(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035798
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】象嵌された計時器用コンポーネント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 45/00 20060101AFI20240307BHJP
G04B 37/22 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G04B45/00 D
G04B37/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023121401
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】2208820
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】513248005
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ リモージュ
(71)【出願人】
【識別番号】519208029
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト プイウ・イオン
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ロシニョール
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィア・デ ロス コボス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ネトゥシル
(57)【要約】
【課題】 外観に欠点がないようにしつつ、空欠部を完璧に充填して装飾や目盛りを形成する。
【解決手段】 本発明は、金属性材料及び/又はセラミックス材料によって作られた本体(10)がある象嵌された計時器用コンポーネント(1)に関する。この本体(10)には、装飾(12)の像を形成する少なくとも1つの空欠部(11)がある。本発明によると、この少なくとも1つの空欠部は、冷間メタライゼーションを介する粒子(16)の凝集によって形成される連続する層(13、14、15)によって完全に充填され、これによって、少なくとも1つの装飾(12)が象嵌された計時器用コンポーネント(1)を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性材料及び/又はセラミックス材料によって作られた本体(10)がある象嵌された計時器用コンポーネント(1)であって、
前記本体(10)には、装飾(12)の像を形成する少なくとも1つの空欠部(11)があり、
前記少なくとも1つの空欠部は、冷間メタライゼーションを介する粒子(16)の凝集によって形成される連続する層(13、14、15)によって完全に充填され、
これによって、少なくとも1つの装飾(12)が象嵌された計時器用コンポーネント(1)を形成する
ことを特徴とする計時器用コンポーネント(1)。
【請求項2】
前記層を形成する前記粒子(16)は、金属性材料及び/又は少なくとも部分的にセラミックスによって作られ、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、クロム、鉄、ジルコニア及びアルミナから選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用コンポーネント(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの空欠部(11)はそれぞれ、200μmの深さの部分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の象眼細工の計時器用コンポーネント(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの装飾(12)は、陽極酸化処理によって色付けされた金属層(18)によって覆われる
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用コンポーネント(1)。
【請求項5】
前記計時器用コンポーネントは、ベゼル、ケース裏部、表盤、ケースミドル部、リストレットリンク、リュウズ、押し部品のような外側部品の要素である
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用コンポーネント(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の計時器用コンポーネント(1)を少なくとも1つ備える
