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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035811
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】蒸気滅菌システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/07 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A61L2/07
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137801
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】22193627
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523327226
【氏名又は名称】ゲティンゲ ステリライゼイション アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベンクト ストーベリ
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィル ハラムバシッチ
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB05
4C058CC05
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD12
(57)【要約】
【課題】蒸気滅菌システムの制御方法の提供。
【解決手段】本開示は、液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法に関する。水は、容器からポンプで汲み出され、水に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、汲み出された水は、ボイラの上流に配置された脱気フィルタを通される。水が脱気フィルタからボイラに流れることを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、脱気フィルタを通して水は再循環される。脱気フィルタを通して水を再循環させた後、水の少なくとも一部がボイラに送られる。本開示はまた、方法のステップを実行するための制御ユニット、及びこのような制御ユニットを備えた蒸気滅菌システムに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法であって、
容器から水を汲み出して、前記水に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、前記汲み出した水を前記ボイラの上流に配置された脱気フィルタに通すことと、
前記水を前記脱気フィルタに通した後、水が前記脱気フィルタから前記ボイラに流れるのを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させることと、
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させた後、前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送ることと、
を含む方法。
【請求項2】
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップは、
前記水の前記少なくとも一部が前記ボイラに送られる前に前記脱気フィルタを通る総水量が、前記容器から水を汲み出す前記ステップを行う前に前記容器内に最初に存在していた水量の少なくとも2倍となるように、前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップは、(i)少なくとも最小期間T1、前記脱気フィルタを通して前記水の循環が行われたこと、または(ii)少なくとも最小サイクル数、前記脱気フィルタを通して前記水の循環が完了したこと、のいずれかを特定するまで、続けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ボイラ内の前記液体水位を監視することと、
前記ボイラ内の前記液体水位が所定水位に達した、またはそれを下回った時、前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップから、前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送る前記ステップへと進むことと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定期間T2内に、前記ボイラ内の前記水位が前記所定水位に達した、またはそれを下回ったことを特定することと、
前記ボイラ内の前記所定水位に到達し、前記容器からの脱気水を前記ボイラに送って前記ボイラを再充填するまで、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、
真水が供給されることを阻止する前記ステップの後、前記容器に真水を供給することと、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脱気フィルタを通して水が再循環される間、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、その後、
前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送ることと、その後、
前記容器に真水を供給することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記容器内の前記水位を監視することと、
前記容器内の現在の前記水位に基づいて、前記容器への真水の前記供給を制御することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記容器内の現在の前記水位に基づいて、前記容器への真水の前記供給を制御する前記ステップは、
前記水位が所定水位を下回った時、前記容器に真水を供給すること、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも第1の期間T3は、前記ボイラに脱気水を供給しないという判断に応じて、前記容器に真水を供給することと、
第2の期間T4内に、前記ボイラに水を供給する必要があるという判断に応じて、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ボイラに前記水の少なくとも一部を送る前記ステップの後、前記ボイラに水が送られることを阻止することと、
前記容器に真水を供給することと、その後、
前記脱気フィルタから前記ボイラに水が流れることを阻止しながら、水を汲み出して前記脱気フィルタを通して再循環させる前記ステップを繰り返すことと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送る前記ステップの後、前記ボイラを作動させて蒸気を生成することと、
前記容器内の前記水位を監視することと、
前記容器内の前記水位が所定水位以上である限り、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、
前記ボイラを作動させて蒸気を生成する前記ステップの後、前記容器内の前記水位が前記所定水位以上である限り、前記水のさらなる一部または複数部を前記ボイラに送り、前記ボイラを作動させて蒸気を生成することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
真空タンクにより前記脱気フィルタに真空を適用して、前記脱気フィルタを通る水からNCGを引き出すこと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップは、前記脱気フィルタと気体連通している閉鎖可能容積内の圧力変化率が所定閾値を下回ると判定されるまで、継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法の前記ステップを実行するように構成された制御ユニットであって、
前記蒸気滅菌システムのポンプを制御することにより、前記容器からの水の前記汲み出しを制御することと、
前記蒸気滅菌システムの第1のバルブを制御して、前記脱気フィルタから前記ボイラに水が送られることを選択的に阻止または有効化することと、
任意で、前記蒸気滅菌システムのさらなるバルブを制御して、前記容器へ真水が供給されることを選択的に阻止または有効化することと、
