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特開2024-35937ディスクブレーキ装置及びその組立方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035937
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ装置及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/02 20060101AFI20240308BHJP
   F16D 55/225 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 55/227 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 55/228 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20240308BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240308BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20240308BHJP
   F16D 125/04 20120101ALN20240308BHJP
   F16D 125/08 20120101ALN20240308BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20240308BHJP
【FI】
F16D65/02 A
F16D55/225 102C
F16D55/227 106A
F16D55/228
F16D65/18
B60T13/74 G
F16D121:24
F16D125:04
F16D125:08 A
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140580
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 健
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB48
3D048BB52
3D048CC05
3D048CC49
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA78
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA25
3J058BA62
3J058BA64
3J058BA70
3J058CA42
3J058CC15
3J058CC22
3J058CC36
3J058CC62
3J058CC84
3J058DD02
3J058DD06
3J058FA01
3J058FA07
(57)【要約】
【課題】複数の回転部材と複数の出力部材との同軸度を確保できるとともに、キャリパとハウジングとの間の密封性を確保できる、ディスクブレーキ装置を提供する。
【解決手段】スピンドル36aと非同軸に配置され、かつ、スピンドル36aの位置の基準となる、キャリパ2に備えられたキャリパ側規制部31と、出力軸51aと非同軸に配置され、かつ、出力軸51aの位置の基準となる、ハウジング48に備えられたハウジング側規制部75とを当接させることで、キャリパ2に対するハウジング48の位置を規制する。キャリパ2とハウジング48との間で、スピンドル36aと同軸に配置された環状シール6aを軸方向に挟持する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータよりも軸方向内側に複数のシリンダを有するキャリパと、
複数の前記シリンダのそれぞれに嵌装された複数のピストンと、
複数の前記シリンダ内に配置され、回転運動を直線運動に変換することで複数の前記ピストンのそれぞれを前記ロータに向けて押し出す、回転部材及び直動部材を含んで構成される複数の回転直動変換機構と、
電動モータと、前記回転部材と同軸に配置され、前記電動モータの回転を前記回転部材に伝達する、前記回転部材と同数の複数の出力部材と、前記電動モータ及び複数の前記出力部材を収容するハウジングと、を有し、前記キャリパに対し支持固定されるモータギヤユニットと、
前記回転部材と同軸に配置され、前記キャリパと前記ハウジングとの間を密封する、前記回転部材と同数の複数の環状シールと、
前記キャリパに対する前記モータギヤユニットの位置を規制する位置規制手段と、
前記キャリパと前記ハウジングとを固定する固定手段と、を備え、
前記環状シールは、前記キャリパと前記ハウジングとの間で軸方向に挟持されており、
前記位置規制手段は、前記回転部材と非同軸に配置され、かつ、前記回転部材の位置の基準になる、前記キャリパに備えられた少なくとも1つ以上のキャリパ側規制部と、前記出力部材と非同軸に配置され、かつ、前記出力部材の位置の基準になる、前記ハウジングに備えられた少なくとも1つ以上のハウジング側規制部とを有し、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを当接させることで、前記キャリパに対する前記ハウジングの位置を規制する、
ディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記キャリパ側規制部は、曲面状又は平坦面状のキャリパ側規制面を1乃至複数有し、
前記ハウジング側規制部は、曲面状又は平坦面状のハウジング側規制面を1乃至複数有し、
前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とは、前記キャリパ側規制面及び前記ハウジング側規制面によって当接する、
請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記キャリパ側規制部又は前記ハウジング側規制部のいずれか一方は、規制角部を1乃至複数有し、
前記キャリパ側規制部又は前記ハウジング側規制部のいずれか他方は、曲面状又は平坦面状の規制面を1乃至複数有し、
前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とは、前記規制角部及び前記規制面によって当接する、
請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記キャリパ側規制部及び前記ハウジング側規制部は、2つずつ備えられている、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項5】
2つの前記キャリパ側規制部のうちの第1のキャリパ側規制部と、2つの前記ハウジング側規制部のうちの第1のハウジング側規制部との当接により、前記第1のキャリパ側規制部及び前記第1のハウジング側規制部のそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制し、かつ、2つの前記キャリパ側規制部のうちの第2のキャリパ側規制部と、2つの前記ハウジング側規制部のうちの第2のハウジング側規制部との当接により、前記第1のキャリパ側規制部又は前記第1のハウジング側規制部の中心軸回りの、前記キャリパと前記ハウジングとの相対回転位置を規制する、請求項4に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項6】
前記第2のキャリパ側規制部と前記第2のハウジング側規制部との当接方向は、周方向又は径方向である、請求項5に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項7】
前記キャリパ側規制部は、軸方向に突出した凸形状を有する、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項8】
前記キャリパ側規制部は、前記キャリパとは別体に構成され、かつ、前記キャリパに対して固定されたピン部材からなる、請求項7に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項9】
