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  • 特開-消毒シートパッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035834
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】消毒シートパッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20240307BHJP
   A61K 8/02 20060101ALN20240307BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALN20240307BHJP
   A61K 8/34 20060101ALN20240307BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
A61L2/18
A61K8/02
A61Q19/10
A61K8/34
A61L101:34
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142394
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】10 2022 122 316.7
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミヒャエル トリンカウス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ベアント
【テーマコード(参考)】
4C058
4C083
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058DD03
4C058JJ08
4C083AB051
4C083AC061
4C083AC102
4C083CC22
4C083DD12
4C083EE11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な手段によって、高められた安全性を達成することができる消毒シートパッケージを提供する。
【解決手段】本発明は、消毒シートパッケージであって、取出し開口(1)を有する収容容器(2)と、収容容器(2)内に配置されていて、少なくとも2つの液体成分を有する消毒液を含浸させた不織布製の多数の消毒シート(4)とを備える、消毒シートパッケージを提供する。本発明によれば、不織布がリグニン含有繊維を有し、かつ/または消毒液が色素を含有することが特定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒シートパッケージであって、取出し開口(1)を有する収容容器(2)と、前記収容容器(2)内に配置されていて、少なくとも2つの液体成分を有する消毒液を含浸させた不織布製の多数の消毒シート(4)とを備える、消毒シートパッケージにおいて、
前記不織布がリグニン含有繊維を有し、前記不織布が0.02g/m~1g/mのリグニンを有し、かつ/または前記消毒液が色素を含有することを特徴とする、消毒シートパッケージ。
【請求項2】
前記消毒液が、液体成分として、体積分率が50%~90%のアルコールと、体積分率が10%~50%の水とを有することを特徴とする、請求項1記載の消毒シートパッケージ。
【請求項3】
前記消毒液がpH調整剤を有し、前記消毒液が3.5~5.8のpH値を有することを特徴とする、請求項1または2記載の消毒シートパッケージ。
【請求項4】
前記不織布の少なくとも1つの層が、リグニン含有木質繊維材料を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項5】
リグニン含有木質繊維材料を含む前記不織布の前記少なくとも1つの層が、70重量%~100重量%のパルプからなることを特徴とする、請求項4記載の消毒シートパッケージ。
【請求項6】
前記不織布が、再生セルロース、特にビスコース繊維を含有する層からなる少なくとも1つの層を有する多層構造を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項7】
ビスコース繊維を含有する前記少なくとも1つの層が、70重量%~100重量%のビスコース繊維、特にビスコース短繊維からなることを特徴とする、請求項6記載の消毒シートパッケージ。
【請求項8】
前記不織布が3層で形成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項9】
前記不織布が、生分解性の植物由来の材料から完全に形成されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項10】
