(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035797
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H05K3/28 G
H05K3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119137
(22)【出願日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2022140095
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】真面 潤也
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA14
5E314AA24
5E314BB01
5E314BB05
5E314CC01
5E314CC15
5E314FF02
5E314FF21
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】抵抗体の表面が樹脂層により覆われた構成を有する配線基板において、抵抗体の抵抗値の精度を向上させる。
【解決手段】配線基板は、セラミック基板と、セラミック基板上に配置された薄膜状の抵抗体と、樹脂で形成された第1樹脂層であって、セラミック基板上において抵抗体が配置されていない部分に配置された第1樹脂層と、樹脂で形成された第2樹脂層であって、セラミック基板上において抵抗体を覆う第2樹脂層と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
セラミック基板と、
前記セラミック基板上に配置された薄膜状の抵抗体と、
樹脂で形成された第1樹脂層であって、前記セラミック基板上において前記抵抗体が配置されていない部分に配置された第1樹脂層と、
樹脂で形成された第2樹脂層であって、前記セラミック基板上において前記抵抗体を覆う第2樹脂層と、
を備えることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記第1樹脂層は、前記セラミック基板に対向する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を貫通する貫通孔を有しており、
前記抵抗体は、前記セラミック基板上において、前記第1樹脂層の前記貫通孔の内部に配置されており、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層の前記貫通孔の内部に充填されていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記第2樹脂層は、複数の層からなり、
前記抵抗体は、前記第2樹脂層を構成する複数の層の間に配置されていることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
配線基板の製造方法であって、
セラミック基板上に薄膜状の抵抗体を配置する配置工程と、
樹脂で形成され、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された樹脂シートを、前記貫通孔の内部に前記抵抗体が配置されるように前記セラミック基板上に接合する接合工程と、
レーザートリミングにより前記抵抗体の抵抗値を調整する調整工程と、
液状の樹脂を、前記貫通孔の内部に充填する充填工程と、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリミングにより抵抗値が調整された薄膜の抵抗体を備える配線基板が知られている(
例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された配線基板では、セラミック基板の表
面に抵抗体が形成され、抵抗体が樹脂基板により覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗体の抵抗値をより高精度にするためには、抵抗体に対してレーザートリミングを行う必要がある。トリミングにより抵抗体の抵抗値が調整された後に、抵抗体上およびセラミック基板上に樹脂層が配置されて、樹脂層とセラミック基板とを接合させるために熱および圧力が加えられると、抵抗体の抵抗値が変動してしまう。一方で、抵抗体に対してトリミングが行われる前に樹脂層が形成され、樹脂層の上からレーザートリミングを行おうとすると、抵抗体を直接視認できないため、抵抗値の調整が難しい。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、抵抗体の表面が樹脂層により覆われた構成を有する配線基板において、抵抗体の抵抗値の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、配線基板が提供される。この配線基板は、セラミック基板と、前記セラミック基板上に配置された薄膜状の抵抗体と、樹脂で形成された第1樹脂層であって、前記セラミック基板上において前記抵抗体が配置されていない部分に配置された第1樹脂層と、樹脂で形成された第2樹脂層であって、前記セラミック基板上において前記抵抗体を覆う第2樹脂層と、を備える。
