(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035914
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】加熱ハウジングおよび樹脂成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/72 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B29C45/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140536
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】信田 宗宏
(72)【発明者】
【氏名】入江 雄大
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AK09
4F206AR06
4F206AR07
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN03
4F206JN43
4F206JQ02
4F206JQ06
4F206JQ46
(57)【要約】
【課題】樹脂成形機におけるヒータの交換作業が容易なハウジングを提供すること。
【解決手段】加熱ハウジングとしてのシリンダバレル(105)は、内周面の内側の中空部と、中空部を取り囲む中実部を備え、軸方向(AD)および周方向(CD)を有する筒状のバレル本体(105A)と、中実部に内蔵される、少なくとも一部または全部に真直部分を含む単数または複数のヒータ(109)と、を備え、ヒータ(109)は、真直部分が軸方向(AD)と交差する方向に沿って設けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部と、前記中空部を取り囲む中実部と、を備え、軸方向および周方向を有する筒状のハウジング本体と、
前記中実部に内蔵される、少なくとも一部または全部に真直部分を含む単数または複数のヒータと、を備え、
前記ヒータは、前記真直部分が前記軸方向と交差する方向に沿って設けられる、ことを特徴とする樹脂成形機の加熱ハウジング。
【請求項2】
複数の前記ヒータが、前記軸方向の異なる位置に等間隔または不当間隔で配列される、
請求項1に記載の加熱ハウジング。
【請求項3】
複数の前記ヒータは、前記周方向に沿い、かつ、中心軸の周りの異なる位相に配列される、
請求項1または請求項2に記載の加熱ハウジング。
【請求項4】
複数の前記ヒータのそれぞれは、前記中空部から均等な距離に設けられる、請求項3に記載の加熱ハウジング。
【請求項5】
前記軸方向の同じ位置において、複数の前記ヒータが前記周方向における前記位相が異なるヒータ群として設けられる、
請求項3に記載の加熱ハウジング。
【請求項6】
複数の前記ヒータ群が、前記軸方向の異なる位置に設けられる、
請求項5に記載の加熱ハウジング。
【請求項7】
前記軸方向の異なる位置に設けられるそれぞれの前記ヒータ群は、加熱温度が異なる、
請求項6に記載の加熱ハウジング。
【請求項8】
前記ハウジング本体は、
前記ハウジング本体の前記軸方向に交差し、前記中実部に形成される単数または複数の真直ぐな空隙からなるヒータ室を備え、
前記ヒータの前記真直部分が前記ヒータ室に収容される、
請求項1または請求項2に記載の加熱ハウジング。
【請求項9】
樹脂を可塑化させるためのスクリュと、前記スクリュを包囲する請求項1または請求項2に記載の加熱ハウジングと、を備える、樹脂成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機および押出成形機などの樹脂材料の成形機において樹脂を加熱することのできるハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、一例として、樹脂の射出および溶融のための可塑化スクリュを包囲するシリンダと、シリンダを包囲するシリンダバレルと、を備えるものがある。シリンダおよびシリンダバレルはいずれも筒状の部材(ハウジング)であるのに加えて、樹脂の可塑化および可塑化された樹脂の温度を保つために、カートリッジヒータ、シーズヒータなどの加熱手段としてのヒータを備える。押出成形機においても、ヒータを備えるハウジングが用いられる。
【0003】
特許文献1は、ハウジングとしてのシリンダバレルにヒータを内蔵させることを提案する。つまり、特許文献1は、シリンダバレルの中実部分にヒータを収容する空隙からなる複数のヒータ室がシリンダバレルの軸方向に沿って設けられる。複数のヒータ室は、シリンダバレルの周方向に等間隔で穿設され、それぞれのヒータ室に棒状のヒータが内蔵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
寿命、故障などの理由により、ヒータの交換が必要になるときがある。ヒータ室が軸方向に沿って設けられる場合、交換するヒータを軸方向に抜き取り、新たなヒータを軸方向に挿入することになる。ところが、例えば、シリンダの基部は射出力に耐えられるように強固に固定される必要がある。また、シリンダの基部の後方には可塑化スクリュを回転させる駆動部が近接して設けられるため、シリンダ基部と駆動部との間のスペースは狭い。このため、ヒータの交換が必要となった場合、狭い空きスペースにおいてヒータの交換作業を行わなければならず、作業性が非常にわるい。
【0006】
