(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035821
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H01H37/76 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】77
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140808
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/030660
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(31)【優先権主張番号】P 2022140084
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023014676
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023086179
(32)【優先日】2023-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 豊
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 学
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA09
5G502AA11
5G502AA13
5G502AA15
5G502BB01
5G502BB07
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5G502BB17
5G502BB20
5G502BC01
5G502BD11
5G502BD20
5G502BE03
5G502CC12
5G502CC21
5G502EE06
5G502FF08
5G502FF10
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子を提供する。
【解決手段】前後方向に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、前後方向と直交する上下方向の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、ヒューズエレメント50と上下方向に重なって配置される発熱体80と、発熱体80に電流を通電する給電部材と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、発熱体80、及び給電部材の一部を収容する絶縁ケース10と、を備え、発熱体80は、給電部材からの通電により発熱し、ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、
前記前後方向と直交する上下方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、
前記ヒューズエレメントと前記上下方向に重なって配置される発熱体と、
前記発熱体に電流を通電する給電部材と、
前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント、前記絶縁部材、前記発熱体、及び前記給電部材の一部を収容する絶縁ケースと、を備え、
前記発熱体は、前記給電部材からの通電により発熱し、前記ヒューズエレメントの少なくとも一部を溶融し溶断する、
保護素子。
【請求項2】
前記ヒューズエレメントは、
前記発熱体と積層される可溶導体と、
前記第1端子または前記第2端子と前記可溶導体とを接続する金属導体と、を有し、
前記可溶導体は、前記金属導体よりも溶融温度が低い、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記可溶導体は、前記金属導体よりも電気抵抗率が高い、
請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記金属導体は、前記可溶導体よりも電気抵抗が高い遮断部を有する、
請求項2に記載の保護素子。
【請求項5】
前記遮断部における電流が流れる通電方向と垂直な断面の断面積が、前記金属導体のうち前記遮断部以外の部分における前記断面積よりも小さい、
請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記可溶導体は、Snを含む低融点金属層の単層体により構成される、
請求項2から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項7】
前記可溶導体は、Snを含む低融点金属層と、Ag若しくはCuを含む高融点金属層とが積層された積層体を有する、
請求項2から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項8】
前記積層体は、前記低融点金属層を1層以上有し、前記高融点金属層を2層以上有し、前記低融点金属層が前記高融点金属層の間に配置された構成である、
請求項7に記載の保護素子。
【請求項9】
前記絶縁部材と前記ヒューズエレメントとの間の前記上下方向の寸法が、2mm以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項10】
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の前記ヒューズエレメントに対向する面から窪む凹状の発熱体収容部を有し、
前記発熱体は、前記発熱体収容部に配置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項11】
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の前記ヒューズエレメントに対向する面から窪む凹状の導体対向凹部を有し、
前記発熱体の発熱により溶融した前記可溶導体の少なくとも一部が、前記導体対向凹部に配置される、
請求項2から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項12】
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の前記ヒューズエレメントに対向する面から窪み前記絶縁部材を貫通するスリット部、または前記面から窪む溝状の凹部を有し、
前記スリット部または前記凹部は、前記ヒューズエレメントの電流が流れる通電方向と直交する方向に延びる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項13】
前記絶縁部材は、前記ヒューズエレメントの上側と下側とに少なくとも2つ設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項14】
前記絶縁部材の少なくとも1つは、前記絶縁ケースの一部と一体に形成される、
請求項13に記載の保護素子。
【請求項15】
前記発熱体は、前記上下方向において前記ヒューズエレメントの両側に設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項16】
前記絶縁ケースは、前記絶縁ケースの内部に形成され、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項17】
前記発熱体は、
基板と、
前記基板上に積層された抵抗層と、
前記基板上に積層され、前記上下方向において前記ヒューズエレメント側を向く金属層と、を有し、
前記可溶導体の一部は、前記金属導体と前記金属層との間に形成された前記上下方向の隙間の一部に配置され、前記上下方向において前記金属導体と前記金属層との間に挟まれる、
請求項2から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項18】
前記発熱体の発熱により溶融した前記可溶導体の溶融物が、前記隙間に毛細管現象により浸入しつつ流動することで、前記可溶導体が溶断される、
請求項17に記載の保護素子。
【請求項19】
前記金属導体は、前記ヒューズエレメントに複数設けられ、
複数の前記金属導体は、
前記第1端子と前記可溶導体の第1端部とを接続する第1金属導体と、
前記第2端子と前記可溶導体の第2端部とを接続する第2金属導体と、を含み、
前記第1金属導体、前記可溶導体、及び前記第2金属導体は、この順に直列接続することで前記ヒューズエレメントの通電経路を形成し、
前記金属層は、前記発熱体に複数設けられ、
複数の前記金属層は、
前記第1金属導体と前記上下方向に第1の隙間をあけて配置される第1金属層と、
前記第2金属導体と前記上下方向に第2の隙間をあけて配置される第2金属層と、を含み、
前記可溶導体の前記第1端部は、前記第1の隙間の一部に配置され、前記上下方向において前記第1金属導体と前記第1金属層との間に挟まれ、
前記可溶導体の前記第2端部は、前記第2の隙間の一部に配置され、前記上下方向において前記第2金属導体と前記第2金属層との間に挟まれる、
請求項17に記載の保護素子。
【請求項20】
前記発熱体の発熱により溶融した前記可溶導体の前記第1端部付近の溶融物が、前記第1の隙間に毛細管現象により浸入しつつ流動し、かつ、前記可溶導体の前記第2端部付近の溶融物が、前記第2の隙間に毛細管現象により浸入しつつ流動することで、前記可溶導体が溶断される、
請求項19に記載の保護素子。
【請求項21】
前記金属層は、前記基板の一対の板面のうち一方に配置され、
前記抵抗層は、前記一対の板面のうち他方に配置される、
請求項17に記載の保護素子。
【請求項22】
複数の前記金属層は、さらに、前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置される中間金属層を含み、
前記可溶導体のうち前記第1端部と前記第2端部との間に位置する中間部分が、前記中間金属層に接続される、
請求項19に記載の保護素子。
【請求項23】
前記金属層、前記可溶導体及び前記金属導体は、はんだにより互いに接続される、
請求項17に記載の保護素子。
【請求項24】
前記ヒューズエレメントに所定以上の電流が流れたときに、前記可溶導体の少なくとも一部または、前記可溶導体の少なくとも一部及び前記金属導体の少なくとも一部が溶断される、
請求項2から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項25】
前記ヒューズエレメントは、
前記前後方向において前記第1端子と前記絶縁部材との間に配置される第1折り曲げ部と、
前記前後方向において前記第2端子と前記絶縁部材との間に配置される第2折り曲げ部と、を有し、
前記第1端子と前記第1折り曲げ部との間の前記前後方向の距離が、前記第1端子の前記上下方向の厚さ寸法よりも大きく、
前記第2端子と前記第2折り曲げ部との間の前記前後方向の距離が、前記第2端子の前記上下方向の厚さ寸法よりも大きい、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項26】
前記第1折り曲げ部及び前記第2折り曲げ部の少なくとも1つは、クランク形状を有する、
請求項25に記載の保護素子。
【請求項27】
前記絶縁ケースは、前記上下方向において前記ヒューズエレメントの両側に配置される少なくとも2つの保持部材を有し、
前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、及び前記ヒューズエレメントは、前記2つの保持部材の間に配置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項28】
前記2つの保持部材のうち、一方若しくは両方は、前記絶縁部材と一体に形成される、
請求項27に記載の保護素子。
【請求項29】
前記絶縁ケースは、前記少なくとも2つの保持部材を収容するカバーを有し、
前記カバーは、前記少なくとも2つの保持部材を固定した状態で保持する、
請求項27に記載の保護素子。
【請求項30】
前記絶縁部材は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項31】
前記絶縁部材は、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される、
請求項30に記載の保護素子。
【請求項32】
前記ヒューズエレメントは、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項33】
前記可溶導体は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であり、
前記金属導体は、前記ヒューズエレメントの電流が流れる通電方向において、前記可溶導体の両端部に一対接続され、
各前記金属導体は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される、
請求項2から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項34】
前記低融点金属層は、Sn若しくはSnを主成分として構成され、
前記高融点金属層は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される、
請求項33に記載の保護素子。
【請求項35】
前記ヒューズエレメントは、
前記発熱体と積層される可溶導体と、
前記可溶導体よりも電気抵抗が高い遮断部と、を有する、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項36】
前記発熱体は、
基板と、
前記基板上に積層された抵抗層と、
前記基板上に積層され、前記ヒューズエレメントの一部と対向する金属層と、を有し、
前記抵抗層は、前記ヒューズエレメントに電流が流れる通電方向と交差する方向に延び、前記基板上の前記前後方向の一部に配置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項37】
前記抵抗層は、前記基板上の前記前後方向の端部に配置される、
請求項36に記載の保護素子。
【請求項38】
前記抵抗層の前記前後方向の寸法が、前記基板の前記前後方向の寸法の半分以下である、
請求項36に記載の保護素子。
【請求項39】
前記抵抗層は、前記基板上に前記前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられる、
請求項36に記載の保護素子。
【請求項40】
前記発熱体は、前記基板上に積層され、前記上下方向において前記ヒューズエレメント側を向く保持金属層を有し、
前記金属層は、前記基板上を前記通電方向と交差する方向に延び、
前記保持金属層は、前記金属層の前記通電方向と交差する方向の端部に接続され、前記ヒューズエレメントの溶融物を保持可能である、
請求項36に記載の保護素子。
【請求項41】
前記ヒューズエレメントに下側から対向する前記絶縁部材は、前記保持金属層に保持された前記ヒューズエレメントの溶融物を収容可能な収容凹部を有する、
請求項40に記載の保護素子。
【請求項42】
前記金属層は、前記基板上に前記前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記金属層は、
前記基板上の前記前後方向の一端部に配置される第1金属層と、
前記基板上の前記前後方向の他端部に配置される第2金属層と、を含み、
前記保持金属層は、前記第1金属層または前記第2金属層に接続される、
請求項40に記載の保護素子。
【請求項43】
前記金属層は、前記基板上に前記前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記金属層は、
前記基板上の前記前後方向の一端部に配置される第1金属層と、
前記基板上の前記前後方向の他端部に配置される第2金属層と、
前記前後方向において前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置される中間金属層と、を含み、
前記保持金属層は、前記中間金属層、前記第1金属層、及び前記第2金属層のうちいずれかに接続される、
請求項40に記載の保護素子。
【請求項44】
前記中間金属層、前記第1金属層、及び前記第2金属層は、前記抵抗層と電気的に絶縁されている、
請求項43に記載の保護素子。
【請求項45】
抵抗層を備える絶縁基板と、
前記絶縁基板に搭載される可溶導体と、
前記抵抗層に接続される第1の電極及び第2の電極と、
前記絶縁基板に配置された第3の電極と、
前記第1の電極と前記第3の電極との間を繋ぐ第5の電極と、
前記第3の電極及び前記第5の電極上に形成された第1の金属と、を備え、
前記第5の電極の厚みは、前記第3の電極の厚みよりも薄く、
前記抵抗層の発熱により、前記可溶導体が遮断され、前記第1の金属の溶融による前記第5の電極の溶解により前記第3の電極と前記第2の電極との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される、
保護素子。
【請求項46】
抵抗層を備える絶縁基板と、
前記絶縁基板に搭載される可溶導体と、
前記抵抗層に接続される第1の電極及び第2の電極と、
前記絶縁基板に配置された第3の電極及び第4の電極と、
前記第1の電極と前記第3の電極との間を繋ぐ第5の電極と、
前記第2の電極と前記第4の電極との間を繋ぐ第6の電極と、
前記第3の電極及び前記第5の電極上に形成された第1の金属と、
前記第4の電極及び前記第6の電極上に形成された第2の金属と、を備え、
前記第5の電極の厚みは、前記第3の電極の厚みよりも薄く、
前記第6の電極の厚みは、前記第4の電極の厚みよりも薄く、
前記抵抗層の発熱により、前記可溶導体が遮断され、前記第1の金属の溶融による前記第5の電極の溶解及び/又は前記第2の金属の溶融による前記第6の電極の溶解により前記第3の電極と前記第4の電極との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される、
保護素子。
【請求項47】
前記第1の金属は、錫又は錫を主成分とする合金であり、
前記第5の電極は、銀若しくは銅からなる金属、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金である、
請求項45又は46に記載の保護素子。
【請求項48】
前記第3の電極及び前記第4の電極には、前記抵抗層への通電用部材が接続される、
請求項46に記載の保護素子。
【請求項49】
第1方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、
前記第1方向と直交する第2方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、
前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント及び前記絶縁部材を収容する絶縁ケースであって、前記絶縁ケースの内部に、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間が形成された、前記絶縁ケースと、
前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の前記絶縁部材が前記ヒューズエレメントと対向する面とは反対側の面に接する充填材と、を備える、
保護素子。
【請求項50】
前記ヒューズエレメントと前記第2方向に重なって配置される発熱体を更に備える、
請求項49に記載の保護素子。
【請求項51】
前記ヒューズエレメントは、
前記発熱体と積層される可溶導体と、
前記第1端子または前記第2端子と前記可溶導体とを接続する金属導体と、を有し、
前記可溶導体は、前記金属導体よりも溶融温度が低い、
請求項50に記載の保護素子。
【請求項52】
前記ヒューズエレメントと前記第2方向に重なって配置される発熱体と、
前記発熱体に電流を通電する給電部材と、を更に備え、
前記絶縁ケースは、前記給電部材の一部及び前記発熱体を収容する、
請求項49から51のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項53】
前記発熱体は、前記給電部材からの通電により発熱し、前記ヒューズエレメントの少なくとも一部を溶融し溶断する、
請求項52に記載の保護素子。
【請求項54】
前記絶縁部材には、前記絶縁部材を前記第2方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔に侵入した前記充填材は、前記ヒューズエレメントの一部に接している、
請求項49から51のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項55】
第1方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、
前記第1方向と直交する第2方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、
前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント及び前記絶縁部材を収容する絶縁ケースであって、前記絶縁ケースの内部に、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間が形成された、前記絶縁ケースと、
前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の前記絶縁部材が前記ヒューズエレメントと対向する面とは反対側の面に接するフィルタと、を備える、
保護素子。
【請求項56】
前記フィルタは、繊維材料からなる、
請求項55に記載の保護素子。
【請求項57】
前記フィルタは、前記ヒューズエレメントと密着しない、
請求項55又は56に記載の保護素子。
【請求項58】
前記ヒューズエレメントは、可溶導体であって、前記第1端子及び前記第2端子よりも融点が低い、
請求項55又は56に記載の保護素子。
【請求項59】
前記可溶導体は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体である、
請求項58に記載の保護素子。
【請求項60】
前記低融点金属層は、Sn又はSnを主成分として構成され、
前記高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分として構成される、
請求項59に記載の保護素子。
【請求項61】
前記第1端子又は前記第2端子と前記可溶導体とを接続する金属導体を更に有し、
前記金属導体の融点は、前記ヒューズエレメントの融点よりも高い、
請求項58に記載の保護素子。
【請求項62】
前記ヒューズエレメントは、前記可溶導体が発熱体と積層される、
請求項58に記載の保護素子。
【請求項63】
前記発熱体は、給電部材からの通電により発熱し、前記ヒューズエレメントの少なくとも一部を溶融し前記ヒューズエレメントを溶断する、
請求項62に記載の保護素子。
【請求項64】
第1方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、
前記第1方向と直交する第2方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、
前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント及び前記絶縁部材を収容する絶縁ケースであって、前記絶縁ケースの内部に、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間が形成された、前記絶縁ケースと、を備え、
前記絶縁部材及び/又は前記絶縁ケースは、炭素材料の含有量が0.1wt%未満である、
保護素子。
【請求項65】
前記絶縁部材及び/又は前記絶縁ケースは、ガラス繊維の含有量が10wt%以上である、
請求項64に記載の保護素子。
【請求項66】
第1導電材と、
前記第1導電材とは異なる材料で形成された第2導電材と、を備え、
前記第1導電材と前記第2導電材とは、通電方向において互いに直列に接続され、
前記第1導電材は、前記第2導電材よりも前記通電方向の電気抵抗が高く、
前記通電方向と直交する厚み方向から見て、前記第1導電材と前記第2導電材とが互いに接続される部位に重なり部を有し、
前記第1導電材は、前記重なり部における前記通電方向及び前記厚み方向と直交する幅方向の長さが前記第2導電材よりも短く、
前記第2導電材は、前記重なり部における前記幅方向の外側に少なくとも1つの角部を有し、
前記少なくとも1つの角部は、前記厚み方向から見て、100°以下の角度である、
ヒューズエレメント。
【請求項67】
前記第1導電材及び前記第2導電材の各々の形状は、板状である、
請求項66に記載のヒューズエレメント。
【請求項68】
前記第1導電材は、前記幅方向に並んで複数配置されている、
請求項66又は67に記載のヒューズエレメント。
【請求項69】
第3導電材を更に備え、
前記第3導電材、前記第1導電材、前記第2導電材の順に前記通電方向に直列に接続されている、
請求項66又は67に記載のヒューズエレメント。
【請求項70】
前記第3導電材は、前記第2導電材と同一の材料で形成されている、
請求項69に記載のヒューズエレメント。
【請求項71】
前記第1導電材は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体である、
請求項66又は67に記載のヒューズエレメント。
【請求項72】
第1導電材と、
前記第1導電材とは異なる材料で形成された第2導電材と、を備え、
前記第1導電材と前記第2導電材とは、通電方向において互いに直列に接続され、
前記第1導電材は、前記第2導電材よりも前記通電方向の電気抵抗が高く、
前記通電方向と直交する厚み方向から見て、前記第1導電材と前記第2導電材とが互いに接続される部位に重なり部を有し、
前記第1導電材は、前記重なり部における前記通電方向及び前記厚み方向と直交する幅方向の長さが前記第2導電材よりも短く、
