(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035883
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20240308BHJP
B21D 53/88 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D22/26 D
B21D53/88
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140489
(22)【出願日】2022-09-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA06
4E137AA08
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CA24
4E137CB01
4E137EA01
4E137GA03
4E137GA08
4E137GB03
(57)【要約】
【課題】少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品について、割れ、しわや折れ込みをできるプレス成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るプレス成形品1の製造方法は、少なくとも、側面視で凹状湾曲部を有する天板部3と、天板部3からパンチ肩R部5を介して連続する縦壁部7を有するプレス成形品1の製造方法であって、天板部3と同方向に湾曲する中間天板部21と、パンチ肩R部5に相当する部位に形成された稜線部23に連続して形成された段差からなるステップ形状部17と、ステップ形状部17に連続して外方に延出すると共に中間天板部21と同方向に湾曲する外方面部25と、を有する中間成形品19をプレス成形する第1成形工程と、
中間成形品19をプレス成形品1にプレス成形する第2成形工程と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品の製造方法であって、
前記天板部と同方向に湾曲する中間天板部と、前記パンチ肩R部に相当する部位に形成された稜線部に連続して形成された段差からなるステップ形状部と、該ステップ形状部に連続して外方に延出すると共に前記中間天板部と同方向に湾曲する外方面部と、を有する中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品を前記プレス成形品にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項2】
前記中間成形品の前記稜線部の曲率半径が、前記プレス成形品のパンチ肩R部の曲率半径と同じかそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品の製造方法に関する。
なお、本明細書において例えば「パンチ肩R部」と表記した際には、成形品の部位を意味し、「パンチ肩」と表記した際には金型の部位を意味する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突安全性基準の厳格化により、車体の衝突安全性の向上が進む中で、二酸化炭素排出規制を受けて、燃費向上やEV化のために車体の軽量化も必要とされている。これら車体の衝突安全性向上と軽量化を両立させるために、車体構造部品への引張強度590MPa級以上の高強度鋼板(ハイテン材とも称する)の適用が進んでいる。
【0003】
自動車部品はその一部の構造を含めて、少なくとも、天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有し、前記天板部に側面視で凹状に湾曲する湾曲部位を有するプレス成形品がある。
このようなプレス成形品をプレス成形した場合、天板部における凹状湾曲部の底部及びその近傍のパンチ肩R部に連続する縦壁部の先端部が伸びフランジ変形となる。そのため、当該部位に板厚が減少し割れが発生しやすくなり、また、天板部の凹状湾曲部の底部及びその近傍のパンチ肩R部の板厚が増加して座屈(しわ、折れ込み)が発生しやすくなる。
【0004】
特にハイテン材の場合、高強度化によって、伸びフランジ変形部位の割れや、前記パンチ肩R部の座屈(しわ、折れ込み)が発生しやすくなり、特に問題である。
【0005】
この点、従来は、平坦かつ上面視で凹状外周縁を有する天板部と、該天板部から該凹状外周縁に沿って連続する縦壁部を有するプレス成形品の伸びフランジ変形に伴う割れ対策について、例えば特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/097745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載されるプレス成形方法は、天板部が平坦であり、上面視で該天板部の外周縁が凹状であるプレス成形品を対象としている。
一方、本発明が対象としているプレス成形品は、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品である。
