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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035926
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ボールねじ装置および直動機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20240308BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20240308BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20240308BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 65/40 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20240308BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20240308BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20240308BHJP
【FI】
F16H25/20 H
F16H25/20 E
F16H25/24 B
F16H25/22 Z
B60T13/74 H
F16D63/00 P
F16D65/16
F16D65/40
F16D121:24
F16D125:40
F16D127:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140555
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸幸
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
3J062
【Fターム(参考)】
3D048BB21
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048HH79
3J058AB23
3J058AB27
3J058BA12
3J058CC13
3J058CC14
3J058CC62
3J058FA07
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA14
3J062CD06
3J062CD07
3J062CD08
3J062CD23
3J062CD54
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】ボールねじ軸を任意の位置で安定してロックでき、また、ボールねじ軸を任意位置に無給電でロックできるボールねじ装置および直動アクチュエータを提供する。
【解決手段】
ロック機構は、ナット部材の外周側に配設される流体充填部を形成するハウジングと、流体充填部内に軸方向に沿って交互に所定間隔で配設されるナット部材側の磁性リング体およびハウジング側の磁性リング体と、ハウジングに設けられる磁力発生機構とを備える。各磁性リング体が配設された流体充填部に、磁力発生機構にて、磁界を発生させることにより固化してボールねじ軸を軸方向の目標位置でのロックを可能とする機能性流体を充填し、磁力発生機構にて磁界が発生していない状態では、機能性流体が固化せずにボールねじ軸を回転可能状態とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にねじ溝が設けられたボールねじ軸と、ボールねじ軸に挿入され、内周面にねじ溝が設けられたナット部材と、ボールねじ軸のねじ溝とナット部材のねじ溝との間に嵌合される複数のボールと、前記ナット部材の回転を規制する口ック機構を備えたボールねじ装置であって、
前記ロック機構は、ナット部材の外周側に配設される流体充填部を形成するハウジングと、前記流体充填部内に軸方向に沿って交互に所定間隔で配設されるナット部材側の磁性リング体およびハウジング側の磁性リング体と、ハウジングに設けられる磁力発生機構とを備え、
前記各磁性リング体が配設された流体充填部に、前記磁力発生機構にて、磁界を発生させることにより固化して前記ボールねじ軸を軸方向の目標位置でのロックを可能とする機能性流体を充填し、前記磁力発生機構にて磁界が発生していない状態では、前記機能性流体が固化せずにボールねじ軸を回転可能状態とすることを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
外周面にねじ溝が設けられたボールねじ軸と、ボールねじ軸に挿入され、内周面にねじ溝が設けられたナット部材と、ボールねじ軸のねじ溝とナット部材のねじ溝との間に嵌合される複数のボールと、前記ナット部材の回転を規制する口ック機構を備えたボールねじ装置であって、
前記ロック機構は、ナット部材の外周側に配設される流体充填部を形成するハウジングと、前記流体充填部内に軸方向に沿って交互に所定間隔で配設されるナット部材側の磁性リング体およびハウジング側の磁性リング体と、ハウジングに設けられる磁力発生機構とを備え、
