(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035806
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】中和処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/66 20230101AFI20240307BHJP
【FI】
C02F1/66 522B
C02F1/66 510S
C02F1/66 530B
C02F1/66 530C
C02F1/66 530D
C02F1/66 530G
C02F1/66 530L
C02F1/66 530Q
C02F1/66 540Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131788
(22)【出願日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2022140124
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】倉部 美彩子
(72)【発明者】
【氏名】隅倉 光博
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】佐俣 莉子
(57)【要約】
【課題】 従来大気に散逸されていた二酸化炭素を利用して、強アルカリ性の廃液のpH値を調整することができる中和処理装置を提供する。
【解決手段】 中和処理装置100は、廃水W2を貯水する貯水槽200と、前記貯水槽200に接続され、中和槽内で貯水された廃水W2を中和する中和槽300と、二酸化炭素接触部510と、を備えた中和処理装置100において、前記貯水槽200は、貯水槽内で貯水されている廃水W2を前記中和槽300に送水する送水手段210を備え、前記中和槽300は、中和槽300内で貯水されている廃水W2に二酸化炭素を投入して中和処理する中和処理部を備え、前記二酸化炭素接触部510は、前記中和処理部の前段に設けられ、前記中和槽内で発生した二酸化炭素の濃度が高い気体を用いて廃水を中和処理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を貯水する貯水槽と、
前記貯水槽に接続され、中和槽内で貯水された廃水を中和する中和槽と、
二酸化炭素接触部と、
を備えた中和処理装置において、
前記貯水槽は、貯水槽内で貯水されている廃水を前記中和槽に送水する送水装置を備え、
前記中和槽は、中和槽内で貯水されている廃水に二酸化炭素を投入して中和処理する中和処理部を備え、
前記二酸化炭素接触部は、前記中和処理部の前段に設けられ、前記中和槽内で発生した二酸化炭素の濃度が高い気体 を用いて廃水を中和処理する、
ことを特徴とする中和処理装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素接触部は、前記中和槽の上部に設けられた請求項1に記載の中和 処理装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素接触部は、廃水が通過する箇所に担体を設けた請求項2に記載の中和処理装置。
【請求項4】
前記二酸化炭素接触部は、貯水槽内に設けられ、
前記中和槽は、中和槽内で発生した二酸化炭素の濃度が高い気体を前記貯水槽に送気する送気手段を備えた請求項1に記載の中和処理装置。
【請求項5】
前記貯水槽は、廃水及び/又は二酸化炭素の濃度の高い気体を攪拌する撹拌機を備える請求項4に記載の中和処理装置。
【請求項6】
前記担体に廃水を誘導する導水機構を備える請求項3に記載の中和処理装置。
【請求項7】
前記導水機構は、一端が中和槽の壁の上部に設けられ、他端は担体の上部に位置するように設けられている請求項6記載の中和処理装置。
【請求項8】
前記担体は、前記導水機構に吊り下げられるように構成される、請求項7記載の中和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等が混入した強アルカリ性の廃水に、二酸化炭素を溶解させることにより中和させる中和処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートが混入した廃水が発生する工事現場では、廃水を処理するために中和処理装置が利用されている。コンクリートが混入した廃水は、セメント内に含まれる水酸化カルシウムが水と反応して強アルカリ性となり、強アルカリ性の廃水の排水にあたってはpHが基準内に収まるように中和する必要があるからである。中和処理装置は、強アルカリ性の廃水を基準内のpH内となるように中和する装置である。
【0003】
中和処理にあたって取り扱いが容易なことや、過剰に投入しても強酸性にならないなどの理由から、中和処理装置は中和のために中和槽を設け、中和槽内に貯水された廃水に二酸化炭素を投入する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