以上より、本発明は、樹脂成形機におけるヒータの交換作業が容易なハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱ハウジングは、ハウジング本体と、単数または複数のヒータと、を備える。
ハウジング本体は、中空部と、中空部を取り囲む中実部と、を備え、軸方向および周方向を有する筒状をなしている。
ヒータは、中実部に内蔵される、少なくとも一部または全部に真直部分を含む。このヒータは、真直部分が軸方向と交差する方向に沿って設けられる。
【0008】
複数のヒータは、好ましくは、軸方向の異なる位置に等間隔または不当間隔で配列される。
【0009】
複数のヒータは、好ましくは、周方向に沿い、かつ、中心軸の周りの異なる位相に配列される。
【0010】
複数のヒータのそれぞれは、好ましくは、中空部から均等な距離に設けられる。
【0011】
軸方向の同じ位置において、好ましくは、複数のヒータが周方向における位相が異なるヒータ群として設けられる。
複数のヒータ群は、好ましくは、軸方向の異なる位置に設けられる。
軸方向の異なる位置に設けられるそれぞれのヒータ群は、好ましくは、加熱温度が異なる。
【0012】
ハウジング本体は、好ましくは、ハウジング本体の軸方向に交差し、中実部に形成される単数または複数の真直ぐな空隙からなるヒータ室を備える。ヒータの真直部分はヒータ室に収容される。
【0013】
本発明は、樹脂を可塑化させるためのスクリュと、スクリュを包囲する上述したいずれかの加熱ハウジングと、を備える、樹脂成形機を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハウジングによれば、ヒータをハウジングの軸方向と交差、一例として直交する向きに設けられる。このハウジングにおいてヒータを交換するには、それまで使用されているヒータをハウジングの軸方向と交差する向きであってハウジングの周囲に向けてヒータ室から抜き取り、新たなヒータについては抜き取りのときとは逆向きにヒータ室に挿入すればよい。ハウジングの周囲には空きスペースを広く確保できるため、本発明のハウジングによれば、ヒータの交換作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る射出成形機を側面方向から示す部分断面図である。
【
図2】実施形態に係る射出成形機を平面方向から示す部分断面図である。
【
図3】シリンダバレルのヒータ(ヒータ室)と軸方向ADとが交差する例を示す図である。
【
図4】シリンダバレルの軸方向ADに沿って複数のヒータ(ヒータ室)が配列される例を示す図である。
【
図5】シリンダバレルの周方向CDに沿って複数のヒータ(ヒータ室)が配列される例を示す図である。
【
図6】
図1および
図2に示されるシリンダバレルを示す正面図であり、(a)はヒータを除いてあり、(b)はヒータが設けられている。
【
図7】(a)は
図6のVIIaの向きから視た図、(b)は
図6のVIIbの向きから視た図である。
【
図8】実施形態に係る射出成形機の動作を示す図であって、(a)は可塑化・計量の準備の工程、(b)は可塑化・計量の工程を示す。
【
図9】
図8に引き続いて、実施形態に係る射出成形機の動作を示す図であって、(a)は射出の準備工程、(b)は射出工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る射出成形機について説明する。
射出成形機1は、図示を省略する型締装置と組み合わされることにより、樹脂材料の射出成形を行うことができる。射出成形機1は、円筒状のシリンダバレル105における特徴ある複数のヒータ109の配列を採用することにより、ヒータ室の加工精度の低下を抑えることができる。以下、射出成形機1の全体構成、シリンダバレル105におけるヒータ109の配列、射出成形機1が奏する効果の順に説明する。
【0017】
[射出成形機1の全体構成]
射出成形機1は、
図1および
図2に示すように、支持部10と、支持部10に支持され、スクリュ101の前後方向への移動およびスクリュ101の回転を担う駆動部30と、スクリュ101を含み、樹脂の射出に関わる射出部100と、を備える。射出成形機1は、第一移動機構50によるスクリュ101およびシリンダ103の前進動作を制御することにより、図示を省略する型締装置の金型に向けて溶融した樹脂を供給する。
射出成形機1において、
図1などにFが記載されている側を前方、Bが記載されている側を後方と定義する。この前方Fおよび後方Bの定義は相対的な意味を含むものとする。また、射出成形機1について、幅方向W、長手方向Lおよび鉛直方向Hが
図1などに示すように定義される。
【0018】
[支持部10:
図1および
図2]
支持部10は、
図1および
図2に示すように、前方Fから後方Bに向けて延びるベッド11と、ベッド11の上に載置される基台13と、基台13の上であって基台13の後方Bの側に設けられる一対のガイドレール15,15と、を備える。
一対のガイドレール15,15は、
図2に示すように、幅方向Wに間隔をあけて基台13の上に固定されている。ガイドレール15,15には、後述する駆動部30の中間プレート61が、前方Fから後方Bに向けて、および、後方Bから前方Fに向けて摺動可能に載せられている。
【0019】
[駆動部30:
図1および
図2]
次に、駆動部30について説明する。
駆動部30は、
図1および
図2に示すように、支持部10の前方Fに設けられる前方支持部40と、前方支持部40よりも後方Bに設けられる中間支持部60と、中間支持部60よりも後方Bに設けられる後方支持部80、を備える。
【0020】
