(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035890
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】通信媒体の検査装置、および通信媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G06K7/10 280
G06K7/10 240
G06K7/10 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140502
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小久保 悠
(72)【発明者】
【氏名】久保 高志
(57)【要約】
【課題】
通信媒体の多面付シートに対して、高速に複数の通信検査を行うことができる、通信媒体の検査装置、および通信媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】
多面付けされた多面付シートの状態で非接触式の通信媒体の検査を行う検査装置であって、多面付シートを搭載する搭載面を有する支持台と、搭載面に沿って配列される複数の通信モジュールと、複数の通信モジュールを制御する制御部と、を備え、複数の通信モジュールは、搭載面に搭載される多面付シートの異なる通信媒体とそれぞれ対向し、通信媒体と通信して情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行う、通信媒体の検査装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面付けされた多面付シートの状態で非接触式の通信媒体の検査を行う検査装置であって、
前記多面付シートを搭載する搭載面を有する支持台と、
前記搭載面に沿って配列される複数の通信モジュールと、
複数の前記通信モジュールを制御する制御部と、を備え、
複数の前記通信モジュールは、前記搭載面に搭載される前記多面付シートの異なる前記通信媒体とそれぞれ対向し、前記通信媒体と通信して情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行う、
通信媒体の検査装置。
【請求項2】
前記支持台には、前記搭載面に開口する複数の貫通孔が設けられ、
複数の前記通信モジュールは、それぞれ1つずつ前記貫通孔の内部に配置される、
請求項1に記載の通信媒体の検査装置。
【請求項3】
前記支持台を前記搭載面と直交する方向に沿って移動させて複数の前記通信モジュールと前記搭載面との距離を変化させる昇降部を有する、
請求項1に記載の通信媒体の検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記通信モジュールに対し同時にそれぞれと対向する前記通信媒体と通信させる、
請求項1に記載の通信媒体の検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、複数の前記通信モジュールに対し順番にそれぞれと対向する前記通信媒体と通信させる、
請求項1に記載の通信媒体の検査装置。
【請求項6】
ICチップおよびアンテナを有するシート状の通信媒体を多面付けした多面付シートを製造するシート製造工程と、
複数の通信モジュールを前記多面付シートの異なる前記通信媒体に対向して配置させる配置工程と、
前記通信モジュールに前記多面付シートの異なる前記通信媒体とそれぞれ通信させ情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行わせる通信工程と、を有する、
通信媒体の製造方法。
【請求項7】
前記通信工程は、複数の前記通信モジュールに対し同時にそれぞれと対向する前記通信媒体と通信させる工程である、
請求項6に記載の通信媒体の製造方法。
【請求項8】
複数の前記通信モジュールは、複数のグループに分けられており、
前記通信工程は、前記グループ毎に同時に行われる、
請求項7に記載の通信媒体の製造方法。
【請求項9】
前記通信工程は、複数の前記通信モジュールに対し順番にそれぞれと対向する前記通信媒体と通信させる工程である、
請求項6に記載の通信媒体の製造方法。
【請求項10】
前記通信媒体に書き込まれる情報は、それぞれの前記通信媒体に割り当てられるシリアル番号を含み、
前記通信工程として、前記通信媒体に対し通信の可否の検査を行う第1通信工程と、
前記通信工程として、前記第1通信工程の結果を基に通信可能な通信媒体に対して前記シリアル番号の割り当てを行い前記通信媒体に書き込むとともに前記シリアル番号の読み込み検査を行う第2通信工程と、を有する、
請求項6~9の何れか一項に記載の通信媒体の製造方法。
【請求項11】
前記通信工程として、前記通信モジュールに前記通信媒体の情報の読み込みをさせる読み込み工程と、
前記通信工程として、前記通信モジュールに前記通信媒体への情報の書き込みをさせる書き込み工程と、
複数の前記通信モジュールと前記多面付シートとの相対的な距離を変化させる距離調節工程と、を有し、
前記読み込み工程と前記書き込み工程との間で距離調節工程を実施する、
請求項6に記載の通信媒体の製造方法。
【請求項12】
前記通信工程において通信不良が生じた通信媒体の位置をログとして記録する記録工程を有し、
前記ログは、前記通信工程の後に行われる工程で使用される、
請求項6に記載の通信媒体の製造方法。
【請求項13】
前記多面付シートから前記通信媒体を切り分ける裁断工程を有する、
請求項6に記載の通信媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信媒体の検査装置、および通信媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触式の通信媒体は、ICカード、IC冊子など様々な形で普及している。このような、非接触式の通信媒体は、多面付シートとして複数のICインレットを熱ラミネートプレスした後に、それぞれの通信媒体毎に切り分ける方法で製造される。このような通信媒体の通信を伴う検査工程は、通信媒体を切り出す前に行う場合がある。
