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特開2024-35899検量線モデル作成装置、及び検量線モデル作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035899
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】検量線モデル作成装置、及び検量線モデル作成方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240308BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240308BHJP
   G01N 15/01 20240101ALI20240308BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12Q1/06
G01N15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140513
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 大輔
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA11
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QR74
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
【課題】生細胞密度等を推定する検量線モデルの作成を容易にする。
【解決手段】検量線モデル作成装置は、センサ11が計測したインピーダンスから培養液中の生細胞密度を推定する検量線モデル152を作成する制御部14と、検量線モデル152を作成するためのパラメータを含むパラメータセットを生成するための生成条件を受け付ける操作部12と、を備える。制御部14は、生成条件に従ってパラメータセットを生成し、生成したパラメータセット毎に、モデル作成用のデータセットを用いて複数の検量線モデル152を作成し、複数の検量線モデル152の中から選択した1つを記憶する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液のインピーダンスを計測するセンサが計測したインピーダンスから前記培養液中の生細胞密度を推定する検量線モデルを作成する制御部と、
前記検量線モデルを作成するための1又は複数のパラメータを含む1又は複数のパラメータセットを生成するための生成条件を受け付ける受付部と、を備え、
前記制御部は、
前記受付部が受け付けた前記生成条件に従って1又は複数のパラメータセットを生成し、
生成した前記1又は複数のパラメータセット毎に、前記パラメータセットに含まれる1又は複数のパラメータと、モデル作成用の培養液の培養開始からの経過時間、前記モデル作成用の培養液のインピーダンス又は前記インピーダンスから算出されるキャパシタンス、及び培養液中の生細胞密度を計測するセルカウンターが計測した前記モデル作成用の培養液中の生細胞密度を含むモデル作成用のデータセットと、を用いて複数の前記検量線モデルを作成し、
複数の前記検量線モデルの中から選択した1つを記憶する
ことを特徴とする検量線モデル作成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
作成した前記複数の検量線モデルのそれぞれに、バリデーション用の培養液の培養開始からの経過時間、前記バリデーション用の培養液のインピーダンス又は前記インピーダンスから算出されるキャパシタンス、及び前記セルカウンターが計測した前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を含むバリデーション用データセットの前記経過時間及び前記インピーダンス又は前記キャパシタンスを読み込ませて、前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させ、
前記検量線モデルが推定した前記生細胞密度と、前記バリデーション用データセットの前記生細胞密度との誤差から前記検量線モデルを検証する
ことを特徴とする請求項1に記載の検量線モデル作成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
作成した前記複数の検量線モデルのそれぞれに、複数の前記バリデーション用データセットの前記経過時間及び前記インピーダンス又は前記キャパシタンスを読み込ませて、複数の前記バリデーション用データセット毎に前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させ、