【0008】
この構成によれば、セラミック基板上において、抵抗体が配置されていない部分に配置された第1樹脂層と、抵抗体を覆う第2樹脂層との2つの樹脂層が存在する。このような構成とすることで、第1樹脂層に熱および圧力を加えて、第1樹脂層とセラミック基板とを接合した後に、抵抗体の抵抗値を調整し、抵抗体を覆うように第2樹脂層を形成できる。このように、抵抗体の抵抗値が調整される前に、第1樹脂層をセラミック基板に接合するための加熱および加圧を行うことができるため、第2樹脂層の形成時に加えられる熱の温度を、第1樹脂層とセラミック基板との接合時よりも小さくできる。さらに、第2樹脂層の形成時に加えられる加熱回数や加熱時間を、第1樹脂層とセラミック基板との接合時よりも少なくできる。すなわち、第2樹脂層の形成時に抵抗体に加わる熱変動を、第1樹脂層とセラミック基板との接合時に加わる熱変動よりも小さくできる。すなわち、抵抗体に加わる熱変動が抑制されるため、抵抗体の抵抗値を高精度に調整することができる。また、抵抗体は第2樹脂層に覆われているため、抵抗体を薬液や酸化などの影響から保護できる。これらの結果、抵抗体の表面が樹脂層(第2樹脂層)により覆われた構成を有する配線基板において、抵抗体の抵抗値の精度を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態の配線基板において、前記第1樹脂層は、前記セラミック基板に対向する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を貫通する貫通孔を有しており、前記抵抗体は、前記セラミック基板上において、前記第1樹脂層の前記貫通孔の内部に配置されており、前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層の前記貫通孔の内部に充填されていてもよい。
この構成によれば、セラミック基板上において、第1樹脂層は、貫通孔内に配置された抵抗体を取り囲む形状を有している。このような構成とすることで、セラミック基板上に抵抗値が調整されていない抵抗体を配置した状態で、第1樹脂層とセラミック基板とを接合し、その後、抵抗体の抵抗値を調整し、第2樹脂層が充填することで、配線基板を形成できる。これにより、抵抗体の表面が樹脂層(第2樹脂層)により覆われた構成を有する配線基板を簡単に形成できる。
【0010】
(3)上記形態の配線基板において、前記第2樹脂層は、複数の層からなり、前記抵抗体は、前記第2樹脂層を構成する複数の層の間に配置されていてもよい。
この構成によれば、第2樹脂層を構成する複数の層のそれぞれの厚さが調整されることにより、抵抗体が配置される厚さ方向の位置が調整される。
【0011】
(4)本発明の他の一形態によれば、配線基板の製造方法が提供される。この製造方法は、セラミック基板上に薄膜状の抵抗体を配置する配置工程と、樹脂で形成され、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された樹脂シートを、前記貫通孔の内部に前記抵抗体が配置されるように前記セラミック基板上に接合する接合工程と、レーザートリミングにより前記抵抗体の抵抗値を調整する調整工程と、液状の樹脂を、前記貫通孔の内部に充填する充填工程と、を備える。
この構成によれば、接合工程では、セラミック基板上に配置された抵抗体が樹脂シートの貫通孔の内部に配置されるように、樹脂シートがセラミック基板上に接合される。その後に、レーザートリミングにより貫通孔の内部に配置された抵抗体の抵抗値が調整され、液体の樹脂が貫通孔の内部に充填される。この結果、樹脂シートをセラミック基板上に接合させる際に加わる熱および圧力が抵抗体に加わることを抑制できる。その上で、液体の樹脂が樹脂層として形成されるために加わる熱の温度や熱が加わる回数が、樹脂シートの接合時よりも抑制される。これにより、抵抗値が調整された抵抗体へと加わる熱変動が抑制されるので、本構成では、抵抗体の表面を樹脂で覆った上で、抵抗体の抵抗値が高精度に調整された状態を維持できる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配線基板、半導体装置、電子部品、およびこれらを備えるシステム等、配線基板の製造方法およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態としての配線基板の説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態としての配線基板の説明図である。
