(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035807
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】バインダーを使用しない多孔体への粉塵捕集層形成方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20240307BHJP
B01D 46/24 20060101ALI20240307BHJP
B32B 3/28 20060101ALI20240307BHJP
B32B 5/16 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B01D39/16 H
B01D39/16 E
B01D46/24 Z
B32B3/28 A
B32B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133455
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2022140225
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227250
【氏名又は名称】日鉄鉱業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523327798
【氏名又は名称】ハーディング ゲーエムベーハー フィルターテヒニク
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 博道
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慎一
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 雄次
(72)【発明者】
【氏名】篠田 賢
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅典
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
(72)【発明者】
【氏名】ラーベ ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハマー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハイエク シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベスキ ディーノ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング ウルス
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4F100
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB07
4D019BC15
4D019BD01
4D019CA03
4D019CA04
4D019CB06
4D019CB09
4D058JA04
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4D058JB44
4D058KA13
4D058SA20
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK05
4F100AK05A
4F100AK18
4F100AK18B
4F100AK63
4F100AK63B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE01
4F100DE01B
4F100EJ48
4F100EJ48A
4F100GB56
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粉塵捕集層を構成する微粒子の剥落がなく、スケールアップしても長期間にわたり高性能が維持されるフィルタエレメントの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルタエレメント素材の表面に、低融点微粒子及び小径微粒子を含む微粒子の層を、フィルタエレメント素材を吸引しながらその表面に堆積させて形成し、当該微粒子の層を、赤外線ヒータ、オーブンに例示される加熱手段によって加熱することにより、前記微粒子を焼結させて粉塵捕集層を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタエレメント素材の表面に2種類以上の微粒子からなる層を形成し、加熱手段により加熱することにより、前記微粒子のうち、1種類以上を溶融させ、冷却後に粉塵捕集層を形成することを含むフィルタエレメントの製造方法
【請求項2】
請求項1記載の2種類以上の微粒子のうち、1種類以上の粒径が、フィルタエレメント素材を構成する樹脂と比較して小さいことを特徴とする請求項1記載のフィルタエレメントの製造方法
【請求項3】
請求項1記載の2種類以上の微粒子のうち、1種類以上の軟化点が、その他の微粒子とフィルタエレメント素材を構成する粒子よりも低いことを特徴とする請求項1または2記載のフィルタエレメントの製造方法
【請求項4】
請求項1記載の2種類以上の微粒子を、予め十分に混合してからフィルタエレメント素材に吸引させ、その表面に形成されたものである請求項1ないし3の何れかに記載のフィルタエレメントの製造方法
【請求項5】
請求項1記載の2種類以上の微粒子を、別々にフィルタエレメント素材に吸引させ、その表面に層状に形成されたものである請求項1ないし4の何れかに記載のフィルタエレメントの製造方法
【請求項6】