前記不織布が25g/m~80g/mの坪量を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項11】
前記不織布が0.05g/m~0.2g/mのリグニンを有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項12】
前記消毒液が0.02mg/l~1mg/lの色素を含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項13】
前記色素が、食用色素、天然色素およびネイチャーアイデンティカル色素から選択される少なくとも1つの群に割り当てられていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項14】
前記収容容器(2)が、再閉鎖可能なフィルム包装またはディスペンサーボトルとして形成されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項15】
前記収容容器(2)が50~200枚の消毒シート(4)を収容していることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【請求項16】
前記収容容器(2)内の前記消毒シート(4)が互いに接触しており、かつ/または互いに折り重ねられており、かつ/または互いに分離可能にストランドとして互いに続いていることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の消毒シートパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒シートパッケージであって、特に閉鎖可能な取出し開口を有する収容容器と、収容容器内に配置されていて、少なくとも2つの液体成分を有する消毒液を含浸させた不織布製の多数の消毒シートとを備える、消毒シートパッケージに関する。
【0002】
ヘルスケア、介護、ケータリングおよび食品製造の分野における様々な施設では、人々への危険、特にウイルス、微生物等による病気を回避するために高い衛生レベルが重要となる。この場合、適切な手段を用いて用具、設備、表面等を清浄化および消毒するのが一般的である。
【0003】
例えば病院、医院あるいは介護施設の医療区域では、特に高い衛生レベルが必要とされる。医療用具および機器は、オートクレーブのような特別な滅菌装置で清浄化および消毒されることもあるが、ハンドル部分、什器のような建物内の表面だけでなく、病院用ベッド、車椅子等の補助具の表面も清浄化する必要があり、これには、例えば消毒シートを使用することができる。
【0004】
消毒シートには、拭取り動作によって表面に塗布される消毒液が含浸させてある。一方では、消毒シートにより表面の汚れを除去することができ、他方では、コーティングされた表面が消毒液で付加的に清浄化される。その際、特に細菌、ウイルスおよび微生物が、少なくともかなりの程度まで死滅または不活化される。
【0005】
少なくとも2つの液体成分を有する消毒液が実際に広く使用されている。例えば、液体成分としてアルコールおよび水を有する消毒液が知られている。この場合、成分の混合は、効率的な消毒効果を考慮して決定され、更なる添加剤、例えばpH調整剤を加えることができる。
【0006】
使用者の観点から、所望の消毒機能を確保するためには、消毒シートが全体的に少なくとも湿っていなければならないことが明らかである。この場合、既知の消毒シートパッケージでは、消毒液の適切な材料組成を使用者が決定することができない。
【0007】
既知の消毒シートパッケージは、通常閉鎖可能な取出し開口を備える収容容器を有する。1つには、例えば独国特許出願公開第102007035501号明細書および独国特許出願公開第102007036903号明細書に記載されているような、再閉鎖体を有する単純なフィルム包装が一般的である。さらに、消毒シートを上側の取出し開口から個別に取り出すことができるディスペンサーボトルも知られている。
【0008】
取出し開口が閉鎖可能であることから、最初に収容容器を開封した後、長期間にわたって使用可能であることが原則として達成される。しかしながら、実際には、閉鎖が不完全となるリスクがあり、それにより、消毒シートの消毒機能が損なわれる恐れもある。
【0009】
したがって、自体閉鎖可能な取出し開口が、意図的もしくは誤って適切に閉鎖されず、かつ/または取出し開口が少なくとも部分的に閉鎖されているにもかかわらず、消毒シートの端部が依然として露出している可能性がある。
【0010】
例えば、複数の消毒シートをすぐに続けて取り出す場合には、その間に取出し開口を閉鎖する必要はない。取出し開口を短期間閉鎖しなくとも、消毒シートの機能は通常損なわれない。
【0011】
しかしながら、少なくとも1枚の消毒シートが長期間にわたって露出すると、消毒液の液体成分が揮発する可能性があり、この場合、消毒効果が達成されなくなることがある。
