第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第4抵抗R4により第1スイッチ駆動部31が構成されている。第1スイッチ駆動部31は、スイッチ21(第1スイッチ)を駆動するスイッチ駆動部である。
【0041】
第9接続ラインL9は、AND回路28の出力側28Bと駆動回路29の入力側29Aとを接続する接続ラインである。AND回路28には、駆動信号源27からの駆動信号27aとPWM制御信号とが入力される。すなわち、AND回路28は、PWM制御信号のDuty比に基づく通電率制御信号の生成と、第2スイッチ22が第1スイッチ21のオン期間(T1)と同期をとるための動作をし、第2スイッチ22の駆動信号を生成する。駆動回路29の入力側29Aには、AND回路28の出力側28Bから時間T1中オンオフを繰り返すPWM制御信号が出力される。
【0042】
駆動回路29は、NPN型バイポーラトランジスタ29aとPNP型バイポーラトランジスタ29bを接続して構成されている。すなわち、駆動回路29は、入力側29AがHiのときに、NPN型バイポーラトランジスタ29aがオン、PNP型バイポーラトランジスタ29bがオフとなる。NPN型バイポーラトランジスタ29aがオンのときには、電源29´からの電圧がNPN型バイポーラトランジスタ29aのコレクタ電極29cに入力され、駆動回路29の出力側29BがHiとなる。
【0043】
一方、駆動回路29は、入力側29AがLowのときに、NPN型バイポーラトランジスタ29aがオフ、PNP型バイポーラトランジスタ29bがオンとなり、駆動回路29の出力側29BがLowとなる。なお、第9接続ラインL9には、第5抵抗R5が設けられている。
【0044】
第10接続ラインL10は、駆動回路29の出力側29Bと第2スイッチ22のゲート電極22gとを接続する接続ラインである。接続ラインL10を介して第2スイッチ22のゲート電極22gに時間T1においてPWM制御信号が出力される。
【0045】
すなわち、駆動回路29の出力側29BがHiのときは、第10接続ラインL10を介して第2スイッチ22のゲート電極22gに電源29´(より詳しくは駆動電源)からの電圧が印加される。これにより、第2スイッチ22がオンとなる。一方、駆動回路29の出力側29BがLowのときは、第2スイッチ22はオフとなる。第10接続ラインL10には、第6抵抗R6が設けられている。
【0046】
なお、電源29´、AND回路28、駆動回路29、第5抵抗R5、第6抵抗R6により第2スイッチ駆動部32が構成されている。すなわち、第2スイッチ駆動部32は、パルス状のPWM制御信号を出力する回路である。第1スイッチ駆動部31および第2スイッチ駆動部32は、ともに駆動信号源27の駆動信号27aを介して第1スイッチ21および第2スイッチ22の駆動を行っており、第1スイッチ21をオフからオンにするタイミングXに同期させて第2スイッチ22をオンにする(正確には、第1スイッチ21をオフからオンにするタイミングXに同期させて第2スイッチ22をオフからオンにする)とともに、第1スイッチ21をオンからオフにするタイミングYに同期させて第2スイッチ22をオフすることができる(正確には、第1スイッチ21をオンからオフにするタイミングYに同期させて第2スイッチ22をオンからオフにすることができる)。
【0047】
このように構成されたソレノイド駆動装置1は、
図4乃至
図10に示すように動作させることができる。
図8乃至
図10においては、電流の流れを点線の矢印で示しており、
図8は、
図4乃至
図7の時間T3に対応する回路図、
図9は、
図4乃至
図7の時間T4に対応する回路図、
図10は、
図4乃至
図7の時間T2に対応する回路図である。なお、時間T1は、時刻t1~t16に至る時間、時間T2は、時刻t0~t1、時刻t16~t17に至る時間、時間T3は、時刻t1~t2、t3~t4、t5~t6、t7~t8、t9~t10、t11~t12、t13~t14、t15~t16に至る時間、T4は、t2~t3、t4~t5、t6~t7、t8~t9、t10~t11、t12~t13、t14~t15に至る時間である。
【0048】
まず始めに、駆動信号源27からの駆動信号27aを、
図4(a)の時間T1においてトランジスタ23のベース電極23bに入力しトランジスタ23のコレクタ電極23c、エミッタ電極23eに電流を流す。これにより、
図4(b)の時間T1において第1スイッチ21のゲート電極21gがLowとなり第1スイッチ21がオンとなる。第1スイッチ21がオンのときは、電流i1および還流電流i2をソレノイド100に流すことができる。すなわち、第1スイッチ21は、第1スイッチ21のオン時間T1中は、電流i1および還流電流i2をソレノイドに流し、第1スイッチ21のオフ時間T2中は、電流i1および還流電流i2を遮断することができる。
【0049】
また、
図5(b)の時間T1においてAND回路28がPWM制御信号を含む制御信号を出力し駆動回路29を介して第2スイッチ22のゲート電極22gに入力する(時間T2においては制御信号を出力しない)。AND回路28が出力する制御信号は、相対的に長いパルス幅の第1制御信号A1と相対的に短いパルス幅の第2制御信号A2を含んでいる。
【0050】
AND回路28は、時間T1の初期において第1制御信号A1を出力し、次いで第2制御信号A2をオフを挟みながら繰り返し出力する。第1制御信号A1は、パルス幅(初期通電時間)を5.2ms~16.2msとしている。第2制御信号A2は、PWM制御信号であり、周期を11.6kHz、Duty(1周期のうちHiになっている時間の割合)を2.5%~99.8%としている。
【0051】
すなわち、第2スイッチ22は、第1スイッチ21のオン時間T1中はオンオフを交互に繰り返し行い、第1スイッチ21のオン時間T1中において、第2スイッチのオン時間T3中は、ソレノイド100および第1スイッチ21に電流i1が流れ、第1スイッチ21のオン時間T1中において、第2スイッチ22のオフ時間T4中は、ソレノイド100および第1スイッチ21に還流電流i2が流れる構成となっている。