を実行するように構成される制御ユニット。
【請求項15】
請求項14の制御ユニットを備え、さらにボイラ及び滅菌チャンバを備える、蒸気滅菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気滅菌システムを制御する方法に関する。本開示はまた、このような方法のステップを実行するように構成された制御ユニットに関する。本開示はさらに、このような制御ユニットを備えた蒸気滅菌システムに関する。蒸気滅菌システムは、例えば、病院の中央滅菌サービス部門(CSSD)で、使用済みの医療用具を処理するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
蒸気滅菌プロセスによる微生物の不活性化は、一定期間にわたる蒸気(湿熱)及び高温の存在を伴う。このような蒸気滅菌プロセス中、滅菌対象の用具は、当該期間、蒸気及びその凝縮液と接触しなければならない。しかし、このような蒸気滅菌プロセスでは、非凝縮性ガス(NCG)が蓄積し得、非凝縮性ガス(NCG)により、長いホースなどの管腔、繊維パッケージ、物体上の隙間への蒸気の完全な浸透が遮断及び妨害され得、よって、このような箇所において微生物の不活性化能力が損なわれ得る、という課題が存在する。効率的な蒸気滅菌プロセスを達成するには、非凝縮性ガス(NCG)を除去することが望ましい。
【0003】
NCGは主に、大気から湖、川、及び井戸に吸収された溶存O、N、及びCOである。春及び秋の季節中に温度が変化する時、異なる温度及び湖の撹拌の増加により、NCGレベルの季節的変動が生じ得る。
【0004】
滅菌プロセスのために水からNCGを除去する一般的な方法は、高温井脱気である。これは、供給水を高温に保つ加熱タンクの使用を伴う。温度が上昇すると、溶存ガスの飽和度は低下する。しかし、水が加熱されてガスが流れ出るのに十分な時間が与えられない場合、または温度が低すぎる場合、脱気はうまく機能しない。さらに、ポンプの損傷を避けるために、またはともかく水の汲み出しを可能にするためにも、温度を沸点より十分に低く保つ必要がある。
【0005】
上記を考慮すると、蒸気滅菌プロセスで使用される水の脱気に関しては、まだ改善の余地があることが、理解されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に軽減する方法及びシステムを提供することである。この目的、及び下記で明らかになる他の目的は、請求項1に定義される方法により達成される。いくつかの非限定的かつ例示的な実施形態が、従属請求項に提示される。
【0007】
水をボイラに供給する前に水中のNCG含有量を大幅に削減できるように、水を脱気フィルタに通し、次に、脱気フィルタを通して水を再循環させるべきであると、出願人らは判断した。
【0008】
したがって、本発明概念の少なくとも一態様によれば、液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法が提供され、方法は、
‐容器から水を汲み出して、水に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、汲み出した水をボイラの上流に配置された脱気フィルタに通すことと、
‐水を脱気フィルタに通した後、水が脱気フィルタからボイラに流れるのを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、脱気フィルタを通して水を再循環させることと、
‐脱気フィルタを通して水を再循環させた後、水の少なくとも一部をボイラに送ることと、
を含む。
【0009】
脱気フィルタを通して水を再循環させることで、NCG含有量は徐々に減少し、これにより、NCG含有量が低いまたは実質的にNCG含有量のない水をボイラに送って、蒸気滅菌器用の改善された蒸気を生成することが可能となる。
【0010】
蒸気滅菌システムは、脱気フィルタの下流かつボイラの上流に配置されたバルブを適切に備え得る。方法の少なくともいくつかの例示的実施形態では、水の少なくとも一部をボイラに送る当該ステップは、当該バルブを開くことを含み得る。言い換えると、脱気フィルタを通して水を再循環させている間は、水が時期尚早に(すなわち十分な量のNCGが除去される前に)ボイラに流れるのを阻止するために、フィルタとボイラとの間の供給路に配置されたバルブは、閉じるように制御され得る。バルブの開閉は、蒸気滅菌システムの制御ユニットにより、戦略的に制御され得る。このような制御ユニットは、さらなる利点を提供し、本開示の後半でより詳しく論述される。
【0011】
フィルタとボイラとの間の供給路における当該バルブは、便宜上、第1のバルブと称され得る。蒸気滅菌システムは、他のバルブも有し得る。例えば、水を再循環させるために、脱気フィルタの下流側の点から容器まで延在する再循環路が、適切に設けられる。このような再循環路には、バルブが設けられ得、これは便宜上、第2のバルブと称され得る。脱気フィルタを通した水の再循環を可能にするために、第1のバルブが閉じられている時に、第2のバルブは開くように制御され得る。第1のバルブを開いて水の少なくとも一部をボイラに送ってもよい時が来ると、第2のバルブは閉じられ得る。しかし、第2のバルブを閉じる必要はないことを理解されたい。実際、水をボイラに送ると同時に、多少の再循環が許可され得る。例えば、制御可能な第2のバルブの代わりに、再循環のために常に開いた状態の小さなオリフィスが再循環路に設けられ得る。上記から、方法の少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、水の少なくとも一部をボイラに送るステップと同時に、脱気フィルタを通った水の少量を再循環させ続けることを含み得ることを、理解されたい。
【0012】
水が脱気フィルタからボイラに流れるのを阻止しながら、脱気フィルタを通して水を再循環させるという概念は、様々な方法で実施され得ることを理解されたい。例えば、いくつかの例示的実施形態では、別個のポンプの有無にかかわらず、比較的短い再循環ループが考えられ得、その場合、脱気フィルタを出た水は、容器を通ることなくフィルタに戻され得る。言い換えると、少なくともいくつかの例示的実施形態では、水の再循環は、容器を迂回し得る。しかし、上記で既に示されたように、少なくともいくつかの例示的実施形態では、容器を介して有利に再循環が実行され得る。したがって、少なくともいくつかの例示的実施形態によれば、脱気フィルタを通して水を再循環させるステップは、水を容器に戻して、次にそれを再び脱気フィルタへ汲み出すことを含み得る。
【0013】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップは、
‐水の当該少なくとも一部がボイラに送られる前に脱気フィルタを通る総水量が、容器から水を汲み出す当該ステップを行う前に容器内に最初に存在していた水量の少なくとも2倍となるように、フィルタを通して水を再循環させること、
を含む。したがって、容器内のすべての水が平均して少なくとも2回脱気フィルタを通るように、水は「複数回」適切に再循環される。水が再循環される回数が増えるほど、より多くの量のNCGが水から除去される。もちろん、再循環の実際の制御は、例えば流量計を使用して、水量に基づいて行われ得る。しかし、適切には、再循環は時間ベースであり得、すなわち一定期間の再循環が行われ、これは、一定量の水が脱気フィルタを通ることに対応し得る。
【0014】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、脱気フィルタを通して水を再循環させるステップは、(i)少なくとも最小期間T1、脱気フィルタを通して水の循環が行われたこと、または(ii)少なくとも最小サイクル数、脱気フィルタを通して水の循環が完了したこと、のいずれかを特定するまで、続けられる。最小期間T1は、例えば、経験的に、またはルックアップテーブルを通じて決定され得、または既知もしくは推定のNCG含有量、流速、水量などに基づいて計算され得る。水をボイラに送ることが許可される前に、循環水中のNCGの満足な削減が達成されるように、適切に最小期間T1が選択される。時間が許すなら、及びボイラに水を供給する緊急な要求または保留中の要求がない場合、NCG含有量をさらに削減するために、当該最小期間T1よりも長い期間、再循環が適切に継続され得る。再循環の制御が時間ベースではなく、代わりに最小サイクル数を完了する必要がある場合には、流量計を使用して脱気フィルタを通った水量を測定することにより、再循環の制御は実施され得る。したがって、1サイクルは、容器から水を汲み出し始める前に容器内に最初に存在していた水量に相当する量の水を、脱気フィルタに通らせることに、適切に対応し得る。いくつかの実施形態では、水がボイラに送られる前に脱気フィルタを通る水量は、容器内に最初に存在する水量の少なくとも2倍、または脱気循環ループ内に最初に存在する水量の少なくとも2倍である。