前記各磁性リング体が配設された流体充填部に、前記磁力発生機構に設けられた永久磁石にて発生する磁界にて固化して前記ナット部材の回転を不可となす回転ロック状態とする機能性流体を充填し、ボールねじ軸を軸方向の目標位置でのロックを可能とし、前記磁力発生機構にて、固化させるため磁界を打ち消す磁界を発生させることにより前記機能性流体が液化することを特徴とするボールねじ装置。
【請求項3】
前記機能性流体は、MR流体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記磁力発生機構は周方向に巻かれたコイルにて構成されることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記磁力発生機構は周方向に巻かれたコイルにて構成され、前記コイルに通電することに発生する磁界により前記機能性流体が固化して前記ナット部材の回転を不可とする回転ロック状態であるロックモードとするとともに、前記コイルへの通電停止により磁界が発生せずに前記機能性流体が液化した状態となり前記ナット部材の回転が可能な駆動モードとすることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項6】
前記磁力発生機構は、軸方向に着磁されたリング状の永久磁石と、周方向に巻かれたコイルとを有し、前記永久磁石と前記コイルとが同心円状に配置されることを特徴とする請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項7】
前記機能性流体は、磁力発生機構の永久磁石にて発生する磁界にて固化して前記ナット部材の回転を不可とする回転ロック状態であるロックモードとするとともに、磁力発生機構のコイルに前記永久磁石が発生する磁界と逆方向の磁界を生じさせる電流が流れることにより液化して前記ナット部材の回転が可能な駆動モードとすることを特徴とする請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項8】
前記機能性流体の固化具合を変化させる固化具合変化機構を設け、前記固化具合変化機構は、機能性流体に掛かる磁束密度を検出する検出器と、機能性流体の目標磁束密度に応じて前記磁力発生機構のコイルへの電流を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項9】
ロックモードにおける、前記ボールねじ軸に作用する軸方向荷重を検出する荷重センサを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項10】
前記ロークモードから前記駆動モードに移行する際に、前記磁力発生機構のコイルへの電流を徐々に増加させて、機能性流体の磁束密度を徐々に下げつつ、前記ナット部材に印加する駆動源からのトルク目標値を機能性流体の磁束密度に応じて増加させることを特徴とする請求項9に記載のボールねじ装置。
【請求項11】
ボールねじ軸を軸方向の目標位置近傍において、機能性流体に磁界を印加して機能性流体の粘度を高めてオーバーシュートを防止する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項12】
前記請求項1又は請求項2に記載のボールねじ装置を用いたことを特徴とする直動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置および直動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置を構成するボールねじは、伝達効率が高いため、各種直動機構(直動アクチュエータ)に用いられる。一般に、ボールねじは、ねじ軸、ナット、及びボール等から構成され、ねじ軸とナットのどちらかを回転させると、もう一方が直線運動する機械部品である。このため、直線運動を行う側に対してその位置を保持するため、モータ等の駆動源から常時動力を供給する必要があった。しかしながら、常時動力を供給する場合、エネルギー損失していることになる。そこで、従来には、ボールねじの位置保持機構は種々提案されている(特許文献1~特許文献3)。
【0003】
ところで、ボールねじは、回転運動を直線運動に変換する正効率、直線運動を回転運動に変換する逆効率いずれもが高いという特徴を持つ。このため、小さなモータでナットを直線運動させることができるという利点がある反面、力の逆入力、すなわちナットに作用する軸力によってねじ軸が回転してしまうという課題がある。ねじ軸を回転させないためには、モータに電流を供給してモータから保持力を発生させる必要がある。
【0004】
力の逆入力に対して、モータに電流を供給しなくても、ナットが軸方向に移動しないようにするためには、モータの回転運動を減速する減速機構にセルフロック性、すなわち力の逆入力に起因する回転力に対する自己保持性を持たせる必要がある。
【0005】
特許文献1では、減速機構にセルフロック機能を持たせるものであり、セルフロック機能を持たせるために高減速比に設定する必要があった。
【0006】
特許文献2では、運動変換機構部の駆動を防止するロック機構部を備えた電動アクチュエータが記載されている。この場合、周方向に複数の係合孔が形成されたギヤと、ギヤに対して軸方向に進退して係合孔に対して嵌合するロック部材を有するものである。
【0007】
特許文献3は、MR流体を用いる可変衰退型のMRダンパーが開示されている。ここで、MR流体とは、特許文献3には、「磁界を受けていないときは、一般的な油圧作動油と同様の液状を呈するが、外部から磁界を加えると強磁性粒子が鎖状のクラスターを形成して見掛けの粘度が劇的に高まり、流動時に降状応力を有する塑性流体の挙動を呈するものである。」との記載がある。
