(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003592
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】オイル交換判定報知装置及び作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 21/041 20190101AFI20240105BHJP
F16H 61/40 20100101ALI20240105BHJP
【FI】
F15B21/041
F16H61/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102828
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直之
【テーマコード(参考)】
3H082
3J053
【Fターム(参考)】
3H082AA15
3H082AA21
3H082CC02
3H082DA01
3H082DA16
3H082DA41
3H082DB20
3H082DB26
3H082DB28
3H082DB35
3H082DE05
3H082EE01
3H082EE07
3H082EE17
3J053AA03
3J053AB44
3J053EA01
(57)【要約】
【課題】オイルの交換時期を適切に判定して、オイルが交換時期であることを報知することができるオイル交換判定報知装置を提供する。
【解決手段】オイル交換判定報知装置は、油圧駆動装置を作動させるオイルの交換時期を判定し報知するオイル交換判定報知装置であって、オイルの密度、油温を取得する取得部と、取得部が取得した密度を、油温が所定温度における密度に演算する演算部と、演算部で演算された密度に基づいてオイルを交換すべき時期を判定する判定部と、判定部でオイルが交換すべき時期であると判定された場合に、オイルの交換時期であることを報知する報知装置と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動装置を作動させるオイルの交換時期を判定し報知するオイル交換判定報知装置であって、
前記オイルの密度、油温を取得する取得部と、
前記取得部が取得した密度を、油温が所定温度における密度に演算する演算部と、
前記演算部で演算された密度に基づいて前記オイルを交換すべき時期を判定する判定部と、
前記判定部で前記オイルが交換すべき時期であると判定された場合に、前記オイルの交換時期であることを報知する報知装置と、
を備えたオイル交換判定報知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記演算部で演算された密度が予め設定された下限閾値を下回った場合に、前記オイルに気泡が混入したと判断し、
前記報知装置は、前記判定部によって前記オイルに気泡が混入したと判断された場合に、前記オイルに気泡が混入した旨と、機械のメンテナンスの提案とを報知する請求項1に記載のオイル交換判定報知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記演算部で演算された密度を基に前記オイルの密度を定量評価することにより、前記オイルを交換すべき時期及び前記オイルを交換すべき理由を判定する請求項1に記載のオイル交換判定報知装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記演算部で演算された密度が予め設定された上限閾値を超えた場合に、前記オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加と判断して、前記オイルを交換すべき時期であると判定し、
前記報知装置は、前記オイルを交換すべき理由が前記オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加である旨と、前記オイルの交換時期である旨とを報知する請求項1に記載のオイル交換判定報知装置。
【請求項5】
前記演算部で演算された密度の分散を算出する分散算出部を備え、
前記判定部は、前記分散算出部で算出された密度の分散が予め設定された上限閾値を超えた場合に、消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加と判断して、前記オイルが交換すべき時期であると判定し、
前記報知装置は、前記オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨と、前記オイルの交換時期である旨とを報知する請求項1に記載のオイル交換判定報知装置。
【請求項6】
前記オイルの油温が予め定められた温度範囲で降下した場合の、油温-密度の関係データを記録する記録部と、
前記記録部に記録した油温-密度の関係データに対して線形回帰を行って温度依存係数を算出する係数算出部と、
を備え、
前記演算部は、前記温度依存係数を用いて、前記取得部が取得した密度を、前記所定温度における密度に演算する請求項1に記載のオイル交換判定報知装置。
【請求項7】
前記オイルの密度、油温を計測する計測センサを備え、
前記取得部は、前記計測センサから密度、油温を取得し、
前記演算部は、前記計測センサから得られる油温における密度を、前記所定温度における密度に演算する請求項1に記載のオイル交換判定報知装置。
【請求項8】
請求項1に記載されたオイル交換判定報知装置及びギヤ式変速装置を備えた作業機械であって、
前記オイルは、前記ギヤ式変速装置の潤滑油を兼用したものである作業機械。
【請求項9】
静油圧式無段変速装置と、
前記静油圧式無段変速装置のチャージ回路に前記オイルを供給する供給管路と、
前記供給管路に設けられたオイルフィルタと、
すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、
を備え、
前記計測センサは、前記供給管路における前記オイルフィルタの上流側又は下流側を流れるオイルの前記計測を行う請求項8に記載の作業機械。
【請求項10】
静油圧式無段変速装置と、
前記静油圧式無段変速装置のチャージ回路に前記オイルを供給する供給管路と、
前記供給管路からの戻りのオイルが流れる戻り管路と、
前記戻り管路に設けられたオイルクーラと、
すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、
を備え、
前記計測センサは、前記戻り管路における前記オイルクーラの上流側又は下流側を流れるオイルの前記計測を行う請求項8に記載の作業機械。
