(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003579
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】生体情報処理装置、生体情報処理方法、プログラムおよび記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A61B10/00 X
A61B10/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102808
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】有山 哲理
(72)【発明者】
【氏名】松島 稔
(72)【発明者】
【氏名】落合 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】安丸 信行
(72)【発明者】
【氏名】福原 里恵
(57)【要約】
【課題】多角的な視点に基づいて乳児の疼痛評価を正確に行うことができる生体情報処理装置および生体情報処理方法を提供する。
【解決手段】生体情報処理装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備える。前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報処理装置は、乳児の属性に関連する属性情報を取得し(S2)、前記乳児に痛みが生じる疼痛イベントの開始前における前記乳児の状態に関連する状態情報を取得し(S4)、前記乳児の生体情報データを取得し(S1)、前記疼痛イベントの開始後における前記乳児の表情の特徴に関連する表情情報を取得し(S7)、前記属性情報と、前記状態情報と、前記生体情報データと、前記表情情報とに基づいて、前記疼痛イベントにおける前記乳児の疼痛を評価するための疼痛評価指標を算出し(S10)、前記算出された疼痛評価指標を出力する(S11)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、
を備える生体情報処理装置であって、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報処理装置は、
乳児の属性に関連する属性情報を取得し、
前記乳児に痛みが生じる疼痛イベントの開始前における前記乳児の状態に関連する状態情報を取得し、
前記乳児の生体情報データを取得し、
前記疼痛イベントの開始後における前記乳児の表情の特徴に関連する表情情報を取得し、
前記属性情報と、前記状態情報と、前記生体情報データと、前記表情情報とに基づいて、前記疼痛イベントにおける前記乳児の疼痛を評価するための疼痛評価指標を算出し、
前記算出された疼痛評価指標を出力する、
生体情報処理装置。
【請求項2】
前記生体情報処理装置は、前記疼痛評価指標を表示画面に表示する、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記属性情報は、前記乳児の在胎週数を示す情報を含む、請求項1又は2に記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記状態情報は、前記乳児の動きに関連する情報と、前記乳児の覚醒に関連する情報とを含む、
請求項1又は2に記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記生体情報データは、前記乳児の心拍数又は脈拍数を示すデータと、前記乳児の酸素飽和度を示すデータとを含む、
請求項1又は2に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記生体情報処理装置は、
前記疼痛イベントの開始前における前記心拍数又は脈拍数の第1代表値を特定し、
前記疼痛イベントの開始前における前記酸素飽和度の第2代表値を特定し、
前記疼痛イベントの開始後から所定時間の間に取得された前記心拍数又は脈拍数を示すデータにおいて、前記第1代表値に対する心拍数又は脈拍数の最大変化量を特定し、
前記疼痛イベントの開始後から前記所定時間の間に取得された前記酸素飽和度を示すデータにおいて、前記第2代表値に対する酸素飽和度の最大変化量を特定し、
前記心拍数又は脈拍数の最大変化量および前記酸素飽和度の最大変化量に少なくとも一部基づいて、前記疼痛評価指標を算出する、
請求項5に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記表情情報は、前記疼痛イベントの開始後の所定時間に対しての前記乳児の表情が所定の特徴を有する時間の割合に関連する情報を含む、
請求項1又は2に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記生体情報処理装置は、
前記疼痛イベントの開始後の前記所定時間の間において、前記乳児の表情が第1の特徴を有する第1時間をカウントすると共に、前記所定時間に対しての前記第1時間の割合を特定し、
前記疼痛イベントの開始後の前記所定時間の間において、前記乳児の表情が第2の特徴を有する第2時間をカウントすると共に、前記所定時間に対しての前記第2時間の割合を特定し、
前記疼痛イベントの開始後の前記所定時間の間において、前記乳児の表情が第3の特徴を有する第3時間をカウントすると共に、前記所定時間に対しての前記第3時間の割合を特定し、
前記表情情報は、前記所定時間に対しての前記第1時間の割合に関連する情報と、前記所定時間に対しての前記第2時間の割合に関連する情報と、前記所定時間に対しての前記第3時間の割合に関連する情報とを含む、
請求項7に記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
前記第1の特徴は、眉の隆起に関する特徴であり、
前記第2の特徴は、強く閉じた目に関する特徴であり、
前記第3の特徴は、鼻唇溝に関する特徴である、
請求項8に記載の生体情報処理装置。
【請求項10】
前記第1の特徴は、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝のうちの1つを有する特徴であり、
前記第2の特徴は、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝のうちの2つを有する特徴であり、