【0008】
特許文献3では、磁場の印加により降状せん断力を制御可能なMR流体を多孔質材に含侵させたMR流体コンポジットを用いて、MR流体コンポジットに生じるせん断力を制御することにより減衰力を可変に構成してなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-025515号公報
【特許文献2】特開2018-13183号公報
【特許文献3】特開2014-052044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載されたものでは、セルフロック機能を持たせるために減速機を高減速比に設定する必要があるため、高応答性を供給される用途には対応できず、しかも、一般的な減速機に比べて効率も悪いものとなる。また高減速比にしても完全に逆入力を遮断できるわけではないため駆動力を断った状態で変動荷重が加わると位置保持ができない場合がある。逆入力を低減させるために台形ねじやウォームギヤ等を用いた直動アクチュエータも同様である。
【0011】
特許文献2に記載のものでは、ギヤに形成された係合孔の数は有限であり、任意の位置でロックすることができない。また、減速機歯車の回転を止めてもバックラッシ分はボールねじナットが回転し、ねじ軸が動くことになる。
【0012】
特許文献3の機構を、ブレーキとして用いた場合は任意位置でアクチュエータを保持でき、駆動源からボールねじ・ナットまでの間の機械的なガタも影響しない。しかしながら、MR流体ブレーキをボールねじ・ナットと同軸上に並べるため軸方向寸法が大きくなり、しかも、ロック状態では励磁コイルに常時給電する必要がある。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、ボールねじ軸を任意の位置で安定してロックできるボールねじ装置および直動アクチュエータを提供でき、また、ボールねじ軸を任意位置に無給電でロックできるボールねじ装置および直動アクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1のボールねじ装置は、外周面にねじ溝が設けられたボールねじ軸と、ボールねじ軸に挿入され、内周面にねじ溝が設けられたナット部材と、ボールねじ軸のねじ溝とナット部材のねじ溝との間に嵌合される複数のボールと、前記ナット部材の回転を規制する口ック機構を備えたボールねじ装置であって、前記ロック機構は、ナット部材の外周側に配設される流体充填部を形成するハウジングと、前記流体充填部内に軸方向に沿って交互に所定間隔で配設されるナット部材側の磁性リング体およびハウジング側の磁性リング体と、ハウジングに設けられる磁力発生機構とを備え、前記各磁性リング体が配設された流体充填部に、前記磁力発生機構にて、磁界を発生させることにより固化して前記ボールねじ軸を軸方向の目標位置でのロックを可能とする機能性流体を充填し、前記磁力発生機構にて磁界が発生していない状態では、前記機能性流体が固化せずにボールねじ軸を回転可能状態とするものである。
【0015】
本発明の第1のボールねじ装置は、磁力発生機構にて磁界を発生させない状態では、機能性流体が固化せず、ボールねじ軸が回転可能状態となっている。また、磁力発生機構にて磁界を発生させれば、機能性流体が固化してボールねじ軸の回転が規制されるロック状態となる。このため、ボールねじ軸を、任意の位置(軸方向の目標位置)で安定してロックできる。しかも、後述する第2のボールねじ装置のように、永久磁石を必要としないので、装置の部品点数が少なくて済み、装置の簡略化を図るとともに、制御性に優れる。
【0016】
本発明の第2のボールねじ装置は、外周面にねじ溝が設けられたボールねじ軸と、ボールねじ軸に挿入され、内周面にねじ溝が設けられたナット部材と、ボールねじ軸のねじ溝とナット部材のねじ溝との間に嵌合される複数のボールと、前記ナット部材の回転を規制する口ック機構を備えたボールねじ装置であって、前記ロック機構は、ナット部材の外周側に配設される流体充填部を形成するハウジングと、前記流体充填部内に軸方向に沿って交互に所定間隔で配設されるナット部材側の磁性リング体およびハウジング側の磁性リング体と、ハウジングに設けられる磁力発生機構とを備え、前記各磁性リング体が配設された流体充填部に、前記磁力発生機構に設けられた永久磁石にて発生する磁界にて固化して前記ナット部材の回転を不可となす回転ロック状態とする機能性流体を充填し、ボールねじ軸を軸方向の目標位置でのロックを可能とし、前記磁力発生機構にて、固化させるため磁界を打ち消す磁界を発生させることにより前記機能性流体が液化するものである。
【0017】
本発明のボールねじ装置によれば、磁力発生機構にて発生する磁界にて機能性流体が固化してナット部材の回転を不可として、ボールねじ軸をロックすることができる。また、固化させる磁界を打ち消すようにすれば、機能性流体が液化してロックが解除される。このため、目標位置で、機能性流体が液化している状態から、磁力発生機構にて機能性流体が固化する磁界を発生させることによりロック状態とできる。しかも、ロック状態とする磁界は永久磁石が発生する磁界であるので、ボールねじ軸を軸方向の目標位置において無給電でロック状態を保持できる。
【0018】