【請求項11】
操向輪と、
前記操向輪を操向操作するステアリングシリンダと、
前記オイルが供給され前記ステアリングシリンダを操作する油圧コントローラと、
すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、
を備え、
前記計測センサは、前記油圧コントローラに供給されるオイル又は前記油圧コントローラから戻るオイルの前記計測を行う請求項8に記載の作業機械。
【請求項12】
車体と、
前記車体に装着されるインプルメントを昇降する昇降シリンダと、
前記オイルが供給され前記昇降シリンダを制御する昇降制御弁と、
すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、
を備え、
前記計測センサは、前記昇降制御弁から排出されるオイル又は前記昇降制御弁に供給されるオイル或いは前記昇降シリンダから戻るオイルの前記計測を行う請求項8に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル交換判定報知装置及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルの交換時期を推定することのできる作業機械として、特許文献1に開示された作業機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、オイルの交換時期を適切に判定する点で考慮の余地があった。
本発明は、オイルの交換時期を適切に判定して、オイルが交換時期であることを報知することができるオイル交換判定報知装置及び作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るオイル交換判定報知装置は、油圧駆動装置を作動させるオイルの交換時期を判定し報知するオイル交換判定報知装置であって、前記オイルの密度、油温を取得する取得部と、前記取得部が取得した密度を、油温が所定温度における密度に演算する演算部と、前記演算部で演算された密度に基づいて前記オイルを交換すべき時期を判定する判定部と、前記判定部で前記オイルが交換すべき時期であると判定された場合に、前記オイルの交換時期であることを報知する報知装置と、を備えている。
【0006】
前記判定部は、前記演算部で演算された密度が予め設定された下限閾値を下回った場合に、前記オイルに気泡が混入したと判断し、前記報知装置は、前記判定部によって前記オイルに気泡が混入したと判断された場合に、前記オイルに気泡が混入した旨と、機械のメンテナンスの提案とを報知するようにしてもよい。
前記判定部は、前記演算部で演算された密度を基に前記オイルの密度を定量評価することにより、前記オイルを交換すべき時期及び前記オイルを交換すべき理由を判定するようにしてもよい。
【0007】
前記判定部は、前記演算部で演算された密度が予め設定された上限閾値を超えた場合に、前記オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加と判断して、前記オイルを交換すべき時期であると判定し、前記報知装置は、前記オイルを交換すべき理由が前記オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加である旨と、前記オイルの交換時期である旨とを報知するようにしてもよい。
【0008】
オイル交換判定報知装置は、前記演算部で演算された密度の分散を算出する分散算出部を備え、前記判定部は、前記分散算出部で算出された密度の分散が予め設定された上限閾値を超えた場合に、消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加と判断して、前記オイルが交換すべき時期であると判定し、前記報知装置は、前記オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨と、前記オイルの交換時期である旨とを報知するようにしてもよい。
【0009】
オイル交換判定報知装置は、前記オイルの油温が予め定められた温度範囲で降下した場合の、油温-密度の関係データを記録する記録部と、前記記録部に記録した油温-密度の関係データに対して線形回帰を行って温度依存係数を算出する係数算出部と、を備え、前記演算部は、前記温度依存係数を用いて、前記取得部が取得した密度を、前記所定温度における密度に演算するようにしてもよい。
【0010】
オイル交換判定報知装置は、前記オイルの密度、油温を計測する計測センサを備え、前記取得部は、前記計測センサから密度、油温を取得し、前記演算部は、前記計測センサから得られる油温における密度を、前記所定温度における密度に演算するようにしてもよい。
本発明の一態様に係る作業機械は、前記オイル交換判定報知装置及びギヤ式変速装置を
備えた作業機械であって、前記オイルは、前記ギヤ式変速装置の潤滑油を兼用したものである。
【0011】
作業機械は、静油圧式無段変速装置と、前記静油圧式無段変速装置のチャージ回路に前記オイルを供給する供給管路と、前記供給管路に設けられたオイルフィルタと、すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、を備え、前記計測センサは、前記供給管路における前記オイルフィルタの上流側又は下流側を流れるオイルの前記計測を行うようにしてもよい。
【0012】
作業機械は、静油圧式無段変速装置と、前記静油圧式無段変速装置のチャージ回路に前記オイルを供給する供給管路と、前記供給管路からの戻りのオイルが流れる戻り管路と、前記戻り管路に設けられたオイルクーラと、すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、を備え、前記計測センサは、前記戻り管路における前記オイルクーラの上流側又は下流側を流れるオイルの前記計測を行うようにしてもよい。
【0013】
作業機械は、操向輪と、前記操向輪を操向操作するステアリングシリンダと、前記オイルが供給され前記ステアリングシリンダを操作する油圧コントローラと、すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、を備え、前記計測センサは、前記油圧コントローラに供給されるオイル又は前記油圧コントローラから戻るオイルの前記計測を行うようにしてもよい。
【0014】
作業機械は、車体と、前記車体に装着されるインプルメントを昇降する昇降シリンダと、前記オイルが供給され前記昇降シリンダを制御する昇降制御弁と、