前記第2導電材は、前記重なり部における前記幅方向の外側に少なくとも1つの角部を有し、
前記少なくとも1つの角部は、前記厚み方向から見て、100°以下の角度である、
保護素子。
【請求項73】
前記第1導電材及び前記第2導電材の各々の形状は、板状である、
請求項72に記載の保護素子。
【請求項74】
前記第1導電材は、前記幅方向に並んで複数配置されている、
請求項72又は73に記載の保護素子。
【請求項75】
第3導電材を更に備え、
前記第3導電材、前記第1導電材、前記第2導電材の順に前記通電方向に直列に接続されている、
請求項72又は73に記載の保護素子。
【請求項76】
前記第3導電材は、前記第2導電材と同一の材料で形成されている、
請求項75に記載の保護素子。
【請求項77】
前記第1導電材は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体である、
請求項72又は73に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントが知られている(例えば、特許文献1)。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、家電製品から電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えばリチウムイオン電池は、モバイル機器用途から電気自動車(EV)、蓄電池など幅広い用途で使用されており、大容量化が進んでいる。リチウムイオン電池の大容量化にともない、電圧は数百ボルトの高電圧仕様となり、電流も数百アンペアから数千アンペアの大電流仕様が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高電圧かつ大電流の電流経路に設置される保護素子においては、ヒューズエレメントが溶断されると、アーク放電が発生しやすい。大規模なアーク放電が発生すると、ヒューズエレメントが収納されている絶縁ケースが破損する場合がある。
また、これまでの高電圧大電流(100V/100A以上)の電流ヒューズは過電流遮断のみであり、遮断信号による遮断機能を両立するものはなかった。
【0006】
本発明は、ヒューズエレメントの溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
〔本発明の態様1〕
前後方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、前記前後方向と直交する上下方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、前記ヒューズエレメントと前記上下方向に重なって配置される発熱体と、前記発熱体に電流を通電する給電部材と、前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント、前記絶縁部材、前記発熱体、及び前記給電部材の一部を収容する絶縁ケースと、を備え、前記発熱体は、前記給電部材からの通電により発熱し、前記ヒューズエレメントの少なくとも一部を溶融し溶断する、保護素子。
【0009】
〔本発明の態様2〕
前記ヒューズエレメントは、前記発熱体と積層される可溶導体と、前記第1端子または前記第2端子と前記可溶導体とを接続する金属導体と、を有し、前記可溶導体は、前記金属導体よりも溶融温度が低い、態様1に記載の保護素子。
【0010】
〔本発明の態様3〕
前記可溶導体は、前記金属導体よりも電気抵抗率が高い、態様2に記載の保護素子。
【0011】
〔本発明の態様4〕
前記金属導体は、前記可溶導体よりも電気抵抗が高い遮断部を有する、態様2に記載の保護素子。
【0012】
〔本発明の態様5〕
前記遮断部における電流が流れる通電方向と垂直な断面の断面積が、前記金属導体のうち前記遮断部以外の部分における前記断面積よりも小さい、態様4に記載の保護素子。
【0013】
〔本発明の態様6〕
前記可溶導体は、Snを含む低融点金属層の単層体により構成される、態様2から5のいずれか1つに記載の保護素子。
【0014】
〔本発明の態様7〕
前記可溶導体は、Snを含む低融点金属層と、Ag若しくはCuを含む高融点金属層とが積層された積層体を有する、態様2から5のいずれか1つに記載の保護素子。
【0015】
〔本発明の態様8〕
前記積層体は、前記低融点金属層を1層以上有し、前記高融点金属層を2層以上有し、前記低融点金属層が前記高融点金属層の間に配置された構成である、態様7に記載の保護素子。
【0016】
〔本発明の態様9〕
前記絶縁部材と前記ヒューズエレメントとの間の前記上下方向の寸法が、2mm以下である、態様1から8のいずれか1つに記載の保護素子。
【0017】
〔本発明の態様10〕
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の前記ヒューズエレメントに対向する面から窪む凹状の発熱体収容部を有し、前記発熱体は、前記発熱体収容部に配置される、態様1から9のいずれか1つに記載の保護素子。
【0018】
〔本発明の態様11〕
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の前記ヒューズエレメントに対向する面から窪む凹状の導体対向凹部を有し、前記発熱体の発熱により溶融した前記可溶導体の少なくとも一部が、前記導体対向凹部に配置される、態様2から8のいずれか1つに記載の保護素子。
【0019】
〔本発明の態様12〕
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の前記ヒューズエレメントに対向する面から窪み前記絶縁部材を貫通するスリット部、または前記面から窪む溝状の凹部を有し、前記スリット部または前記凹部は、前記ヒューズエレメントの電流が流れる通電方向と直交する方向に延びる、態様1から11のいずれか1つに記載の保護素子。
【0020】
〔本発明の態様13〕
前記絶縁部材は、前記ヒューズエレメントの上側と下側とに少なくとも2つ設けられる、態様1から12のいずれか1つに記載の保護素子。
【0021】
〔本発明の態様14〕
前記絶縁部材の少なくとも1つは、前記絶縁ケースの一部と一体に形成される、態様13に記載の保護素子。
【0022】
〔本発明の態様15〕
前記発熱体は、前記上下方向において前記ヒューズエレメントの両側に設けられる、態様1から14のいずれか1つに記載の保護素子。
【0023】
〔本発明の態様16〕
前記絶縁ケースは、前記絶縁ケースの内部に形成され、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間を有する、態様1から15のいずれか1つに記載の保護素子。
【0024】
〔本発明の態様17〕
前記発熱体は、基板と、前記基板上に積層された抵抗層と、前記基板上に積層され、前記上下方向において前記ヒューズエレメント側を向く金属層と、を有し、前記可溶導体の一部は、前記金属導体と前記金属層との間に形成された前記上下方向の隙間の一部に配置され、前記上下方向において前記金属導体と前記金属層との間に挟まれる、態様2から8のいずれか1つに記載の保護素子。
【0025】
〔本発明の態様18〕
前記発熱体の発熱により溶融した前記可溶導体の溶融物が、前記隙間に毛細管現象により浸入しつつ流動することで、前記可溶導体が溶断される、態様17に記載の保護素子。
【0026】
〔本発明の態様19〕
前記金属導体は、前記ヒューズエレメントに複数設けられ、複数の前記金属導体は、前記第1端子と前記可溶導体の第1端部とを接続する第1金属導体と、前記第2端子と前記可溶導体の第2端部とを接続する第2金属導体と、を含み、前記第1金属導体、前記可溶導体、及び前記第2金属導体は、この順に直列接続することで前記ヒューズエレメントの通電経路を形成し、前記金属層は、前記発熱体に複数設けられ、複数の前記金属層は、前記第1金属導体と前記上下方向に第1の隙間をあけて配置される第1金属層と、前記第2金属導体と前記上下方向に第2の隙間をあけて配置される第2金属層と、を含み、前記可溶導体の前記第1端部は、前記第1の隙間の一部に配置され、前記上下方向において前記第1金属導体と前記第1金属層との間に挟まれ、前記可溶導体の前記第2端部は、前記第2の隙間の一部に配置され、前記上下方向において前記第2金属導体と前記第2金属層との間に挟まれる、態様17に記載の保護素子。
【0027】
〔本発明の態様20〕
前記発熱体の発熱により溶融した前記可溶導体の前記第1端部付近の溶融物が、前記第1の隙間に毛細管現象により浸入しつつ流動し、かつ、前記可溶導体の前記第2端部付近の溶融物が、前記第2の隙間に毛細管現象により浸入しつつ流動することで、前記可溶導体が溶断される、態様19に記載の保護素子。
【0028】
〔本発明の態様21〕
前記金属層は、前記基板の一対の板面のうち一方に配置され、前記抵抗層は、前記一対の板面のうち他方に配置される、態様17から20のいずれか1つに記載の保護素子。
【0029】
〔本発明の態様22〕
複数の前記金属層は、さらに、前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置される中間金属層を含み、前記可溶導体のうち前記第1端部と前記第2端部との間に位置する中間部分が、前記中間金属層に接続される、態様19または20に記載の保護素子。
【0030】
〔本発明の態様23〕
前記金属層、前記可溶導体及び前記金属導体は、はんだにより互いに接続される、態様17から22のいずれか1つに記載の保護素子。
【0031】
〔本発明の態様24〕
前記ヒューズエレメントに所定以上の電流が流れたときに、前記可溶導体の少なくとも一部または、前記可溶導体の少なくとも一部及び前記金属導体の少なくとも一部が溶断される、態様2から8のいずれか1つに記載の保護素子。
【0032】
〔本発明の態様25〕
前記ヒューズエレメントは、前記前後方向において前記第1端子と前記絶縁部材との間に配置される第1折り曲げ部と、前記前後方向において前記第2端子と前記絶縁部材との間に配置される第2折り曲げ部と、を有し、前記第1端子と前記第1折り曲げ部との間の前記前後方向の距離が、前記第1端子の前記上下方向の厚さ寸法よりも大きく、前記第2端子と前記第2折り曲げ部との間の前記前後方向の距離が、前記第2端子の前記上下方向の厚さ寸法よりも大きい、態様1から24のいずれか1つに記載の保護素子。
【0033】
〔本発明の態様26〕
前記第1折り曲げ部及び前記第2折り曲げ部の少なくとも1つは、クランク形状を有する、態様25に記載の保護素子。
【0034】
〔本発明の態様27〕
前記絶縁ケースは、前記上下方向において前記ヒューズエレメントの両側に配置される少なくとも2つの保持部材を有し、前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、及び前記ヒューズエレメントは、前記2つの保持部材の間に配置される、態様1から26のいずれか1つに記載の保護素子。
【0035】
〔本発明の態様28〕
前記2つの保持部材のうち、一方若しくは両方は、前記絶縁部材と一体に形成される、態様27に記載の保護素子。
【0036】
〔本発明の態様29〕
前記絶縁ケースは、前記少なくとも2つの保持部材を収容するカバーを有し、前記カバーは、前記少なくとも2つの保持部材を固定した状態で保持する、態様27または28に記載の保護素子。
【0037】
〔本発明の態様30〕
前記絶縁部材は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である、態様1から29のいずれか1つに記載の保護素子。
【0038】
〔本発明の態様31〕
前記絶縁部材は、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される、態様30に記載の保護素子。
【0039】
〔本発明の態様32〕
前記ヒューズエレメントは、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される、態様1に記載の保護素子。
【0040】
〔本発明の態様33〕
前記可溶導体は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であり、前記金属導体は、前記ヒューズエレメントの電流が流れる通電方向において、前記可溶導体の両端部に一対接続され、各前記金属導体は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される、態様2から8のいずれか1つに記載の保護素子。
【0041】
〔本発明の態様34〕
前記低融点金属層は、Sn若しくはSnを主成分として構成され、前記高融点金属層は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される、態様33に記載の保護素子。
【0042】
〔本発明の態様35〕
前記ヒューズエレメントは、前記発熱体と積層される可溶導体と、前記可溶導体よりも電気抵抗が高い遮断部と、を有する、態様1に記載の保護素子。
【0043】
〔本発明の態様36〕
前記発熱体は、基板と、前記基板上に積層された抵抗層と、前記基板上に積層され、前記ヒューズエレメントの一部と対向する金属層と、を有し、前記抵抗層は、前記ヒューズエレメントに電流が流れる通電方向と交差する方向に延び、前記基板上の前記前後方向の一部に配置される、態様1から35のいずれか1つに記載の保護素子。
【0044】
〔本発明の態様37〕
前記抵抗層は、前記基板上の前記前後方向の端部に配置される、態様36に記載の保護素子。
【0045】
〔本発明の態様38〕
前記抵抗層の前記前後方向の寸法が、前記基板の前記前後方向の寸法の半分以下である、態様36または37に記載の保護素子。
【0046】
〔本発明の態様39〕
前記抵抗層は、前記基板上に前記前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられる、態様36から38のいずれか1つに記載の保護素子。
【0047】
〔本発明の態様40〕
前記発熱体は、前記基板上に積層され、前記上下方向において前記ヒューズエレメント側を向く保持金属層を有し、前記金属層は、前記基板上を前記通電方向と交差する方向に延び、前記保持金属層は、前記金属層の前記通電方向と交差する方向の端部に接続され、前記ヒューズエレメントの溶融物を保持可能である、態様36から39のいずれか1つに記載の保護素子。
【0048】
〔本発明の態様41〕
前記ヒューズエレメントに下側から対向する前記絶縁部材は、前記保持金属層に保持された前記ヒューズエレメントの溶融物を収容可能な収容凹部を有する、態様40に記載の保護素子。
【0049】
〔本発明の態様42〕
前記金属層は、前記基板上に前記前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、複数の前記金属層は、前記基板上の前記前後方向の一端部に配置される第1金属層と、前記基板上の前記前後方向の他端部に配置される第2金属層と、を含み、前記保持金属層は、前記第1金属層または前記第2金属層に接続される、態様40または41に記載の保護素子。
【0050】
〔本発明の態様43〕
前記金属層は、前記基板上に前記前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、複数の前記金属層は、前記基板上の前記前後方向の一端部に配置される第1金属層と、前記基板上の前記前後方向の他端部に配置される第2金属層と、前記前後方向において前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置される中間金属層と、を含み、前記保持金属層は、前記中間金属層、前記第1金属層、及び前記第2金属層のうちいずれかに接続される、態様40または41に記載の保護素子。
【0051】
〔本発明の態様44〕
前記中間金属層、前記第1金属層、及び前記第2金属層は、前記抵抗層と電気的に絶縁されている、態様43に記載の保護素子。
[本発明の態様45]
抵抗層を備える絶縁基板と、前記絶縁基板に搭載される可溶導体と、前記抵抗層に接続される第1の電極及び第2の電極と、前記絶縁基板に配置された第3の電極と、前記第1の電極と前記第3の電極との間を繋ぐ第5の電極と、前記第3の電極及び前記第5の電極上に形成された第1の金属と、を備え、前記第5の電極の厚みは、前記第3の電極の厚みよりも薄く、前記抵抗層の発熱により、前記可溶導体が遮断され、前記第1の金属の溶融による前記第5の電極の溶解により前記第3の電極と前記第2の電極との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される、保護素子。
[本発明の態様46]
抵抗層を備える絶縁基板と、前記絶縁基板に搭載される可溶導体と、前記抵抗層に接続される第1の電極及び第2の電極と、前記絶縁基板に配置された第3の電極及び第4の電極と、前記第1の電極と前記第3の電極との間を繋ぐ第5の電極と、前記第2の電極と前記第4の電極との間を繋ぐ第6の電極と、前記第3の電極及び前記第5の電極上に形成された第1の金属と、前記第4の電極及び前記第6の電極上に形成された第2の金属と、を備え、前記第5の電極の厚みは、前記第3の電極の厚みよりも薄く、前記第6の電極の厚みは、前記第4の電極の厚みよりも薄く、前記抵抗層の発熱により、前記可溶導体が遮断され、前記第1の金属の溶融による前記第5の電極の溶解及び/又は前記第2の金属の溶融による前記第6の電極の溶解により前記第3の電極と前記第4の電極との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される、保護素子。
[本発明の態様47]
前記第1の金属は、錫又は錫を主成分とする合金であり、前記第5の電極は、銀若しくは銅からなる金属、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金である、態様45又は46に記載の保護素子。
[本発明の態様48]
前記第3の電極及び前記第4の電極には、前記抵抗層への通電用部材が接続される、態様46に記載の保護素子。
[本発明の態様49]
第1方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、前記第1方向と直交する第2方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント及び前記絶縁部材を収容する絶縁ケースであって、前記絶縁ケースの内部に、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間が形成された、前記絶縁ケースと、前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の前記絶縁部材が前記ヒューズエレメントと対向する面とは反対側の面に接する充填材と、を備える、保護素子。
[本発明の態様50]
前記ヒューズエレメントと前記第2方向に重なって配置される発熱体を更に備える、態様49に記載の保護素子。
[本発明の態様51]
前記ヒューズエレメントは、前記発熱体と積層される可溶導体と、前記第1端子または前記第2端子と前記可溶導体とを接続する金属導体と、を有し、前記可溶導体は、前記金属導体よりも溶融温度が低い、態様50に記載の保護素子。
[本発明の態様52]
前記ヒューズエレメントと前記第2方向に重なって配置される発熱体と、前記発熱体に電流を通電する給電部材と、を更に備え、前記絶縁ケースは、前記給電部材の一部及び前記発熱体を収容する、態様49から51のいずれか1つに記載の保護素子。
[本発明の態様53]
前記発熱体は、前記給電部材からの通電により発熱し、前記ヒューズエレメントの少なくとも一部を溶融し溶断する、の態様52に記載の保護素子。
[本発明の態様54]
前記絶縁部材には、前記絶縁部材を前記第2方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔に侵入した前記充填材は、前記ヒューズエレメントの一部に接している、態様49から53のいずれか1つに記載の保護素子。
[本発明の態様55]
第1方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、前記第1方向と直交する第2方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント及び前記絶縁部材を収容する絶縁ケースであって、前記絶縁ケースの内部に、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間が形成された、前記絶縁ケースと、前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の前記絶縁部材が前記ヒューズエレメントと対向する面とは反対側の面に接するフィルタと、を備える、保護素子。
[本発明の態様56]
前記フィルタは、繊維材料からなる、態様55に記載の保護素子。
[本発明の態様57]
前記フィルタは、前記ヒューズエレメントと密着しない、態様55又は56に記載の保護素子。
[本発明の態様58]
前記ヒューズエレメントは、可溶導体であって、前記第1端子及び前記第2端子よりも融点が低い、態様55から57のいずれか1つに記載の保護素子。
[本発明の態様59]
前記可溶導体は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体である、態様58に記載の保護素子。
[本発明の態様60]
前記低融点金属層は、Sn又はSnを主成分として構成され、前記高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分として構成される、態様59に記載の保護素子。
[本発明の態様61]
前記第1端子又は前記第2端子と前記可溶導体とを接続する金属導体を更に有し、前記金属導体の融点は、前記ヒューズエレメントの融点よりも高い、態様58から60のいずれか1つに記載の保護素子。
[本発明の態様62]
前記ヒューズエレメントは、前記可溶導体が発熱体と積層される、態様58から61のいずれか1つに記載の保護素子。
[本発明の態様63]
前記発熱体は、給電部材からの通電により発熱し、前記ヒューズエレメントの少なくとも一部を溶融し前記ヒューズエレメントを溶断する、態様62に記載の保護素子。
[本発明の態様64]
第1方向に互いに離れて配置される第1端子及び第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメントと、前記第1方向と直交する第2方向の両側から、前記ヒューズエレメントに対向して配置される絶縁部材と、前記第1端子の一部、前記第2端子の一部、前記ヒューズエレメント及び前記絶縁部材を収容する絶縁ケースであって、前記絶縁ケースの内部に、前記ヒューズエレメントが配置される空間と連通する内圧緩衝空間が形成された、前記絶縁ケースと、を備え、前記絶縁部材及び/又は前記絶縁ケースは、炭素材料の含有量が0.1wt%未満である、保護素子。
[本発明の態様65]
前記絶縁部材及び/又は前記絶縁ケースは、ガラス繊維の含有量が10wt%以上である、態様64に記載の保護素子。
[本発明の態様66]
第1導電材と、前記第1導電材とは異なる材料で形成された第2導電材と、を備え、前記第1導電材と前記第2導電材とは、通電方向において互いに直列に接続され、前記第1導電材は、前記第2導電材よりも前記通電方向の電気抵抗が高く、前記通電方向と直交する厚み方向から見て、前記第1導電材と前記第2導電材とが互いに接続される部位に重なり部を有し、前記第1導電材は、前記重なり部における前記通電方向及び前記厚み方向と直交する幅方向の長さが前記第2導電材よりも短く、前記第2導電材は、前記重なり部における前記幅方向の外側に少なくとも1つの角部を有し、前記少なくとも1つの角部は、前記厚み方向から見て、100°以下の角度である、ヒューズエレメント。
[本発明の態様67]
前記第1導電材及び前記第2導電材の各々の形状は、板状である、態様66に記載のヒューズエレメント。
[本発明の態様68]
前記第1導電材は、前記幅方向に並んで複数配置されている、態様66又は67に記載のヒューズエレメント。
[本発明の態様69]
第3導電材を更に備え、前記第3導電材、前記第1導電材、前記第2導電材の順に前記通電方向に直列に接続されている、態様66から68のいずれか1つに記載のヒューズエレメント。
[本発明の態様70]
前記第3導電材は、前記第2導電材と同一の材料で形成されている、態様69に記載のヒューズエレメント。
[本発明の態様71]
前記第1導電材は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体である、
態様66から70のいずれか1つに記載のヒューズエレメント。
[本発明の態様72]
第1導電材と、前記第1導電材とは異なる材料で形成された第2導電材と、を備え、前記第1導電材と前記第2導電材とは、通電方向において互いに直列に接続され、前記第1導電材は、前記第2導電材よりも前記通電方向の電気抵抗が高く、前記通電方向と直交する厚み方向から見て、前記第1導電材と前記第2導電材とが互いに接続される部位に重なり部を有し、前記第1導電材は、前記重なり部における前記通電方向及び前記厚み方向と直交する幅方向の長さが前記第2導電材よりも短く、前記第2導電材は、前記重なり部における前記幅方向の外側に少なくとも1つの角部を有し、前記少なくとも1つの角部は、前記厚み方向から見て、100°以下の角度である、保護素子。
[本発明の態様73]
前記第1導電材及び前記第2導電材の各々の形状は、板状である、態様72に記載の保護素子。
[本発明の態様74]
前記第1導電材は、前記幅方向に並んで複数配置されている、態様72又は73に記載の保護素子。
[本発明の態様75]
第3導電材を更に備え、前記第3導電材、前記第1導電材、前記第2導電材の順に前記通電方向に直列に接続されている、態様72から74のいずれか1つに記載の保護素子。
[本発明の態様76]
前記第3導電材は、前記第2導電材と同一の材料で形成されている、態様75に記載の保護素子。
[本発明の態様77]
前記第1導電材は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体である、