前記キャリパ側規制部は、軸方向に関して前記キャリパと前記ハウジングとの間に挟まれて配置されている、請求項8に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項10】
前記ハウジング側規制部は、前記ハウジングと一体に構成されている、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項11】
前記ハウジング側規制部は、前記ハウジングと一体に構成された補強リブの一部に備えられている、請求項10に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項12】
前記ハウジング側規制部は、軸方向に凹んだ凹形状を有する、請求項10に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項13】
前記ハウジング側規制部は、前記ハウジングとは別体に構成され、かつ、前記ハウジングに対してモールド固定されたピン部材からなる、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項14】
前記固定手段は、ボルトである、
請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【請求項15】
請求項1に記載したディスクブレーキ装置の組立方法であって、
前記ハウジング又は前記キャリパに作用する重力を利用して、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを当接させる、
ディスクブレーキ装置の組立方法。
【請求項16】
請求項14に記載したディスクブレーキ装置の組立方法であって、
前記ボルトを締め付ける際に前記ボルトから前記ハウジング又は前記キャリパに作用する回転力を利用して、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを当接させる、
ディスクブレーキ装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディスクブレーキ装置及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置は、放熱性に優れるとともに、走行時における制動力の細かな調節が可能であるなどの理由から、自動車の前輪だけでなく、後輪にも採用されるケースが増えている。
【0003】
ディスクブレーキ装置は、制動力を得るために作動油を利用する油圧式のディスクブレーキ装置と、制動力を得るために電気的に駆動可能なアクチュエータを利用する電動式のディスクブレーキ装置とに、大別することができる。
【0004】
電動式のディスクブレーキ装置としては、特開2020-118166号公報(特許文献1)などに開示されるように、サービスブレーキによる制動力を、シリンダ内にブレーキオイル(フルード)を送り込むことにより発生させ、パーキングブレーキによる制動力を、電動モータにより回転直動変換機構などの電動式のアクチュエータを駆動して発生させる、電動パーキングブレーキ式の構造が知られている。
【0005】
図26は、特開2020-118166号公報に記載された、電動パーキング式のディスクブレーキ装置100を示している。
【0006】
ディスクブレーキ装置100は、フローティング型のディスクブレーキ装置であり、懸架装置に固定されるサポート101と、サポート101に対して、図示しないロータの軸方向に移動可能に支持されたキャリパ102とを備える。
【0007】
サポート101には、アウタパッド103a及びインナパッド103bのそれぞれが、ロータの軸方向に関する移動を可能に支持されている。
【0008】
キャリパ102には、シリンダ104が備えられている。シリンダ104の内側には、ピストン105が嵌装されている。
【0009】
ピストン105の内側には、パーキングブレーキによる制動力を得る際に、ピストン105を押圧する回転直動変換機構106が配置されている。回転直動変換機構106は、回転部材であるスピンドル107と、直動部材であるナット108とを有している。回転直動変換機構106は、モータギヤユニット109により駆動される。
【0010】
モータギヤユニット109は、ハウジング110と、図示しない電動モータと、出力軸111とを備える。
【0011】
ハウジング110は、キャリパ102に対して図示しないボルトにより固定されており、電動モータ及び出力軸111などを収容している。
【0012】
出力軸111は、回転直動変換機構106を構成するスピンドル107と同軸に配置され、スピンドル107の端部にトルク伝達可能に接続されている。出力軸111には、歯車式減速機などの減速機構を構成する最終歯車が固定されている。このため、出力軸111は、電動モータによって回転駆動されて、電動モータの回転をスピンドル107に伝達する。
【0013】
キャリパ102とハウジング110との間は、Oリング112により密封されている。Oリング112は、キャリパ102とハウジング110とのインロー嵌合部113に配置されている。具体的には、Oリング112は、キャリパ102に備えられた嵌合軸部114の外周面とハウジング110に備えられた嵌合孔部115の内周面との間に、インロー嵌合部113の径方向に挟持されている。
【0014】
従来構造のディスクブレーキ装置100では、嵌合軸部114とスピンドル107とを同軸に配置し、かつ、嵌合孔部115と出力軸111とを同軸に配置している。これにより、嵌合軸部114と嵌合孔部115とをインロー嵌合することによって、キャリパ102に対するハウジング110の位置決めを行い、スピンドル107と出力軸111との同軸度を確保している。
【0015】
従来構造のディスクブレーキ装置100によりサービスブレーキを作動させる際には、キャリパ102に備えられたシリンダ104に、図示しない通油路を通じてブレーキオイルを送り込む。これにより、ピストン105を、シリンダ104から押し出し、インナパッド103bをロータの内側面に押し付ける。また、押し付けに伴う反力により、キャリパ102を、サポート101に対しロータの軸方向に関して内側に変位させる。そして、キャリパ102により、アウタパッド103aをロータの外側面に押し付ける。これにより、アウタパッド103a及びインナパッド103bとロータとの接触面に作用する摩擦により、制動力を得る。
【0016】
一方、ディスクブレーキ装置100によりパーキングブレーキを作動させるには、電動モータを所定方向に回転駆動して、出力軸111を回転させる。出力軸111に回転が伝達されると、回転直動変換機構106を介して、ピストン105をロータに向けて押し出すことで、インナパッド103bをロータの内側面に押し付ける。また、押し付けに伴う反力により、キャリパ102を、サポート101に対しロータの軸方向に関して内側に変位させる。そして、キャリパ102により、アウタパッド103aをロータの外側面に押し付ける。これにより、アウタパッド103a及びインナパッド103bとロータとの接触面に作用する摩擦により、パーキングブレーキによる制動力を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2020-118166号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0309214号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
米国特許出願公開第2020/0309214号明細書(特許文献2)に開示されるように、トラックや商用車などの大型の車両に搭載される電動パーキング式のディスクブレーキ装置においては、大きな制動力を得るために、パッドを複数のピストンにより同時に押圧することが行われている。
【0019】
パッドを複数のピストンにより同時に押圧する構成を備えた電動パーキング式のディスクブレーキ装置にあっては、複数のシリンダのそれぞれの内側に配置された回転直動変換機構を構成する回転部材と、モータギヤユニットのハウジングに収容された複数の出力部材とを、それぞれ互いに同軸に配置し、かつ、トルク伝達可能に接続する必要がある。
【0020】