すくなくとも前記取得部が取得する前記オイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサと、を備え、前記計測センサは、前記昇降制御弁から排出されるオイル又は前記昇降制御弁に供給されるオイル或いは前記昇降シリンダから戻るオイルの前記計測を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成によれば、オイルの密度を、油温が所定油温における密度に演算し、この演算された密度に基づいてオイルを交換すべき時期を判定するので、オイルの交換時期を適切に判定して、オイルが交換時期であることを報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】オイル交換判定報知装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図8】密度の分散と時間との関係を示すグラフである。
【
図10】計測センサの設置場所を示す回路図である。
【
図11】計測センサの設置場所を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機械1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業機械1としてトラクタが例示されている。
図1に示すように、トラクタ1は、車体2と、車体2の前部を支持する前部フレーム3の左及び右に配備された前輪4と、車体2の後部の左及び右に配備された後輪5と、車体2の上方に配備されていてステアリングホイール6やオペレータが着座する運転席7などを備えた運転部8とを有している。
【0018】
車体2の後部には、作業機昇降用油圧装置9及び動力取出軸(PTO軸という)10が設けられている。作業機昇降用油圧装置9は、車体2の後部に三点リンク機構等の連結機
構を介して昇降可能に装着されるインプルメントを昇降させる装置である。PTO軸10は、トラクタ1からインプルメントに動力を伝達すべく、トラクタ1の動力を取り出すための軸である。
【0019】
車体2は、前部フレーム3に支持されるエンジン(原動機)11と、該エンジン11の後部に連結されたハウジングケース12と、該ハウジングケース12の後部に連結されたミッションケース13とを有している。ハウジングケース12には、エンジン11のクランクシャフトの回転を安定させるフライホイール14や、フライホイール14からの動力を断続可能に伝達する主クラッチ15などが収容されている。
【0020】
ミッションケース13は、静油圧式無段変速装置(HSTという)16を収容する第1ケース17と、ギヤ式変速装置18を収容する第2ケース19とを連結して構成されている。HST16は、主クラッチ15からの動力をギヤ式変速装置18に伝達する。ギヤ式変速装置18は、走行系の変速装置及びPTO系の変速装置を有している。走行系変速装置は、HST16から出力される動力を後輪用差動装置に伝達すると共に後輪用差動装置を介して後輪5(駆動輪)に伝達する。PTO系変速装置は、HST16によって変速される前の、主クラッチ15からの動力をPTO軸10に伝達する。つまり、HST16は、ギヤ式変速装置18における走行系変速装置に動力を伝達し、PTO系変速装置には動力を伝達しない。
【0021】
第2ケース19内には、ギヤ式変速装置18や後輪用差動装置などを潤滑する潤滑油であるミッションオイル(オイル)が貯留されている。トラクタ1では、このオイルを、当該トラクタ1に装備された油圧駆動装置を作動する作動油として兼用している。つまり、トラクタ1には、油圧で駆動される油圧駆動装置が搭載され、この油圧駆動装置を作動する作動油としてミッションオイルが使用されている。第2ケース19は、オイルが貯留されるオイルタンク(オイル貯留部)である。
【0022】
図2は、トラクタ1の油圧システム(油圧回路)を示している。
油圧システムは、ミッションオイル兼用のオイル(油圧)によって駆動される、パワーステアリング装置21、HST16、作業機昇降用油圧装置9及びクラッチ作動装置22などの油圧駆動装置を具備している。また、油圧システムは、第2ケース19に貯留されたオイルを吸い込んで吐出する複数の油圧ポンプ23を備えている。複数の油圧ポンプ23は、第1ポンプ23A、第2ポンプ23B及び第3ポンプ23Cを含む。第1ポンプ23A、第2ポンプ23B及び第3ポンプ23Cは、エンジン11によって駆動される定容量型油圧ポンプによって構成されている。なお、油圧ポンプは少なくとも1つあればよい。
【0023】
パワーステアリング装置21は、左及び右の前輪4(操向輪)を操向操作するステアリングシリンダ24と、ステアリングシリンダ24を操作する油圧コントローラ25とを有している。油圧コントローラ25は、ステアリングホイール6によって操作されてオイルの方向を切り替えるステアリングバルブ26と、ステアリングホイール6の回転の度合いに応じた油量を計量してステアリングシリンダ24に供給するメータリングポンプ27と、リリーフ弁28と、チェック弁29とを有している。油圧コントローラ25(ステアリングバルブ26)には、第2ポンプ23Bから吐出するオイルが供給される。
【0024】
HST16は、斜板形可変容量ポンプ(HSTポンプという)31と、HSTポンプ31と一対の変速用油路32a,32bにより閉回路接続されていてHSTポンプ31からの吐出油によって駆動されることにより動力を出力するHSTモータ33とを有している。また、HST16は、HSTポンプ31の斜板を制御するサーボシリンダ34と、サーボシリンダ34を制御する斜板制御弁35と、一対の変速用油路32a,32bにオイルを補充するためのチャージ回路36とを有している。チャージ回路36には、第3ポンプ23Cから吐出するオイルが供給管路37を介して供給される。供給管路37には、オイルフィルタ(HSTフィルタ)38が設けられている。また、供給管路37には、当該供給管路37から第2ケース19に戻るオイルが流れる戻り管路39が接続されている。戻り管路39には、リリーフ弁40及び該リリーフ弁40の下流側に設置されるオイルクーラ41が設けられている。
【0025】
一方、オイルフィルタ38を通過した、供給管路37を流れるオイルは、圧力補償弁42を介して、斜板制御弁35とクラッチ作動装置22とに分岐して供給される。