強アルカリ性である廃水を中和するために、中和槽内に投入された二酸化炭素の多くは、廃水に溶解するが一部は廃水に溶解しないで水面から排出される。しかしながら、従来の中和槽は大気に開放されているため、廃水に溶解しなかった二酸化炭素は、大気中に散逸していた。これは、中和槽で廃水に溶解できなかった「二酸化炭素を回収する」という思想がなかったためである。そして、大気中に散逸した二酸化炭素は、温室効果ガスとして地球温暖化に繋がるという課題があった。
強アルカリ性の廃水を中和するための二酸化炭素の使用量を減らす方法として、特許文献1に記載されるような中和槽の前段で廃水と空気を混合することで、空気中の二酸化炭素によって中和を促進する方法があった。しかしながら、大気中に散逸する二酸化炭素を減らすという課題を解決するものではなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、従来、中和槽から大気に散逸していた二酸化炭素を回収し、その二酸化炭素を中和槽の前段で廃水と接触させることにより中和を促進する中和処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中和処理装置は、廃水を貯水する貯水槽と、前記貯水槽に接続され、中和槽内で貯水された廃水を中和する中和槽と、廃水と二酸化炭素とを接触させる二酸化炭素接触部と、を備えた中和処理装置において、前記貯水槽は、貯水槽内で貯水されている廃水を前記中和槽に送水する送水装置を備え、前記中和槽は、中和槽内の廃水に二酸化炭素を投入して中和処理する中和処理部を備え、前記二酸化炭素接触部は、前記中和処理部の前段に設けられ、中和処理装置で回収された二酸化炭素の濃度が高い空気を用いて廃水を中和処理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中和処理装置において、中和槽から廃水に溶解できなかった二酸化炭素を回収し、中和槽の前段で廃水と接触させるため、二酸化炭素を中和処理装置から外部への散逸を抑制することができ、地球温暖化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る中和処理装置の全体構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る中和処理装置の変形例の要部である。
【
図3】第2の実施形態に係る中和処理装置の全体構成図である。
【
図4】第3の実施形態に係る中和処理装置の全体構成図である。
【
図5】第4の実施形態に係る中和処理装置の全体構成図である。
【
図6】第5の実施形態に係る中和処理装置の全体構成図である。
【
図7】第5の実施形態の変形例に係る中和処理装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
コンクリート等が混入した廃水が発生する工事現場では、コンクリートが混入した廃水は、セメント内に含まれる水酸化カルシウムが水と反応して強アルカリ性となるため、コンクリートが混入した廃水を川等に排水にあたっては基準内のpHとなるように中和する必要がある。本実施形態の中和処理装置は、コンクリート等を扱う工事現場等で用いられる濁水処理装置の中和工程に用いられる中和処理装置に関するものである。
【0011】
中和処理装置は、少なくとも貯水槽と中和槽と貯水槽と中和槽との間に設けられる二酸化炭素接触部を備えている。中和処理装置は、一連の濁水処理を行う濁水処理装置の中和処理を行う装置として機能してもよい。
【0012】
貯水槽は、工事により生じた廃水を中和槽に送水される前に一時的に貯水する。貯水槽は、工事現場に近い場所に設置してもよいし、工事現場から離れた場所に設置してもよい。工事現場の近くに設置すれば、廃水の輸送コストを抑えることができる。また、複数の工事現場から廃水を集めて一括して中和処理を行えるような場所に中和処理装置を設置し、効率よく中和処理を行うようにしてもよい。
【0013】
中和処理装置は、強アルカリ性の廃水の中和処理を行うものであるが、廃水の中和処理前、中和処理後のpHが特定されるものではない。弱アルカリ性の廃水に中和処理を行い、pHを少しでも下げる処理に対しても用いることができる。
【0014】
中和槽は二酸化炭素接触部を介して貯水槽と接続されており、中和槽内に中和処理部を備える。中和槽は、貯水槽と隣接するように設置されることが望ましいが、実施形態によっては、必ずしも中和槽は貯水槽と隣接するように設置する必要はない。
【0015】
中和処理部は、貯水槽から送水されてきた強アルカリ性の廃水に二酸化炭素を投入することにより中和処理を行う。中和処理部は、公知の処理装置を採用することができるため、本発明においては、詳細な記載は省略している。
【0016】