[前方支持部40:
図1および
図2]
前方支持部40は、
図1および
図2に示すように、支持部10の基台13の上に支持され、その位置が固定される。前方支持部40は、シリンダバレル105を支持する。また、前方支持部40は、中間支持部60の前後方向への往復移動を担う第一移動機構50を支持する。
【0021】
前方支持部40は、幅方向Wの中央において前後方向に貫通するプランジャ通路43と、幅方向Wの両端近傍のそれぞれにおいて前後方向に連なる第一支持孔45,45と、が形成される前方プレート41を備える。プランジャ通路43には、スクリュ101およびシリンダ103が前後方向に貫通して配置される。また、第一支持孔45,45は、それぞれにボールねじ51,51が前後方向に貫通し、かつ、回転可能にて配置される。
【0022】
[第一移動機構50:
図2]
第一移動機構50は、中間支持部60を前後方向に往復移動させる。中間支持部60のこの移動は、シリンダ103および後方支持部80の前後方向の往復移動を伴う。
第一移動機構50は、
図2に示すように、一対のボールねじ51,51と、それぞれのボールねじ51,51に回転駆動力を与える電動モータ55,55と、を備える。また、第一移動機構50は、ボールねじ51,51のそれぞれの入力軸52,52に固定される入力プーリ53,53と、電動モータ55,55のそれぞれの出力軸56,56に固定される出力プーリ57,57と、を備える。入力プーリ53,53と出力プーリ57,57の間には、伝達ベルト58,58が巻き回されている。したがって、電動モータ55,55が回転駆動するとボールねじ51,51のボールねじ軸51A,51Aが回転する。
【0023】
それぞれのボールねじ51は、ボールねじ軸51Aと、ボールねじ軸51Aに嵌装されるボールねじナット51Bと、を備える。ボールねじ軸51Aは、前方プレート41の第一支持孔45に図示を省略するベアリングによって回転可能に支持され、ボールねじナット51Bは中間支持部60の第二支持孔65に回転不能に嵌合される。ボールねじナット51Bは、ボールねじ軸51Aの回転によって前後方向に往復移動する。この往復移動はボールねじ軸51Aに対して相対的な移動であるため、ボールねじ軸51Aの回転により、ボールねじナット51Bを嵌合する中間支持部60は、ボールねじナット51Bに生じる前後方向の推力を受けて往復移動する。
【0024】
第一移動機構50が以上のように構成されているので、電動モータ55,55が正回転動作または逆回転動作をすると、中間支持部60が前後方向に往復移動する。この移動は、後方支持部80の移動を伴う。
【0025】
[中間支持部60:
図1および
図2]
次に、中間支持部60について説明する。
中間支持部60は、
図1および
図2に示すように、支持部10のガイドレール15,15に支持され、前後方向に往復移動、つまり前進または後退が可能とされる。中間支持部60は、シリンダ103を回転不能に支持するとともに、一対のボールねじナット51B,51Bを回転不能に支持する。
【0026】
中間支持部60は、
図2に示すように、幅方向Wの中央において前後方向に連なるプランジャ把持孔63と、幅方向Wの両端近傍のそれぞれにおいて前後方向に連なる第二支持孔65,65と、が形成される中間プレート61を備える。プランジャ把持孔63の内側には、スクリュ101およびシリンダ103が前後方向に貫通して配置される。また、第二支持孔65,65のそれぞれにはボールねじナット51B,51Bが回転不能に支持される。ボールねじナット51B,51Bにはボールねじ軸51A,51Aが回転可能に支持される。
【0027】
中間支持部60は、以上のように構成されるので、電動モータ55,55が正回転動作または逆回転動作をすると、シリンダ103を伴って、前後方向に往復移動する。
【0028】
中間プレート61の後端には、第二移動機構90のピストンロッド95の前端が固定される。第二移動機構90は、ピストンロッド95が前後方向への推力を作用させることにより、中間支持部60と後方支持部80の間隔を広くしたり狭くしたりすることができる。
第二移動機構90は、図示を省略する油圧源からシリンダ91に作動油を供給することで、ピストンロッド95を前後方向に往復移動させる。
第二移動機構90は、シリンダ91が後方支持部80に固定される。したがって、第二移動機構90のピストンロッド95を前後方向に往復移動させることにより、中間支持部60と後方支持部80の間隔を広くしたり狭くしたりすることができる。
【0029】
中間プレート61には、
図1に示すように、鉛直方向Hに沿って射出成形の原料である固体状の樹脂を投入する投入口67が形成される。投入口67は、中間プレート61の上面からプランジャ把持孔63まで貫通しており、シリンダ103の投入口104と連なる。
【0030】
中間支持部60は、
図1および
図2に示すように、中間プレート61の下方に連なり、かつ、後方Bに向けて延びる架台68を備える。架台68は、後述する後方支持部80を摺動可能に支持する。したがって、電動モータ55およびボールねじ51の駆動により、中間支持部60が前後方向に往復移動すると、架台68も中間支持部60とともに前後方向に往復移動する。
【0031】
架台68の上には、幅方向Wに間隔をあけて、一対のガイドレール69,69が設けられており、後方支持部80は、このガイドレール69,69の上を前後方向に摺動可能とされる。後方支持部80の前後方向への往復移動の手段が他の手段を採用できることは前述の通りである。
【0032】
[後方支持部80:
図1および
図2]
次に、後方支持部80について説明する。