加熱手段が、赤外線ヒータもしくはオーブンである請求項1ないし5何れかに記載のフィルタエレメントの製造方法
【請求項7】
前記フィルタエレメント(204)は、少なくとも1つのポケット状構造体又はバッグ状構造体(310)を備え、前記少なくとも1つのポケット状構造体又はバッグ状構造体(310)は、少なくとも1つの清浄な流体出口開口部(212)を残し、前記フィルタエレメント(204)の少なくとも1つの壁(210)によって囲まれた内部空間(208)を有し、前記内部空間(208)に対向する内面、及び前記内側空間(208)の反対方向に配向した外面を有するフィルタエレメント(204)の、前記外面に粉塵捕集層を形成することを含む、請求項1ないし6のいずれか1項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項8】
前記フィルタエレメント(204)は、少なくとも1つのポケット状構造体またはバッグ状構造体(310)を備え、前記少なくとも1つのポケット状構造体またはバッグ状構造体(310)は、少なくとも1つの未処理流体入口開口部(228)を残し、前記フィルタエレメント(204)の少なくとも1つの壁(210)によって囲まれた内部空間(208)を有し、前記フィルタエレメント(204)は、前記内部空間(208)に対向する内面、及び前記内部空間(208)の反対方向に対向する外面を有し、フィルタエレメント(204)の前記内面に粉塵捕集層(202)を形成することを含む、請求項1ないし6のいずれか1項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項9】
前記フィルタエレメント(204)は、ラメラ構造(300)を画定する少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)で形成され、前記ラメラ構造(300)は、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の2つの対向する側面のうちの少なくとも1つに、凸部(304)および凹部(306)の幾何学的構成を含む、請求項1ないし8のいずれか一項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項10】
前記幾何学的構成は、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の両側の複数の凸部(304)及び凹部(306)によって構成されることを含む、請求項9に記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の前記凸部(304)および凹部(306)は、前記幾何学的構成の少なくとも1つのアンダーカット部分(308)を形成するように成形されることを含む、請求項9または10に記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項12】
前記ラメラ構造の幾何学的構成が、螺旋状構成(302)である、請求項9ないし11のいずれか一項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項13】
前記フィルタエレメント(204)は、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)によって画定される円筒形、円錐形、またはその他の回転対称形状を有する少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造(310)を備えて形成され、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の凸部(304)および凹部(306)は、前記ラメラ構造(300)の幾何学的形状を形成するように形成されることを含む、請求項9ないし12のいずれか一項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項14】
前記2種類以上の微粒子のうちの1つが、前記粉塵捕集層(202)のマトリクス材を構成し、前記フィルタエレメント材料と同一の樹脂材料からなることを含む、請求項1ないし13のいずれか一項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項15】
前記粉塵捕集層(202)のマトリクス材を構成する2種類の微粒子のうちの1つがポリエチレンであることを含む、請求項14記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項16】
前記粉塵捕集層(202)の形成は、いかなる結合剤または溶媒を使用することなく行うことを特徴とする、請求項1ないし15のいずれか一項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項17】
前記2種以上の微粒子がパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含まないことを特徴とする、請求項1ないし16のいずれか一項記載のフィルタエレメント(204)の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか一項に記載の方法により製造されたフィルタエレメント(204)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダーを用いることなく高い捕集性能を備えながら粉塵捕集層に一定の強度を有する粉塵捕集層を形成することにより、圧力損失が低くエネルギー効率のよいフィルタの製造方法に関するものであり、特に、逆洗時のパルスエアに対する耐性に優れ、スケールアップしても長期間その性能を維持するフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集塵フィルタのフィルタエレメントは、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材と、樹脂微粒子からなる粉塵捕集層とから構成される。また、フィルタエレメントの仕様によっては、導電性を呈するカーボン層を追加して構成することがある。