前記検量線モデルが推定した複数の前記バリデーション用データセット毎の前記生細胞密度と、複数の前記バリデーション用データセットの前記生細胞密度との平均誤差から前記検量線モデルを検証する
ことを特徴とする請求項2に記載の検量線モデル作成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数の検量線モデルを示す情報と前記平均誤差とを対応付けて表示部に表示し、前記平均誤差が最も小さい前記検量線モデルを示す情報を強調して表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の検量線モデル作成装置。
【請求項5】
前記生成条件は、細胞培養の前半である第1局面と細胞培養の後半である第2局面との境界を示すパラメータの範囲と、前記範囲の中から選択する境界の数と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の検量線モデル作成装置。
【請求項6】
前記生成条件は、前記第2局面の生細胞密度を推定するための次数の範囲を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の検量線モデル作成装置。
【請求項7】
培養液のインピーダンスを計測するセンサが計測したインピーダンスから前記培養液中の生細胞密度を推定する検量線モデルを作成するための1又は複数のパラメータを含む1又は複数のパラメータセットを生成するための生成条件を受け付けること、
受け付けた前記生成条件に従って1又は複数のパラメータセットを生成すること、
生成した前記1又は複数のパラメータセット毎に、前記パラメータセットに含まれる1又は複数のパラメータと、モデル作成用の培養液の培養開始からの経過時間、前記モデル作成用の培養液のインピーダンス又は前記インピーダンスから算出されるキャパシタンス、及び培養液中の生細胞密度を計測するセルカウンターが計測した前記モデル作成用の培養液中の生細胞密度を含むモデル作成用のデータセットと、を用いて複数の前記検量線モデルを作成すること、及び
複数の前記検量線モデルの中から選択した1つを記憶すること、を有する
ことを特徴とする検量線モデル作成方法。
【請求項8】
作成した前記複数の検量線モデルのそれぞれに、バリデーション用の培養液の培養開始からの経過時間、前記バリデーション用の培養液のインピーダンス又は前記インピーダンスから算出されるキャパシタンス、及び前記セルカウンターが計測した前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を含むバリデーション用データセットの前記経過時間及び前記インピーダンス又は前記キャパシタンスを読み込ませて、前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させること、及び
前記検量線モデルが推定した前記生細胞密度と、前記バリデーション用データセットの前記生細胞密度との誤差から前記検量線モデルを検証すること、をさらに有する
ことを特徴とする請求項7に記載の検量線モデル作成方法。
【請求項9】
前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させることは、
作成した前記複数の検量線モデルのそれぞれに、複数の前記バリデーション用データセットの前記経過時間及び前記インピーダンス又は前記キャパシタンスを読み込ませて、複数の前記バリデーション用データセット毎に前記バリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させることを含み、
前記検量線モデルを検証することは、
前記検量線モデルが推定した複数の前記バリデーション用データセット毎の前記生細胞密度と、複数の前記バリデーション用データセットの前記生細胞密度との平均誤差から前記検量線モデルを検証することを含む
ことを特徴とする請求項8に記載の検量線モデル作成方法。
【請求項10】
前記複数の検量線モデルを示す情報と前記平均誤差とを対応付けて表示部に表示し、前記平均誤差が最も小さい前記検量線モデルを示す情報を強調して表示すること、をさらに有する
ことを特徴とする請求項9に記載の検量線モデル作成方法。
【請求項11】
前記生成条件は、細胞培養の前半である第1局面と細胞培養の後半である第2局面との境界を示すパラメータの範囲と、前記範囲の中から選択する境界の数と、を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の検量線モデル作成方法。
【請求項12】