態様72から76のいずれか1つに記載の保護素子。
【発明の効果】
【0052】
本発明の前記態様によれば、ヒューズエレメントの溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本実施形態の保護素子の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。
【
図2】
図2は、本実施形態の保護素子を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の保護素子の一部を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のIV部近傍を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に対応する断面図であり、遮断信号による発熱体の発熱によってヒューズエレメントの一部が溶断した状態を表す。
【
図8】
図8は、
図5に対応する断面図であり、過電流によってヒューズエレメントの一部が溶断(消失)した状態を表す。
【
図9】
図9は、本実施形態の第1変形例の保護素子の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。
【
図10】
図10は、本実施形態の第2変形例の保護素子の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。
【
図11】
図11は、本実施形態の第3変形例の保護素子の一部を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の第4変形例の保護素子の一部を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の第4変形例の保護素子の一部を示す断面図であり、ヒューズエレメントの一部が溶断した状態を表す。
【
図14】
図14は、本実施形態の第5変形例の保護素子の一部を示す断面図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の第6変形例の保護素子の一部(ヒューズエレメント)を示す上面図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の第7変形例の保護素子の一部(ヒューズエレメント)を示す上面図である。
【
図17】
図17は、本実施形態の第8変形例の保護素子の一部を示す断面図である。
【
図18】
図18は、本実施形態の第9変形例の保護素子の一部(発熱体)を示す上面図である。
【
図19】
図19は、本実施形態の第10変形例の保護素子の一部(発熱体)を示す上面図である。
【
図20】
図20は、本実施形態の第11変形例の保護素子の一部(発熱体)を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、本実施形態の第12変形例の保護素子の一部(発熱体)を示す斜視図である。
【
図22】
図22は、本実施形態の第13変形例の保護素子の一部(発熱体)を示す斜視図である。
【
図23】
図23は、本実施形態の第14変形例の保護素子の一部を示す断面図である。
【
図24】
図24は、第2実施形態の発熱体の一例を示す上面図である。
【
図25】
図25は、第2実施形態の発熱体の他の例を示す上面図である。
【
図26】
図26は、第2実施形態の絶縁基板の側面図であり、通電用部材の接続前の図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態の絶縁基板の側面図であり、通電用部材の接続後における通電前の図である。
【
図28】
図28は、第2実施形態の絶縁基板の側面図であり、通電後においてヒューズエレメントの一部が溶断した状態の図である。
【
図29】
図29は、第2実施形態の絶縁基板の側面図であり、発熱体の電極の一部が溶断した状態の図である。
【
図30】
図30は、第2実施形態の絶縁基板の斜視図であり、通電用部材の接続前の図(絶縁層を二点鎖線で示す図)である。
【
図31】
図31は、第2実施形態の絶縁基板の斜視図であり、通電用部材の接続前の図(絶縁層を実線で示す図)である。
【
図32】
図32は、第2実施形態の絶縁基板の斜視図であり、通電用部材の接続後の図である。
【
図33】
図33は、第2実施形態の絶縁基板の斜視図であり、発熱体の電極の一部が溶断した状態の図である。
【
図34】
図34は、第2実施形態の変形例の絶縁基板の斜視図であり、通電用部材の接続前の図(絶縁層を二点鎖線で示す図)である。
【
図35】
図35は、第2実施形態の変形例の絶縁基板の斜視図であり、通電用部材の接続前の図(絶縁層を実線で示す図)である。
【
図36】
図36は、第3実施形態の充填材の一例を示す断面図である。
【
図37】
図37は、第3実施形態の充填材の配置の一例を示す断面図である。
【
図38】
図38は、第3実施形態の充填材の他の例を示す断面図である。
【
図39】
図39は、第3実施形態の充填材の他の例を示す断面図である。
【
図40】
図40は、第3実施形態の充填材の他の例を示す断面図である。
【
図41】
図41は、第4実施形態のフィルタの一例を示す断面図である。
【
図42】
図42は、第4実施形態のフィルタの配置の一例を示す断面図である。
【
図43】
図43は、第5実施形態の保護素子の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。
【
図44】
図44は、第5実施形態の絶縁部材の側面図であり、過電流による遮断前の図である。
【
図45】
図45は、第5実施形態の絶縁部材の側面図であり、過電流による遮断後に絶縁部材の一部が溶融した状態の図である。
【
図46】
図46は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)を示す上面図である。
【
図47】
図47は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)を示す側面図である。
【
図48】
図48は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の一例を示す上面図である。
【
図49】
図49は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
【
図50】
図50は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
【
図51】
図51は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
【
図52】
図52は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
【
図53】
図53は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
【
図54】
図54は、比較例の保護素子の一部(ヒューズエレメント)を示す上面図である。
【
図55】
図55は、比較例の保護素子の高電圧大電流遮断試験結果を示す図である。
【
図56】
図56は、実施例1の保護素子の高電圧大電流遮断試験結果を示す図である。
【
図57】
図57は、実施例2の保護素子の高電圧大電流遮断試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(保護素子(本実施形態))
本発明の一実施形態の保護素子100について、
図1~8を参照して説明する。本実施形態の保護素子100は、例えば、リチウムイオン電池を使用する高電圧大電流(100V/100A以上)の電気回路の一部を構成する電気部品である。保護素子100は、例えば、電気自動車(EV)などに搭載される。
【0055】
図1~
図3に示すように、保護素子100は、所定方向に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続する溶断可能なヒューズエレメント50と、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、ヒューズエレメント50と重なって配置される発熱体80と、発熱体80に電流を通電する給電部材90と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、発熱体80、及び給電部材90の一部を収容する絶縁ケース10と、を備える。第1端子91及び第2端子92は、それぞれ、板状をなしている。
【0056】
本実施形態の保護素子100は、電流経路を遮断させる機構として、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)が流れた場合にヒューズエレメント50が溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断と、過電流以外の異常が発生した場合に発熱体80に電流を通電し発熱させることで、ヒューズエレメント50を溶断し電流経路を遮断させるアクティブ遮断と、を有する。
【0057】
(方向の定義)
本実施形態では、各図に適宜XYZ直交座標系(3次元直交座標系)を設定し、各構成について説明する。
第1端子91と第2端子92とが並ぶ上記所定方向を、前後方向と呼ぶ。前後方向は、各図においてX軸方向に相当する。X軸方向のうち、第1端子91から第2端子92へ向かう方向(-X側)を前側と呼び、第2端子92から第1端子91へ向かう方向(+X側)を後側と呼ぶ。
なお、前後方向は、第1端子91と第2端子92とを結ぶ方向であり、保護素子100の使用時において電気が流れる方向でもあることから、通電方向と言い換えてもよい。
【0058】
第1端子91及び第2端子92の各板面が向く方向を、上下方向と呼ぶ。上下方向は、前後方向と直交する方向であり、各図においてZ軸方向に相当する。上下方向のうち、上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0059】
前後方向及び上下方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。左右方向は、各図においてY軸方向に相当する。左右方向のうち、左側は-Y側に相当し、右側は+Y側に相当する。詳しくは、-Y側は、保護素子100を後側(+X側)から見たときの左側であり、+Y側は、保護素子100を後側から見たときの右側である。なお左右方向は、幅方向と言い換えてもよい。この場合、例えば、幅方向一方側は-Y側に相当し、幅方向他方側は+Y側に相当する。
【0060】
なお本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0061】
(絶縁ケース)
図1に示すように、絶縁ケース10は、その全体の形状が前後方向に延びる柱状をなしている。
図1及び
図2に示すように、絶縁ケース10は、上下方向に積層して配置される少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の保持部材10B,10C,10Dと、これらの保持部材10B,10C,10Dを収容する筒状のカバー10Aと、を有する。少なくとも2つの保持部材10B,10Cは、上下方向においてヒューズエレメント50の両側に配置される。
【0062】
複数の保持部材10B,10C,10Dは、第1保持部材10Bと、第2保持部材10Cと、第3保持部材10Dと、を含む。
【0063】
第1保持部材10Bは、3つの保持部材10B,10C,10Dのうち最も下側に位置する。第1保持部材10Bは、第1端子91、第2端子92及びヒューズエレメント50の下側に配置される。第1保持部材10Bは、上側に開口する略有底筒状をなしている。
【0064】
第1保持部材10Bは、第1収容部11と、端子載置面12と、端子係止部13と、を有する。
第1収容部11は、第1保持部材10Bの上面から下側に窪む凹状である。第1収容部11は、第1保持部材10Bのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。第1収容部11は、上側に開口する略四角形穴状である。
【0065】
端子載置面12は、第1保持部材10Bの上面から下側に窪む凹状である。端子載置面12の底面は、上側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。端子載置面12は、第1保持部材10Bに一対設けられる。一対の端子載置面12は、第1保持部材10Bの前後方向の両端部に配置される。
【0066】
端子係止部13は、第1保持部材10Bの左右方向の端部に立設される側壁に配置される。端子係止部13は、上下方向に延びる溝状であり、第1保持部材10Bの上面、及び、前記側壁の左右方向の内側(中央側)を向く壁面に開口する。端子係止部13は、第1保持部材10Bの前側部分と後側部分とに、一対ずつ(つまり計4つ)設けられる。一対の端子係止部13は、左右方向に互いに間隔をあけて対向するように配置される。
【0067】
第2保持部材10Cは、3つの保持部材10B,10C,10Dのうち上下方向の中央部に位置する。第2保持部材10Cは、第1端子91、第2端子92及びヒューズエレメント50の上側に配置される。第2保持部材10Cは、上下方向に延びる筒状をなしている。具体的に、第2保持部材10Cは、上側及び下側に開口する略四角形筒状である。
【0068】
第2保持部材10Cは、第2収容部14と、端子押さえ面15と、を有する。
第2収容部14は、第2保持部材10Cの下面から上側に窪む凹状である。第2収容部14は、第2保持部材10Cのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。第2収容部14は、下側に開口する略四角形穴状である。
【0069】
端子押さえ面15は、第2保持部材10Cの下面から下側に突出する凸状である。端子押さえ面15の下側を向く端面は、平面状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。端子押さえ面15は、第2保持部材10Cに一対設けられる。一対の端子押さえ面15は、第2保持部材10Cの前後方向の両端部に配置される。
【0070】
第3保持部材10Dは、3つの保持部材10B,10C,10Dのうち最も上側に位置する。第3保持部材10Dは、上下方向と垂直な面方向に広がる板状である。
【0071】
カバー10Aは、前後方向に延びる筒状である。具体的に、カバー10Aは、前側及び後側に開口する略四角形筒状をなしている。3つの保持部材10B,10C,10Dは、上下方向に並んで組み合わされた状態で、カバー10A内に収納される。カバー10Aは、少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の保持部材10B,10C,10Dを、接着等により固定した状態で保持する。
【0072】
第1保持部材10Bと第2保持部材10Cとが組み合わされた状態で、第1収容部11と第2収容部14とは、互いに向かい合い、1つの室(空間)18を形成する。この室18には、第1端子91の一部(前端部)、第2端子92の一部(後端部)、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、及び発熱体80が配置される。すなわち、第1端子91の一部(前端部)、第2端子92の一部(後端部)、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、及び発熱体80は、2つの保持部材10B,10Cの間に配置される。
【0073】
また、絶縁ケース10は、絶縁ケース10の内部に形成される内圧緩衝空間16を有する。内圧緩衝空間16は、第2保持部材10Cの内部に配置される。内圧緩衝空間16は、略直方体状の空間であり、上記室(空間)18と連通する。本実施形態では、内圧緩衝空間16の上下方向の寸法が、保護素子100全体の上下方向の寸法(外形高さ)を基準として、例えば、1/3以上1/2以下である。内圧緩衝空間16は、ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子100の内圧の急激な上昇を抑える作用を有する。
【0074】
カバー10A及び各保持部材10B~10Dは、耐トラッキング指標CTI(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が500V以上の材料で形成されていることが好ましい。耐トラッキング指標CTIは、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
【0075】
カバー10A及び各保持部材10B~10Dの材料としては、樹脂材料を用いることができる。
樹脂材料は、セラミック材料よりも熱容量が小さく融点も低い。このため、保持部材10B~10Dの材料として樹脂材料を用いると、ガス化冷却(アブレーション)によるアーク放電を弱める特性や、溶融飛散した金属粒子が保持部材10B~10Dに付着する際に、保持部材10B~10Dの表面が変形したり付着物が凝集したりすることで、金属粒子が疎らとなり伝導パスを形成し難い特性があり、好ましい。
【0076】
樹脂材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂を用いることができる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドであってもよいし、半芳香族ポリアミドであってもよい。脂肪族ポリアミドの例としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66を挙げることができる。半芳香族ポリアミドの例としては、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリフタルアミド(PPA)樹脂を挙げることができる。フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、ポリアミド系樹脂及びフッ素系樹脂は耐熱性が高く、燃焼しにくい。特に、脂肪族ポリアミドは燃焼してもグラファイトが生成しにくい。このため、脂肪族ポリアミドを用いて、カバー10A及び各保持部材10B~10Dを形成することで、ヒューズエレメント50の溶断時のアーク放電により生成したグラファイトによって、新たな電流経路が形成されることをより確実に防止できる。
【0077】
(第1端子、第2端子)
第1端子91及び第2端子92は、それぞれ、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状をなしており、具体的には、略四角形板状である。第1端子91及び第2端子92は、前後方向に互いに離れて配置される。
【0078】
図1に示すように、第1端子91の前端部は、ヒューズエレメント50の後端部と接続される。第1端子91の後側部分は、絶縁ケース10から後側に突出しており、絶縁ケース10の外部に露出している。また、第2端子92の後端部は、ヒューズエレメント50の前端部と接続される。第2端子92の前側部分は、絶縁ケース10から前側に突出しており、絶縁ケース10の外部に露出している。
【0079】
第1端子91と第2端子92とは、互いに略同一の形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。第1端子91及び第2端子92の厚さ寸法(上下方向の寸法)は、特に限定されるものではないが、例えば、数百μm~数mmなどである。第1端子91の厚さ寸法と第2端子92の厚さ寸法とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0080】
図1~
図4に示すように、第1端子91は、端子本体91aと、外部端子孔91bと、導体接続部91cと、係止爪91dと、を有する。
【0081】
端子本体91aは、前後方向に長い四角形板状である。端子本体91aは、第1保持部材10Bの端子載置面12と、第2保持部材10Cの端子押さえ面15との間に挟持される。
外部端子孔91bは、端子本体91aを上下方向に貫通する円孔状である。
【0082】
導体接続部91cは、第1端子91の前端部に配置され、左右方向に延びる。導体接続部91cは、第1収容部11と第2収容部14とにより画成される室(空間)18に配置される。導体接続部91cは、端子本体91aよりも上下方向の寸法が大きい。言い換えると、導体接続部91cの上下方向の寸法は、端子載置面12と端子押さえ面15との間の上下方向の寸法よりも大きい。
【0083】
導体接続部91cには、ヒューズエレメント50の後端部がはんだ付け等により接続される。導体接続部91cは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される一対の接続板91eを有する。本実施形態では、ヒューズエレメント50が複数設けられており、各ヒューズエレメント50の後端部が、各接続板91eに接続されている。
【0084】
係止爪91dは、第1端子91の前端部に配置されており、端子本体91aよりも左右方向に突出する。具体的に、係止爪91dは、導体接続部91cの左端部と右端部とにそれぞれ突設される。第1端子91が第1保持部材10Bに組み付けられる際、係止爪91dは端子係止部13に挿入される。係止爪91dと端子係止部13とが係止されることにより、第1端子91は、第1保持部材10Bに対して前後方向に位置決めされて、前後方向への移動が規制される。
【0085】
第2端子92は、端子本体92aと、外部端子孔92bと、導体接続部92cと、係止爪92dと、を有する。
【0086】
端子本体92aは、前後方向に長い四角形板状である。端子本体92aは、第1保持部材10Bの端子載置面12と、第2保持部材10Cの端子押さえ面15との間に挟持される。
外部端子孔92bは、端子本体92aを上下方向に貫通する円孔状である。
【0087】
導体接続部92cは、第2端子92の後端部に配置され、左右方向に延びる。導体接続部92cは、第1収容部11と第2収容部14とにより画成される室(空間)18に配置される。導体接続部92cは、端子本体92aよりも上下方向の寸法が大きい。言い換えると、導体接続部92cの上下方向の寸法は、端子載置面12と端子押さえ面15との間の上下方向の寸法よりも大きい。
【0088】
導体接続部92cには、ヒューズエレメント50の前端部がはんだ付け等により接続される。導体接続部92cは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される一対の接続板92eを有する。本実施形態では、ヒューズエレメント50が複数設けられており、各ヒューズエレメント50の前端部が、各接続板92eに接続されている。
【0089】
係止爪92dは、第2端子92の後端部に配置されており、端子本体92aよりも左右方向に突出する。具体的に、係止爪92dは、導体接続部92cの左端部と右端部とにそれぞれ突設される。第2端子92が第1保持部材10Bに組み付けられる際、係止爪92dは端子係止部13に挿入される。係止爪92dと端子係止部13とが係止されることにより、第2端子92は、第1保持部材10Bに対して前後方向に位置決めされて、前後方向への移動が規制される。
【0090】
一対の外部端子孔91b,92bのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。もしくは、外部端子孔91b,92bは、負荷の内部の通電経路に接続されるために用いられてもよい。
【0091】
第1端子91及び第2端子92は、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなる金属製である。第1端子91及び第2端子92の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子91と第2端子92とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0092】
(ヒューズエレメント)
図3~
図5に示すように、ヒューズエレメント50は、金属製の板状部材、シート状部材、または金属箔等により構成される。本実施形態ではヒューズエレメント50が、上下方向に並んで2つ設けられる。ただしこれに限らず、ヒューズエレメント50は、1つのみ設けられていてもよいし、上下方向に3つ以上並んで設けられていてもよい。
【0093】
ヒューズエレメント50は、可溶導体51と、第1端子91または第2端子92と可溶導体51とを接続する金属導体52と、を有する。可溶導体51は、金属導体52よりも溶融温度が低い材料により構成される。また本実施形態では、可溶導体51が、金属導体52よりも電気抵抗率が高い。
本実施形態においては可溶導体51が、過電流遮断時及びアクティブ遮断時のそれぞれにおいて、ヒューズエレメント50の溶断部として機能する。
【0094】
可溶導体51は、板状、シート状または箔状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。
図3に示すように、本実施形態では可溶導体51が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。可溶導体51は、例えば、ヒューズエレメント50の前後方向の中央部に配置される。
【0095】
特に図示しないが、可溶導体51は、Sn(錫)を含む低融点金属層と、Ag(銀)若しくはCu(銅)を含む高融点金属層とが積層された積層体を有する。この積層体は、低融点金属層を1層以上有し、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された構成である。この積層体は、例えば、低融点金属層の周囲を高融点金属層でコーティングして形成されている。
【0096】