前記第3の特徴は、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の全てを有する特徴である、
請求項8に記載の生体情報処理装置。
【請求項11】
前記生体情報処理装置は、
前記第1の特徴に関連付けられた第1ボタンと、前記第2の特徴に関連付けられた第2ボタンと、前記第3の特徴に関連付けられた第3ボタンとを表示画面に表示し、
前記第1ボタンに対する医療従事者の入力操作に応じて、前記第1時間のカウントを開始又は停止し、
前記第2ボタンに対する前記医療従事者の入力操作に応じて、前記第2時間のカウントを開始又は停止し、
前記第3ボタンに対する前記医療従事者の入力操作に応じて、前記第3時間のカウントを開始又は停止する、
請求項8に記載の生体情報処理装置。
【請求項12】
前記生体情報処理装置は、
前記第1ボタンに対する前記医療従事者の最初の入力操作に応じて、前記第1時間のカウントを開始し、
前記第1ボタンに対する前記医療従事者の二度目の入力操作に応じて、前記第1時間のカウントを停止し、
前記第1ボタンに対する前記医療従事者の三度目の入力操作に応じて、前記第1時間のカウントを再び開始する、
請求項11に記載の生体情報処理装置。
【請求項13】
前記生体情報処理装置は、
前記属性情報に基づく第1疼痛評価ポイントを特定し、
前記状態情報に基づく第2疼痛評価ポイントを特定し、
前記生体情報データに基づく第3疼痛評価ポイントを特定し、
前記表情情報に基づく第4疼痛評価ポイントを特定し、
前記第1から第4疼痛評価ポイントを合算することで、前記疼痛評価指標を算出する、
請求項1又は2に記載の生体情報処理装置。
【請求項14】
前記生体情報処理装置は、
前記疼痛イベントの開始に関連付けられたイベント開始ボタンを表示画面に表示し、
前記イベント開始ボタンに対する医療従事者の第1入力操作を受け付け、
前記第1入力操作の受け付け前に前記属性情報及び前記状態情報を取得し、
前記第1入力操作の受け付け後に前記表情情報を取得すると共に、前記疼痛評価指標を出力する、
請求項1又は2に記載の生体情報処理装置。
【請求項15】
コンピュータによって実行される生体情報処理方法であって、
乳児の属性に関連する属性情報を取得するステップと、
前記乳児に痛みが生じる疼痛イベントの開始前における前記乳児の状態に関連する状態情報を取得するステップと、
前記乳児の生体情報データを取得するステップと、
前記疼痛イベントの開始後における前記乳児の表情の特徴に関連する表情情報を取得するステップと、
前記属性情報と、前記状態情報と、前記生体情報データと、前記表情情報とに基づいて、前記疼痛イベントにおける前記乳児の疼痛を評価する疼痛評価指標を算出するステップと、
前記算出された疼痛評価指標を出力するステップと、
を含む、生体情報処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報処理装置および生体情報処理方法に関する。さらに、本開示は、当該生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
早産児や未熟児(以下、早産児等)の殆どは、新生児集中治療室(NICU)において治療や検査を受けることになり、早産児等に対する治療や検査には痛みを伴う処置が必要となる場合がある。また、新生児期における痛みの経験は、痛みに対する感受性や自律神経系のストレスシステムに悪影響を及ぼす可能性があると言われている。その一方で、新生児は意思の疎通を図ることができないため、痛みを自分から表現することはできない。このように、採血等の疼痛イベントにおいて、医療従事者が新生児の痛みを正確に把握することができるための手段が望まれている。
【0003】
この点において、特許文献1では、乳児に電気刺激を与えることで乳児の脳波信号から乳児の痛みを評価する疼痛評価システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された疼痛評価システムでは、乳児の身体が頻繁に動く場合において、脳波信号に筋電図の信号が重畳する結果、脳波信号に基づいて乳児の痛みの評価を正確に行うことができない虞がある。また、脳波信号だけではなく、様々な多角的視点に基づいて総合的に乳児の疼痛評価を行うことが好ましい。このように、上記観点より乳児の疼痛評価を行うための新たな手法について検討する余地がある。
【0006】
本開示は、多角的な視点に基づいて乳児の疼痛評価を正確に行うことができる生体情報処理装置および生体情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る生体情報処理装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備える。 前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報処理装置は、
乳児の属性に関連する属性情報を取得し、
前記乳児に痛みが生じる疼痛イベントの開始前における前記乳児の状態に関連する状態情報を取得し、
前記乳児の生体情報データを取得し、
前記疼痛イベントの開始後における前記乳児の表情の特徴に関連する表情情報を取得し、
前記属性情報と、前記状態情報と、前記生体情報データと、前記表情情報とに基づいて、前記疼痛イベントにおける前記乳児の疼痛を評価するための疼痛評価指標を算出し、
前記算出された疼痛評価指標を出力する。
【0008】
上記構成によれば、乳児の状態、属性、生体情報及び表情に基づいて、疼痛イベント(例えば、採血等)における乳児の痛みの程度を多角的に評価することが可能となる。このように、多角的な視点に基づいて乳児の疼痛評価を正確に行うことができる生体情報処理装置を提供することができる。また、当該生体情報処理装置により疼痛評価指標が自動的又は半自動的に取得されるため、乳児の疼痛評価を行う際の医療従事者の作業負荷を大幅に低減することができる。
【0009】
本開示の一態様に係る生体情報処理方法は、コンピュータにより実行され、
乳児の属性に関連する属性情報を取得するステップと、
前記乳児に痛みが生じる疼痛イベントの開始前における前記乳児の状態に関連する状態情報を取得するステップと、
前記乳児の生体情報データを取得するステップと、
前記疼痛イベントの開始後における前記乳児の表情の特徴に関連する表情情報を取得するステップと、