前記生成条件は、前記第2局面の生細胞密度を推定するための次数の範囲を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の検量線モデル作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生細胞密度(VCD:Viable cell density)を推定する検量線モデルを作成する検量線モデル作成装置、及び検量線モデル作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞培養装置(バイオリアクター)を使用した、例えば動物細胞、微生物、植物細胞等を含む細胞培養において、生細胞密度を予測する予測技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、培養液のインピーダンスを計測するインピーダンスセンサと、細胞の培養開始から死滅までの培養期間の内の所定期間が複数の期間に分類され、分類された複数の期間毎に、インピーダンスを用いて、所定期間において培養液中の生存している生細胞数を推定するための係数を記憶する記憶部と、インピーダンスを取得し、インピーダンスに対して記憶部が記憶する期間毎の係数の少なくとも1つを用いて、生細胞数を推定する生細胞数推定部と、を備える細胞検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-124594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の生細胞密度を推定する検量線モデルの作成方法を説明する。図10は、従来の検量線モデルの作成方法を示したフローチャートである。本明細書において、検量線モデルとは、バイオリアクター等が測定した培養液のインピーダンス又はインピーダンスから算出されるキャパシタンスから培養液中の生細胞密度を推定する係数のセットである。
【0006】
図10に示すように、ステップS1001において、コンピュータ等の制御装置は、検量線モデルを作成するためのデータセット(以下、検量線モデル作成用データセットとする)を読み込む。
【0007】
次に、ステップS1002において、ユーザは、検量線モデルを作成するためのパラメータを指定する。例えば、ユーザは、パラメータとして、細胞培養の第1局面(培養前半)と細胞培養の第2局面(培養後半)との境界、すなわち培養開始からの経過時間(秒)等を指定する。
【0008】
次に、ステップS1003において、制御装置は、読み込んだ検量線モデル作成用データセットとユーザが指定したパラメータとを使って、検量線モデルを作成する。
【0009】
次に、作成した検量線モデルを検証(バリデート)する。ステップS1004において、制御装置は、ユーザによって指定されたバリデーション用のデータセット(以下、バリデーション用データセットとする)を、作成した検量線モデルに読み込ませる。
【0010】
そして、ステップS1005において、制御装置は、バリデーション用データセットを使って検量線モデルが推定した生細胞密度と、バリデーション用データセットの既知の生細胞密度とを比較することによって、作成した検量線モデルを検証(バリデーション)する。
【0011】
最後に、ステップS1006において、ユーザは、バリデーション結果を確認し、問題がなければ本フローを終了し、問題があればステップS1002の処理からやり直す。
【0012】
上記したように、従来の検量線モデルを作成するフローでは、ユーザがパラメータの指定、バリデーション用のデータセットの指定、及びバリデーション結果の確認を行い、さらには、問題があれば再度パラメータの指定、バリデーション用のデータセットの指定、及びバリデーション結果の再確認を行う必要があった。そのため、最適な検量線モデルを作成するために、ユーザはパラメータの指定などの作業を繰り返し行う必要があり、ユーザの手間がかかるという課題があった。
【0013】
そこで、本発明は、生細胞密度等を推定する検量線モデルの作成を容易にすることが可能な検量線モデル作成装置及び検量線モデル作成方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の検量線モデル作成装置は、培養液のインピーダンスを計測するセンサが計測したインピーダンスから培養液中の生細胞密度を推定する検量線モデルを作成する制御部と、検量線モデルを作成するための1又は複数のパラメータを含む1又は複数のパラメータセットを生成するための生成条件を受け付ける受付部と、を備え、制御部は、受付部が受け付けた生成条件に従って1又は複数のパラメータセットを生成し、生成した1又は複数のパラメータセット毎に、パラメータセットに含まれる1又は複数のパラメータと、モデル作成用の培養液の培養開始からの経過時間、モデル作成用の培養液のインピーダンス又はインピーダンスから算出されるキャパシタンス、及び培養液中の生細胞密度を計測するセルカウンターが計測したモデル作成用の培養液中の生細胞密度を含むモデル作成用のデータセットと、を用いて複数の検量線モデルを作成し、複数の検量線モデルの中から選択した1つを記憶する。
【0015】