後方支持部80は、
図1および
図2に示すように、中間支持部60の架台68に前後方向に往復移動が可能に載置される。後方支持部80は、スクリュ101のスクリュ軸101Bを回転可能に支持するのに加えて、スクリュ101の回転機構85と、後方支持部80の前後方向の移動を担う第二移動機構90と、を支持する。
【0033】
後方支持部80は、幅方向Wの中央において前後方向に連なる出力軸83が内蔵される後方プレート81を備える。この出力軸83は、後方プレート81に前後方向に貫通して配置されるとともに図示を省略するベアリングを介して後方プレート81に回転可能に支持される。また、出力軸83は、カップリングによってスクリュ101のスクリュ軸101Bが連結固定される。
【0034】
[回転機構85:
図1および
図2]
回転機構85は、出力軸83を介してスクリュ101を回転させる。
回転機構85は、
図1および
図2に示すように、後方プレート81に支持される電動モータ86と、電動モータ86の出力軸87に固定される出力プーリ88と、を備える。また、回転機構85は、スクリュ軸101Bに連なる出力軸83に固定される入力プーリ110と、出力プーリ88と入力プーリ110の間に掛け回される伝達ベルト89と、を備える。
電動モータ86の回転動作が伝達ベルト89を介して出力軸83に伝えられ、スクリュ101が回転動作をする。なお、回転機構85による駆動力をスクリュ軸101Bに連なる出力軸83に伝達させる手段としてのプーリとベルトは一例にすぎず、平行歯ギア減速機、ヘリカルギア減速機、べベルギア減速機、ハイポイド減速機などの公知の減速機、その他の動力伝達機構を用いても支障ない。
【0035】
[第二移動機構90:
図1および
図2]
第二移動機構90は、後方支持部80を前後方向に往復移動させる。この後方支持部80の往復移動は、架台68のガイドレール69に沿って行われ、かつ、中間支持部60に対する相対的な移動である。
第二移動機構90は、本実施形態においては、第二駆動源としての油圧シリンダから構成され、後方プレート81の幅方向Wの両端に設けられる一対のシリンダ91,91と、シリンダ91,91のそれぞれの内部に配置されるピストン93,93と、ピストン93,93のそれぞれに接続されるピストンロッド95,95と、を備える。それぞれのシリンダ91は、ピストン93より前方Fの第一油室94Fと、ピストン93より後方Bの第二油室94Bと、を備える。第二移動部材としてのピストンロッド95,95は、それぞれの前端が中間プレート61に接続し固定される。
【0036】
第二移動機構90は、以上の構成を備えているので、第一油室94Fに作動油が供給されると、後方プレート81はピストンロッド95からの推力が作用されて前方Fに向けて移動(前進)し、中間支持部60と後方プレート81の間隔が狭くなる。また、第二油室94Bに作動油が供給されると、後方プレート81はピストンロッド95からの推力が作用されて後方Bに向けて移動(後退)し、中間支持部60と後方プレート81の間隔が広くなる。
【0037】
[駆動部30のまとめ]
駆動部30の、前方支持部40、中間支持部60および後方支持部80について説明したが、それぞれについて要旨を以下に示す。
A:前方支持部40
(a)基台13上における固定された位置において、シリンダバレル105を前端において支持するとともに、スクリュ101およびシリンダ103が前後方向に移動可能に貫通する。
(b)中間支持部60の前後方向の移動を担う第一移動機構50を支持する。
B:中間支持部60
(a)シリンダ103を支持しつつ、電動モータ55により前後方向に往復移動する。
(b)後方支持部80を支持する架台68が一体的に設けられている。
C:後方支持部80
(a)スクリュ101と連結した出力軸83を回転可能に支持しつつ、中間支持部60とともに前後方向に往復移動する。また、中間支持部60に対して前後方向に往復移動する。
(b)スクリュ101と連結した出力軸83を回転させる回転機構85を支持する。
(c)中間支持部60に対する相対的な前後方向の往復移動を担う、第二移動機構90を支持する。
【0038】
[射出部100:
図1および
図2]
射出部100は、
図1および
図2に示すように、スクリュ101と、スクリュ101の長手方向Lのほぼ全域を取り囲む筒状のシリンダ103と、を備える。また、射出部100は、前方支持部40よりも前方Fにおいてシリンダ103およびスクリュ101が挿入される筒状のシリンダバレル105と、シリンダバレル105の前端に設けられる射出ノズル107と、を備える。シリンダ103およびシリンダバレル105は、樹脂成形機においてヒータを備えるハウジングの概念に含まれる。
【0039】
スクリュ101は、外周にらせん状に溝が形成される本体101Aと、本体101Aの後端に連なるスクリュ軸101Bと、を備える。スクリュ101は、出力軸83に連結される。出力軸83は後方支持部80を前後方向に貫通し、かつ、後方支持部80に回転可能に支持される。後方支持部80を突き抜けて後方Bに露出する出力軸83の後端部には、後方支持部80の入力プーリ110が固定される。ただし、出力軸83は、前後方向については、後方支持部80に固定される。したがって、スクリュ101は、後方支持部80の前後方向の往復移動に伴って、前後方向に往復移動できる。
【0040】
シリンダ103は、プランジャ把持孔63に嵌合されることで中間支持部60に固定される。したがって、シリンダ103は、中間支持部60の前後方向の往復移動に伴って、前後方向に往復移動できる。