【0003】
フィルタエレメント素材は、特許文献1,2などに例示された方法によって、合成樹脂粉末を焼結して得ることができ、得られた合成樹脂の焼結体を構成する個々の合成樹脂の粒子の間には、空気の通過が可能な空隙が形成されている。
【0004】
シンターラメラーフィルターのフィルタエレメントの粉塵捕集層は、粉塵捕集層として使用する樹脂微粒子を水系の溶媒に懸濁させて、粉塵捕集層として使用する樹脂微粒子を含有した塗工液を調製し、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に、前記塗工液を塗布後、乾燥することにより、粉塵捕集層を形成する。
【0005】
また、帯電防止仕様のフィルタエレメントに於いては、導電性を呈するカーボン粉を水系の溶媒に懸濁させて、導電性を呈するカーボン粉を含有する塗工液を調製し、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に前記カーボン塗工液を塗布後、乾燥することにより、導電性を呈するカーボン層を形成する。その後、粉塵捕集層として使用する樹脂微粒子を含有した塗工液を塗布後、乾燥することにより、粉塵捕集層を形成する。
【0006】
粉塵捕集層として使用する樹脂の微粒子は、集塵フィルタを用いて捕集する粉塵の性質および粒子径に応じて、樹脂の材質および粒子径を選択する。粉塵捕集層として使用する樹脂の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、などから選択し、樹脂の粒子径は、1~100μmの範囲から選択する。
【0007】
粉塵捕集層は、該捕集層に使用する樹脂の微粒子を個々に積層して形成し、該捕集層を構成する個々の樹脂微粒子の間には、空気の通過が可能な空隙を有する構造を有する。捕集対象粒子を含有する含塵空気の塵分は、粉塵捕集層で捕捉され、前記粉塵捕集層によって塵分が捕集された後の清浄空気は、前記捕集層に形成された空気の通過が可能な空隙及びフィルタエレメント素材の空隙を通過して前記フィルタエレメントの内側に流れ込む。
【0008】
ここで、一般的な集塵機の構成および含塵空気からの粉塵の除去工程について
図1で説明する。
集塵機10は、密閉されたケーシング12を有し、その内部は区画壁である上部天板14によって下部の集塵室16と、上部の清浄空気室18とに分けられ、ケーシングの中腹に下部の集塵室へ連通する含塵空気の供給口20が設けられる。また、ケーシングの上部には、清浄空気室へ連通する清浄空気の排出口22が設けられている。さらに上部天板の下面には、中空扁平状のフィルタエレメント24が所定の間隔で取り付けられており、ケーシングの下部には、除塵された粉塵を排出するホッパ26と、その粉塵の取り出し口28が設けられている。
【0009】
フィルタエレメント24は、
図1(2)にその外観の概略を示すように、上端部に大径部32が形成され、大径部はフレーム34を収容するように膨らんだ形状に形成されている。大径部内に収容されたフレームの両端部は、締付ボルト36を介して大径部と一体的に上部天板14に取り付けられている。なお上部天板とフレームとの間には、パッキン38が介装されている。
【0010】
そして、フィルタエレメント外観図のP-P断面を斜視図(
図1(3))で示したように、フィルタエレメント内部は、上端部が開口した中空の室24aが複数形成されており、エレメントの粉塵付着表面は、波形形状或いは蛇腹形状となって付着面積を増大させている。含塵空気供給口20からケーシングの集塵室16内に供給された含塵空気は、中空形状のフィルタエレメントの濾過体を通過して内側に流れ込む。このとき捕集対象粉は、フィルタエレメントの素材表面に形成された粉塵捕集層に付着・堆積して捕集され、フィルタエレメントの内側に流れ込んだ清浄空気は、フレームの通路を経てケーシングの上部の清浄空気室18に入り、その排出口22から所定の場所に導かれる。
【0011】
フィルタエレメントの素材表面に形成された粉塵捕集層に捕集対象粉が付着・堆積すると、空気通路が閉塞されて圧力損失が増加するため、フィルタエレメント24をそれぞれ一定の時間間隔をおいて順次逆洗し、粉塵捕集層に付着・堆積した捕集対象粉を除去する。即ち、タイマー制御等により一定の間隔をおいて図示しない逆洗バルブを順次開閉して、それぞれの対応する噴射管から逆洗のためのパルスエアを噴射する。これにより、パルスエアがそれぞれのフィルタエレメント24の内側から外側に向かって逆流し、粉塵捕集層に付着・堆積した捕集対象粉が飛散することなく、堆積したままの状態で払い落とされる。これにより払い落とされた捕集対象粉は、ホッパ26を通じて取り出し口28から回収される。
【0012】
前述の集塵機の装置構成および含塵空気からの粉塵の除去工程、フィルタエレメントの構成との相乗効果によって、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材と、樹脂微粒子からなる粉塵捕集層とから構成されるフィルタエレメントは、長期間に亘って連続使用が可能な集塵フィルタエレメントとして、国内外の鉱山、砕石所、製鉄所等に於ける発塵箇所の環境集塵手段として広く採用されてきた。
【0013】
しかしながら、従来の塗工液をフィルタエレメント素材の表面に塗工することにより形成された粉塵捕集層は、フィルタエレメント素材の表面に対して水溶性バインダーによる接着力により付着していることから、高強度とは言えず、粉塵捕集層に付着・堆積した捕集対象粉をパルスエアによる逆洗によって除去する時に粉塵捕集層の一部が剥落して、捕集対象粉にコンタミネーションすることが懸念されていた。そのため、食品等のコンタミネーション防止が重視される用途には使用できなかった。