作業機昇降用油圧装置9は、油圧ケース43と、該油圧ケース43の左及び右に配備されたリフトアームを昇降させる昇降シリンダ44と、昇降シリンダ44を制御する昇降制御弁45と、連結機構に連結されるインプルメントの下降速度を制御する下降速度調整弁68と、昇降シリンダ44用の安全弁46とを有している。作業機昇降用油圧装置9(昇降制御弁45)には、第1ポンプ23Aから吐出するオイルが供給される。
【0026】
リフトアームは、連結機構(三点リンク機構)にリフトロッドを介して連結される。昇降シリンダ44は、単動型油圧シリンダから構成され、オイルが供給されることでリフトアームを上方に揺動させ、オイルが排出することによりリフトアームを下方に揺動させる。リフトアームが昇降することにより連結機構が昇降されて、インプルメントが昇降する。つまり、昇降シリンダ44は、車体2に装着されるインプルメントを昇降する油圧シリンダである。昇降制御弁45は、メインスプール弁69を備えている。メインスプール弁69は、第1ポンプ23Aから供給されるオイルを昇降シリンダ44に供給する位置と、昇降シリンダ44から排油されたオイルを下降速度調整弁68及びシャットオフ弁70を介して第2ケース19に戻す位置と、第1ポンプ23Aから供給されるオイルを第2ケース19に戻すと共に昇降シリンダ44からオイルを排油させない位置とに切り換え可能である。
【0027】
クラッチ作動装置22は、PTO系の変速機構の動力伝達を断続するクラッチを操作する装置であって、クラッチを操作するクラッチ操作シリンダ20と、クラッチ操作シリンダ20を操作するクラッチ操作弁30とを有している。
ところで、オイルに気泡が混入したり、オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミ(摩耗粉、水分)が増加したりすることによりオイルが劣化し、機械に問題を引き起こす懸念がある。また、オイルの劣化に伴い、消泡性能が低下し、機械に問題を引き起こすことが懸念されている。このオイルの劣化に起因する機械の故障等を防ぐため、市場調査や台上試験、実車試験等の再現試験を行ってオイルの交換時期の推奨時間を定めているが、機械の個体差や、ユーザーの使用条件や、使用環境等によって、オイルの劣化度合いが異なるため、オイルの使用時間でオイルの適切な交換時期を判断するのは難しい。
【0028】
そこで、本実施形態のトラクタ1にあっては、適切なオイルの交換時期を判定し、オイルの交換時期であることをオペレータに報知することのできるオイル交換判定報知装置47(
図3参照)を具備している。
図3に示すように、オイル交換判定報知装置47は、計測センサ48、判定装置49及び報知装置50を備えている。
計測センサ48は、オイルの密度、油温を計測する。詳しくは、計測センサ48は、複数のセンサで構成され、オイルの密度を計測する密度センサ48Aと、オイルの油温を計測する温度センサ48Bとを含む。
【0029】
なお、計測センサ48は、単一のセンサで密度、油温を計測するもの(単一のセンサボディに密度及び油温を計測する機能を有するもの)であってもよい。
計測センサ48の設置場所としては、安定した計測を図るため、及びオイルを常時監視するために、油圧系統を循環するオイルの流れがあり、且つオイルの圧力(油圧)がセンサ稼動に問題のない範囲に保たれていることが望ましい。また、計測センサ48の設置場所は、油圧コンポーネントをつなぐ管路の途中が妥当であるといえる。
【0030】
図2に、計測センサ48の設置場所の一例を符号A1で示す。
図2に示すように、本実施形態では、計測センサ48(密度センサ48A、温度センサ48B)は、供給管路37における、第3ポンプ23Cとオイルフィルタ38との間の管路37aに設けられている。詳しくは、計測センサ48は、オイルフィルタ38の上流側且つ近傍位置に設けられていて、オイルフィルタ38の上流側を流れるオイルの密度及び油温を計測する。オイルフィルタ38付近には、リリーフ弁40が設けられていることが多く、計測センサ48の設置に適していると言える。また、計測センサ48をオイルフィルタ38の上流側に設けることで、計測センサ48が破損した場合に、破片が油圧回路内を流れて油圧機器に至り、該油圧機器を傷つけるという虞がないという利点がある。また、オイルフィルタ38の付近は計測センサ48の取り付けが容易に行えるという利点もある。
【0031】
判定装置49は、例えば、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを利用して構成してある。判定装置49には、密度センサ48A及び温度センサ48Bが接続されていて、密度センサ48Aにより計測された密度及び温度センサ48Bにより計測された油温が判定装置49に入力される。
判定装置49は、取得部51、演算部52、記憶部53、判定部54、出力部55、分散算出部76、記録部56及び係数算出部57を有している。
【0032】
取得部51は、オイルの密度、油温を取得する。詳しくは、取得部51は、計測センサ48(密度センサ48A、温度センサ48B)から得られる密度、油温を取得する。
計測センサ48から得られる密度及び油温は、計測した値そのものであってもよいし、計測した値そのものではなく、計測した値に対して端数処理を施して丸めた値(近似値)であってもよい。
演算部52は、取得部51が取得した密度を、油温が所定温度における密度に演算する。言い換えると、温度センサ48Bから得られる油温における、密度センサ48Aから得られる密度を、油温が所定温度(例えば、100°C)における密度に換算する。なお、所定温度は、100°Cに限定されることはない。
【0033】
ところで、オイルの密度等の物性値は温度に対して線形に依存(比例)するが、その係数はオイルロットの違いなどによりばらつく可能性があるため、随時計算することが望ましい。その際、オイルに混入するコンタミ(異物)や機器の稼働状況の違いがノイズになりうるが、短時間に大きな温度変化が起きる際のデータを用いることでこれを解消する。つまり、オイルの物性値を精度よく推定するため、演算部52は、オイルの油温が予め定められた温度範囲で降下した場合の、油温-密度の関係データから求められる温度依存係数を用いて密度センサ48Aから得られる密度を、所定温度における密度に演算する。
【0034】
例えば、エンジン11の停止直後など、油温が急激に降下(温度変化)する際の、油温-密度の関係データを記録し、この関係データに対して線形回帰を行って温度依存係数を算出し、この温度依存係数を用いて、密度センサ48Aから得られる密度を、所定温度における密度に演算する。