前記機能性流体には、磁性流体や磁性粘性流体(MR流体)等がある。ここで、磁性流体とは、強磁性体の微粒子を水やケロシンなどに多量に分散させたコロイド溶液であり、MR流体(Magnetorheological Fluid)とは、シリコーン油もしくは鉱油に磁性体の微粒子を分散させたものであって、組成として、磁性流体と変わらない。異なるのは微粒子の径であり、磁性流体が10nm程度であり、MR流体が数μm程度である。このため、機能性流体として、磁性流体であっても、MR流体であってもよいが、固化してナット部材の回転を不可とするものとして、粒子径が大きいMR流体が好ましい。なお、この場合、MR流体は、スポンジや不織布等の多孔材に含侵させたMR流体コンポジットの状態で使用することができる。
【0019】
第1のボールねじ装置では、前記磁力発生機構は永久磁石を有さないものであって、周方向に巻かれたコイルにて構成されるものあってもよい。この場合、前記磁力発生機構は周方向に巻かれたコイルにて構成され、前記コイルに通電することに発生する磁界により前記機能性流体が固化して前記ナット部材の回転を不可とする回転ロック状態であるロックモードとするとともに、前記コイルへの通電停止により磁界が発生せずに前記機能性流体が液化した状態となり前記ナット部材の回転が可能な駆動モードとすることができる。
【0020】
第2のボールねじ装置では、磁力発生機構は、軸方向に着磁されたリング状の永久磁石と、周方向に巻かれたコイルとを有し、前記永久磁石と前記コイルとが同心円状に配置されている。永久磁石に発生する磁界でMR流体が固化し、コイルに電流を印加することにより、磁界を発生させことができる。この場合、コイルに、永久磁石にて発生する磁界と反対の磁界を発生させることができる。また、永久磁石とコイルとが同心円状に配置されているので、磁力発生機構のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
前記機能性流体Fは、磁力発生機構の永久磁石にて発生する磁界にて固化して前記ナット部材の回転を不可とする回転ロック状態であるロックモードとするとともに、磁力発生機構のコイルに前記永久磁石が発生する磁界と逆方向の磁界を生じさせる電流が流れることにより液化して前記ナット部材の回転が可能な駆動モードとするように設定できる。なお、ナット部材を回転駆動させるには、駆動源からの回転力付与状態とする必要がある。
【0022】
このように設定することによって、コイルに前記永久磁石が発生する磁界と逆方向の磁界を生じさせる電流を流したり、コイルへの電流の印加を停止したりすることによって、ナット部材の回転を不可とするロックモードとナット部材の回転を可能とする駆動モードとの切り替えを簡単かつ迅速に行うことができる。
【0023】
前記機能性流体の固化具合を変化させる固化具合変化機構を設け、前記固化具合変化機構は、機能性流体に掛かる磁束密度を検出する検出器と、機能性流体の目標磁束密度に応じて前記磁力発生機構のコイルへの電流を制御する制御器とを備えたものに設定できる。
【0024】
固化具合変化機構を備えたものでは、機能性流体の固化具合を調整できるので、安定したロック状態を得ることができ、制動力を高めることができる。すなわち、MR流体を含む磁気回路中の磁束密度は、検出器によって検出される。この場合、磁束密度目標値は、駆動動作中はゼロに設定され、ロック中はコイルに電流を流さない状態に通常設定される。
そこで、ロック中に、コイルに永久磁石が発生する磁界と同方向の磁界が生じる向きに電流を流せばMR流体の固化度合いをさらに高め、制動力を増すことも可能である。
【0025】
前記ロックモードにおける、ボールねじ軸に作用する軸方向荷重を検出する荷重センサを備えたものであってもよい。このように荷重センサを設ければ、ロック時におけるボールねじ軸に係る荷重がわかる。すなわち、ナット部材の制動トルクがわかる。
【0026】
前記ロックモードから前記駆動モードに移行する際に、前記磁力発生機構のコイルへの電流を徐々に(ランプ状)に増加させて、機能性流体の磁束密度を徐々に下げつつ、前記ナット部材に印加する駆動源からのトルク目標値を機能性流体の磁束密度に応じて増加させるように設定するのが好ましい。
【0027】
このように設定することによって、ロックモードから駆動モードに移行する際は、永久磁石が発生する磁界と逆方向の磁界が生じる向きのコイル電流を徐々に増し、機能性流体を通る磁束密度を減らすと同時にモータ等の駆動源のトルクを増やすことで、ロックが解除された時のショックが低減される。
【0028】
ボールねじ軸を軸方向の目標位置近傍において、機能性流体に磁界を印加して機能性流体の粘度を高めてオーバーシュートを防止する制御を行うことができる。すなわち、機能性流体の磁束密度制御と駆動源のトルク制御を協調させることで、目標値付近においてより強い制動力、ダンピング力を付与し、オーバーシュート(目標値に到達した後、目標値を超えて行き過ぎる状態)を防止できる。
【0029】
本発明に係る直動機構は、前記ボールねじ装置を用いたものである。直動機構とは、直線方向に動力を発生させる装置であって、一般的に、回転するモータから機構部品を使い直線運動に変換する。この場合、ボールねじ軸とこれに多数のボールを介して螺合するボールねじナットとを有するホールねじ機構装置を有し、ボールねじ軸及びボールねじナットの一方を回転駆動する回転運動要素とし、他方を直線移動させる直線運動要素としている。このため、本ボールねじ装置を用いた直動機構は、任意位置での保持機能に優れ、任意位置での保持が必要な直動アクチュエータに最適となる。