【0003】
特許文献1には、多面付けICシートに対して、検出ヘッド部を検査対象のICインレットの直上に順次移動させて通信検査を実施する検査方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、多面付けICシートのモジュールの接合部から配線を延ばし外部に集約、露出させて通信検査を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-353433号公報
【特許文献2】特開2005-11141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、検査ごとに検出ヘッドを移動させる必要があり、検査時間長くなるという問題がある。特許文献2の方法では、ICチップの検査を行うことはできるが、アンテナを用いた非接触の通信検査を行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、通信媒体の多面付シートに対し効率的に通信検査を行うことができる、通信媒体の検査装置、および通信媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための通信媒体の検査装置の一態様は、多面付けされた多面付シートの状態で非接触式の通信媒体の検査を行う検査装置であって、前記多面付シートを搭載する搭載面を有する支持台と、前記搭載面に沿って配列される複数の通信モジュールと、複数の前記通信モジュールを制御する制御部と、を備え、複数の前記通信モジュールは、前記搭載面に搭載される前記多面付シートの異なる前記通信媒体とそれぞれ対向し、前記通信媒体と通信して情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行う。
【0009】
上記課題を解決するための通信媒体の製造方法の一態様は、ICチップおよびアンテナを有するシート状の通信媒体を多面付けした多面付シートを製造するシート製造工程と、複数の通信モジュールを前記多面付シートの異なる前記通信媒体に対向して配置させる配置工程と、前記通信モジュールに前記多面付シートの異なる前記通信媒体とそれぞれ通信させ情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行わせる通信工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信媒体の多面付シートに対し効率的に通信検査を行うことができる、通信媒体の検査装置、および通信媒体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の多面付シートの斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の多面付シートの層構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の検査装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の検査装置の正面図であり、昇降部により支持台を下降させた状態を示す。
【
図5】
図5は、一実施形態の検査装置の正面図であり、昇降部により支持台を上昇させた状態を示す。
【
図6】
図6は、一実施形態の各通信モジュールの制御方法の第1例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の各通信モジュールの制御方法の第2例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の各通信モジュールの制御方法の第3例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、一実施形態の各通信モジュールの制御方法の第4例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、一実施形態の各通信モジュールの制御方法の第5例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、一実施形態の通信媒体の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で参照する図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、図面は、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0013】
<多面付シート>
図1は、本実施形態の多面付シート10の斜視図である。
図2は、多面付シート10の層構造を示す断面図である。
本実施形態の通信媒体1は、カード型の非接触通信媒体である。しかしながら、通信媒体1は、柔軟性および可撓性を有する冊子型であってもよい。
【0014】
図1に示すように、多面付シート10は、通信媒体1を多面付したシートである。すなわち、多面付シート10は、複数の通信媒体1を有する。多面付シート10は、格子状に延びる区画線Lによって複数の区画Aに区画されている。個々の通信媒体1は、多面付シート10を区画線Lに沿って裁断することで多面付シート10から切り分けられる。本実施形態において、多面付シート10には、縦横それぞれ4列、合計16個の通信媒体1が配列される。なお、多面付シート10内の通信媒体1の数および配列は、本実施形態に限定されない。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の多面付シート10は、複数のICインレット11と、これら複数のICインレットを厚さ方向から挟む一対のシート部材12と、を有する。ICインレット11は、多面付シート10の各区画Aにそれぞれ1つずつ配置される。ICインレット11は、シート状である。なお、本実施形態の層構造は、一例であり、ICインレット11とシート部材12との間にさらに別のシート部材を有するなど、他の構成がさらに追加されていてもよい。