また、作業中のオイルの油温は、例えば、約50°C~約80°Cの温度範囲で変化する。また、オイルの密度は温度によって値が変わるので、オイルの交換時期及び交換の理由を判定するための密度を同じ温度における密度にするために、演算部52は、計測センサ48から得られる油温における密度を、例えば、油温が100°Cであるとした場合の密度(100°C密度)に換算する。
【0035】
記憶部53は、オイルへの気泡の混入を判断する基準となる、密度の下限閾値と、オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加の判断の基準となる、密度の上限閾値と、オイルの消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加を判断する基準となる、密度の分散の上限閾値と、を予め記憶している。
密度の閾値(下限閾値、上限閾値)、密度の分散の閾値(上限閾値)は、例えば、事前に用意した台上試験の結果などから物理量で定められる。つまり、密度の閾値、密度の分散の閾値は、台上試験における100°C密度のデータを基に決定される。この密度の閾値(下限閾値、上限閾値)、密度の分散の閾値は、新油時からの相対変化量で定めてもよい。
【0036】
酸化とは、オイルが空気中の酸素と反応して起こる変化であり、コンタミとは、オイルに混入する摩耗粉(金属摩耗粉)や水分等の異物のことを意味する。
判定部54は、演算部52で演算された密度(100°C密度)に基づいてオイルを交換すべき時期を判定する。詳しくは、100°C密度が上限閾値を超えた場合、又は100°C密度の分散が上限閾値を超えた場合にオイルを交換すべき時期であると判定する。
【0037】
また、判定部54は、演算部52で演算された密度(100°C密度)に基づいてオイルを交換すべき理由を判定する。詳しくは、判定部54は、100°C密度が上限閾値を超えた場合に、オイルを交換すべき時期の判定の理由が、オイルの酸化、及び/又はオイ
ルに混入したコンタミの増加であると判断し、100°C密度の分散が上限閾値を超えた場合に、オイルを交換すべき時期の判定の理由が、消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加であると判断する。
【0038】
即ち、判定部54は、演算部52で演算された密度を基にオイルの劣化を定量評価することにより、オイルを交換すべき時期及びオイルを交換すべき理由を判定する。
また、判定部54は、演算部52で演算された密度(100°C密度)に基づいてオイル交換判定報知装置47を搭載した機械(オイル)をメンテナンスすべきであることを判定する。詳しくは、判定部54は、100°C密度が下限閾値を下回った場合に、オイルに気泡が混入したと判断し、機械のメンテナンスをすべきであると判定する。
【0039】
出力部55は、判定部54でオイルが交換すべき時期であると判定された場合に、オイルの交換時期である旨の信号(報知信号)を報知装置50に出力する。また、出力部55は、判定部54で判定された、オイルを交換すべき理由を報知装置50に出力する。詳しくは、出力部55は、オイルを交換すべき時期の判定の理由がオイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加である場合に、オイルを交換すべき理由がオイルの酸化・コンタミの混入である旨の信号を報知装置50に出力し、オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である場合に、オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨の信号を報知装置50に出力する。また、出力部55は、オイルに気泡が混入したと判断されて、機械のメンテナンスをすべきであると判定された場合に、オイルに気泡が混入した旨、機械のメンテナンスを促す旨の信号を報知装置50に出力する。
【0040】
分散算出部76は、オイル交換判定報知装置47に記憶された計算式によって演算部52で演算された密度(100°C密度)の分散を算出する。
記録部56は、オイルの油温が予め定められた温度範囲で降下した場合の(オイルの油温が急激に降下する際における)、油温-密度の関係データを記録する。
係数算出部57は、記録部56に記録した油温-密度の関係データに対して線形回帰を行って温度依存係数を算出する。
【0041】
報知装置50は、オイルの交換時期であること、オイルを交換すべき理由、及び機械をメンテナンスすべきであること、をオペレータに報知することのできる装置であって、例えば、オイルの交換時期であること、オイルを交換すべき理由、機械をメンテナンスすべきであることを文字表示可能な表示部を有する表示装置によって構成される。また、報知装置50は、オイルの交換時期であること等を音声で報知することのできる音声発生装置であってもよい。また、表示装置が、文字表示可能な表示部に加えて音声発生装置を具備していてもよい。また、表示装置が、オイルの交換時期であることをブザー等の音で報知することのできる報知音発生装置を具備していてもよい。
【0042】
報知装置50は、判定装置49に接続されていて、出力部55(判定装置49)から出力された信号を取得する。報知装置50は、出力部55から出力された信号を取得すると、オイルの交換時期である旨、オイルを交換すべき理由を報知する。
報知装置50は、例えば、運転部8に設けられ、好ましくは、運転席7の近傍に設けられる。また、報知装置50が、表示装置によって構成される場合、運転席7に着座したオペレータが視認し易い位置に設けられるのがよい。
図4は、オイル交換判定報知装置47の処理動作を示すフローチャートである。このフローチャートを用いてオイル交換判定報知装置47の処理動作を説明する。
【0043】
処理動作は、エンジン11が始動された後に開始され、エンジン11を稼働している間、リアルタイムで、或いは所定タイミングで行われる。
オイル交換判定報知装置47は、処理動作開始後、まず、密度センサ48A及び温度センサ48Bによって密度及び油温を計測する(ステップS1)。実際には、取得部51が、密度センサ48A及び温度センサ48Bから得られる密度及び油温を取得する。
密度及び油温が計測されると、ステップS2に進み、演算部52によって、密度の温度補正が行われる。具体的には、演算部52によって、取得部51が取得した密度(計測時の油温における密度)を、所定温度における密度(100°C密度)に演算する。
【0044】
次に、判定部54において、100°C密度が下限閾値(密度の下限閾値)を下回ったか否かの判定が行われる(ステップS3)。