【
図3】本実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。
【
図4】貫通孔が形成された樹脂シートの概略正面図である。
【
図5】配置工程時のセラミック基板の概略正面図である。
【
図6】接合工程時のセラミック基板および樹脂シートの概略正面図である。
【
図7】調整工程後のセラミック基板および樹脂シートの概略正面図である。
【
図8】充填工程後のセラミック基板および樹脂シートの概略正面図である。
【
図10】比較例の配線基板の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
図1および
図2は、本発明の一実施形態としての配線基板100の説明図である。
図1には、配線基板100の概略正面図が示されている。
図2には、配線基板100の
図1におけるA-A断面の概略図が示されている。本実施形態では、セラミック基板10上に抵抗体40が配置される。厚さ方向に貫通する貫通孔HLが形成された樹脂シート20が、貫通孔HLの内部に抵抗体40が配置されるようにセラミック基板10に接合される。接合後に、レーザートリミングにより抵抗体40の抵抗値が調整される。その後、貫通孔HL内に液状の樹脂が充填されて、液状の樹脂が硬化される。
【0015】
図1,2に示されるように、配線基板100は、主成分がセラミックで形成されたセラミック基板10と、セラミック基板10上に配置された薄膜状の抵抗体40と、セラミック基板10上に配置された樹脂シート(第1樹脂層)20と、セラミック基板10上において抵抗体40を覆う樹脂コート(第2樹脂層)30と、を備えている。本実施形態の配線基板100は、少なくとも1つの抵抗体40を含む基板である。なお、本実施形態における「主成分」とは、90質量%以上含まれる成分のことをいう。
【0016】
セラミック基板10は、所定の厚さを有する矩形状の形状を有する。本実施形態では、セラミック基板10の厚さ方向と平行な軸をZ軸として定義し、Z軸にそれぞれ直交して、セラミック基板10の各辺に平行なX軸、Y軸を定義した直交座標系CSが
図1,2に示されている。直交座標系CSは、
図4以降に示される直交座標系CSと対応している。
【0017】
図2に示されるように、樹脂シート20は、セラミック基板10に対向するZ軸負方向側の第1面20Aと、第1面20Aの反対側であるZ軸正方向側に位置する第2面20Bと、を貫通する貫通孔HLを有している。本実施形態の貫通孔HLは、
図1に示されるように、X軸に平行な辺と、Y軸に平行な辺とを有する矩形状の孔である。
【0018】
本実施形態の樹脂シート20は、それぞれ樹脂で形成された第1シート21と、第2シート22と、第3シート23とを備えている。
図2に示されるように、セラミック基板10側から順番に第1シート21、第2シート22、第3シート23が積層されている。各シート21~23は、例えば、配線基板100に金属部材をろう接するときに溶融しない(つまり、ろう材またははんだの融点よりも高い融点を有する)樹脂を主成分とするのが好ましい。このような樹脂としては、耐薬品性にも優れたポリイミドが好ましい。樹脂シート20は、第1面20Aに設けられた熱融着層(不図示)の融着によって、セラミック基板10に接合されている。
【0019】
図2には図示されていないが、本実施形態では、セラミック基板10と第1シート21との間、第1シート21と第2シート22との間、および第2シート22と第3シート23との間に所定の配線パターンを有する配線層が配置されている。配線層を形成する材質としては、例えば、W、Mo、Mn、Cu、Ag、これらの合金等が挙げられる。
【0020】
抵抗体40は、
図1,2に示されるように、セラミック基板10上において、樹脂シート20の貫通孔HLの内部に配置されている。換言すると、樹脂シート20は、セラミック基板10上において、抵抗体40が配置されていない部分に配置されている。抵抗体40は、一定の大きさで形成された後、所望の抵抗値を有するように、レーザートリミングによって平面形状(つまり面積)が調整される。抵抗体40の厚みは、数千Åのオーダーである。抵抗体40の材質としては、例えば、TaN(窒化タンタル)が好適に使用できる。
【0021】
樹脂コート30は、
図2に示されるように、樹脂シート20の貫通孔HLの内部に充填するように配置されている。本実施形態の樹脂コート30は、樹脂シート20がセラミック基板10に接合された後に、貫通孔HLに充填された液状の樹脂が硬化して形成されている。その結果、樹脂コート30は、セラミック基板10上の抵抗体40を覆うように配置されている。本実施形態では、樹脂コート30は、ポリイミドで形成されているが、その他の周知の樹脂で形成されてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態の配線基板100の製造方法のフローチャートである。
