(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003588
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】光ファイバ母材の焼結炉
(51)【国際特許分類】
C03B 37/014 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
C03B37/014 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102823
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎治
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 宏治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 幸祐
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021CA13
(57)【要約】
【課題】2重構造焼結炉において、圧力の調整がより簡易な光ファイバ母材の焼結炉を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る光ファイバ母材の焼結炉は、第1の炉心管と、第1の炉心管の周囲に配されて第1の炉心管との間に中間室を形成する第2の炉心管と、第1の炉心管の内部にガスを供給するガス供給口と、第1の炉心管に設けられ、第1の炉心管内のガスを中間室に排出する第1の排気口と、第2の炉心管に設けられ、中間室からガスを排出する第2の排気口と、を備え、中間室へのガスの供給口は、第1の排気口のみである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の炉心管と、
前記第1の炉心管の周囲に配されて前記第1の炉心管との間に中間室を形成する第2の炉心管と、
前記第1の炉心管の内部にガスを供給するガス供給口と、
前記第1の炉心管に設けられ、前記第1の炉心管内のガスを前記中間室に排出する第1の排気口と、
前記第2の炉心管に設けられ、前記中間室からガスを排出する第2の排気口と、を備え、
前記中間室へのガスの供給口は、前記第1の排気口のみである、
光ファイバ母材の焼結炉。
【請求項2】
前記第1の炉心管と前記第2の炉心管とは、それぞれ上面と下面とを備えており、
前記第1の排気口が前記第1の炉心管の上面に設けられ、かつ前記第2の排気口が前記第2の炉心管の下面に設けられている、
または、
前記第1の排気口が前記第1の炉心管の下面に設けられ、かつ前記第2の排気口が前記第2の炉心管の上面に設けられている、
請求項1に記載の光ファイバ母材の焼結炉。
【請求項3】
前記第1の排気口には、前記第1の炉心管から前記中間室へのガスの移動は許容し、前記中間室から前記第1の炉心管へのガスの移動を許容しない逆止弁が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の光ファイバ母材の焼結炉。
【請求項4】
前記第1の炉心管は上面と下面とを備えており、
前記逆止弁は、前記第1の炉心管の上面に設けられる、
請求項3に記載の光ファイバ母材の焼結炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ母材の焼結炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の炉心管と、第1の炉心管の周囲に配された第2の炉心管とを備え、第1の炉心管と第2の炉心管との間に中間室が形成された光ファイバ母材の焼結炉(以下、2重構造焼結炉と呼ぶことがある)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の2重構造焼結炉は、第1の炉心管の内部に不純物等が入り込まないようにしつつ、第1の炉心管の内部のガスを排気できる。これは、第1の炉心管の内部と比べて、中間室のガスの圧力が低くなるように調整することによってなされる。すなわち、中間室のガスの圧力を適切に調整することが求められる。
【0005】