【0016】
ICインレット11は、フィルム基材11aと、アンテナ11bと、ICチップ11cと、を有する。ICチップ11cおよびアンテナ11bは、フィルム基材11aに実装される。ICインレット11は、非接触での通信機能、および記録機能を有している。なお、ICインレット11は、接触式通信機能と非接触式通信機能の両方を兼ね備えたデュアルインターフェースICモジュールであってもよい。
【0017】
アンテナ11bは、外部の通信装置(例えば後述する通信モジュール23(
図3参照))のアンテナと電磁結合して無線通信を行うためのアンテナである。アンテナ11bは、フィルム基材11aに垂直な方向から見た平面視において、例えば渦巻き状をなす。アンテナ11bは、無線通信により、信号の授受及び電力の受給を非接触状態で行う。
【0018】
ICチップ11cは、平面視においてアンテナ11bの経路上に配置される。ICチップ11cの両端子は、アンテナ11bに接続される。ICチップ11cは、導通されたアンテナ11bを介して無線通信処理を行い、後段で説明する通信モジュール23との間で所定の信号の授受を行う。なお、本明細書において、「IC」とは、集積回路(Integrated Circuit)を意味する。
【0019】
シート部材12は、ICインレット11を保護する。シート部材12は、単一の部材から構成される単層構造であっても、多数の部材から構成される多層構造であってもよい。
【0020】
<通信媒体の検査装置>
図3は、通信媒体1の検査装置20の斜視図である。
図4、および
図5は、検査装置20の正面図である。
【0021】
図3に示すように、検査装置20は、ベース部29と、支持台21と、複数の通信モジュール23と、制御部24と、昇降部25と、を備える。検査装置20は、多面付けされた多面付シート10の状態で非接触式の通信媒体1の検査を行う装置である。
【0022】
支持台21は、水平方向に沿って延びる板状である。支持台21は、上側を向く搭載面21aを有する。搭載面21aには、検査対象となる多面付シート10が搭載される。支持台21は、ベース部29の上側に配置される。支持台21は、ベース部29の上面29aに対して隙間を開けて配置される。
【0023】
支持台21には、昇降部25が取り付けられる。昇降部25は、ベース部29の上面29aに固定される。昇降部25は、支持台21を上下方向に昇降可能である。すなわち、昇降部25は、支持台21とベース部29の上面29aとの距離を変化させることができる。本実施形態の昇降部25は、モータ等の駆動部を備え電気駆動で支持台21を昇降させる。昇降部25は、制御部24に接続されており、制御部24によって制御される。なお、昇降部25は、手動によって支持台21を昇降させる装置であってもよい。
【0024】
支持台21には、複数の貫通孔21hが設けられる。それぞれの貫通孔21hは、支持台21を貫通して搭載面21aに開口する。複数の貫通孔21hは、平面視において矩形状である。本実施形態において、支持台21には、縦横それぞれ4列、合計16個の貫通孔21hが設けられる。複数の貫通孔21hの配列は、1枚の多面付シート10に設けられる複数の通信媒体1の配列と一致する。したがって、搭載面21aに多面付シート10を搭載し位置合わせした状態で、多面付シート10の各通信媒体1は貫通孔21hの開口に重なる。
【0025】
支持台21の搭載面21aには、角当て部21bが配置される。角当て部21bは、搭載面21aの法線方向から見てL字状に組み合わされた一対の角柱である。角当て部21bは、搭載面21a上に固定されている。角当て部21bは、搭載面21aに搭載される多面付シート10の位置合わせを行う。すなわち、多面付シート10の四隅何れかの角を角当て部21bのコーナ部に付き当てることで、多面付シート10を搭載面21a上で位置合わせすることができる。
【0026】
通信モジュール23は、水平面に沿って延びる回路基板と、回路基板に実装される通信部と、を有する。通信部には、アンテナが設けられており、上下方向に対向するICインレット11と通信する。複数の通信モジュール23は、信号線を介して制御部24にそれぞれ接続される。複数の通信モジュール23は、制御部24によって制御され、対向するICインレット11の情報を読み込んだり、書き込んだりすることができる。すなわち、通信モジュール23は、リーダーおよびライターの機能を有する。
【0027】
複数の通信モジュール23は、ベース部29の上面29aに搭載される。本実施形態において、検査装置20には、16個の通信モジュール23が設けられる。16個の通信モジュール23は、ベース部29の上面29aに縦横それぞれ4列で配列される。全ての通信モジュール23は、互いに高さが一致している。全ての通信モジュール23と搭載面21aとの距離は、互いに一致している。したがって、全ての通信モジュール23と搭載面21a上の多面付シート10との間の距離は、互いに一致している。本実施形態において昇降部25が支持台21を上下に昇降させることで通信モジュール23と搭載面21aとの距離を変化させることができる。
【0028】
複数の通信モジュール23は、それぞれ1つずつ貫通孔21hの内部に配置される。すなわち、1つの貫通孔21hには、1つの通信モジュール23が配置される。このため、通信モジュール23同士の間には、支持台21によって構成される壁部21cが配置される。複数の通信モジュール23は、それぞれ壁部21cによって互いに区画される。
【0029】
実施形態の支持台21は、互いになる貫通孔21hの内部に配置される通信モジュール23同士の間の電波をシールドする。これにより、複数の通信モジュール23の通信電波が互いに干渉することを抑制できる。
【0030】
支持台21を構成する材料としては、例えば、アルミニウム合金などのシールド性能の高い金属材料を用いてもよい。支持台21を樹脂材料から構成する場合、樹脂材料に炭素繊維、金属繊維、炭素の顆粒体、又は金属材料の顆粒体を含有させることで支持台21に電波吸収機能を与え、支持台21のシールド性能を高める事ができる。また、支持台21を樹脂材料から構成する場合、貫通孔21hの内側面に、アルミニウム蒸着層などからなる電波反射層を設けることで支持台21のシールド性を高めてもよい。