【0015】
再循環の継続を制御するための上記の時間ベース及びサイクルベースの代替形態に加えて、別の考えられる代替形態は、圧力ベースの制御である。このような圧力ベースの制御は、脱気フィルタからNCGを引き出すために使用される真空タンクと関連して、適切に実施され得る。これについては、下記にさらに詳しく説明される。
【0016】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、真空タンクにより脱気フィルタに真空を適用して、脱気フィルタを通る水からNCGを引き出すことを含む。
【0017】
脱気フィルタに真空を適用することにより、脱気フィルタのガス除去効率が向上する。真空タンクは、例えば、滅菌システムの中央真空構造に接続されてもよく、または代わりに別個の排出器もしくは追加の真空ポンプに接続されてもよい。
【0018】
上記に示されたように、再循環継続の圧力ベース制御は、適切に実施され得る。したがって、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、脱気フィルタを通して水を再循環させるステップは、真空タンク内の圧力変化率が所定閾値を下回ると判定されるまで、継続される。
【0019】
真空タンクには通常、圧力センサが設けられるため、このような圧力センサの使用は、水の再循環中にガス含有量の変化を監視するのに便利であり得る。具体的には、脱気プロセスの開始時、水は最初、NCG含有量が高く、脱気(再循環)プロセスの初期は、タンク内のかなり急な圧力上昇が予想されることを、理解されたい。しかし、水が完全に脱気された場合には、再循環を続けても圧力上昇には至らないはずである。したがって、制御ユニットは、圧力変化率を監視することにより、再循環水が十分に脱気された時を特定し得る。
【0020】
前述されたように真空タンク内の圧力変化率を測定することは便利であり得るが、このような圧力変化率は、代わりにまたは追加で、他の場所で測定されてもよいことを、理解されたい。実際に、真空タンクまたは真空を作り出す何らかの他のデバイスを使用するかどうかに関係なく、圧力変化率は、脱気フィルタとガス連通するように配置することができる任意の適切な閉鎖可能容積内で、測定され得る。したがって、一般的には、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、脱気フィルタを通して水を再循環させるステップは、脱気フィルタと流体連通している閉鎖可能容積内の圧力変化率が所定閾値を下回ると判定されるまで、継続される。
【0021】
前述の真空タンクであっても、別の容積であっても、脱気フィルタと流体連通するこのような任意の容積内に、圧力センサが設けられ得る。容積をフィルタの乾燥側に流体連結し、その後、測定中に容積を閉鎖することにより、圧力センサから圧力値が取得され得る。ガス分子が脱気フィルタを通過すると、容積内の圧力が上昇する。容積内に既に圧力がある場合(例えば真空ではない、または真空度が低い場合)、ガス分子の輸送はまったくない、またはほとんどない。
【0022】
上記の時間ベース、サイクルベース、及び圧力ベースの制御戦略は、考えられる様々な代替形態として提示されたが、これらの組み合わせも考えられることを、理解されたい。例えば、別の可能性は、圧力変化率と最小期間T1との組み合わせに基づいて再循環を制御することであり、これにより、さらに堅牢な制御戦略が得られる。
【0023】
ここで、真空タンクの使用に関するさらなるある論述が続く。具体的には、このような真空タンクに関連して、様々な試験が実行され得る。1つのこのような試験は、もたらされた真空が満足に機能することを確認するための漏れ試験であり得る。もう1つのこのような試験は、性能試験である。
【0024】
したがって、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐脱気フィルタを通して水を再循環させた後であるが、水の当該少なくとも一部をボイラに送る前に、真空漏れ試験を実行すること、
を含み、当該真空漏れ試験は、
‐第1の継続期間中に、水を安定化させることと、その後、
‐第2の継続期間中に、真空タンク内の圧力を特定することと、その後、
‐第2の継続期間中の真空タンク内の任意の圧力上昇が、第1の所定圧力変化を下回る場合、漏れ試験に合格したと判定することと、
により、実行される。
【0025】
さらに、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐漏れ試験に合格したと判定すると、水の当該少なくとも一部をボイラに送った後、または送っている間に、性能試験を実行すること、
を含み、性能試験は、
‐事前に脱気されていない真水を容器に供給することと、その後、
‐真空タンク内の開始圧力を記録することと、その後、
‐脱気フィルタを通して、供給された真水を再循環させることと、その後、
‐真空タンク内の停止圧力を記録することと、その後、
‐停止圧力と開始圧力との差が、第2の所定圧力変化を超える場合、脱気性能が満足できるものであると判定することと、
により、実行される。
【0026】
上記の漏れ試験及び性能試験は、誤った制御及び脱気のリスクを軽減するのに、明らかに有益である。漏れ試験及び/または性能試験は、別個のメンテナンスサイクルの一部を形成してもよく、または生産サイクルに統合されてもよい。いかなる漏れも、脱気をより困難にし、さらなる真空サポートを必要とし、結果、上記の圧力ベース再循環制御は効果のないものになり得る。これまで脱気されていない水の最初の脱気中に、真空タンク内の圧力が上昇しないことは、フィルタが故障、摩耗、または目詰まりを起こし、フィルタを交換する必要があることを、示し得る。
【0027】
前述の制御戦略(時間ベース、水量ベース、及び/または圧力ベース)の代替形態または補足形態として、別の制御戦略は、容器内の実際のNCG含有量を監視するものであり得る。したがって、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐容器内のNCG含有量を監視することと、
‐NCG含有量が所定閾値以下に減少した時、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップから、水の少なくとも一部をボイラに送る当該ステップへと進むことと、
を含む。したがって、ボイラに対する水(NCG含有量が高い水)の早期充填を回避するためのもう1つの方法が提供される。容器内の水のNCG含有量を監視することは、例えば、容器から脱気フィルタまでの流出路間で総溶存ガス(TDG)現場センサを使用することにより、達成され得る。このようなTDGセンサは、循環ポンプと脱気フィルタとの間の流出路に、適切に配置され得る。別の可能性は、単一ガスセンサ、例えば酸素ガス(O)センサを使用することである。真水では、O、N、COの量の間には特定の関係があることが予想され得るため、総NCG含有量の推定/計算には、これらのガスのうちの1つだけの量を測定するセンサで、十分であり得る。
【0028】
上記で説明されたように、水がボイラに時期尚早に送られるリスクを軽減するために、具体的にはNCG含有量が高すぎる水でボイラを充填するリスクを軽減するために、様々な制御戦略が存在し得る。しかし、ボイラに水を入れてもよい時を判断するために、他の検討事項が存在し得る。これは少なくとも1つの例示的実施形態に反映されており、当該少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐ボイラ内の液体水位を監視することと、
‐ボイラ内の液体水位が所定水位に達した、またはそれを下回った時、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップから、水の少なくとも一部をボイラに送る当該ステップへと進むことと、
を含む。したがって、ボイラ内の液体水位を監視することにより、制御ユニットは、ボイラの下流の滅菌器内で滅菌対象の物品を今後滅菌するための蒸気生成に、十分な水が残っているかどうかを判断することができる。よって、ボイラには、水位センサを含む水位制御システムが適切に設けられ得、水位センサは、例えば加熱素子によりボイラ内の水が蒸気に変わった結果により、ボイラ内の水位が低くなった時を検出する。
【0029】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐所定期間T2内に、ボイラ内の水位が当該所定水位に達した、またはそれを下回ったことを特定することと、
‐ボイラ内の当該所定水位に到達し、容器からの脱気水をボイラに送ってボイラを再充填するまで、容器に真水が供給されることを阻止することと、
‐真水が供給されることを阻止する当該ステップの後、容器に真水を供給することと、