複数の回転部材と複数の出力部材とを互いに同軸に配置するために、特開2020-118166号公報に記載された従来構造のように、インロー嵌合部を利用することが考えられる。具体的には、回転部材及び出力部材と同数のインロー嵌合部を設け、それぞれのインロー嵌合部ごとに、嵌合軸部と回転部材とを同軸に配置し、かつ、嵌合孔部と出力部材とを同軸に配置することが考えられる。
【0021】
ところが、複数のインロー嵌合部を設けた場合、嵌合軸部の外周面と嵌合孔部の内周面との間のクリアランスの大きさを、全てのインロー嵌合部で厳密に一致させることが困難になる。このため、キャリパに対するハウジングの位置決めは、クリアランスが最も小さいインロー嵌合部に基づいて行われることになる。したがって、クリアランスが最も小さいインロー嵌合部を基準として位置が規制された回転部材と出力部材との同軸度は確保できるが、その他のインロー嵌合部を基準として位置が規制された回転部材と出力部材との同軸度を確保することは難しくなる。この結果、回転直動変換機構の変換効率が低下するなどの問題を生じる可能性がある。
【0022】
また、複数のインロー嵌合部のそれぞれについて、Oリングをインロー嵌合部の径方向に挟持する構成を採用する場合には、クリアランスが最も小さいインロー嵌合部以外のインロー嵌合部については、Oリングの締め代を全周にわたって均一にすることが難しくなる。このため、キャリパとハウジングとの間の密封性を確保することが困難になる。
【0023】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の回転部材と複数の出力部材との同軸度を確保できるとともに、キャリパとハウジングとの間の密封性を確保できる、ディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置は、キャリパと、複数のピストンと、複数の回転直動変換機構と、モータギヤユニットと、複数の環状シールと、位置規制手段と、固定手段と、を備える。
前記キャリパは、ロータよりも軸方向内側に複数のシリンダを有している。
複数の前記ピストンは、複数の前記シリンダのそれぞれに嵌装されている。
複数の前記回転直動変換機構は、複数の前記シリンダ内に配置され、回転運動を直線運動に変換することで複数の前記ピストンのそれぞれを前記ロータに向けて押し出すものであり、回転部材及び直動部材を含んで構成される。
前記モータギヤユニットは、電動モータと、前記回転部材と同軸に配置され、前記電動モータの回転を前記回転部材に伝達する、前記回転部材と同数の複数の出力部材と、前記電動モータ及び複数の前記出力部材を収容するハウジングと、を有しており、前記キャリパに対し支持固定される。
複数の前記環状シールは、前記回転部材と同数備えられており、前記回転部材と同軸に配置され、前記キャリパと前記ハウジングとの間を密封する。
前記位置規制手段は、前記キャリパに対する前記モータギヤユニットの位置を規制する。
前記固定手段は、前記キャリパと前記ハウジングとを固定する。
前記出力部材としては、前記回転部材に接続可能で、かつ、自身の中心軸回りに回転可能な部材であれば特に限定されず、出力軸、出力歯車、出力プーリなどを採用することができる。
【0025】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記環状シールは、前記キャリパと前記ハウジングとの間で軸方向に挟持されている。
前記位置規制手段は、前記回転部材と非同軸に配置され、かつ、前記回転部材の位置の基準になる、前記キャリパに備えられた少なくとも1つ以上のキャリパ側規制部と、前記出力部材と非同軸に配置され、かつ、前記出力部材の位置の基準になる、前記ハウジングに備えられた少なくとも1つ以上のハウジング側規制部とを有しており、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを当接させることで、前記キャリパに対する前記ハウジングの位置を規制する。
【0026】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記キャリパ側規制部を、曲面状又は平坦面状のキャリパ側規制面を1乃至複数有するものとし、前記ハウジング側規制部を、曲面状又は平坦面状のハウジング側規制面を1乃至複数有するものとすることができる。
そして、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを、前記キャリパ側規制面及び前記ハウジング側規制面によって当接させることができる。
なお、曲面状には、円筒面状、球面状、放物面状などを含む。
【0027】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記キャリパ側規制部又は前記ハウジング側規制部のいずれか一方を、規制角部を1乃至複数有するものとし、前記キャリパ側規制部又は前記ハウジング側規制部のいずれか他方を、曲面状又は平坦面状の規制面を1乃至複数有するものとすることができる。
そして、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを、前記規制角部及び前記規制面によって当接させることができる。
【0028】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記キャリパ側規制部及び前記ハウジング側規制部を、2つずつ備えることができる。
【0029】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、2つの前記キャリパ側規制部のうちの第1のキャリパ側規制部と、2つの前記ハウジング側規制部のうちの第1のハウジング側規制部との当接により、前記第1のキャリパ側規制部及び前記第1のハウジング側規制部のそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制し、かつ、2つの前記キャリパ側規制部のうちの第2のキャリパ側規制部と、2つの前記ハウジング側規制部のうちの第2のハウジング側規制部との当接により、前記第1のキャリパ側規制部又は前記第1のハウジング側規制部の中心軸回りの、前記キャリパと前記ハウジングとの相対回転位置を規制することができる。
【0030】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記第2のキャリパ側規制部と前記第2のハウジング側規制部との当接方向を、周方向又は径方向とすることができる。
【0031】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記キャリパ側規制部を、軸方向に突出した凸形状を有するものとすることができる。
この場合には、前記キャリパ側規制部を、前記キャリパとは別体に構成され、かつ、前記キャリパに対して固定されたピン部材から構成することができる。
さらに、前記キャリパ側規制部を、前記キャリパと別体に構成する場合には、前記キャリパ側規制部を、軸方向に関して前記キャリパと前記ハウジングとの間に挟んで配置することもできる。
【0032】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記ハウジング側規制部を、前記ハウジングと一体に構成することができる。
この場合には、前記ハウジング側規制部を、前記ハウジングと一体に構成された補強リブの一部に備えることができる。
また、前記ハウジング側規制部を前記ハウジングと一体に構成する場合には、前記ハウジング側規制部を、軸方向に凹んだ凹形状を有するものとすることができる。
【0033】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記ハウジング側規制部を、前記ハウジングとは別体に構成され、かつ、前記ハウジングに対してモールド固定されたピン部材から構成することができる。
【0034】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置では、前記固定手段を、ボルトとすることができる。
【0035】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置の組立方法は、本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置を組み立てる際に、前記ハウジング又は前記キャリパに作用する重力を利用して、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを当接させる工程を備える。