100°C密度が下限閾値を下回った場合(ステップS3:YES)、判定部54は、オイルに気泡が混入したと判断し(ステップS4)、出力部55は、オイルに気泡が混入した旨、機械のメンテナンスを促す旨を報知装置50に出力し、報知装置50は、オイルに気泡が混入した旨、機械のメンテナンスを促す旨を報知する(ステップS5)。
ここで、
図5は、横軸に時間をとり縦軸に密度をとった、密度と時間との関係を表したグラフであって、密度が下限閾値を下回る場合の密度の変化の様子を表した図である。
【0045】
図5中、符号58は、密度の下限閾値であり、例えば、0.76gccである。
通常、密度の値は、オイルの使用時間の経過とともに上昇するが、密度の値が低下する場合は、オイルに気泡が混入したことを疑うことができる。そして、
図5に示すように、密度が、下限閾値を下回った場合(符号60参照)に、オイルに所定量以上の気泡が混入したことを判断できる。
【0046】
この判断をする際において、密度が急激に下降変化して下限閾値を下回り、直ぐに(短時間で)下限閾値より上回る場合は、判定部54は、密度が下限閾値を下回ったとは判断しない。つまり、
図5において、グラフ(密度の値)が、符号59で示すようにスパイク状に下降する場合があるが、このような場合は、オイルの交換時期であるとは判断しない。
判定部54は、
図5に符号60で示すように、密度が下限閾値を下回り、且つ下限閾値を下回っている状態を所定時間継続している場合に、密度が下限閾値を下回っていると判断し、オイルに所定量以上の気泡が混入したと判断する。
【0047】
また、100°C密度が下限閾値を下回っていない場合(ステップS3:NO)、判定部54において、100°C密度が上限閾値(密度の上限閾値)を超えたか否かの判定が行われる(ステップS6)。
100°C密度が上限閾値を超えた場合(ステップS6:YES)、判定部54は、オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加と判断し(ステップS7)、出力部55は、オイルの酸化・オイルに混入したコンタミの増加である旨、オイルの交換時期である旨を報知装置50に出力し、報知装置50は、オイルの酸化・オイルに混入したコンタミの増加である旨、オイルの交換時期である旨を報知する(ステップS8)。
【0048】
ここで、
図6は、横軸に時間をとり縦軸に密度をとった、密度と時間との関係を表したグラフであって、密度が上限閾値を超える場合の密度の変化の様子を表した図である。
図6中、符号61は、密度の上限閾値であり、例えば、0.845gccである。
通常、密度の値は、オイルの使用時間の経過とともに上昇する。これはオイルの酸化の増加、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加などによるオイルの変化を表していると考えられる。そして、
図6に示すように、密度が、上限閾値を超えた場合(符号63参照)に、オイルの交換時期である旨が判断され、オイルを交換すべき理由がオイルの酸化の増加、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加が判断される。
【0049】
この判断をする際において、密度が急激に上昇変化して上限閾値を超え、直ぐに(短時間で)上限閾値より下回る場合は、判定部54は、密度が上限閾値を超えたとは判断しない。つまり、
図6において、グラフ(密度の値)が、符号62で示すようにスパイク状に上昇する場合があるが、このような場合は、オイルの交換時期であるとは判断しない。
判定部54は、
図6に符号63で示すように、密度が上限閾値を超え、且つ上限閾値を超えている状態を所定時間継続している場合に、密度が上限閾値を超えていると判断し、オイルの交換時期である旨、オイルを交換すべき理由がオイルの酸化・オイルに混入したコンタミの増加である旨を判定する。
【0050】
一方、ステップS6において、100°C密度が上限閾値を超えていない場合は(ステップS6:NO)、ステップS9に移行し、分散算出部76において100°C密度の分散が算出される。
次に、判定部54において、100°C密度の分散が上限閾値(密度の分散の上限閾値)を超えたか否かの判定が行われる(ステップS10)。
【0051】
100°C密度の分散が上限閾値を超えた場合(ステップS10:YES)、判定部54は、消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加であると判断し(ステップS11)、出力部55は、オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨、オイルの交換時期である旨を報知装置50に出力し、報知装置50は、オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨、オイルの交換時期である旨を報知する(ステップS12)。
【0052】
ステップS10において、100°C密度の分散が上限閾値を超えていない場合(ステップS10:NO)、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理動作を実行する。
ここで、
図7は、横軸に時間をとり縦軸に密度をとった、密度と時間との関係を表したグラフであって、密度の分散が使用時間の経過と共に大きくなっていく様子を表した図である。
【0053】
密度の分散は、
図7に符号77で示す、グラフの縦軸方向の幅(微小時間における密度の値の最大値と最小値との間隔)である。密度の分散が大きくなる場合は消泡性能の劣化による気泡の混入、又は、コンタミの増加を疑うことができる。
図8は、横軸に時間をとり縦軸に密度の分散をとった、密度の分散と時間との関係を表したグラフであって、密度の分散が上限閾値を超える場合の密度の分散の変化の様子を表した図である。
【0054】
図8中、符号78は、密度の分散の上限閾値である。
図8に示すように、消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加と共に密度の分散の値は大きくなっていき、そして、密度の分散が、上限閾値を超えた場合(符号80参照)に、オイルの交換時期である旨が判断され、オイルを交換すべき理由がオイルの消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨が判断される。
【0055】
この判断をする際において、密度の分散が急激に上昇変化して上限閾値を超え、直ぐに(短時間で)上限閾値より下回る場合は、判定部54は、密度の分散が上限閾値を超えたとは判断しない。つまり、
