IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-取付構造、及び乗物用内装材 図1
  • 特開-取付構造、及び乗物用内装材 図2
  • 特開-取付構造、及び乗物用内装材 図3
  • 特開-取付構造、及び乗物用内装材 図4
  • 特開-取付構造、及び乗物用内装材 図5
  • 特開-取付構造、及び乗物用内装材 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035902
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】取付構造、及び乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140519
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 昌倫
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BD03
3D023BE03
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】繊維が含まれる部材を用いた実用的な取付構造、及び乗物用内装材を提供する。
【解決手段】繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含んで構成されるオーナメント10と、熱可塑性樹脂を少なくとも含んで構成されるロアボード20と、を備え、オーナメント10及びロアボード20のうち、一方は、表面が凸状をなした凸部14を備え、他方は、表面が凹状をなし、凸部14を嵌め込み可能な凹部24を備え、凸部14が凹部24に嵌め込まれ、その表面同士が当接した部分が熱溶着されてなることにより、オーナメント10とロアボード20とが互いに取り付けられている、取付構造101。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含んで構成される第1部材と、
熱可塑性樹脂を少なくとも含んで構成される第2部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のうち、
一方は、表面が凸状をなした凸部を備え、
他方は、表面が凹状をなし、前記凸部を嵌め込み可能な凹部を備え、
前記凸部が前記凹部に嵌め込まれ、その表面同士が当接した部分が熱溶着されてなることにより、前記第1部材と前記第2部材とが互いに取り付けられている、取付構造。
【請求項2】
前記凸部は、凸基端部から凸頂部へ向けて傾斜した凸斜面を備え、
前記凹部は、凹基端部から凹底部へ向けて傾斜した凹斜面を備え、
前記凸斜面と前記凹斜面とが当接した部分が熱溶着されてなる、請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記凸部は、四角錘状をなしており、
前記凹部は、前記凸部の表面に倣う凹状をなしている、請求項1または請求項2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記第1部材の表面と前記第2部材の表面とが面一になった部分において、前記第1部材と前記第2部材との境界線が延びる方向を第1方向とした場合に、前記凸部及び前記凹部は、前記第1方向に対し交わる方向である第2方向に沿って複数並んでいる、請求項1または請求項2に記載の取付構造。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の取付構造を備え、
前記第1部材は、乗物室外側の面において、前記凸部又は前記凹部を備え、
前記第2部材は、乗物室内側の面において、前記凹部又は前記凸部を備え、
前記第1部材が前記第2部材に対し乗物室内側から取り付けられている、乗物用内装材。
【請求項6】
前記第1部材は、当該乗物用内装材の周囲の端部の一部を構成している、請求項5に記載の乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取付構造、及び乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用内装材の製造方法(車両用内装材の成形方法)として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的に、特許文献1には、ガラス繊維や木質繊維等(以下、繊維等と呼ぶことがある)にPEまたはPP等の熱可塑性樹脂を混入して形成された繊維樹脂部材(内装基材)を、プレス成形型の下型及び上型間に挿入してプレス成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-190982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレス成形型には、繊維樹脂部材の裏面(又は表面)に所定形状の構造部を形成するための凹形状が設けられることがある。