二酸化炭素接触部は、中和槽内の中和処理部で中和処理のために投入され廃水に溶解せずに回収された二酸化炭素を、廃水に接触させて中和処理を促進させる機能を持つ。二酸化炭素接触部は、中和槽の中和処理部の前段に設けられている。ここで、「中和処理部の前段」とは、廃水が中和処理部に送られてくる前の箇所である。
【0017】
「中和処理部の前段」の実施例として、中和槽の内部で中和処理部の上流で貯水槽と連通している箇所とすることができる。廃水が中和槽に送水されてきたときに、中和槽内に設けられた中和処理部で処理される前に通過する箇所である。
【0018】
二酸化炭素接触部を中和槽の内部に設けたときには、中和槽に送水されてきた廃水は、二酸化炭素接触部で中和処理が行われ、その後、中和処理部で再度中和処理が行われる。すなわち、中和層の内部で二度中和処理が行われることになる。
【0019】
従来の中和処理装置では、廃水は、中和槽に設けられた中和処理部の1か所でしか中和処理が行われていなかったが、本発明によれば、排水は、中和処理部に加え二酸化炭素接触部の少なくとも2か所で中和処理が行われるため、従来の中和処理装置に比べて中和処理が効率よく行われるという効果を奏する。
【0020】
しかも、二酸化炭素接触部で投与される二酸化炭素は、従来、大気に散逸していた二酸化炭素を利用することから、新たな二酸化炭素を用意する必要もなく経済的であり、また、大気に散逸される二酸化炭素を少なくすることができ、温暖化を防止するという効果を奏する。
【0021】
他の実施例として、「中和処理部の前段」を貯水槽の内部とし、二酸化炭素接触部を貯水槽の内部に設けたときには、貯水槽内に送水されてきた廃水は、貯水槽内に設けられた二酸化炭素接触部で中和処理が行われ、その後、中和槽に送水されて、中和処理部で再度中和処理が行われる。
【0022】
他の実施例として、「中和処理部の前段」を貯水槽と中和槽とを接続する箇所とすることができる。二酸化炭素接触部を貯水槽と中和槽との接続部に設けたときには、貯水槽から中和槽に送水される廃水は、その過程で二酸化炭素接触部において中和処理が行われ、その後、中和槽に送水されて、再度中和処理が行われる。
【0023】
他の実施例として、「中和処理部の前段」を中和処理装置の上流とすることができる。二酸化炭素接触部を中和処理装置の上流に設けると、廃水は、中和処理装置に送水される前に中和処理が行われ、中和処理装置の中和処理部で再度中和処理が行われる。
【0024】
中和処理装置に設けられた中和槽と中和槽の中和処理部の前段に設けられた二酸化炭素接触部は、大気に対して全体として略密閉状態となるよう構成されるとよい。ここで「略密閉状態」とは、中和処理装置から装置外に二酸化炭素が大量に流出しない程度のことを意図している。
【0025】
「略密閉状態」は、望ましくは、二酸化炭素が中和処理装置から大気への散逸が全くないような「密閉状態」も含まれる。中和処理装置と二酸化炭素接触部とが大気に対して略密閉状態となるように構成されることにより、中和処理装置から大気に対して二酸化炭素が散逸しない構成は、従来の中和槽を利用して略密閉状態を構成することにより本発明は従来の課題を解決することができる。
【0026】
従来の中和槽は、底壁と側壁を備えているが上面は壁を備えず、大気に対して解放されており上面から二酸化炭素が大気に散逸していた。本実施形態は、従来開放されていた中和槽の上面をポリプロピレンフィルムや、養生シートのような上面を覆うシート状の密閉部材で略密閉となるように覆うことで上壁として構成し、中和槽を略密閉状態とした。
【0027】
本実施形態によれば、上壁を備えていない従来の中和槽の上面にシート状の密閉部材で覆うという簡易な手段により上壁を構成し、大掛かりな工事を必要とすることなく、二酸化炭素を中和槽から大気に散逸することを防ぐという効果を奏することができる。
【0028】
また、シート状の密閉部材は、中和槽に設置することも撤去することも簡単なことから、二酸化炭素接触部の設置、交換、撤去も容易にすることができる。すなわち、中和槽の上面をシート状の密閉部材で覆うことにより、従来の中和槽を大幅な変更をすることなく本発明を実施することができる。
【0029】
また、シート状密閉部材は、中和槽を覆うだけではなく、貯水槽の上部を覆うことができる。中和処理装置を形成する貯水槽と中和槽を覆うことにより、全体として二酸化炭素の大気に散逸する量を減らすことができる。
【0030】
また、シート状密閉部材は、中和槽内で廃液の上面を覆うことができる。廃液の上面を覆うことにより、廃液に溶解した二酸化炭素を廃液内に留める効果を奏することができる。シート状密閉部材は、中和槽内で固定してもよいし、浮かせるにように構成してもよい。
【0031】
実施形態1
本実施形態では、中和槽(300)の中和処理部の前段に、中和槽(300)内で発生した二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と中和槽(300)内に送水される廃水(W3)とが接触する二酸化炭素接触部(510)を設けたことを特徴とする。
【0032】