図3に示される製造フローでは、初めに、3つのシートである第1シート21と、第2シート22と、第3シート23とが積層された樹脂シート20が作成される(ステップS1)。各シート21~23間には、配線層が配置されている。次に、作成された樹脂シート20に、厚さ方向に貫通する貫通孔HLが形成される(ステップS2)。
図4は、貫通孔HLが形成された樹脂シート20の概略正面図である。
図4に示されるように、本実施形態では、樹脂シート20の中央部に、矩形状の貫通孔HLが形成される。
【0023】
樹脂シート20に貫通孔HLが形成されると、用意されたセラミック基板10上に抵抗体40を配置する配置工程が行われる(
図3のステップS3)。抵抗体40が配置されるセラミック基板10は、未焼成のセラミックグリーンシートである。
図5は、配置工程時のセラミック基板10の概略正面図である。
図5に示されるように、本実施形態では、セラミック基板10のZ軸正方向側の面上の中央部に抵抗体40が配置される。
【0024】
配置工程が行われると、樹脂シート20をセラミック基板10上に接合する接合工程が行われる(
図3のステップS4)。
図6は、接合工程時のセラミック基板10および樹脂シート20の概略正面図である。
図6に示されるように、接合工程では、樹脂シート20の貫通孔HLの内部に抵抗体40が配置されるように、樹脂シート20がセラミック基板10に接合される。樹脂シート20の第1面20Aがセラミック基板10に対向するように配置された後、加熱および加圧されることにより熱融着層の融着によって、樹脂シート20は、セラミック基板10に接合される。
【0025】
接合工程後に、レーザートリミングにより抵抗体40の抵抗値を調整する調整工程が行われる(
図3のステップS5)。
図7は、調整工程後のセラミック基板10および樹脂シート20の概略正面図である。本実施形態では、レーザートリミングにより抵抗体40の本体部41に対して、切り欠き42が形成されることにより、抵抗体40の面積が調整される。これにより、抵抗体40の抵抗値が調整される。
【0026】
調整工程後に、液体の樹脂が貫通孔HLの内部に充填する充填工程が行われる(
図3のステップS6)。
図8は、充填工程後のセラミック基板10および樹脂シート20の概略正面図である。
図8では、貫通孔HL内に充填された液状の樹脂にハッチングが施されて示されている。液状の樹脂は、厚さ方向(Z軸方向)において、樹脂シート20と同じ厚さになるまで貫通孔HLの内部に充填される。換言すると、セラミック基板10を基準として、充填された液体の樹脂の高さと、樹脂シート20の厚さとは、同じである。
【0027】
充填工程後に、貫通孔HLの内部に充填された液状の樹脂に紫外線が照射されることにより、硬化した樹脂コート30が形成され(
図3のステップS7)、配線基板100の製造フローが終了する。樹脂コート30の形成により、セラミック基板10上に配置された抵抗体40は、硬化した樹脂コート30により覆われる。
【0028】
図9は、比較例の配線基板100zの概略平面図である。比較例の配線基板100zでは、
図1,2に示される上記実施形態の配線基板100と異なり、樹脂コート30が存在せずに、抵抗体40が樹脂シート20zにより覆われている。
図9に示されるように、比較例の樹脂シート20zは、それぞれ樹脂で形成された第1シート21zと、第2シート22と、第3シート23とが積層されたシートである。比較例の抵抗体40は、セラミック基板10と、樹脂シート20zとの間に配置されているため、セラミック基板10に接合する際の加熱および加圧の影響を受けている。
【0029】
図10は、比較例の配線基板100zの製造方法のフローチャートである。
図10に示される製造フローでは、実施形態(
図3のステップS1)と同じように、樹脂シート20zが作成される(ステップS11)。次に、実施形態(
図3のステップS4)と同じように、用意されたセラミック基板10上に抵抗体40を配置する配置工程が行われる(ステップS12)。配置工程が行われると、実施形態(