【0014】
さらに、一般的なバグ式集塵フィルタと比較し、運転開始時における、濾過面積当たりの圧力損失(初期圧損)がやや大きく、イニシャルコストを低減したいユーザーの要望には応えられていなかった。これらの背景から、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に形成する粉塵捕集層として、より強固かつ低い初期圧損を有するものの開発が求められている。
【0015】
本発明者らは、上記の技術的課題を解決する方法として、液体バインダーを用いない、乾式での粉塵捕集層形成方法を開発した(特許文献3)。この方法で製造したフィルタエレメントを使用することにより、液体バインダーを用いて粉塵捕集層を形成したエレメントと比べ、低い圧力損失で効率的な集塵が可能となった。
【0016】
本発明者らは、この低圧力損失のフィルタエレメントを、より大型の集塵装置に適用すべく、上記粉塵捕集層形成方法により大型のフィルタエレメントを製造し、長時間運転を行うためパルスエアによる逆洗を行いながら、集塵実験を行ったところ、当初は所期の圧力損失を維持しているものの、時間の経過とともに圧力損失が上昇してしまった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003-126627号公報
【特許文献2】特開2004-202326号公報
【特許文献3】特開2022-022054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に粉塵捕集層を形成するフィルタエレメントの製造方法であって、強固かつ低い初期圧損を長期間にわたって維持し、且つスケールアップにも耐えるフィルタエレメントの製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らが、特許文献3に記載される先行技術のスケールアップ時の問題を詳細に調査したところ、スケールアップに伴い加熱すべき面積が増えたため、加温融着時の温度ムラが生じ、粒子が完全に溶融し部分的にフィルタエレメント素材に近い大きさの気孔を持つ部位が発生してしまうことが圧力損失増加の原因であることが判明した。このような気孔を有する部位が発生すると、その部位に過度の気流の流れが生じ、パルスエアによる逆洗で除去しきれない捕集対象粉がフィルタエレメント素材内に蓄積し、やがて気孔が閉塞してしまう。このような閉塞部位が増加すると、フィルタの気孔絶対数が減少することにより、気孔当たりの気流が増加するので、比較的気孔の大きい部位より次第に閉塞域が増えるという悪循環に陥ってしまうことになり、圧損の増加を招くのである。
さらに、長時間稼働させるために必要なパルスエアによる逆洗を間欠的に行う場合、粉塵捕集層の構成粒子が捕集対象粉よりも大径であると、捕集対象粉の微細分が粉塵捕集層を繰り返し突破することにより、フィルタエレメント素材内に堆積してしまい、これも圧力損失増加の原因の一つであることが判明した。
【0020】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、さらに粉塵捕集層の形成方法について試行錯誤を重ねた結果、粉塵捕集層を形成する粒子の一部に融点が低い粒子を混合し、粉塵捕集層を形成する際の加熱温度を、融点が低い粒子の溶融温度以上且つフィルタエレメント素材の粒子及び粉塵捕集層を形成する他の微粒子の融点よりも低い温度とすることによって、フィルタエレメント素材各所に於いて多少の温度むらがあっても、粉塵捕集層を形成する粒子同士を低融点の粒子によって確実に融着できること、さらに、粉塵捕集層を形成する粒子に、微細な粒子を混合することで、パルスエアによる逆洗時に微細な捕集対象粉が粉塵捕集層を突破することを低減できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0021】
したがって、本発明の実施態様は以下の通りである。
(1)フィルタエレメント素材の表面に、複数種のうちの1種類以上はフィルタエレメント素材及び粉塵捕集層を形成する微粒子の融点よりも低い、複数種の微粒子からなる層を形成し、当該微粒子の層を加熱手段により加熱することにより、前記微粒子を焼結させて粉塵捕集層を形成することを含むフィルタエレメントの製造方法。
(2)複数種の微粒子のうち1種類以上の微粒子の粒径がフィルタエレメント素材の粒径よりも小さい(1)のフィルタエレメントの製造方法。
(3)複数種の微粒子のうち粉塵捕集層を形成する微粒子の1種類以上がフィルタエレメント素材の気孔よりも小さい微粒子である(1)または(2)のフィルタエレメントの製造方法。
(4)(1)の2種類以上の微粒子を、予め十分に混合してからフィルタエレメント素材に吸引させ、その表面に形成されたものである(1)ないし(3)の何れかのフィルタエレメントの製造方法。
(5)(1)の2種類以上の微粒子を、別々にフィルタエレメント素材に吸引させ、その表面に層状に形成されたものである(1)ないし(4)の何れかのフィルタエレメントの製造方法。
(6)加熱手段が、赤外線ヒータもしくはオーブンである(1)ないし(5)の何れかのフィルタエレメントの製造方法。