【発明の効果】
【0030】
第1に係るボールねじ装置では、ボールねじ軸を軸方向の目標位置において安定してロック状態とすることができ、ボールねじ装置として、高精度に機能する。また、第2のボールねじ装置では、ボールねじ軸を軸方向の目標位置において無給電でロック状態を保持できるので、位置を保持するために、モータ等の駆動源からロック状態において、動力を供給する必要がなく、エネルギー損失が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係るボールねじ装置であって、永久磁石を有する装置の断面図である。
図2】本発明に係るボールねじ装置の制御部のブロック図である。
図3】ブレーキの最大制御トルクと、駆動トルクとナット制御トルクとの関係を示すグラフ図である。
図4】本発明に係るボールねじ装置であって、永久磁石を有しない装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明の実施の形態を図1図4に基づいて説明する。図1は、本発明に係るボールねじ装置を示し、このボールねじ装置は、外周面1に第1ねじ溝2が設けられたねじ軸3と、ねじ軸3に挿入され、内周面4に第1ねじ溝2に対応する第2ねじ溝5が設けられたナット部材6と、第1ねじ溝2と第2ねじ溝5との間である転動路7に配置される複数のボール8とを備えたものである。この場合、図示省略の駆動手段(駆動源)からの駆動トルクの付与にて回転駆動される。回転方向の変更は可能とされる。このため、ナット部材6が回転駆動されることによって、ねじ軸3はその軸方向に沿って往復動することができる。
【0033】
ところで、ボールねじ装置においては、多数のボールを無限に循環させる機能を必要とする。この機能としては、リターンプレート式、こま式、エンドキャップ式、エンドデフレクタ式、およびリターンチューブ式等があり、本ボールねじ装置では、これらのいずれも採用できる。
【0034】
この場合、このボールねじ装置は、ロック機構Mを備える。ここで、ロック機構Mは、ナット部材6の回転を停止して、ナット部材6に対するボールねじ軸3の軸方向の往復動を規制するものであり、ロック機構Mは、ナット部材6の外周側に配設される中空室10を形成するハウジング11と、ハウジング11に設けられる磁力発生機構15とを備える。なお、ハウジング11は他の固定部材に取り付けられて、回転しない。なお、ナット部材には、図1に示すように回転力付与部50が設けられ、この回転力付与部50に図示省略の動力源から回転力付与される。また、回転力付与部50とロック機構Mとが、回転軸に対して直列配置されている。
【0035】
ハウジング11は、ナット部材6に軸受16、17を介して外嵌される一対のリング体18、19と、リング体18、19と連結される円筒体からなる胴部20とで構成される。この場合、リング体18、19の外周面18a、19aと、胴部20の外周面20aとが同一円筒面上に配設される。また、リング体18の外端面18bとナット部材6の外端面6bとが、同一鉛直面上に配設されている。なお、リング体19の外端面19bと回転力付与部50とは、所定間隔で対向している。ハウジング11は非磁性材にて構成される。非磁性材としてはオーステナイト系ステンレス鋼と、高マンガン鋼、高ニッケル合金などがあり、さらには、アルミ、銅などの金属は基本的に非磁性材料となる。このため、これらの金属から種々選択される。
【0036】
そして、リング体18、19の相対向面18c、19cに平板リング形状のヨーク21、22が配設され、ヨーク21、22間に、円筒形状の非磁性材からなる仕切り部材23が介在されている。この仕切り部材23と胴部20との間に、外径側の円筒状の永久磁石25と、内径側の周方向に巻かれたコイル26とが配置される。永久磁石とは、外部から磁場や電流の供給を受けることなく磁石としての性質を比較的長期にわたって保持し続ける物体のことである。強磁性ないしはフェリ磁性を示す物体であってヒステリシスが大きく常温での減磁が少ないものを磁化して用いる。例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石などが永久磁石である。コイル26には、図示省略の電流供給源から電流が印加される。
【0037】
このため、ナット部材6の外周面6aと仕切り部材23と、ヨーク21、22の内径側の内面とで、後述する機能性流体Fが充填される流体充填部10aが形成される。また、この流体充填部10aには、ナット部材6に外周側に固定される磁性リング体27と、仕切り部材23の内周側に固定される磁性リング体28とが、軸方向に沿って交互に配置されている。ところで、磁性リング体27、28としては、軟磁性材を使用した。軟磁性材とは、外部の磁界を取り除くと速やかに磁気がなくなり、元の状態に戻る材料である。
【0038】
そして、この磁性リング体27、28が配置された流体充填部10aに機能性流体Fが充填される。機能性流体Fには、磁性流体やMR流体等がある。ここで、磁性流体とは、強磁性体の微粒子を水やケロシンなどに多量に分散させたコロイド溶液であり、MR流体(Magnetorheological Fluid)とは、シリコーン油もしくは鉱油に磁性体の微粒子を分散させたものであって、組成として、磁性流体と変わらない。異なるのは微粒子の径であり、磁性流体が10nm程度であり、MR流体が数μm程度である。このため、機能性流体として、磁性流体であっても、MR流体であってもよいが、固化してナット部材の回転を不可とするものとして、粒子径が大きいMR流体が好ましい。なお、この場合、MR流体は、スポンジや不織布等の多孔材に含侵させたMR流体コンポジットの状態で使用することができる。