また、本発明の検量線モデル作成方法は、培養液のインピーダンスを計測するセンサが計測したインピーダンスから培養液中の生細胞密度を推定する検量線モデルを作成するための1又は複数のパラメータを含む1又は複数のパラメータセットを生成するための生成条件を受け付けること、受け付けた生成条件に従って1又は複数のパラメータセットを生成すること、生成した1又は複数のパラメータセット毎に、パラメータセットに含まれる1又は複数のパラメータと、モデル作成用の培養液の培養開始からの経過時間、モデル作成用の培養液のインピーダンス又はインピーダンスから算出されるキャパシタンス、及び培養液中の生細胞密度を計測するセルカウンターが計測したモデル作成用の培養液中の生細胞密度を含むモデル作成用のデータセットと、を用いて複数の検量線モデルを作成すること、及び複数の検量線モデルの中から選択した1つを記憶すること、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生細胞密度等を推定する検量線モデルの作成を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る検量線モデル作成システムの構成例を示す図である。
図2】実施の形態に係る制御部のハードウェアブロック図である。
図3】実施の形態に係るモデル作成用データセットの例を示す図である。
図4】実施の形態に係る検量線モデルの検証の指標となる平均誤差の算出方法を示した図である。
図5】実施の形態に係る検量線モデルの作成方法を示したフローチャートである。
図6】実施の形態に係るパラメータセットの一覧を示した図である。
図7】実施の形態に係る検量線モデルの検証方法を示したフローチャートである。
図8】実施の形態に係る検量線モデルの検証結果を示した図(表)である。
図9】実施の形態に係る検量線モデルの検証結果を示した図(グラフ)である。
図10】従来の検量線モデルの作成方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(検量線モデル作成装置100)
図1は、本実施形態に係る検量線モデル作成装置100の構成例を示す図である。図1の示すように、検量線モデル作成装置100は、バイオリアクター1、及びセルカウンター2を備える。
【0020】
(バイオリアクター1)
バイオリアクター1は、培養槽10、センサ11、操作部12、表示部13、制御部14、及び記憶装置15を備える。センサ11は、プローブ111、及びセンサ部112を有する。また、記憶装置15は、検量線モデル作成ツール151、検量線モデル152、モデル作成用データセット153、及び1又は複数のバリデーション用データセット154を記憶する。培養槽10、センサ11、操作部12、表示部13、及び記憶装置15は、制御部14と通信可能に接続されている。また、セルカウンター2も、制御部14と通信可能に接続されている。なお、本実施形態では、制御部14とセルカウンター2とは通信可能に接続されているが、セルカウンター2の計測結果をUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬メモリを使って制御部14に入力できるように構成してもよい。制御部14と、制御部14の周辺デバイス(培養槽10、センサ11、操作部12、表示部13、記憶装置15、又はセルカウンター2)との通信は、有線であっても無線であってもよい。
【0021】
(培養槽10)
培養槽10には、細胞を含む培養液(培地)が入れられている。なお、培養槽10には、センサ11、不図示の攪拌機、及びヒータ等が取り付けられている。攪拌機による攪拌、及びヒータによる加熱は、制御部14によって制御される。
【0022】
(センサ11)
センサ11は、電気インピーダンス測定法により、培養液のインピーダンスをリアルタイムに計測する。
【0023】
プローブ111は、測定プローブ、及びインピーダンスセンサを含む。なお、インピーダンスセンサとは、細胞を含む培養液のインピーダンスを計測するセンサである。インピーダンスセンサは、複数の異なる周波数(例えば、287kHz、473kHz、…、20000kHz)のそれぞれでインピーダンスを計測する。プローブ111は、培養液のインピーダンスを計測し、計測した計測値をセンサ部112に出力する。なお、プローブ111は、計測した計測値を増幅する増幅部を有していてもよい。
【0024】
センサ部112は、プローブ111が出力する計測値をキャパシタンス(誘電率)と、誘電コンダクタンス(導電率)との2つに周知の手法で分離し、分離したキャパシタンス及び誘電コンダクタンスを制御部14に出力する。なお、センサ部112は、プローブ111が計測した計測値を増幅する増幅部を有していてもよい。
【0025】
(操作部12)