図1を参酌しながら本実施形態の中和処理装置(100)の動作を説明する。中和処理装置(100)は、少なくとも貯水槽(200)、中和処理槽(300)、二酸化炭素接触部(510)で構成されている。
【0033】
コンクリートを伴う工事現場等では強アルカリ性の廃水が発生する。発生した廃水(W1)は、パイプ(410)等により貯水槽(200)に送水される。貯水槽(200)は廃水(W1)を中和槽(300)に送水する前に一時的に貯水する。
【0034】
貯水槽(200)は、濁水処理を行う機能を備えてもよい。濁水処理としては、自然沈殿方式、凝集沈殿方式、機械処理沈殿方式、機械処理脱水方式等があり、適宜選択できる。
【0035】
貯水槽(200)内には、ポンプ等の送水装置(210)が設置されている。送水装置(210)は、貯水槽(200)内で貯水されている廃水(W1)をパイプ(420)等を介して二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)で満たされた二酸化炭素接触部(510)を通過して貯水槽(300)に送水する機能を有している。
【0036】
貯水槽(200)の近傍には、中和槽(300)が設置されている。中和槽(300)の上部には、シート状の密閉部材(305)が設けられている。密閉部材(305)は、ポリプロピレンフィルムや、養生シートのような中和槽(300)の上面を容易に覆うことができるようなシート状のもので構成されている。
【0037】
中和槽(300)の上部にシート状の密閉部材(305)を設けることにより、中和槽(300)を大気に対して密閉または略密閉の状態を構成することができる。シート状の密閉部材(300)は、中和槽(300)の側壁に固定してもよいし、着脱自在に設けてもよい。
【0038】
シート状の密閉部材(305)は、中和槽の上部を完全に密閉するように構成する必要はなく、中和槽(300)内で発生する二酸化炭素の濃度の高い空気(C2)が大量に大気に散逸しない程度の気密性が保てることができればよい。
【0039】
また、中和槽(300)には、中和のために二酸化炭素が投入されることから、中和槽(300)内の圧力が高まることがあるため、密閉部材(305)に異常な圧力が高まることを防ぐような構成、例えば通気口を備えてもよいが、中和槽(300)内の二酸化炭素が大気に散逸することを防ぐという観点から、中和槽(300)が密閉状態であるように構成したほうがよい。
【0040】
以下、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が発生する機序について説明する。
中和槽(300)内では、工事で発生した強アルカリ性の廃水(W2)が中和処理をされるために貯水されている。
【0041】
中和槽(300)は、強アルカリ性の廃水(W2)に液化または圧縮された二酸化炭素(C1)を投入し中和処理を行う中和処理部を備える。
【0042】
中和処理部は、二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵タンク(320)と、二酸化炭素貯蔵タンク(320)に貯蔵されている二酸化炭素を中和槽(300)内に設けられる二酸化炭素拡散器(330)に二酸化炭素導入を導入するパイプ(440)等と、二酸化炭素を導入するパイプ(440)等に接続され、二酸化炭素を中和槽(300)内の廃水(W2)に拡散する二酸化炭素拡散器(330)により構成されている。
【0043】
二酸化炭素拡散器(330)は、二酸化炭素貯蔵タンクから送られてきた二酸化炭素が二酸化炭素の気泡(C1)となって中和槽(300)内の廃水(W2)に拡散するように構成されている。廃水(W2)に拡散された二酸化炭素は、気泡(C1)となって中和槽(300)内の廃水(W2)に溶解し中和する。
【0044】
中和処理部は、図示されていない中和槽(300)内の廃水(W2)のpHを検出するpHセンサ、二酸化炭素を導入するパイプの開閉を行う二酸化炭素調整弁を備え、pHセンサの出力に応じて二酸化炭素調整弁を制御し、中和槽(300)内の廃水(W2)に拡散する二酸化炭素量を調整することにより、中和槽(300)内の廃水(W2)のpHを調整するように構成してもよい。
【0045】
中和槽(300)は、ポンプ等の送水装置(310)を備える。中和槽(300)で中和処理された廃水(W2)は、送水装置(310)によりパイプ(430)を介して次の処理装置に送水される。
【0046】
中和処理部では、中和槽(300)内の廃水(W2)に拡散された二酸化炭素(C1)の大部分は強アルカリ性の廃水(W2)に溶解されている。しかしながら、中和処理部に投入された二酸化炭素(C1)の全てが強アルカリ性の廃水に溶解することはなく、中和処理部に投入された二酸化炭素の一部は廃水(W2)に溶解されずに略密閉の中和槽(300)の内部で大気と比較して二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)(以下「二酸化炭素の濃度が高い気体」という。)として存在することになる。
【0047】