しかしながら、特許文献1に開示の構成のように、繊維等が含まれた繊維樹脂部材は、プレス成形時において成形型の凹形状に繊維が移動し難いため、繊維樹脂部材の裏面等に構造部を形成することが難しい。繊維樹脂部材に対し例えばボス等の取付部が形成できない場合、他部材との取付構造が限定的となり、意匠のバリエーションが制限される。このような繊維樹脂部材の裏面等に対し、射出成形を行って構造部を形成することも考えられるが、コストや製造工程数が増加する可能性がある。一方、仮に、ボス等の取付部が形成できたとしても、繊維樹脂部材を他部材に取り付ける際は、互いの位置合わせを行う必要がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、繊維が含まれる部材を用いた実用的な取付構造、及び乗物用内装材を提供することを目的の一つとする。また、意匠性を向上可能な取付構造、及び乗物用内装材を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含んで構成される第1部材と、熱可塑性樹脂を少なくとも含んで構成される第2部材と、を備え、前記第1部材及び前記第2部材のうち、一方は、表面が凸状をなした凸部を備え、他方は、表面が凹状をなし、前記凸部を嵌め込み可能な凹部を備え、前記凸部が前記凹部に嵌め込まれ、その表面同士が当接した部分が熱溶着されてなることにより、前記第1部材と前記第2部材とが互いに取り付けられている、取付構造である。
【0007】
このような取付構造によると、繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含む第1部材と、第2部材とを、簡易な構造で互いに取り付けた構成とすることができ、取付の作業者の作業性を向上することができる。また、このような取付構造は、例えばプレス成形による形成が可能であるため、射出成形等により形成される場合に比してコストや製造工程数の削減を実現することができる。そして、簡易な構造である凸部又は凹部は、第1部材が繊維を含んでいたとしても、その任意の部分にて形成することが可能であるため、第1部材と第2部材の取付態様の自由度が増し、バリエーションに富んだ意匠を実現することができる。一方、凸部を凹部に嵌め込めば、凸部の先端が凹部の底に向かって摺動するので、第1部材と第2部材の相対的な位置合わせが容易となる。
【0008】
上記構成において、前記凸部は、凸基端部から凸頂部へ向けて傾斜した凸斜面を備え、前記凹部は、凹基端部から凹底部へ向けて傾斜した凹斜面を備え、前記凸斜面と前記凹斜面とが当接した部分が熱溶着されてなる構成であってもよい。
【0009】
このような取付構造によると、第1部材と第2部材とを、より簡易な構造で取り付けた構成とすることができる。また、凸部が凹部に嵌め込まれる際に、凸部の先端が凹部の底に向かって摺動しやすくなるので、第1部材と第2部材の相対的な位置合わせをより容易なものとすることができる。
【0010】
上記構成において、前記凸部は、四角錘状をなしており、前記凹部は、前記凸部の表面に倣う凹状をなしていてもよい。
【0011】
このような取付構造によると、凸部の凹部への嵌め込みの際に、四角錘状の凸部において、三角の面が向く方向(例えば上下方向や前後方向等の少なくとも2方向)への位置決めを容易なものとすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1部材の表面と前記第2部材の表面とが面一になった部分において、前記第1部材と前記第2部材との境界線が延びる方向を第1方向とした場合に、前記凸部及び前記凹部は、前記第1方向に対し交わる方向である第2方向に沿って複数並んでいてもよい。
【0013】
このような取付構造によると、凸部及び凹部が、境界線の延びる第1方向に交わる第2方向に沿って複数並ぶことにより、第1部材と第2部材の接着強度を高めやすくすることができ、好適である。
【0014】
また、本開示は、上記の取付構造を備え、前記第1部材は、乗物室外側の面において、前記凸部又は前記凹部を備え、前記第2部材は、乗物室内側の面において、前記凹部又は前記凸部を備え、前記第1部材が前記第2部材に対し乗物室内側から取り付けられている、乗物用内装材である。