シリンダ103には、射出成形の原料である固体樹脂からなる原料を投入する投入口104が形成される。投入口104は、シリンダ103の内外を貫通している。投入口104は、中間支持部60に形成される投入口67と連通する。
また、シリンダ103は、その前端には、シリンダ103の内部でスクリュ101によって溶融された樹脂が外部に吐出される吐出口103Aを備えている。
シリンダ103の内部に収容されるスクリュ101は、シリンダ103の内部において、前後方向に往復移動できるとともに回転できる。
シリンダ103の周囲にはバンドヒータやカートリッジヒータなどヒータ108が備えられており、図示を省略する電源からヒータ108に電力を投入することにより、シリンダ103の内部の樹脂材料を加熱する。なお、
図1および
図2に示されるヒータ108はシリンダ103の外周に装着、つまり外装されるが、シリンダバレル105に設けられるヒータ109と同様に、シリンダ103に内蔵させることもできる。
【0041】
シリンダバレル105は、前方支持部40に固定される。前方支持部40の位置が基台13に固定されるので、シリンダバレル105もその位置が基台13に固定される。もっとも、シリンダバレル105の内部において、シリンダ103が前後方向に往復移動できるとともに、スクリュ101がシリンダ103の内部で回転可能で前後方向に往復移動できる。
【0042】
シリンダバレル105は、バレル本体105Aと、バレル本体105Aに一体的に形成され、前方プレート41へのシリンダバレル105の固定を担うフランジ105Bと、を備える。シリンダバレル105には、前方Fから後方Bにわたってバレル本体105Aとフランジ105Bを貫通する外形が円形のヒータ室105Cが形成され、このヒータ室105Cにはシリンダ103の前方Fの部分が収容される。なお、
図1および
図2には、シリンダバレル105が備えるヒータ109の記載が省略されるが、後述するように、ヒータ109はフランジ105Bに内蔵される。また、バレル本体105Aとフランジ105Bが本発明における中実部分に対応する。
【0043】
射出ノズル107は、シリンダバレル105の前端に固定される。シリンダバレル105の位置が固定されるので、射出ノズル107もその位置が固定される。
射出ノズル107は、その前端に設けられる射出孔107Aと、射出孔107Aに連なる樹脂通路107Bと、を備える。スクリュ101で可塑化されかつ計量された溶融樹脂は、樹脂通路107Bおよび射出孔107Aを通って、図示を省略される金型のキャビティに射出される。
【0044】
[シリンダバレル105に内蔵されるヒータ109の配列:
図3,
図4,
図5参照]
シリンダバレル105には一例として電熱線を加熱源とするヒータ109が内蔵されており、図示を省略する電源からヒータ109に電力を投入することにより、シリンダバレル105およびシリンダ103の内部の樹脂材料を加熱できる。シリンダバレル105は、以下、
図3~
図5を参照して説明するように、単数または複数のヒータ109の配列に特徴を有する。このヒータ109の配列は、シリンダバレル105の中実部分に形成されるヒータ109を保持する複数のヒータ室105Cの配列に基づいている。
【0045】
シリンダバレル105の中実部であるバレル本体105Aに、真直なヒータ109は以下の第一要素、第二要素、第三要素に従って配列される。なお、
図3~
図5において、ヒータ109が単純な線分で示されており、このヒータ109はヒータ室105Cに内蔵される。
【0046】
第一要素(
図3):ヒータ109が軸方向ADと交差する方向に沿って設けられる
それぞれのヒータ109(ヒータ室105C)は、バレル本体105Aにおける軸方向ADと交差する方向に沿って設けられる。
図3(a)においては、典型的な例として軸方向ADと直交する方向に沿ってヒータ109が形成される。また、
図3(b),(c)に示すように、ヒータ109は、直交以外の任意の角度および任意の向きで軸方向ADと交差することができる。ただし、軸方向ADと交差する角度θが小さくまたは大きくなり軸方向ADと平行に近づきすぎるとヒータ109の全長が長くなり好ましくないので、角度θは45°~90°(または90℃~135°)の範囲が好ましく、60°~90°(または90°~120°)の範囲がより好ましい。なお、
図3は、軸方向ADにおけるヒータ109(ヒータ室105C)の台数が一台の例を示している。
【0047】
第二要素(
図4):軸方向ADにおいて単数または複数のヒータ109が配列
図4には、複数のヒータ109が軸方向ADに間隔を空けて配列される例が示される。その中で、
図4(a)は複数、一例として三台のヒータ109が不均等な間隔で配列される例を示している。
図4(b)は、複数、一例として五台のヒータ109が均等な間隔(L1)で配列される例を示している。三台以上のヒータ109(ヒータ室105C)を備える場合、軸方向ADにおける間隔は、
図4(b)に示すように均等であってもよいし、
図4(a)に示すように不均等であってもよい。あるいは、複数のヒータ群を備える場合、一部のヒータ群の間隔が均等に配置され当該一部のヒータ群を除くその他のヒータ群の間隔が不均等に配置されてもよい。ヒータ群については後述する。また、複数のヒータ室105Cは、周方向CDの位置が一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
さらに、