【0031】
制御部24は、昇降部25および複数の通信モジュール23を制御する。制御部24と複数の通信モジュール23との接続は一般的にはUSB、LAN、RS232Cなどを用いるが、これに限定されるものではない。通信モジュール23は、Wi-Fi(商標登録)、又はBluetooth(商標登録)などの無線接続によって制御部24と接続されていてもよい。
【0032】
(検査装置のまとめ)
本実施形態の検査装置20は、多面付けされた多面付シート10の状態で非接触式の通信媒体1の検査を行う。本実施形態の検査装置20は、多面付シート10を搭載する搭載面21aを有する支持台21と、搭載面21aに沿って配列される複数の通信モジュール23と、複数の通信モジュール23を制御する制御部24と、を備える。複数の通信モジュール23は、搭載面21aに搭載される多面付シート10の異なる通信媒体1とそれぞれ対向し、通信媒体1と通信して情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行う。
【0033】
本実施形態の検査装置20によれば、多面付シート10を搭載面21aに搭載し位置合わせすることで、複数の通信媒体1をそれぞれ通信モジュール23に同時に対向させることができる。このため、検査装置20に移動機構を設けることなく、通信モジュールと20と通信媒体1との間で通信を行わせることができ通信媒体1の検査工程に要する時間を短縮できる。
【0034】
特に、本実施形態では、1つの多面付シート10に設けられる通信媒体1の数と検査装置20に設けられる通信モジュール23の数とが、互いに一致している。また、多面付シート10を搭載面21aに搭載した状態で、全ての通信媒体1が通信モジュール23の直上に配置されそれぞれ通信モジュール23と対向する。したがって、1枚の多面付シート10の全ての通信媒体1を同時に、又はわずかな時差で通信させるなどして、多面付シート10の複数の通信媒体1への検査を高速に行うことができる。
【0035】
本実施形態において、支持台21には、搭載面21aに開口する複数の貫通孔21hが設けられる。また、複数の通信モジュール23は、それぞれ1つずつ貫通孔21hの内部に配置される。
【0036】
本実施形態によれば、それぞれの通信モジュール23が支持台21の貫通孔21hの内部に配置される。このため、通信モジュール23と通信媒体1との間で送受信される電波を、支持台21の壁部21cによってシールドすることができる。これにより、複数の通信モジュール23の発信する電波同士の干渉や、複数の通信モジュール23の受信する電波同士の干渉を抑制することができる。従来、このような電波同士の干渉を抑制するためには、1枚の多面付シートにおいて通信媒体同士を互いに離間して配置する必要があり、多面付シートが大型化し生産性の悪化とコストアップを招いていた。本実施形態によれば、貫通孔21h内に通信モジュール23を配置することで、検査時間を短縮できるのみならず、多面付シート10に通信媒体1を密に配置することができ、多面付シート10を小型化することができ通信媒体1の製造コストを低減できる。
【0037】
図4および
図5に示すように、本実施形態の検査装置20は、支持台21を搭載面21aと直交する方向に沿って移動させて複数の通信モジュール23と搭載面21aとの距離を変化させる昇降部25を有する。
【0038】
上述したように、通信モジュール23は、通信媒体1と通信して情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行う。通信モジュール23が通信媒体1への書き込みを行う場合、すなわち、通信モジュール23をライターとして使用する場合、通信モジュール23を通信媒体1のできるだけ近くに配置することで、通信媒体1への書き込みの確実性を高めることができる。一方で、通信モジュール23が通信媒体1からの情報の読み込みの可否を確認する場合、すなわち、通信モジュール23を検査リーダーとして使用する場合、通信モジュール23と通信媒体1とを所定の距離以上に離間させる必要がある。
【0039】
本実施形態の昇降部25によれば、支持台21を昇降させることで複数の通信モジュール23と、これら通信モジュール23にそれぞれに対向する複数の通信媒体1との距離を変化させることができる。このため、通信モジュール23をライターとして使用する場合、および検査リーダーとして使用する場合に、それぞれ通信モジュール23と通信媒体1との距離を最適とすることができる。本実施形態によれば、検査装置20をライターとしても検査リーダーとしても使用することができ、検査装置20の汎用性を高めることができ製造設備の簡素化を図ることができる。
【0040】
<制御方法について>
図6~
図10は、本実施形態の制御部24が行う各通信モジュール23の制御方法の第1例~第5例を示す模式図である。
図6~
図10に示す各例において、各通信モジュール23中に表示される番号は、それぞれの通信モジュール23を動作させる順序を表す。
【0041】
図6に示す第1例の制御方法では、制御部24は、全ての通信モジュール23に対し同時にそれぞれが対向する通信媒体1と通信させる。第1例の制御方法によれば、検査装置20は、1枚の多面付シート10の全ての通信媒体1に対し同時に書き込み、又は読み込みを行うことができる。
【0042】
図7~
図9に示す第2例~第4例の制御方法では、複数の通信モジュール23は、第1通信モジュール23Aと第2通信モジュール23Bとに分類される。第2例~第4例の制御方法において、制御部24は、まず、全ての第1通信モジュール23Aに対し同時にそれぞれが対向する通信媒体1と通信させる。次に、制御部24は、第2通信モジュール23Bによる通信を開始する。すなわち、全ての第2通信モジュール23Bに対し同時にそれぞれが対向する通信媒体1と通信させる。なお、第1通信モジュール23Aと第2通信モジュール23Bとは、制御部24によって駆動されるタイミングが異なるのみであり、構造的な差異はない。
【0043】