ことを特徴とする計時器。
【請求項7】
象嵌された計時器用コンポーネント(1)を製造する方法であって、
a)金属性材料及び/又はセラミックス材料によって作られた本体(10)を形成するステップと、
b)前記本体(10)の面(F)に、それぞれが装飾(12)の像を形成する少なくとも1つの空欠部(11)を形成するステップと、
c)流れがキャリアガスと前記被覆を形成する粒子(16)を含む、「コールドスプレー」と呼ばれる、冷間射出プロセスによって、前記少なくとも1つの空欠部がある前記面(F)全体にわたって被覆される、少なくとも10μmの厚みを有する第1の層(13)を堆積させるステップと、
d)前記ステップc)を1回又は数回繰り返して(14)、前記少なくとも1つの空欠部が前記第1の層で覆われた前記面(F)全体にわたって、それぞれ厚み20μmである一又は複数の追加の層を堆積させて、前記少なくとも1つの空欠部を完全に充填し、象嵌された装飾(12)を形成するステップと、
e)前記少なくとも1つの空欠部にのみ前記層の堆積物を残すように、前記本体(10)の前記面から堆積物を除去するように研磨するステップとを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記キャリアガスの流れは、45~60×105N/m2(45~60bar)の圧力、900~1000℃の温度であるときに、流量が85~90m3/時である
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子は、金属又は金属合金、セラミックス又はサーメットによって作られている
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子の質量流量は、70~80g/分である
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子の大きさは、45μm以下である
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子の大きさは、好ましくは、1~25μmである
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップb)と前記ステップc)の間に、随意的に、レーザーを介して前記空欠部を彫ったりテクスチャー化したりして、前記粒子の接着性を改善するステップを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップf)の後に、随意的に、前記装飾に色付けするように前記装飾の陽極酸化を行うステップを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの金属性材料及び/又はセラミックスの装飾が象嵌された計時器用コンポーネント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的にセラミックス、金属又は複合材によって作られた、計時器用ベゼルのような計時器用コンポーネントを形成して、ベゼルの下にある凹部において堆積物が見えるようにして、目盛や商業的ブランド名などを形成することが知られている。この構成には、サファイアによって作られた部分を完全に覆うことによって、機械的劣化から堆積物を保護するという利点がある。しかし、この構成においては、堆積物の色調が歪んで透過してしまうことだけではなく、堆積物の色調とサファイアの色調の差がないことによって、装飾が読みにくくなることがある。
【0003】
このような課題を解決するために、装飾の像を形成する少なくとも1つの空欠部がある、セラミックスによって作られた本体を含む象嵌されたセラミックス要素であって、前記少なくとも1つの空欠部が実質的に50nmである第1及び第2の導電層と金属性ガルバニック堆積によって完全に充填されて、視覚的品質が改善された少なくとも1つの金属性装飾によって象嵌されたセラミックス要素を形成するものが提案されている。
【0004】
しかし、このような部品の製造は依然として、複雑であり、高コストであり、時間がかかり、また、装飾を作るためにフック層(導電層)を配置する必要がある。また、外観に欠点がないようにしつつ、空欠部を完璧に充填して装飾や目盛りを形成することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、本発明は、従来技術の様々な課題を解決することを目的とする。
【0006】
このために、本発明は、金属性材料及び/又はセラミックス材料によって作られた本体がある象嵌された計時器用コンポーネントに関する。前記本体には、装飾の像を形成する少なくとも1つの空欠部がある。本発明によると、前記少なくとも1つの空欠部は、冷間メタライゼーションを介する粒子の凝集によって形成される連続する層によって完全に充填され、これによって、少なくとも1つの装飾が象嵌された計時器用コンポーネントを形成する。