図4(c)は、三台のヒータ109を備える例を示すが、このヒータ109はU字状の形態を有している。U字状のヒータ109は、一部に真直部分を含むヒータに該当する。U字状のヒータ109であっても、折返部Uを除けば二つ(一対)の真直部分を備えているので、それぞれに対応する一対の真直なヒータ室105Cを設けることにより二つの真直部分を内蔵できる。この場合、それぞれの折返部Uは一対の真直なヒータ室105Cから露出させる。また、三台のヒータ109は、射出成形の際に、異なる加熱温度となるように制御され、それぞれが温度調整ゾーンZ1,Z2,Z3における加熱を担う。
【0049】
第三要素(
図5):周方向CDにおける複数のヒータ109(ヒータ室105C)の配列
図5には、複数のヒータ109が、周方向CDに間隔を空けて配列される例が示される。その中で、
図5(a),(b)は、二つのヒータ109が互いに平行をなしながら周方向CDに沿って配列される。
図5(a)における二つの109は、シリンダバレル105の中心軸Cからの径方向の距離がR1≠R2と不均等であるのに対して、
図5(b)における二つの109は、シリンダバレル105の中心軸Cからの径方向の距離がR1=R1と均等である。
図5(c),(d)は、複数のヒータ109により中空部105Dが取り込まれる配列の例を示している。その中で、
図5(c)には四つのヒータ109により構成され矩形状に配列されたヒータ群109Gが示されており、
図5(d)には三つのヒータ109により構成され三角形状に配列されたヒータ群109Gが示される。
図5(c),(d)のヒータ群109Gを構成するそれぞれのヒータ109は中心軸Cの周りの位相が異なって配列される。
ヒータ109(ヒータ室105C)が周方向CDに沿って二台以上設けられる場合の間隔または位相は、均等であってもよいし、不均等であってもよい。また、複数台のヒータ109(ヒータ室105C)は、軸方向ADの位置が一致していてもよいし、異なってもよい。また、
図5の各ヒータ室105Cは加工が容易な貫通孔にて示されているが、貫通孔ではなく先止まりの穴のヒータ室としてもよい。
【0050】
射出成形機1を構成する
図6および
図7に示されるシリンダバレル105は、第一要素~第三要素について以下の選択がなされており、バレル本体105Aは合わせて八台のヒータ109(ヒータ室105C)を備えている。
第一要素:ヒータ109(ヒータ室105C)が軸方向ADと直交する方向を向いている
第二要素:複数台のヒータ109(ヒータ室105C)が、軸方向ADに均等な間隔を空けて配列されている
第三要素:複数台のヒータ109(ヒータ室105C)が、周方向CDに沿い、かつ、異なる位相で配列されている
【0051】
本実施形態に適用されるヒータ109には、少なくとも一部または全部に真直部分を含むシーズヒータ、カートリッジヒータなどのヒータが適用される。シーズヒータおよびカートリッジヒータは、いずれも渦巻き状に巻き回された電熱線を金属製の管に挿入し、かつ、管の内部を熱伝導性のよい絶縁物、例えば酸化マグネシウム(MgO)で充填している点で共通する。通常、管の両端からリード線が引き出されるものがシーズヒータと称され、管の一端からリード線を引き出されるものがカートリッジヒータと称されている。
【0052】
ここで示されるのは、全体が真直部分からなるヒータ109であるが、
図4(c)に例示されるように本実施形態においては一部に真直部分を含むヒータ109を用いることもできる。つまり、ヒータ室105Cに収容される末端部からヒータ室105Cから露出する部分までのヒータ室105Cの範囲内が真直部分であればよく、ヒータ室105Cから露出している部分は湾曲、屈曲などしていてもよい。また、ヒータ109の横断面の形状は、典型的には円形であるが、矩形、その他の多角形の横断面形状を有するヒータを用いることもできる。
【0053】
[射出成形機1の動作:
図8および
図9]
次に、
図8および
図9を参照して、射出成形機1の動作を説明する。ここで説明する射出成形機1の動作は、以下を含んでいる。以下の射出動作の過程の適時に、ヒータ108,109が加熱される。
図8(a):可塑化・計量の準備(樹脂流路開動作)
図8(b):可塑化・計量(溶融樹脂吐出)
図9(a):射出の準備(樹脂流路閉動作)
図9(b):射出(キャビティへの樹脂充填)
【0054】
[可塑化・計量の準備(樹脂流路開動作):
図8(a)]
図8(a)に示すように、シリンダ103の吐出口103Aからスクリュ101を微小量のストロークだけ後退させて、吐出口103Aを開口させる。そうすると、スクリュ101の先端とシリンダ103の間にシリンダ103の内部とシリンダバレル105を連通させる樹脂流路が形成され、シリンダバレル105の内部への溶融樹脂の供給が可能になる。この後、シリンダ103の内部で可塑化された溶融樹脂をシリンダバレル105の内部に流入させることにより、シリンダ103が後退して金型のキャビティに充填する溶融樹脂の計量を行うことができる。樹脂流路を形成するには、第二移動機構90を動作させて、後方支持部80を中間支持部60に対して後退させる。つまり、後方支持部80が後退することにより、後方支持部80の後方プレート81に連結されるスクリュ101が後退する。
この時点で、中間支持部60および後方支持部80は、最も前進した位置、つまり前進限または前進限近傍の所定位置に置かれている。
【0055】
[可塑化・計量(溶融樹脂吐出):
図8(b)]
次に、スクリュ101を回転することにより、樹脂原料を可塑化させる。この前提として、投入口67,104から所定量の樹脂原料が投入さていれる。スクリュ101の回転は、電動モータ86を駆動させることにより実現される。このときのスクリュ101および電動モータ86の回転の向きを正転とする。
【0056】