【0012】
特に、少なくとも2つの液体成分を有する前述した消毒液では、少なくとも2つの異なる成分が通例異なって揮発することも考慮する必要がある。消毒液が、例えばアルコールおよび水を有する場合、アルコールが水よりもはるかに速く揮発するため、2つの成分の体積分率の比率は連続的に変化する。
【0013】
アルコールの含有量が限界値を下回ると、消毒効果が得られなくなる。アルコールが大部分または完全に揮発したとしても、同様に消毒液に加えられた水が依然として存在していることが多い。この場合、消毒シートは湿ったままである。これにより、実際には消毒効果が部分的または完全に失われていたとしても、該当の消毒シートをそのまま続けて使用することができるという印象が使用者に与えられる可能性がある。
【0014】
こうした背景のもと、本発明の根底にある課題は、簡単な手段によって、高められた安全性を達成することができる消毒シートパッケージを提供することである。特に、消毒シートが湿ったままである場合に、消毒液の組成の変化に基づき消毒特性が損なわれたことを使用者が認識することができることが求められる。
【0015】
本発明の主題および課題の解決手段は、請求項1による消毒シートパッケージである。
【0016】
冒頭に記載した消毒シートパッケージから出発して、不織布がリグニン含有繊維を有し、不織布が0.02g/m~1g/mのリグニンを有し、かつ/または消毒液が色素を含有することが特定されている。
【0017】
色素も、特にリグニンの酸化による分解も、部分的に露出した消毒シートに顕著な色変化を生じさせることができる。このことは、特に、まさに本発明による少なくとも2つの液体成分を有する消毒液に関連して云えることであり、少なくとも2つの成分は、通例、移動および揮発に関して常に異なる特性を有する。
【0018】
例えば、本発明の好ましい形態によれば、消毒液が、液体成分として、体積分率が50%~90%、特に55%~80%のアルコールと、体積分率が10%~55%、特に20%~45%の水とを有する場合、アルコールは水と比較して揮発性が高く、消毒シートの露出部位で相応して急速に蒸発する。適切なアルコールは、例えばエタノール、1-プロパノール、および実際にはイソプロパノールとも称される2-プロパノールである。特に、様々なアルコールの混合物も可能である。
【0019】
消毒シートが短期間しか露出していない場合、このアルコールの喪失は通例問題とならず、消毒効果は未だ失われていない。これに対して、消毒シートの一部が長期間にわたって露出していると、かなり大量のアルコールが蒸発し、不織布内でも、有効な毛細管力によって吸い上げられる。したがって、ただ1枚の消毒シートの小さな露出部分であっても、該当の消毒シート自体だけでなく、隣接する消毒シートまたは収容容器全体が、より揮発性の高い成分、すなわち特にアルコールを相当量失う顕著なリスクがある。
【0020】
しかしながら、特にかかる輸送の増大は、消毒液中に存在する色素または不織布中に存在するリグニンもしくはその分解生成物が、揮発性成分とともに少なくとも部分的に輸送された後、揮発または蒸発の際に露出部位に留まることにもつながる。したがって、これらの有色または着色成分は、続いて、材料中で局所的に濃縮され、使用者が容易に知覚することができる特定の局所的な変色が生じる。
【0021】
例えば該当の消毒シートを収容容器から取り出すと、リグニンおよび/または色素の量が増加した部分は、消毒シートの残りの部分から顕著に目立つ。
【0022】
このことは、特に、説明書きによって品質保証のための記載の機能を使用者に知らせる場合に当てはまる。例えば、使用説明書、添付文書等において、消毒シートの目に見える、特に局所的な変色がある場合、この消毒シートまた通常は消毒シートパッケージ全体をもはや安全に使用することができないと表示することができる。
【0023】
本発明の好ましい形態によれば、消毒液がpH調整剤を有することが特定されている。この場合、pH調整剤は特に、消毒液のpH値を5.8未満、好ましくは3.5超に設定するために加えることができる。
【0024】
特にリンゴ酸が適切であり、右旋性(D-)および左旋性(L-)リンゴ酸の両方が可能である。付加的または代替的には、例えば酒石酸、フマル酸、クエン酸またはコハク酸を使用することもできる。
【0025】
一方、かかるpH値により、所望の形で清浄化効果および消毒効果を調整することができるかまたは清浄化効果および消毒効果に影響を与えることができる。また、指定の値では、手袋もしくは別の保護手段なしに表面を清浄化しかつ/または手を直接消毒する場合、使用者の皮膚と直接接触する際の負担が少なくなる。
【0026】
本発明の変形形態によれば、不織布がリグニンを含有する場合、リグニンの分解生成物は黄色または茶色の変色をもたらす。その際、pH値が5.8未満の酸性環境によってリグニンの酸化が促進され、より多量の着色分解生成物がリグニンから生じ、続いて、既に上述したように、消毒剤の液体成分の移動によって輸送され、特に該当の成分が揮発または蒸発する場所で蓄積することが想定される。