上記積層体の低融点金属層は、Snを含んでいればよく、Sn単体であってもよいし、Sn合金であってもよい。Sn合金は、Snを主成分とする合金である。すなわち、低融点金属層は、Sn若しくはSnを主成分として構成される。Sn合金は、合金に含まれる金属の中でSnの含有量が最も多い合金である。Sn合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金等を挙げることができる。
【0097】
上記積層体の高融点金属層は、AgもしくはCuを含んでいればよく、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。すなわち、高融点金属層は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される。
【0098】
なお上記積層体は、低融点金属層/高融点金属層の2層構造であってもよい。あるいは、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が1層以上で、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された3層以上の多層構造であってもよい。
また、可溶導体51は、Snを含む低融点金属層の単層体により構成されていてもよい。
【0099】
金属導体52は、板状、シート状または箔状である。
図3に示すように、本実施形態では金属導体52が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が長い略四角形板状をなす。金属導体52は、ヒューズエレメント50に複数設けられる。金属導体52は、例えば、ヒューズエレメント50の前後方向の両端部に配置される。
【0100】
図3~
図5に示すように、複数の金属導体52は、第1端子91と可溶導体51の第1端部(後端部)51aとを接続する第1金属導体52Aと、第2端子92と可溶導体51の第2端部(前端部)51bとを接続する第2金属導体52Bと、を含む。すなわち本実施形態では、各ヒューズエレメント50が、一対の金属導体52(52A,52B)を有する。
【0101】
第1金属導体52A、可溶導体51、及び第2金属導体52Bは、この順に直列接続することでヒューズエレメント50の通電経路を形成する。金属導体52は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向(本実施形態では略前後方向に相当)において、可溶導体51の両端部51a,51bに一対接続される。
【0102】
本実施形態では、可溶導体51の第1端部51aが、第1金属導体52Aの前端部上に固定されている。すなわち、可溶導体51の第1端部51aの下面と、第1金属導体52Aの前端部の上面とが、接続されている。
また、可溶導体51の第2端部51bが、第2金属導体52Bの後端部上に固定されている。すなわち、可溶導体51の第2端部51bの下面と、第2金属導体52Bの後端部の上面とが、接続されている。
可溶導体51は、一対の金属導体52A,52Bの上側に配置されて、これらの間に掛け渡されている。
【0103】
また、各金属導体52は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される。
【0104】
図3及び
図4に示すように、ヒューズエレメント50は、さらに、第1折り曲げ部55と、第2折り曲げ部56と、を有する。
第1折り曲げ部55は、ヒューズエレメント50のうち絶縁部材60に対向する部分と、第1端子91と、の間に配置される。言い換えると、第1折り曲げ部55は、前後方向において、絶縁部材60と第1端子91との間に配置される。具体的に、第1折り曲げ部55は、第1金属導体52Aに設けられる。
【0105】
詳しくは、第1金属導体52Aは、可溶導体51に接続される内側板部52aと、第1端子91に接続される外側板部52bと、内側板部52aと外側板部52bを接続する接続板部52cと、を有する。
【0106】
内側板部52aは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。内側板部52aの前端部は、可溶導体51の第1端部51aにはんだ付け等により接続される。
外側板部52bは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。外側板部52bは、内側板部52aよりも後側かつ上側に配置される。外側板部52bの後側部分は、導体接続部91cの接続板91eにはんだ付け等により接続される。
【0107】
接続板部52cは、前後方向と垂直な面方向(Y-Z面方向)に広がる板状である。なお接続板部52cは、Y-Z面に対して傾斜する面方向に広がっていてもよい。すなわち、
図4に示すように左右方向(Y軸方向)と垂直な断面視で、接続板部52cは、上下方向(Z軸方向)に沿って延びていてもよいし、上下方向に対して傾斜して延びていてもよい。接続板部52cの下端部は、内側板部52aの後端部に接続される。接続板部52cの上端部は、外側板部52bの前端部に接続される。
【0108】
第1折り曲げ部55は、接続板部52cと、接続板部52cと内側板部52aの屈曲した接続部分(屈曲部)と、接続板部52cと外側板部52bの屈曲した接続部分(屈曲部)と、を含む。
また、接続板部52cと接続板91eとの間の前後方向の寸法L1は、接続板91eの上下方向の寸法(つまり板厚寸法)T1よりも大きい。言い換えると、第1端子91と第1折り曲げ部55との間の前後方向の距離は、第1端子91の上下方向の厚さ寸法よりも大きい。
【0109】
第2折り曲げ部56は、ヒューズエレメント50のうち絶縁部材60に対向する部分と、第2端子92と、の間に配置される。言い換えると、第2折り曲げ部56は、前後方向において、絶縁部材60と第2端子92との間に配置される。具体的に、第2折り曲げ部56は、第2金属導体52Bに設けられる。
【0110】
詳しくは、第2金属導体52Bは、可溶導体51に接続される内側板部52dと、第2端子92に接続される外側板部52eと、内側板部52dと外側板部52eを接続する接続板部52fと、を有する。
【0111】
内側板部52dは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。内側板部52dの後端部は、可溶導体51の第2端部51bにはんだ付け等により接続される。
外側板部52eは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。外側板部52eは、内側板部52dよりも前側かつ上側に配置される。外側板部52eの前側部分は、導体接続部92cの接続板92eにはんだ付け等により接続される。
【0112】
接続板部52fは、前後方向と垂直な面方向(Y-Z面方向)に広がる板状である。なお接続板部52fは、Y-Z面に対して傾斜する面方向に広がっていてもよい。すなわち、
図4に示すように左右方向(Y軸方向)と垂直な断面視で、接続板部52fは、上下方向(Z軸方向)に沿って延びていてもよいし、上下方向に対して傾斜して延びていてもよい。接続板部52fの下端部は、内側板部52dの前端部に接続される。接続板部52fの上端部は、外側板部52eの後端部に接続される。
【0113】
第2折り曲げ部56は、接続板部52fと、接続板部52fと内側板部52dの屈曲した接続部分(屈曲部)と、接続板部52fと外側板部52eの屈曲した接続部分(屈曲部)と、を含む。
また、接続板部52fと接続板92eとの間の前後方向の寸法L2は、接続板92eの上下方向の寸法(つまり板厚寸法)T2よりも大きい。言い換えると、第2端子92と第2折り曲げ部56との間の前後方向の距離は、第2端子92の上下方向の厚さ寸法よりも大きい。
【0114】
第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56の少なくとも1つは、クランク形状を有する。本実施形態では、第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56の両方が、屈曲したクランク形状を有する。
【0115】
(絶縁部材)
図3~
図5に示すように、絶縁部材60は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。本実施形態では絶縁部材60が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。絶縁部材60は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である。絶縁部材60は、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される。絶縁部材60を構成する樹脂材料の例は、前述した絶縁ケース10(カバー10A及び各保持部材10B~10D)と同様である。
【0116】
図4に示すように、絶縁部材60は、上下方向の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される。絶縁部材60は、ヒューズエレメント50と接近または接触して配置される。絶縁部材60とヒューズエレメント50との間の上下方向の寸法は、例えば、2mm以下である。絶縁部材60とヒューズエレメント50との間の上下方向の寸法は、好ましくは1.5mm以下であり、より望ましくは1mm以下である。
【0117】
絶縁部材60は、ヒューズエレメント50の上側と下側とに少なくとも2つ設けられる。すなわち、絶縁部材60は、ヒューズエレメント50を上下方向から挟持するように、少なくとも一対配置される。本実施形態では、ヒューズエレメント50が上下方向に並んで2つ設けられており、絶縁部材60は、上側のヒューズエレメント50の上側及び下側と、下側のヒューズエレメント50の上側及び下側とに、それぞれ設けられる。
【0118】
より詳しくは、上側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60と、下側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60とは、同一部品(共通品)である。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60とは、上下方向に交互に並んで配置されている。
【0119】
また、下側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60は、第1保持部材10Bと一体に形成されている。詳しくは、下側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60は、第1保持部材10Bの底壁10aの一部により構成されている。すなわち、絶縁部材60の少なくとも1つは、絶縁ケース10の一部と一体に形成される。なお、特に図示しないが、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60が、第2保持部材10Cと一体に形成されていてもよい。すなわち、2つの保持部材10B,10Cのうち、一方若しくは両方は、絶縁部材60と一体に形成される。
【0120】
また底壁10a(絶縁部材60)は、底壁10aのヒューズエレメント50に対向する面(上面)から窪む溝状の凹部19を有していても良い。凹部19は、可溶導体51よりも前側と後側とに、一対設けられる。凹部19は、左右方向に延びる。すなわち、凹部19は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向(本実施形態では概ね前後方向であり、部分的に上下方向を含む)と直交する方向に延びる。
【0121】
図3~
図5に示すように、絶縁部材60は、発熱体収容部61と、導体対向凹部62と、スリット部63と、通気孔64と、を有する。
発熱体収容部61は、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪む凹状である。本実施形態では発熱体収容部61が、絶縁部材60の一対の板面(上面及び下面)のうち、ヒューズエレメント50と対向する下面から上側に窪んで形成されている。本実施形態では発熱体収容部61が、前後方向において、絶縁部材60の中央部に配置される。発熱体収容部61は、左右方向に長い四角形穴状である。
【0122】
導体対向凹部62は、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪む凹状である。本実施形態では導体対向凹部62が、絶縁部材60の一対の板面(上面及び下面)のうち、ヒューズエレメント50と対向する上面から下側に窪んで形成されている。本実施形態では導体対向凹部62が、前後方向において、絶縁部材60の中央部に配置される。具体的に、導体対向凹部62は、ヒューズエレメント50の可溶導体51に対向して配置される。導体対向凹部62の前後方向の寸法は、発熱体収容部61の前後方向の寸法よりも小さい。導体対向凹部62の上下方向の寸法(深さ寸法)は、発熱体収容部61の上下方向の寸法よりも小さい。
【0123】
また、絶縁部材60はスリット部63を有していても良い。スリット部63は、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪み絶縁部材60を貫通するスリット状である。すなわち、スリット部63がスリット状であり、絶縁部材60を上下方向に貫通し、一対の板面(上面及び下面)のそれぞれに開口する。スリット部63は、可溶導体51よりも前側と後側とに、一対設けられる。スリット部63は、左右方向に延びる。すなわち、スリット部63は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向(本実施形態では概ね前後方向であり、部分的に上下方向を含む)と直交する方向に延びる。
スリット部63が絶縁部材60に配置されていると、ヒューズエレメント50の遮断後に絶縁部材60のヒューズエレメント50対向面に付着するヒューズエレメントの溶融飛散物がスリット部63で不連続となり、ヒューズエレメント50の遮断後の第1端子91と第2端子92との間の絶縁抵抗を好適に大きくすることができる。
【0124】
通気孔64は、絶縁部材60を上下方向に貫通する。通気孔64は、絶縁部材60に複数設けられる。複数の通気孔64は、絶縁部材60の左右方向の両端部にそれぞれ配置される。
【0125】
本実施形態では、スリット部63及び通気孔64を介して、ヒューズエレメント50が収容される室18と、内圧緩衝空間16とが連通する。このため、ヒューズエレメント50の過電流遮断時に、アーク放電の発生にともない室18に圧力上昇が生じた場合に、この圧力をスリット部63及び通気孔64を通して、内圧緩衝空間16に効率よく逃がすことができる。
【0126】
(発熱体)
図4及び
図5に示すように、発熱体80は、ヒューズエレメント50と上下方向に重なって配置される。発熱体80は、上下方向においてヒューズエレメント50と接触する。発熱体80は、給電部材90からの通電により発熱し、ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する。具体的に、発熱体80は、可溶導体51と上下方向に積層されており、通電による発熱で可溶導体51の少なくとも一部を溶融し溶断する。なお本実施形態では、「ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する」ことを、「ヒューズエレメント50を溶融し溶断する」などと省略して説明する場合がある。また、「可溶導体51の少なくとも一部を溶融し溶断する」ことを、「可溶導体51を溶融し溶断する」などと省略して説明する場合がある。また金属導体52の場合についても、上記同様である。
発熱体80は、ヒューズエレメント50と同数設けられる。本実施形態では発熱体80が、上下方向に並んで2つ設けられる。各発熱体80は、各ヒューズエレメント50と接触する。
【0127】
図3~
図6Bに示すように、発熱体80は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。本実施形態では発熱体80が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。発熱体80は、発熱体収容部61に配置される。すなわち、発熱体80は、絶縁部材60に収容される。
【0128】
発熱体80は、絶縁基板(基板)81と、絶縁基板81上に積層された抵抗層82と、絶縁基板81上に積層され、上下方向においてヒューズエレメント50側を向く金属層83と、絶縁層84と、発熱体電極85と、を有する。本実施形態では、発熱体80が左右方向に延びており、絶縁基板81、抵抗層82、金属層83及び絶縁層84も、それぞれ左右方向に延びる。
【0129】
具体的に、発熱体80は、ヒューズエレメント50に電流が流れる通電方向(本実施形態では概ね前後方向であり、部分的に上下方向を含む)と交差する方向に延びており、本実施形態では、通電方向と直交する方向(すなわち左右方向)に延びる。また、絶縁基板81、抵抗層82、金属層83及び絶縁層84も、それぞれ、通電方向と交差する方向に延びており、本実施形態では、通電方向と直交する方向(左右方向)に延びる。
【0130】
詳しくは、
図6Bに一例として示すように、発熱体80は、絶縁基板81の上面に前後方向に離間して配置され互いに平行に延びる2つの抵抗層82と、これらの抵抗層82を上側から覆う絶縁層84と、絶縁基板81上に形成され、抵抗層82の左右方向若しくは前後方向の両端部に電気的に接続される一対の発熱体電極85と、絶縁基板81の下面に配置される金属層83と(
図6A参照)、を有する。
【0131】
本実施形態では
図6Bに示すように、発熱体電極85が、前後方向に延びる第1電極部85aと、第1電極部85aに接続され左右方向に延びる第2電極部85bと、を有する。
第1電極部85aは、絶縁基板81の上面のうち左右方向の端部に配置される。第1電極部85aの少なくとも一部は、絶縁層84に覆われることなく発熱体80の外部に露出する。
【0132】
図6Bに示す例では、各発熱体電極85において、第2電極部85bが、前後方向に互いに間隔をあけて一対設けられている。また、抵抗層82の前後方向の両端部には、一対の発熱体電極85の各第2電極部85bが接続される。
【0133】
図5及び
図6Aに示すように、金属層83は、絶縁基板81の一対の板面(上面及び下面)のうち一方(本実施形態では下面)に配置され、抵抗層82は、一対の板面のうち他方(本実施形態では上面)に配置される。なお金属層83は、電極(ダミー電極)等と言い換えてもよい。
【0134】
抵抗層82は、通電すると発熱する導電性を有する材料、例えばニクロム、W、Mo、Ru等、又は、これらを含む材料からなる。抵抗層82は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板81上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成し、焼成する等によって形成する。
【0135】
図6Bに示すように、抵抗層82は、絶縁基板(基板)81上の前後方向の一部に配置されている。具体的に、抵抗層82は、絶縁基板81上の前後方向の端部に配置されており、本実施形態では一対の抵抗層82が、絶縁基板81の上面の前後方向の両端部に配置されている。すなわち、抵抗層82は、絶縁基板81上に前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。抵抗層82の前後方向の寸法は、絶縁基板81の前後方向の寸法の半分以下であり、本実施形態では、1/3以下である。
【0136】
絶縁基板81は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する基板である。絶縁層84は、抵抗層82の保護を図るために設けられる。絶縁層84の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどの絶縁材料を用いることができる。絶縁層84は、絶縁材料のペーストを塗布し、焼成する方法等によって形成することができる。
発熱体80の上面の発熱体電極85及び抵抗層82と、下面の金属層83とは、絶縁基板81により電気的に絶縁されている。
【0137】
発熱体80は、保護素子100の通電経路となる外部回路に異常が発生する等によって通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電され発熱される。
【0138】
図5に示すように、ヒューズエレメント50の可溶導体51の一部は、金属導体52と金属層83との間に形成された上下方向の隙間Gの一部に配置され、上下方向において金属導体52と金属層83との間に挟まれる。隙間Gは、可溶導体51の上下方向の寸法(厚さ寸法)と同じかそれより僅かに大きい寸法であり、具体的には、例えば数十μm~数百μmであって、本実施形態では50μm~100μm程度とされている。隙間Gは、後述するように、毛細管現象を発現することが可能な寸法であればよい。
なお
図5において、符号86は実装用のはんだ86を表しており、符号87は絶縁性のフラックスを表している。
図5に示すように、金属層83、可溶導体51及び金属導体52は、はんだ86により互いに接続され、固定されている。
【0139】
詳しくは、
図5及び
図6Aに示すように、金属層83は、発熱体80に複数設けられる。複数の金属層83は、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。各金属層83は、ヒューズエレメント50の一部と対向する。複数の金属層83は、第1金属導体52Aと上下方向に第1の隙間G1をあけて配置される第1金属層83Aと、第2金属導体52Bと上下方向に第2の隙間G2をあけて配置される第2金属層83Bと、を含む。第1金属層83Aは、絶縁基板81上の前後方向の一端部に配置され、第2金属層83Bは、絶縁基板81上の前後方向の他端部に配置される。具体的に本実施形態では、第1金属層83Aが、絶縁基板81の下面の前後方向の後端部に配置され、第2金属層83Bが、絶縁基板81の下面の前後方向の前端部に配置されている。
【0140】
絶縁基板81の上面に設けられる複数(2つ)の抵抗層82は、上下方向から見て、それぞれ、第1金属層83A及び第2金属層83Bと重なる。このため、給電部材90から発熱体電極85に給電が行われ、各抵抗層82が発熱すると、絶縁基板81を介して第1金属層83A及び第2金属層83Bに熱が伝わり、これらの金属層83A,83Bが加熱される。
【0141】
なお、抵抗層82は、
図6Cに示す発熱体80の他の例のように、絶縁基板81上に1つのみ設けられていてもよい。この場合、1つの抵抗層82は、上下方向から見て、第1金属層83A及び第2金属層83Bの少なくとも一部と重なって配置される。好ましくは、1つの抵抗層82は、上下方向から見て、第1金属層83A及び第2金属層83Bの両方と重なって配置される。1つの抵抗層82は、絶縁基板81の上面の全域にわたって配置されていてもよい。また
図6Cに示す例では、各発熱体電極85が、第2電極部85bを1つ備える。
【0142】
図5に示すように、可溶導体51の第1端部51aは、第1の隙間G1の一部に配置され、上下方向において第1金属導体52Aと第1金属層83Aとの間に挟まれる。また、可溶導体51の第2端部51bは、第2の隙間G2の一部に配置され、上下方向において第2金属導体52Bと第2金属層83Bとの間に挟まれる。
【0143】
ここで、
図7は、遮断信号による発熱体80の発熱によってヒューズエレメント50の一部が溶断した状態を表している。
発熱体80の発熱により溶融した可溶導体51の第1端部51a付近の溶融物88(可溶導体51の第1端部51a及びはんだ86を含む溶融物)は、第1の隙間G1に毛細管現象により浸入しつつ後側へ流動する。また、可溶導体51の第2端部51b付近の溶融物89(可溶導体51の第2端部51b及びはんだ86を含む溶融物)は、第2の隙間G2に毛細管現象により浸入しつつ前側へ流動する。これにより、可溶導体51は前後方向に分割されるように溶断され、ヒューズエレメント50の通電が遮断される。すなわち本実施形態では、発熱体80の発熱により溶融した可溶導体51の溶融物88,89が、隙間Gに毛細管現象により浸入しつつ流動することで、可溶導体51が溶断される。
【0144】
図5及び
図6Aに示すように、複数の金属層83は、さらに、第1金属層83Aと第2金属層83Bとの間に配置される中間金属層83Cを含む。中間金属層83Cは、前後方向において、第1金属層83Aと第2金属層83Bとの間に配置される。また、中間金属層83Cの前後方向の寸法は、第1金属層83Aの前後方向の寸法よりも小さく、かつ、第2金属層83Bの前後方向の寸法よりも小さい。中間金属層83C、第1金属層83A、及び第2金属層83Bは、抵抗層82と電気的に絶縁されている。
【0145】
可溶導体51のうち第1端部51aと第2端部51bとの間に位置する中間部分は、はんだ86により中間金属層83Cに接続される。
図7に示すように、遮断信号によって発熱体80が発熱したときに、可溶導体51のうち第1端部51aと第2端部51bとの間に位置する中間部分は、中間金属層83Cに接続された状態のまま、保持される。
発熱体80の発熱量が多い場合は、中間金属層83Cに接続された可溶導体51(の上記中間部分)も溶融し、中間金属層83Cの表面に可溶導体51の溶融物の一部が保持される。
【0146】
また、
図8は、定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)によってヒューズエレメント50の一部が溶断(消失)した状態を表している。
図8に示すように、ヒューズエレメント50に所定以上の電流が流れたときに、可溶導体51の少なくとも一部または、可溶導体51の少なくとも一部及び金属導体52の少なくとも一部は溶断され、ヒューズエレメント50の通電が遮断される。
図8に示す例では、可溶導体51の少なくとも一部及び金属導体52の少なくとも一部が溶断されており、より詳しくは、可溶導体51のすべてと、第1金属導体52Aの前端部と、第2金属導体52Bの後端部とが、過電流により消失している。
【0147】
(給電部材)