図8において、グラフ(密度の分散の値)が、符号79で示すようにスパイク状に上昇する場合があるが、このような場合は、オイルの交換時期であるとは判断しない。
判定部54は、
図8に符号80で示すように、密度の分散が上限閾値を超え、且つ上限閾値を超えている状態を所定時間継続している場合に、密度の分散が上限閾値を超えていると判断し、オイルの交換時期である旨、オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨が判断される。
【0056】
なお、報知装置50による、オイルの交換時期である旨、オイルを交換すべき理由がオイルの酸化・オイルに混入したコンタミの増加である旨或いは消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨、機械のメンテナンスを促す旨、機械のメンテナンスをすべき理由がオイルに気泡が混入した旨、の報知は、例えば、エンジン11の稼働中に行われる。また、前記報知は、エンジン11を始動した際、エンジン11を切った際に行われるようにしてもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態では、機械の個体差、ユーザーの使用条件・環境によって異なるオイルの交換時期を適切に判定し、オイルの交換時期をユーザー(オペレータ)に知らせることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることはない。
例えば、取得部51は、オイルの密度、油温を、計測センサ48以外から取得してもよい。つまり、計測センサ48は、少なくとも取得部51がオイルの密度、油温を取得するオイルの密度、油温のいずれかを計測するセンサであればよい。
【0058】
また、オイル交換判定報知装置47は、オイルを交換すべき理由が判定された後、直ぐに、オイルを交換すべき理由を出力することなく、オイルを交換すべき理由をデータとして保持しておき、何らかの操作が行われたときに、オイルを交換すべき理由を報知装置50に出力するように構成されていてもよい。
また、計測センサ48の設置場所は、上記した設置場所A1に限定されることはない。
図9~
図11に計測センサ48の設置場所の他の例を示す。
【0059】
計測センサ48の設置場所は、
図9に符号A2で示すように、供給管路37における、オイルフィルタ38の下流側の管路37bに設定されていてもよい。つまり、計測センサ48は、供給管路37における、オイルフィルタ38の下流側且つ近傍に設置され、オイルフィルタ38の下流側を流れるオイルの密度及び油温を計測するようにしてもよい。また、設置場所は、
図9に符号A3で示すように、供給管路37から第2ケース19に戻るオイルが流れる戻り管路39における、オイルクーラ41の下流側の管路39a、又は
図9に符号A4で示すように、オイルクーラ41の上流側の管路39bに設定されていてもよい。つまり、計測センサ48は、戻り管路39における、オイルクーラ41の上流側又は下流側に設置され、オイルクーラ41の上流側又は下流側を流れるオイルの密度及び油温を計測するようにしてもよい。また、設置場所は、
図9に符号A5で示すように、サクションフィルタ(オイルフィルタ)64の下流側の管路65に設定されていてもよい。つまり、計測センサ48は、サクションフィルタ64の下流側に設置され、サクションフィルタ64の下流側を流れるオイルの密度及び油温を計測するようにしてもよい。
【0060】
また、計測センサ48の設置場所は、
図10に符号A6で示すように、油圧コントローラ25にオイルを供給する管路(オイル供給路)66、又は、
図10に符号A7で示すように、油圧コントローラ25から第2ケース19にオイルが戻る管路(オイル戻り路)67に設定されていてもよい。つまり、計測センサ48は、オイル供給路66又はオイル戻り路67に設置され、油圧コントローラ25に供給されるオイル又は油圧コントローラ25から戻るオイルの密度及び油温を計測するようにしてもよい。
【0061】
オイル戻り路67は、ステアリングホイール6の非操作時には、ステアリング流入圧力が、例えば、2.5~3MPa程度であり、ステアリングホイール6の操作時には負圧になる。これはセンサの設置に適した圧力である。限定はされないが、HST16が搭載されないトラクタ1では、計測センサ48は、この油圧コントローラ25からの戻りの管路(オイル戻り路67)に設けることができる。
【0062】
また、計測センサ48の設置場所は、
図11に符号A8~A10で示すように、昇降制御弁45からオイルを排出する管路71(第1排油管路71A、第2排油管路71B、第3排油管路71C)、又は
図11に符号A11で示すように、昇降制御弁45にオイルを供給する管路(オイル供給路)72、或いは
図11に符号A12で示すように、昇降シリンダ44から第2ケース19に昇降シリンダ44用の安全弁46を介してオイルが戻る管路(オイル戻り路)73に設定されていてもよい。つまり、計測センサ48は、第1排油管路71A、第2排油管路71B、第3排油管路71C、オイル供給路72又はオイル戻り路73に設置され、昇降制御弁45から排出されるオイル、又は昇降制御弁45に供給されるオイル、或いは昇降シリンダ44から戻るオイルの密度及び油温を計測するようにしてもよい。
【0063】
オイル供給路72に設置される計測センサ48の設置場所は、第1ポンプ23Aと、該第1ポンプ23Aの吐出圧を設定するリリーフ弁74を有するリリーフ回路75の接続部75aとの間に設定される。
オイル戻り路73に設置される計測センサ48の設置場所は、昇降シリンダ44用の安全弁46の下流側に設定される。
なお、計測センサ48の設置場所は、
図9~
図11に示す場所に限定されることはない。また、設置場所には、すくなくとも取得部51が取得するオイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサ48が設置される。
【0064】
本実施形態のオイル交換判定報知装置47は、油圧駆動装置を作動させるオイルの交換時期を判定し報知するオイル交換判定報知装置47であって、オイルの密度、油温を取得する取得部51と、取得部51が取得した密度を、油温が所定温度における密度に演算する演算部52と、演算部52で演算された密度に基づいてオイルを交換すべき時期を判定する判定部54と、判定部54でオイルが交換すべき時期であると判定された場合に、オイルの交換時期であることを報知する報知装置50と、を備えている。
【0065】