(7)前記フィルタエレメント(204)は、少なくとも1つのポケット状構造体又はバッグ状構造体(310)を備え、前記少なくとも1つのポケット状構造体又はバッグ状構造体(310)は、少なくとも1つの清浄な流体出口開口部(212)を残し、前記フィルタエレメント(204)の少なくとも1つの壁(210)によって囲まれた内部空間(208)を有し、前記内部空間(208)に対向する内面、及び前記内側空間(208)の反対方向に配向した外面を有するフィルタエレメント(204)の、前記外面に粉塵捕集層を形成することを含む、(1)~(6)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(8)前記フィルタエレメント(204)は、少なくとも1つのポケット状構造体またはバッグ状構造体(310)を備え、前記少なくとも1つのポケット状構造体またはバッグ状構造体(310)は、少なくとも1つの未処理流体入口開口部(228)を残し、前記フィルタエレメント(204)の少なくとも1つの壁(210)によって囲まれた内部空間(208)を有し、前記フィルタエレメント(204)は、前記内部空間(208)に対向する内面、及び前記内部空間(208)の反対方向に対向する外面を有し、フィルタエレメント(204)の前記内面に粉塵捕集層(202)を形成することを含む、(1)~(6)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(9)前記フィルタエレメント(204)は、ラメラ構造(300)を画定する少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)で形成され、前記ラメラ構造(300)は、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の2つの対向する側面のうちの少なくとも1つに、凸部(304)および凹部(306)の幾何学的構成を含む、(1)~(8)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(10)前記幾何学的構成は、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の両側の複数の凸部(304)及び凹部(306)によって構成されることを含む、(9)のフィルタエレメント(204)の製造方法。
(11)前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)の前記凸部(304)および凹部(306)は、前記幾何学的構成の少なくとも1つのアンダーカット部分(308)を形成するように成形されることを含む、(9)または(10)のフィルタエレメント(204)の製造方法。
(12)前記ラメラ構造の幾何学的構成が、螺旋状構成(302)である、(9)~(11)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(13)前記フィルタエレメント(204)は、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(210)によって画定される円筒形、円錐形、またはその他の回転対称形状を有する少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造(310)を備えて形成され、前記少なくとも1つのフィルタエレメント壁(310)の突出部(304)および凹部(306)は、前記ラメラ構造(300)の幾何学的形状を形成するように形成されることを含む、(9)~(12)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(14)前記2種類以上の微粒子のうちの1つが、前記粉塵捕集層(202)のマトリクス材を構成し、前記フィルタエレメント材料と同一の樹脂材料からなることを含む、(9)~(13)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(15)前記粉塵捕集層(202)のマトリクス材を構成する2種類の微粒子のうちの1つがポリエチレンであることを含む、(14)のフィルタエレメント(204)の製造方法。
(16)前記粉塵捕集層(202)の形成は、任意の結合剤または溶媒を使用することなく行うことを特徴とする、(1)~(15)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(17)前記2種以上の微粒子がパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含まないことを特徴とする(1)~(16)のいずれかのフィルタエレメント(204)の製造方法。
(18)(1)~(17)のいずれかに記載の方法により製造されたフィルタエレメント(204)。
【0022】
微粒子の層を、加熱する加熱手段としては、熱線を照射する加熱手段や高温雰囲気下で加熱する加熱手段が挙げられ、熱線を照射する加熱手段としては、赤外ヒータが例示され、高温雰囲気下で加熱する加熱手段としてはギアオーブンが例示される。
【0023】
粉塵捕集層に用いる樹脂微粉の粒子径は、0.1~200μmの範囲から選択が可能で、好ましくは平均粒子径が0.1μm~50μmの樹脂微粉を用いる。ここで述べる平均粒子径とは、マイクロトラックなどの粒度分布測定装置で測定した際のD50値を指す。
【0024】
粉塵捕集層を形成する樹脂微粉としては、PTFE 微粒子のほか、超高分子量ポリエチレン(セラニーズジャパン社製、GUR2126)または低分子量ポリエチレン(三井化学ファイン社製、ハイワックスHP10A)が好適に用いられる。
【0025】
また、融点の低い樹脂微粉の融点と、粉塵捕集層を形成する他の微粒子の融点との温度差は、使用する加熱手段によって不可避的に生じる温度むら以上であればよく、低融点微細粒子として低分子量ポリエチレンなどの低融点樹脂を用いればよい。
【0026】
さらに、粉塵捕集層を形成する微粒子のうち、小径の粒子としては、HDPEなどの高密度高分子を用いることができる。
前記粉塵捕集層の形成にあたり、フィルタエレメント素材表面に付着させる微粒子群の付着量は、1g~100g/m2の範囲から適当な量を指定することが出来、より好ましくは、30g~60g/m2の範囲で付着させる。
【0027】