本開示は、2重構造焼結炉において、圧力の調整がより簡易な光ファイバ母材の焼結炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光ファイバ母材の焼結炉は、
第1の炉心管と、
前記第1の炉心管の周囲に配されて前記第1の炉心管との間に中間室を形成する第2の炉心管と、
前記第1の炉心管の内部にガスを供給するガス供給口と、
前記第1の炉心管に設けられ、前記第1の炉心管内のガスを前記中間室に排出する第1の排気口と、
前記第2の炉心管に設けられ、前記中間室からガスを排出する第2の排気口と、を備え、
前記中間室へのガスの供給口は、前記第1の排気口のみである。
【発明の効果】
【0007】
上記開示の構成によれば、2重構造焼結炉において、圧力の調整がより簡易な光ファイバ母材の焼結炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る光ファイバ母材の焼結炉の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る光ファイバ母材の焼結炉は、
第1の炉心管と、
前記第1の炉心管の周囲に配されて前記第1の炉心管との間に中間室を形成する第2の炉心管と、
前記第1の炉心管の内部にガスを供給するガス供給口と、
前記第1の炉心管に設けられ、前記第1の炉心管内のガスを前記中間室に排出する第1の排気口と、
前記第2の炉心管に設けられ、前記中間室からガスを排出する第2の排気口と、を備え、
前記中間室へのガスの供給口は、前記第1の排気口のみである。
上記構成によると、第1の炉心管に供給されたガスは、第1の排気口のみを介して、中間室に供給される。このとき、ガスの圧力は次第に減衰するので、第1の炉心管の内部のガスの圧力は、中間室の内部のガスの圧力よりも高くなる。このとき、ガス供給口から流入するガスの流量と第2の排気口から排出されるガスの流量とを調整すれば、自然と第1の炉心管の内部と中間室の内部との間で差圧が形成されるので、2重構造焼結炉における圧力の調整をより簡易に行うことができる。
【0010】
(2)前記(1)の光ファイバ母材の焼結炉において、
前記第1の炉心管と前記第2の炉心管とは、それぞれ上面と下面とを備えており、
前記第1の排気口が前記第1の炉心管の上面に設けられ、かつ前記第2の排気口が前記第2の炉心管の下面に設けられていてもよい、
または、
前記第1の排気口が前記第1の炉心管の下面に設けられ、かつ前記第2の排気口が前記第2の炉心管の上面に設けられていてもよい。
上記構成によると、第1の排気口は第1の炉心管の上面に設けられる場合、第2の排気口は第2の炉心管の下面に設けられる。第1の排気口は第1の炉心管の下面に設けられる場合、第2の排気口は第2の炉心管の上面に設けられる。このように、第1の排気口と第2の排気口とは互いに上下反対側に設けられる。このとき、第1の排気口と第2の排気口とは互いに上下同じ側に設けられる場合と比較して、第1の炉心管から中間室に入った空気が第2の排気口から排気されるまでに、中間室を広く流れるため、中間室の内部で流れが澱みにくくなる。これにより、中間室内部の不純物を排出しやすくなるとともに、中間室の内部の圧力は流れに従って緩やかに下降するので、中間室の内部で第1の炉心管の内部と中間室との間で差圧を安定して形成しやすくなる。
【0011】
(3)前記(1)または(2)の光ファイバ母材の焼結炉は、
前記第1の排気口には、前記第1の炉心管から前記中間室へのガスの移動は許容し、前記中間室から前記第1の炉心管へのガスの移動を許容しない逆止弁が設けられていてもよい。
上記構成によると、第1の排気口に逆止弁が設けられているので、第1の炉心管の内部のガス圧力が中間室の内部のガス圧力を少なくとも上回るまで逆止弁が開かない。この場合、第1の炉心管の内部のガス圧力が中間室の内部のガス圧力を少なくとも上回るまで第1の炉心管の中にガスが供給され続けるので、第1の炉心管と中間室との間の差圧が形成されやすくなる。
【0012】
(4)前記(3)の光ファイバ母材の焼結炉において、
前記第1の炉心管は上面と下面とを備えており、
前記逆止弁は、前記第1の炉心管の上面に設けられてもよい。