図2に示すように、給電部材90は、発熱体80へ給電する部材である。給電部材90は、絶縁ケース10の外部と内部とにわたって延びており、その一端部が発熱体80の発熱体電極85に接続される。具体的に、給電部材90の一端部は、発熱体電極85の第1電極部85aに接続される。給電部材90の一端部と発熱体電極85の第1電極部85aとは、例えばはんだで接続される。給電部材90の一端部と発熱体電極85の第1電極部85aとの接続部の一部、もしくは全部は、接着剤で覆われるように固定されていてもよく、また、接着剤の一部は絶縁部材60とも接着されていてもよい。これにより、発熱体80に通電する際に、ヒューズエレメント50の溶断より先に給電部材90と発熱体電極85の第1電極部85aを接続しているはんだが溶融して通電が切断されることを防ぐことができる。本実施形態では、給電部材90の少なくとも一部が、電線(配線部材)により構成される。ただしこれに限らず、特に図示しないが、給電部材の少なくとも一部が、導電性を有する板状部材や棒状部材などにより構成されていてもよい。
【0148】
(本実施形態の作用効果)
以上説明した本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流(すなわち所定以上の電流)が流れた場合、ヒューズエレメント50が発熱し溶断されて、電流経路が遮断される。あるいは、この保護素子100は、発熱体80に電流を通電して発熱させることにより、発熱体80に積層されるヒューズエレメント50を溶融し溶断させて、電流経路を遮断させることが可能である。
【0149】
また本実施形態では、絶縁部材60が、ヒューズエレメント50に上下方向の両側から対向して配置されている。詳しくは、絶縁部材60が、ヒューズエレメント50に対して上側及び下側から接近若しくは接触しており、好ましくは密着する。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、過電流遮断時においてアーク放電が確実に消滅する。
【0150】
以上より本実施形態によれば、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子100を提供することができる。
【0151】
また本実施形態では、ヒューズエレメント50が、発熱体80と積層される可溶導体51と、第1端子91または第2端子92と可溶導体51とを接続する金属導体52と、を有し、可溶導体51は、金属導体52よりも溶融温度が低い。
この場合、発熱体80と、溶融温度が低い可溶導体51とが重なって配置されるため、発熱体80に通電して発熱体80を発熱させたときに、可溶導体51が安定して溶融し溶断される。このため、遮断信号による電流経路の遮断をより確実に行うことができる。
【0152】
また本実施形態において、可溶導体51は、金属導体52よりも電気抵抗率が高い。
この場合、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流が流れたときに、電気抵抗率の高い可溶導体51がヒートスポットとなり、可溶導体51においてヒューズエレメント50が安定して溶断される。
【0153】
また本実施形態では、可溶導体51が、Snを含む低融点金属層と、Ag若しくはCuを含む高融点金属層とが積層された積層体を有し、この積層体は、低融点金属層を1層以上有し、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された構成である。
この場合、積層体の外側に高融点金属層が配置されるため、可溶導体51の強度が高くなる。可溶導体51を金属導体52や発熱体80と接続する際に、はんだ付け時の加熱による可溶導体51の変形等が起こりにくくなる。
【0154】
また本実施形態では、絶縁部材60とヒューズエレメント50との間の上下方向の寸法が、2mm以下である。
この場合、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間に形成される空間が狭くされているため、ヒューズエレメント50が過電流遮断で溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすい。つまり、溶断空間が狭いとその空間内の気体が少なくなり、アーク放電中に電流が流れる経路となる「空間内の気体が電離して発生するプラズマ」の量も少なくなり、アーク放電を早期に消弧し易くなる。上記寸法は、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがより望ましい。
【0155】
また本実施形態では、絶縁部材60が発熱体収容部61を有し、発熱体80は、発熱体収容部61に配置される。
この場合、発熱体80を発熱体収容部61に収容することで、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面のうち、発熱体収容部61以外の部分をヒューズエレメント50により接近若しくは接触させて配置することができる。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、アーク放電がより確実に抑えられる。
【0156】
また本実施形態では、絶縁部材60が、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪み絶縁部材60を貫通するスリット部63、または、底壁10a(複数の絶縁部材60のうち最下部の絶縁部材60に相当)のヒューズエレメント50に対向する上面から窪む溝状の凹部19を有している。そして、スリット部63または凹部19は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向と直交する方向に延びている。
この場合、スリット部63または凹部19が設けられることで、過電流遮断によりヒューズエレメント50が溶断したときに周囲に飛散する溶融飛散物が、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面上で連続的に形成されるようなことを抑制できる。これにより、電流経路の遮断後の絶縁抵抗を安定して高めることができる。
【0157】
また本実施形態では、絶縁部材60が、ヒューズエレメント50の上側と下側とに少なくとも2つ設けられ、絶縁部材60の少なくとも1つは、絶縁ケース10の一部と一体に形成される。
具体的には、絶縁部材60が保持部材10B(絶縁ケース10の一部)と一体化している。このため、部品点数を削減して保護素子100の製造を容易化したり、製造コストを削減したりすることができる。
【0158】
また本実施形態では、絶縁ケース10が、絶縁ケース10の内部に形成され、ヒューズエレメント50が配置される室(空間)18と連通する内圧緩衝空間16を有する。
この場合、ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子100の内圧の急激な上昇を、内圧緩衝空間16によって抑えることができる。これにより、絶縁ケース10の破損等を防止できる。
【0159】
また本実施形態では、可溶導体51の一部が、金属導体52と金属層83との間に形成された上下方向の隙間Gの一部に配置され、上下方向において金属導体52と金属層83との間に挟まれている。
この場合、抵抗層(ヒーター)82が通電により発熱し、この熱が絶縁基板(ヒーター基板)81を介して金属層(ダミー電極)83に伝わるとともに、金属層83と金属導体52との間で可溶導体51の一部が溶融される。遮断信号により可溶導体51を効率よく溶融し、確実に溶断させることができる。
【0160】
また本実施形態では、発熱体80の発熱により溶融した可溶導体51の溶融物88,89が、隙間Gに毛細管現象により浸入しつつ流動することで、可溶導体51が溶断される。
この場合、可溶導体51の溶融物88,89が、金属導体52と金属層83の隙間Gに毛細管現象により吸い込まれることで、溶融物88,89を所望の向きに流動させて、可溶導体51をより確実に溶断させることができる。
【0161】
また本実施形態では、具体的に、可溶導体51の第1端部51aは、第1の隙間G1の一部に配置され、上下方向において第1金属導体52Aと第1金属層83Aとの間に挟まれ、可溶導体51の第2端部51bは、第2の隙間G2の一部に配置され、上下方向において第2金属導体52Bと第2金属層83Bとの間に挟まれる。
この場合、発熱体80の発熱により、第1金属層83Aと第1金属導体52Aとの間で可溶導体51の第1端部51a付近が溶融され、第2金属層83Bと第2金属導体52Bとの間で可溶導体51の第2端部51b付近が溶融される。可溶導体51が通電方向の両端部において溶融されるため、遮断信号によりヒューズエレメント50をより確実に溶断させることができる。
【0162】
また本実施形態では、具体的に、発熱体80の発熱により溶融した可溶導体51の第1端部51a付近の溶融物88が、第1の隙間G1に毛細管現象により浸入しつつ流動し、かつ、可溶導体51の第2端部51b付近の溶融物89が、第2の隙間G2に毛細管現象により浸入しつつ流動することで、可溶導体51が溶断される。
この場合、可溶導体51の溶融物88,89が、通電方向の両端部付近において、それぞれ毛細管現象により吸い込まれつつ流動することで、可溶導体51がより確実に溶断させられる。
【0163】
また本実施形態では、複数の金属層83が、さらに中間金属層83Cを含み、可溶導体51のうち第1端部51aと第2端部51bとの間に位置する中間部分が、中間金属層83Cに接続される。
上記構成では、可溶導体51が、上述のように通電方向の両端部付近においてそれぞれ溶断されても、可溶導体51の中間部分が、中間金属層83Cにより保持された状態が維持される。これにより、可溶導体51での溶断がより確実に行える。
【0164】
詳しくは、中間金属層83Cが設けられることで、溶融後の可溶導体51は、第1の隙間G1に配置される部分88(第1端部51a付近)と、第2の隙間G2に配置される部分89(第2端部51b付近)と、中間金属層83Cに保持される部分(中間部分付近)と、の3箇所に分割されることになる。可溶導体51が3つの分割体に分割されることにより、各分割体の容積(体積)は減り、溶融量も低減して、溶融物の流動がコントロールしやすくなる。
【0165】
より詳しくは、例えば、可溶導体51の溶融物が、表面張力の作用等により可溶導体51の左右方向の中央部付近に集まって意図しない瘤を作ったり、X-Y面内で回転しつつ流動したりすることで、可溶導体51の通電の遮断が不安定になるような不具合を、本実施形態の中間金属層83Cによって抑制することができる。
【0166】
また本実施形態では、発熱体80が、絶縁基板81と、絶縁基板81上に積層された抵抗層82と、絶縁基板81上に積層され、ヒューズエレメント50の一部と対向する金属層83と、を有しており、抵抗層82は、ヒューズエレメント50に電流が流れる通電方向と交差する方向(本実施形態では左右方向)に延び、絶縁基板81上の前後方向の一部に配置される。
【0167】
この場合、抵抗層(ヒーター)82が通電により発熱し、この熱が絶縁基板(ヒーター基板)81を介して金属層(ダミー電極)83に伝わることで、金属層83と対向するヒューズエレメント50の一部が溶融される(本実施形態では可溶導体51が溶融される)。遮断信号によって発熱体80が発熱したときに、ヒューズエレメント50の一部を効率よく溶融し、溶断させることができる。
【0168】
そして抵抗層82が、絶縁基板81上の前後方向(X軸方向)の一部に配置されている。このため、抵抗層82が発熱したときに、絶縁基板81が受ける熱負荷を小さく抑えることができる。大きな熱負荷によって絶縁基板81が割損するような不具合を、安定して抑制することができる。
【0169】
また本実施形態では、抵抗層82が、絶縁基板81上の前後方向の端部に配置されている。
この場合、抵抗層82の発熱によって絶縁基板81が受ける熱負荷を小さく抑えつつ、絶縁基板81の端部に加熱箇所を集中させることで、ヒューズエレメント50の一部を効率よく溶融し、確実に溶断させることができる。
【0170】
また本実施形態では、抵抗層82の前後方向の寸法が、絶縁基板81の前後方向の寸法の半分以下である。
この場合、抵抗層82の発熱によって絶縁基板81が受ける熱負荷を安定して小さく抑えることができる。なお、より好ましくは、抵抗層82の前後方向の寸法は、絶縁基板81の前後方向の寸法の1/3以下である。
【0171】
また本実施形態では、抵抗層82が、絶縁基板81上に前後方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。
この場合、各抵抗層82が発熱することでヒューズエレメント50をより確実に溶断させることができ、かつ、絶縁基板81が受ける熱負荷を小さく抑えることができる。
【0172】
また本実施形態では、ヒューズエレメント50が、前後方向において第1端子91と絶縁部材60との間に配置される第1折り曲げ部55と、前後方向において第2端子92と絶縁部材60との間に配置される第2折り曲げ部56と、を有し、第1端子91と第1折り曲げ部55との間の前後方向の距離L1が、第1端子91の上下方向の厚さ寸法T1よりも大きく、第2端子92と第2折り曲げ部56との間の前後方向の距離L2が、第2端子92の上下方向の厚さ寸法T2よりも大きい。
本実施形態では、絶縁部材60によりヒューズエレメント50を上側及び下側から挟み込む構成を採用しており、これにより、ヒューズエレメント50の溶断部分の周囲の空間(遮断空間)の空気を極力排除することで、過電流遮断時のアーク放電の経路となる空気のプラズマの発生量を抑制している。しかしながらその一方で、保護素子100が設置される周囲の温度変化にともなう熱膨張や熱収縮等により、第1端子91と第2端子92との間の前後方向の距離が変化した場合に、ヒューズエレメント50がこの変化に十分に追従できずに、断線する可能性が考えられる。特に本実施形態のように、第1端子91及び第2端子92が樹脂製の保持部材10Bに位置決めされていて、保持部材10Bの温度変化にともなう熱膨張や熱収縮に影響を受けやすい場合や、第1端子91及び第2端子92が接続される保護素子100外部のバスバー等の部材の位置変化等により影響を受ける場合がある。
【0173】
この点、本実施形態では、ヒューズエレメント50に第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56が設けられるため、保護素子100が設置される周囲の温度変化等により、第1端子91と第2端子92との間の前後方向の距離が変化した場合であっても、第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56によって、ヒューズエレメント50の前後方向の寸法を伸縮させることができる。すなわち、簡素な構造により、端子91,92間距離の変化にヒューズエレメント50を追従させることができる。
【0174】
詳しくは、第1端子91と第1折り曲げ部55との間の前後方向の距離L1が、第1端子91の上下方向の厚さ寸法T1よりも大きくされている。このため、ヒューズエレメント50と第1端子91とを接続するはんだ等が、第1端子91からヒューズエレメント50側にはみ出しても、第1折り曲げ部55に達するようなことは防止される。これにより、第1折り曲げ部55と第1端子91とが固着される不具合が抑えられ、第1折り曲げ部55によるヒューズエレメント50の伸縮機能が安定して奏功される。
【0175】
また、第2端子92と第2折り曲げ部56との間の前後方向の距離L2が、第2端子92の上下方向の厚さ寸法T2よりも大きくされている。このため、ヒューズエレメント50と第2端子92とを接続するはんだ等が、第2端子92からヒューズエレメント50側にはみ出しても、第2折り曲げ部56に達するようなことは防止される。これにより、第2折り曲げ部56と第2端子92とが固着される不具合が抑えられ、第2折り曲げ部56によるヒューズエレメント50の伸縮機能が安定して奏功される。
【0176】
したがって本実施形態によれば、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制しつつ、温度変化等でヒューズエレメント50に引っ張りや圧縮などの過大な負荷が作用しヒューズエレメント50が断線するような不具合を、安定して防止することができる。
【0177】
また本実施形態では、第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56の少なくとも1つは、クランク形状を有する。
この場合、第1折り曲げ部55または第2折り曲げ部56によるヒューズエレメント50の伸縮機能がより安定して奏功される。
【0178】
また本実施形態では、絶縁ケース10が、上下方向においてヒューズエレメント50の両側に配置される少なくとも2つの保持部材10B,10Cを有し、第1端子91の一部、第2端子92の一部、及びヒューズエレメント50は、2つの保持部材10B,10Cの間に配置され、2つの保持部材10B,10Cのうち、一方若しくは両方が、絶縁部材60と一体に形成されている。
この場合、絶縁部材60が絶縁ケース10の一部と一体化している。このため、部品点数を削減して保護素子100の製造を容易化したり、製造コストを削減したりすることができる。
【0179】
また本実施形態では、絶縁ケース10が、少なくとも2つの保持部材10B~10Dを収容するカバー10Aを有し、カバー10Aは、少なくとも2つの保持部材10B~10Dを固定した状態で保持する。
この場合、複数の保持部材10B~10Dをカバー10Aに収容することで、これらの保持部材10B~10Dが、互いに固定された状態で維持される。複数の保持部材10B,10C間に配置される第1端子91の一部、第2端子92の一部及びヒューズエレメント50の姿勢が安定する。
【0180】
また本実施形態では、絶縁部材60は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である。
この場合、アーク放電によって絶縁部材60の表面に導電路となる炭化物が形成されにくくなるので、リーク電流がより発生しにくくなる。
【0181】
また本実施形態では、絶縁部材60が、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される。
樹脂材料は、例えばセラミック材料等に比べて熱容量が小さく、融点も低い。本実施形態のように、絶縁部材60の材料として樹脂材料を用いると、ガス化冷却(アブレーション)によるアーク放電を弱める特性や、溶融飛散した金属粒子が絶縁部材60に付着する際に、絶縁部材60の表面が変形したり付着物が凝集したりすることで、金属粒子が疎らとなり、伝導パスを形成し難い特性があることから、好ましい。
【0182】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0183】
前述の実施形態では、ヒューズエレメント50が、互いに材料の異なる可溶導体51と金属導体52とを有している例を挙げたが、これに限らない。ヒューズエレメント50は、その全体が、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成されていてもよい。この場合、ヒューズエレメント50は、Cu若しくはAgを含む。ヒューズエレメント50は、Cu単体であってもよいし、Ag単体であってもよいし、Cu合金であってもよいし、Ag合金であってもよい。
【0184】
上記構成によれば、ヒューズエレメント50が高融点金属層と低融点金属層の積層体である場合と比較して、電気抵抗率が小さくなりやすい。このため、Cu若しくはAgを含む単層体からなるヒューズエレメント50は、高融点金属層と低融点金属層の積層体からなるヒューズエレメント50と同じ面積で同等の電気抵抗を有する場合でも、厚みを薄くすることができる。ヒューズエレメント50の厚みが薄いと、ヒューズエレメント50が溶断したときの溶融飛散物量も厚みに比例して少なくなり、遮断後の絶縁抵抗が高くなる。
【0185】
(保護素子(第1変形例))
図9は、第1変形例の保護素子110の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。この第1変形例では、前述の実施形態で説明した保護素子100と比べて、内圧緩衝空間16の上下方向の寸法が小さい。具体的に、第1変形例の内圧緩衝空間16の上下方向の寸法は、保護素子110全体の上下方向の寸法(外形高さ)を基準として、例えば、1/5以上1/3以下である。
このように、内圧緩衝空間16の上下方向の寸法を適切に設定することにより、保護素子110のコンパクト化を図ることができる。
【0186】
(保護素子(第2変形例))
図10は、第2変形例の保護素子120の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。この第2変形例では、絶縁ケース10の内部に、内圧緩衝空間16が設けられていない。また、絶縁ケース10が第3保持部材10Dを有していない。
ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子120の内圧の急激な上昇を、室(空間)18等によって十分に抑えることができる場合には、このように内圧緩衝空間16を設けない構成とすることも可能である。この場合、保護素子120のさらなるコンパクト化を図ることができる。
【0187】
(保護素子(第3変形例))
図11は、第3変形例の保護素子130の一部を示す断面図である。この第3変形例では、発熱体80が、可溶導体51の下側に配置されており、可溶導体51の下面と接続されている。この第3変形例によっても、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0188】
(保護素子(第4変形例))
図12及び
図13は、第4変形例の保護素子140の一部を示す断面図である。
図12に示すように、この第4変形例では、絶縁部材60が、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面(下面)から上側に窪む凹状の導体対向凹部62を有する。
図13に示すように、遮断信号により発熱体80が発熱したときに、この発熱により溶融した可溶導体51M(51)の少なくとも一部は、導体対向凹部62に配置される。
【0189】
この場合、溶融した可溶導体51Mの少なくとも一部が導体対向凹部62に収容されることで、可溶導体51Mの表面張力の作用を促すなどにより、可溶導体51Mを金属導体52から安定して離間させることができる。これにより、可溶導体51M(51)と金属導体52との導通(回路)を安定して遮断することができる。
【0190】
(保護素子(第5変形例))
図14は、第5変形例の保護素子150の一部を示す断面図である。
図14に示すように、この第5変形例では、金属導体52A(52)が、可溶導体51よりも電気抵抗が高い遮断部52gを有する。
この場合、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流が流れたときに、電気抵抗の高い金属導体52Aの遮断部52gがヒートスポットとなり、遮断部52gにおいてヒューズエレメント50が安定して溶断される。
【0191】
遮断信号による遮断箇所(可溶導体51)と、過電流遮断による遮断箇所(遮断部52g)とを別々に設けることができるため、
図14に示すように、遮断部52gに上下方向から絶縁部材60をより接近若しくは接触させて配置することが可能になる。このため、遮断部52gの溶断時に発生するアーク放電をより迅速かつ確実に消滅させることができる。
【0192】
詳しくは、この第5変形例では、遮断部52gにおける電流が流れる通電方向(前後方向)と垂直な断面(Y-Z断面)の断面積が、金属導体52のうち遮断部52g以外の部分における前記断面積よりも小さい。図示の例では、遮断部52gの上下方向の寸法(厚さ寸法)が、金属導体52のうち遮断部52g以外の部分における上下方向の寸法よりも小さくされている。
この場合、簡素な構造によって、金属導体52のうち遮断部52gの電気抵抗を他の部分の電気抵抗よりも高めて、遮断部52gを確実に溶断させることができる。
【0193】
(保護素子(第6変形例))
図15は、第6変形例の保護素子160の一部(ヒューズエレメント50)を示す上面図である。
図15に示すように、この第6変形例では、遮断部52gが、金属導体52を上下方向に貫通する複数の貫通孔52hを有する。これにより遮断部52gは、電流が流れる通電方向(前後方向)と垂直な断面(Y-Z断面)の断面積が、金属導体52のうち遮断部52g以外の部分における前記断面積よりも小さくされている。
この構成によっても、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0194】
(保護素子(第7変形例))
図16は、第7変形例の保護素子170の一部(ヒューズエレメント50)を示す上面図である。
図16に示すように、この第7変形例では、遮断部52gが、金属導体52の一部を切り欠く複数の切欠き部52iを有する。これにより遮断部52gは、電流が流れる通電方向(前後方向)と垂直な断面(Y-Z断面)の断面積が、金属導体52のうち遮断部52g以外の部分における前記断面積よりも小さくされている。
この構成によっても、上述と同様の作用効果を得ることができる。
また、金属導体52の遮断部52gは、ヒューズエレメント50に電流が流れる通電方向において、複数箇所に設けられていてもよい。
【0195】
(保護素子(第8変形例))
図17は、第8変形例の保護素子180の一部を示す断面図である。
図17に示すように、この第8変形例では、発熱体80が、可溶導体51の上側と下側とにそれぞれ配置されている。すなわち、発熱体80は、上下方向においてヒューズエレメント50の両側に設けられる。
【0196】
この場合、ヒューズエレメント50を上下方向から挟むように配置される一対の発熱体80により、アクティブ遮断時においてヒューズエレメント50がより確実に溶融し、溶断される。
【0197】
(保護素子(第9変形例))
図18は、第9変形例の保護素子の一部(発熱体80)を示す上面図である。