【0015】
このような乗物用内装材によると、第1部材が第2部材における任意の部分に対し乗物室内側から取り付けられた、バリエーションに富んだ意匠を実現することができる。
【0016】
上記構成において、前記第1部材は、当該乗物用内装材の周囲の端部の一部を構成していてもよい。
【0017】
このような構成によると、意匠性を向上した乗物用内装材とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、繊維が含まれる部材を用いた実用的な取付構造、及び乗物用内装材を提供することが可能となる。また、意匠性を向上できる取付構造、及び乗物用内装材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るドアトリムを車室内側から視た図
図2】第1部材と第2部材の取付構造を後上方から視た斜視図(図1の領域Sの部分を示す斜視図)
図3図2において、第1部材の表裏を反転させた状態を示す斜視図
図4】第1部材の凸部を車室外側から視た拡大図
図5】第1部材の凸部の断面を示す拡大図
図6】第1部材を第2部材に取り付ける態様を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本開示の実施形態を図1から図6によって説明する。本実施形態では、自動車(乗物)のドアに取り付けられるドアトリム(乗物用内装材)100と、ドアトリム100に含まれる取付構造101について説明する。尚、矢印方向Fを前方、矢印方向Bを後方、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向INを車室内側(乗物室内側)、矢印方向OUTを車室外側(乗物室外側)として各図を説明する。
【0021】
図1に示すように、ドアトリム100は、加飾部材としての板状のオーナメント(第1部材)10と、オーナメント10が車室内側から取り付けられた板状のロアボード(第2部材)20と、オーナメント10及びロアボード20の上部に取り付けられた板状のアッパーボード30と、ロアボード20に取り付けられたスピーカグリル40と、を備える。オーナメント10は、前後方向を長辺とする長板状をなしている。オーナメント10の後端部10A、ロアボード20の後端部20A、及びアッパーボード30の後端部30Aは、ドアトリム100の周囲の端部のうちの後端部100Aを構成している。オーナメント10の後端部10Aは、ドアトリム100の後端部100Aの一部を構成している。
【0022】
ドアトリム100の車室内側の面は、面一になっている。図2に示すように、オーナメント10の表面(車室内側の面)10Bとロアボード20の表面(車室内側の面)20Bとが面一となった部分において、オーナメント10とロアボード20との境界には、上下方向(第1方向)に延びる第1境界線51と、前後方向に延びる第2境界線52(図1参照)と、が表れている。これら境界線51,52は、見切り線と呼ばれることがある。境界線51,52では、オーナメント10とロアボード20とが当接していてもよい。
【0023】
オーナメント10は、繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含んで構成されており、例えば、交絡した繊維が熱可塑性樹脂により結着された構造となっている。これにより、オーナメント10は、所定の剛性を保ちつつ、軽量な部材となっている。オーナメント10を構成する繊維としては、特に限定されないが、例えば、植物性繊維、樹脂繊維、ガラス繊維、金属繊維等のうち1種又は2種以上を採用することができる。植物性繊維としては、ケナフ繊維を採用することができる。オーナメント10を構成する熱可塑性樹脂しては、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)等のうち1種又は2種以上を採用することができる。一方、ロアボード20は、熱可塑性樹脂を少なくとも含んで構成される。ロアボード20を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)等のうち1種又は2種以上を採用することができる。
【0024】