第1の炉心管の上面は、光ファイバ母材の搬出入を行う蓋が取り付けられている部分であり、逆止弁を外部に晒しやすい部分であるため、逆止弁のメンテナンスを行いやすい。また、上面に逆止弁が設けられている場合、自重によって逆止弁が閉まろうとするため、バネ等を使用した戻り機構を使用する必要がない。これにより、第1の炉心管と中間室との間の差圧を形成するための逆止弁を簡単な構成で実現できる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係る光ファイバの製造方法の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号又は名称を付し、重複する説明を適宜省略する。また、各図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
まず、光ファイバ母材の焼結炉1について説明をする。
図1は、本実施形態に係る光ファイバ母材の焼結炉1の概略図である。
図1に示すように、焼結炉1は、筐体2と、第1の炉心管3と、第2の炉心管4と、ヒータ6と、断熱材7と、を備える。
【0015】
筐体2は、焼結炉1の外殻を構成している。筐体2の内部に、第1の炉心管3と、第2の炉心管4と、ヒータ6と、断熱材7と、が配置されている。焼結炉1は、第2の炉心管4が第1の炉心管3を囲むようにして配置されている2重構造焼結炉である。ヒータ6は、第2の炉心管4の外側を囲むように配置されている。ヒータ6が第1の炉心管3および第2の炉心管4を加熱することで、第1の炉心管3の内部に配置されたガラス母材Gを脱水及び焼結することができる。断熱材7は、ヒータ6及び第2の炉心管4を囲むように配置されている。断熱材7は、ヒータ6からの熱が拡散することを妨げている。
【0016】
筐体2には、筐体給気管21と筐体排気管22とが設けられている。筐体給気管21には筐体給気バルブ211が設けられている。筐体給気管21に設けられる図示しないガス供給装置が、筐体2の内部にガスを送るように作動しており、筐体給気バルブ211の操作により、筐体2外部から筐体2内部に流入するガスの流量を調節できる。筐体排気管22には、筐体排気バルブ221が設けられている。筐体排気管22に設けられる図示しないポンプが、筐体2の内部からガスを排出するように作動しており、筐体排気バルブ221の操作により、筐体2内部から筐体2外部に流出するガスの流量を調節できる。
筐体給気管21からアルゴンガス等の不活性ガスを導入し、筐体排気管22から不活性ガスを排出する。これにより、ヒータ6及び断熱材7が酸化し劣化することを抑制している。
【0017】
第1の炉心管3は、高純度のカーボンで形成された円筒形の部材である。第1の炉心管3の内部には支持棒8にガラス微粒子を堆積させたガラス母材Gを配置できるように構成されている。例えば、第1の炉心管3の上面は開閉可能な蓋が設けられていて、蓋を開けることによってガラス母材Gを搬入および搬出できるようにしてもよい。また、ガラス母材Gを第1の炉心管3の内部に配置した際に、支持棒8と第1の炉心管3との隙間をなるべく塞ぐために、第1の炉心管3の上面にシール部材(図示せず)が設けられている。シール部材は、例えばカーボン製の耐熱封止部材である。
【0018】
第1の炉心管3には、ガス供給口31aと第1の排気口32とが形成されている。ガス供給口31aは、第1の炉心管3と筐体2の外部とに開口したガス供給管31の第1の炉心管3側の開口である。第1の排気口32は、第1の炉心管3から後述する中間室5にガスを排出する排出口である。本実施形態において、ガス供給口31aは、第1の炉心管3の下面に形成されており、第1排気口は、第1の炉心管3の上面に形成されている。
【0019】
なお、第1の炉心管3に供給されるガスは、例えばガラスの透明化に有利なヘリウムガスと脱水処理に有利な塩素ガスの混合ガスである。場合によっては、ガラス母材Gの屈折率を調整するためにフッ素化合物が供給されてもよい。
【0020】
第2の炉心管4は、高純度のカーボンで形成された円筒形の部材である。第1の炉心管3と第2の炉心管4との間に形成される空間を中間室5と呼ぶ。ガラス母材Gの搬入および搬出のために、第2の炉心管4の上面にも、開閉可能な蓋が設けられていてもよい。
【0021】
第2の炉心管4の下面には、第2の排気口41aが形成されている。第2の排気口41aは、第2の炉心管4と筐体2の外部とに開口したガス排気管41の第2の炉心管4側の開口である。
【0022】