操作部12は、例えば、表示部13上に設けられているタッチパネルセンサ、及び操作ボタン等である。操作部12は、ユーザの操作内容を受け付け、受け付けた操作内容を制御部14に出力する。操作内容には、細胞名、培養条件の設定値、培養開始指示、培養終了指示、後述する生成条件等が含まれる。操作部12(受付部)は、検量線モデル152を作成するための1又は複数のパラメータを含む1又は複数のパラメータセットを生成するための生成条件を受け付ける。
【0026】
(パラメータ、パラメータセット)
ここで、パラメータ及びパラメータセットについて説明する。パラメータとは、検量線モデル152を作成するために使用する値であって、例えば、パラメータは、細胞培養の第1局面(培養前半)と第2局面(培養後半)との境界(培養開始からの経過時間)を示すパラメータA、第2局面の生細胞密度を推定するための次数を示すパラメータBなどである。そして、パラメータセットとは、1又は複数のパラメータを含むパラメータの集合体である。なお、パラメータセットは、1つのパラメータだけであってもよいし、複数のパラメータの集合体であってもよい。
【0027】
(表示部13)
表示部13は、例えば、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置等である。表示部13は、制御部14が出力した表示画像を表示させる。表示画像は、培養条件の設定画面、後述する生成条件を指定する条件指定画面、作成された複数の検量線モデルの検証結果画面(図8の表、図9のグラフ)等の画像である。
【0028】
(制御部14)
制御部14は、制御部14と通信可能に接続される周辺デバイスの動作を制御するコンピュータシステムである。例えば、制御部14は、培養開始指示に応じて、培養条件の設定値に従って培養槽10の攪拌機、ヒータ等を制御して培養を開始する。なお、制御部14は、培養開始時に計時を開始し、培養開始時からの経過時間(秒)を計時する。
【0029】
制御部14は、記憶装置15に記憶される検量線モデル作成ツール151を実行し、モデル作成用データセット153を使って、複数の検量線モデル152を作成する。具体的には、制御部14は、操作部12が受け付けた生成条件に従って1又は複数のパラメータセットを生成する。そして、制御部14は、生成した1又は複数のパラメータセット毎に、パラメータセットに含まれる1又は複数のパラメータと、モデル作成用データセット153と、を用いて複数の検量線モデル152を作成する。
【0030】
また、制御部14は、複数の検量線モデル152を検証する。具体的には、制御部14は、作成した複数の検量線モデル152のそれぞれに、バリデーション用データセットの経過時間及びキャパシタンスを読み込ませて、バリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させる。そして、制御部14は、検量線モデル152が推定した生細胞密度と、バリデーション用データセットの生細胞密度との誤差から検量線モデル152を検証する。
【0031】
また、複数のバリデーション用データセットがある場合には、制御部14は、作成した複数の検量線モデル152のそれぞれに、複数のバリデーション用データセットの経過時間及びキャパシタンスを読み込ませて、複数のバリデーション用データセット毎にバリデーション用の培養液中の生細胞密度を推定させる。そして、制御部14は、検量線モデル152が推定した複数のバリデーション用データセット毎の生細胞密度と、複数のバリデーション用データセットの生細胞密度との平均誤差から検量線モデル152を検証する。
【0032】
そして、制御部14は、複数の検量線モデル152の中からユーザが選択した検量線モデル152、又は自動的に選択した検量線モデル152を記憶装置15に記憶する。
【0033】
そして、制御部14は、センサ部112から受信した培養液のキャパシタンスを記憶装置15に記憶した検量線モデル152に読み込ませて、培養液中の生細胞密度を推定する。
【0034】
(制御部14のハードウェア構成)
図2は、実施の形態に係る制御部のハードウェアブロック図である。ここで、制御部14のハードウェア構成を説明する。制御部14は、プロセッサ141、メモリ142、I/F(インターフェース)143、及び補助記憶部144等を有するコンピュータである。プロセッサ141は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等であって、記憶装置15に記憶されるプログラム(例えば、検量線モデル作成ツール151)をメモリ142に展開して、実行する。また、プロセッサ141は、RTC(Real-Time Clock)等の計時手段を有し、培養開始時からの経過時間(秒)等を計時する。メモリ142は、RAM(Random Access Memory)等である。プロセッサ141は、I/F143を介して、周辺デバイスや外部装置と通信を行う。補助記憶部144は、ROM(Read Only Memory)等であって、制御部14のブートプラグラム等を記憶する。