スクリュ101が回転するのと同期してまたは単独で、第一移動機構50の電動モータ55を回転させる。この回転を正転とする。電動モータ55が正転すると、中間支持部60および後方支持部80が一緒に後退する。中間支持部60の架台68に後方支持部80が載置されているからである。中間支持部60と後方支持部80の後退に伴って、スクリュ101およびシリンダ103が後退する。この一連の動作により、可塑化され溶融状態となった樹脂が、シリンダバレル105の内部に吐出されながらシリンダバレル105の内部に貯留されていく。スクリュ101およびシリンダ103の後退位置を特定することにより、吐出される溶融樹脂の量を特定(計量)できる。所定量が計量できたならば、スクリュ101の回転は停止され、かつ、第一移動機構50の後退動作は停止される。
【0057】
図8(b)は、シリンダ103が上記の一連の過程において、溶融樹脂の計量が完了した位置、つまりシリンダ103の計量完位置に置かれている。この計量完位置において、架台68の後方Bの部分は基台13から後方Bに突き出し、片持ち状となる状態で示してある。なお、片持ち状は、後退限の位置にたどり着く途中から生じる。
【0058】
[射出準備(樹脂流路閉動作):
図9(a)]
次に、射出動作に備えて、スクリュ101を微小量だけ前進させシリンダ103の吐出口103Aに当接させて、
図9(a)に示すように、これまで形成されていた樹脂流路を閉じる。この動作は、先に説明した可塑化・計量の準備と逆の動作であり、第二移動機構90を動作させることにより、後方支持部80を中間支持部60に向けて微小量だけ前進させる。
【0059】
[射出(キャビティへの樹脂充填):
図9(b)]
樹脂流路が閉じたなら、スクリュ101とシリンダ103を前進させることで、金型のキャビティへの溶融樹脂の充填のための射出を行う。
このとき、電動モータ55を逆転させることにより、中間支持部60および後方支持部80を前進させる。そうすると、スクリュ101がシリンダ103とともに前進するので、シリンダバレル105の内部においてスクリュ101よりも前方Fに蓄えられていた溶融樹脂がノズルから図示を省略する金型のキャビティに向けて射出される。このとき、射出圧力に押されてスクリュ101がシリンダ103の前端部分に対して後退しようとする。しかし、吐出口103Aが開口してシリンダバレル105の内部の溶融樹脂がシリンダ103の内部に逆流しないように、スクリュ101には第二移動機構90により前進方向に押し圧が加えられている。
シリンダ103が所定位置まで前進すると、一つのサイクルのキャビティへの溶融樹脂の充填は終了する。その後、次のサイクルの準備が行われる。
【0060】
[効 果]
以下、射出成形機1が奏する効果を説明する。
<第一の効果:ヒータ109の交換作業の容易性>
ヒータ109は、シリンダバレル105の軸方向ADに交差する向きのヒータ室105Cに内蔵される。シリンダバレル105の径方向の周囲の空きスペースは比較的に広いため、ヒータ109をこの空きスペースを使って交換作業を容易に行うことができる。
【0061】
シリンダバレル105は、後方Bにおいて前方プレート41と接合され、また、前方Fにおいて射出ノズル107と接合されるので、そのままではヒータ109を交換するスペースがない。したがって、仮にヒータ室105Cが軸方向ADに設けられているとすると、ヒータ109を挿抜して交換するには、シリンダバレル105を前方プレート41から取り外す、または、射出ノズル107をシリンダバレル105から取り外す必要があり、作業性が悪い。
【0062】
これは、ヒータ108が仮にシリンダ103の軸方向ADに内蔵される場合も同様である。つまり、シリンダ103の後方(R)の側には電動モータ86を含む駆動部30が設けられており、シリンダ103と駆動部30の間の空きスペースが狭いために、ヒータ108の交換作業性が悪い。シリンダ103の前方Fの側はシリンダバレル105に包囲されるため、ヒータ108の交換作業性が悪い。これに対して、
図1および
図2に示されるヒータ108が設けられる領域であってシリンダ103の軸方向ADに交差するようにヒータ室を設ければ、その周囲には空きスペースが確保されるため、ヒータ108の交換作業性はよい。
【0063】
<第二の効果:ヒータ室105Cの高加工精度>
バレル本体105Aに設けられるヒータ室105Cは、軸方向ADに交差する向きに空けられている。したがって、ヒータ室105Cの細長比は小さくかつその全長を短く抑えることができる。したがって、ヒータ室105Cの加工が容易であることから加工精度は高い。
【0064】
シリンダバレル105は軸方向ADの寸法が大きく長尺であり、仮に軸方向ADにヒータ室を設けるには、細長比の大きくかつ長尺のヒータ室を穿孔により形成する必要がある。この場合、細長比の大きくかつ長尺なドリルなどの加工具を用いることになるが、細長比が大きいと加工時に加工具に揺れや振れが発生しやすい。そうすると、ヒータ室の加工時に孔が曲がる、蛇行するなどして加工精度が低くなりヒータの円滑な嵌装ができなくなるおそれがある。
【0065】
<第三の効果:温度調整ゾーンにおける加熱精度の向上>
シリンダバレル105における複数のヒータ109による成形運転時の加熱温度は、軸方向ADにおいて一定とは限らない。例えば、
図4(c)に示すように、軸方向ADにおいて、複数の温度調整ゾーン(Z1~Z3)を設定し、それぞれの温度調整ゾーン(Z1~Z3)で異なる加熱温度にすることがある。これは、シリンダ103におけるヒータ108においても同様である。