第2例~第4例の制御方法では、第1通信モジュール23Aと第2通信モジュール23Bの配列が互いに異なる。以下、第2例~第4例における第1通信モジュール23Aと第2通信モジュール23Bとの配列について説明する。なお、本実施形態において、通信媒体1は矩形状であり、通信媒体1の長手方向を「横」とし、通信媒体1の短手方向を「縦」として各部の方向を説明する。すなわち、以下の説明で「縦の列」とは通信媒体1の短手方向に並ぶ列を意味し、「横の列」とは通信媒体1の長手方向に並ぶ列を意味する。
【0044】
図7に示す第2例の制御方法では、縦の列の第1列と第3列とに第1通信モジュール23Aとが配置され、縦の列の第2列と第4列とに第2通信モジュール23Bとが配置される。第2例の制御方法によれば、横方向に隣り合う通信モジュール23同士の電波の干渉を効果的に抑制できる。
【0045】
図8に示す第3例の制御方法では、横の列の第1列と第3列とに第1通信モジュール23Aとが配置され、横の列の第2列と第4列とに第2通信モジュール23Bとが配置される。第3例の制御方法によれば、縦方向に隣り合う通信モジュール23同士の電波の干渉を効果的に抑制できる。
【0046】
図9に示す第4例の制御方法では、縦横の何れの方向においても第1通信モジュール23Aと第2通信モジュール23Bとが交互に配置される。すなわち、第1通信モジュール23Aと第2通信モジュール23Bとは、千鳥状に配置される。第3例の制御方法によれば、縦方向および横方向に隣り合う通信モジュール23同士の電波の干渉を効果的に抑制できる。
【0047】
本実施形態の第1例~第4例の制御方法によれば、制御部24は、複数の通信モジュール23に対し同時にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させることができる。結果的に、多面付シート10に対し通信を行う回数を削減することができ通信工程を高速化できる。さらに、本実施形態の第2例~第4例の制御方法によれば、複数の通信モジュール23を互いに駆動するタイミンを異ならせる2つの通信モジュール23に分類することで、タイミングを異ならせる通信モジュール23間での電波の干渉を抑制できる。これにより、検査装置20による通信工程の信頼性を高める事ができる。
【0048】
図10に示す第5例の制御方法では、制御部24は、複数の通信モジュール23に対し順番にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる。第5例の制御方法では、横方向の一方側に向かって順番に通信モジュール23を通信媒体1と通信させる。さらに、横方向の一方側の端部に達した後に次列の横方向他方側の端部から、さらに順に横方向の一方側に向かって通信モジュール23を通信媒体1と通信させる。
【0049】
第5例の制御方法によれば、1枚の多面付シート10の通信媒体1に対し同時に通信することがなく、1枚の多面付シート10において複数の通信媒体1を密に配列でき通信媒体1の製造コストを低減できる。さらに、制御部24が、通信不良の通信媒体1を発見した場合に、当該通信媒体1を飛ばしてそれぞれの通信媒体1にシリアル番号を書き込むことができる。
【0050】
<製造方法>
図11は、通信媒体1の製造方法を説明するフローチャートである。
本実施形態の通信媒体1の製造方法は、シート製造工程S10と、配置工程S20と、予備工程S30と、第1通信工程(通信工程、読み込み工程)S40と、距離調節工程S50と、第2通信工程(通信工程、書き込み工程)S60と、記録工程S70と、裁断工程S80と、を有する。
【0051】
本実施形態の通信媒体1の製造方法において、シート製造工程S10、配置工程S20、予備工程S30、第1通信工程S40、距離調節工程S50、第2通信工程S60、記録工程S70、および裁断工程S80は、この順で行われる。しかしながら、各工程は、それぞれの目的を果たすことができれば、順番を変更して行ってもよい。例えば、予備工程S30は、第1通信工程S40の前であればよく、配置工程S20の前に実施してもよい。
【0052】
(シート製造工程)
シート製造工程S10は、ICチップ11cおよびアンテナ11bを有するシート状の通信媒体1を多面付けした
図1、および
図2に示す多面付シート10を製造する工程である。
【0053】
多面付シート製造工程では、まず、ICチップ11cおよびアンテナ11bをフィルム基材11aに実装してICインレット11を製造する。次いで、ICインレット11を一対のシート部材12に挟み込むように積層し、熱プレス装置によってラミネート加工を行う。上述したように、通信媒体1は、多面付シート10として多面付けされて製造される。このため、一対のシート部材12の間には、複数のICインレット11が並べられる。複数のICインレット11を一対のシート部材12によって挟んでラミネート加工を行うことで、多面付シート10が製造される。
【0054】
(配置工程)
配置工程S20は、
図3に示すように、多面付シート製造工程で製造された多面付シート10を検査装置20に設置する工程である。配置工程S20において、作業者(又は作業ロボット、以下同じ)は、支持台21の搭載面21a上に多面付シート10を搭載する。さらに、搭載面21a上の角当て部21bに多面付シート10の角部を当てる。これにより、多面付シート10を搭載面21a上で位置合わせをして、多面付シート10の各通信媒体1を上側からみて通信モジュール23と重ねて配置することができる。すなわち、配置工程S20では、複数の通信モジュール23を、多面付シート10の異なる通信媒体1に対向して配置させる。
【0055】
(予備工程)
予備工程S30は、第1通信工程S40の前に行われる。第1通信工程S40は、通信モジュール23と通信媒体1とを所定の距離以上離間した状態での通信の検査を行う工程である。予備工程S30は、第1通信工程S40に先立って、通信モジュール23と通信媒体1との距離を適切に調整する。
【0056】
予備工程S30は、制御部24によって支持台21の位置を確認する第1手順S31と、制御部24によって昇降部25を駆動させる第2手順S32と、を有する。すなわち、予備工程S30では、検査装置20の昇降部25を動作させて複数の通信モジュール23と多面付シート10との相対的な距離を調整する。