前記属性情報と、前記状態情報と、前記生体情報データと、前記表情情報とに基づいて、前記疼痛イベントにおける前記乳児の疼痛を評価する疼痛評価指標を算出するステップと、
前記算出された疼痛評価指標を出力するステップと、
を含む。
【0010】
また、上記生体情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。さらに、当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能媒体が提供されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、多角的な視点に基づいて乳児の疼痛評価を正確に行うことができる生体情報処理装置および生体情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)に係る生体情報処理装置を示す概略図である。
【
図2】生体情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】疼痛評価指標を決定するための一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】生体情報処理装置の表示部に表示されるGUI画面の一例を示す図である。
【
図5】乳児の表情情報を取得する処理と、表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する処理とを説明するためのフローチャートである。
【
図6】乳児の表情が眉の隆起に関する特徴を有する第1時間をカウントする処理を説明するための図である。
【
図7】生体情報データに基づく疼痛評価ポイントを決定する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】変形例に係る乳児の表情情報を取得する処理と、変形例に係る表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する処理とを説明するためのフローチャートである。
【
図9】生体情報処理装置の表示部に表示されるGUI画面の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る生体情報処理装置2(以下、単に処理装置2)ついて
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、処理装置2を示す概略図である。
図2は、処理装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、処理装置2は、採血等の疼痛イベントにおける乳児Bの疼痛を評価するための装置である。本実施形態では、乳児Bの疼痛を評価する疼痛評価指標が処理装置2の表示部25に表示される。乳児Bに採血等を施す医療従事者M2及び処理装置2を操作する医療従事者M1は、表示部25に表示された疼痛評価指標を確認することで、採血時における乳児Bの疼痛を把握することが可能となる。乳児Bは、例えば、生後29日未満の乳児である新生児である。特に、乳児Bは、新生児集中治療室(NICU)において治療や検査を受ける早産児や未熟児であってもよい。生後29日以降の治療が長期化した乳児であってもよい。乳児Bは、コミュニケーションを通じて痛みの程度を自ら表現することができないため、処理装置2を通じて医療従事者M1,M2が乳児Bの痛みの程度を把握する必要がある。乳児Bには心電図センサ33及び脈波センサ32が取り付けられており、心電図センサ33及び脈波センサ32は、処理装置2のセンサインターフェース27に接続されている。
【0015】
図2に示すように、処理装置2は、制御部20と、記憶装置21と、ネットワークインターフェース22と、入力操作部24と、表示部25と、センサインターフェース27とを備える。これらはバス26を介して互いに通信可能に接続されている。処理装置2は、乳児Bの生体情報を表示するための医療用専用装置(例えば、生体情報モニタ等)であってもよいし、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートフォン、タブレット又は医療従事者に装着されたウェアラブルデバイスであってもよい。
【0016】
制御部20は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されている。例えば、メモリは、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つにより構成される。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。プロセッサは、記憶装置21又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。特に、プロセッサが
図3に示す一連の処理を実行する生体情報処理プログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で当該プログラムを実行することで、制御部20が
図3に示す一連の処理を実行する。生体情報処理プログラムの詳細については後述する。
【0017】
記憶装置21は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶装置であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。記憶装置21には、生体情報処理プログラムが組み込まれてもよい。また、記憶装置21には、乳児Bの心電図データや脈波データ等の生体情報データが保存されてもよい。例えば、脈波センサ32によって取得された脈波データは、センサインターフェース27を介して記憶装置21に保存されてもよい。
【0018】
ネットワークインターフェース22は、処理装置2を院内ネットワーク3(
図1参照)に接続するように構成されている。具体的には、ネットワークインターフェース22は、院内ネットワーク3を介してサーバ6(
図1参照)と通信するための各種有線接続端子を含んでもよい。また、ネットワークインターフェース22は、サーバ6と無線通信するための無線通信モジュールを含んでもよい。無線通信モジュールは、例えば、RF回路及び送受信アンテナを含んでもよい。院内ネットワーク3は、例えば、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)により構成されてもよい。