フィルタエレメント素材表面に付着させる微粒子群の量が少ない場合は、これらが全体に行き渡らず、焼結体の気孔が十分に満たされない。過剰な場合は、表層で塊となり、初期圧損上昇の原因となる。
【0028】
フィルタエレメント素材表面に微粒子群を付着させる方法としては、例えば刷毛を用いて塗付することが簡便である。
【0029】
フィルタエレメント素材表面に粉塵捕集層を形成する微粒子群を付着させる方法としては、
図3のような治具を用いる。
2コアエレメントの素材を
図3の治具に設置し、底部に粉塵捕集層を形成する微粒子群を置き、前記治具に対して配管によって連通して配設されたリングブロワを用いて吸引しながら、治具下部の圧縮空気吹き出し口92からコンプレッサエアを吹き込み、前記粒子を舞い上がらせることにより、前記エレメント表面の気孔に十分行き渡らせる。粉塵捕集層を形成する微粒子群は全て混合するか、混合せず各々を段階的に層状に付着させる。
前記方法によってフィルタエレメント素材表面に付着させた微粒子群を粉塵捕集層として固定させる方法としては、
図2のようなオーブンに例示される加熱手段を用いる。微粒子群のうち、最も低い軟化点をもつ粒子の軟化点まで加温し、微粒子群を溶融させ、エレメント素材表面と微粒子群とを、又、微粒子群相互を融着させ、完成する。
完成したフィルタエレメント素材の表面には
図5のような粉塵捕集層が形成される。これは、フィルタエレメント素材の気孔が前記付着微粒子群で満たされた後、加温により溶融しない微粒子はそのまま粒子状を保つことにより、極微細な気孔を持つ粉塵捕集層を形成し、初期圧損を抑えながら粉塵捕集性能を両立したものである。
なお、2コアエレメントとは、
図4に示した様態のフィルタエレメントの試験用フィルタであって、フィルタエレメント素材内部に上端部が開口した中空の室(コア)を二組備えた構造を有し、一体焼結またはエレメントを構成する部材を接着剤等によって張り合わせて作製することによって得られたエレメント素材である。
【0030】
上述の方法は、少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造を有するフィルタエレメントに粉塵捕集層を形成するために適用することができる。
ポケット状構造またはバッグ状構造の特徴は、少なくとも1つの壁に囲まれた内部空間を形成することである。
少なくとも1つの壁は、物質を内部空間に入れたり、物質を内部空間から取り出したりするために、外部からポケット状構造またはバッグ状構造の内部空間にアクセスできるようにするための開口を有する。
【0031】
少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造は、少なくとも1つの清浄流体出口開口を有し、フィルタエレメントの少なくとも1つの壁によって囲まれた内部空間を画定するポケットまたはバッグの形状を有してもよい。
すなわち、1つまたは複数の清浄流体排出開口部を除いて、ポケット状構造またはバッグ状構造の内部空間は、少なくとも1つのフィルタエレメント壁によって囲まれる。
このようなフィルタエレメントは、ポケット状構造又はバッグ状構造の内部空間に対向する内面を有する。
このようなフィルタエレメントはまた、ポケット状構造またはバッグ状構造の内側空間と反対方向に対向する外面を有する。
このようなフィルタエレメントを利用する場合、本願明細書に記載した粉塵捕集層を形成する方法は、ポケット状構造体またはバッグ状構造体の外面に粉塵捕集層を形成することを含むであろう。
これによれば、粉塵捕集層を形成する粒子は、内部空間の反対方向に対向するフィルタエレメントの少なくとも一方の壁の表面に付着される。
重要なことは、粉塵捕集層が、ポケット状構造またはバッグ状構造を備えた構成のフィルタエレメントにも適用されることである。
つまり、組み立て前にポケット状構造やバッグ状構造のフィルタエレメントを形成すれば、別々に粉塵捕集層が積層された2つ以上のフィルタエレメント部品を組み立ててフィルタエレメントを形成する必要はない。
むしろ、本願明細書に記載された方法によると、粉塵捕集層は、ポケット状構造体またはバッグ状構造体の外側に、より正確に、すでにポケット状構造体またはバッグ状構造体を形成している形態で、フィルタエレメントに塗布することができる。
【0032】
付加的または代替的に、少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造は、少なくとも1つの原流体入口開口を残しつつ、フィルタエレメントの少なくとも1つの壁によって閉鎖された内部空間を規定するポケットまたはバッグの形状であってもよい。
言い換えると、1つまたは複数の原流体入口開口部を除いて、ポケット状構造またはバッグ状構造の内部空間は、少なくとも1つのフィルタエレメント壁によって囲まれる。
このようなフィルタエレメントは、ポケット状構造またはバッグ状構造の内部空間に対向する内面を有する。
このようなフィルタエレメントはまた、ポケット状構造またはバッグ状構造の内部空間の反対方向に対向する外面を有する。
このようなフィルタエレメントを利用する場合には、ここで説明する粉塵捕集層を形成する方法は、ポケット状構造体またはバッグ状構造体の内側に粉塵捕集層を形成することを含むであろう。
このように、粉塵捕集層を形成する粒子は、内部空間に対向するフィルタエレメントの少なくとも一つの壁の表面に付着される。
重要なことは、粉塵捕集層は、既にポケット状構造またはバッグ状構造を有する構造のフィルタエレメントに適用することができることである。
なお、組み立てる前に、ポケット状の構造やバッグ状の構造体を有するフィルタエレメントを形成しておけば、別々に粉塵捕集層を備えた2つ以上のフィルタエレメントの構成要素を組み立てて、フィルタエレメントを形成する必要はない。