図18に示すように、この第9変形例では、発熱体80が、抵抗層82を1つ有する。抵抗層82は、絶縁基板81上の前後方向の一部に配置されており、具体的には、絶縁基板81の上面の前後方向の端部に配置されている。また、一対の発熱体電極85はそれぞれ、1つの第1電極部85aと、第1電極部85aから左右方向に延びる1つの第2電極部85bと、を有する。
この第9変形例によっても、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0198】
(保護素子(第10変形例))
図19は、第10変形例の保護素子の一部(発熱体80)を示す上面図である。
図19に示すように、この第10変形例では、発熱体80が、抵抗層82を複数有しており、具体的には3つ有する。3つの抵抗層82は、絶縁基板81の上面のうち、前後方向の両端部、及び両端部間に位置する中間部分に配置されている。また、一対の発熱体電極85はそれぞれ、1つの第1電極部85aと、第1電極部85aから左右方向に延び、前後方向に並んで配置される3つ(複数)の第2電極部85bと、を有する。
この第10変形例によっても、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0199】
(保護素子(第11変形例))
図20は、第11変形例の保護素子の一部(発熱体80)を示す斜視図である。
図20に示すように、第11変形例では、発熱体80が中間金属層83Cを有していない。
例えば、抵抗層82(発熱体80)の発熱量が大きく、抵抗層82への通電時に、可溶導体51のうち中間金属層83Cに接続された部分(可溶導体51の前後方向の中間部分)がすべて溶融するような場合には、中間金属層83Cによる機能(可溶導体51の一部を保持する機能)が十分に得られない可能性がある。このような場合には、上記構成のように中間金属層83Cを設けないことで、発熱体80の製造コストを削減してもよい。
【0200】
(保護素子(第12変形例))
図21は、第12変形例の保護素子の一部(発熱体80)を示す斜視図である。
図21に示すように、第12変形例では、発熱体80が、絶縁基板81上に積層される保持金属層93を有する。保持金属層93は、上下方向においてヒューズエレメント50側を向く。具体的に、保持金属層93は、絶縁基板81の上下方向を向く一対の板面のうち、金属層83が配置される板面と同じ板面(図示の例では下面)に配置されている。
【0201】
保持金属層93は、金属層83と同じ材料により構成される。保持金属層93及び金属層83は、例えば同一の印刷工程によって、絶縁基板81上に形成される。保持金属層93は、複数の金属層83のうちいずれか1つと接続されている。具体的に、保持金属層93は、第1金属層83Aまたは第2金属層83Bに接続され、図示の例では、第1金属層83Aに接続されている。すなわち、保持金属層93は、金属層83と一体に形成されている。保持金属層93は、金属層83のうちヒューズエレメント50の通電方向と交差する方向(左右方向)の端部に接続される。保持金属層93は、ヒューズエレメント50の溶融物を保持可能である。なお、本明細書で言う「ヒューズエレメント50の溶融物」には、可溶導体51の溶融物の他、実装用はんだ86の溶融物も含まれる。溶融物は、はんだ溜まり等と言い換えてもよい。
【0202】
保持金属層93は、第1金属層83A(金属層83)の左右方向の端部から突出している。具体的に、保持金属層93は、第1金属層83Aの左右方向の端部から、発熱体80の左右方向の外側(左右方向において中央部とは反対側)へ向けて突出し、かつ発熱体80の前後方向の内側(前後方向の中央部側)へ向けて突出している。図示の例では、保持金属層93が、左右方向に互いに間隔をあけて一対設けられている。一対の保持金属層93は、第1金属層83Aの左右方向の両端部に接続されている。一対の保持金属層93は、絶縁基板81のヒューズエレメント50側を向く板面の左右方向の両端部に配置され、それぞれ前後方向に延びている。
【0203】
この第12変形例によれば、抵抗層82の熱が金属層83に伝わってヒューズエレメント50の一部が溶融させられたときに、下記の作用効果が得られる。すなわち、ヒューズエレメント50の溶融物が、金属層83を伝って金属層83が延びる方向(左右方向)に流動し、金属層83の端部付近に溜まってしまうようなことがあっても、この端部に接続された保持金属層93によって、溶融物が保持される。保持金属層93によって、溶融物を所定の位置に安定して保持することができ、溶融物の流動を制御できるため、この溶融物によって通電の遮断(アクティブ遮断)が阻害されるなどの不具合を、安定して抑制することができる。
【0204】
具体的に、第12変形例では、保持金属層93が、第1金属層83Aまたは第2金属層83Bに接続されている。
この場合、ヒューズエレメント50の溶融物が、第1金属層83Aの延在方向(左右方向)の端部付近、または、第2金属層83Bの延在方向の端部付近に溜まってしまうことがあっても、この端部に接続された保持金属層93によって、溶融物を安定して保持できる。
【0205】
(保護素子(第13変形例))
図22は、第13変形例の保護素子の一部(発熱体80)を示す斜視図である。
図22に示すように、保持金属層93が、中間金属層83Cに接続されていてもよい。具体的に、保持金属層93は、中間金属層83Cの左右方向の端部から、発熱体80の左右方向の外側(左右方向において中央部とは反対側)へ向けて突出し、かつ発熱体80の前後方向の外側(前後方向において中央部とは反対側)へ向けて突出している。図示の例では、保持金属層93が、左右方向に互いに間隔をあけて一対設けられている。一対の保持金属層93は、中間金属層83Cの左右方向の両端部に接続されている。
また、保持金属層93は、第1金属層83Aまたは第2金属層83Bに接続されても良い。
【0206】
この第13変形例によれば、ヒューズエレメント50の溶融物が、中間金属層83Cの延在方向(左右方向)の端部付近に溜まってしまうことがあっても、この端部に接続された保持金属層93によって、溶融物を安定して保持できる。また保持金属層93が、第1金属層83Aまたは第2金属層83Bに接続される場合には、ヒューズエレメント50の溶融物が、第1金属層83Aの延在方向(左右方向)の端部付近、または、第2金属層83Bの延在方向の端部付近に溜まってしまうことがあっても、この端部に接続された保持金属層93によって、溶融物を安定して保持できる。
すなわち、保持金属層93は、中間金属層83C、第1金属層83A、及び第2金属層83Bのうちいずれかに接続される。より詳しくは、保持金属層93は、中間金属層83C、第1金属層83A、及び第2金属層83Bのうち、1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)に接続される。
【0207】
(保護素子(第14変形例))
図23は、第14変形例の保護素子の一部を示す断面図であり、
図4に示す断面図の一部に対応している。
図23に示すように、第14変形例では、保護素子が備える複数の絶縁部材60のうち、上側のヒューズエレメント50に下側から対向する絶縁部材60が、収容貫通孔67(収容凹部69)を有する。収容貫通孔67は、絶縁部材60を上下方向に貫通しており、例えば略四角形孔状をなしている。収容貫通孔67は、絶縁部材60のスリット部63の左右方向の端部と接続されている。収容貫通孔67は、絶縁部材60に、左右方向に互いに間隔をあけて一対設けられている。一対の収容貫通孔67は、スリット部63の左右方向の両端部に接続されている。
【0208】
収容貫通孔67(収容凹部69)は、保護素子が備える一対の発熱体80のうち、上側の発熱体80の保持金属層93の直下に配置されている。すなわち、収容貫通孔67は、保持金属層93と対向する。収容貫通孔67は、保持金属層93に保持されたヒューズエレメント50の溶融物を収容可能である。
【0209】
また、保護素子が備える複数の絶縁部材60のうち、下側のヒューズエレメント50に下側から対向する絶縁部材60は、収容穴68(収容凹部69)を有する。詳しくは、下側のヒューズエレメント50に下側から対向する絶縁部材60は、第1保持部材10Bの底壁10aの一部により構成されており、この底壁10aが、底壁10aの上面から窪む収容穴68を有する。収容穴68は、底壁10aに設けられた溝状の凹部19の左右方向の端部と接続されている。収容穴68は、底壁10aに、左右方向に互いに間隔をあけて一対設けられている。一対の収容穴68は、凹部19の左右方向の両端部に接続されている。
【0210】
収容穴68(収容凹部69)は、保護素子が備える一対の発熱体80のうち、下側の発熱体80の保持金属層93の直下に配置されている。すなわち、収容穴68は、保持金属層93と対向する。収容穴68は、保持金属層93に保持されたヒューズエレメント50の溶融物を収容可能である。
【0211】
特に図示しないが、保持金属層93に保持されたヒューズエレメント50の溶融物は、例えば液滴状の形状を有しており、保持金属層93の下側にぶら下がる。この第14変形例のように、ヒューズエレメント50の下側に配置される絶縁部材60または底壁10aに、収容凹部69としての収容貫通孔67または収容穴68が設けられることで、各保持金属層93に保持された溶融物が、収容凹部69内に配置される。収容凹部69が設けられることによって、保持金属層93が溶融物を安定して保持でき、例えば溶融物の意図しない流動等によって短絡などの不具合が生じることを抑制できる。
【0212】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、他の実施形態や変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0213】
(保護素子(第2実施形態))
本発明の第2実施形態に係る保護素子について、
図24~
図35を参照して説明する。第2実施形態の保護素子は、主に、抵抗層201を備える絶縁基板202上の電極等の配置態様が、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0214】
図24は、第2実施形態の発熱体80の一例を示す上面図である。
図24の例では、保護素子は、抵抗層201を備える絶縁基板202と、絶縁基板202に搭載される可溶導体51(
図24では不図示)と、抵抗層201に接続される第1の電極211及び第2の電極212と、絶縁基板202に配置された第3の電極213と、第1の電極211と第3の電極213との間を繋ぐ第5の電極215と、第3の電極213及び第5の電極215上に形成された第1の金属221と、を備える。
【0215】
図25は、第2実施形態の発熱体80の他の例を示す上面図である。
図25の例では、保護素子は、抵抗層201を備える絶縁基板202と、絶縁基板202に搭載される可溶導体51(
図25では不図示)と、抵抗層201に接続される第1の電極211及び第2の電極212と、絶縁基板202に配置された第3の電極213及び第4の電極214と、第1の電極211と第3の電極213との間を繋ぐ第5の電極215と、第2の電極212と第4の電極214との間を繋ぐ第6の電極216と、第3の電極213及び第5の電極215上に形成された第1の金属221と、第4の電極214及び第6の電極216上に形成された第2の金属222と、を備える。抵抗層201は、上側から絶縁層203で覆われる。
【0216】
抵抗層201は、通電すると発熱する導電性を有する材料、例えばニクロム、W、Mo、Ru等、又は、これらを含む材料からなる。抵抗層201は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板202上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成し、焼成する等によって形成することができる。なお、抵抗層201の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0217】
図の例では、抵抗層201は、上面視で左右方向に延びている。図の例では、抵抗層201は、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい長方形状をなす。具体的に、抵抗層201は、ヒューズエレメント50に電流が流れる通電方向(概ね前後方向であり、部分的に上下方向を含む)と交差する方向に延びており、図の例では、通電方向と直交する方向(すなわち左右方向)に延びている。なお、抵抗層201の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0218】
絶縁基板202は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する基板である。なお、絶縁基板202の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0219】
図の例では、絶縁基板202は、上面視で抵抗層201よりも大きい長方形状をなす。具体的に、絶縁基板202は、通電方向と交差する方向に延びており、図の例では、通電方向と直交する方向(左右方向)に延びている。なお、絶縁基板202の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0220】
絶縁層203は、抵抗層201の保護を図るために設けられる。絶縁層203の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどの絶縁材料を用いることができる。絶縁層203は、絶縁材料のペーストを塗布し、焼成する方法等によって形成することができる。なお、絶縁層203の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0221】
図の例では、絶縁層203は、上面視で抵抗層201よりも大きくかつ絶縁基板202よりも小さい長方形状をなす。具体的に、絶縁層203は、通電方向と交差する方向に延びており、図の例では、通電方向と直交する方向(左右方向)に延びている。なお、絶縁層203の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0222】
第1の電極211及び第2の電極212は、絶縁基板202の上面のうち左右方向の端部において前後方向に延びる部分と、この部分の外端部から左右方向に延びて抵抗層201に接続される部分と、を有する。図の例では、第1の電極211及び第2の電極212は、上面視でそれぞれ互いに逆向きのL字状を有する。第1の電極211及び第2の電極212の一部は、絶縁層203に覆われることなく外部に露出している。なお、第1の電極211及び第2の電極212の各々の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0223】
第3の電極213及び第4の電極214は、絶縁基板202の上面のうち左右方向の端部において、それぞれ第1の電極211及び第2の電極212とは前後方向に離間して配置される。図の例では、第3の電極213及び第4の電極214は、上面視でそれぞれ矩形状を有する。第3の電極213及び第4の電極214は、絶縁層203に覆われることなく外部に露出している。なお、第3の電極213及び第4の電極214の各々の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0224】
第5の電極215は、絶縁基板202の上面のうち左右方向の一端部において、第1の電極211と第3の電極213との間に配置される。図の例では、第5の電極215は、上面視で矩形状を有する。第5の電極215は、絶縁層203に覆われることなく外部に露出している。なお、第5の電極215の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0225】
第5の電極215は、例えば、Ag(銀)若しくはCu(銅)からなる金属、又は、Ag若しくはCuを主成分とする合金である。第5の電極215は、AgもしくはCuを含んでいればよく、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。なお、第5の電極215の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0226】
第6の電極216は、絶縁基板202の上面のうち左右方向の他端部(左右方向において第5の電極215とは反対側の端部)において、第2の電極212と第4の電極214との間に配置される。図の例では、第6の電極216は、上面視で矩形状を有する。第6の電極216は、絶縁層203に覆われることなく外部に露出している。なお、第6の電極216の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0227】
第6の電極216は、例えば、Ag若しくはCuからなる金属、又は、Ag若しくはCuを主成分とする合金である。第6の電極216は、例えば、第5の電極215と同じ材料を用いることができる。なお、第6の電極216の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0228】
第1の金属221は、第3の電極213及び第5の電極215のそれぞれの上面を前後方向に跨ぐように形成される。図の例では、第1の金属221は、上面視で前後方向に長い長円形状を有する。第1の金属221は、絶縁層203に覆われることなく外部に露出している。なお、第1の金属221の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0229】
第1の金属221は、例えば、Sn(錫)又はSnを主成分とする合金である。第1の金属221は、Snを含んでいればよく、Sn単体であってもよいし、Sn合金であってもよい。Sn合金は、Snを主成分とする合金である。Sn合金は、合金に含まれる金属の中でSnの含有量が最も多い合金である。Sn合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金等を挙げることができる。なお、第1の金属221の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0230】
第2の金属222は、第4の電極214及び第6の電極216のそれぞれの上面を前後方向に跨ぐように形成される。図の例では、第2の金属222は、上面視で前後方向に長い長円形状を有する。第2の金属222は、絶縁層203に覆われることなく外部に露出している。なお、第2の金属222の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0231】
第2の金属222は、例えば、Sn又はSnを主成分とする合金である。第2の金属222は、例えば、第1の金属221と同じ材料を用いることができる。なお、第2の金属222の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0232】
図26は、第2実施形態の絶縁基板202の側面図であり、通電用部材90の接続前の図である。
図27は、第2実施形態の絶縁基板202の側面図であり、通電用部材90の接続後における通電前の図である。
図26及び
図27を併せて参照し、第5の電極215の厚みは、第3の電極213の厚みよりも薄い。図の例では、電極の厚みは、電極の上下方向の最小長さに相当する。
【0233】
図示はしないが、第6の電極216の厚みは、第4の電極214の厚みよりも薄い。例えば、第6の電極216の厚みは、第5の電極215の厚みと略同じでもよい。例えば、第4の電極214の厚みは、第3の電極213の厚みと略同じでもよい。なお、各電極の厚みの関係は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0234】
第3の電極213及び第4の電極214には、抵抗層201への通電用部材90が接続される。通電用部材90は、例えば、給電線である。なお、通電用部材90は、給電線等の電線に限らず、給電する部材(給電部材)でもよい。例えば、通電用部材90の態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0235】
図の例では、第3の電極213は、第3の電極213及び第5の電極215上に形成された第1の金属221を介して、通電用部材90に接続される。第1の金属221は、例えば、第3の電極213と通電用部材90とを接続するためのはんだとして機能する。本実施形態では、通電用部材90が接続されない第5の電極215は、通電用部材90が接続される第3の電極213よりも厚みが薄くなっている。
【0236】
図示はしないが、第4の電極214は、第4の電極214及び第6の電極216上に形成された第2の金属222を介して、通電用部材90に接続される。第2の金属222は、例えば、第4の電極214と通電用部材90とを接続するためのはんだとして機能する。本実施形態では、通電用部材90が接続されない第6の電極216は、通電用部材90が接続される第4の電極214よりも厚みが薄くなっている。
【0237】
本実施形態では、抵抗層201の発熱により、可溶導体51が遮断され、第1の金属221の溶融による第5の電極215の溶解及び/又は第2の金属222の溶融による第6の電極216の溶解により第3の電極213と第4の電極214との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される。
【0238】
以下、一例として、抵抗層201の発熱により、可溶導体51が遮断され、第1の金属221の溶融による第5の電極215の溶解により第3の電極213と第2の電極212との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される例を挙げて説明する。
【0239】
図28は、第2実施形態の絶縁基板202の側面図であり、通電後においてヒューズエレメント50の一部が溶断した状態の図である。
図29は、第2実施形態の絶縁基板202の側面図であり、発熱体80の電極の一部が溶断した状態の図である。
図30は、第2実施形態の絶縁基板202の斜視図であり、通電用部材90の接続前の図(絶縁層203を二点鎖線で示す図)である。
図31は、第2実施形態の絶縁基板202の斜視図であり、通電用部材90の接続前の図(絶縁層203を実線で示す図)である。
図32は、第2実施形態の絶縁基板202の斜視図であり、通電用部材90の接続後の図である。
図33は、第2実施形態の絶縁基板202の斜視図であり、発熱体80の電極の一部が溶断した状態の図である。
【0240】
図28に示すように、抵抗層201が発熱したときに、可溶導体51の少なくとも一部(ヒューズエレメント50の一部の一例)は溶断され、ヒューズエレメント50の通電が遮断される。
図28の例では、可溶導体51が溶断(遮断)されており、より詳しくは、可溶導体51が抵抗層201の加熱により溶断している。
【0241】
その後、抵抗層201が発熱し続けると、絶縁基板202全体が熱くなる。絶縁基板202は上面視で左右方向に長い長方形板状であるため、抵抗層201の発熱により絶縁基板202の左右方向中央側は左右方向外端側よりも高温になる。また、絶縁基板202の左右方向外端側は通電用部材90から熱が逃げていくため、絶縁基板202の左右方向外端側は左右方向中央側よりも低温になる。絶縁基板202は、左右方向中央側が高温となり左右方向外端側が低温となる温度分布となる。
【0242】
図29及び
図33に示すように、可溶導体51が溶断された後、通電用部材90のはんだ(第1の金属221)が溶ける。すると、第3の電極213の厚みよりも薄い第5の電極215が溶融したはんだ(第1の金属221)に溶け込む。溶融したはんだは、第5の電極215を浸食しながら、表面張力によって絶縁基板202よりも濡れ性が高い第3の電極213側に引き寄せられる。本実施形態では、第3の電極213の厚みよりも薄い第5の電極215が、発熱体80の通電経路を遮断させる遮断部として機能する。一方、第5の電極215の厚みよりも厚い第3の電極213が、溶融したはんだ(第5の電極215を浸食したはんだ)を引き寄せるはんだ溜まり部として機能する。
【0243】
図29及び
図33の例では、第5の電極215が溶解しており、より詳しくは、第5の電極215が溶融したはんだで浸食される現象(いわゆる、はんだ食われ)により消失している。なお、第5の電極215は、第1の電極211と第3の電極213との間において、完全に消失することに限らず、溶融残りが存在(第5の電極215の一部が残存)してもよい。
【0244】
本実施形態の保護素子は、例えば、第1の金属221の溶融による第5の電極215の溶解により第3の電極213と第2の電極212との間の抵抗値が10倍以上に上昇し、抵抗層201の発熱が抑制されるよう構成されていればよい。例えば、第5の電極215は、部分的に残存しても厚みが薄くなることで抵抗値が高くなり、発熱体80の通電経路において電流が流れなくなるよう構成されていればよい。例えば、第3の電極213と第2の電極212との間の抵抗値が10倍以上になると、発熱量が1/10以下になるため、保護素子として過加熱による破壊リスクが低減する。
【0245】
以上説明した本実施形態の保護素子は、抵抗層201を備える絶縁基板202と、絶縁基板202に搭載される可溶導体51と、抵抗層201に接続される第1の電極211及び第2の電極212と、絶縁基板202に配置された第3の電極213及び第4の電極214と、第1の電極211と第3の電極213との間を繋ぐ第5の電極215と、第2の電極212と第4の電極214との間を繋ぐ第6の電極216と、第3の電極213及び第5の電極215上に形成された第1の金属221と、第4の電極214及び第6の電極216上に形成された第2の金属222と、を備え、第5の電極215の厚みは、第3の電極213の厚みよりも薄く、第6の電極216の厚みは、第4の電極214の厚みよりも薄く、抵抗層201の発熱により、可溶導体51が溶断され、第1の金属221の溶融による第5の電極215の溶解及び/又は第2の金属222の溶融による第6の電極216の溶解により第3の電極213と第4の電極214との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成される。