【0057】
第1手順S31において、制御部24は、昇降部25に設けられるエンコーダの位置を読み取る。これにより、制御部24は、支持台21の位置を把握する。
【0058】
第2手順S32において、制御部24は、第1手順S31で確認した支持台21の位置と目標位置との差分だけ昇降部25を駆動させて、支持台21を目標位置に位置合わせする。なお、昇降部25を動作させるまでもなく、通信モジュール23と通信媒体1との距離が適切な距離であることが第1手順S31において確認された場合、予備工程S30の第2手順S32は省略される。
【0059】
(第1通信工程(読み込み工程))
本実施形態の通信媒体1の制御方法は、通信工程として、第1通信工程S40と第2通信工程S60とを有する。これらの通信工程S40、S60は、通信モジュール23に多面付シート10の異なる通信媒体1とそれぞれ通信させ情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行わせる工程である。
【0060】
第1通信工程S40および第2通信工程S60は、
図6~
図10に示す制御方法の第1例~第5例の何れかの制御方法によって複数の通信モジュール23を制御して行われる。なお、第1通信工程S40の制御方法と、第2通信工程S60の制御方法とは、互いに異なっていてもよい。
【0061】
第1通信工程S40は、通信モジュール23に通信媒体1の情報の読み込みをさせて通信媒体1に対し通信の可否の検査を行う工程である。より具体的には、第1通信工程S40は、制御部24によって、複数の通信モジュール23を制御し通信媒体1の情報を読み込ませることで、通信媒体1が通信可能か否かを検査する工程である。第1通信工程S40では、例えば、ISO18745-2で定める通信試験を行う。なお、通信モジュール23が、可変型の増幅器または減衰器を有する場合、通信モジュール23の磁界強度を制御部24によって段階的に変化させるスイープ検査を実施してもよい。
【0062】
第1通信工程S40において通信不良が発見された場合、制御部24は、何れの通信モジュール23が通信不良を発見したかを記憶する。これにより、多面付シート10内の何れの通信媒体1に通信不良が生じたかが記憶されることとなる。
【0063】
第1通信工程S40は、
図6~
図9に示す通信モジュール23の制御方法の第1例~第4例に示すように、複数の通信モジュール23に対し同時にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる工程としてもよい。特に、第1通信工程S40は、
図7~
図9に示す通信モジュール23の制御方法の第2例~第4例に示すように、複数の通信モジュール23を第1通信モジュール23Aのグループと第2通信モジュール23Bのグループとの2つグループに分けて、グループ毎に同時に行う工程としてもよい。さらに、第1通信工程S40は、
図10に示す通信モジュール23の制御方法の第5例に示すように、複数の通信モジュール23に対し順番にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる工程としてもよい。
【0064】
(距離調節工程)
距離調節工程S50は、第2通信工程S60の前に行われる。距離調節工程S50の後に行われる第2通信工程S60は、通信モジュール23によって通信媒体1に書き込みを行う書き込み工程である。このため、第2通信工程S60は、通信モジュール23と通信媒体1とを近づけて行うことで書き込みの精度を高めることができる。距離調節工程S50は、第2通信工程S60の書き込み精度を高めるために通信モジュール23と通信媒体1との距離を近づける工程である。
【0065】
距離調節工程S50は、第1通信工程S40の予備工程S30と同様の構成を有する。すなわち、距離調節工程S50は、制御部24によって支持台21の位置を確認する第1手順S51と、制御部24によって昇降部25を駆動させる第2手順S52と、を有する。第1手順S51において、制御部24は、昇降部25に設けられるエンコーダの位置を読み取る。第2手順S52において、制御部24は、第1手順S51で確認した支持台21の位置と目標位置との差分だけ昇降部25を駆動させて、支持台21を目標位置に位置合わせする。このように、距離調節工程S50では、検査装置20の昇降部25を動作させて複数の通信モジュール23と多面付シート10との相対的な距離を変化させる。
【0066】
本実施形態の通信媒体1の製造方法では、読み込み工程(第1通信工程S40)の後に書き込み工程(第2通信工程S60)が行われる。第1通信工程S40は、
図5に示すように、通信モジュール23と通信媒体1とを、第1距離d1に離間させて行われる。一方で、第2通信工程S60は、
図4に示すように、通信モジュール23と通信媒体1とを、第1距離d1よりも短い第2距離d2に近づけて行われる。このため、本実施形態の距離調節工程S50は、通信モジュール23と通信媒体1との距離を、第1距離d1から第2距離d2となるように、支持台21を下降させる工程である。しかしながら、書き込み工程の後に読み込み工程が行われる場合、これらの工程の間で行われる距離調節工程は、支持台21を上昇させる工程となる。
【0067】
(第2通信工程(書き込み工程))
第2通信工程S60は、通信モジュール23に通信媒体1への情報の書き込みをさせる工程である。本実施形態において、通信媒体1に書き込まれる情報は、各通信媒体1に割り当てるシリアル番号である。
【0068】
第2通信工程S60は、第1手順S61と第2手順S62と第3手順S63とを有する。第1手順S61は、制御部24の内部で、多面付シート10の複数の通信モジュール23にそれぞれシリアル番号を割り当てる手順である。第2手順S62は、第1手順S61で割り当てたシリアル番号を対応する通信媒体1に実際に書き込む手順である。また、第3手順S63は、シリアル番号の読み込み検査を行う手順である。
【0069】