【0036】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置の組立方法は、前記ボルトを前記固定手段として採用した本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置を組み立てる際に、前記ボルトを締め付ける際に前記ボルトから前記ハウジング又は前記キャリパに作用する回転力を利用して、前記キャリパ側規制部と前記ハウジング側規制部とを当接させる工程を備える。
【発明の効果】
【0037】
本開示の一態様にかかるディスクブレーキ装置によれば、複数の回転部材と複数の出力部材との同軸度を確保できるとともに、キャリパとハウジングとの間の密封性を確保できる、ディスクブレーキ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、軸方向外側(車体の外側)から見た正面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、軸方向内側(車体の中央側)から見た背面図である。
図3図3は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、径方向外側から見た平面図である。
図4図4は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、径方向内側から見た底面図である。
図5図5は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、軸方向外側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図6図6は、図1のA-A線断面図である。
図7図7は、図6の部分拡大図である。
図8図8は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、周方向一方側から見た部分切断側面図である。
図9図9は、図8の部分拡大図である。
図10図10は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、モータギヤユニット取り外した状態で、軸方向内側から見た背面図である。
図11図11は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、モータギヤユニットを取り外した状態で、軸方向内側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図12図12は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を構成するモータギヤユニットを取り出し、軸方向外側から見た正面図である。
図13図13は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を構成するモータギヤユニットを取り出し、軸方向外側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図14図14は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を構成するモータギヤユニットを取り出し、ハウジングを省略して示す斜視図である。
図15図15は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を構成する減速機構を示す、模式図である。
図16図16は、実施の形態の第1例の位置規制手段を示す、断面模式図である。
図17図17は、実施の形態の第2例を示す、図9の一部に相当する部分の断面模式図である。
図18図18は、実施の形態の第3例のディスクブレーキ装置を、キャリパからモータギヤユニットを取り外した状態で示す、模式図である。
図19図19は、実施の形態の第4例を示す、図16に相当する図である。
図20図20は、実施の形態の第5例を示す、図16に相当する図である。
図21図21は、実施の形態の第6例を示す、図16に相当する図である。
図22図22は、実施の形態の第7例を示す、図16に相当する図である。
図23図23は、実施の形態の第8例を示す、図16に相当する図である。
図24図24は、実施の形態の第9例を示す、図16に相当する図である。
図25図25は、実施の形態の第10例を示す、図16に相当する図である。
図26図26は、従来構造のディスクブレーキ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図16を用いて説明する。
【0040】
〔ディスクブレーキ装置の全体構成〕
本例のディスクブレーキ装置1は、電動パーキングブレーキ式のディスクブレーキ装置であり、油圧式のサービスブレーキとしての機能と、電動式のパーキングブレーキとしての機能を併せ持っている。
【0041】
ディスクブレーキ装置1は、キャリパ2と、複数のピストン3a、3bと、複数の回転直動変換機構4a、4bと、モータギヤユニット5と、複数の環状シール6a、6bと、位置規制手段7と、固定手段8とを備える。
【0042】
本例のディスクブレーキ装置1は、フローティング型のディスクブレーキ装置であり、サポート9と、アウタパッド10a及びインナパッド10bとをさらに備える。
【0043】
本例のディスクブレーキ装置1は、比較的大型の車両に組み込まれる。このため、ディスクブレーキ装置1は、ピストン3a、3b、回転直動変換機構4a、4b及び環状シール6a、6bをそれぞれ、2個ずつ備えているが、3個以上ずつ備えることもできる。
【0044】
ディスクブレーキ装置1は、サービスブレーキによる制動力を、キャリパ2に備えられた第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bに、作動油であるブレーキオイル(圧油)を送り込むことによって得る。これに対し、ディスクブレーキ装置1は、パーキングブレーキによる制動力を、作動油を利用せず、モータギヤユニット5により回転直動変換機構4a、4bを駆動することによって得る。
【0045】
モータギヤユニット5は、位置規制手段7によりキャリパ2に対する位置が規制された状態で、固定手段8によりキャリパ2に固定されている。モータギヤユニット5を構成する後述のハウジング48とキャリパ2との間は、複数の環状シール6a、6bにより密封されている。このように本例のディスクブレーキ装置1は、キャリパ2に対するモータギヤユニット5の位置を規制するための位置規制手段7と、モータギヤユニット5をキャリパ2に固定するための固定手段8とを別個に備えている。
【0046】
ディスクブレーキ装置1に関する以下の説明において、軸方向、周方向及び径方向とは、特に断らない限り、車輪とともに回転する円板状のロータ11(図3参照)の軸方向、周方向及び径方向をいう。図1図2図10図12及び図16の表裏方向、図3図4図6及び図7の上下方向、図8及び図9の左右方向が、それぞれ軸方向に相当し、車体への取付状態で車体の中央側を軸方向内側といい、車体への取付状態で車体の外側を軸方向外側という。また、図1図4図6図7図10図12及び図16の左右方向、図8及び図9の表裏方向が、それぞれ周方向に相当する。また、図1図3図6図7図12及び図16の右側、図2図4及び図10の左側が、周方向一方側に相当し、図1図3図6図7図12及び図16の左側、図2図4及び図10の右側が、周方向他方側に相当する。また、図1図2図8図10図12及び図16の上下方向、図3図4図6及び図7の表裏方向が、それぞれ径方向に相当し、図1図2図8図10図12及び図16の上側が、径方向外側であり、図1図2図8図10図12及び図16の下側が、径方向内側である。
【0047】
〈サポート〉
サポート9は、鋳鉄などの鉄系合金の鋳造品であり、ロータ11の軸方向内側に配置されたサポート基部12と、ロータ11の軸方向外側に配置された外側連結部13と、これらサポート基部12の周方向両外側の端部と外側連結部13の周方向両外側の端部とをそれぞれ軸方向に連結する1対の連結腕部14a、14bとを備えている。連結腕部14a、14bのそれぞれの径方向外側部には、軸方向内側に開口した図示しない案内孔が形成されている。サポート9は、サポート基部12の径方向内側部に形成された複数(図示の例では4つ)の取付孔15を利用して、車体を構成する懸架装置に固定される。