図2及び図3に示すように、オーナメント10は、当該オーナメント10の大部分を構成する第1本体部11を備える。同様に、ロアボード20は、当該ロアボード20の大部分を構成する第2本体部21を備える。オーナメント10は、第1本体部11に対し第2本体部21側(前側及び下側)に位置する板状の第1取付部12と、第1取付部12の端部であって車室外側に折れ曲がった折曲部13と、を備える。ロアボード20は、第2本体部21に対し第1本体部11側(後側及び上側)に位置する板状の第2取付部22と、第2本体部21と第2取付部22との間に配され、車室外側に窪んだ溝部23と、を備える。第2取付部22は、第2本体部21よりも、第1取付部12の厚み分、車室外側に位置している。溝部23は、第1境界線51及び第2境界線52の車室外側において、当該第1境界線51及び第2境界線52に沿って延在している。
【0025】
オーナメント10とロアボード20は、第1取付部12が第2取付部22に取り付けられた、取付構造101を構成している。この取付構造101では、折曲部13が溝部23に入り込んでおり、オーナメント10の表面10Bとロアボード20の表面20Bとが面一となっている。折曲部13は、溝部23において、第2本体部21から立ち下がった立下壁部23Aに当接していてもよい。
【0026】
図3に示すように、オーナメント10及びロアボード20のうち、一方であるオーナメント10は、第1取付部12の車室外側の面12Aにおいて、表面が凸状をなした複数の凸部14を備える(尚、図3では、オーナメント10が車室内外方向において反転した状態で示してある)。オーナメント10及びロアボード20のうち、他方であるロアボード20は、第2取付部22の車室内側の面22Aにおいて、表面が凹状をなし、複数の凸部14を嵌め込み可能な複数の凹部24を備える。複数の凸部14は、第1境界線51(図1及び図2参照)の延びる上下方向に対し交わる方向である前後方向に沿って並んでいる。また、複数の凸部14は、第2境界線52の延びる前後方向に対し交わる方向である上下方向に沿って並んでいる。複数の凸部14は、面12Aにおいて、前後方向及び上下方向に沿って行列状に配されている。同様に、複数の凹部24は、第1境界線51の延びる上下方向に対し交わる方向である前後方向に沿って並んでいる。また、複数の凹部24は、第2境界線52の延びる前後方向に対し交わる方向である上下方向に沿って並んでいる。複数の凹部24は、面22Aにおいて、前後方向及び上下方向に沿って行列状に配されている。
【0027】
図3から図5に示すように、凸部14は、車室内外方向を高さ方向とする四角錘状をなしている。凸部14は、凸基端部(凸部14の周囲部分)14Bから凸頂部14Cへ向けて傾斜した、三角形状の凸斜面14Aを備えている。凸頂部14Cは、凸部14において最も高い部分であり、先端部分とされる。凸斜面14Aは、凸部14において、凸頂部14Cの前後側及び上下側に配されており、1つの凸部14につき合計4つが設けられている。凸基端部14B及び凸頂部14Cは、角部が面取りされた平坦状をなしている。
【0028】
凹部24は、凸部14の表面に倣う凹状(四角錘状に凹んだ形)をなしている。図3及び図6に示すように、凹部24は、凹基端部24Bから凹底部24Cへ向けて傾斜した、三角形状の凹斜面24Aを備えている。凹基端部24Bは、凹部24において最も高い部分である。凹底部24Cは、凹部24において最も低い部分である。凹斜面24Aは、凹部24において、凹底部24Cの前後側及び上下側に配されており、1つの凹部24につき合計4つが設けられている(図3参照)。凹基端部24B及び凹底部24Cは、角部が面取りされた平坦状をなしている。
【0029】
図4及び図5に示すように、凸部14の前後両側(又は上下両側)の凸基端部14B,14B間を結ぶ直線をLとし、直線Lから凸頂部14Cまで延びる直線をHとし、直線Lに対し凸斜面14Aが傾斜した傾斜角をθとする。傾斜角θの角度は、3度以上でもよく、5度以上でもよく、7度以上でもよく、50度以下でもよく、40度以下でもよく、30度以下でもよい。直線Hの長さ(凸部14の高さと呼んでもよい)は、直線Lの長さ(凸基端部14B,14B間の距離と呼んでもよい)に比して、1/30以上でもよく、1/20以上でもよく、1/10以上でもよく、1/2以下でもよく、1/3以下でもよく、1/4以下でもよい。このような範囲によると、凸部14の成形性(例えばプレス成形による成形性)を向上することができる。また、凸部14が凹部24に嵌め込まれる際に、凸頂部14Cが凹底部24Cに向かって摺動しやすくなるので、オーナメント10とロアボード20の相対的な位置合わせを一層容易なものとすることができる。尚、凹部24において、凹斜面24Aの傾斜角や、凹部24の高さ(凹底部24Cから凹基端部24Bまでの高さ)も、凸部14と同様の数値範囲としてもよい。
【0030】