【0007】
本発明の他の有利な代替的実施形態には、以下の特徴がある。
- 前記層を形成する前記粒子は、金属性材料及び/又は少なくとも部分的にセラミックスによって作られ、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、クロム、鉄、ジルコニア及びアルミナから選択される。
- 前記少なくとも1つの空欠部はそれぞれ、少なくとも100μm、好ましくは200μm、の深さの部分を含む。
- 前記少なくとも1つの装飾は、陽極酸化処理によって色付けされた金属層によって覆われる。
- 前記計時器用コンポーネントは、ベゼル、ケース裏部、表盤、ケースミドル部、リストレットリンク、リュウズ、押し部品のような外側部品の要素である。
【0008】
本発明は、さらに、本発明に係る象嵌された計時器用コンポーネントを少なくとも1つ備える計時器に関する。
【0009】
本発明は、さらに、象嵌された計時器用コンポーネントを製造する方法に関し、この方法は、
a)金属性材料及び/又はセラミックス材料によって作られた本体を形成するステップと、
b)前記本体の面に、それぞれが装飾の像を形成する少なくとも1つの空欠部を形成するステップと、
c)流れがキャリアガスと前記被覆を形成する粒子を含む、「コールドスプレー」と呼ばれる、冷間射出プロセスによって、前記少なくとも1つの空欠部がある前記面全体にわたって被覆される、少なくとも10μmの厚みを有する第1の層を堆積させるステップと、
d)前記ステップc)を1回又は数回繰り返して、前記少なくとも1つの空欠部が前記第1の層で覆われた前記面全体にわたって、それぞれ厚み20μmである一又は複数の追加の層を堆積させて、前記少なくとも1つの空欠部を完全に充填し、象嵌された装飾を形成するステップと、
e)前記少なくとも1つの空欠部にのみ前記層の堆積物を残すように、前記本体の前記面から堆積物を除去するように研磨するステップとを含む。
【0010】
本発明に係る方法の他の好ましい変異形態には、以下の特徴がある。
- 前記キャリアガスの流れは、45~60×105N/m2(45~60bar)の圧力、800~1000℃の温度であるときに、流量が85~90m3/時である。
- 前記粒子は、金属又は金属合金、セラミックス又はサーメットによって作られている。
- 前記粒子の質量流量は、70~80g/分である。
- 前記粒子の大きさは、45μm以下である。
- 前記粒子の大きさは、好ましくは、1~25μmである。
- この方法は、前記ステップb)と前記ステップc)の間に、随意的に、レーザーを介して前記空欠部を彫ったりテクスチャー化したりして、前記粒子の接着性を改善するステップを含む。
- この方法は、前記ステップf)の後に、随意的に、前記装飾に色付けするように前記装飾の陽極酸化を行うステップを含む。
【0011】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】複数の層で覆われた計時器用コンポーネントの断面図である
【
図2】本発明に係る計時器用コンポーネントの断面図である。
【
図3】本発明に係る方法によって得られた計時器用ベゼルの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示している例において、計時器用コンポーネント1を示している。象嵌された計時器用コンポーネント1には、金属性材料及び/又はセラミックス材料によって作られた本体10があり、この本体10には、装飾12の像を形成する少なくとも1つの空欠部11がある。前記少なくとも1つの空欠部11は、一般的には「コールドスプレー」と呼ばれる冷間メタライゼーションを介して粒子16の凝集によって形成される連続的な層13、14、15で完全に充填されて、少なくとも1つの装飾12が象嵌された計時器用コンポーネント1を形成する。
【0014】
この冷間メタライゼーションないし「コールドスプレー」技術は、粉末又は粒子の形態である充填材を臨界速度(300~1500m/秒)よりも速くまで加速させる。このような速度は、この材料が処理対象の基材に衝突するときに塑性変形及び/又は破砕を発生させてしまう。このような速度は、密な接着性のある被覆を形成するために十分に速い速度である。この射出ガスの温度は、他のプロセスにおいて用いられる温度と比べて低い(典型的には300~1100℃)。したがって、衝突前の材料は溶融していない。また、セラミックス材料も射出可能である。
【0015】
以下の説明において、ベゼル1の場合のみについて説明するが、当然、この説明は、他のあらゆる計時器用コンポーネント、特に、ケース裏部、表盤、ケースミドル部、リュウズ、振動錘、押し部品のような計時器の外側部品、にも適用される。
【0016】