ヒータ109を軸方向ADに交差、典型的には直交する方向に内蔵できるシリンダバレル105は、それぞれの温度調整ゾーンに対応して、個別にかつ独立して加熱温度を調整するのに十分な台数だけヒータ109を配列、内蔵することができるので、それぞれの温度調整ゾーンの軸方向ADの範囲を短く設定しても高精度に制御することができる。
【0066】
以上に対して、仮にヒータ109を軸方向ADと平行に備える場合、一台のヒータ109が担う温度調整ゾーンが長くなってしまうので、温度調整ゾーンの軸方向ADの範囲を短く設定することが難しい。温度調整ゾーンが2つ程度であればよいが、温度調整ゾーンが3つ以上と多くすることが必要な場合、ヒータ109を長手方向に分割しなければならなくなるので軸方向ADと平行なヒータ109の配列では対応することができない。
また、軸方向ADと平行にヒータ109を設けるには、周方向CDにおいては円周方向に並んだ複数のヒータ室(105C)に内蔵させるが、この場合、それぞれのヒータ室(105C)を各温度調整ゾーンと対応させることができる。これによると小径のヒータ室105Cの場合、周方向CDにヒータ室(105C)を配列できる数は少ないので、温度調整ゾーンを多くしたい場合、それぞれの温度調整ゾーンに対応するヒータ室105Cの数が少なくなる。この結果、それぞれの温度調整ゾーンを加熱するヒータ109の数も少なくなってしまい、それぞれの温度調整ゾーンの加熱が不十分となったり不均等となったりしてそれぞれ温度調整ゾーンの加熱精度が低下して温調不良が発生するおそれがある。
【0067】
<第四の効果:周方向CDにおける加熱ムラ低減>
シリンダバレル105は、複数のヒータ109を周方向CDの位相を変えて備えることで、樹脂通路107Bを取り囲むことができる。したがって、シリンダバレル105は、樹脂通路107Bに貯留される溶融樹脂を周方向CDの全域から加熱することができるので、周方向CDにおける加熱温度のずれ、つまり加熱ムラを生じさせないか、生じたとしても微小に抑えることができる。これは、シリンダ103においても同様に当てはまる。これによりシリンダバレル105の昇温および熱膨張が設計の想定通りに行われて、予期しない部材の破損や故障、具体的には中心軸Cに対してシリンダバレル105が意図しない方向に偏った曲がり変形が発生することを防止できるので、シリンダバレル105に内蔵されたシリンダ103またはスクリュ101の摺動部における齧り摩耗(凝着摩耗)などのトラブルの防止が可能である。
【0068】
以上に対して、仮に複数のヒータ室105Cおよび複数のヒータ109を軸方向ADに形成したとする。樹脂通路107Bの周方向CDを取り囲むほどの多数のヒータ109を設ければ、周方向CDにおける加熱ムラを抑えることができるが、現実的には周方向CDに均等間隔で設けることのできるヒータ109の台数には限界がある。このヒータ109の配列では、ヒータ109とヒータ109の間の領域の加熱温度はどうしても低くなるので、周方向CDに加熱ムラが生じやすい。
【0069】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態においては、シリンダ103およびシリンダバレル105のうち、ヒータ109を備えるシリンダバレル105についてヒータ109を軸方向ADに対して交差する方向に沿って設ける例を示した。しかし、すでに述べたように、シリンダバレル105と同様に本発明におけるハウジングに対応するシリンダ103についてもヒータ108を軸方向ADに対して交差する方向に沿って設けることができる。さらに、シリンダ103およびシリンダバレル105の他のヒータを備えるハウジングについても、軸方向ADに対して交差する方向に沿って当該ヒータを設けることもできる。
また本実施形態においては、あくまで本発明の一例として、シリンダバレル105に内挿された、スクリュ101とシリンダ103を前進させることで、金型のキャビティへの溶融樹脂の充填のための射出を行う特殊な射出装置構造のシリンダバレル105の加熱用としてヒータ109を適用した例を示した。しかしこれに留まらないことは言うまでもなく、一般的な構造を有する押出成形機または射出成形機(例えばインライン式射出成形機)において可塑化スクリュを内挿するシリンダの加熱用に本発明のヒータを適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 射出成形機
10 支持部
11 ベッド
13 基台
15 ガイドレール
30 駆動部
40 前方支持部
41 前方プレート
43 プランジャ通路
45 第一支持孔
50 第一移動機構
51A ボールねじ軸
51B ボールねじナット
52 入力軸
53 入力プーリ
55 電動モータ
56 出力軸
57 出力プーリ
58 伝達ベルト
60 中間支持部
61 中間プレート
63 プランジャ把持孔
65 第二支持孔
67,104 投入口
68 架台
69 ガイドレール
80 後方支持部
81 後方プレート
83 出力軸
85 回転機構
86 電動モータ
87 出力軸
88 出力プーリ
89 伝達ベルト
90 第二移動機構
91 シリンダ
93 ピストン
94B 第二油室
94F 第一油室
95 ピストンロッド
96 第一規制体
100 射出部
101 スクリュ
101A 本体
101B スクリュ軸
103 シリンダ
103A 吐出口
104 投入口
105 シリンダバレル
105A バレル本体(ハウジング本体)
105B フランジ
105C ヒータ室
105D 中空部
106 カップリング
107 射出ノズル
107A 射出孔
107B 樹脂通路
108,109 ヒータ
110 入力プーリ