を含む。容器に真水を供給することは、容器内に既に存在する任意の脱気水と混合した場合、NCG含有量の増加を生じる。したがって、近い将来ボイラを充填する必要がある場合は、容器に真水が供給されることを阻止することが有利である。所定期間T2は、現在の状況に基づいて適切に計算され得、場合により変化し得る。所定期間T2が短い場合、これはボイラの再充填がすぐに必要であることを示し得、ボイラの再充填が完了するまで、容器に真水を供給することを一時停止すること、したがって、容器内に既に存在する脱気水のみを使用することが、有利である。これは、通常ボイラに送られる再充填水量よりも容器の容積が大幅に大きい場合に特に関係し得、容器内の水は、複数のバッチの再充填及び蒸気生成動作に使用することができる。逆に、所定期間T2が比較的長い場合は、ボイラの再充填が要求されることが予想されるまでに、容器を真水で充填し、脱気フィルタを通して水を再循環させて、NCG含有量を十分に削減するのに、十分な時間があり得ることを、理解されたい。例えば、時間ベースの制御を使用する場合、容器を充填するのにかかる時間と、脱気フィルタを通して水を再循環させる最小期間T1との合計よりも、期間T2が長い場合には、容器に真水が適切に供給され得る。当然のことながら、供給された量の真水を期間T2内に適時に脱気することができるように、制御ユニットは、期間T2及び期間T1及び真水供給速度に基づいて、容器に供給してもよい真水の量を計算するように構成され得る(完全に充填するには時間がかかりすぎる場合)。
【0030】
容器への真水の供給は、真水導管から容器へ直接行われてもよいことを、理解されたい。しかし、別の考えられる選択肢は、脱気構造において容器の上流または下流に真水を追加することである。例えば、真水は、脱気フィルタの下流点と容器とを相互接続する上記の再循環路に追加されてもよく、または真水は、容器の出口と脱気フィルタとを相互接続する流出路に追加されてもよい。ポンプが流出路に設けられている場合には、真水は、ポンプの上流または下流にある流出路に追加され得る。したがって、脱気構造内の水の再循環路において、脱気循環中に水が容器に到達する任意の適切な場所に、真水を入れることにより、真水が容器に供給され得ることを、理解されたい。
【0031】
容器に真水が供給されることを阻止する上記のタイミングと同様に、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐所定期間内にボイラが追加の水を必要とするか、具体的には、ボイラ内の水位と、蒸気滅菌システムのプロセス段階とのうちの少なくとも1つに基づいて、判断することと、
‐所定期間内にボイラが追加の水を必要とする場合、容器に真水が供給されることを阻止することと、
を含む。所定期間は、例えば、前述の所定期間T2に対応し得る。
【0032】
容器への真水の供給のタイミングに関する発案は、以下にも反映される。したがって、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、さらに、
‐脱気フィルタを通して水が再循環される間、容器に真水が供給されることを阻止することと、その後、
‐当該水の少なくとも一部をボイラに送ることと、その後、
‐容器に真水を供給することと、
を含む。後でボイラに送られる水量とほぼ同じ量の水で容器を充填する場合、新たなバッチの水がボイラ内で蒸発されるごとに、上記のステップが適切に繰り返され得る。
【0033】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐容器内の水位を監視することと、
‐容器内の現在の水位に基づいて、容器への真水の供給を制御することと、
を含む。具体的には、容器への真水の供給を制御することは、容器内の現在の水位が、蒸気生成器に供給する次のバッチの水に十分であると予想されるか否かに基づく。容器内の水位を監視することにより、不必要な希釈が回避され得る。制御ユニットは、現在の水位が、ボイラにおける別のバッチの蒸気生成に十分であるかを判断するように適切に構成され得、十分である場合には、容器への真水の供給は阻止され得る。言い換えると、真水は容器内のNCG含有量を増加させ、さらに脱気フィルタを通して水を循環させる必要があるため、真水を容器に供給する前に、容器内で利用可能な既に脱気された水を利用する方が良くあり得る。
【0034】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、容器内の現在の水位に基づいて容器への真水の供給を制御する当該ステップは、
‐水位が所定水位を下回った時、容器に真水を供給すること、
を含む。前述から理解されるように、水位が低い時に容器へ水を供給することは、溶存ガスレベルの上昇を抑えるため、有利である。
【0035】
容器に真水が供給されることを阻止することは、さらなるバルブ、開閉可能な容器充填バルブにより、適切に達成され得る。このような容器充填バルブは、水位センサ入力(例えば容器内の水位を監視する1つ以上のセンサからの入力)に基づいて、制御ユニットにより制御され得る。しかし、少なくともいくつかの代替的かつ例示的な実施形態では、容器には、容器充填バルブ及び水位センサの代わりに、フロートバルブが設けられ得る。
【0036】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、さらに、
‐少なくとも第1の期間T3は、ボイラに脱気水を供給しないという判断に応じて、容器に真水を供給することと、
‐第2の期間T4内に、ボイラに水を供給する必要があるという判断に応じて、容器に真水が供給されることを阻止することと、
のうちの少なくとも1つを含む。方法が前述の時間ベース制御及び所定期間T1も使用する実施形態では、再循環期間(T1)に加えて、容器に真水を実際に供給する間も時間が経過することから、当該第1の期間T3は、通常、期間T1よりも長くなるはずである。しかし、少なくともいくつかの例示的実施形態では、当該第2の期間T4は、前述の所定期間T2、すなわち、水がボイラ内の所定水位以下に至る予測期間に、対応し得る。
【0037】
少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐ボイラに水の少なくとも一部を送る当該ステップの後、ボイラに水が送られることを阻止することと、
‐容器に真水を供給することと、その後、
‐脱気フィルタからボイラに水が流れることを阻止しながら、水を汲み出して脱気フィルタを通して再循環させる当該ステップを繰り返すことと、
を含む。言い換えると、この例示的実施形態によれば、真水供給の制御は、例えばボイラを充填した直後(ボイラを充填した後の短期間内)に、ボイラの充填完了/終了に基づくことが有利であり得る。
【0038】
他の例示的実施形態では、容器は、所定低水位及び所定高水位に関連付けられ得る。このような実施形態では、脱気によりNCGレベルが低くなったと想定される場合、現在の水位が当該所定低水位と当該所定高水位との間にある時は、通常、容器に真水を追加しない。代わりに、ボイラが脱気水を必要とし得る場合は、ボイラを脱気水で充填するために、容器内に既に存在する水が使用される。これは、容器内に脱気水がなくなるリスクがない限り、実行され得る。現在の水位が当該所定低水位以下に下がった時は、再び真水が容器に供給され得る。これにより、容器内のNCG含有量は増加し、新たな脱気/循環フェーズが開始される。これは、以下の例示的実施形態に少なくとも部分的に反映される。少なくとも1つの例示的実施形態によれば、方法は、
‐水の少なくとも一部をボイラに送る当該ステップの後、ボイラを作動させて蒸気を生成することと、
‐容器内の水位を監視することと、
‐容器内の水位が所定水位以上である限り、容器に真水が供給されることを阻止することと、
‐ボイラを作動させて蒸気を生成する当該ステップの後、容器内の水位が当該所定水位以上である限り、水のさらなる一部または複数部をボイラに送り、ボイラを作動させて蒸気を生成することと、
を含む。
【0039】
当該所定低水位という形で、容器に真水を供給するための明確な閾値を有することは、有利かつ便利であり得るが、制御ユニットは、他のシナリオも同様に処理するように適切に構成され得る。例えば、制御ユニットは、現在の水位が当該所定低水位まで下がっていない、すなわち、現在の水位がまだ所定低水位と所定高水位との間にあったとしても、水を供給してもよいと適切に判断し得る。しかし、これは、ボイラに水を送らなければならなくなるまでに、供給された真水を脱気するのに十分な時間があると、制御ユニットが判断した場合に、積極的に実行される。
【0040】
本開示の少なくとも別の態様によれば、前述の方法(それらのいずれの例示的実施形態も含む)のうちのいずれかの方法のステップを実行するように構成された制御ユニットが提供され、制御ユニットは、
‐蒸気滅菌システムのポンプを制御することにより、容器からの水の汲み出しを制御することと、