【0027】
説明した輸送および蓄積により、原則として、既にある程度まで漂白され、出発製品としての木材の量的分布に対して比較的低い割合のリグニンしか有していない繊維も適切である。
【0028】
不織布は、本発明の範囲内で制限なしに、単層または好ましくは多層で形成することができる。この場合、各層は1種類の繊維または混合繊維から形成することができる。
【0029】
本発明の好ましい形態によれば、不織布の少なくとも1つの層が、リグニン含有木質繊維原材料を含有することが特定されている。木質繊維原材料としては、例えば、木材を、例えばハンマーミルによって粉砕することで形成されたパルプが特定されていてよい。パルプという用語は、この場合、繊維の水性スラリーに限定されず、単に湿ったあるいは乾燥した繊維塊も含む。リグニン含有木質繊維材料を含む少なくとも1つの層におけるパルプの割合は、特に70重量%~100重量%の範囲であり得る。
【0030】
パルプは、この場合、漂白、特に無塩素漂白されてもよく、木材と比較して低い割合のリグニンしか存在しないが、それでも記載のプロセスでの所望の色変化には十分である。
【0031】
本発明の範囲内で、例えば、多層構造の不織布の場合に、1つの層が完全にまたは実質的にパルプから形成されることが特定されていてよい。繊維の柔らかいコンシステンシーから、特に少なくとも3層構造の場合に内側コア層としてのパルプ層の配置が特定されていてよい。
【0032】
本発明の範囲内で、不織布がリグニンを含有せず、記載の着色効果が消毒液の色素のみによって達成されることも可能である。
【0033】
以下にさらに説明するように、特に不織布中のリグニンと消毒剤中の色素との組合せが、特に明らかな色変化をもたらすことができることから、かかる組合せが本発明の範囲内で特に有用であり得る。
【0034】
リグニンの存在にかかわらず、本発明の好ましい形態によれば、不織布が天然繊維または植物由来の材料からなる少なくとも1つの層を有することが特定されている。
【0035】
植物由来の材料として、例えば、セルロース系原料、例えば木材から化学プロセスによって得ることができる、特にビスコースの形態の再生セルロースが可能である。しかしながら、パルプとは異なり、この場合、材料の処理または変換が行われ、ビスコース繊維は、例えば湿式紡糸法においてフィラメントの形態で紡糸することができる。
【0036】
例えば、70重量%~100重量%のビスコース繊維、特にビスコース短繊維からなる少なくとも1つのビスコース繊維含有層が特定されていてよい。
【0037】
本発明の特に好ましい形態によれば、不織布が、生分解性の植物由来の材料から完全に形成されていることが特定されている。
【0038】
例えば、不織布がビスコースおよび/またはパルプの層のみを有する場合、材料はサーマルリサイクル可能であるとともに生分解性、特に堆肥化可能であり、腐敗しやすい。
【0039】
しかし、当然ながら、消毒シートを医療分野で使用する場合、廃棄の過程で消毒シートをさらに取り扱う際にもしばしば制御されずに放出されてはならない、消毒プロセス中に捉えられたウイルス、病原体、細菌等に考慮する必要がある。
【0040】
例えば、パルプ製のコア層がビスコース製の外層の間に配置される3層構造が適切である。
【0041】
ビスコース繊維は、例えばカーディングプロセスを用いて堆積させることができ、パルプの堆積は、例えば空気流によって、または水性懸濁液から行うことができる。任意に、不織布は、その製造時に、例えばウォータージェットによって固化させ、続いて乾燥させてもよい。
【0042】
不織布は、好ましい形態によれば、25g/m~80g/mの坪量を有する。
【0043】
着色物質または着色物質の前駆体としてリグニンが加えられる場合、不織布は0.02g/m~1g/m、好ましくは0.05g/m~0.2g/m、特に好ましくは0.07g/m~0.14g/mのリグニンを有する。先で既に説明したように、パルプまたは代替のリグニン含有繊維材料は、既にある程度漂白されていてもよい。その際、ISO302:2015に準拠したカッパー価によってリグニン割合も決定するのが一般的である。
【0044】
付加的または代替的には、本発明の好ましい形態によれば、消毒液が、例えば0.01mg/l(ミリグラムパーリットル)~2mg/l、好ましくは0.02mg/l~1mg/l、特に好ましくは0.1mg/l~0.5mg/lの色素を含有することが特定されている。特に食用色素、天然色素およびネイチャーアイデンティカル色素が適切であり、これらは、通例、使用者および環境にとって無害である。ここで、天然色素およびネイチャーアイデンティカル色素がしばしば食用色素に分類されることに留意すべきである。
【0045】