【0035】
(記憶装置15)
記憶装置15は、各種プログラム、プログラムで使用するデータ等を記憶する。記憶装置15は、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。本実施形態の記憶装置15は、検量線モデル152を作成するための検量線モデル作成ツール151、検量線モデル作成ツール151によって作成された検量線モデル152、検量線モデル152を作成するために使用されるモデル作成用データセット153、及び検量線モデル152を検証するために使用される1又は複数のバリデーション用データセット154を記憶する。
【0036】
(検量線モデル作成ツール151)
検量線モデル作成ツール151は、検量線モデル152を作成するためのプログラムである。検量線モデル作成ツール151は、制御部14のプロセッサ141によって実行され、以下の処理を実行する。
・パラメータセットを生成するための生成条件を指定するための条件指定画面を表示部13に表示する処理
・条件指定画面を介して受け付けた生成条件に従って、複数のパラメータセットを自動で生成する処理
・生成した複数のパラメータセット毎に検量線モデル152を作成する処理
・作成した複数の検量線モデル152を検証する処理
・検証結果を表示する処理
・ユーザが選択した又は自動で選択した検量線モデル152を記憶装置15に記憶する処理
【0037】
(検量線モデル152)
検量線モデル152は、センサ部112から受信した培養液のキャパシタンスから生細胞密度を推定するための係数のセットのことである。以下は、係数の例である。
・細胞培養の第1局面(培養前半)の生細胞密度を推定するための係数
・細胞培養の第2局面(培養後半)の生細胞密度を推定するための係数
・細胞培養の第1局面か第2局面かを推定するための係数
【0038】
(モデル作成用データセット153)
モデル作成用データセット153は、図3に示すように、モデル作成用の培養液の培養開始からの経過時間(秒)、モデル作成用の培養液のキャパシタンス、及びセルカウンター2が計測したモデル作成用の培養液中の生細胞密度、を含む。プローブ111のインピーダンスセンサは、複数の異なる周波数でインピーダンスの測定を行うため、図3の例は、周波数(287kHz、473kHz、…2000kHz)毎のセンサ部112から受信したキャパシタンスを含む。上記したように、モデル作成用データセット153は、モデル作成用の培養液を測定したデータセットである。また、モデル作成用データセット153は、バイオリアクター1で測定されたものであってもよいし、他のバイオリアクター1で測定されてものであってもよい。
【0039】
(バリデーション用データセット154)
バリデーション用データセット154は、検量線モデル作成ツール151が作成した複数の検量線モデル152を検証するために使用される。バリデーション用データセット154は、モデル作成用データセット153と同様に、バリデーション用の培養液の培養開始からの経過時間(秒)、バリデーション用の培養液のキャパシタンス、及びセルカウンター2が計測したバリデーション用の培養液中の生細胞密度、を含む。バリデーション用データセット154は、バイオリアクター1で測定した過去のデータセットであってもよいし、他のバイオリアクターで測定したデータセットであってもよい。また、セルカウンター2とは異なるセルカウンターによって測定した生細胞密度を含んでもよい。なお、バリデーション用データセット154の測定値の測定条件と、モデル作成用データセット153の測定値の測定条件とは、同じであることが好ましい。
【0040】
本実施形態では、図4に示すように、複数のバリデーション用データセット154(図中のバリデーション用データセット1~3)が用意される。検量線モデル作成ツール151によって作成された検量線モデル152(図中のモデル1)によって推定された生細胞密度と、複数のバリデーション用データセット154の各々との誤差の平均を平均誤差として、検量線モデル152を検証する指標として、この平均誤差を用いる。
【0041】
(セルカウンター2)
セルカウンター2は、培養液をサンプリングし、生細胞を染色して培養液中の生細胞密度(VCD;Viable Cell Density)[cell/mL]を計測する。なお、センサ11がキャパシタンスを計測するタイミングと、生細胞密度の取得のタイミングは、一致してもよいし、一致していなくてもよい。計測するタイミングは、例えば、キャパシタンスを連続して測定し、生細胞密度を間欠的に取得するようにしてもよい。セルカウンター2は、計測した生細胞密度を示す情報をバイオリアクター1に出力する。なお、セルカウンター2による計測は、オフラインで行われる。
【0042】
(検量線モデル作成フロー)