むしろ、本願明細書に記載された方法によれば、粉塵捕集層を、ポケット状構造又はバッグ状構造の内側に、より正確に、既にポケット状構造又はバッグ状構造を形成している形態で、フィルタエレメント素材表面に形成することができる。
【0033】
さらに、上述の方法は、ラメラ構造を画定する少なくとも1つのフィルタエレメント壁を形成したフィルタエレメント素材表面に粉塵捕集層を形成するために適用されてもよい。
ラメラ構造は、少なくとも1つのフィルタエレメント壁の対向する2つの側面の少なくとも1つに、凸部および凹部の幾何学的構成を備える。
特に、ラメラ構造を規定する少なくとも1つのフィルタエレメント壁は、ポケット状構造またはバッグ状構造を規定する少なくとも1つのフィルタエレメント壁と同じフィルタエレメント壁であってもよい。
【0034】
特に、幾何学的構成は、フィルタエレメント壁の両側に設けられた複数の凸部及び凹部によって構成することができる。
【0035】
特に、少なくとも1つのフィルタエレメント壁の凸部および凹部は、幾何学的形状構成の少なくとも1つのアンダーカット部分を形成するように成形されてもよい。
従来の吹付けやブラッシングなどの塗布方法では、アンダーカット部を形成するフィルタ素子壁の表面に塗膜としての粉塵捕集層を十分に均一に塗布することができないため、アンダーカットされた細孔では、塗布されていない部分や塗布効率の悪い部分が残存することが避けられない。
2種類以上の微粒子を粉末状でフィルタエレメントに付着させ、その後に2種類以上の微粒子のうち1つを溶融させるだけで十分に均一な厚さの集塵材を得ることができるという特殊な技術によれば、アンダーカットが形成された領域においても、粉塵捕集層を形成することができる。
【0036】
本明細書に記載されるようなフィルタエレメントを製造する方法の特定の実施例では、ラメラ構造の幾何学的構成は、螺旋構造である。
螺旋構造を適用することにより、所与の体積のフィルタエレメントを、フィルタリングするために利用可能な表面積が大きなラメラ構造とすることができる。
例えば、ポケット状又はバッグ状の構造体を備えたフィルタエレメントの場合、フィルタエレメント壁に囲まれた内部空間の単位当たりのフィルタ面の面積は特に大きくなるであろう。
これは、フィルタエレメントによって必要とされる体積当たりのフィルタ効率を増加させる。
【0037】
特に、フィルタエレメントは、円筒形、円錐形、または他の回転対称形状を有する少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造で形成することができる。
円筒形または円錐形の形状を有するポケット状構造またはバッグ状構造は、円筒または円錐の縦軸に対して回転対称である。
円筒形または円錐形の形状の代わりに、縦軸に対して同一の回転対称性を有する他の形状を使用してもよい。
フィルタエレメントの形状は、少なくとも1つのフィルタエレメント壁によって画定される。
少なくとも1つのフィルタエレメント壁の凸部および凹部は、ラメラ構造の幾何学的構成を形成するように成形されている。
特に、螺旋幾何学的形状を有するラメラ構造体は、円筒形又は円錐形の形状を有するポケット状構造体又はバッグ状構造体によく適している。
【0038】
特に好ましい実施例では、本明細書に記載したフィルタエレメントの製造方法を用いることにより、粉塵捕集層のマトリクス材を構成する2種類以上の微粒子のうちの1つを、付着させるフィルタエレメント材料と同一の樹脂材料を用いることができる。
このようにして、フィルタエレメントの本体を形成するために使用される材料(例えば、焼結ポリエチレン材料)もまた、粉塵捕集層のマトリックスを形成する、実質的に均一なフィルタエレメントを作製することができる。
この文脈において、用語「粉塵捕集層のマトリックス」は、マトリックスに添加される添加剤または充填剤のような他の材料ではなく、粉塵捕集層の構造を構成する材料または微粒子を指す。
【0039】
一例では、粉塵捕集層のマトリクス材を構成する2種類の微粒子のうちの1つがポリエチレンであってもよい。
【0040】
特に、本明細書に記載されるフィルタエレメントの製造方法において、粉塵捕集層の形成は、バインダーや溶剤を使用することなく行うことができる。
特に、本明細書で説明するフィルタエレメントの製造方法は、ドライコーティング法またはパウダーコーティング法といえる。
すなわち、粉塵捕集層の1種以上の微粒子を、粉末形態でフィルタエレメント素材表面に付着させるが、1種以上の微粒子の混合物として予め混合された形態で付着させても、異なる種類の微粒子を順次付着させてもよい。
このプロセスでは、液体のバインダーまたは溶媒は使用されていない。
むしろ、1種以上の微粒子のうち少なくとも1種は、微粒子を粉末状にしてフィルタエレメント素材表面に付着させた後、加熱によって溶融する。
これにより、従来の液体ベースのコーティング方法よりもはるかに良好に、粉塵捕集層の特性を調整することができる。
特に、本明細書に記載の流動床技術の使用と組み合わせて、粉末状の1種類以上の微粒子をフィルタエレメントの表面に塗布することにより、アンダーカット部分のような複雑な幾何学的形状を含む層状構造さえも、高品質でコーティングすることが可能になる。
また、本願明細書に記載したフィルタエレメントの製造方法においては、粉塵捕集層の形成にパーフルオロ-アルコキシアルカン(PFA)を使用する必要はない。
したがって、具体的な実施例では、粉塵捕集層が形成される2種以上の微粒子はPFAを含まず、特に2種以上の微粒子はポリテトラフルオロエチレンを含まない。
本明細書に記載されるように、粉塵捕集層をフィルタエレメント素材表面に形成および固着させるバインダーまたは溶媒を含まない方法を使用することによって、完全にPFAを含まないフィルタエレメントを得ることができ、このフィルタエレメントは、圧力パルスによって、長期間にわたり十分効果的に洗浄することができる。