色素は、清浄化された表面で全くまたは少なくとも顕著な着色が認められないような量で使用される。しかしながら、消毒液の少なくとも2つの液体成分のうち1つが揮発する際に色素が移動することで、対応する成分が蒸発する場所に色素が蓄積し、知覚可能な色変化が局所的に生じ得る。例えば、パテントブルーVおよびキノリンイエローのような合成的に製造された食用色素が適切である。
【0046】
さらに、自体食用色素としても分類され得る天然またはネイチャーアイデンティカル色素が可能である。消毒液の組成に応じて、色素の溶解性を考慮する必要がある。水およびアルコールから形成される消毒液の場合、クロロフィル、アントシアニン、フラボンおよびベタレインのような水溶性色素が通例適切である。
【0047】
葉緑素とも呼ばれるクロロフィルは、光合成を行う生物によって形成される天然色素の一群を指す。アントシアニンは、水溶性の植物色素であり、ほぼ全ての高等植物の細胞液中に存在し、花および果実に強い赤色、紫色または青色を与える。アントシアニンの天然源は、例えばエルダーベリー、ムラサキキャベツ、ブルーベリー、ブラックベリー、クロスグリ、青ブドウ、イボタノキの実、タチアオイおよびヒナゲシである。フラボンは、黄色ないし橙色がかった薄茶色を呈し、例えばタマネギ、カバノキ、ホップ、モクセイソウ、セージおよびアキノキリンソウから得ることができる。ベタレインは、特に赤カブ、例えばビーツから得ることができる。消毒液の組成に応じて、場合により、カロチノイドのような非水溶性天然色素も考えられる。
【0048】
言及した天然色素の場合、天然産物から得られるこれらの物質が、着色効果に加えて、更なる特定の特性を有する可能性があることに留意すべきである。生理学的に無害な天然色素を使用するのが好ましいことは言うまでもない。さらに、天然色素は、本発明の範囲内でさらに有益な特性、例えば消毒効果を有し得る。
【0049】
既知のように、収容容器は、再閉鎖可能なフィルム包装またはディスペンサーボトルとして形成されていてよい。
【0050】
収容容器は、納品時の状態で、例えば50~200枚の消毒シート、特に60~120枚の消毒シートを収容している。ここで、一方では、収容容器が手軽でコンパクトであることが望ましく、他方では、通常の作業に適切な量の消毒シートを保持する必要があることに留意すべきである。特に、本発明の範囲内では、上記の色変化において、疑わしい場合には、消毒シートパッケージ全体をもはや使用してはならないことにも考慮すべきである。
【0051】
本発明の好ましい形態によれば、収容容器内の消毒シートが互いに接触しており、かつ/または互いに折り重ねられており、かつ/または互いに分離可能にストランドとして互いに続いていることが特定されている。
【0052】
ストランドの場合、消毒シートを、例えばミシン目によって結合されていてもよく、この場合、個々の消毒シートを収容容器から引き出す際に、取出し開口において手で分離するかまたは自然に引き裂かれる。ストランドは、この場合、収容容器内にロールとして配置することができる。かかる構成は、特に収容容器としてディスペンサーボトルに関連して特に適切である。
【0053】
フィルム包装の配置の場合、消毒シートは、通常、折り重ねられている。この場合、消毒シートを単純な積み重ねとして重ねてもよい。しかしながら、好ましくは、1枚の消毒シートが引き抜かれると、その後の消毒シートが既に取出し開口に向かって動くように、連続する消毒シートが互いに折り重ねられていることが特定されている。これにより、その後の消毒シートを、特に容易かつ確実に把持することができる。
【0054】
しかしながら、欠点として、その後の消毒シートが誤って引き出されすぎると、取出し開口の適切な閉鎖がもはや不可能となるかまたは少なくとも損なわれ、その後、記載の方法において少なくとも2つの液体成分のうちの1つが長期間にわたって失われることが起こり得る。この場合、かかる状況を本発明の範囲内で確実に確かめることができる。
【0055】
以下、本発明を実施例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明による消毒シートパッケージを示す図である。
図2】消毒シートパッケージの代替的な形態を示す図である。
図3】消毒シート用の不織布を製造する方法工程を示す図である。
【0057】
図1は、取出し開口1を有する収容容器2を備えるフィルム包装の形態の消毒シートパッケージを示す。取出し開口1を閉鎖するために自己接着性のフィルムラベル3が設けられる。
【0058】
収容容器2内には、多数、例えば60または80枚の不織布製の消毒シート4が配置されている。消毒シート4は、1枚の消毒シート4が引き出されると、次の1枚が既に取出し開口1に向かって引っ張られるように、既知の形態で互いに折り重ねられている。
【0059】