‐蒸気滅菌システムの第1のバルブを制御して、脱気フィルタからボイラに水が送られることを選択的に阻止または有効化することと、
‐任意で、蒸気滅菌システムのさらなるバルブを制御して、容器へ真水が供給されることを選択的に阻止または有効化することと、
を実行するように構成される。
【0041】
当該制御ユニットによりもたらされる利点は、これまで開示された方法(その例示的実施形態を含む)によりもたらされる利点と、主に類似する。
【0042】
制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、または別のプログラマブルデバイスを含み得る。制御ユニットは、付加的または代替的に、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイもしくはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、またはデジタル信号プロセッサを含み得る。制御ユニットが、上記のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはプログラマブルデジタル信号プロセッサなどのプログラマブルデバイスを含む場合、プロセッサはさらに、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードを含み得る。制御ユニットは、蒸気滅菌システムと使用するように構成され、本明細書に説明される方法のうちのいずれかを実行し制御するための電子命令が提供されることが、好ましい。
【0043】
本発明概念の少なくともさらに別の態様によれば、上記の態様(その任意の例示的実施形態を含む)による制御ユニットを備え、さらにボイラ及び滅菌チャンバを備えた蒸気滅菌システムが提供される。当該蒸気滅菌システムによりもたらされる利点は、これまで開示された制御ユニット及びこれまで開示された方法(その例示的実施形態を含む)によりもたらされる利点と、主に類似する。
【0044】
以下では、本開示のいくつかの付加的態様が提示される。
【0045】
態様1:
液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法であって、方法は、
‐容器から水を汲み出し、水がボイラに到達する前に水中に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、汲み出した水をボイラの上流に配置された脱気フィルタに通すことと、
‐容器内のNCG含有量及び/または水位を監視することと、
‐容器内の現在のNCG含有量及び/または現在の水位にそれぞれ基づいて、容器への真水の供給を制御することと、
を含む。
【0046】
態様2:
態様1に記載の方法であって、
‐NCG含有量が所定閾値以上である場合は、容器に真水を供給し、NCG含有量が所定閾値未満である場合は、真水が供給されることを阻止すること、及び/または
‐水位が所定水位を下回る場合は、容器に真水を供給し、水位が所定水位を上回る場合は、容器に真水が供給されることを阻止すること、
を含む。
【0047】
態様3:
態様1または2のいずれか1つに記載の方法であって、
‐水を脱気フィルタに通した後、水が脱気フィルタからボイラに流れるのを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、脱気フィルタを通して水を再循環させることと、
‐脱気フィルタを通して水を再循環させた後、水の少なくとも一部をボイラに送ることと、
を含む。
【0048】
態様4:
態様4に記載の方法であって、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップは、
‐水の当該少なくとも一部がボイラに送られる前に脱気フィルタを通る総水量が、容器から水を汲み出す当該ステップを行う前に容器内に最初に存在していた水量の少なくとも2倍となるように、フィルタを通して水を再循環させること、
を含む。
【0049】
態様5:
態様3~4のいずれか1つに記載の方法であって、
‐容器内のNCG含有量を監視することと、
‐NCG含有量が所定の第1の閾値以下に減少した時、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップから、水の少なくとも一部をボイラに送る当該ステップへと進むことと、
を含む。
【0050】
態様6:
態様3~5のいずれか1つに記載の方法であって、
‐ボイラ内の液体水位を監視することと、
‐ボイラ内の液体水位が所定水位に達した、またはそれを下回った時、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップから、水の少なくとも一部をボイラに送る当該ステップへと進むことと、
を含む。
【0051】
態様7:
態様6に記載の方法であって、
‐所定期間内に、ボイラ内の水位が当該所定水位に達した、またはそれを下回ったことを特定することと、
‐ボイラ内の当該所定水位に到達し、容器からの脱気水をボイラに送ってボイラを再充填するまで、容器に真水が供給されることを阻止することと、
‐容器に真水が供給されることを阻止する当該ステップの後、容器に真水を供給することと、
を含む。
【0052】
態様8:
態様3~7のいずれか1つに記載の方法であって、
‐ボイラに水を送る当該ステップの後、ボイラに水が送られることを阻止することと、
‐容器に真水を供給することと、
‐脱気フィルタからボイラに水が流れることを阻止しながら、水を汲み出して脱気フィルタを通して再循環させる当該ステップを繰り返すことと、
を含む。
【0053】
態様9:
態様1~8のいずれか1つに記載の方法であって、蒸気滅菌システムは、脱気フィルタの下流かつボイラの上流に配置されたバルブを備え、水の当該少なくとも一部をボイラに送ることは、当該バルブを開くことを含む。
【0054】
態様10:
態様3~9のいずれか1つに記載の方法であって、脱気フィルタを通して水を再循環させる当該ステップは、
‐水を容器に戻して、その後に再び脱気フィルタへ水を汲み出すこと、
を含む。
【0055】
態様11:
態様3~10のいずれか1つに記載の方法であって、ボイラに水を当該送ることと同時に、脱気フィルタを通った水の少量を再循環させ続けることを含む。
【0056】
態様12:
態様1~11のいずれか1つに記載の方法であって、
‐真空タンクにより脱気フィルタに真空を適用して、脱気フィルタを通る水からNCGを引き出すこと、
を含む。
【0057】
態様13:
態様3に従属する態様12の方法であって、脱気フィルタを通して水を再循環させるステップは、真空タンク内の圧力変化率が所定閾値を下回ると判定されるまで、継続される。
【0058】
態様14:
態様3~13のいずれか1つに記載の方法であって、脱気フィルタを通して水を再循環させるステップは、(i)少なくとも最小期間T1、脱気フィルタを通して水の循環が行われたこと、または(ii)少なくとも最小サイクル数、脱気フィルタを通して水の循環が完了したこと、のいずれかを特定するまで、続けられる。
【0059】
態様15:
態様1~14のいずれか1つに記載の方法のステップを実行するように構成された制御ユニットであって、制御ユニットは、
‐蒸気滅菌システムのポンプを制御することにより、容器からの水の汲み出しを制御することと、
‐任意で、蒸気滅菌システムの第1のバルブを制御して、脱気フィルタからボイラに水が送られることを選択的に阻止または有効化することと、
‐蒸気滅菌システムの第2のバルブを制御して、容器へ真水が供給されることを選択的に阻止または有効化することと、
を実行するように構成される。
【0060】
態様16:
蒸気滅菌システムは、態様15の制御ユニットを備え、さらにボイラ及び滅菌チャンバを備える。
【0061】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別途明確に定義されない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるものとする。「ある(a)/ある(an)/その(the)要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」へのすべての言及は、別途明記されない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも一実例を指すものとして、オープンに解釈されるものとする。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明記されない限り、開示される厳密な順序で実行される必要はない。本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び下記の説明を検討すると明らかになるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明概念の範囲から逸脱することなく、下記で説明される実施形態以外の実施形態を作成できることを認識する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法であって、