【0048】
本例のディスクブレーキ装置1は、サポート9を懸架装置に固定した状態で、周方向一方側の連結腕部14aが上下方向に関して上側に配置され、周方向他方側の連結腕部14bが上下方向に関して下側に配置される。ただし、ディスクブレーキ装置1の組み付け方向は、特に問わない。
【0049】
〈アウタパッド及びインナパッド〉
アウタパッド10a及びインナパッド10bは、ロータ11を軸方向両側から挟むように、ロータ11の軸方向両側に配置されている。アウタパッド10aは、ロータ11の軸方向外側に配置されており、サポート9に対して軸方向に関する変位を可能に支持されている。インナパッド10bは、ロータ11の軸方向内側に配置されており、サポート9に対して軸方向に関する変位を可能に支持されている。
【0050】
アウタパッド10a及びインナパッド10bのそれぞれは、ライニング16と、該ライニング16の裏面を支持した金属製の裏板17とを備えている。
【0051】
〈キャリパ〉
キャリパ2は、アルミニウム系合金製又は鉄系合金製で、周方向から見て逆U字形状を有している。
【0052】
キャリパ2は、ロータ11よりも軸方向内側に、複数のシリンダ18a、18bを備えたクランプ基部19を有しており、ロータ11よりも軸方向外側に押圧部20を有している。クランプ基部19と押圧部20とは、軸方向に連結されている。また、クランプ基部19は、周方向両側の端部に1対の腕部21a、21bを有している。
【0053】
キャリパ2は、ガイドピン22a、22bを利用して、サポート9に対して軸方向に関する変位を可能に支持されている。このために、ガイドピン22a、22bの軸方向内側の端部を腕部21a、21bに固定し、ガイドピン22a、22bの軸方向外側の端部乃至中間部を、サポート9の連結腕部14a、14bに備えられた案内孔の内側に、軸方向に関する相対変位を可能に挿入している。
【0054】
本例では、キャリパ2は、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bの2つのシリンダを有している。
【0055】
第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bのそれぞれは、略円柱状の空間であり、クランプ基部19の軸方向外側面に開口している。第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bのそれぞれの軸方向内側の端部は、底部23a、23bによって塞がれている。ただし、底部23a、23bには、後述するスピンドル36a、36bの軸方向内側の端部を挿通するための挿通孔24a、24bが備えられている。
【0056】
本例では、キャリパ2の軸方向内側にモータギヤユニット5が固定される。このため、クランプ基部19は、軸方向内側面にハウジング対向面25を有する。
【0057】
ハウジング対向面25には、挿通孔24a、24bが開口している。また、ハウジング対向面25のうちで、挿通孔24a、24bの周囲には、挿通孔24a、24bのそれぞれの中心軸と同軸に配置され、かつ、軸方向内側に少しだけ張り出した環状凸部26a、26bが備えられている。また、環状凸部26a、26bの周囲には、円輪面27a、27bが備えられている。円輪面27aは、第1シリンダ18aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面であり、円輪面27bは、第2シリンダ18bの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。
【0058】
本例では、キャリパ2に対してモータギヤユニット5を固定するために、クランプ基部19に、複数(図示の例では3つ)の取付フランジ28a~28cを設けている。
【0059】
取付フランジ28a~28cのうち、クランプ基部19の径方向外側部に備えられた2つの取付フランジ28a、28bは、舌片板状に構成されている。取付フランジ28a、28bは、周方向に離隔して配置されており、径方向外側に向けてそれぞれ伸長している。
【0060】
周方向一方側の取付フランジ28aは、第1シリンダ18aの径方向外側に配置されており、周方向他方側の取付フランジ28bは、第2シリンダ18bの径方向外側に配置されている。取付フランジ28a、28bのそれぞれの径方向外側部には、通孔29a、29bが備えられている。通孔29a、29bのそれぞれには、固定手段8である後述の取付ボルト74a、74bが軸方向に緩く挿通される。
【0061】
取付フランジ28a~28cのうち、クランプ基部19の径方向内側部に備えられた1つの取付フランジ28cは、三角板状に構成されている。取付フランジ28cは、周方向に関して第1シリンダ18aと第2シリンダ18bとの間部分に配置されており、径方向内側に向けて伸長している。取付フランジ28cには、雌ねじ孔30が備えられている。雌ねじ孔30には、固定手段8である後述の取付ボルト74cが螺合される。
【0062】
取付フランジ28a~28cのそれぞれの軸方向内側面は、ハウジング対向面25を構成する。
【0063】
キャリパ2は、キャリパ2に対するモータギヤユニット5の位置を規制するために、位置規制手段7を構成する複数のキャリパ側規制部31、32を有している。本例では、キャリパ2は、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32の2つのキャリパ側規制部を有している。
【0064】
第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれは、円柱形状を有するピン部材からなり、キャリパ2とは別体に構成され、キャリパ2に対して固定されている。第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれの直径は、全長にわたり一定である。本例では、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32として、直径は互いに等しいが、全長が互いに異なる部品を使用しているが、直径だけでなく全長も互いに等しい共通部品を使用することもできる。また、直径及び全長が、いずれも異なる部品を使用することもできる。
【0065】
第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれは、取付フランジ28a、28bに固定されている。具体的には、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32は、それぞれの軸方向外側半部を取付フランジ28a、28bの径方向中間部に形成された固定孔33に圧入することで、取付フランジ28a、28bに固定されている。第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれの軸方向内側半部は、取付フランジ28a、28bの軸方向内側面から軸方向に突出しており、凸形状を有している。キャリパ側規制部をキャリパに固定するための固定方法は、圧入固定の他に、接着固定、かしめ固定など、その他の方法を採用することもできる。
【0066】
第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれは、取付フランジ28a、28bの軸方向内側面から軸方向に突出した部分の外周面に、凸円筒面状(曲面状)のキャリパ側規制面34a、34bを1つ有している。
【0067】
第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれは、取付フランジ28a、28bの径方向中間部に固定されているため、第1シリンダ18a内に該第1シリンダ18aと同軸に配置される後述の第1スピンドル36a、及び、第2シリンダ18b内に該第2シリンダ18bと同軸に配置される後述の第2スピンドル36bと、非同軸に配置されている。
【0068】
本例では、第1キャリパ側規制部31の位置を基準として、第2キャリパ側規制部32の周方向位置及び径方向位置を規制し、かつ、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bのそれぞれの中心軸の周方向位置及び径方向位置を規制している。