【0039】
また、一方の軸受16と一方のヨーク21との間にシール部材30が介在され、他方の軸受17と他方のヨーク22との間にシール部材31が介在されている。なお、リング体18、19の内周面に周方向凹部32、33が設けられ、各周方向凹部32、33の各軸受16の外輪が嵌合し、ナット部材6の外周面の各軸方向外端部に突起部34、35が設けられ、各軸受16の内輪の外端部が突起部34、35に係合している。
【0040】
そして、他方のヨーク22には、磁束密度の検出が可能な検出器(磁気センサ)36が配置されている。なお、磁気センサ36には、コイルを用いたもの、リードスイッチを用いたもの、ホール素子を用いたもの、磁気抵抗素子を用いたもの等がある。なお、磁気抵抗素子には、半導体磁気抵抗素子、異方性磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、及びトンネル磁気がある。このため、検出器(磁気センサ)36として、これらのものから種々選択して使用することができる。
【0041】
また、リング体18、19の内周面の軸方向外端部に、軸受16、17の外輪の軸方向外端面に当接するように荷重センサ37、38が設けられている。この荷重センサ37、38は、ボールねじ軸3に作用する軸方向荷重を検出するものである。荷重センサ(圧力センサ)には、半導体ゲージ式、ひずみケージ式、金属薄膜式等のケージ式のもの、さらには、ゲージ式の圧力センサ以外に、静電容量式、光ファイバー式、振動式等の圧力センサがある。このため、これらの中から種々選択できる。
【0042】
このように構成されたものでは、磁力発生機構15は、永久磁石25とコイル26とを備え、コイル26に電流を印加しない状態では、永久磁石25が発生する磁界によって、機能性流体Fが固化する。すなわち、永久磁石25が発生する磁界は、例えば、永久磁石25の一方の軸方向端面側→一方のヨーク21の外径側から内径側→交互に配設された複数の磁性リング体27、28を介して他方のヨーク22の内径側→他方のヨーク22の内径側から外径側→永久磁石25の他方の軸方向端面へと戻る磁力線となる(この場合、反時計廻りとなっている)。すなわち、永久磁石25と、一方のヨーク21と、複数の磁性リング体27、28、及び他方のヨーク22で、閉ループに磁路を構成する。また、永久磁石25の着磁を相違させることによって、磁力線を逆方向、つまり時計廻り方向とすることができる。
【0043】
このため、機能性流体Fに磁界が流れ、機能性流体Fが固化する。従って、機能性流体Fを固化させれば、この固化した状態では、ナット部材が回転できないロック状態となる。すなわち、機能性流体Fが固化すれば、ハイジング11側とナット部材6とが一体化し、これにより、ナット部材6が回転できないロック状態となる。
【0044】
ところで、このボールねじ装置は、機能性流体Fの固化具合を変化させる固化具合変化機構R(図2参照)を設けている。固化具合変化機構Rは、機能性流体Fに掛かる磁束密度を検出する上述した磁気センサからなる検出器36と、機能性流体Fの目標磁束密度に応じて前記磁力発生機構15のコイル26への電流を制御する制御器(制御器)41とを備える。
【0045】
コイル26への電流への印加状態で形成される磁気回路(磁路)中の磁束密度は、磁気センサ41からなる検出器(磁気センサ)36にて検出され、図2に示す回路で構成された固化具合変化機構Rにて機能性流体の固化具合が制御(調整)される。この場合、図2に示す磁束密度目標値は、ナット部材6に対して図示省略の駆動源からの回転力付与状態(駆動動作中)では、ゼロに設定され、また、永久磁石25の磁力線にて機能性流体Fが固化したロック状態では、磁力発生機構15のコイル26に電流を流さないように設定する。なお、機能性流体Fが固化したロック状態において、永久磁石25の磁力線と同一方向の磁力線が発生するように、コイル26に電流を流すことによって、機能性流体Fの固化度合を高めることができる。
【0046】
また、機能性流体Fが固化したロック状態(ロックモード)から駆動モード(ロック状態が解除されて、ナット部材6に対して図示省略の駆動源からの回転力付与状態)に移行する際には、永久磁石25が発生する磁界(磁力線)と逆方向の磁界(磁力線)が発生する向きになるように、徐々に電流を増加させ、永久磁石にて発生している磁束密度を減らすと同時に、駆動源からのナット部材6に回転駆動力を付与する駆動トルクを増やすことで、ロックが解除されたときのショックを低減することができる。
【0047】
すなわち、磁力発生機構15のコイル26への電流を制御する制御器41からの信号が電流アンプ40に入力され、この電流アンプ40から磁力発生機構15のコイル26に電流が印加され、これにより、機能性流体Fを通過する磁束が発生することになる。この磁気センサ36にて、この磁束密度が測定される。この測定した磁束密度と、磁束密度目標値(予め設定した目標値)を比較して、磁束密度が目標値となる電流値で、コイルに通電することになる。
【0048】