ガス供給管31には、供給バルブ311が設けられている。ガス供給管31において図示しないガス供給装置が、第1の炉心管3の内部にガスを送るように作動しており、供給バルブ311の操作により、筐体2外部から第1の炉心管3の内部に流入するガスの流量を調節できる。ガス排気管41には、排気バルブ411が設けられている。ガス排気管41において図示しないポンプが、第2の炉心管4の内部からガスを排出するように作動しており、排気バルブ411の操作により、第2の炉心管4の内部から筐体2外部に流出するガスの流量を調節できる。
【0023】
図2は、
図1の領域IIの拡大図である。
図2に示すように、本実施形態においては、第1の排気口32には逆止弁33が設けられている。逆止弁33は、第1の炉心管3の内部から中間室5へガスが移動することは許容するが、中間室5から第1の炉心管3の内部へガスが移動することは許容しない。
【0024】
本実施形態の逆止弁33は、ボール33aを備えたボール式逆止弁である。第1の炉心管3の内部のガス圧力が、中間室5のガス圧力よりも大きい臨界圧力を超えるか超えないかによって、ボール33aの位置は異なる。
【0025】
例えば、第1の炉心管3の内部のガス圧力が、臨界圧力を下回る場合、実線で示すように、ボール33aは第1排気口の上部を塞ぐように配置される。このとき、ガスは第1排気口を通過できない。
【0026】
第1の炉心管3の内部のガス圧力が臨界圧力を上回る場合、一点鎖線で示したようにボール33aが上方へ移動する。第1排気口を塞いでいたボール33aが移動したため、ガスが第1排気口を通過することができる。このとき、第1の炉心管3の内部のガス圧力は中間室5のガス圧力よりも大きいので、ガスは第1の炉心管3の内部から中間室5の方向に流れる。
【0027】
第1の炉心管3の内部のガス圧力が臨界圧力を再び下回ると、ボール33aは、その自重によって第1排気口の上部を塞ぐ配置に戻り、ガスは第1排気口を通過できなくなる。
【0028】
次に、第1の炉心管3および第2の炉心管4の内部を流れるガスの流れについて説明する。供給バルブ311を開いている場合、ガス供給管31から第1の炉心管3にガスが導入される。ここでガス供給管31から第1の炉心管3に導入されたガスは、第1の炉心管3の下面から第1の排気口32が設けられている第1の炉心管3の上面に向かって流れる。第1の排気口32を通過したガスは、第2の排気口41aが設けられる第2の炉心管4の下面に向かって流れる。排気バルブ411を開いている場合、第2の炉心管4からガスが排出される。
【0029】
ここでガスは流れるにしたがって次第に圧力を損失する。つまり、第1の炉心管3の内部において導入されたガスの圧力よりも、中間室5のガスの圧力の方が低くなる。このように、第1の炉心管3の内部と中間室5の内部との間の差圧が自然と形成される。
【0030】
支持棒と第1の炉心管の間において、シール機構により第1の炉心管はほとんど密閉された状態であるが、それでもわずかにガスが漏れ出てしまう。2重構造焼結炉は、支持棒と第1の炉心管の間等から、第1の炉心管の内部に不純物等が入り込まないようにすることを目的として設計されている。この目的を達成するためには、第1の炉心管の内部と比べて、中間室のガスの圧力が低くなるように調整することが望ましい。中間室のガスの圧力が最も低い場合、支持棒と第1の炉心管の間において完全に密閉できなかったとしても、中間室から第1の炉心管の内部に空気が移動しにくくなる。
【0031】
特許文献1の2重構造焼結炉は、中間室のガスの圧力が最も低い状態を形成するために、4か所で流量の調整を行っている。つまり、第1の炉心管のガス供給口、第1の炉心管の排気口、中間室のガス供給口、中間室の排気口の4か所で流量の調整を行う。
【0032】
このとき、第1の炉心管の内部のガス圧力の調整は、第1の炉心管のガス供給口および第1の炉心管の排気口によって行われている。また、中間室の内部のガス圧力の調整は、中間室のガス供給口および中間室の排気口によって行われている。つまり、第1の炉心管の内部と中間室との間で差圧を形成するための第1の炉心管の内部と中間室の内部とのガス圧力の調整が互いに独立して行われているので、差圧を形成するための制御が煩雑であった。
【0033】
本実施形態に係る焼結炉1において、第1の炉心管3に供給されたガスは、第1の排気口32のみ通ることにより中間室5に供給される。このとき、ガスの圧力は次第に減衰するので、第1の炉心管3の内部のガスの圧力は、中間室5の内部のガスの圧力よりも高くなる。