次に、図5を参照して、検量線モデル152を作成する方法(検量線モデル作成方法)を説明する。図5は、検量線モデルを作成する方法を示したフローチャートである。制御部14のプロセッサ141が記憶装置15の検量線モデル作成ツール151を実行することによって、図5のフローチャートの各ステップが実行される。
【0043】
ステップS500において、検量線モデル作成ツール151が実行されると、制御部14は、パラメータセットを生成するための生成条件を指定するための条件指定画面を表示部13に表示する。
【0044】
ステップS501において、ユーザは、当該条件指定画面を介して、生成条件を指定する。具体的には、ユーザは、例えば、パラメータAの生成条件として、細胞培養の第1局面(培養前半)と第2局面(培養後半)との境界の範囲(例えば、培養開始から500000~700000(秒))、及び当該範囲からピックアップする境界の数(例えば、5つ)を指定する。また、ユーザは、例えば、パラメータBの生成条件として、第2局面の生細胞密度を推定するための次数の範囲(例えば、3~5)を指定する。
【0045】
ステップS502において、制御部14は、ユーザによって指定された生成条件に従って、パラメータセットを自動生成する。上記したパラメータAの生成条件(細胞培養の第1局面(培養前半)と第2局面(培養後半)との境界の範囲:500000~700000(秒)、ピックアップする境界の数:5つ)が入力された場合、制御部14は、パラメータAの候補として、500000、550000、600000、650000、700000(秒)をピックアップする。また、上記したパラメータBの生成条件(第2局面の生細胞密度を推定するための次数の候補となる範囲:3~5)が入力された場合、制御部14は、パラメータBの候補として、3、4、5をピックアップする。
【0046】
図6は、実施の形態に係るパラメータセットの一覧を示した図である。ユーザによって指定された生成条件に従って生成されたパラメータセットの一覧は、図6に示すように、パラメータAの5つの候補(500000、550000、600000、650000、700000(秒))と、パラメータBの3つの候補(3、4、5)との組み合わせの15パターンのパラメータセット(図中のパラメータセット1~15)を含む。
【0047】
ステップS503において、制御部14は、生成したパラメータセットの数(15パターン)だけ、以下のステップS504及びS505の処理を繰り返す。
【0048】
ステップS504において、制御部14は、自動生成した複数のパラメータセットの中から1つを選択し、選択したパラメータセットのパラメータA及びパラメータB、並びにモデル作成用データセットを使って検量線モデル152を作成する。
【0049】
ステップS505において、制御部14は、作成した検量線モデル152を検証する。検量線モデル152の検証の詳細は後述する。
【0050】
パラメータセットの数だけ、検量線モデル152の作成(ステップS504)及び検量線モデル152の検証(ステップS505)を実施すると、ステップS506において、制御部14は、複数の検量線モデル152の検証結果(図8図9参照)を表示部13に表示する。なお、複数の検量線モデル152の検証結果の詳細は後述する。
【0051】
ステップS507において、制御部14は、ユーザが選択した検量線モデル152をファイル化して記憶装置15に保存する。
【0052】
(検量線モデル検証フロー)
次に、図7を参照して、検量線モデル152を検証する方法を説明する。図7は、実施の形態に係る検量線モデルの検証方法を示したフローチャートである。
【0053】
ステップS701において、制御部14は、ステップS504で作成された複数の検量線モデル152の1つを読み込む。
【0054】
ステップS702において、制御部14は、読み込んだ検量線モデル152の推定値とバリデーション用データセットとの誤差の平均を算出するために、事前に合計誤差を0で初期化する。
【0055】
ステップS703において、制御部14は、選択したバリデーション用データセットの数だけ、以下のステップS704~S707の処理を繰り返す。
【0056】
ステップS704において、制御部14は、複数のバリデーション用データセットの中から1つのバリデーション用データセットを読み込む。
【0057】
ステップS705において、制御部14は、読み込んだ検量線モデル152を使用して、バリデーション用データセットのキャパシタンスから生細胞密度を算出する。
【0058】
ステップS706において、制御部14は、算出した生細胞密度と、バリデーション用データセット内のセルカウンターによって計測された生細胞密度との誤差を算出する。
【0059】
ステップS707において、制御部14は、算出した誤差を、合計誤差に加算する。
【0060】
選択したバリデーション用データセットの数だけ、ステップS704~S707の処理を繰り返した後、ステップS708において、制御部14は、誤差の合計をバリデーション用データセットの数で除算し、平均誤差を算出する。