そして、このボールねじ装置では、上述のように、軸受16、17のアキシャル荷重を検出することが可能な荷重センサ37、38を設けているので、ボールねじ軸3に掛かる荷重、つまり、ナット部材6の制動トルクがわかることになる。
【0049】
このため、ロックモードから駆動モードへの切り換えは、機能性流体Fを通る磁束密度と駆動源(ナット部材6に回転駆動力を付与する駆動源)で発生するトルク(駆動トルク)の目標値を調整すればよい。
【0050】
図3にロックモードから駆動モードへの切り換え制御の一例を示す。すなわち、図3において、(I)の領域では、機能性流体(MR流体)Fを通る磁束密度(つまり、MR流体ブレーキ力)の最大制動トルクを徐々に下げている。そして、ナット部材6の制動トルク(ナット制動トルク)、つまりボールねじ軸3がナット部材6を回転させようとする負荷トルクに近づける。(II)の領域ではMR流体ブレーキの最大制動トルクを下げると同時に駆動トルクが増して急激なトルク変動が生じないようにする。(III)の領域では、MR流体ブレーキの最大制動トルクが零となって、駆動モードになる。
【0051】
このような制御性を生かして、機能性流体Fの磁束密度制御と、駆動源のトルク制御を協調させることで、目的値近傍において、機能性流体Fの粘度を高め、ブレーキ力あるいはダンピング力を付与するようにできる。
【0052】
本発明のボールねじ装置(図1に示す構成のボールねじ装置)によれば、磁力発生機構15にて発生する磁界にて機能性流体Fが固化してナット部材6の回転を不可として、ボールねじ軸3をロックすることができる。また、固化させる磁界を打ち消すようにすれば、機能性流体Fが液化してロックが解除される。このため、目標位置で、機能性流体Fが液化している状態から、磁力発生機構15にて機能性流体Fが固化する磁界を発生させることによりロック状態とできる。しかも、ロック状態とする磁界は永久磁石が発生する磁界であるので、ボールねじ軸3を軸方向の目標位置において無給電でロック状態を保持できる。
【0053】
このため、本発明では、ボールねじ軸3を軸方向の目標位置において無給電でロック状態を保持できるので、位置を保持するために、モータ等の駆動源からロック状態において、動力を供給する必要がなく、エネルギー損失が生じない。
【0054】
機能性流体Fに、磁性粘性流体(MR流体)を用いることによって、安定して固化してナット部材の回転を不可とすることができる。
【0055】
磁力発生機構15として、軸方向に着磁されたリング状の永久磁石25と、周方向に巻かれたコイル26とを有し、永久磁石25とコイル26とが同心円状に配置されているのが好ましい。このように構成することによって、磁力発生機構のコンパクト化を図ることができる。
【0056】
機能性流体Fは、磁力発生機構15の永久磁石25にて発生する磁界にて固化してナット部材6の回転を不可とする回転ロック状態であるロックモードとするとともに、磁力発生機構15のコイル26に永久磁石25が発生する磁界と逆方向の磁界を生じさせる電流が流れることにより液化してナット部材6の回転が可能な駆動モードとするように設定できる。
【0057】
このように設定することによって、コイル26に永久磁石25が発生する磁界と逆方向の磁界を生じさせる電流を流したり、コイル26への電流の印加を停止したりすることによって、ナット部材6の回転を不可とするロックモードとナット部材6の回転を可能とすする駆動モードとの切り替えを簡単かつ迅速に行うことができる。
【0058】
機能性流体Fの固化具合を変化させる固化具合変化機構Rを設け、前記固化具合変化機構Rは、機能性流体Fに掛かる磁束密度を検出する検出器(磁気センサ)36と、機能性流体Fの目標磁束密度に応じて磁力発生機構15のコイル26への電流を制御する制御器41とを備えたものにて設定できる。
【0059】
固化具合変化機構Rを備えたものでは、機能性流体Fの固化具合を調整できるので、安定したロック状態を得ることができ、制動力を高めることができる。すなわち、MR流体を含む磁気回路中の磁束密度は、検出器(磁気センサ)36によって検出される。この場合、磁束密度目標値は、駆動動作中はゼロに設定され、ロック中はコイルに電流を流さない状態に通常設定される。そこで、ロック中に、コイル26に永久磁石25が発生する磁界と同方向の磁界が生じる向きに電流を流せばMR流体の固化度合いをさらに高め、制動力を増すことも可能である。
【0060】
ロックモードにおける、ボールねじ軸3に作用する軸方向荷重を検出する荷重センサ37、38を備えたものであってもよい。このように荷重センサ37、38を設ければ、ロック時におけるボールねじ軸3に係る荷重がわかる。すなわち、ナット部材6の制動トルクがわかる。
【0061】
ロックモードから駆動モードに移行する際に、磁力発生機構15のコイル26への電流を徐々に(ランプ状に)増加させて、機能性流体の磁束密度を徐々に下げつつ、ナット部材6に印加する駆動源からのトルク目標値を機能性流体の磁束密度に応じて増加させるように設定するのが好ましい。
【0062】
このように設定することによって、ロックモードから駆動モードに移行する際は、永久磁石25が発生する磁界と逆方向の磁界が生じる向きのコイル電流を徐々に増し、機能性流体Fを通る磁束密度を減らすと同時にモータ等駆動源のトルクを増やすことで、ロックが解除された時のショックが低減される。
【0063】