【0019】
表示部25は、リアルタイムに取得された乳児Bの生体情報データ及び
図4に示すGUI画面100を表示するように構成されており、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルによって構成されている。入力操作部24は、医療従事者M1の入力操作を受付けると共に、当該入力操作に応じた指示信号を生成するように構成されている。入力操作部24は、例えば、表示部25上に重ねて配置されたタッチパネル、マウス、及び/又はキーボード等である。入力操作部24によって生成された指示信号がバス26を介して制御部20に送信された後、制御部20は、指示信号に応じて所定の動作を実行する。
【0020】
センサインターフェース27は、脈波センサ32及び心電図センサ33を処理装置2に通信可能に接続するためのインターフェースである。センサインターフェース27は、これらの生体情報センサから出力される生体情報データが入力される入力端子を含んでもよい。入力端子は、これらの生体情報センサのコネクタと物理的に接続されてもよい。また、センサインターフェース27は、これらの生体情報センサと無線通信するための無線通信回路及びアンテナ等を含んでもよい。また、センサインターフェース27は、脈波センサ32及び心電図センサ33から出力された生体信号を処理するためのアナログ処理回路を含んでもよい。アナログ処理回路は、例えば、生体情報センサから出力された生体信号のうちノイズ成分を除去するフィルタ処理回路と、生体信号を増幅する信号増幅回路と、生体信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換回路とを含む。このように、これらの生体情報センサから出力されたアナログの生体信号がセンサインターフェース27によってデジタルの生体信号に変換された上で、デジタルの生体信号が制御部20に送信される。
【0021】
心電図センサ33は、乳児Bの心電図波形を示す心電図データを検出するように構成されている。脈波センサ32(例えば、パルスオキシメータ)は、乳児Bの脈波を示す脈波データを検出するように構成されている。特に、脈波センサ32は、赤色光に関連付けられた脈波データ及び赤外光に関連付けられた脈波データを検出するように構成されている。
【0022】
次に、
図3を参照して、乳児Bの痛みを評価するための疼痛評価指標を決定する一連の処理について以下に説明する。
図3は、疼痛評価指標を決定するための一連の処理を説明するためのフローチャートである。尚、本実施形態において算出される疼痛評価指標は、PIPP(Premature Infant Pain Profile)、PIPP-R(Premature Infant Pain Profile Revised)に基づく疼痛評価指標となる。本実施形態に係る処理装置2は、PIPPまたはPIPP-Rに基づいて算出される疼痛評価指標を自動的又は半自動的に取得することが可能となる。
【0023】
図3に示すように、ステップS1において、処理装置2の制御部20は、乳児Bの生体情報データの取得を開始する。具体的には、制御部20は、心電図センサ33からセンサインターフェース27を介して心電図データを取得すると共に、脈波センサ32からセンサインターフェース27を介して脈波データを取得する。その後、制御部20は、心電図データに基づいて隣接するQRS波形間の間隔であるRR間隔を特定した上で、RR間隔に基づいて乳児Bの心拍数を取得する。さらに、制御部20は、赤色光に関連付けられた脈波データと赤外光に関連付けられた脈波データに基づいて赤色光強度と赤外光強度の比率を特定した上で、当該比率に基づいて乳児Bの経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を取得する。尚、制御部20は、脈波データに基づいて乳児Bの脈拍数を取得してもよい。
【0024】
次に、ステップS2において、制御部20は、サーバ6から院内ネットワーク3を介して乳児Bの属性情報を取得する。特に、制御部20は、乳児Bの属性情報として、乳児Bの在胎週数、氏名及び出生日に関する情報を取得する。
【0025】
ステップS3において、制御部20は、乳児Bの属性情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する。具体的には、制御部20は、乳児Bの在胎週数に基づく疼痛評価ポイントを決定する。例えば、在胎週数と疼痛評価ポイントとの間の関係は以下となる。
【表1】
【0026】
ステップS4において、制御部20は、乳児Bの状態情報を取得する。具体的には、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、乳児Bの状態情報として、乳児Bの動きに関する情報(動的状態又は静的状態)と乳児Bの覚醒に関する情報(覚醒状態又は入眠状態)を取得する。この点において、
図4に示すように、表示部25に表示されるGUI画面100上に選択領域46が設けられている。医療従事者M1が選択領域46内に表示された4つの選択項目(動的/覚醒、静的/覚醒、動的/入眠、静的/入眠)の一つを指定することで、制御部20は、乳児Bの状態情報を取得する。医療従事者M1は、肉眼を通じて乳児Bの状態を観察することで、4つの選択項目の一つを指定する。尚、乳児Bの状態情報は、採血等の疼痛イベントが開始される直前の15秒間または、採血等の疼痛イベントが開始される直前の0秒~30秒間における乳児Bの状態を示してもよい。
【0027】
その後、制御部20は、状態情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する(ステップS5)。状態情報と疼痛評価ポイントとの間の関係は例えば以下となる。
【表2】
【0028】
次に、ステップS6において、制御部20は、GUI画面100に表示されたイベント開始ボタン40が医療従事者によって操作されたかどうかを判定する。イベント開始ボタン40が医療従事者M1によって操作された場合(ステップS6でYES)、本処理はステップS7に進む。一方、イベント開始ボタン40が医療従事者M1によって操作されない場合(ステップS6でNO)、制御部20はイベント開始ボタン40が操作されるまで待機する。
【0029】