そこで、以下において説明する例において、ベゼル4の目盛りを形成する象嵌された金属性装飾12があるセラミックス材料によって作られたリング10に基づいて本発明の説明を行う。当然、金属又は金属合金、セラミックス又は複合材料によって作られたベゼルも可能である。
【0017】
象嵌ベゼル1は、視覚的品質が優れており経時的耐久性が向上した、少なくとも1つの金属性装飾がある、耐摩耗性が非常に高い部品を形成するように意図されている。
【0018】
図2に示しているように、象嵌された計時器用コンポーネント1には、装飾12の像を形成する少なくとも1つの空欠部11がある、セラミックスによって作られた本体10がある。
図3において、各装飾12が、幾何学的図形や英数字のような任意の形状であることができることがわかる。本発明によると、各空欠部11は、10~50μmの厚みを有する複数の層13、14、15で完全に充填される。この構成によって、耐摩耗性が非常に高いセラミックスによって作られた本体11において、各金属性装飾12を保護することができる。
【0019】
各空欠部11は、100~200μmの深さPを有し、各空欠部11の内面は、一定ではない幾何学的形状を有することができる。例えば、星形、矩形又は三角形、さらには文字の形のような形状の空欠部を想像することができる。
【0020】
本体10は、多種多様な材料、特にセラミックス、によって作られる。好ましくは、ジルコニアをベースとするセラミックスが、機械的性質、研磨性、そしてこれらよりも低い度合いであるが、広範囲の色合いを与える能力のために用いられる。当然、炭化チタンをベースとするセラミックスや、アルミナやスピネルをベースとする光透過性の多結晶セラミックスのような、他のセラミックスも考えることができる。
【0021】
別の実施形態において、本体10は、金属材料又は金属合金から得られる。
【0022】
層を形成する粒子は、金属性であり、かつ/又は少なくとも部分的にセラミックスによって作られ、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、クロム、鉄、ジルコニア又はアルミナから選択される。本発明の1つの変異形態において、異なる材料によって作られた層を用い、例えば、層の第1の部分は亜鉛によって作り、層の第2の部分はチタンによって作ることができる。このような代替的形態によって、製造コストを削減することができる。
【0023】
第1の層13は、実質的に20μmの厚みを有し、空欠部11の底部に位置する。同様に、第2の層15及び次の層は、当業者のニーズに応じて、それよりも大きい又は同じ厚みを有する。例えば、第1の層は20μm、第2の層は30μm、第3の層は30μm、第4の層は40μm、第5の層は50μmの厚みを有することができる。この層の連続は、空欠部が完全に充填されるまで続く。
【0024】
さらに、本発明によると、本体10がセラミックスによって作られている場合、例えば陽極酸化16によって、最後の層、すなわち、計時器用コンポーネントの面と面一の層、に対して色付けすることによって、各装飾12の外観を局所的に変えることができる。
【0025】
これに関連して、陽極酸化を促進させるために、少なくとも最後の金属性の層は、好ましくは、アルミニウム又はチタンによって作られる。
【0026】
金属性の本体10の場合、充填部分には問題が発生しないが、本体10と最後の層の両方が導電性であるため、局所レベルでの陽極酸化による色付けは可能ではない。そこで、本体10の面に対してわずかに後退させて最後の層を堆積させ、そして、全体に色付けのための陽極酸化を行い、最後に、例えば、研磨作業によって、本体の面における余剰分を除去することを考えることができる。(LIGAプロセスを介してマスクを配置するという別の選択肢もある)。
【0027】
本発明は、さらに、象嵌された計時器用コンポーネントの製造方法に関する。
【0028】
次に、象嵌された計時器用コンポーネント10の製造方法について説明する。当然、以下の説明において、ベゼル1を製造する場合のみについて説明するが、先に詳細な説明したように、他のあらゆる計時器用コンポーネントに適用される。したがって、本発明に係る方法の説明は、ベゼル1の目盛りを形成する象嵌された金属性装飾12があるセラミックス材料によって作られたリング10に基づいて行う。
【0029】
第1のステップa)において、この方法は、セラミックス、例えば、ジルコニア、によって作られた本体10を形成することを伴う。セラミックスベースのコンポーネントの場合、このコンポーネントは、好ましくは、焼結することによって得られる。ステップa)の終わりにおいて、本体10は、その最終的な寸法構成を有する。
【0030】
この方法は、少なくとも1つの空欠部11を形成するように意図された第2のステップb)を含み、この空欠部11は、本体10の面Fにおいて非貫通であることができ、