【0069】
第1キャリパ側規制部31と第2キャリパ側規制部32とは、周方向に離隔して配置されている。第1キャリパ側規制部31の中心軸と第2キャリパ側規制部32の中心軸とは、互いに平行に配置されている。
【0070】
第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれの中心軸に直交する仮想線Oは、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bのそれぞれの中心軸に直交する仮想線O18と平行に配置されている。
【0071】
また、第1キャリパ側規制部31は、取付フランジ28aの通孔29aの中心軸と第1シリンダ18aの中心軸とを結んだ仮想線よりも周方向他方側に配置されており、第2キャリパ側規制部32は、取付フランジ28bの通孔29bの中心軸と第2シリンダ18bの中心軸とを結んだ仮想線よりも周方向一方側に配置されている。ただし、第1キャリパ側規制部31を、通孔29aの中心軸と第1シリンダ18aの中心軸とを結んだ仮想線上又は該仮想線よりも周方向一方側に配置することもできるし、第2キャリパ側規制部32を、通孔29bの中心軸と第2シリンダ18bの中心軸とを結んだ仮想線上又は該仮想線よりも周方向他方側に配置することもできる。
【0072】
本例では、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32を、キャリパ2と別体に構成し、キャリパ2に対して固定しているが、2つまたは1つのキャリパ側規制部を、キャリパと一体に構成することもできる。
【0073】
〈ピストン〉
本例のディスクブレーキ装置1は、第1ピストン3a及び第2ピストン3bの2つのピストンを備えている。第1ピストン3aは、第1シリンダ18aに嵌装されている。第2ピストン3bは、第2シリンダ18bに嵌装されている。第1ピストン3a及び第2ピストン3bのそれぞれは、たとえばS10CやS45Cなどの炭素鋼製で、有底円筒状に構成されている。
【0074】
第1ピストン3a及び第2ピストン3bのそれぞれの内周面には、雌スプライン35a、35bが備えられている。第1ピストン3a及び第2ピストン3bのそれぞれの軸方向外側の端部は、図示しない回り止め機構により、インナパッド10bの裏板17に対して回り止めされている。第1ピストン3aの外周面の軸方向外側部と第1シリンダ18aの軸方向外側の開口縁部との間部分、及び、第2ピストン3bの外周面の軸方向外側部と第2シリンダ18bの軸方向外側の開口縁部との間部分には、ピストンブーツが掛け渡されている。
【0075】
〈回転直動変換機構〉
本例のディスクブレーキ装置1は、第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bの2つの回転直動変換機構を備えている。第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bのそれぞれは、回転運動を直線運動に変換し、作動時に軸方向に関する全長を変化させる送りねじ機構である。
【0076】
第1回転直動変換機構4aは、第1シリンダ18a内に配置されており、第1ピストン3aをロータ11に向けて押し出す。第1回転直動変換機構4aは、回転部材に相当する第1スピンドル36aと、直動部材に相当する第1ナット37aと、複数個のボール38aとを備えている。第1スピンドル36a及び第1ナット37aのそれぞれは、第1シリンダ18aと同軸に配置されている。
【0077】
第2回転直動変換機構4bは、第2シリンダ18b内に配置されており、第2ピストン3bをロータ11に向けて押し出す。第2回転直動変換機構4bは、回転部材に相当する第2スピンドル36bと、直動部材に相当する第2ナット37bと、複数個のボール38bとを備えている。第2スピンドル36b及び第2ナット37bのそれぞれは、第2シリンダ18bと同軸に配置されている。このため、第1スピンドル36aと第2スピンドル36bとは、互いに平行に配置されている。
【0078】
本例では、第1キャリパ側規制部31の位置を基準として、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bのそれぞれの中心軸の周方向位置及び径方向位置を規制しているため、第1シリンダ18aと同軸に配置される第1スピンドル36a、及び、第2シリンダ18bと同軸に配置される第2スピンドル36bの、それぞれの周方向位置及び径方向位置についても、第1キャリパ側規制部31の位置を基準として規制される。
【0079】
第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bのそれぞれは、軸方向外側半部に大径軸部39a、39bを有し、軸方向内側半部に小径軸部40a、40bを有する。大径軸部39a、39bのそれぞれの外周面には、螺旋状の軸側ねじ溝が備えられている。小径軸部40a、40bのそれぞれの軸方向中間部は、クランプ基部19の底部23a、23bに形成された挿通孔24a、24bを挿通している。このため、小径軸部40a、40bのそれぞれの軸方向内側部は、クランプ基部19から軸方向内側に突出している。小径軸部40a、40bのそれぞれの軸方向内側部の外周面には、雄セレーション41a、41bが形成されている。
【0080】
小径軸部40a、40bのそれぞれの軸方向外側部には、支承リング42a、42b及びスラストベアリング43a、43bが外嵌されている。支承リング42a、42b及びスラストベアリング43a、43bは、大径軸部39a、39bとクランプ基部19の底部23a、23bとの間で軸方向に挟持されている。これにより、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bに作用するスラスト荷重を底部23a、23bによって支承可能とし、かつ、底部23a、23bに対する第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bの相対回転を可能としている。
【0081】
第1ナット37a及び第2ナット37bのそれぞれは、内周面に螺旋状のナット側ねじ溝を有し、かつ、外周面に雄スプライン44a、44bを有する。
【0082】
第1ナット37aは、第1ピストン3aの内側に配置され、外周面の雄スプライン44aを第1ピストン3aに備えられた雌スプライン35aにスプライン係合させている。これにより、第1ナット37aは、第1ピストン3aに対して、軸方向の相対変位を可能にかつ相対回転を不能に係合している。また、第2ナット37bは、第2ピストン3bの内側に配置され、外周面の雄スプライン44bを第2ピストン3bに備えられた雌スプライン35bにスプライン係合させている。これにより、第2ナット37bは、第2ピストン3bに対して、軸方向の相対変位を可能にかつ相対回転を不能に係合している。
【0083】
ボール38a、38bは、軸側ねじ溝とナット側ねじ溝との間に形成される螺旋状の負荷路の内側に、転動可能に配置されている。負荷路の始点と終点とは、循環路により接続されている。
【0084】
第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bのそれぞれは、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bを回転駆動することで、第1ナット37a及び第2ナット37bを軸方向に移動させる。具体的には、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bを正回転方向に回転駆動した場合には、第1ナット37a及び第2ナット37bを、ロータ11に対して近づく方向(軸方向外側)に移動させる。これに対し、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bを逆回転方向に回転駆動した場合には、第1ナット37a及び第2ナット37bを、ロータ11から離れる方向(軸方向内側)に移動させる。なお、第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bとして、ボールを省略した滑り式の送りねじ装置を利用することもできる。