この点において、医療従事者M1は、採血等の疼痛イベントが医療従事者M2によって開始されると同時にイベント開始ボタン40を操作してもよい。イベント開始ボタン40に対する入力操作をトリガーとして採血等の疼痛イベントの開始が処理装置2によって認識される。
【0030】
次に、ステップS7において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、乳児Bの表情に関連する表情情報を取得する。ここで、乳児Bの表情情報は、疼痛イベントの開始後の所定時間(具体的には、30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)に対しての乳児Bの表情が所定の特徴を有する時間の割合に関連する情報を含む。より具体的には、乳児Bの表情情報は、所定時間に対しての乳児Bの表情が眉の隆起に関する特徴を有する時間の割合に関する情報と、所定時間に対しての乳児Bの表情が強く閉じた目に関する特徴を有する時間の割合に関する情報と、所定時間に対しての乳児Bの表情が鼻唇溝に関する特徴を有する時間の割合に関する情報とを含む。その後、ステップS8において、制御部20は、表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する。
【0031】
図5を参照して、乳児の表情情報を取得する処理(ステップS7の処理)と、表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する処理(ステップS8の処理)について具体的に説明する。
図5は、乳児の表情情報を取得する処理と、表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する処理とを説明するためのフローチャートである。
【0032】
図5に示すように、ステップS20において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、疼痛イベント開始後の所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)において乳児Bの表情が眉の隆起に関する特徴を有する第1時間をカウントする。具体的には、医療従事者M1がGUI画面100に表示されるボタン41を操作することで、制御部20は、第1時間のカウントを開始又は停止する。
【0033】
例えば、
図6に示すように、医療従事者M1が時刻t0においてイベント開始ボタン40をタッチ操作した後に、時刻t1においてボタン41を初めてタッチ操作する場合、制御部20は、時刻t1において第1時間のカウントを開始する。その後、医療従事者M1が時刻t2においてボタン41を再びタッチ操作した場合(ボタン41に対する二度目の入力操作の場合)、制御部20は時刻t2において第1時間のカウントを停止する。さらに、医療従事者M1が時刻t3においてボタン41をタッチ操作した場合(ボタン41に対する三度目の入力操作の場合)、制御部20は時刻t3おいて第1時間のカウントを再び開始する。その後、医療従事者M1が時刻t4においてボタン41を再びタッチ操作した場合(ボタン41に対する四度目の入力操作の場合)、制御部20は時刻t4において第1時間のカウントを停止する。この結果、時刻t1~t2の間の時間ΔT1と時刻t3~t4の間の時間ΔT2の合計時間(ΔT1+ΔT2)が第1時間として制御部20によってカウントされる。このように、ボタン41に対する医療従事者M1の入力操作を通じて、乳児Bの表情が眉の隆起に関する特徴を有する第1時間がカウントされる。
【0034】
尚、第1時間がカウントされている間のボタン41の視覚的態様は、第1時間がカウントされていない間のボタン41の視覚的態様とは異なっていてもよい。この場合、医療従事者M1は、ボタン41の視覚的態様を見ることで、第1時間が現在カウントされているのかどうかを直感的に把握することが可能となる。
【0035】
ステップS21において、制御部20は、所定時間に対する第1時間の割合を特定する。所定時間が30秒であると共に、第1時間が(ΔT1+ΔT2)秒であるとすると、所定時間に対する第1時間の割合(%)は、10(ΔT1+ΔT2)/3(%)となる。次に、ステップS22において、制御部20は、所定時間に対する第1時間の割合(%)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。第1時間の割合と疼痛評価ポイントとの間の関係は例えば以下となる。
【表3】
【0036】
また、ステップS23において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、疼痛イベント開始後の所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)において乳児Bの表情が強く閉じた目に関する特徴を有する第2時間をカウントする。具体的には、医療従事者M1がGUI画面100に表示されるボタン42をタッチ操作することで、制御部20は、第2時間のカウントを開始又は停止する。第2時間のカウント方法は、上記した第1時間のカウント方法と同様である。また、第2時間がカウントされている間のボタン42の視覚的態様は、第2時間がカウントされていない間のボタン42の視覚的態様とは異なっていてもよい。ステップS24において、制御部20は、所定時間に対する第2時間の割合を特定する。次に、ステップS25において、制御部20は、所定時間に対する第2時間の割合(%)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。第2時間の割合と疼痛評価ポイントとの間の関係は、上記した第1時間と疼痛評価ポイントとの間の関係と同じである。
【0037】
ステップS26において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、疼痛イベント開始後の所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)において乳児Bの表情が鼻唇溝に関する特徴を有する第3時間をカウントする。具体的には、医療従事者M1がGUI画面100に表示されるボタン43をタッチ操作することで、制御部20は、第3時間のカウントを開始又は停止する。第3時間のカウント方法は、上記した第1時間のカウント方法と同様である。また、第3時間がカウントされている間のボタン43の視覚的態様は、第3時間がカウントされていない間のボタン43の視覚的態様とは異なっていてもよい。ステップS27において、制御部20は、所定時間に対する第3時間の割合を特定する。次に、ステップS28において、制御部20は、所定時間に対する第3時間の割合(%)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。第3時間の割合と疼痛評価ポイントとの間の関係は、上記した第3時間と疼痛評価ポイントとの間の関係と同じである。