図1に示しているように、将来の装飾12の像を形成する。各空欠部11は、100μmの最小深さPを有し、好ましくは、200μmの深さを有する。各空欠部11は、当業者のニーズに応じて、異なる幾何学的形状を有することができる。例えば、星形、長方形、三角形、さらには英数字のような形状の空欠部を想像することができる。
【0031】
一般的には、ステップb)は、高い精度で掘ることを可能にするレーザーアブレーションを利用して行う。ステップb)の終わりにおいて、随意的なステップにおいて、前記少なくとも1つの空欠部をレーザーで掘る又はテクスチャー加工して、この方法の残りにおける粒子の接着を向上させることができる。
【0032】
この方法は、面F全体にわたって、すなわち、
図1に示しているように空欠部11のそれぞれを含むように、20μmである厚みを有する第1の層13を堆積させるように意図された第3のステップc)に従って継続する。
【0033】
この方法の第3のステップc)は、一般的に「コールドスプレー」と呼ばれる冷間メタライゼーションによって面Fを被覆することを伴う。したがって、接着層の存在なしに本体10に完全に接着する粒子層を堆積させることが可能となる。
【0034】
射出された粒子は、金属又は金属合金、セラミックス又はサーメットによって作られている。
【0035】
基材10上に堆積物を形成するために、ドゥラバル(de Laval)型のスプレーノズル全体を通してキャリアガスを利用して粒子を射出して、これらを加速して高速で射出することで、それを基材に付着させる。
【0036】
図示している例において、チタン粒子は、さらに、1~50μmの粒径、好ましくは5~25μmの粒径、より好ましくは20μmの粒径、のものを射出する。
【0037】
一次ガスは、80~90m3/時の流量でノズル全体に送られる。この流量は、ノズルや用いるガスによって変わる可能性がある。一般的には、ヘリウムと窒素を単独で又は組み合わせて用いる。ヘリウムには、窒素よりも下の温度で作業できるという利点があり、窒素には、低コストであるという利点がある。
【0038】
キャリアガスの温度は900~1000℃であり、スプレーの圧力は、45~60bar(45~60×105N/m2)である。
【0039】
チタンによって作られた粒子の場合、1000℃の温度と50bar(50×105N/m2)の圧力で非常に良い結果を得ることができる。
【0040】
粒子は、70~80g/分、好ましくは75g/分、の流量でノズルにて送られる。したがって、粒子の速度は、800~1000m/秒である。
【0041】
スプレーノズルは、ベゼル1の面Fから50mmの範囲の距離に保たれ、各層の堆積の間に0.15m/秒の速度で進行する。
【0042】
セラミックス材料製の基材の場合、当業者であれば、第1の層の堆積中にプロセスのパラメータを適合させることを確実にすることができる。セラミックス材料は比較的脆弱であり、基材にひびが入ったり割れたりすることを避けるために、粒子をより低い速度で射出する必要がある。したがって、第1の層の堆積中、粒子は20g/分の流量でノズルにて送られ、キャリアガスの圧力、流量及び温度は同じままである。
【0043】
この方法は、第4のステップd)に続く。この第4のステップd)は、少なくとも1つの空欠部11がある面F全体にわたって、それぞれ少なくとも20μmの一又は複数の追加の層14、15を堆積させて、第1の層13を覆うように、1回又は複数回繰り返される。ステップc)は、前記少なくとも1つの空欠部11を完全に充填し、象嵌された装飾12をベゼル1に形成するまで繰り返される。
【0044】
最後に、第5のステップe)において、
図2に示しているように、本体10の面F上に堆積させた層13、14、15を、各空欠部11のレベルまでのみ残すように除去して、この方法が終了する。このようにして、象嵌された計時器用コンポーネント10が完成し、場合によっては、最終部品にすぐに取り付けられる。このステップは、余分な材料を除去するための研削やラッピング(lapping)と、それに続く研磨のような一般的な表面処理工程によって得ることができる。
【0045】
本発明に係る方法は、随意的に、装飾12に色付けするために、メタライゼーションを堆積させるように意図された最後のステップを含むこともできる。例えば、このような層は、陽極酸化によって作ることができる。
【0046】
当然、本発明は、図示した実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱せずに、当業者に明白な様々な代替的形態や改変が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 計時器用コンポーネント
10 本体
11 空欠部
12 装飾
13、14、15 層
16 粒子
【外国語明細書】