【0085】
〈モータギヤユニット〉
モータギヤユニット(MGU、電動駆動装置)5は、第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bを電気的に駆動するためのもので、電動モータ45と、第1出力軸51a及び第2出力軸51bを含む減速機構46と、無励磁作動型ブレーキ47と、ハウジング48とを備える。
【0086】
《電動モータ》
電動モータ45は、モータ本体49と、モータ軸50とを有する。なお、図15には、電動モータ45の構成要素であるモータ本体49及びモータ軸50を模式的に示している。
【0087】
モータ軸50の軸方向両側の端部は、モータ本体49から軸方向両側に突出している。モータ軸50の軸方向一方側の端部には、減速機構46が接続される。これに対し、モータ軸50の軸方向他方側の端部には、無励磁作動型ブレーキ47が接続される。
【0088】
《減速機構》
減速機構46は、電動モータ45のトルク(動力)を増大して、第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bに伝達する。
【0089】
減速機構46は、電動モータ45の回転を、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bに対してそれぞれ伝達するために、スピンドル36a、36bと同数の、出力部材に相当する出力軸51a、51bを備える。
【0090】
本例では、第1出力軸51a及び第2出力軸51bの2つの出力軸を備えている。第1出力軸51aは、第1スピンドル36aと同軸に配置され、ハウジング48の内側に回転自在に支持されている。第2出力軸51bは、第2スピンドル36bと同軸に配置され、ハウジング48の内側に回転自在に支持されている。
【0091】
第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれは、軸方向外側の端部に、セレーション孔52a、52bを有する。セレーション孔52a、52bは、第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれの軸方向外側の端面に開口している。
【0092】
第1出力軸51aのセレーション孔52aには、第1スピンドル36aの軸方向内側の端部が挿入されている。これにより、セレーション孔52aと第1スピンドル36aに備えられた雄セレーション41aとをセレーション係合させて、第1出力軸51aと第1スピンドル36aとを相対回転不能に接続している。また、第2出力軸51bのセレーション孔52bには、第2スピンドル36bの軸方向内側の端部が挿入されている。これにより、セレーション孔52bと第2スピンドル36bに備えられた雄セレーション41bとをセレーション係合させて、第2出力軸51bと第2スピンドル36bとを相対回転不能に接続している。
【0093】
本例の減速機構46は、ウォーム減速機構53と、動力分配機構(ディファレンシャル)54と、複数の歯車(平歯車)55a~55eと、複数の伝達軸56a、56bとをさらに有する。複数の伝達軸56a、56bは、ハウジング48の内側に回転自在に支持されている。なお、図15には、減速機構46の構成要素であるウォーム減速機構53、動力分配機構54、複数の歯車55a~55e、伝達軸56a、56bの一部を模式的に示している。
【0094】
ウォーム減速機構53は、モータ軸50の軸方向一方側の端部に接続されている。ウォーム減速機構53は、ウォーム57と、ウォームホイール58とからなり、セルフロック機能を備えていない。
【0095】
ウォーム57は、モータ軸50と同軸に配置されており、モータ軸50の軸方向一方側の端部に相対回転不能に接続されている。
【0096】
ウォームホイール58は、伝達軸56aに対して相対回転不能に固定されており、ウォーム57と噛合している。
【0097】
伝達軸56aには、ウォームホイール58から軸方向に外れた部分に、第1の歯車55aが相対回転不能に外嵌固定されている。第1の歯車55aは、伝達軸56bに対して相対回転不能に外嵌固定された第2の歯車55bと噛合している。伝達軸56bには、第2の歯車55bから軸方向に外れた部分に、第2の歯車55bよりも歯数の少ない第3の歯車55cが相対回転不能に外嵌固定されている。第3の歯車55cは、動力分配機構54を構成する入力要素60と噛合している。
【0098】
第1出力軸51aには、最終歯車である第4の歯車55dが外嵌固定されており、第2出力軸51bには、最終歯車である第5の歯車55eが外嵌固定されている。第4の歯車55dは、動力分配機構54を構成する後述の第1出力要素62と噛合しており、第5の歯車55eは、動力分配機構54を構成する後述の第2出力要素63と噛合している。
【0099】
動力分配機構54は、支持軸59と、入力要素60と、中間歯車61a、61bと、第1出力要素62と、第2出力要素63とを有する。なお、入力要素60、第1出力要素62、第2出力要素63についても、外周面に歯部を有する歯車である。
【0100】
入力要素60は、それぞれが円環形状を有する1対の支持環64a、64bと、支持環64a、64bの同士の間に架け渡された複数本のピン65a、65bとを有する。一方の支持環64aの外周面には、第3の歯車55cと噛合する歯部が設けられている。一方の支持環64aの内側には、第2出力要素63が挿通されている。他方の支持環64bの内側には、第1出力要素62が挿通されている。ピン65a、65bは、支持軸59と平行に配置されている。
【0101】
中間歯車61a、61bは、入力要素60に対して回転自在に支持されている。具体的には、中間歯車61a、61bは、ピン65a、65bの周囲に回転自在に支持されており、1対の支持環64a、64bの間部分に配置されている。中間歯車61aと中間歯車61bとは、互いに噛合している。
【0102】
第1出力要素62は、中空筒状に構成されており、支持軸59の周囲に回転自在に支持されている。第1出力要素62は、入力歯部62aと出力歯部62bとを有する。入力歯部62aは、一方の中間歯車61aに対して噛合している。これに対し、出力歯部62bは、第1出力軸51aに対して相対回転不能に外嵌固定された、最終歯車である第4の歯車55dに対して噛合している。
【0103】
第2出力要素63は、中空筒状に構成されており、支持軸59の周囲に回転自在に支持されている。第2出力要素63は、入力歯部63aと出力歯部63bとを有する。入力歯部63aは、他方の中間歯車61bに対して噛合している。これに対し、出力歯部63bは、第2出力軸51bに対して相対回転不能に外嵌固定された、最終歯車である第5の歯車55eに対して噛合している。
【0104】
このため、第1出力要素62の回転は、出力歯部62bと最終歯車である第4の歯車55dとの噛合部を通じて、第1出力軸51aに伝達される。また、第2出力要素63の回転は、出力歯部63bと最終歯車である第5の歯車55eとの噛合部を通じて、第2出力軸51bに伝達される。
【0105】
動力分配機構54は、入力要素60に入力された動力を、第1出力軸51aに相対回転不能に固定された最終歯車である第4の歯車55d、及び、第2出力軸51bに相対回転不能に固定された最終歯車である第5の歯車55eに対して、分配して伝達する機能を有する。具体的には、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bの回転負荷の大きさ(回転しやすさ)に応じた動力を、第4の歯車55d及び第5の歯車55eに分配する。これにより、第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bの効率の差などに拘らず、第1回転直動変換機構4aにより第1ピストン3aがインナパッド10bを押圧する力と、第2回転直動変換機構4bにより第2ピストン3bがインナパッド10bを押圧する力とに差が生じることを防止する。
【0106】
《無励磁作動型ブレーキ》
無励磁作動型ブレーキ47は、モータ軸50の軸方向他方側の端部に接続されている。無励磁作動型ブレーキ47は、摩擦ブレーキであり、通電時にモータ軸50の回転を許容し、かつ、無通電時にモータ軸50の回転を阻止する機能を有する機能を有している。
【0107】
《ハウジング》