【0038】
最後に、制御部20は、眉の隆起に関連する第1時間の割合に基づく疼痛評価ポイントと、強く閉じた目に関連する第2時間の割合に基づく疼痛評価ポイントと、鼻唇溝に関連する第3時間の割合に基づく疼痛評価ポイントとを合計することで、表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する。このように、制御部20は、ボタン41~42に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、乳児Bの表情情報を取得すると共に、表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する。特に、乳児Bが痛みを感じる場合には、眉の隆起、強く閉じられた目及び/又は鼻唇溝に関する特徴が乳児Bの表情に現れるため、乳児Bの眉の隆起、強く閉じた目、鼻唇溝の3つの特徴に基づく疼痛評価ポイントが決定される。
【0039】
図3に戻ると、ステップS9において、制御部20は、乳児Bの生体情報データに基づく疼痛評価ポイントを決定する。特に、制御部20は、乳児Bの心拍数に基づく疼痛評価ポイントを決定すると共に、乳児Bの酸素飽和度(SpO2)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。
図7を参照して、生体情報データに基づく疼痛評価ポイントを決定する一連の処理について以下に説明する。
図7は、生体情報データに基づく疼痛評価ポイントを決定する処理を説明するためのフローチャートである。
【0040】
図7に示すように、ステップS30において、制御部20は、疼痛イベント開始前に取得された心拍数の第1代表値を特定する。例えば、制御部20は、医療従事者M1によってイベント開始ボタン40が操作された時刻より前の15秒間における心拍数の第1代表値を特定する。心拍数の第1代表値は、例えば、心拍数の最小値、平均値、中央値、最頻値のうちのいずれかであってもよい。次に、ステップS31において、制御部20は、心拍数の第1代表値に対する心拍数の最大変化量を特定する。特に、制御部20は、イベント開始ボタン40が操作された時刻から所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)の間に取得された心拍数データにおいて、第1代表値に対する心拍数の最大変化量を特定する。その後、制御部20は、心拍数の最大変化量に基づく疼痛評価ポイントを決定する(ステップS32)。心拍数の最大変化量と疼痛評価ポイントとの間の関係は例えば以下となる。
【表4】
【0041】
また、制御部20は、ステップS33において、疼痛イベント開始前に取得された酸素飽和度の第2代表値を特定する。例えば、制御部20は、医療従事者M1によってイベント開始ボタン40が操作された時刻より前の15秒間における酸素飽和度の第2代表値を特定する。酸素飽和度の第2代表値は、例えば、酸素飽和度の最大値、平均値、中央値、最頻値のうちのいずれかであってもよい。次に、ステップS34において、制御部20は、酸素飽和度の第2代表値に対する酸素飽和度の最大変化量を特定する。特に、制御部20は、イベント開始ボタン40が操作された時刻から所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)の間に取得された酸素飽和度データにおいて、第2代表値に対する酸素飽和度の最大変化量を特定する。その後、制御部20は、酸素飽和度の最大変化量に基づく疼痛評価ポイントを決定する(ステップS35)。酸素飽和度の最大変化量と疼痛評価ポイントとの間の関係は例えば以下となる。
【表5】
【0042】
制御部20は、心拍数の最大変化量に基づく疼痛評価ポイントと、酸素飽和度の最大変化量に基づく疼痛評価ポイントとを合計することで、生体情報データに基づく疼痛評価ポイントを決定する。乳児Bが痛みを感じる場合には、乳児Bの心拍数及び酸素飽和度が変化することから、乳児Bの心拍数及び酸素飽和度の変化量に基づく疼痛評価ポイントが決定される。
【0043】
尚、本実施形態では、乳児Bの心拍数及び酸素飽和度の最大変化量に基づいて疼痛評価ポイントが決定されているが、脈拍数と酸素飽和度の最大変化量に基づいて疼痛評価ポイントが決定されてもよい。この場合、制御部20は、脈波センサ32により取得された脈波データに基づいて、乳児Bの脈拍数を特定する。また、制御部20は、疼痛イベント開始前における脈拍数の代表値を特定すると共に、疼痛イベント開始後からの所定時間に取得された脈拍数データに基づいて、脈拍数の代表値に対する脈拍数の最大変化量を特定する。その後、制御部20は、脈拍数の最大変化量と疼痛評価ポイントとの間の関係に基づいて、脈拍数の最大変化量に基づく疼痛評価ポイントを決定する。脈拍数の最大変化量と疼痛評価ポイントとの間の関係は、心拍数の最大変化量と疼痛評価ポイントとの間の関係と同様であってもよい。また、心拍数の代わりに脈拍数が採用される場合、脈波センサ32のみによって脈拍数と酸素飽和度の両方が取得されるため、心電図センサ33を乳児Bに装着する必要がない。このため、より簡素な装置構成によって乳児Bの疼痛評価を行うことが可能となる。
【0044】
図3に戻ると、ステップS10において、制御部20は、属性情報に基づく疼痛評価ポイントと、状態情報に基づく疼痛評価ポイントと、生体情報データに基づく疼痛評価ポイントと、表情情報に基づく疼痛評価ポイントとを合算することで、疼痛評価指標を算出する。疼痛評価指標は、例えば、0~21ポイントの範囲内で数値化される。その後、制御部20は、ステップS11において、算出した疼痛評価指標を表示部25に表示する。例えば、