図6に示すように、取付構造101は、凸部14と凹部24とを形成する第1工程と、凸部14を凹部24に嵌め込む第2工程と、凸部14及び凹部24の表面同士が当接した部分を熱溶着する第3工程と、を行うことで、製造される。第1工程では、繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1板状体を、例えば、成形型の上型と下型との間に挟んでプレス成形することで、凸部14を備えるオーナメント10を形成し、熱可塑性樹脂を含む第2板状体を、同様のプレス成形を行うことで、凹部24を備えるロアボード20を形成する。この場合、下型(又は上型)の成形面には、凸部14及び凹部24に倣う凹凸状の形状が設けられている。
【0031】
図6に示すように、第2工程では、オーナメント10の第1取付部12をロアボード20の第2取付部22に対し車室内側から近接させ、第1取付部12の表面(車室外側の面)12Aを第2取付部22の表面(車室内側の面)22Aに当接させる。このとき、オーナメント10がロアボード20に対し狙いの位置(例えば凸頂部14Cが凹底部24Cに当接する位置)からズレていたとしても、引き続きオーナメント10をロアボード20に近接させることで、凸頂部14Cが凹底部24Cに向かって摺動することで、その位置ズレが解消する。オーナメント10がロアボード20に対し狙いの位置となり、凸部14が凹部24に嵌め込まれた嵌込状態では、凸斜面14Aが凹斜面24Aに当接している。嵌込状態では、凸基端部14Bが凹基端部24Bに当接していてもよく、図2に示すように、折曲部13が立下壁部23Aに当接(又は近接)していてもよい。
【0032】
第3工程では、嵌込状態において少なくとも凸斜面14Aと凹斜面24Aとを(凸部14及び凹部24における表面同士が当接した部分を)熱溶着させる。熱溶着の方法は特に限定されないが、例えば、図6に示すようなホーン(超音波発生装置)60を嵌込状態のオーナメント10の第1取付部12に当接させて、ホーン60から凸斜面14Aと凹斜面24Aとに対し超音波を伝搬させて発熱させることにより、凸斜面14Aと凹斜面24Aとを熱溶着してもよい。嵌込状態において凸頂部14Cと凹底部24Cとが当接している場合や、凸基端部14Bと凹基端部24Bとが当接している場合は、これらの部分においても熱溶着がなされていてもよい。以上により、凸部14が凹部24に嵌め込まれ、少なくとも凸斜面14Aと凹斜面24Aとが当接した部分が熱溶着されてなることにより、オーナメント10とロアボード20とが互いに取り付けられている、取付構造101を得ることができる。
【0033】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含んで構成されるオーナメント10と、熱可塑性樹脂を少なくとも含んで構成されるロアボード20と、を備え、オーナメント10及びロアボード20のうち、一方であるオーナメント10は、表面が凸状をなした凸部14を備え、他方であるロアボード20は、表面が凹状をなし、凸部14を嵌め込み可能な凹部24を備え、凸部14が凹部24に嵌め込まれ、その表面同士が当接した部分が熱溶着されてなることにより、オーナメント10とロアボード20とが互いに取り付けられている、取付構造101を示した。
【0034】
このような取付構造101によると、繊維と熱可塑性樹脂とを少なくとも含むオーナメント10と、ロアボード20とを、簡易な構造で互いに取り付けた構成とすることができ、取付の作業者の作業性を向上することができる。また、このような取付構造101は、例えばプレス成形による形成が可能であるため、射出成形等により形成される場合に比してコストや製造工程数の削減を実現することができる。そして、簡易な構造である凸部14又は凹部24は、オーナメント10が繊維を含んでいたとしても、その任意の部分にて形成することが可能であるため、オーナメント10とロアボード20の取付態様の自由度が増し、バリエーションに富んだ意匠を実現することができる。一方、凸部14を凹部24に嵌め込めば、凸部14の先端(凸頂部14C)が凹部24の底(凹底部24C)に向かって摺動するので、オーナメント10とロアボード20の相対的な位置合わせが容易となる。
【0035】
凸部14は、凸基端部14Bから凸頂部14Cへ向けて傾斜した凸斜面14Aを備え、凹部24は、凹基端部24Bから凹底部24Cへ向けて傾斜した凹斜面24Aを備え、凸斜面14Aと凹斜面24Aとが当接した部分が熱溶着されてなる。
【0036】
このような取付構造101によると、オーナメント10とロアボード20とを、より簡易な構造で取り付けた構成とすることができる。また、凸部14が凹部24に嵌め込まれる際に、凸部14の先端が凹部24の底に向かって摺動しやすくなるので、オーナメント10とロアボード20の相対的な位置合わせをより容易なものとすることができる。