容器から水を汲み出して、前記水に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、前記汲み出した水を前記ボイラの上流に配置された脱気フィルタに通すことと、
前記水を前記脱気フィルタに通した後、水が前記脱気フィルタから前記ボイラに流れるのを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させることと、
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させた後、前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送ることと、
を含む方法。
(項目2)
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップは、
前記水の前記少なくとも一部が前記ボイラに送られる前に前記脱気フィルタを通る総水量が、前記容器から水を汲み出す前記ステップを行う前に前記容器内に最初に存在していた水量の少なくとも2倍となるように、前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させること、
を含む、上記項目に記載の方法。
(項目3)
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップは、(i)少なくとも最小期間T1、前記脱気フィルタを通して前記水の循環が行われたこと、または(ii)少なくとも最小サイクル数、前記脱気フィルタを通して前記水の循環が完了したこと、のいずれかを特定するまで、続けられる、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目4)
前記ボイラ内の前記液体水位を監視することと、
前記ボイラ内の前記液体水位が所定水位に達した、またはそれを下回った時、前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップから、前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送る前記ステップへと進むことと、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
所定期間T2内に、前記ボイラ内の前記水位が前記所定水位に達した、またはそれを下回ったことを特定することと、
前記ボイラ内の前記所定水位に到達し、前記容器からの脱気水を前記ボイラに送って前記ボイラを再充填するまで、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、
真水が供給されることを阻止する前記ステップの後、前記容器に真水を供給することと、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記脱気フィルタを通して水が再循環される間、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、その後、
前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送ることと、その後、
前記容器に真水を供給することと、
をさらに含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記容器内の前記水位を監視することと、
前記容器内の現在の前記水位に基づいて、前記容器への真水の前記供給を制御することと、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記容器内の現在の前記水位に基づいて、前記容器への真水の前記供給を制御する前記ステップは、
前記水位が所定水位を下回った時、前記容器に真水を供給すること、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
少なくとも第1の期間T3は、前記ボイラに脱気水を供給しないという判断に応じて、前記容器に真水を供給することと、
第2の期間T4内に、前記ボイラに水を供給する必要があるという判断に応じて、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、
のうちの少なくとも1つをさらに含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記ボイラに前記水の少なくとも一部を送る前記ステップの後、前記ボイラに水が送られることを阻止することと、
前記容器に真水を供給することと、その後、
前記脱気フィルタから前記ボイラに水が流れることを阻止しながら、水を汲み出して前記脱気フィルタを通して再循環させる前記ステップを繰り返すことと、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記水の少なくとも一部を前記ボイラに送る前記ステップの後、前記ボイラを作動させて蒸気を生成することと、
前記容器内の前記水位を監視することと、
前記容器内の前記水位が所定水位以上である限り、前記容器に真水が供給されることを阻止することと、
前記ボイラを作動させて蒸気を生成する前記ステップの後、前記容器内の前記水位が前記所定水位以上である限り、前記水のさらなる一部または複数部を前記ボイラに送り、前記ボイラを作動させて蒸気を生成することと、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
真空タンクにより前記脱気フィルタに真空を適用して、前記脱気フィルタを通る水からNCGを引き出すこと、
を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記脱気フィルタを通して前記水を再循環させる前記ステップは、前記脱気フィルタと気体連通している閉鎖可能容積内の圧力変化率が所定閾値を下回ると判定されるまで、継続される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
上記項目のいずれか1項に記載の方法の前記ステップを実行するように構成された制御ユニットであって、
前記蒸気滅菌システムのポンプを制御することにより、前記容器からの水の前記汲み出しを制御することと、
前記蒸気滅菌システムの第1のバルブを制御して、前記脱気フィルタから前記ボイラに水が送られることを選択的に阻止または有効化することと、
任意で、前記蒸気滅菌システムのさらなるバルブを制御して、前記容器へ真水が供給されることを選択的に阻止または有効化することと、
を実行するように構成される制御ユニット。
(項目15)
上記項目のいずれか1項の制御ユニットを備え、さらにボイラ及び滅菌チャンバを備える、蒸気滅菌システム。
(摘要)
本開示は、液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法に関する。水は、容器からポンプで汲み出され、水に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、汲み出された水は、ボイラの上流に配置された脱気フィルタを通される。水が脱気フィルタからボイラに流れることを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、脱気フィルタを通して水は再循環される。脱気フィルタを通して水を再循環させた後、水の少なくとも一部がボイラに送られる。本開示はまた、方法のステップを実行するための制御ユニット、及びこのような制御ユニットを備えた蒸気滅菌システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本開示の少なくとも1つの例示的実施形態による、蒸気滅菌システムの概略図である。
図2】本開示の少なくとも1つの例示的実施形態による、方法のステップを概略的に開示する。
図3】開示されるシステムと共に使用できる蒸気滅菌器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
これより、システムの特定の態様が示される添付図面を参照しながら、本開示がより完全に説明される。しかし、システムは、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に明記される実施形態及び態様に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、システムの範囲を当業者に十分に伝えるように、実施例として提供される。したがって、本開示は、本明細書に説明され、図面に例示される実施形態に限定されないことを理解されるべきであり、むしろ、添付の特許請求の範囲内で、多くの変更及び修正が行われてもよいことを、当業者は認識するであろう。本説明の全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素を指す。