第1手順S61は、制御部24の内部で行わるソフトウェア内での工程であり、実際の駆動を伴わない。第1手順S61で制御部24は、第1通信工程S40の結果を基に通信可能な通信媒体1に対してシリアル番号の割り当てを行い、実際にシリアル番号の書き込みを行う準備をする。第1手順S61において、1枚の多面付シート10の各通信媒体1には、それぞれ連番で連なるシリアル番号が付与される。なお、第1通信工程S40において、通信不良の通信媒体1が発見された場合、当該通信媒体1には、シリアル番号が付与されない。本実施形態において、通信不良とされた通信媒体1へ割り当て予定であったシリアル番号は、隣の通信媒体1に繰り上げられて割り当てられる。なお、通信不良とされた通信媒体1に割り当て予定であったシリアル番号は、欠番とされる場合もある。
【0070】
第2手順S60において、通信モジュール23は、対向する通信媒体1に電波を送り通信媒体1に対して第1手順S61で割り当てられたシリアル番号を書き込む。
【0071】
第3手順S60において、通信モジュール23は、シリアル番号が正常に書き込まれたか否かを確認する目的で、第2手順S62で書き込んだシリアル番号の読み込みを行う。
【0072】
第2手順S62、および第3手順S63では、第1通信工程S40で通信不良が生じており、第1手順S61でシリアル番号が割り当てられていない通信媒体1に対しては、何らの通信も行わない。これにより、第2通信工程S60に要する不要な時間、および電力を省略することができる。また、シリアル番号を連番で付与する必要がある場合に、シリアル番号を飛ばして付番することができる。
【0073】
第2通信工程S60の第3手順S63において、シリアル番号の読み込みができなかった通信媒体1があった場合、再び第2手順S62、および第3手順S63をこの順で行う。二度目の第3手順S63においてもシリアル番号の読み込みができなかった場合、対象となる通信媒体1への書き込みを停止し、次の工程に進む。
【0074】
第2通信工程S60は、
図6~
図9に示す通信モジュール23の制御方法の第1例~第4例に示すように、複数の通信モジュール23に対し同時にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる工程とすることができる。特に、第2通信工程S60は、
図7~
図9に示す通信モジュール23の制御方法の第2例~第4例に示すように、複数の通信モジュール23を第1通信モジュール23Aのグループと第2通信モジュール23Bのグループとの2つグループに分けて、グループ毎に同時に行う工程としてもよい。
【0075】
通信媒体1の製造方法では、シリアル番号の欠番が許されず、全ての良好な通信媒体1に対しシリアル番号を連番で付すことが好ましい。このように、シリアル番号を付すことで、シリアル番号の管理が容易となる。
【0076】
図6~
図9に示すように複数の通信媒体1に同時に第2通信工程S60を行うとき、シリアル番号に欠番が許されない場合の処理方法について説明する。この場合において、第2手順S62で1つの通信媒体1に読み込み不良が発見されても、既に他の通信媒体1に対するシリアル番号の書き込みが完了しているため、通常の処理を行うと欠番が発生する。このため、通信不良が生じた通信媒体1に割り当てられるシリアル番号を仮欠番として制御部24に記憶させる。仮欠番となったシリアル番号については、次の多面付シート10への書き込み工程において、他の通信媒体1に割り当てて書き込みを行い、製造される複数の通信媒体1全体において欠番が生じることを防ぐ。
【0077】
第2通信工程S60は、
図10に示す通信モジュール23の制御方法の第5例に示すように、複数の通信モジュール23に対し順番にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる工程としてもよい。この場合、一つの通信媒体1に対し、第1手順S61と第2手順S62と第3手順S63とを連続して行いこれらが完了した後に、次の通信媒体1に対して、第1手順S61と第2手順S62と第3手順S63とを順に行う。これにより、第3手順S63で通信不良が発見された場合に、次の通信媒体1に対し、連番となるようにシリアル番号を割り当てることができる。このように、
図10に示す第5例の制御方法を採用することで、複数の通信媒体1に対して欠番なくシリアル番号を付与することができる。
【0078】
なお、制御部24は、1枚の多面付シート10への第2通信工程S60の完了後に、最後に書き込んだシリアル番号を記憶する。制御部24は、次の多面付シート10への第2通信処理工程S60が開始された際に、前の多面付シート10の最後に付されたシリアル番号に連続するシリアル番号を割り当てる。これにより、複数の多面付シート10に跨って通信媒体1に連続するシリアル番号を付与できる。
【0079】
(記憶工程)
記憶工程は、第1通信工程S40、および第2通信工程S60において通信不良が生じた通信媒体1の位置をログとして記録する工程である。通信不良が生じた通信媒体1のログは、第1通信工程S40、および第2通信工程S60の後に行われる工程で使用される。なお、本実施形態において、通信不良が生じた通信媒体1には、シリアル番号が付されていない。
【0080】
(裁断工程)
裁断工程S80は、多面付シート10から通信媒体1を切り分ける工程である。裁断工程S80を経ることで、通信媒体1が完成する。また、裁断工程S80では、記憶工程で記憶されたログでの書き出しを基に、通信不良が生じた通信媒体1を除外する。
【0081】
(製造方法のまとめ)
本実施形態の通信媒体1の製造方法は、ICチップ11cおよびアンテナ11bを有するシート状の通信媒体1を多面付けした多面付シート10を製造するシート製造工程S10と、複数の通信モジュール23を多面付シート10の異なる通信媒体1に対向して配置させる配置工程S20と、通信モジュール23に多面付シート10の異なる通信媒体1とそれぞれ通信させ情報の書き込み、又は情報の読み込みの少なくとも一方を行わせる通信工程S40、S60と、を有する。
【0082】