【0052】
第1スイッチ駆動部31および第2スイッチ駆動部32は、
図5(a)に示すように、第1スイッチ21をオフからオンにするタイミングXに同期させて第2スイッチ22をオンにする(正確には、第1スイッチ21をオフからオンにするタイミングXに同期させて第2スイッチ22をオフからオンにする)とともに、第1スイッチ21をオンからオフにするタイミングYに同期させて第2スイッチ22をオフすることとしている(正確には、第1スイッチ21をオンからオフにするタイミングYに同期させて第2スイッチ22をオンからオフにすることとしている)。
【0053】
このような第1スイッチ21および第2スイッチ22の駆動制御により、ソレノイド100には、
図6(a)に示す電圧が印加され、
図6(b)に示す電流i1および還流電流i2が流れる。ソレノイド100は、初期通電時間において、相対的に長いパルス幅でオンが継続する第1制御信号A1に基づく電圧が連続的に印加されることにより、コイル120に流れる電流の立ち上がりが早くなり、プランジャ140に生じる推力も急速に立ち上がる。これにより駆動されるバルブは開位置まで高速で動作する。コイル120が励磁しスプリング160の付勢力に抗してプランジャ140が初期位置からバルブ210の全開位置まで高速で動作し、バルブ210の全開位置において電流値が最大となる。
ソレノイド100は、バルブ210が全開となった後は、相対的に短いパルス幅の第2制御信号A2に基づく電圧がオフを挟んで繰り返し印加される。これにより、電流値は、全開となったバルブ210の開度を維持するために必要な電流値まで低下しその後略一定に維持される。
【0054】
このように第1スイッチ21のオン時間T1中は、還流ラインLRを介して、第2スイッチ22のオフ時間T4中に生じる還流電流i2をソレノイド100に流すことができる。一方、第1スイッチ21のオフ時間T2中は、ソレノイド100が発生する還流電流i2の還流ラインLRを介してのソレノイド100への還流を遮断することができる。すなわち、ソレノイドは、還流電流のカットによるプランジャ140の初期位置への高速復帰が可能となる。
【0055】
第1スイッチ21および第2スイッチ22がともにオフするタイミングYでは、
図7(a)に示すように、サージ電圧が発生し、第2スイッチ22が損傷する恐れがあるが、第4接続ラインL4に設けられたサージ電圧吸収部26により、
図7(b)に示すように、サージ電圧が吸収される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態においては、上記の構成により、オフ時間T2中に生じる還流電流i2を遮断することにより、ソレノイド100の復帰遅れ時間を短縮し、復帰動作の遅延を少なくすることができる。
【0057】
また、第2スイッチ22は、第1スイッチ21のオン時間T1中はオンオフを交互に繰り返し行い、第1スイッチ21のオン時間T1中において、第2スイッチ22のオン時間T3中は、ソレノイド100および第1スイッチ21に電流i1が流れ、第1スイッチ21のオン時間T1中において、第2スイッチのオフ時間T4中は、ソレノイド100および第1スイッチ21に還流電流i2が流れることにより、第2スイッチ22のオンオフによるソレノイド通電時の通電率制御を可能とする。
【0058】
更に、第1スイッチ21をオンからオフにするタイミングYに同期させて第2スイッチ22をオフすることにより、電流i1と還流電流i2のいずれも遮断することができる。
【0059】
更にまた、第2スイッチ22に対し並列接続されるサージ電圧吸収部26を備え、サージ電圧吸収部26は、第1スイッチ21および第2スイッチ22のオフ時間T2中に電流i1および還流電流i2が遮断された際に生じるサージ電圧を吸収することにより、サージ電圧から第2スイッチ22を保護することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0061】
また、第1スイッチ21は、Pチャネル型MOSFETトランジスタとし、第2スイッチ22は、Nチャネル型MOSFETトランジスタとし、トランジスタ23は、NPN型バイポーラトランジスタとし、駆動回路29を構成するスイッチは、NPN型バイポーラトランジスタとNPN型バイポーラトランジスタとすることとしているが、本発明の効果を達成するものであれば、他のスイッチとすることとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
A1:第1制御信号
A2:第2制御信号
L1乃至L10:第1接続ライン乃至第10接続ライン
L1A,L1B,L2A,L2B,L5A:接続点
L2´:接続ライン
LR:還流ライン
R1A,R2A:入力側
R1B,R2B:出力側
R1乃至R6:第1抵抗乃至第6抵抗
T1乃至T4:時間
X,Y:タイミング
i1:電流
i2:還流電流
t1乃至t16:時刻
1:ソレノイド駆動装置
10:電源
21:第1スイッチ
21g:ゲート電極
21s:ソース電極
21d:ドレイン電極
22:第2スイッチ
22g:ゲート電極
22d:ドレイン電極
22s:ソース電極
23:トランジスタ
23b:ベース電極
23c:コレクタ電極
23e:エミッタ電極
24:ダイオード(還流ダイオード)
26:サージ電圧吸収部(サージアブソーバー)
27:駆動信号源
28:AND回路
29:駆動回路
29A:入力側
29B:出力側
29a:NPN型バイポーラトランジスタ
29b:PNP型バイポーラトランジスタ
29´:電源
30:スイッチ駆動制御部
31:第1スイッチ駆動部
32:第2スイッチ駆動部
100:ソレノイド
100A:入力側
100B:出力側
110:ハウジング
120:コイル
130:中心コア
140:プランジャ
150:ワイヤ
160:スプリング
200:供給装置
210:バルブ
220:供給源
230:供給先