このように、特許文献1が対象としているプレス成形品と本願発明が対象としているプレス成形品とは、形状が異なっている。
【0008】
このため、特許文献1のプレス成形方法を、本願発明が対象としているプレス成形品に適用しても、当該プレス成形品の伸びフランジ変形部位の割れや、前記パンチ肩R部のしわや、折れ込みを防止することはできない。
【0009】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品の割れ、しわや折れ込み防止をできるプレス成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品の製造方法であって、
前記天板部と同方向に湾曲する中間天板部と、前記パンチ肩R部に相当する部位に形成された稜線部に連続して形成された段差からなるステップ形状部と、該ステップ形状部に連続して外方に延出すると共に前記中間天板部と同方向に湾曲する外方面部と、を有する中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品を前記プレス成形品にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記中間成形品の前記稜線部の曲率半径が、前記プレス成形品のパンチ肩R部の曲率半径と同じかそれ以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天板部の凹状湾曲部底部及びその近傍におけるパンチ肩R部及びその近傍での、しわや、折れ込みを防止でき、かつ該パンチ肩R部に連続する縦壁部の先端部における割れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係るプレス成形品の製造方法の説明図である。
【
図2】本実施の形態において成形された中間成形品の説明図である。
【
図3】本実施の形態における第2成形工程の成形過程の説明図である。
【
図4】本実施の形態における作用効果の説明図である。
【
図5】本発明の他の態様に係るプレス成形品の製造方法の説明図である。
【
図6】実施例で製造対象としたプレス成形品の説明図である。
【
図7】本発明が対象としているプレス成形品の説明図である。
【
図8】従来のプレス成形品の製造方法の説明図である。
【
図9】従来のプレス成形方法の成形過程の説明図である。
【
図10】従来のプレス成形方法で製造されたプレス成形品の課題の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が対象とする目標形状であるプレス成形品の一例について、
図7に基づいて説明する。
本発明が対象としているプレス成形品1は、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部3と、天板部3からパンチ肩R部5を介して連続する縦壁部7を有するものであり、その一例が
図7に示す断面L字形状のものである。
【0015】
このようなプレス成形品1をプレス成形した際に生ずる問題点について、板厚1.4mm、引張強度980MPa級鋼板をブランクとしてプレス成形した場合について説明する。
図8は、本発明が対象とするプレス成形品1を1工程でプレス成形する場合に用いる従来の金型を示している。
従来の金型は、凹状湾曲部を有するパンチ9と、パンチ9と同様の凹状湾曲部を有するパッド11と、ダイ13を備えており、金属板であるブランク15をパッド11とパンチ9で押さえて天板部3に凹状湾曲部を成形しつつ、ダイ13を相対的に移動させて縦壁部7を成形していた。
【0016】
従来のプレス成形過程を
図9に基づいて説明する。
図9は、プレス成形中のプレス成形品1の天板部3の凹状湾曲部における湾曲の底部の断面(
図7のA-A断面)を示したものである。
なお、
図9の[28mmup]等の数値は成形下死点までの板厚を考慮したパンチ9のパンチ肩33とダイ顎部13a(
図8、[2mmup]の図参照)とのプレス成形方向の隙間である。例えば、[28mmup]のときのパンチ9のパンチ肩33とダイ顎部13aとの隙間はプレス成形品1の板厚+28mmとなる。
【0017】
図9に示すように、[47mmup]でパッド11によりブランク15がパンチ9に押し付けられ、凹状湾曲部が形成される。この状態では、縦壁に成形される部位を含めてブランク15全体が紙面直交方向凹状に湾曲した形状となる。
【0018】
[35mmup]でダイ肩13bがブランク15に接触して縦壁部7が成形され始める。このため、ブランク15の縦壁相当部位の端部が下向きに湾曲する。この縦壁部7が成形され始めるとき、縦壁相当部位は、紙面直交方向に凹状に湾曲しているために剛性が高く、天板部3と縦壁部7の境界となるパンチ肩R部5(稜線)に沿った変形を生じにくい。そのため、[28mmup]で、ダイ13のダイ肩13bに接触したブランク15の凹状湾曲部の底部が屈曲して腰折れが発生する。さらに[19mmup]にかけて腰折れが発生した部位がパンチ9に接触しないまま成形方向に折れ曲がる。そして、[8mmup]、[2mmup]で腰折れした部位がダイ13とパンチ9の隙間で縦壁部7に成形され、成形下死点でパンチ9のパンチ肩33に接触してパンチ肩R部5となる。