図4に示すように、疼痛評価指標は、GUI画面100上のスコア領域48内に数値情報として表示されてもよい。このように、採血等の痛みを伴う処置を乳児Bに行っている医療従事者M2は、GUI画面100上に表示された疼痛評価指標を見ることで、乳児Bの痛みの程度を速やかに把握することができる。
【0045】
本実施形態によれば、乳児Bの状態、属性、生体情報及び表情に基づいて、採血等の疼痛イベントにおける乳児Bの痛みの程度を多角的に評価することが可能となる。このように、多角的な視点に基づいて乳児Bの疼痛評価を正確に行うことができる処理装置2を提供することができる。また、処理装置2により疼痛評価指標が自動的又は半自動的に取得されるため、乳児Bの疼痛評価を行う際の医療従事者M1の作業負担を大幅に低減することができる。この点において、PIPPまたはPIPP-Rに基づく疼痛評価では、医療従事者は、乳児Bに痛みを伴う処置を施しながら、乳児Bの状態情報、生体情報、表情情報を同時に取得する必要がある。このため、PIPPまたはPIPP-Rに基づく疼痛評価は、医療従事者に対する作業負荷を増大させるため、医療機関において積極的に採用されてこなかったという事情がある。本実施形態では、乳児Bの生体情報に基づく疼痛評価ポイントが自動的に決定されると共に、乳児Bの表情情報を取得するための医療従事者の作業負荷を大きく低減することが可能となる。
【0046】
特に、GUI画面100上に表示された3つのボタン41~43に対する医療従事者の入力操作に応じて第1時間から第3時間のカウントが開始又は停止されるため、第1時間から第3時間のカウントに要する医療従事者の作業負荷が大幅に低減されうる。このように、PIPPまたはPIPP-Rに基づく乳児Bの疼痛評価を行う際、医療従事者の作業負荷を大幅に低減する処理装置2を提供することが可能となる。
【0047】
尚、本実施形態では、第1時間のカウントの開始及び停止に関連付けられたボタン41と、第2時間のカウントの開始及び停止に関連付けられたボタン42と、第3時間のカウントの開始及び停止に関連付けられたボタン43とが、GUI画面100上に表示されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。この点において、ボタン41~43のそれぞれは、第1時間から第3時間のカウントの開始のみに関連付けられてもよい。この場合、第1時間から第3時間のカウントの停止に関連付けられた別の3つのボタンがGUI画面100上に表示されてもよい。
【0048】
(ステップS7及びS8の処理の変形例)
次に、
図8及び
図9を主に参照して、
図3に示すステップS7及びS8の処理の変形例について以下に説明する。
図8は、変形例に係る乳児Bの表情情報を取得する処理と、変形例に係る表情情報に基づく疼痛評価ポイントを決定する処理とを説明するためのフローチャートである。
図9は、処理装置2の表示部25に表示されるGUI画面の他の一例を示す図である。
図9に示すGUI画面200は、表情情報に関連付けられた3つのボタン51~53の点で
図4に示すGUI画面100とは異なる。具体的には、ボタン51は、乳児Bの表情が大レベルで変化する場合に医療従事者M1によってタッチ操作されるボタンである。ボタン52は、乳児Bの表情が中レベルで変化する場合に医療従事者M1によってタッチ操作されるボタンである。ボタン53は、乳児Bの表情が小レベルで変化する場合に医療従事者M1によってタッチ操作されるボタンである。
【0049】
図8に示すように、ステップS40において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、疼痛イベント開始後の所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)において乳児Bの表情が大レベルで変化する第1時間をカウントする。具体的には、医療従事者M1がGUI画面200に表示されるボタン51をタッチ操作することで、制御部20は、第1時間のカウントを開始又は停止する。
【0050】
ここで、乳児Bの表情が、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の全ての特徴を有する場合に、乳児Bの表情が大レベルで変化するものとする。つまり、制御部20は、医療従事者M1のボタン51に対する入力操作に応じて、乳児Bの表情が眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の全ての特徴を有する第1時間をカウントする。ステップS41において、制御部20は、所定時間に対する第1時間の割合を特定する。次に、ステップS42において、制御部20は、所定時間に対する第1時間の割合(%)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。
【0051】
また、ステップS43において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、疼痛イベント開始後の所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)において乳児Bの表情が中レベルで変化する第2時間をカウントする。具体的には、医療従事者M1がGUI画面200に表示されるボタン52をタッチ操作することで、制御部20は、第2時間のカウントを開始又は停止する。ここで、乳児Bの表情が、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝のうちの2つの特徴を有する場合に、乳児Bの表情が中レベルで変化するものとする。つまり、制御部20は、医療従事者M1のボタン52に対する入力操作に応じて、乳児Bの表情が眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝のうちの2つの特徴を有する第2時間をカウントする。ステップS44において、制御部20は、所定時間に対する第2時間の割合を特定する。次に、ステップS45において、制御部20は、所定時間に対する第2時間の割合(%)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。
【0052】