消毒シート4には、2つの液体成分を有する消毒液が含浸させられている。消毒液は例えば、液体成分として、体積分率が50%~90%のアルコールと、体積分率が10%~50%の水とを有することができ、この場合、以下にさらに説明するように、個々の添加剤をより少量加えることができる。適切なアルコールは、例えばエタノール、1-プロパノール、および実際にはイソプロパノールとも称される2-プロパノールである。特に、様々なアルコールの混合物も可能である。
【0060】
更なる構成成分として、消毒液はpH調整剤、例えばリンゴ酸を有し、これはpH値を5.8未満、例えば3.5~5.8に調整する。
【0061】
最後に、特に0.02mg/l~1mg/lの量の食用色素も添加される。例えば食用色素であるキノリンイエローおよびパテントブルーVが適切である。
【0062】
具体的な実施例によれば、消毒液は、例えば27体積%のエタノール、36体積%のイソプロパノール、36体積%の水、リンゴ酸の形態の1%のpH調整剤、および指定量の色素を含有することができる。
【0063】
さらに、不織布がリグニン含有繊維を有することが特定されている。不織布は、特に生分解性の植物由来の材料から形成することができ、25g/m~80g/mの坪量を有し得る。この場合、リグニン含有量は、例えば0.05g/m~0.2g/mである。
【0064】
【表1】
【0065】
図1によれば、最初に収容されていた消毒シート4のうち1枚が既に取り出され、更なる消毒シート4が、フィルムラベル3の横からはみ出ることで、露出端5が覆われなくなるまで取出し開口1から引き出されている。
【0066】
液体成分として、実施例においてエタノールおよびイソプロパノールから形成されたアルコールは、更なる成分としての水と比べて揮発性が高く、露出端5で蒸発する。この場合、消毒シート4内の毛細管力または拡散によって、急速に蒸発するアルコールが連続的に吸い上げられることに留意すべきである。
【0067】
このことは、露出端5が収容容器2からはみ出した一番上側の消毒シート4だけでなく、直接接触している下層の消毒シート4全てにも当てはまる。
【0068】
このため、特に長期間のうちに大量のアルコールが蒸発し、全体として所望の消毒効果が保証されなくなる可能性がある。この場合、より揮発性が低い成分のために、一番上側の消毒シート4の露出端5も湿ったままである可能性がある。ただし、そこでは明らかに知覚可能な色変化が観察される。
【0069】
これは、収容容器2の内部から外部に運ばれるアルコールとともに、リグニンまたはリグニンの着色酸化生成物と、消毒液に含まれる色素とが自由端5へと輸送され、アルコールが蒸発するとそこに留まるためである。したがって、まさにその露出端でリグニンまたは着色分解生成物の蓄積と色素の蓄積とが観察される。
【0070】
この色変化は、消毒液の組成が全体的に著しく変化したことから、消毒シートパッケージ全体をもはや確実に使用することができないことを使用者に示す。
【0071】
使用者は、収容容器2上の適切な表示、使用説明書または添付文書によって、説明した機能を知ることができる。
【0072】
従来技術による消毒シートパッケージと比較して、安全性が向上している。特に、あまり急速に揮発しない水のために、露出端5も湿ったままである可能性があることから、従来技術による消毒シートパッケージでは、使用者は、記載の色変化がなければ、消毒シートパッケージを全体的に未だ使用することができるかを確認することができない。
【0073】
一方、色変化がない場合、使用者は、一番上側の消毒シート4の露出端5が突き出していても、未だ消毒シートパッケージ全体が損なわれていないことを認識する。この場合、使用者は、未だ消毒液の組成が著しく変化するほど長期間にわたって、揮発性がより高い成分であるアルコールが露出端5に放出されていないと結論付けることができる。
【0074】
図2は、消毒シートパッケージの代替的な形態を示し、収容容器2としてディスペンサーボトルが特定されている。取出し開口1は、蓋6によって閉鎖することができる。図2は、蓋6が適切に閉じられていない形態を示すが、ここでも一番上側の消毒シート4の露出端5が取出し開口1からはみ出し、そこに顕著な色変化を認めることができる。この場合にも、消毒パッケージ全体をもはや安全に使用することができないことが使用者に示される。
【0075】
図3は、消毒シート4が形成される不織布を製造する方法を示す。第1の外層7および第2の外層8について、それぞれベール9としてビスコース繊維が準備され、続いてカード10に供給される。
【0076】
まず、カード10から第1の外層7がベルト11上に堆積され、その後、パルプ製のコア層12が空気流中に置かれる。次いで、コア層12は第2の外層8で覆われ、その後、材料ウェブが、ウォータージェットによって固化させるための装置13と、乾燥装置14とに供給される。
【0077】
例として示される熱固化のためのカレンダー15は、単に任意である。最後に、材料ウェブが巻き取られ、その後、後続処理され得る。
図1
図2
図3
【外国語明細書】