ここで、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とは、一般の大気の二酸化炭素の濃度が約400ppmであるところ、大気の二酸化炭素の濃度よりも高い二酸化炭素の濃度である空気のことである。
【0048】
従来の中和処理装置では、中和処理部で発生した廃液に溶解しなかった二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が大気に散逸していた。本実施例では、中和処理部で発生した二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を回収し、二酸化炭素接触部(510)で廃水(W3)と接触させて溶解させることにより中和処理を促進させるとともに、さらに、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を大気に散逸させないことにより、温暖化の促進を防ぐものである。
【0049】
中和処理部の前段に設けられた二酸化炭素接触部(510)は、貯水槽(200)から中和槽(300)の中和処理部に送水される廃水(W3)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触するように構成されている。
【0050】
二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と廃水(W3)が接触すると、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)は廃水(W3)に溶解する。そうすると、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が大気に散逸されることを防ぐとともに、廃水(W3)が中和処理部に送水される前に二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と接触することにより中和の作用が生じる。
【0051】
本実施形態では、二酸化炭素接触部(510)は中和槽(300)の上部において、廃水(W3)の経路となるような筒状の形態で設置されている。二酸化炭素接触部(510)が経路として形成されると、二酸化炭素接触部(510)には、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が回収されて滞留する構成となっている。
【0052】
そして、送水装置(210)により貯水槽(200)から中和槽(300)に送水されてくる廃水(W3)は、経路としても機能する二酸化炭素接触部(510)を通過し、その際、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と接触し、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)は廃水(W3)に溶解し、中和が行われる。
【0053】
廃水(W3)に二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)がより多く溶解するように構成するためには、廃水(W3)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触する機会を増加させればよい。
【0054】
廃水(W3)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触する機会を増加させるためには、廃水(W3)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触する時間を長くすればよい。
【0055】
廃水(W3)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触する時間を長くするためには、排水(W3)の経路を構成する二酸化炭素接触部(510)の長さ方向を長くすることにより可能となる。
【0056】
また、
図2に示すように、二酸化炭素接触部(510)の内部にスポンジや不織布等の担体(360)を設け、担体(360)を介して廃水(W4)を中和処理部に送水するように構成することができる。
【0057】
廃水(W3)は、担体(360)を介して二酸化炭素接触部(510)を通過するから、廃水(W3)は、担体(360)により二酸化炭素接触部(510)で滞留する時間が長くなり、担体(360)を設けることにより中和が促進されるという効果を奏する。
【0058】
また、廃水(W3)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触する機会を増加させるためには、廃水(W3)の単位体積当たりの表面積を広くすればよい。廃水(W3)の単位体積当たりの表面積を広くするためには、廃水(W3)を粒子状や霧状にすることが望ましい。
【0059】
そのため、廃水(W3)を二酸化炭素接触部に送水する際に、ノズル等によりシャワー状(W3)としたり、霧化装置で霧化(W3)する拡散手段(350)を採用したりすることができる。