また、ステップS46において、制御部20は、処理装置2に対する医療従事者M1の入力操作に応じて、疼痛イベント開始後の所定時間(30秒間または0秒~60秒の任意の秒数)において乳児Bの表情が小レベルで変化する第3時間をカウントする。具体的には、医療従事者M1がGUI画面200に表示されるボタン53をタッチ操作することで、制御部20は、第3時間のカウントを開始又は停止する。ここで、乳児Bの表情が、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝のうちの1つの特徴を有する場合に、乳児Bの表情が小レベルで変化するものとする。つまり、制御部20は、医療従事者M1のボタン53に対する入力操作に応じて、乳児Bの表情が眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝のうちの一つの特徴を有する第3時間をカウントする。ステップS47において、制御部20は、所定時間に対する第3時間の割合を特定する。次に、ステップS48において、制御部20は、所定時間に対する第3時間の割合(%)に基づく疼痛評価ポイントを決定する。
【0053】
尚、所定時間の間において乳児Bの表情が全く変化しない場合には、医療従事者M1はボタン51~53のいずれも操作する必要はない。この場合、第1時間から第3時間は全くカウントされない。
【0054】
本変形例によれば、GUI画面200上に表示された3つのボタン51~53に対する医療従事者の入力操作に応じて、第1時間から第3時間のカウントが開始又は停止されるため、第1時間から第3時間のカウントに要する医療従事者の作業負荷が大幅に低減されうる。また、上記した本実施形態では、医療従事者M1は、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の各特徴に応じてGUI画面100上に表示されるボタン41~43を操作する必要があるため、医療従事者M1の作業負荷が大きくなってしまう。例えば、乳児Bの表情が眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の3つの特徴を有する場合には、医療従事者M1は、ボタン41~43の全てを操作する必要がある。その一方で、本変形例では、乳児Bの表情が眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の3つを有する場合には、医療従事者M1はボタン51のみを操作すればよい。また、例えば、眉の隆起、強く閉じた目、及び鼻唇溝の3つを有する表情が眉の隆起のみを有する表情に変化した場合でも同様に、上記した本実施形態では、医療従事者M1は、ボタン41~43の各々を操作する必要がある。一方で、本変形例では、医療従事者M1はボタン53のみを操作すればよい。このように、本変形例では、医療従事者がタッチ操作すべきボタンの数が減るため、表情情報の取得に要する医療従事者の作業負荷が大幅に低減される。
【0055】
また、本実施形態に係る処理装置2をソフトウェアによって実現するためには、生体情報処理プログラムが記憶装置21又はROMに予め組み込まれていてもよい。または、生体情報処理プログラムは、磁気ディスク(例えば、HDD、フロッピーディスク)、光ディスク(例えば、CD-ROM,DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)ディスク)、光磁気ディスク(例えば、MO)、フラッシュメモリ(例えば、SDカード、USBメモリ、SSD)等のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、記憶媒体に格納された生体情報処理プログラムが記憶装置21に組み込まれてもよい。さらに、記憶装置21に組み込まれた当該プログラムがRAM上にロードされた上で、プロセッサがRAM上にロードされた当該プログラムを実行してもよい。このように、
図3に示す疼痛評価指標を特定するための一連の処理が処理装置2によって実行される。
【0056】
また、生体情報処理プログラムは、通信ネットワーク上のコンピュータからネットワークインターフェース22を介してダウンロードされてもよい。この場合も同様に、ダウンロードされた当該プログラムが記憶装置21に組み込まれてもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0058】
特に、
図3等に示すフローチャートの各処理の順番は単なる一例であって、特に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、ステップS3及びS5の処理はイベント開始ボタン40の操作前に実行されているが、これらの処理はイベント開始ボタン40の操作後に実行されてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、疼痛評価指標が表示部25に表示されているが、疼痛評価指標の出力態様はこれに限定されるものではない。例えば、処理装置2は、スピーカを通じて疼痛評価指標に関する情報を可聴的に医療従事者に提示してもよい。また、処理装置2は、院内ネットワーク3を通じて疼痛評価指標に関する情報をサーバ6に送信してもよい。さらに、処理装置2は、近距離無線通信を通じて医療従事者に装着されたウェアラブルデバイスに疼痛評価指標に関する情報を送信してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、制御部20は、医療従事者の処理装置2に対する入力操作に応じて、乳児Bの表情情報を取得しているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御部20は、処理装置2に内蔵されたカメラ等の撮像装置を用いて乳児Bの表情情報を取得してもよい。この点において、制御部20は、撮像装置から乳児Bの顔面を示す画像データを取得した上で、機械学習によって構築された画像認識モデルに基づいて当該画像データを解析することで、乳児Bの表情情報(即ち、第1時間から第3時間)を自動的に取得してもよい。この場合、疼痛評価指標を取得するための医療従事者の作業負荷が大幅に低減されうる。
【符号の説明】
【0061】
2:生体情報処理装置(処理装置)
3:院内ネットワーク
6:サーバ
20:制御部
21:記憶装置
22:ネットワークインターフェース
24:入力操作部
25:表示部
26:バス
27:センサインターフェース
32:脈波センサ
33:心電図センサ
40:イベント開始ボタン
41,42,43:ボタン
46:選択領域
48:スコア領域
51,52,53:ボタン
100,200:GUI画面