本実施形態の通信媒体1の製造方法によれば、配置工程S20において複数の通信モジュール23を多面付シート10の各通信媒体1に同時に対向させることができる。これにより、通信工程S40、S60において、同時か、又はわずかな時間差で複数の通信媒体1と通信することが可能となり、通信媒体1の製造に要する時間を短縮することができる。
【0083】
図6~
図9に示すように、本実施形態の通信媒体1の製造方法において、通信工程S40、S60は、複数の通信モジュール23に対し同時にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる工程であってもよい。この構成によれば、複数の通信媒体1に対する通信を同時に行うことで各通信工程S40、S60に要する処理時間を短くすることができる。
【0084】
さらに、
図7~
図9に示すように、本実施形態の通信媒体1の製造方法において、複数の通信モジュール23は、複数のグループに分けられており、通信工程S40、S60は、グループ毎に同時に行われていてもよい。この構成によれば、例えば、隣り合う通信媒体1同士などの電波の干渉が発生しやすい通信媒体1同士を異なるグループとして通信のタイミングをずらすことで、通信工程S40、S60における電波の干渉を抑制することができる。
【0085】
また、
図10に示すように、本実施形態の通信媒体1の製造方法において、通信工程S40、S60は、複数の通信モジュール23に対し順番にそれぞれと対向する通信媒体1と通信させる工程であってもよい。この構成によれば、複数の通信モジュール23の通信のタイミングをずらすことができ、通信工程S40、S60における電波の干渉を抑制することができる。
【0086】
本実施形態の通信媒体1の製造方法において、通信媒体1に書き込まれる情報は、それぞれの通信媒体1に割り当てられるシリアル番号を含む。また、通信媒体1の製造方法は、通信工程として、通信媒体1に対し通信の可否の検査を行う第1通信工程S40と、通信工程として、第1通信工程S40の結果を基に通信可能な通信媒体1に対してシリアル番号の割り当てを行い(第1手順S61)、通信媒体1に書き込む(第2手順S62)とともに、シリアル番号の読み込み検査(第3手順S63)を行う第2通信工程と、を有する。
【0087】
本実施形態の製造方法によれば、それぞれの通信媒体1への書き込みを行う第2通信工程S60に先立って、通信媒体1に対する通信の可否の検査を行う第1通信工程S40が行われる。このため、第1通信工程S40において通信不良が判明した通信媒体1に対し、第2通信工程S60の第1手順S61でシリアル番号を割り当てることなく、次の通信媒体1にそのシリアル番号を割り当てることができる。結果的に、第2通信工程S60において、1つの多面付シート10の複数の通信媒体1に対し、シリアル番号を欠番なく連番で付与することができる。特に、本実施形態の製造方法によれば、
図10に示すように通信媒体1への通信を順番に行う場合、第2通信工程S60の第3手順S63において通信不良が発覚した場合であっても、シリアル番号をずらすことで、1つの多面付シート10における通信媒体1の連番を維持できる。
【0088】
本実施形態の通信媒体1の製造方法は、通信工程として、通信モジュール23に通信媒体1の情報の読み込みをさせる読み込み工程(第1通信工程S40)と、通信工程として、通信モジュール23に通信媒体1への情報の書き込みをさせる書き込み工程(第2通信工程S60)と、複数の通信モジュール23と多面付シート10との相対的な距離を変化させる距離調節工程S50と、を有し、読み込み工程(第1通信工程S40)と書き込み工程(第2通信工程S60)との間で距離調節工程S50を実施する。
【0089】
本実施形態によれば、読み込みを行う第1通信工程S40、および書き込みを行う第2通信工程S60において、通信モジュール23と通信媒体1との相対的な距離をそれぞれの処理を行うのに最適な距離とすることができる。これにより、第1通信工程S40および第2通信工程S60を確実、かつ高速に行うことができる。また、書き込み工程を確実に行うために、通信モジュール23の出力を高める場合などと比較して、出力自体が変わらないために通信モジュール23同士での電波の干渉が生じにくく、第2通信工程S60の信頼性を高めることができる。なお、上述の実施形態では、読み込み工程、距離調節工程、書き込み工程の順で処理をする場合について説明したが、読み込み工程と書き込み工程との間に距離調節工程を行うものであれば、書き込み工程、距離調節工程、読み込み工程の順であってもよい。
【0090】
本実施形態の通信媒体1の製造方法によれば、通信工程S40、S60において通信不良が生じた通信媒体1の位置をログとして記録する記録工程を有し、ログは、通信工程S40、S60の後に行われる工程で使用される。この構成によれば、通信工程S40、S60で得た結果を後工程で有効利用できる。より具体的には、後工程において通信不良を生じた通信媒体1を除去するなどして、再検査の回数を減少させることができる。
【0091】
本実施形態の通信媒体1の製造方法によれば、多面付シート10から通信媒体1を切り分ける裁断工程を有する。本実施形態によれば、多面付シート10の状態で通信媒体1の検査を行い、その後に通信媒体1を切り分けるため、製造ラインにおける仕掛品のハンドリングが容易となる。
【0092】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の製造方法は、非接触型の通信媒体の製造の製造に広く利用できる。本発明の製造方法が対象とする通信媒体は、磁気テープを備えていない、あるいはCP、UGなどの券面印字が入らないIDカード、及び非接触型ICカードなどである。
【符号の説明】
【0094】
1…通信媒体
10…多面付シート
11b…アンテナ
11c…ICチップ
20…検査装置
21…支持台
21a…搭載面
21h…貫通孔
23…通信モジュール
24…制御部
25…昇降部
S10…シート製造工程
S20…配置工程
S40…第1通信工程(通信工程、読み込み工程)
S50…距離調節工程
S60…第2通信工程(通信工程、書き込み工程)
S70…記録工程
S80…裁断工程