【0060】
廃水(W3)をシャワー状、霧状とすることにより、廃水(W3)の単位体積当たりの表面積が広くなり、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)に接触する面積が広くなることから、廃水(W3)に二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)をより多く溶解することができる。
【0061】
実施形態2
本実施形態の中和処理装置は、中和槽(300)の上部に二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と中和槽内に送水される廃水とが接触する二酸化炭素接触部を設けることは、上記実施形態1と同じであるが、二酸化炭素接触部(520)が貯水槽の壁面(370)を利用することを特徴とする。
【0062】
本実施形態を
図3を参照しながら説明すると、貯水槽(200)は、パイプ(410)等により順次送水されてくる廃水を貯水する。貯水槽内では廃水(W1)の貯水量に応じて水位が上昇し、水位が壁面(370)よりも高くなったとき、すなわち、貯水槽(200)での貯水量が所定の水量を超えると、廃水(W3)が貯水槽(200)の壁(370)から隣接する中和槽(300)に向けて越流するように構成されている。
【0063】
ここで、貯水槽(200)と中和槽(300)とが隣接するように設置され、貯水槽(200)と中和槽(300)が壁(370)を共用できるような構成が望ましい。
【0064】
中和槽(300)の上部には、シート状の密閉部材(305)が設けられ、二酸化炭素の濃度が高い気体が大気に散逸しないように構成されている。実施例では、シート状の密閉部材(305)が貯水槽(200)と中和槽(300)を覆うように構成されている。
【0065】
貯水槽(200)から中和槽(300)に向けて廃水(W3)が越流するように構成されている壁(370)は、二酸化炭素接触部(520)として機能し、中和槽(300)の壁面(370)を伝って中和槽(300)内に流れ込む廃水(W4)が中和槽(300)内の二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と接触し中和が促進される。
【0066】
廃水(W3)と二酸化炭の濃度が高い空気(C2)との接触は、廃水(W3)が貯水槽(200)の壁から中和槽に向けて越流する際に中和槽(300)の壁面(370)における滞在時間が長いほど増加する。
【0067】
そのため、廃水(W6)が越流する中和槽(300)の壁面に、スポンジや不織布等の廃水が中和槽(300)の壁面で滞在時間が長くなるような担体(360)を設けることが望ましい。
【0068】
本実施形態によれば、貯水槽(200)と中和槽(300)が隣接するように構成すれば、中和槽の壁を二酸化炭素接触部(520)として用いることができ、特別な構成を用いることなく本件発明を実施することができるという効果を奏する。
【0069】
また、本実施形態によれば、廃水(W1)を送水装置(210)を用いることなく貯水槽(200)から中和槽(300)に送水することができるため、送水のためのコストを下げることができるという効果を奏する。
【0070】
実施形態3
本実施形態は、貯水槽(200)と中和槽(300)をそれぞれが連通するような通路(380)を構成し、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を、通路(380)を介して中和槽(300)から貯水槽(200)に投入することにより、貯水槽(200)内に二酸化炭素接触部(540)を構成し、貯水槽(200)を中和槽としての機能を持たせることを特徴とする。
【0071】
本実施形態を
図4を参照しながら説明すると、貯水槽(200)の上部と中和槽(300)の上部を二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が流通できるように通路(380)が形成されている。
【0072】
そして、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を中和槽(300)から通路(380)を介して貯水槽(200)に投入することにより、貯水槽(200)内に貯水されている廃水(W1)と投入された二酸化炭素(C1)との境界面が二酸化炭素接触部(540)として機能し、貯水槽(200)内で廃水(W1)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)とが接触し、廃水(W1)に二酸化炭素が溶解して中和される。
【0073】
廃水(W1)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)との接触の機会を増加させるために、貯水槽(200)内に、廃水(W1)及び/または二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を撹拌する撹拌機(240、250、260)を設け、撹拌機をモータ等により駆動させてもよい。