この構成によれば、抵抗層201の発熱により可溶導体51が溶断された後、溶融したはんだによる第5の電極215の溶解及び/又は第6の電極216の溶解により第3の電極213と第4の電極214との間の抵抗値が10倍以上に上昇するよう構成されることで、発熱量が1/10以下になる。このため、保護素子として過加熱による破壊リスクを低減することができる。加えて、大電流が流れるヒューズエレメント50の通電経路と発熱体80の通電経路とを電気的に独立させて構造において、ヒューズエレメント50溶断後の発熱体80の自動発熱停止が可能となる。
【0246】
本実施形態では、第1の金属221は、錫又は錫を主成分とする合金であり、第5の電極215は、銀若しくは銅からなる金属、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金である。
この構成によれば、第5の電極215が溶融した第1の金属221に溶け込み易くなるため、はんだ食われを生じさせやすくなる。
【0247】
本実施形態では、第3の電極213及び第4の電極214には、抵抗層201への通電用部材90が接続される。
この構成によれば、通電用部材90が接続されない第5の電極215及び第6の電極216の厚みを薄くしやすいため、はんだ食われを生じさせやすくなる。
【0248】
図示はしないが、例えば、従来の保護素子の発熱体は、以下(1)~(3)の課題がある。
(1)モバイル向け等の数十ボルトの低電圧仕様であれば容易に作製可能であるが、大容量電池を想定した数百ボルト・数百アンペア仕様となると、発熱体の耐電圧や可溶導体遮断後の絶縁性を確保することが困難となる。
(2)発熱体の溶断方式として、ヒューズエレメントの溶融物を第1の電極と第2の電極との間に配置された第3の電極一つに集める構造があるが、大電流用大型ヒューズエレメントでは安定した溶断が困難となる。
(3)大電流が流れるヒューズエレメントの通電経路と発熱体の通電経路とを電気的に独立させた構造では、ヒューズエレメント溶断後の発熱体の自動停止が困難となる。
これに対し本実施形態によれば、上述した構成により、上記(1)~(3)の課題のすべてを解決することができる。
【0249】
(第2実施形態の変形例)
図34は、第2実施形態の変形例の絶縁基板202の斜視図であり、通電用部材90の接続前の図(絶縁層203を二点鎖線で示す図)である。
図35は、第2実施形態の変形例の絶縁基板202の斜視図であり、通電用部材90の接続前の図(絶縁層203を実線で示す図)である。なお、
図34及び
図35の各図において、上述した実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0250】
図25に示した例では、第2の電極212と第4の電極214との間を繋ぐ第6の電極216が、第2の電極212と前記第4の電極214との間の1箇所に設けられているが、これに限定されない。
図34及び
図35に示すように、例えば、第6の電極216A,216Bは、通電用部材90が接続される第4の電極214Aの両側の2箇所に設けられてもよい。例えば、第4の電極214Aの両側に、第4の電極214Aよりも厚みが薄い第6の電極216A,216Bが設けられてもよい。例えば、第6の電極216A,216Bの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0251】
(保護素子(第3実施形態))
本発明の第3実施形態に係る保護素子300について、
図36~
図40を参照して説明する。第3実施形態の保護素子300は、主に、絶縁ケース10の内部に形成される内圧緩衝空間16に充填材301が配置される点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0252】
図36は、第3実施形態の充填材301の一例を示す断面図である。
図36を参照し、保護素子300は、前後方向(第1方向の一例)に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、上下方向(第1方向と直交する第2方向の一例)の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50及び絶縁部材60を収容する絶縁ケース10であって、絶縁ケース10の内部に、ヒューズエレメント50が配置される空間18と連通する内圧緩衝空間16が形成された、絶縁ケース10と、内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接する充填材301と、を備える。
【0253】
充填材301は、例えば、過大電流が流れている回路において遮断しようとする部分に発生するアーク放電により発生する金属ガスをフィルタリングしながら冷却し速やか且つ安全にアーク放電を消滅させる機能を持つ。なお、充填材301は、粒状無機絶縁材に限らず、種々の材料を用いることができる。例えば、充填材301の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0254】
図の例では、充填材301は、保護素子300の内部の内圧緩衝空間16に充填されている。充填材301の一部は、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。例えば、まず、第3保持部材10D(絶縁ケース10を構成する蓋部材に相当)を第2保持部材10Cに搭載する前に、充填材301を内圧緩衝空間16に入れる。その後、第3保持部材10Dを第2保持部材10Cに取り付けることで、内圧緩衝空間16に充填材301を充填することができる。
【0255】
なお、充填材301は、内圧緩衝空間16に完全に隙間なく充填されることに限らず、内圧緩衝空間16の一部に隙間をあけて充填されてもよい。例えば、充填材301は、内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面(図の例では上面)に接していればよい。
例えば、充填材がヒューズエレメントの表面と接触し覆ってしまうと、ヒューズエレメントが溶断した際に発生する金属飛散物が充填材表面に連続的に堆積して導電パスを形成し、アーク放電の長期化及び/又は遮断後の絶縁抵抗低下リスクに繋がる恐れがある。
よって、充填材301は、ヒューズエレメント50と極力接しない様に配置することが好ましい。
【0256】
なお、保護素子300の姿勢は、その上下方向(第1方向と直交する第2方向の一例)が重力方向に沿うように配置されることに限らず、重力方向に対して交差するように配置されてもよい。例えば、充填材301が内圧緩衝空間16に隙間なく充填される場合は、保護素子300を重力方向に対して傾けて配置しても、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接した状態となる。例えば、保護素子300の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0257】
充填材301は、例えば珪砂である。珪砂は、粒状のSiO2(石英ガラス)である。珪砂は、主に石英粒からなる砂である。具体的に、珪砂は、珪酸塩類を主成分とする砂質の堆積物や風化生成物のうち、特に石英粒を多量に含むものであって、白色粗粒の砂である。
【0258】
なお、充填材301は、珪砂であることに限らず、種々の材料を用いることができる。例えば、充填材301は、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された球状の部材(例えば、セラミックビーズ又はセラミックボール)でもよい。例えば、充填材301は、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された多孔質の部材(例えば、多孔質セラミック)でもよい。例えば、充填材301は、ナイロンやPMMA(アクリル樹脂)等のプラスチック材料で形成された球状の部材(例えば、プラスチックビーズ又はプラスチックボール)でもよい。例えば、充填材301は、ナイロンやPMMA等のプラスチック材料で形成された多孔質の部材(例えば、多孔質プラスチック)でもよい。
【0259】
絶縁部材60には、絶縁部材60を上下方向に貫通する貫通孔63(例えば、スリット部)が形成されてもよい。貫通孔63に侵入した充填材301の一部は、ヒューズエレメント50の一部に接していてもよい。なお、貫通孔63に侵入した充填材301は、ヒューズエレメント50の一部に接しなくてもよい。例えば、貫通孔63に侵入した充填材301とヒューズエレメント50との接触態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0260】
保護素子300は、ヒューズエレメント50と上下方向に重なって配置される発熱体80を更に備える。ヒューズエレメント50は、発熱体80と積層される可溶導体51と、第1端子91または第2端子92と可溶導体51とを接続する金属導体52と、を有してもよい。可溶導体51は、金属導体52よりも溶融温度が低くてもよい。
【0261】
保護素子300は、発熱体80に電流を通電する給電部材90を更に備える。絶縁ケース10は、給電部材90の一部及び発熱体80を収容する。発熱体80は、給電部材90からの通電により発熱し、ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する。
【0262】
以上説明した本実施形態の保護素子300は、第1方向に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、第1方向と直交する第2方向の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50及び絶縁部材60を収容する絶縁ケース10であって、絶縁ケース10の内部に、ヒューズエレメント50が配置される空間18と連通する内圧緩衝空間16が形成された、絶縁ケース10と、内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接する充填材301と、を備える。
この構成によれば、絶縁部材60によりヒューズエレメント50を上側及び下側から挟み込む構成となる。これにより、ヒューズエレメント50の溶断部分の周囲の空間(遮断空間)の空気を極力排除することで、過電流遮断時のアーク放電の経路となる空気のプラズマの発生量を抑制することができる。したがって、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制できる。加えて、ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子300の内圧の急激な上昇を、内圧緩衝空間16によって抑えることができる。これにより、絶縁ケース10の破損等を防止できる。加えて、充填材301が内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接することで、絶縁部材60によりアーク放電の発生を抑えつつ、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子300の内圧の急激な上昇を、充填材301によって十分に抑えることができる。したがって、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子300を提供することができる。
【0263】
例えば、ナイロン等の耐トラッキング性の高い材料からなる絶縁部材60でヒューズエレメント50を挟むことで、高電圧大電流遮断時のアークを抑制する挟空間遮断に加え、内圧緩衝空間16に充填材301を配置することで、アークのエネルギーを充填材301により吸収することができるため、アークを抑制することができる。その結果、ヒューズエレメント50の溶融物による内圧の上昇を抑制することができ、絶縁ケース10の外部への噴出物や火花の噴出を抑えることができる。これにより、高電圧大電流条件であっても、より安全に電流経路を遮断することができる。
【0264】
例えば、充填材301が粒状のSiO2(石英ガラス)である珪砂であることで、珪砂の粒子毎に表面積を確保することができ、充填材301が板状の場合と比較して、充填材301全体としての表面積を増やしやすい。このため、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子300の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。加えて、石英ガラスは他のセラミック材料に比べて融点が低いので、吸熱反応がより早く進む。このため、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による熱が速やかに吸収されるので、保護素子300の内圧の増長を抑制することができる。また、石英ガラスは他のセラミック材料に比べて安価で手に入りやすいため、低コスト化に寄与する。
【0265】
図37は、第3実施形態の充填材の配置の一例を示す断面図である。
図の例では、保護素子310において絶縁ケース10の上部及び下部の各々の内部に形成される内圧緩衝空間16に充填材311A,311Bが配置される。図の例では、充填材311A,311Bは、保護素子310の内部の内圧緩衝空間16に充填されている。上側の内圧緩衝空間16に位置する充填材311Aの一部は、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。下側の内圧緩衝空間16に位置する充填材311Bの一部は、下側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60の下面に接している。
【0266】
この構成によれば、上側の内圧緩衝空間16に配置された充填材311Aと、下側の内圧緩衝空間16に配置された充填材311Bとにより、上下方向でアークのエネルギーを吸収することができる。この構成は、ヒューズエレメント50が複数層の場合に特に有効である。
【0267】
図38は、第3実施形態の充填材の他の例を示す断面図である。
図の例では、充填材321は、保護素子320の内部の内圧緩衝空間16に充填されている。充填材321の一部は、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。
【0268】
充填材321は、例えばシリコーンである。シリコーンは、ケイ素(Si)と酸素(O)とが繰り返し並ぶシロキサン結合を主鎖とする無機高分子である。図の例では、ゲル状のシリコーンが内圧緩衝空間16に充填されている。
【0269】
この構成によれば、充填材321がシリコーンであることで、充填材321が板状の場合と比較して、柔らかいので、溶融飛散物を吸収しやすく、充填材321の中へ取り込みやすい。このため、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子320の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。
【0270】
図39は、第3実施形態の充填材の他の例を示す断面図である。
図の例では、充填材331は、保護素子330の内部の内圧緩衝空間16に充填されている。充填材331の一部は、絶縁ケース10の一部(内圧緩衝空間16の底部)を介して、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。
【0271】
充填材331は、例えば、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された板状の部材(例えば、板状セラミック)である。図の例では、複数の板状セラミックが前後方向に重ねて配置されている。
【0272】
この構成によれば、充填材331が板状セラミックであり、複数の板状セラミックが前後方向に重ねて配置されていることで、アークと接する表面積を増やすことができる。このため、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子330の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。
【0273】
図40は、第3実施形態の充填材の他の例を示す断面図である。
図の例では、充填材341は、保護素子340の内部の内圧緩衝空間16に充填されている。充填材341の一部は、絶縁ケース10の一部(内圧緩衝空間16の底部)を介して、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。
【0274】
充填材341は、例えば、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された板状の部材(例えば、板状セラミック)である。図の例では、複数の板状セラミックが上下方向に重ねて配置されている。
【0275】
この構成によれば、充填材341が板状セラミックであり、複数の板状セラミックが上下方向に重ねて配置されていることで、アークと接する表面積を増やすことができる。このため、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子340の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。
【0276】
(保護素子(第4実施形態))
本発明の第4実施形態に係る保護素子400について、
図41~
図42を参照して説明する。第4実施形態の保護素子400は、主に、絶縁ケース10の内部に形成される内圧緩衝空間16にフィルタ401が配置される点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0277】
図41は、第4実施形態のフィルタ401の一例を示す断面図である。
図41を参照し、保護素子400は、前後方向(第1方向の一例)に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、上下方向(第1方向と直交する第2方向の一例)の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50及び絶縁部材60を収容する絶縁ケース10であって、絶縁ケース10の内部に、ヒューズエレメント50が配置される空間と連通する内圧緩衝空間16が形成された、絶縁ケース10と、内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接するフィルタ401と、を備える。
【0278】
フィルタ401は、例えば、過大電流が流れている回路において遮断しようとする部分に発生するアーク放電により発生する溶融飛散物を捕集することで内圧上昇を抑制する機能を持つ。なお、フィルタ401は、上記の機能を持つ材料に限らず、種々の材料を用いることができる。例えば、フィルタ401の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0279】
図の例では、フィルタ401は、内圧緩衝空間16に充填されている。フィルタ401は、ヒューズエレメント50と密着しない。フィルタ401の一部は、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。例えば、まず、第3保持部材10D(絶縁ケース10を構成する蓋部材に相当)を第2保持部材10Cから外した状態で、フィルタ401を内圧緩衝空間16に入れる。その後、第3保持部材10Dを第2保持部材10Cに取り付けることで、内圧緩衝空間16にフィルタ401を充填することができる。
【0280】
なお、フィルタ401は、内圧緩衝空間16に完全に隙間なく充填されることに限らず、内圧緩衝空間16の一部に隙間をあけて充填されてもよい。例えば、フィルタ401は、内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面(図の例では上面)に接していればよい。
【0281】
なお、保護素子400の姿勢は、その上下方向(第1方向と直交する第2方向の一例)が重力方向に沿うように配置されることに限らず、重力方向に対して交差するように配置されてもよい。例えば、フィルタ401が内圧緩衝空間16に隙間なく充填される場合は、保護素子400を重力方向に対して傾けて配置しても、少なくとも一方の絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接した状態となる。例えば、保護素子400の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0282】
フィルタ401は、例えば繊維材料からなる。例えば、繊維材料としては、SiO2やMgO、CaO、TiO2、Al2O3、ZrO2等のセラミック材料、又は、SiO2やMgO、CaO、TiO2、Al2O3、ZrO2等からなる人造鉱物繊維(MMMF)、特に安全性の観点から生体溶解性繊維(バイオソルブルファイバー:BSF、アルカリアースシリケート:AES)、アルミナファイバー(多結晶質繊維:PCW)、グラスウール、ロックウール、スラグウール、シリカファイバーが好ましい。又は、繊維材料としては、ナイロンやPMMA等のプラスチック材料が挙げられる。なお、繊維材料の態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0283】
なお、フィルタ401は、繊維材料からなることに限らず、多孔質の部材で形成されてもよい。例えば、フィルタ401は、シート状の部材で形成されてもよい。例えば、フィルタ401は、セラミックファイバーペーパー、又は生体溶解性繊維ペーパー、アルミナファイバーペーパー、グラスウールペーパー、ロックウールペーパー、スラグウールペーパー、シリカファイバーペーパーであり、複数のセラミックファイバーペーパー、又は生体溶解性繊維ペーパー、アルミナファイバーペーパー、グラスウールペーパー、ロックウールペーパー、スラグウールペーパー、シリカファイバーペーパーが内圧緩衝空間16に積層して配置されてもよい。例えば、フィルタ401は、ペーパーであることに限らず、ウール、ボード、ブロックなどの形状であってもよい。例えば、フィルタ401の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0284】
ヒューズエレメント50は、可溶導体51であって、第1端子91及び第2端子92よりも融点が低くてもよい。例えば、可溶導体51は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であってもよい。例えば、低融点金属層は、Sn又はSnを主成分として構成される。例えば、高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分として構成される。
【0285】
保護素子400は、ヒューズエレメント50と上下方向に重なって配置される発熱体80を更に備える。ヒューズエレメント50は、発熱体80と積層される可溶導体51と、第1端子91または第2端子92と可溶導体51とを接続する金属導体52と、を有してもよい。例えば、金属導体52の融点は、ヒューズエレメント50の融点よりも高くてもよい。ヒューズエレメント50は、可溶導体51が発熱体80と積層される。
【0286】
保護素子400は、発熱体80に電流を通電する給電部材90を更に備える。絶縁ケース10は、給電部材90の一部及び発熱体80を収容する。発熱体80は、給電部材90からの通電により発熱し、ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する。
【0287】
以上説明した本実施形態の保護素子400は、第1方向に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、第1方向と直交する第2方向の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50及び絶縁部材60を収容する絶縁ケース10であって、絶縁ケース10の内部に、ヒューズエレメント50が配置される空間18と連通する内圧緩衝空間16が形成された、絶縁ケース10と、内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、少なくとも一方の絶縁部材60が前記ヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接するフィルタ401と、を備える。
この構成によれば、絶縁部材60によりヒューズエレメント50を上側及び下側から挟み込む構成となる。これにより、ヒューズエレメント50の溶断部分の周囲の空間(遮断空間)の空気を極力排除することで、過電流遮断時のアーク放電の経路となる空気のプラズマの発生量を抑制することができる。したがって、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制できる。加えて、ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子400の内圧の急激な上昇を、内圧緩衝空間16によって抑えることができる。これにより、絶縁ケース10の破損等を防止できる。加えて、フィルタ401が内圧緩衝空間16の少なくとも一部に配置され、絶縁部材60がヒューズエレメント50と対向する面とは反対側の面に接することで、絶縁部材60によりアーク放電の発生を抑えつつ、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子400の内圧の急激な上昇を、フィルタ401によって十分に抑えることができる。したがって、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子400を提供することができる。
【0288】