【0064】
図1は、少なくとも1つの例示的実施形態による、蒸気滅菌システム1の概略図である。一般的なレベルでは、蒸気滅菌システム1は、容器2、ボイラ4、及び蒸気滅菌器6を備える。容器2からの水は、ボイラ4に送達され得る。ボイラ4は、送達された水を蒸気に変える。次に、蒸気は、ボイラ4から蒸気滅菌器6に送られる。蒸気滅菌器6は、破線の長方形で概略的に描かれており、本手法は、いずれの特定の種類の蒸気滅菌器の使用にも限定されないが、医療用具などの滅菌対象の物品をボイラ4により生成された蒸気にさらすことができる滅菌チャンバを有する任意の適切な蒸気滅菌器により、実施され得ることを、理解されたい。使用できる蒸気滅菌器の例については、図3に関連して後述される。
【0065】
図1を続けると、ボイラ4には、水を蒸気に変えるための任意の適切な手段が設けられ得る。例えば、ボイラ4は、ボイラ4内に1つ以上の加熱素子8が設けられ得る。さらに、ボイラ4には、ボイラ4への水の充填を中断するための1つ以上の水位スイッチ10が設けられ得る。
【0066】
容器2から水を汲み出すためにポンプ12を作動させることにより、容器2からボイラ4へ水が供給され得る。容器2は、真水を容器2に供給するための入口14と、容器2から真水を流出するための出口16とを有し得る。容器2の出口16は、パイプ、チューブ、ホース、または同様の構造であり得る流出路18(導管)に開口している。ポンプ12は、当該流出路18に適切に設けられる。本開示で前に説明されたように、ボイラ4に供給される水に非凝縮性ガス(NCG)が含まれる場合、これらのNCGは、ボイラ4により生成された蒸気とともに、蒸気滅菌器6の滅菌チャンバへ送られる。NCGが存在すると、滅菌サイクルの全期間にわたり、滅菌対象である物品のすべての部品へ、蒸気の完全浸透を達成する可能性が低くなる。したがって、水がボイラ4に供給される前に、水からNCGの大部分を除去することが望ましい。この効果を達成するために、蒸気滅菌システム1は、脱気フィルタ20を備える。
【0067】
流出路18は、容器2の出口16から脱気フィルタ20まで延在する。脱気フィルタ20は、水処理が行われる様々な技術分野において、真空脱気またはスイープガス脱気に使用される標準的な種類のものでよい。脱気フィルタ20は、疎水性膜に沿って水が通るシェル側と、膜の反対側であるルーメン側(乾燥側)とを有し得る。ルーメン側は、低圧に保たれた真空タンク22に接続され得る。脱気フィルタ20は、膜の両側でガスの平衡を図るように努めることにより機能するため、水に溶存するガスは、膜を通して真空側に移動され、真空側では、真空タンク22への接続により、ガスが除去される。しかし、水は、脱気フィルタ20の膜を通過しない。
【0068】
専用真空システムまたは共有真空システム(例えば蒸気滅菌器6と共有される)の一部であり得る真空ポンプにより生成され得る真空は、真空タンク22を使用して維持され得る。あるいは、真空タンク22のない真空ポンプまたはシステムにより、真空はもたらされ得る。
【0069】
脱気フィルタ20を出た水は、ボイラ4に水を供給するための供給路24に沿って、脱気フィルタ20の下流を流れ続け得る。供給路24を通る水の流れを制御するために、供給路24に第1のバルブ26が設けられ得る。具体的には、ポンプ4が容器から水を汲み出している時、脱気フィルタ20からボイラ4へ水が流れるのを阻止するために、第1のバルブ26は閉状態に制御され得る。
【0070】
再循環路28は、第1のバルブ26の上流かつ脱気フィルタ20の下流に存在する供給路24の点30から延在する。脱気フィルタ20を通った水を再循環させて容器2に戻すために、再循環路28は使用され、よって、同じ水が複数回、脱気フィルタ20を通された後、循環水の少なくとも一部がボイラ4に供給されることが許可され得る。したがって、容器2、流出路18、及び再循環路28は、循環ループの一部を形成しているとみなすことができる。
【0071】
蒸気滅菌システム1はまた、制御ユニット40を備え、制御ユニット40は、蒸気滅菌システム1の様々な構成要素と通信するように構成され、また、特定の構成要素の動作を制御し、様々な構成要素から入力信号を受信するように構成される。制御ユニット40は、無線または有線で、命令の通信、送信/受信などを行うように構成され得る。よって、制御ユニット40は、本明細書に開示される方法のステップを実行するように構成される。制御ユニット40は、蒸気滅菌器6と同じ物理的筐体内に存在してもよいが、原則として、他の場所にも存在し得る。制御ユニットは、本開示で説明されるシステム及び方法のうちのいずれかを制御するのに有用な電子機器、プロセッサ、メモリ、電子命令、及び他の要素を含み得る。
【0072】
図2は、本発明概念の少なくとも1つの例示的実施形態による方法100を概略的に開示する。具体的には、図2は、液体水を蒸気に変えるボイラを備えた蒸気滅菌システムを制御する方法100を開示する。蒸気滅菌システムは、例えば、図1に示される蒸気滅菌システム1であってもよく、異なるものであってもよい。
【0073】
方法100は、
‐第1のステップS1にて、容器から水を汲み出して、水に溶存する非凝縮性ガス(NCG)を除去するために、汲み出した水をボイラの上流に配置された脱気フィルタに通すことと、
‐ステップS2にて、水を脱気フィルタに通した後、水が脱気フィルタからボイラに流れるのを阻止しながら、NCGをさらに除去するために、脱気フィルタを通して水を再循環させることと、
‐ステップS3にて、脱気フィルタを通して水を再循環させた後、水の少なくとも一部をボイラに送ることと、
を含む。
【0074】
当該方法100が図1の蒸気滅菌システム1で実施される場合、水が容器2から、出口16を通って、流出路18に沿って、脱気フィルタ20を通して汲み出されるように、制御ユニット40は、ポンプ12を制御するように適切に構成され得、水が脱気フィルタ20を通ると、水に溶存するNCGは除去される。これにより、水のNCG含有量が減少する。制御ユニット40はまた、第1のバルブ26を、閉状態に作動するまたは維持されるように制御することにより、供給路24を遮断し、これにより、脱気フィルタ20からボイラ4に水が流れことを阻止し得る。代わりに、脱気フィルタ20を通して水を再循環させてNCGをさらに除去するために、水は、再循環路28に誘導されて、容器2へ戻る。十分な脱気が達成されると、次に制御ユニット40は、循環ループ内の水の少なくとも一部がボイラ4に送達され得るように、第1のバルブ26を、開状態に作動するように制御し得る。
【0075】
図1には示されていないが、少なくともいくつかの例示的実施形態では、例えば水がボイラ4に供給される時に、再循環を阻止するために、再循環路28に第2のバルブが設けられ得る。しかし、別の例示的実施形態では、再循環路28は、常に開状態であり得、したがって、水がボイラ4に送られる時でも、ある程度の量の水を再循環させることが可能である。このような事例では、ボイラ4への流れが、容器2へ戻る流れよりも大きくなるように、流量減少オリフィスが再循環路28に適切に設けられ得る。
【0076】
本明細書に開示される方法ステップを実行する時、制御ユニット40は、脱気フィルタ20を通して水を再循環させるステップ(S2)を、水の当該少なくとも一部がボイラ4に送られる前に脱気フィルタ20を通る総水量が、容器2から水を汲み出し始める前に容器2内または循環ループ内に最初に存在していた水量の少なくとも2倍となるように、脱気フィルタ20を通して水が再循環される方法で、適切に実行し得る。
【0077】
具体的には、制御ユニット40は、満足のいく脱気が達成されるまで、第1のバルブ26を閉状態に維持し、水が循環ループ内を循環するようにポンプ12を作動させ続けて、脱気フィルタ20を通した水の再循環を制御し続け得る。制御ユニット40は、例えば、少なくとも最小期間T1、水が循環ループを通って、したがって脱気フィルタ20を通って循環したと判断するまで、再循環を継続し得る。このような最小期間T1は、例えば、ルックアップテーブルから入手可能であり得、または、例えば、循環ループ内で利用可能な水量に基づいて、制御ユニット40により計算され得る。水のNCG含有量が所望の低NCG含有量またはゼロNCG含有量になるには、水量が多い場合は、水量が少ない場合よりも、より長い期間T1が必要になり得る。このような時間ベースの再循環制御の代わりに、またはこの補足として、制御ユニット40は、代わりに、水量ベースの再循環制御を実行し得る。後者の場合、制御ユニット40は、脱気フィルタ20を通して少なくとも最小サイクル数が完了するまで、すなわち循環ループ内に存在する水量が、最小回数、脱気フィルタ20を必ず通過するまで、水の循環を制御する(ポンプ12を作動させて、第1のバルブ26を閉じる)。この目的のために、循環ループに流量計が適切に設けられ得る。