【0074】
撹拌機(240)は、貯水槽(200)内の廃水(W1)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が存在する境界面に構成され、廃水(W1)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を撹拌し、廃水(W1)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)との接触を増加させてもよい。
【0075】
攪拌機(240)が二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)と貯水槽(200)内の廃水(W1)とが混合するように攪拌すると、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が貯水槽(200)内の廃水(W1)に、より溶解しやすくなるという効果を奏する。
【0076】
撹拌機(250)は、貯水槽(200)内の廃水(W1)に浸漬するように構成され、廃水(W1)のみを撹拌するように構成してもよい。
【0077】
貯水槽(200)内に貯水されている廃水(W1)と貯水槽(200)内に送気されてき二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)との境界面を二酸化炭素接触部(540)として機能させると、二酸化炭素が(W1)に二酸化炭素が溶解し、廃水(W1)の表面の二酸化炭素の濃度が高くなり、やがて二酸化炭素が溶解しにくくなる。
【0078】
本実施形態によれば、廃水(W1)を撹拌することにより、排水(W1)全体で二酸化炭素の濃度を偏りなく均一にすることができ、より多くの二酸化炭素を排水(W1)に溶解することができるという効果を奏する。
【0079】
また、撹拌機(260)を貯水槽の上方の廃水(W1)が存在しない箇所に設け、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を撹拌するように構成してもよい。
【0080】
貯水槽(200)内に貯水されている廃水(W1)と投入された二酸化炭素(C1)との境界面を二酸化炭素接触部(540)とした場合は、廃水(W1)の表面に接する気体の二酸化炭素は、廃水(W1)に溶解するに従い、二酸化炭素の濃度が低くなり、廃水(W1)に二酸化炭素が溶解しにくくなるという現象が起こる。
【0081】
本実施形態によれば、貯水槽(200)内の二酸化炭素の濃度が高い気体を撹拌することにより、貯水槽(200)内の気体の二酸化炭素の濃度を偏りなく均一にすることができ、より多くの二酸化炭素を排水(W1)に溶解することができるという効果を奏する。
【0082】
攪拌機は、廃水(W1)に二酸化炭素が溶解するような構成であればよく、気体、液体、気体と液体の双方を撹拌できる構成が採用され、攪拌翼の形状や回転数等はその目的が達成できる範囲内で適宜選択できる。
【0083】
実施形態4
本実施形態は、貯水槽(200)に中和機能を持たせ、貯水槽(200)内に二酸化炭素接触部(540)を設ける点では上記実施形態3と同じであるが、本実施形態は、中和槽(300)内にポンプ等の送気手段(390)を設け、送気手段(390)により二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を中和槽(300)内から貯水槽(200)内に送気することを特徴としている。
【0084】
本実施形態を
図5を参照しながら説明すると、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)を中和槽(300)内に設けた送気手段(390)により中和槽(300)内から貯水槽(200)内に送気することにより、貯水槽(200)内で二酸化炭素接触部(550)を構成し、貯水槽(200)は中和機能を果たし、中和処理がされる。
【0085】
中和槽(300)内には、送気手段(380)が設けられている。送気手段(380)は、中和槽(300)内の二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)をパイプ(450)を介して貯水槽(200)内の上方に設けられた二酸化炭素排出口(270)から排出できるように構成されている。
【0086】
貯水槽(200)の上部では、二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)が滞留し、貯水槽(200)で貯水されている廃水(W1)と二酸化炭素の濃度が高い気体(C2)との境界面で二酸化炭素接触部(540)が形成され、貯水槽(200)で貯水されている廃水(W1)に二酸化炭素が溶解し中和が促進される。
【0087】