図3のステップS5)と同じように、レーザートリミングにより抵抗体40の抵抗値を調整する調整工程が行われる。調整工程後に、セラミック基板10と、抵抗値が調整済の抵抗体40とを覆うように配置された樹脂シート20zとが接合され(ステップS14)、比較例の配線基板100zの製造フローが終了する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の配線基板100は、セラミック基板10上に配置された薄膜状の抵抗体40と、セラミック基板10上に配置された樹脂シート20と、セラミック基板10上において抵抗体40を覆う樹脂コート30と、を備えている。樹脂シート20は、セラミック基板10上において、抵抗体40が配置されていない部分に配置されている。樹脂コート30は、セラミック基板10上の抵抗体40を覆うように配置されている。すなわち、本実施形態のセラミック基板10上において、抵抗体40が配置されていない部分に配置された樹脂シート20と、抵抗体40を覆う樹脂コート30との2つの樹脂層が存在する。このような構成とすることで、樹脂シート20に熱および圧力を加えて、樹脂シート20とセラミック基板10とを接合した後に、抵抗体40の抵抗値を調整し、抵抗体40を覆うように樹脂コート30を形成できる。このように、抵抗体40の抵抗値が調整される前に、樹脂シート20をセラミック基板10に接合するための加熱および加圧を行うことができるため、樹脂コート30の形成時に加えられる熱の温度を、樹脂シート20セラミック基板10との接合時よりも小さくできる。さらに、樹脂コート30の形成時に加えられる加熱回数や加熱時間を、樹脂シート20とセラミック基板10との接合時よりも少なくできる。すなわち、樹脂コート30の形成時に抵抗体40に加わる熱変動を、樹脂シート20とセラミック基板10との接合時に加わる熱変動よりも小さくできる。すなわち、抵抗体40に加わる熱変動が抑制されるため、抵抗体40の抵抗値を高精度に調整することができる。また、抵抗体40は樹脂コート30に覆われているため、抵抗体40を薬液や酸化などの影響から保護できる。これらの結果、抵抗体40の表面が樹脂層(樹脂コート30)により覆われた構成を有する配線基板100において、抵抗体40の抵抗値の精度を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態の樹脂シート20は、セラミック基板10に対向する第1面20Aと、第1面20Aの反対側に位置する第2面20Bと、を貫通する貫通孔HLを有している。抵抗体40は、
図1,2に示されるように、セラミック基板10上において、樹脂シート20の貫通孔HLの内部に配置されている。樹脂コート30は、
図2に示されるように、樹脂シート20の貫通孔HLの内部に充填するように配置されている。すなわち、セラミック基板10上において、樹脂シート20は、貫通孔HL内に配置された抵抗体40を取り囲む形状を有している。このような構成とすることで、セラミック基板10上に抵抗値が調整されていない抵抗体40を配置した状態で、樹脂シート20とセラミック基板10とを接合し、その後、抵抗体40の抵抗値を調整し、樹脂コート30が充填することで、配線基板100を形成できる。これにより、抵抗体40の表面が樹脂層(樹脂コート30)により覆われた構成を有する配線基板100を簡単に形成できる。
【0032】
また、本実施形態の配線基板100の製造方法における接合工程では、厚さ方向に貫通する貫通孔HLの内部に抵抗体40が配置されるように、樹脂シート20がセラミック基板10に接合される。調整工程で抵抗値が調整された抵抗体40を覆うように、充填工程では、液体の樹脂が貫通孔HLの内部に充填される。本実施形態の接合工程では、セラミック基板10上に配置された抵抗体40が樹脂シート20の貫通孔HLの内部に配置されるように、樹脂シート20がセラミック基板10上に接合される。その後に、レーザートリミングにより貫通孔HLの内部に配置された抵抗体40の抵抗値が調整され、液体の樹脂が貫通孔HLの内部に充填される。この結果、樹脂シート20をセラミック基板10上に接合させる際に加わる熱および圧力が抵抗体40に加わることを抑制できる。その上で、液体の樹脂が樹脂コート30として形成されるために加わる熱の温度や熱が加わる回数は、樹脂シート20の接合時よりも抑制される。これにより、抵抗値が調整された抵抗体40へと加わる熱変動が抑制されるので、本実施形態では、抵抗体40の表面を樹脂コート30で覆った上で、抵抗体40の抵抗値が高精度に調整された状態を維持できる。
【0033】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0034】
<変形例1>
上記実施形態の配線基板100は一例であって、配線基板100が備える構成等については、抵抗体40が樹脂シート20と異なる樹脂コート30で覆われている範囲で変形可能である。配線基板100は、厚さ方向に直交するXY平面において矩形状以外の円形や多角形の形状であってもよい。セラミック基板10は、上記実施形態と異なり複数の層で形成されていてもよい。この場合に、抵抗体40が配置されて樹脂シート20と接合される層以外は、セラミックを主成分としない層で形成されていてもよい。樹脂シート20は、単層や2層であってもよいし、4層以上の層で形成されていてもよい。
【0035】