【0078】
別の例示的実施形態では、制御ユニット40は、代替として、または補足として、圧力ベースの再循環制御を実行し得る。図1に示されるように、例えば真空タンク22内の圧力を監視するために、圧力センサ42が設けられ得る。本開示で前述されたように、制御ユニット40は、圧力変化率を監視することにより、再循環水が十分に脱気されたことを判断し得る。図1はまた、少なくともいくつかの例示的実施形態において、蒸気滅菌システム1には、例えばポンプ12と脱気フィルタ20との間の流出路18に配置された総溶存ガス(TDG)センサ44が設けられ得ることを示す。次いで、制御ユニット40は、TDGセンサ44により測定されたNCG含有量に基づいて、再循環の継続時間を制御し得る。
【0079】
再循環の継続時間が適切な脱気を行うのに十分であるように制御することに加えて、制御ユニット40は、ボイラの水位センサまたは水位スイッチ10からの入力も適切に受信して、ボイラ4内の液体水位が所定水位以下に下がったこと、及び新たなバッチの水が蒸気生成のためにボイラ4に充填され得ることを、判断し得る。したがって、制御ユニット40は、ボイラ4内の液体水位を監視し、ボイラ4内の液体水位が当該所定水位に達した、またはそれを下回った時、脱気フィルタ20を通して水を再循環させるステップ(S2)から、水の少なくとも一部をボイラ4に送るステップ(S3)へ、進み得る。
【0080】
制御ユニット40はまた、予測に基づいて制御行動を実行し得る。例えば、制御ユニットは、ボイラ4内の水位を示す信号を含む様々な入力信号に基づいて、所定期間T2以内にボイラ4内の水位が当該所定水位以下に下がると予測し得る。このような場合、制御ユニット40は、ボイラ4内の当該所定水位に達し、容器2からの脱気水がボイラ4に送られてボイラ4を再充填するまで、容器2に真水(高NCG含有)が供給されることを阻止するために、例えば、容器2の入口14を閉じ得る、または容器2の入口14にあるさらなるバルブ46を閉じ得る。ボイラ4が再充填されると、制御ユニット40は、再び、真水が容器2に供給されることを有効化し得る。本開示で前に説明されたように、別の例示的実施形態では、真水は、容器2へ他の方法で供給されてもよく、例えば容器2の上流または下流の循環ループに沿ったある場所に、供給されてもよい。このような事例では、容器2に真水が供給されることを阻止するために、循環ループへの真水の流入は、同様に閉鎖され得る。
【0081】
前述から理解されるように、制御ユニット40は、水が脱気フィルタ20を通して再循環される間、容器2に真水が供給されることを阻止し(例えばさらなるバルブ46を閉じることにより)、その後、当該水の少なくとも一部をボイラ4に送り、その後、容器2に真水を供給するように、構成され得る。
【0082】
ボイラ4内の水位に関する入力を受信することに加えて、制御ユニット40は、容器2内の水位に関する入力(例えば1つ以上の水位センサまたは水位スイッチ48からの入力)も受信し得、容器2に真水を供給することが好適であるか否かを判定し得る。言い換えると、制御ユニット40は、容器2内の水位を監視し、容器2内の現在の水位に基づいて、容器2への真水の供給を制御し得る。通常、容器2内の現在の水位が所定水位以下に下がった場合、制御ユニット40は、容器2に真水を供給することを決定し得る。当然、制御ユニット40は、容器2に真水を供給することを決定する前に、例えばボイラ4に現在水が供給されているか、または特定の(短い)期間内にボイラへ供給されることが予期されるか、その場合、NCG含有量の高い真水が、循環ループ内に既に存在する脱気水と混合するリスクは、適切に回避されるべきであるなど、他の留意事項も考慮し得る。
【0083】
ボイラ4への再充填がすぐに必要ではないと制御ユニット40が予測する場合には、容器2に真水が適切に供給され得る。反対に、特定の(短い)期間内にボイラ4に水を供給する必要があると制御ユニット40が判断した場合には、制御ユニット40は、容器2に真水が供給されることを阻止し得る。
【0084】
容器2に真水が供給された後は、容器2内の水は、循環させて脱気処理を受けさせる必要があることを、理解されたい。したがって、制御ユニット40は、脱気フィルタ20からボイラ4へ水が流れるのを阻止しながら、脱気フィルタ20を通して水を汲み出し再循環させること(すなわち図1に示される実施例では、第1のバルブ26を閉状態に維持しながら、ポンプ12を作動させること)を繰り返すように、構成される。
【0085】
ボイラ4を水で充填した後、再びボイラ4に水が必要となる次のバッチ用に、容器2内(または循環ループ内)にまだ十分な水が残っていると制御ユニット40が適切に判断した場合には、制御ユニット40は、容器2への真水の供給を適切に延期し得る。例えば、制御ユニット40は、容器2内の水位を監視し、容器2内の水位が所定水位以上である限り(少なくとも別のバッチの水がボイラ4に送達されるのに十分な水量が容器内に残っていることが示される限り)、容器2に真水が供給されることを阻止するように、構成され得る。ボイラ4を作動させて蒸気を生成した後(及び容器2内の水位が当該所定水位以上である限り)、制御ユニット40は、水のさらなる一部または複数部をボイラ4に送るように制御し、ボイラ4を作動させて、水の当該さらなる一部または複数部を蒸気に変え得る。
【0086】
通常、脱気は、容器2を真水で充填するよりも時間がかかることを、理解されたい。したがって、制御ユニット40は、例えばボイラ4からの現在のニーズ及び要件に基づいて、充填及び/または脱気を最適化するようにプログラムされ得る。例えば、制御ユニット40は、容器2を半分だけ充填するように決定し得る。半分の水量を脱気する場合、別に全水量を脱気する場合と比べて、約半分の時間がかかると予想される。これは、ボイラ4がまもなく再充填される必要があると制御ユニット40が判断した場合の戦略であり得る。
【0087】
よって、上記から、水の少なくとも一部をボイラ(例えば図1のボイラ4)に送達することを可能にする前に、脱気フィルタ20を通して水を再循環させる(すなわち平均2回以上、水を脱気フィルタに通す)一般的手法により、蒸気滅菌器(例えば図1の滅菌器1)に供給される蒸気中のNCG量が減り、これにより、医療用具などの物品の滅菌を向上させることが可能となることを、理解されたい。脱気フィルタを通して水を再循環させるこの概念に加えて、望ましくないNCG含有が蒸気について蒸気滅菌器に至るリスクをさらに減らすために、他の制御行動が含まれ得る。例えば、ボイラに水を充填する前、または始動時に、ボイラ内の空気を除去して空気残留物が蒸気について蒸気滅菌器に至ることを阻止するために、ボイラ内の真空引きが実行され得る。このような真空引きは、図1のボイラ4の上の矢印により、概略的に示される。
【0088】
図3は、図1の開示されるシステム1と共に使用することができる蒸気滅菌器60の概略図である。したがって、図3の蒸気滅菌器60は、図1に概して示される蒸気滅菌器6に、適切に置き換わり得る。しかし、他の蒸気滅菌器も考えられる。
【0089】
蒸気滅菌器60は、滅菌チャンバ62を備える。ボイラ4からの蒸気は、入口64を通って、滅菌チャンバ62内へ送られる。出口68を介した滅菌チャンバ62からの流体の排出を制御するために、ドレンシステム66が設けられる。滅菌チャンバ62から蒸気を排出し、冷却剤72の流れを使用して排出された蒸気を凝縮するために、真空システム70(別個の真空システムであってもよく、図1の脱気構造と共用されてもよい)がドレンシステム66に接続される。制御ユニット40は、制御可能なバルブ74を介して、ボイラ4から滅菌チャンバ62への蒸気の流れを制御するように構成され得る。制御ユニット40は、冷却剤72の流れの中の温度センサ76から受信した情報を使用して、滅菌チャンバ62からドレンシステム66に流入する蒸気/凝縮水の量を特定し得る。制御ユニット40は、温度信号以外の他の入力信号も受信し得る。例えば、制御ユニット40は、滅菌チャンバ62内の圧力を検出するように構成された圧力センサ78により、滅菌チャンバ62内の圧力を監視し得る。
【0090】
本開示は、具体的に医療用途の物品を滅菌するための蒸気滅菌システムを含む。本開示はまた、本明細書に説明されるように蒸気滅菌システムの構成要素を制御するためのコントローラ(電子機器及び電子命令を備える)も含む。本開示はさらに、蒸気滅菌システムを作動させ制御する方法と、蒸気生成のためにボイラに水を供給する前に水を効率的に脱気する方法と、医療用具を滅菌する方法とを含む。本明細書に開示される様々な特徴及び方法は、これらの様々な組み合わせ及び部分的組み合わせで、企図され開示されることを、理解されたい。
図1
図2
図3