ガス供給口31aから流入するガスの流量と第2の排気口41aから排出されるガスの流量とを調整すれば、自然と第1の炉心管3の内部と中間室5の内部との間で差圧が形成されるので、2重構造焼結炉における圧力の調整をより簡易に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態において、第1の排気口32は第1の炉心管3の上面に設けられており、第2の排気口41aは第2の炉心管4の下面に設けられている。このように、第1の排気口32と第2の排気口41aとは互いに上下反対側に設けられるので、第1の排気口32と第2の排気口41aとは互いに上下同じ側に設けられる場合と比較して、第1の炉心管3から中間室5に入った空気が第2の排気口41aから排気されるまでに、中間室5を広く流れる。中間室5の内部で流れが澱みにくくなるので、中間室5内部の不純物を排出しやすくなるとともに、中間室5の内部の圧力は流れに従って緩やかに減衰する。これにより、中間室5の内部で第1の炉心管3の内部と中間室5との間で差圧を安定して形成しやすくなる。
【0035】
なお、第1の排気口32と第2の排気口41aとは互いに上下反対側に設けられていることが望ましいので、第1の排気口32は第1の炉心管3の下面に設けられる場合、第2の排気口41aは第2の炉心管4の上面に設けられてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、第1の排気口32には逆止弁33が設けられている。これにより、第1の炉心管3の内部のガス圧力が中間室5の内部のガス圧力を少なくとも上回るまで逆止弁33が開かない。つまり、第1の炉心管3の内部のガス圧力が中間室5の内部のガス圧力を少なくとも上回るまで第1の炉心管3の中にガスが供給され続けるので、第1の炉心管3と中間室5との間の差圧が形成されやすくなる。
【0037】
なお、中間室5から第1の炉心管3にガスが流入することを効果的に防ぐには、中間室5の圧力は、例えば絶対圧で101.3KPa以上102.3KPa以下であることが望ましく、中間室5の圧力に対して、第1の炉心管3の圧力は、0.01KPaから0.2KPaほど大きいことが望ましい(大気圧は、101.325KPa)。このとき、第1の炉心管3の圧力が中間室5の圧力を0.01KPaから0.2KPaほど上回る場合に逆止弁33が開くように構成されることで、第1の炉心管3と中間室5との間で所望の圧力差を形成しやすくなる。
【0038】
また、本実施形態においては、逆止弁33は第1の炉心管3の上面に設けられている。第1の炉心管3の上面は、ガラス母材Gの搬出および搬入を行う蓋が取り付けられている部分であり、逆止弁33を外部に晒しやすい部分であるため、第1の炉心管3の上面に逆止弁33を設けると逆止弁33のメンテナンスを行いやすい。
【0039】
もし、下面に逆止弁を設けた場合、第1の炉心管の内部のガス圧力と逆止弁の自重に逆らって閉める必要があるため、バネ等を使用した戻り機構を設ける必要がある。しかし、焼結炉内部は高温環境下であるため、バネ等による戻り機構の劣化が早まることがある。これに対して、上面に逆止弁33を設けた場合、自重によって逆止弁33が閉まろうとするため、バネ等を使用した戻り機構を設ける必要がない。これにより、第1の炉心管3と中間室5との間の差圧を形成するための逆止弁33を簡単な構成で実現できる。
【0040】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。また、上記説明した各例が含む要素は、互いに組みわせることができる。
【0041】
逆止弁を設ける場合、ボール式逆止弁以外の逆止弁を用いてもよい。例えば、スイング式、リフト式等の逆止弁が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 焼結炉
2 筐体
3 第1の炉心管
4 第2の炉心管
5 中間室
6 ヒータ
7 断熱材
8 支持棒
21 筐体給気管
22 筐体排気管
31 ガス供給管
31a ガス供給口
32 第1の排気口
33 逆止弁
33a ボール
41 ガス排気管
41a 第2の排気口
211 筐体給気バルブ
221 筐体排気バルブ
311 供給バルブ
411 排気バルブ
G ガラス母材