【0019】
従来のプレス成形過程をFEM解析したときの成形下死点での板厚分布を
図10に示す。
図10におけるA-A点線は、
図7と同様に凹状湾曲部の底部の位置を示している。
図10に示されるように、凹状湾曲部の底部に連続する縦壁部7の先端部位は伸びフランジ変形となって、最大板厚減少率が12.3%と大きくなり割れが発生しやすい。
他方、パンチ肩R部5の最大板厚増加率が10.0%と大きく、しわが発生し折れ込みに至る。
【0020】
従来のプレス成形過程において、プレス成形初期に形成される側面視で凹状となる凹形状湾曲部は、その形状から剛性が高い。そのため、その後にダイ13により縦壁部7を成形しようとすると、ブランク15に大きな圧縮力が作用して板厚が増加し、腰折れしてしわや折れ込みが発生しやすい。
また、天板部3が凹状に湾曲しているため、凹状湾曲部に連続する縦壁部7が凹状湾曲部の左右に拡がって伸びフランジ変形となり、湾曲の底部に連続する縦壁部7の先端に大きな張力が作用して、板厚が減少して割れやすくなる。
【0021】
このような一連の成形過程における板厚増加や板厚減少を抑制するための検討において、本発明者は、
図9の[28mmup]から[2mmup]のブランク15の変形に着目した。
すなわち、[28mmup]の成形初期において、ブランク15をパンチ9のパンチ肩33に接触させることができれば、ブランク15がパンチ9に接触しないまま成形方向に腰折れすることがなく、従来のようなしわや折れ込みを防止できると考えた。
さらに、目標形状の縦壁部7を成形する際の縦壁部7の成形高さを低くできれば、伸びフランジ変形量が少なくなって割れが発生しにくくなると考えた。
【0022】
そこで、本発明では、
図1に示すように、プレス成形工程を第1成形工程と第2成形工程の2工程に分けて成形する。そして、第1成形工程において、プレス成形品1と同方向に湾曲すると共に、ステップ形状部17を有する中間成形品19をプレス成形し、第2成形工程で中間成形品19を目標形状であるプレス成形品1にプレス成形する。
中間成形品19は、プレス成形品1の天板部3と同方向に湾曲する中間天板部21と、パンチ肩R部5に相当する部位に形成された稜線部23と、該稜線部23に連続して形成された段差からなるステップ形状部17を備えている。
図2はプレス成形品1の天板部3と同形状の中間天板部21を備えた例である。また、ステップ形状部17に連続して外方に延出すると共に中間天板部21と同方向に湾曲する外方面部25を備えている。外方面部25は第2成形工程で縦壁部7に成形される。
図2は、外方面部25が中間天板部21と平行になっている例であるが、本発明においては、外方面部25は中間天板部21と同方向に湾曲すればよく、中間天板部21と曲率が同じである必要はない。また、中間天板部21は、第2成形工程でプレス成形品1の天板部3の湾曲となれば良いため、目標形状であるプレス成形品1の天板部3の形状と完全に一致する必要はない。
以下、中間成形品19が
図2に示す形状の場合を例に挙げて、
図1に基づいて第1成形工程と第2成形工程を詳細に説明する。
【0023】
<第1成形工程>
第1成形工程では、
図1(a)に示すように、ステップ成形パンチ27とステップ成形ダイ29を用いる。これらステップ成形パンチ27とステップ成形ダイ29により、中間天板部21、ステップ形状部17、及び外方面部25を有する中間成形品19をプレス成形する。
なお、中間成形品19の稜線部23の曲率半径は、プレス成形品1のパンチ肩R部5の曲率半径と同じかそれ以上であることが好ましい。これによって、第2成形工程において、稜線部23がパンチ9のパンチ肩33に接触しやすくなるからである。
【0024】
<第2成形工程>
第2成形工程では、
図1(b)に示すように、目標形状であるプレス成形品1を成形するパンチ9とパッド11とダイ13を用いる。
図1(b)に示すものは、従来例として
図8に示したものと同様である。そして、パンチ9の上に中間成形品19を載せ、パッド11で押さえて、ダイ13をパンチ9側に相対移動させることにより、外方面部25を縦壁部7に成形し、目標形状であるプレス成形品1に成形する。
【0025】
図3は、
図2に示す矢視B-B断面方向について、第2成形工程におけるパンチ9とダイ13の動き、及び中間成形品19の変形過程を示したものである。
なお、[28mmup]等の数値は、前述した
図9の場合と同様に、成形下死点までの板厚を考慮したパンチ肩33とダイ顎部13aのプレス成形方向の隙間である。したがって、[28mmup]のときのパンチ肩33とダイ顎部13aとの隙間はプレス成形品1の板厚+28mmとなる。
【0026】
図3に示すように、第2成形工程では、中間成形品19がパンチ9に載せられて、パッド11で押さえられる。このとき、[47mmup]の図に示されるように、ステップ形状部17の稜線部23がパンチ9のパンチ肩33に接触する。
このように、中間成形品19のステップ形状部17がパンチ肩33に沿うことで、これ以降の成形過程での稜線部23の変形量が抑えられ、板厚増加が抑制されて腰折れが防止される。
【0027】
その後、ダイ13がパンチ9側に相対移動すると、[35mmup]でダイ13の長手方向両端部が中間成形品19の外方面部25の両端部に接触することで、中間成形品19の外方面部25の端部が少し浮き上がる。