貯水槽(200)内には、図示されていない、二酸化炭素が貯水槽(200)に貯水されている廃水(C1)により多く溶解するように、上記実施形態3で示した撹拌機(240、250、260)を設けることができる。
【0088】
また、二酸化炭素排出口(280)は、貯水槽(200)に貯水されている廃水(W1)に浸漬するように設けてもよい。二酸化炭素排出口(280)を貯水槽(200)に貯水されている廃水(W1)に浸漬するように設ける場合には、二酸化炭素排出口(280)が中和槽(300)に設けられる二酸化炭素拡散器(330)と同じ機能を持つように構成することができる。
【0089】
本実施形態によれば、貯水槽(200)は、中和処理部と同じ機能を奏することから、中和処理装置は二つの中和槽を持つこととなり、より中和が促進される。
【0090】
上記各実施形態において、貯水槽(200)、中和槽(300)に水位センサを設け、水位センサの出力により、ポンプ送水量を制御することができる。
また、貯水槽(200)内の廃水(W1)、中和槽(300)内の廃水(W2)のpHを計測するpHセンサを設け、そのpHセンサの出力により中和処理部に投入される二酸化炭素の量を調節することができる。
【0091】
実施形態5
実施形態5は、貯水槽(200)から中和槽(300)に越流した廃水(W3)を担体(360)に効率よく通過させるために、廃水(W3)を担体(360)の流れ方向の中央付近まで導く導水機構(600)を備えたことを特徴とする。導水機構(600)は板状であり、壁(370)の上端から、中和槽(300)に延びるように構成されている。貯水槽(200)から壁(370)を越えて越水する廃水(370)は、導水機構(600)を介して担体(360)に導水され中和槽(300)に達する。
【0092】
図6に、実施形態5の例を示す。導水機構(600)を備えていない壁(370)を越えた廃水(W3)の一部は、壁(370)を伝って下に流れ落ち、担体(360)を通過しないものが発生することがある。廃水(W3)が壁(370)を伝って下に流れ落ちる速さは、担体(360)を通過するときの速さに比べて速いということがいえる。そうすると、廃水(W3)と二酸化炭素とが接触する時間を長くするためには、廃水(W3)が壁(370)に伝わらずに、担体(360)を通過するようにすることが有利である。
本実施形態では、壁(370)は、導水機構(600)を備えているため、導水機構(600)は、廃水(370)を担体(360)の流れ方向の中央付近にまで導き、廃水(W3)のほとんどは、担体(360)を通過させることができる。
【0093】
導水機構(600)は、越流を行う箇所であれば、適宜設置することができる。導水機構(600)は、越流した廃水(W3)が壁(370)から5cm程度離れて流れるように設置することが好ましい。越流した廃水(W3)が壁(370)から5cm程度離れると、越流した廃水(W3)が壁(370)を伝わることなく担体(360)を通過するようにすることができる。導水機構(600)は、金属板で容易に作成することができ、越水する壁(370)に公知の手段により設置するという簡単な構成により、廃水(W3)の中和を促進させることができるという格別な効果を奏するものである。
【0094】
図7に実施形態5の変形例を示す。
図7の例は、担体(360)は吊体(610)により、導水機構(600)の先端部から吊り下げるように構成したものである。
吊体(610)は、糸や紐であってもよいし、棒や板で構成してもよい。吊体(610)は、上面視において、担体(360)における廃水(W3)の流れ方向の中心部と接続されるように構成することが好ましい。当該構成により、廃水(W3)は、吊体(610)を伝って担体(360)の中心部に流れるように構成することができる。吊体(610)は、木綿糸であったり、木綿糸による組み紐であったりしてもよい。吊体(610)の材料の選択や形態により、吊体(610)を担体として用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
100:中和処理装置
200:貯水槽
210:送水装置
240:攪拌装置
250:攪拌装置
260:攪拌装置
270:二酸化炭素排出口
280:二酸化炭素排出口
300:中和槽
305:密閉部材
310:送水装置
320:二酸化炭素貯蔵タンク
330:二酸化炭素拡散器
350:拡散手段
360:担体
370:壁
380:通路
390:送気手段
410:パイプ
420:パイプ
430:パイプ
440:パイプ
450:パイプ
510:二酸化炭素接触部
520:二酸化炭素接触部
540:二酸化炭素接触部
550:二酸化炭素接触部
600:導水機構
610:吊体
W1 :廃水(貯水槽で貯水されている廃水)
W2 :廃水(中和槽で貯水されている廃水)
W3 :廃水(二酸化炭素の濃度が高い空気と接触する廃水)
W4 :廃水(越流した廃水)
C1 :二酸化炭素の気泡
C2 :二酸化炭素の濃度が高い気体
C3 :二酸化炭素の濃度が高い気体の気泡