本発明者らが見出したように、圧力洗浄サイクル後に本発明に基づくフィルタエレメントを通過する流体の圧力損失は、最初は比較的低く、フィルタエレメントの使用寿命を延ばした後でも、かなり低く安定したレベルに維持される。
【0041】
本発明は、上述したフィルタエレメントの製造方法に加えて、本方法により製造されるフィルタエレメントに関する。
【発明の効果】
【0042】
本発明の技術により形成された粉塵捕集層は、従前の技術と比較してフィルタエレメント素材と強固に融着していることから、エアブローや高圧の流水による洗浄が可能となるだけでなく、粉塵捕集層を構成する微粒子の集塵粉へのコンタミネーションを防止することが出来る。
【0043】
フィルタエレメント素材の表面に粉塵捕集層を構成する微粒子として付着させる粒子径を調整することによって、粉塵捕集層に於ける気孔の大きさを調整することが可能である。また、付着させる微粒子に予め他の粒子を混合しておくことで、粉塵捕集層の性能を変化させることも可能である。
【0044】
このことにより、本発明により、ユーザーに対し、低圧損等の要求性能に必要十分な細孔径を有するフィルタの提供が可能となる。更に、集塵粉へのコンタミネーションを防止し、今までに無い用途の開拓や集塵機保守の効率化および生産性の向上に資することが期待できる。
【0045】
上述の方法は、少なくとも1つのポケット状構造またはバッグ状構造を有するフィルタエレメント素材表面に粉塵捕集層を形成するために適用され得る。
粉塵捕集層は、既にポケット状構造またはバッグ状構造を形成している構成で、フィルタエレメント素材表面に形成することができる。
この粉塵捕集層は、既にポケット状構造体又はバッグ状構造体を形成している形態で、ポケット状構造体又はバッグ状構造体の外側、ポケット状構造体又はバッグ状構造体の内側、又はその両方に、形成することができる。
本発明の方法の特定の利点は、表面がアンダーカットを形成する表面形状を備える場合であっても、十分に均一な粉塵捕集層をフィルタエレメント素材表面に形成することができることである。
さらに、フィルタエレメント素材を形成するために使用されるのと同じ材料、例えばポリエチレンを、粉塵捕集層のマトリックスを形成するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】(1)一般的な集塵機の外観図、(2)フィルタエレメント(シンターラメラー)の外観図、及び(3)そのP-P断面の斜視図
【
図7】実機サイズのフィルタエレメントの負荷試験装置
【
図8】実機サイズのフィルタエレメントの圧力損失の時間的経過を、従来例による実験結果とともに示したグラフ
【
図9】さらなる実施形態による、粉塵捕集層をポケット形状またはバック形状のフィルタエレメント素材の外側に形成するための処理函体の概略図を示す。
【
図10】
図9の処理函体を用いて製造されたフィルタエレメントの概略断面図を示す。
【
図11】さらなる実施形態による、粉塵捕集層をポケット形状またはバッグ形状のフィルタエレメント素材の内側に形成するための処理函体の概略図を示す。
【
図12】
図11の処理函体を用いて製造されたフィルタエレメントの概略断面図を示す。
【
図13】さらなる実施形態による、粉塵捕集層をポケット形状またはバック形状のフィルタエレメント素材の内側に形成するための処理函体の概略図を示す。
【
図14】本発明の実施形態のうちのいずれかによる、粉塵捕集層がその内側または外側に形成され得るフィルタエレメント素材の異なる図を示す。
【
図15】本発明の実施形態のいずれかによる、粉塵捕集層がその内側または外側に形成され得る、さらなるフィルタエレメント素材の異なる図を示す。
【
図16】実施例9のフィルタエレメントの圧力損失の時間的経過を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、本発明の実施例及び比較例で使用したフィルタエレメントは、2コア一体型エレメントである。2コア一体型エレメントは、フィルタエレメント内部に中空の室を二組備えた構造のスケールアップ試験用フィルタエレメントである。2コア一体型エレメントは、一体焼結することによって得られたエレメント素材に本発明の粉塵捕集層を形成して得られる。
【実施例0048】
2コアエレメントの素材を
図3の吸引用治具に設置し、底部にLLDPE(直鎖低分子量PE、D50=45μm):HDPE(高密度PE、D50=10μm):PTFE(D50=3.7μm)=5:4:1の重量比で混合した混合粒子5gを置き、前記治具に対して配管によって連通して配設されたリングブロワを用いて、濾過風速2.0m/minで吸引しながら、治具下部の圧縮空気吹き出し口92からコンプレッサエアを吹き込み、前記混合粒子を舞い上がらせることにより、前記エレメント素材の表面の気孔に十分行き渡らせた。ギヤオーブン(ACR45A、東洋精機製作所製)を用いて雰囲気温度130℃で30min加温融着し、粉塵捕集層を備えた2コアフィルタエレメント(濾過面積0.16m
2)を作製した。
前記で得られた2コアエレメントを2コアエレメント用ラボ集塵負荷試験装置(
図6日鉄鉱業製)に取り付け、実験集塵粉として、排煙脱硫用タンカル粉(平均粒子径:12μm、日鉄鉱業製)を用いて、濾過風速1m/min(処理風量0.16m
3/min)、粉塵フィード濃度(10g/m
3)の条件下で集塵負荷確認試験を5分間行った。集塵負荷確認試験に於いては、試験開始と終了時の圧力損失(kPa)および排気含塵濃度(LD-3K2、柴田科学製)について評価を行った。
得られた結果を、特許文献3の実施例8で使用された低分子量ポリエチレン紛(三井化学ファイン社製、ハイワックスHP10A)の分級品(D50=24μm)を使用して作成したフィルタエレメントで同様な実験を行った結果とともに表に示す。
圧力損失は特許文献3(実施例8)よりもわずかに高いものの、排気含塵濃度は大幅に低い結果となった。