樹脂シート20を形成する各シート21~23間に配置された配線層は、所定の配線パターンに限られず、単純な平面の金属で形成されたベタ塗りの層(プレーン)であってもよい。また、配線層は、例えば、第2シート22を貫通するビアを形成していてもよい。抵抗体40の材質は、TaN以外であってもよく、周知の材料であってもよい。樹脂シート20が有する貫通孔HLは、矩形状の断面の孔でなくてもよく、例えば円形であってもよい。また、樹脂シート20は、厚さ方向に直交するXY平面において、抵抗体40を囲む形状を有していなくてもよい。例えば、
図4に示される樹脂シート20の貫通孔HLのY軸正方向側が解放されている形状であってもよい。セラミック基板10上に配置される抵抗体40の数は、2つ以上であってもよい。
【0036】
抵抗体40がセラミック基板10上で配置される位置は、中央部でなくてもよく、樹脂コート30で覆うことが可能な範囲で選択されればよい。
図3に示される配線基板100の製造フローにおいて、抵抗体40がセラミック基板10上に配置される配置工程(ステップS3)は、樹脂シート20がセラミック基板10に接合される接合工程(ステップS4)の後に行われてもよい。
【0037】
<変形例2>
図11は、配線基板100aの概略断面図である。
図11に示される変形例の樹脂コート30aは複数の層31~33からなる形態に形成されている。さらに、抵抗体40が配置される場所はセラミック基板10上でなく、
図11のように樹脂シート20の貫通孔HLに形成された複数の層31~33からなる樹脂コート30aの層31と層33との間に配置されていてもよい。
図11に示される変形例のように、樹脂コート30aを形成する複数の層31~33のうちの層31と層33との間に抵抗体40が配置されると、複数の層31~33の厚さが調整されることにより、抵抗体40の厚さ方向の位置が調整される。
【0038】
図11に示される配線基板100aは、上記実施形態の製造フロー(
図3)の配置工程(ステップS3)の処理前に、樹脂コート30aを形成する1つの層31が貫通孔HL内に形成されることにより製造される。層31が形成された後に、層32と層33とが形成される。なお、樹脂コート30aを形成する3つの層31~33のうちの2つの層32,33は1つの層として形成されてもよい。
【0039】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0040】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
配線基板であって、
セラミック基板と、
前記セラミック基板上に配置された薄膜状の抵抗体と、
樹脂で形成された第1樹脂層であって、前記セラミック基板上において前記抵抗体が配置されていない部分に配置された第1樹脂層と、
樹脂で形成された第2樹脂層であって、前記セラミック基板上において前記抵抗体を覆う第2樹脂層と、
を備えることを特徴とする配線基板。
[適用例2]
適用例1に記載の配線基板であって、
前記第1樹脂層は、前記セラミック基板に対向する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を貫通する貫通孔を有しており、
前記抵抗体は、前記セラミック基板上において、前記第1樹脂層の前記貫通孔の内部に配置されており、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層の前記貫通孔の内部に充填されていることを特徴とする配線基板。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の配線基板であって、
前記第2樹脂層は、複数の層からなり、
前記抵抗体は、前記第2樹脂層を構成する複数の層の間に配置されていることを特徴とする配線基板。
[適用例4]
配線基板の製造方法であって、
セラミック基板上に薄膜状の抵抗体を配置する配置工程と、
樹脂で形成され、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された樹脂シートを、前記貫通孔の内部に前記抵抗体が配置されるように前記セラミック基板上に接合する接合工程と、
レーザートリミングにより前記抵抗体の抵抗値を調整する調整工程と、
液状の樹脂を、前記貫通孔の内部に充填する充填工程と、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【符号の説明】
【0041】
10…セラミック基板
20…樹脂シート(第1樹脂層)
20A…樹脂シートの第1面
20B…樹脂シートの第2面
20z…比較例の樹脂シート
21,21z…第1シート
22…第2シート
23…第3シート
30,30a…樹脂コート(第2樹脂層)
31~33…樹脂コートを形成する層
40…抵抗体
41…本体部
42…切り欠き
100,100a,100z…配線基板
CS…直交座標系
HL…貫通孔