ボールねじ軸3を軸方向の目標位置近傍において、機能性流体Fに磁界を印加して機能性流体の粘度を高めてオーバーシュートを防止する制御を行うことができる。すなわち、機能性流体F(MR流体)の磁束密度制御と駆動源のトルク制御を協調させることで、目標値付近においてより強い制動力、ダンピング力を付与し、オーバーシュートを防止できる。
【0064】
ところで、前記図1に示すボールねじ装置では、磁力発生機構15が永久磁石25を有していたが、図4に示すように、永久磁石25を有しないものであってもよい。図4に示すボールねじ装置の他の構成は、図1と同様であり、図1に示すボールねじ装置と同一部材については、図1と同じ符号を付してそれらの説明を省略する。
【0065】
しかしながら、図4に示すボールねじ装置では、磁力発生機構15は永久磁石25を有さず、コイル26のみ構成される。このため、コイル26に通電しないときには、コイル26に磁界が発生せず、機能性流体Fは液体のまま(液化した状態)となって、ナット部材6の回転が許容されて、ボールねじ軸の軸方向の往復動が可能な駆動モードとなる。
【0066】
これに対して、コイル26に通電すれば、コイル26→一方のヨーク21→磁性リング27、28→他方のヨーク22→コイル26へと戻る磁力線、又は、コイル26→他方のヨーク22→磁性リング27、28→一方のヨーク21→コイル26へと戻る磁力線となる。これにより、機能性流体Fに磁界が流れ、機能性流体Fが固化する。このように、機能性流体Fが固化すれば、ナット部材6が回転できないロック状態となる。
【0067】
本発明のボールねじ装置(図4に示すボールねじ装置)は、磁力発生機構15にて磁界を発生させない状態では、機能性流体Fが固化せず、ボールねじ軸3が回転可能状態となっている。また、磁力発生機構15にて磁界を発生させれば、機能性流体3が固化してボールねじ軸3の回転が規制されるロック状態となる。このため、ボールねじ軸3を軸方向の目標位置において安定してロック状態とすることができ、ボールねじ装置として、高精度に機能する。
【0068】
しかも、図1に示すボールねじ装置のように、永久磁石を必要としないので、装置の部品点数が少なくて済み、装置の簡略化を図るとともに、制御性に優れるボールねじ装置とまる。また、磁性粘性流体(MR流体)を用いることによって、安定して固化してナット部材の回転を不可とすることができる。
【0069】
また、この図4に示すボールねじ装置でも、図1に示すボールねじ装置と同様、検出器(磁気センサ)36、及び荷重センサ37、38を有するので、これらのセンサを使用して、図1に示すボールねじ装置と同様の制御を行うことができる。
【0070】
すなわち、ロック時におけるボールねじ軸3に係る荷重がわかり、ナット部材6の制動トルクがわかる。機能性流体Fの固化具合を変化させる固化具合変化機構Rを設け、前記固化具合変化機構Rは、機能性流体Fに掛かる磁束密度を検出する検出器(磁気センサ)36と、機能性流体Fの目標磁束密度に応じて磁力発生機構15のコイル26への電流を制御する制御器41とを備えたものにて設定できる。また、ロークモードから駆動モードへの切り換え制御や駆動モードからロークモードへの切り換え制御を安定して正確に行うことができる。
【0071】
ボールねじ装置を用いたものである直動機構とは、直線方向に動力を発生させる装置であって、一般的に、回転するモータから機構部品を使い直線運動に変換する。この場合、ボールねじ軸とこれに多数のボールを介して螺合するボールねじナットとを有するホールねじ機構装置を有し、ボールねじ軸及びボールねじナットの一方を回転駆動する回転運動要素とし、他方を直線移動させる直線運動要素としている。このため、本ボールねじ装置を用いた直動機構は、任意位置での保持機能に優れ、任意位置での保持が必要な直動アクチュエータに最適となる。
【0072】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、ボールねじ装置としては、自動車のトランスミッション、電動パーキングブレーキ、車高調整機構、転蛇機構、工作機用直動アクチュエータ、射出成型機等に用いることができる。すなわち、任意位置で保持機能が必要な産業機械や工作機械等に使用することができる。
【0073】
図1に示すボールねじ装置であっても、図4に示すボールねじ装置であっても、磁性リング体27、28の数の増減は、流体充填部の大きさ等に応じて任意であるがナット部材側の磁性リング体27の数と、ハウジング側の磁性リング体28の数は、実施形態のように相違するものであっても、同じであってもよい。また、磁性リング体27、28の間隔や、各磁性リング体27、28の肉厚寸法も任意に設定できる。MR流体を使用する場合、多孔質材に含侵させてなるMR流体コンポジットの状態で使用するものに限るものではない。
【0074】
前記実施形態(図1に示すボールねじ装置)では、磁力発生機構15では、永久磁石25の内径側にコイル26を配置するように構成していたが、逆に、永久磁石25の外径側にコイル26を配置する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
F 機能性流体
M ロック機構
R 固化具合変化機構
1 外周面
2 第1ねじ溝
3 ボールねじ軸
4 内周面
6 ナット部材
10a 流体充填部
11 ハウジング
15 磁力発生機構
25 永久磁石
26 コイル
27、28 磁性リング体
36 検出器(磁気センサ)
37 制御部
37.38 荷重センサ
図1
図2
図3
図4