【0061】
(検量線モデルの検証結果)
図8は、実施の形態に係る検量線モデルの検証結果を示した図(表)であり、図9は、実施の形態に係る検量線モデルの検証結果を示した図(グラフ)である。図8の表や図9のグラフは、表示部13に表示される。
【0062】
図8の表では、検量線モデル152のパラメータセット(検量線モデル152を示す情報)に、ステップS708で算出された平均誤差が対応付けて表示される。図8の表は、細胞培養の第1局面(培養前半)と第2局面(培養後半)との境界を示すパラメータAを含むパラメータセットを生成した例であって、パラメータA以外のパラメータ(例えば、パラメータB)を含まない。図8の例では、細胞培養の第1局面(培養前半)と第2局面(培養後半)との境界の範囲として500000~620000秒が指定され、ピックアップする境界の数として13が指定されている。
【0063】
図8に示すように、平均誤差が最も小さい検量線モデル152のパラメータセット及び平均誤差は、ハイライトされ、強調表示される。
【0064】
また、図9に示すように、図8の表をグラフ化して、検量線モデル152のパラメータセットと平均誤差との関係をグラフィカルに表示することもできる。図9のグラフでは、横軸が検量線モデルのパラメータセットであり、縦軸がステップS708で算出された平均誤差である。
【0065】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、ユーザは、パラメータセットを生成するための生成条件を入力するだけで、制御部14が自動的に複数のパラメータセットを生成し、生成した複数のパラメータセットに対して複数の検量線モデルを自動的に作成することができる。このように、本実施形態では、短時間、かつ少ないユーザ操作で、適切な検量線モデルを保存し、この検量線モデルを使用して生細胞密度を推定することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、作成した検量線モデルを複数のバリデーション用データセットを使って検証することができるので、検量線モデルによる生細胞密度の推定精度を向上させることができる。
【0067】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0068】
例えば、上記した実施形態では、細胞培養の第1局面(培養前半)での誤差と第2局面(培養後半)での誤差との重みについては説明しなかったが、細胞培養の第1局面(培養前半)での誤差と第2局面(培養後半)での誤差との重みを指定できるようにしてもよい。例えば、細胞培養の第1局面(培養前半)での誤差と第2局面(培養後半)での誤差とを1対1で重み付けしてもよいし、特定の局面での誤差を重視するために特定の局面での誤差の重みを他の局面での誤差より大きくしてもよい。
【0069】
また、特定の局面の誤差(例えば、第2局面(培養後半)での誤差)のみを表示できるようにしてもよいし、全局面の誤差及び特定の局面の誤差の両方を表示できるようにしてもよい。
【0070】
上記した実施形態では、指定した範囲の中からピックアップする数を指定する例について説明したが、ピックアップする数の代わりに、ピックアップするインターバル(例えば、50000秒)を指定してもよい。また、指定する範囲の代わりに、データのインデックスの範囲(500番目のデータから509番目のデータまで)を指定してもよい。
【0071】
上記した実施形態では、検量線モデルの検証に、検量線モデルによる推定値とバリデーション用データセットとの誤差や平均誤差を算出したが、誤差の代わり、又は誤差に加えて相関係数等の指標を加えてもよい。
【0072】
また、細胞培養の局面は、3つ以上存在してもよい。
【0073】
上記した実施形態では、バイオリアクター1に搭載される制御部14が検量線モデル152を作成したり、検量線モデル152の検証を行ったりしたが、制御部14は、クラウドサーバ、オンプレミスサーバ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなどの情報処理可能なコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:バイオリアクター、 2:セルカウンター、 10:培養槽、 11:センサ、 12:操作部、 13:表示部、 14:制御部、 15:記憶装置、 100:検量線モデル作成装置、 111:プローブ、 112:センサ部、 141:プロセッサ、 142:メモリ、 143:I/F(インターフェース)、 144:補助記憶部、 151:検量線モデル作成ツール、 152:検量線モデル、 153:モデル作成用データセット、 154:バリデーション用データセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10