【0037】
凸部14は、四角錘状をなしており、凹部24は、凸部14の表面に倣う凹状をなしている。
【0038】
このような取付構造101によると、凸部14の凹部24への嵌め込みの際に、四角錘状の凸部14において、三角の面が向く方向(例えば上下方向や前後方向等の少なくとも2方向)への位置決めを容易なものとすることができる。
【0039】
オーナメント10の表面とロアボード20の表面とが面一になった部分において、オーナメント10とロアボード20との第1境界線51が延びる方向を第1方向(上下方向)とした場合に、凸部14及び凹部24は、第1方向に対し交わる方向である第2方向(前後方向)に沿って複数並んでいる。
【0040】
このような取付構造101によると、凸部14及び凹部24が、第1境界線51の延びる第1方向に交わる第2方向に沿って複数並ぶことにより、オーナメント10とロアボード20の接着強度を高めやすくすることができ、好適である。
【0041】
また、本実施形態では、取付構造101を備え、オーナメント10は、車室外側の面12Aにおいて、凸部14を備え、ロアボード20は、車室内側の面22Aにおいて、凹部24を備え、オーナメント10がロアボード20に対し車室内側から取り付けられている、ドアトリム100を示した。
【0042】
このようなドアトリム100によると、オーナメント10がロアボード20における任意の部分に対し車室内側から取り付けられた、バリエーションに富んだ意匠を実現することができる。
【0043】
オーナメント10は、ドアトリム100の周囲の端部100Aのうち、一部の端部10Aを構成している。
【0044】
このような構成によると、意匠性を向上したドアトリム100とすることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)上記実施形態以外にも、第1部材及び第2部材は適宜変更可能である。上記実施形態では、オーナメントを第1部材とし、ロアボードを第2部材とし、これらの取付構造及び乗物用内装材を例示したが、これに限定されない。例えば、アッパーボードやスピーカグリルを第1部材とし、ロアボードを第2部材としてもよく、ロアボードを第1部材とし、オーナメント等を第2部材としてもよい。また、乗物用内装材は、適宜変更可能である。例えば、乗物用内装材は、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ等でもよい。
【0047】
(2)上記実施形態以外にも、凸部と凹部の構成や、これらが設けられる部材は、適宜変更可能である。例えば、第1部材に凹部が設けられ、第2部材に凸部が設けられていてもよい。また、第1部材に凸部が設けられ、第2部材に複数の凸部によりなる凹部(当該複数の凸部のうち隣り合う2つの凸部によりなる凹形状部分)が設けられていてもよい。同様に、第1部材に複数の凹部によりなる凸部(当該複数の凹部のうち隣り合う2つの凹部によりなる凸形状部分)が設けられ、第2部材に凹部が設けられていてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態以外にも、取付構造を形成する工程は適宜変更可能である。上記実施形態では、凸部を凹部に嵌め込んだ後に、その表面同士が当接した部分をホーンによって熱溶着させたが、これに限定されない。例えば、凸部(又は凹部)を加熱し、その表面を溶融させた後に、凸部を凹部に押し付けるようにして嵌め込むことで、凸部の表面と凹部の表面とが当接した部分を接着してもよい。即ち、凸部及び凹部の嵌め込みと加熱(熱可塑性樹脂の溶融)の順序は、特に限定されない。
【0049】
(4)上記実施形態で例示した取付構造及び乗物用内装材は、車両用に限定されず、種々の乗物において提供されてもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記取付構造及び乗物用内装材を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…オーナメント(第1部材)、14…凸部、14A…凸斜面、14B…凸基端部、14C…凸頂部、20…ロアボード(第2部材)、24…凹部、24A…凹斜面、24B…凹基端部、24C…凹底部、51,52…境界線、100…ドアトリム(乗物用内装材)、101…取付構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6