【0028】
さらに、[28mmup]から[19mmup]まで成形が進むと、ダイ13のダイ肩R部13bが外方面部25の凹状湾曲部の底部に接触して、外方面部25の全体が曲げ戻され、さらに、[8mmup]、[2mmup]で縦壁部7の成形が進み、成形下死点で成形が完了する。
【0029】
中間成形品19にはステップ形状部17が形成されていることから、縦壁部7の成形過程において、第2成形工程における縦壁部の成形高さは、ステップ形状部17の下部から外方面部25の端部に至る距離となり、従来例のように、天板部3の稜線部23のR開始位置からブランク15の端部までの距離に比べて短くなっている。
このため、伸びフランジ変形による板厚減少が抑制され、割れ発生を防止できる。
【0030】
本実施の形態のプレス成形過程をFEM解析したときの、第1成形工程と第2成形工程の成形下死点での板厚分布を
図4に示す。
図4(a)が第1成形工程の成形下死点での板厚分布、
図4(b)が第2成形工程の下死点での板厚分布である。
図4(a)に示すように、第1成形工程では稜線部23で最大板厚増加率が3.1%であり、また外方面部25で最大板厚減少率が3.7%であった。
また、
図4(b)に示すように、第2成形工程ではパンチ肩R部5で最大板厚増加率が3.1%であり、縦壁部7の先端部位で最大板厚減少率が10.8%であった。
【0031】
本実施の形態の
図4(b)と従来例の
図10を比較すると、パンチ肩R部5(稜線部23)での最大板厚増加率は、従来例が10.0%であったのに対して、本実施の形態では3.1%と著しく低減した。よって、稜線部23でのしわや折れ込みを防止できることがわかる。
また、縦壁部7の先端部位の最大板厚減少率は、従来例が12.3%であったのに対して、本実施の形態では10.8%と低減した。よって、伸びフランジ変形に伴う割れが抑制できることがわかる。
【0032】
なお、上記の説明では、
図1(b)に示すように、第2成形工程で使用するダイ13は、縦壁部7を成形するダイ肩13bが直線状のものであった。しかし、本発明における第2成形工程で使用するものは、ダイ肩31bが、
図5に示すように、中間成形品19の外方面部25に沿うように湾曲したダイ31であってもよい。このような形状にすることで、外方面部25を縦壁部7に成形する際に、外方面部25を全長に亘って同時に成形することができる。
【実施例0033】
本発明の効果を確認するためのFEMによるプレス成形解析を行ったので、以下説明する。
板厚1.4mm、980MPa級鋼板を用いて、
図6に示すように、側面視で凹形状に湾曲する天板部3と、天板部3に連続する縦壁部7を有するプレス成形品1のプレス成形解析を行い、板厚分布を求めた。プレス成形品1の各部の寸法は
図6に示す通りである。
プレス成形解析は、
図8に示した1工程で行う従来例の他、中間成形品19(
図2)における外方面部25の形状を変えて行い、目標形状であるプレス成形品1の稜線部23の最大板厚増加率と縦壁先端部での最大板厚減少率を求めた。
なお、
図6のプレス成形品1において、最大板厚増加率が8%を超えるとしわや折れ込みが発生し、最大板厚減少率が12.0%を超えると割れが発生することがわかっている。
解析結果を表1に示す。
表1において、ステップ高さ(mm)として、中間天板部21の凹状湾曲底部の位置でのステップ形状部17の高さと、中間成形品19の端部におけるステップ形状部17の高さとを示した。
【0034】
【0035】
1工程で天板部3と縦壁部7をプレス成形したNo.1に示す従来例では、パンチ肩R部5の最大板厚増加率は10.0%であり、しわや折れ込みが発生した。
また、縦壁先端部における最大板厚減少率は12.3%であり、割れが発生した。
比較例であるNo.2は、中間成形品19の外方面部25について、特許文献1と同様に天板部3方向に凸状山形形状とした場合である。この場合、中間成形品19をプレス成形中に、凸状山形形状にした外方面部25の先端で割れが発生し、プレス成形を中止せざるを得なかった。
【0036】
No.3からNo.11に示す発明例は、ステップ形状部17を有する中間成形品19を成形した後、中間成形品19を目標形状に成形するというものである。そして、外方面部25は天板部3と同様に凹状に湾曲する形状とし、ステップ形状部17の高さを1mm~20mmまで変化させたものである。
【0037】
No.3からNo.11のいずれも、目標形状のパンチ肩R部5での最大板厚増加率及び縦壁先端部における最大板厚減少率も従来例であるNo.1より低減した。
また、No.3からNo.11のいずれも、目標形状のパンチ肩R部5での最大板厚増加率はしわが発生する8%より小さくてしわ発生が防止でき、また目標形状の縦壁先端部位の最大板厚減少率は12.0%以下であり、割れ発生も防止できた。
特に、No.7からNo.9のように、中間成形品19のステップ高さを10mm~15mmとすることで、目標形状におけるパンチ肩R部5の最大板厚増加率が著しく低減して、確実にしわや折れ込みを防止できるとともに、目標形状における縦壁先端部位における最大板厚減少率も低減して、割れを確実に防止できることが分かった。