例えば、ナイロン等の耐トラッキング性の高い材料からなる絶縁部材60でヒューズエレメント50を挟むことで、高電圧大電流遮断時のアークを抑制する挟空間遮断に加え、内圧緩衝空間16にフィルタ401を配置することで、フィルタ401で溶融飛散物を捕集することにより内圧上昇を抑制することができるため、アークを抑制することができる。その結果、ヒューズエレメント50の溶融物による内圧の上昇を抑制することができ、絶縁ケース10の外部への噴出物や火花の噴出を抑えることができる。これにより、高電圧大電流条件であっても、より安全に電流経路を遮断することができる。
【0289】
例えば、フィルタ401が繊維材料からなることで、フィルタ401の表面積を確保することができ、板状セラミックの場合と比較して、フィルタ401全体としての表面積を増やしやすい。加えて、繊維状のフィルタ401は、板状セラミックに比べて、溶融飛散物を捕らえる要素が多い。このため、内圧緩衝空間16に入ってくる溶融飛散物による保護素子400の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。
【0290】
図42は、第4実施形態のフィルタの配置の一例を示す断面図である。
図の例では、保護素子410において絶縁ケース10の上部及び下部の各々の内部に形成される内圧緩衝空間16にフィルタ411A,411Bが配置される。図の例では、フィルタ411A,411Bは、保護素子410の内部の内圧緩衝空間16に充填されている。上側の内圧緩衝空間16に位置するフィルタ411Aの一部は、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60の上面に接している。下側の内圧緩衝空間16に位置するフィルタ411Bの一部は、下側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60の下面に接している。
【0291】
この構成によれば、上側の内圧緩衝空間16に配置されたフィルタ411Aと、下側の内圧緩衝空間16に配置されたフィルタ411Bとにより、上下方向で溶融飛散物を捕集することができる。加えて、上下方向の両側のフィルタ411A,411Bで溶融飛散物を捕らえることができる。この構成は、ヒューズエレメント50が複数層の場合に特に有効である。
【0292】
(保護素子(第5実施形態))
本発明の第5実施形態に係る保護素子500について、
図43~
図45を参照して説明する。第5実施形態の保護素子500は、主に、絶縁部材501及び/又は絶縁ケース502に含まれる炭素材料が所定量未満である点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0293】
図43は、第5実施形態の保護素子500の外観及び断面を示す斜視図(断面斜視図)である。
図43を参照し、保護素子500は、前後方向(第1方向の一例)に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、上下方向(第1方向と直交する第2方向の一例)の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材501と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50及び絶縁部材501を収容する絶縁ケース502であって、絶縁ケース502の内部に、ヒューズエレメント50が配置される空間18と連通する内圧緩衝空間16が形成された、絶縁ケース502と、を備え、絶縁部材501及び/又は絶縁ケース502は、炭素材料の含有量が0.1wt%未満である。
【0294】
図の例では、絶縁部材501及び絶縁ケース502の各々は、ヒューズエレメント50を挟む耐トラッキング性の高い絶縁材料が樹脂材料であって、樹脂材料に含まれる炭素材料の含有量が0.1wt%未満である。
【0295】
例えば、耐トラッキング性の高い絶縁材料は、ナイロン材が好ましく、ベンゼン環を含まないPA46、PA66がより好ましい。なお、絶縁材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0296】
例えば、絶縁ケース10に対するレーザーマーキングを可能にするために、カバー10Aの外面部分(例えば、絶縁ケース10外側のパイプ)は黒色(例えば、カーボンブラックの含有量が0.5wt%以上)であってもよい。なお、絶縁ケース10の色は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0297】
例えば、炭素材料は、カーボンブラックや活性炭、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン等の非晶質(微結晶)炭素が好ましい。なお、炭素材料は、上記に限らず、他の固体炭素材料でもよく、設計仕様に応じて変更することができる。
【0298】
絶縁部材501及び/又は絶縁ケース502は、ガラス繊維503の含有量が10wt%以上である。絶縁部材501及び/又は絶縁ケース502は、ガラス繊維503の含有量が30wt%以上であることがより好ましい。図の例では、絶縁部材501及び絶縁ケース502の各々は、ガラス繊維503の含有量が30wt%以上である。例えば、ガラス繊維503としては、SiO2やMgO、Al2O3、ZrO2等が挙げられる。なお、ガラス繊維503は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0299】
図44は、第5実施形態の絶縁部材501の側面図であり、過電流による遮断前の図である。
図45は、第5実施形態の絶縁部材501の側面図であり、過電流による遮断後に絶縁部材501の一部が溶融した状態の図である。
図44及び
図45を併せて参照し、ヒューズエレメント50の上下両側の絶縁部材501は、過電流遮断時の高温のアーク放電にさらされることで、絶縁部材501の一部が溶融・昇華する。これにより、絶縁部材501に含まれるガラス繊維503の一部がむき出しになることで、絶縁部材501においてヒューズエレメント50に対向する面に凹凸が形成される。この凹凸により、導通経路が阻害されることで、絶縁抵抗が高くなる。
【0300】
以上説明した本実施形態の保護素子500は、第1方向に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続し、所定以上の電流が流れたときに溶断されるヒューズエレメント50と、第1方向と直交する第2方向の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材501と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50及び絶縁部材501を収容する絶縁ケース502であって、絶縁ケース502の内部に、ヒューズエレメント50が配置される空間18と連通する内圧緩衝空間16が形成された、絶縁ケース502と、を備え、絶縁部材501及び/又は絶縁ケース502は、炭素材料の含有量が0.1wt%未満である。
この構成によれば、絶縁部材501及び絶縁ケース502の炭素材料の含有量が0.1wt%以上の場合と比較して、絶縁部材501及び絶縁ケース502の表面がアーク放電や高温状態のヒューズエレメント50の溶融飛散物にさらされても、グラファイト化しにくくなる。このため、新たな電流経路が形成されにくくなり、アークの抑制と遮断後の絶縁抵抗が改善する。特に、絶縁部材501及び絶縁ケース502の絶縁材料がベンゼン環を含まないPA46、PA66等の材料であれば、グラファイト化する要素がないので、絶縁抵抗をより改善しやすい。加えて、絶縁部材501及び絶縁ケース502の炭素材料の含有量が0.1wt%以上の場合と比較して、絶縁部材501及び絶縁ケース502の外観を自然色に近くすることができる。
【0301】
本実施形態では、絶縁部材501及び/又は絶縁ケース502は、ガラス繊維503の含有量が10wt%以上である。
この構成によれば、絶縁部材501及び絶縁ケース502のガラス繊維503の含有量が10wt%未満の場合と比較して、絶縁部材501及び絶縁ケース502が破損しにくくなる。これにより、安全に回路を遮断することが可能となる。加えて、絶縁部材501及び絶縁ケース502(保護素子500の筐体に相当)の強度を向上させ、アーク爆発の衝撃への耐久性を改善させることができる。
【0302】
(保護素子(第6実施形態))
本発明の第6実施形態に係る保護素子について、
図46~
図53を参照して説明する。第6実施形態の保護素子は、主に、保護素子を構成するヒューズエレメント600の態様が、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0303】
図46は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント600)を示す上面図である。
図47は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント600)を示す側面図である。
図48は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント600)の一例を示す上面図である。
図46~
図48を併せて参照し、ヒューズエレメント600は、第1導電材601と、第1導電材601とは異なる材料で形成された第2導電材602と、を備え、第1導電材601と第2導電材602とは、前後方向(通電方向に相当)において互いに直列に接続され、第1導電材601は、第2導電材602よりも通電方向の電気抵抗が高く、上下方向(通電方向と直交する厚み方向に相当)から見て、第1導電材601と第2導電材602とが互いに接続される部位に重なり部605を有し、第1導電材601は、重なり部605における左右方向(通電方向及び厚み方向と直交する幅方向に相当)の長さが第2導電材602よりも短く、第2導電材602は、重なり部605における幅方向の外側に少なくとも1つの角部606を有し、少なくとも1つの角部606は、厚み方向から見て、100°以下の角度Aである。なお、
図46においてはヒューズエレメント600と上下方向に重なって配置される発熱体80を併せて図示し、
図48においては重なり部605の図示を省略している。
【0304】
図の例では、2枚のヒューズエレメント600が上下方向に積層した例(2層のヒューズエレメント600)を示すが、これに限らない。例えば、ヒューズエレメント600は1枚のみ(1層のヒューズエレメント600)でもよい。例えば、ヒューズエレメント600の積層態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0305】
第1導電材601及び第2導電材602の各々の形状は、板状である。ヒューズエレメント600は、第3導電材603を更に備える。ヒューズエレメント600は、第3導電材603、第1導電材601、第2導電材602の順に通電方向に直列に接続されている。図の例では、第3導電材603は、第2導電材602と同じ板状である。第3導電材603は、第2導電材602と同一の材料で形成されている。
【0306】
例えば、第1導電材601は、第2導電材602及び第3導電材603よりも溶融温度が低い材料により構成される。本実施形態では、第1導電材601は、第2導電材602及び第3導電材603よりも電気抵抗率が高い。本実施形態においては第1導電材601が、過電流遮断時及びアクティブ遮断時のそれぞれにおいて、ヒューズエレメント600の溶断部として機能する。
【0307】
第1導電材601は、板状、シート状または箔状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。図の例では、第1導電材601は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。第1導電材601は、例えば、ヒューズエレメント600の前後方向の中央部に配置される。
【0308】
例えば、第1導電材601は、低融点金属層と高融点金属層とを含む積層体であってもよい。特に図示しないが、第1導電材601は、Sn(錫)を含む低融点金属層と、Ag(銀)若しくはCu(銅)を含む高融点金属層とが積層された積層体を有してもよい。この積層体は、低融点金属層を1層以上有し、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された構成である。この積層体は、例えば、低融点金属層の周囲を高融点金属層でコーティングして形成されている。
【0309】
上記積層体の低融点金属層は、Snを含んでいればよく、Sn単体であってもよいし、Sn合金であってもよい。Sn合金は、Snを主成分とする合金である。すなわち、低融点金属層は、Sn若しくはSnを主成分として構成される。Sn合金は、合金に含まれる金属の中でSnの含有量が最も多い合金である。Sn合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金等を挙げることができる。
【0310】
上記積層体の高融点金属層は、AgもしくはCuを含んでいればよく、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。すなわち、高融点金属層は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される。
【0311】
なお上記積層体は、低融点金属層/高融点金属層の2層構造であってもよい。あるいは、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が1層以上で、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された3層以上の多層構造であってもよい。
また、第1導電材601は、Snを含む低融点金属層の単層体により構成されていてもよい。
【0312】
例えば、第2導電材602及び第3導電材603は、Cu若しくはAg、または、Cu若しくはAgを主成分として構成される。
【0313】
第2導電材602及び第3導電材603は、板状、シート状または箔状である。図の例では、第2導電材602及び第3導電材603は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が長い略四角形板状をなす。第2導電材602及び第3導電材603は、ヒューズエレメント600に複数設けられる。第2導電材602及び第3導電材603は、例えば、ヒューズエレメント600の前後方向の両端部に配置される。本実施形態では、各ヒューズエレメント600が、一対の第2導電材602及び第3導電材603を有する。
【0314】
第3導電材603、第1導電材601及び第2導電材602は、この順に直列接続することでヒューズエレメント600の通電経路を形成する。第2導電材602及び第3導電材603は、ヒューズエレメント600の電流が流れる通電方向(前後方向に相当)において、第1導電材601の両端部に一対接続される。
【0315】
図の例では、第1導電材601の第1端部が、第2導電材602の前端部(図の例では+X端部)下に固定されている。すなわち、第1導電材601の第1端部の上面と、第2導電材602の前端部の下面とが、互いに接続されている。
また、第1導電材601の第2端部が、第3導電材603の後端部(図の例では-X端部)下に固定されている。すなわち、第1導電材601の第2端部の上面と、第3導電材603の後端部の下面とが、互いに接続されている。
第1導電材601は、一対の第2導電材602及び第3導電材603の下側に配置されて、これらの間に掛け渡されている。
【0316】
重なり部605は、第1導電材601と第2導電材602とが互いに接続される部位であって上面視で互いに重なり合う部分である。第1導電材601は、重なり部605における幅方向の長さが第2導電材602よりも短い。本実施形態では、第1導電材601の重なり部605における幅方向の長さW1(以下「第1導電材601の幅寸法W1」ともいう。)と第2導電材602の重なり部605における幅方向の長さW2(以下「第2導電材602の幅寸法W2」ともいう。)との比W2/W1は、1.07程度である。
【0317】
例えば、比W2/W1は、1.0超過32以下であることが好ましく、1.06以上8以下であることがより好ましく、1.06以上4以下であることが更に好ましい。例えば、比W2/W1が大きくなり過ぎると、ヒューズ抵抗値が大きくなり、定格電流が上げられないといったリスクがある。なお、比W2/W1は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0318】
第2導電材602は、重なり部605における幅方向の外側に少なくとも1つの角部606を有する。図の例では、第2導電材602及び第3導電材603の各々は、重なり部605における幅方向の両外側に角部606(2つの角部606)を有する。なお、第2導電材602及び/又は第3導電材603における角部606の配置態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0319】
角部606は、厚み方向から見て、100°以下の角度Aである。図の例では、角部606の角度Aは、厚み方向から見て、90°程度(略直角)である。なお、角部606の角度Aは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0320】
以上説明した本実施形態のヒューズエレメント600は、第1導電材601と、第1導電材601とは異なる材料で形成された第2導電材602と、を備え、第1導電材601と第2導電材602とは、通電方向において互いに直列に接続され、第1導電材601は、第2導電材602よりも通電方向の電気抵抗が高く、通電方向と直交する厚み方向から見て、第1導電材601と第2導電材602とが互いに接続される部位に重なり部605を有し、第1導電材601は、重なり部605における通電方向及び厚み方向と直交する幅方向の長さが第2導電材602よりも短く、第2導電材602は、重なり部605における幅方向の外側に少なくとも1つの角部606を有し、少なくとも1つの角部606は、厚み方向から見て、100°以下の角度Aである。
本発明者は鋭意研究の結果、第1導電材601及び第2導電材602の重なり部605における幅方向の長さ、及び/又は、重なり部605における第2導電材602の幅方向外側の角部606の角度Aの大きさによっては、高電圧大電流遮断の際に発生するアーク放電を抑制する効果が異なることを見出した。本構成によれば、第1導電材601は重なり部605における幅方向の長さが第2導電材602よりも短く、第2導電材602は重なり部605における幅方向の外側の角部606は厚み方向から見て100°以下の角度Aであることで、第1導電材601は重なり部605における幅方向の長さが第2導電材602と同じ場合と比較して、高電圧大電流遮断の際に発生するアーク放電をより効果的に抑制することができる。このため、高電圧大電流遮断の際に、アーク放電時間が短くなり、噴出する火花が大きくなることを回避することができる。したがって、高電圧かつ大電流遮断であっても、より安全に電流経路を遮断することができる。
【0321】
本発明者は鋭意研究の結果、第1導電材601の重なり部605における幅方向の長さW1と第2導電材602の重なり部605における幅方向の長さW2との比W2/W1が大きいほどアーク放電が抑制される傾向があることを見出した。本実施形態では、比W2/W1が1.07程度であることで、高電圧大電流遮断の際に発生するアーク放電をより効果的に抑制することができる。加えて、ヒューズ抵抗値の過大になることを抑制することができ、定格電流を上げられないといったリスクを回避することができる。
【0322】
図49は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
図49においては、重なり部の図示を省略している。
図の例では、第1導電材611は、重なり部における幅方向の長さが第2導電材612に対して極端に短い。第2導電材612及び第3導電材613は、ヒューズエレメント610の電流が流れる通電方向において、第1導電材611の両端部に一対接続される。図の例では、第1導電材611の重なり部における幅方向の長さW1と第2導電材612の重なり部における幅方向の長さW2との比W2/W1は、6程度である。
【0323】
図50は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
図の例では、第2導電材622及び第3導電材623の各々は、重なり部における幅方向の両外側に面取りされた角部626(2つの角部626)を有する。第2導電材622及び第3導電材623は、ヒューズエレメント620の電流が流れる通電方向において、第1導電材621の両端部に一対接続される。図の例では、角部626の角度Aは、厚み方向から見て、100°程度(鈍角の一例)である。
【0324】
図51は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
図の例では、第2導電材632及び第3導電材633の各々は、重なり部における幅方向の両外側に丸みを帯びた角部636(2つの角丸部636)を有する。第2導電材632及び第3導電材633は、ヒューズエレメント630の電流が流れる通電方向において、第1導電材631の両端部に一対接続される。図の例では、角丸部636は、厚み方向から見て、外側に向かって凸をなすように弧状に湾曲している。
【0325】
図52は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
図の例では、第1導電材641A,641B,641Cは、幅方向(左右方向に相当)に並んで3つ(複数の一例)配置されている。言い換えるとは、第1導電材641A,641B,641Cは、幅方向に分割して構成されている。第2導電材642及び第3導電材643は、ヒューズエレメント640の電流が流れる通電方向において、第1導電材641A,641B,641Cの両端部に一対接続される。なお、第1導電材641A,641B,641Cの分割態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0326】
図の例では、第1導電材641A,641B,641Cは、重なり部において幅寸法W1A,W1B,W1Cが第2導電材642よりも短い。図の例では、重なり部における第1導電材641A,641B,641Cの幅寸法W1A,W1B,W1Cの合計長さは、重なり部における第2導電材642の幅寸法W2よりも短い。
【0327】
図53は、第6実施形態の保護素子の一部(ヒューズエレメント)の他の例を示す上面図である。
図の例では、端子が低抵抗部(第2導電材652及び第3導電材653に相当)を兼ねており、端子が高抵抗部(第1導電材651に相当)と接続されている構造である。第2導電材652及び第3導電材653は、ヒューズエレメント650の電流が流れる通電方向において、第1導電材651の両端部に一対接続される。
【0328】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0329】
以下、本発明の上記実施形態に係る保護素子について、実施例を示して具体的に説明する。なお、下記の実施例は、本発明が適用された具体的な一例であり、本発明を限定するものではない。
【0330】
(実施例)
実施例の保護素子は、第1導電材と、第1導電材とは異なる材料で形成された第2導電材と、を備え、第1導電材と第2導電材とは、通電方向において互いに直列に接続され、第1導電材は、第2導電材よりも通電方向の電気抵抗が高く、通電方向と直交する厚み方向から見て、第1導電材と第2導電材とが互いに接続される部位に重なり部を有し、第1導電材は、重なり部における通電方向及び厚み方向と直交する幅方向の長さが第2導電材よりも短く、第2導電材は、重なり部における幅方向の両外側に角部を有し、角部は、厚み方向から見て、90°の角度であるもの(
図48に示す構成に相当)を準備した。
【0331】
実施例としては、実施例1及び実施例2を準備した。
実施例1は、第1導電材の重なり部における幅方向の長さW1を15mmとし、第2導電材の重なり部における幅方向の長さW2を16mmとし、比W2/W1を1.07とした。
実施例2は、第1導電材の重なり部における幅方向の長さW1を13mmとし、第2導電材の重なり部における幅方向の長さW2を16mmとし、比W2/W1を1.23とした。
【0332】
(比較例)
図54は、比較例の保護素子の一部(ヒューズエレメント600X)を示す上面図である。
図54を参照し、比較例の保護素子は、実施例の保護素子と基本構成は同じであるが、第1導電材601X及び第2導電材602Xの重なり部における幅方向の長さ、及び、重なり部における第2導電材602X及び第3導電材603Xの幅方向外側の角部606Xの角度Aの大きさは異なる。
比較例は、第1導電材601Xは重なり部における幅方向の長さが第2導電材602Xと同じであって、角部606Xは厚み方向から見て135°の角度であるものとした。比較例は、第1導電材601Xの重なり部における幅方向の長さW1を13mmとし、第2導電材602Xの重なり部における幅方向の長さW2を13mmとし、比W2/W1を1.00とした。
【0333】
(評価結果)
各保護素子の遮断時電流波形を高電圧大電流遮断試験により測定した。試験条件は、電圧400V/電流2kAとした。評価結果等を
図55~
図57に示す。
図55は、比較例の保護素子の高電圧大電流遮断試験結果を示す図である。
図56は、実施例1の保護素子の高電圧大電流遮断試験結果を示す図である。
図57は、実施例2の保護素子の高電圧大電流遮断試験結果を示す図である。
【0334】
図55~
図57を併せて参照し、実施例の保護素子によれば、比較例の保護素子に対して、アークの放電時間が短くなることが確認された。また、実施例1(比W2/W1=1.07)では30ms程度でアーク終了し、実施例2(比W2/W1=1.23)では5ms程度でアーク終了することが確認された。これにより、比W2/W1が大きいほどアーク放電が抑制される傾向があることが分かった。