この構成によれば、オイルの密度を、油温が所定油温における密度に演算し、この演算された密度に基づいてオイルを交換すべき時期を判定するので、オイルの交換時期を適切
に判定して、オイルが交換時期であることを報知することができる。
判定部54は、演算部52で演算された密度が予め設定された下限閾値58を下回った場合に、オイルに気泡が混入したと判断し、報知装置50は、判定部54によってオイルに気泡が混入したと判断された場合に、オイルに気泡が混入した旨と、機械のメンテナンスの提案とを報知する。
この構成によれば、オイルに気泡が混入した場合に、機械のメンテナンスの提案を報知することができる。
【0066】
判定部54は、演算部52で演算された密度を基にオイルの密度を定量評価することにより、オイルを交換すべき時期及びオイルを交換すべき理由を判定する。
この構成によれば、オイルを交換すべき時期だけでなく、オイルを交換すべき理由をも報知することができる。
判定部54は、演算部52で演算された密度が予め設定された上限閾値61を超えた場合に、オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加と判断して、オイルを交換すべき時期であると判定し、報知装置50は、オイルを交換すべき理由がオイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミの増加である旨と、オイルの交換時期である旨とを報知する。
【0067】
この構成によれば、オイルの酸化、及び/又はオイルに混入したコンタミが増加した場合に、オイルを交換すべき理由と、オイルの交換時期である旨とを報知することができる。
また、オイル交換判定報知装置47は、演算部52で演算された密度の分散を算出する分散算出部76を備え、判定部54は、分散算出部76で算出された密度の分散が予め設定された上限閾値78を超えた場合に、消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加と判断して、オイルが交換すべき時期であると判定し、報知装置50は、オイルを交換すべき理由が消泡性能の劣化、又は、コンタミの増加である旨と、オイルの交換時期である旨とを報知する。
【0068】
この構成によれば、オイルの消泡性能が劣化した場合に、オイルを交換すべき理由と、オイルの交換時期である旨とを報知することができる。
また、オイル交換判定報知装置47は、オイルの油温が予め定められた温度範囲で降下した場合の、油温-密度の関係データを記録する記録部56と、記録部56に記録した油温-密度の関係データに対して線形回帰を行って温度依存係数を算出する係数算出部57と、を備え、演算部52は、温度依存係数を用いて、取得部51が取得した密度を、所定温度における密度に演算する。
【0069】
この構成によれば、所定温度におけるオイルの密度を精度よく算出することができる。
また、オイル交換判定報知装置47は、オイルの密度、油温を計測する計測センサ48を備え、取得部51は、計測センサ48から密度、油温を取得し、演算部52は、計測センサ48から得られる油温における密度を、所定温度における密度に演算する。
この構成によれば、オイルの交換時期をより適切に判定して、オイルが交換時期であることを報知することができる。
本実施形態の作業機械1は、オイル交換判定報知装置47及びギヤ式変速装置18を備えた作業機械1であって、オイルは、ギヤ式変速装置18の潤滑油を兼用したものである。
【0070】
この構成によれば、ギヤ式変速装置18の潤滑油を、油圧駆動装置を作動させるオイルに兼用した作業機械1における、オイルの交換時期を適切に判定し報知することができる。
また、作業機械1は、静油圧式無段変速装置16と、静油圧式無段変速装置16のチャージ回路36にオイルを供給する供給管路37と、供給管路37に設けられたオイルフィルタ38と、すくなくとも取得部51が取得するオイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサ48と、を備え、計測センサ48は、供給管路37におけるオイルフィルタ38の上流側又は下流側を流れるオイルの計測を行う。
【0071】
この構成によれば、安定したオイルの計測を図れ、オイルを常時監視することができる
。
また、作業機械1は、静油圧式無段変速装置16と、静油圧式無段変速装置16のチャージ回路36にオイルを供給する供給管路37と、供給管路37からの戻りのオイルが流れる戻り管路39と、戻り管路39に設けられたオイルクーラ41と、すくなくとも取得部51が取得するオイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサ48と、を備え、計測センサ48は、戻り管路39におけるオイルクーラ41の上流側又は下流側を流れるオイルの計測を行う。
【0072】
この構成によっても、安定したオイルの計測を図れ、オイルを常時監視することができる。
また、作業機械1は、操向輪(前輪4)と、操向輪4を操向操作するステアリングシリンダ24と、オイルが供給されステアリングシリンダ24を操作する油圧コントローラ25と、すくなくとも取得部51が取得するオイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサ48と、を備え、計測センサ48は、油圧コントローラに供給されるオイル又は油圧コントローラ25から戻るオイルの計測を行うようにしてもよい。
【0073】
また、作業機械1は、車体2と、車体2に装着されるインプルメントを昇降する昇降シリンダ44と、オイルが供給され昇降シリンダ44を制御する昇降制御弁45と、すくなくとも取得部51が取得するオイルの密度、油温のいずれかを計測する計測センサ48と、を備え、計測センサ48は、昇降制御弁45から排出されるオイル又は昇降制御弁45に供給されるオイル或いは昇降シリンダ44から戻るオイルの計測を行うようにしてもよい。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 作業機械
2 車体
4 操向輪(前輪)
16 静油圧式無段変速装置
18 ギヤ式変速装置
24 ステアリングシリンダ
25 油圧コントローラ
36 チャージ回路
37 供給管路
38 オイルフィルタ
39 戻り管路
41 オイルクーラ
44 昇降シリンダ
45 昇降制御弁
47 オイル交換判定報知装置
48 計測センサ
50 報知装置
51 取得部
52 演算部
54 判定部
56 記録部
57 係数算出部
58 下限閾値
61 上限閾値
78 上限閾値
76 分散算出部