ハウジング48は、合成樹脂製又は金属製で、電動モータ45、減速機構46及び無励磁作動型ブレーキ47を収容している。
【0108】
ハウジング48は、キャリパ2を構成するクランプ基部19の軸方向内側に固定されている。このため、ハウジング48は、軸方向外側面にキャリパ対向面66を有する。
【0109】
キャリパ対向面66は、第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれの軸方向外側の端面と対向する部分に、挿入孔67a、67bを有する。
【0110】
キャリパ対向面66は、挿入孔67a、67bの周囲に、挿入孔67a、67bのそれぞれの中心軸と同軸に配置され、かつ、軸方向内側に少しだけ凹んだ環状凹部68a、68bを有する。環状凹部68aの底面は、円輪形状を有し、第1出力軸51aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。環状凹部68bの底面は、円輪形状を有し、第2出力軸51bの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。
【0111】
キャリパ対向面66は、環状凹部68a、68aよりも径方向外側に存在する部分、及び、周方向に関して環状凹部68a、68bの間に存在する部分に、補強リブ69を有する。本例では、ハウジング48に補強リブ69を設けることにより、ハウジング48の軽量化と剛性の確保との両立を図っている。
【0112】
補強リブ69のうちで、環状凹部68a、68aよりも径方向外側に存在する部分は、格子形状を有しており、複数枚の第1補強板70aと複数枚の第2補強板70bとからなる。
【0113】
複数枚の第1補強板70aは、周方向にそれぞれ伸長し、かつ、径方向に離隔して互いに平行に配置されている。複数枚の第2補強板70bは、径方向にそれぞれ伸長し、かつ、周方向に離隔して互いに平行に配置されている。第2補強板70bは、第1補強板70aに対して直角に配置されており、径方向に離隔して配置された2枚の第1補強板70aを連結している。
【0114】
径方向に隣り合う第1補強板70a同士の間隔は、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32の直径よりも十分に大きい。また、周方向に隣り合う第2補強板70b同士の間隔は、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32の直径よりも十分に大きい。
【0115】
キャリパ対向面66は、補強リブ69の径方向外側の端部の周方向両側の端部に、2つの筒状部71a、71bを有する。また、キャリパ対向面66は、周方向に関して環状凹部68a、68bの間部分の径方向内側部に、筒状部71cを有する。筒状部71a~71cは、補強リブ69よりも軸方向外側に向けて突出している。本例では、ハウジング48をキャリパ2に固定した状態で、第1キャリパ側規制部31と後述の第1ハウジング側規制部75との当接部及び第2キャリパ側規制部32と後述の第2ハウジング側規制部76との当接部を除いては、筒状部71a~71cのそれぞれの軸方向外側の端面のみが、ハウジング対向面25に対して当接する。
【0116】
径方向外側に配置された2つの筒状部71a、71bは、それぞれの内周面に雌ねじ孔72a、72bを有する。これに対し、径方向内側に配置された1つの筒状部71cは、内側に貫通孔73を有する。雌ねじ孔72a、72b及び貫通孔73は、キャリパ対向面66に開口している。
【0117】
ハウジング48は、それぞれが固定手段8を構成する取付ボルト74a~74cを利用して、キャリパ2のクランプ基部19の軸方向内側に固定されている。具体的には、キャリパ2の取付フランジ28a、28bに備えられた通孔29a、29bを軸方向外側から軸方向内側に挿通した取付ボルト74a、74bを、ハウジング48の雌ねじ孔72a、72bに螺合し、かつ、ハウジング48の貫通孔73を軸方向内側から軸方向外側に挿通した取付ボルト74cを、キャリパ2の取付フランジ28cに備えられた雌ねじ孔30に螺合する。これにより、ハウジング48をクランプ基部19の軸方向内側に固定している。
【0118】
本例では、取付ボルト74a、74bを、取付フランジ28a、28bの通孔29a、29bに緩く挿通し、かつ、取付ボルト74cを、ハウジング48の貫通孔73に緩く挿通している。このため、取付ボルト74a~74cによっては、キャリパ2に対するハウジング48の位置を厳密に規制することができない。
【0119】
ハウジング48は、キャリパ2に対するモータギヤユニット5の位置を規制するために、位置規制手段7を構成する複数のハウジング側規制部75、76を有している。本例では、ハウジング48は、第1ハウジング側規制部75及び第2ハウジング側規制部76の2つのハウジング側規制部を有している。
【0120】
第1ハウジング側規制部75及び第2ハウジング側規制部76のそれぞれは、ハウジング48と一体に構成されている。具体的には、第1ハウジング側規制部75及び第2ハウジング側規制部76のそれぞれは、補強リブ69の一部に備えられている。このため、第1ハウジング側規制部75及び第2ハウジング側規制部76のそれぞれは、第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれと非同軸に配置されている。
【0121】
第1ハウジング側規制部75は、周方向一方側に配置された環状凹部68aと筒状部71aとの径方向間部分に配置された第1補強板70aと、該第1補強板70aの周方向一方側の端部に径方向外側の端部が接続された第2補強板70bとから構成されている。このため、第1ハウジング側規制部75は、L字板状に構成されており、径方向内側面に平坦面状のハウジング側規制面77aを有し、かつ、周方向他方側を向いた側面に平坦面状のハウジング側規制面77bを有する。つまり、第1ハウジング側規制部75は、平坦面状のハウジング側規制面77a、77bを2つ有する。2つのハウジング側規制面77a、77bは、互いに直角に接続されている。
【0122】
これに対し、第2ハウジング側規制部76は、周方向他方側に配置された環状凹部68bと筒状部71bとの径方向間部分に配置された第1補強板70aのみから構成されている。このため、第2ハウジング側規制部76は、平板状に構成されており、径方向内側面に平坦面状のハウジング側規制面77cを有する。つまり、第2ハウジング側規制部76は、平坦面状のハウジング側規制面77cを1つ有する。
【0123】
第1ハウジング側規制部75のハウジング側規制面77a、及び、第2ハウジング側規制部76のハウジング側規制面77cは、同一の仮想平面上に存在しており、第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれの中心軸に直交する仮想線O51と平行である。
【0124】
本例では、第1ハウジング側規制部75の位置、すなわち、ハウジング側規制面77aの径方向位置及びハウジング側規制面77bの周方向位置を基準として、ハウジング48の内側に回転自在に支持される第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制している。
【0125】
本例では、固定手段8によりハウジング48をキャリパ2に対して固定する以前の状態で、位置規制手段7を利用して、キャリパ2に対するハウジング48の位置を規制する。
【0126】
具体的には、ハウジング対向面25にキャリパ対向面66を重ね合わせる際に、第1キャリパ側規制部31の凸円筒面状のキャリパ側規制面34aの径方向外側の端部を、第1ハウジング側規制部75の平坦面状のハウジング側規制面77aに当接させるとともに、第1キャリパ側規制部31の凸円筒面状のキャリパ側規制面34aの周方向一方側の端部を、第1ハウジング側規制部75の平坦面状のハウジング側規制面77bに当接させる。これにより、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75のそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。別の言い方をすれば、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75のそれぞれの周方向位置及び径方向位置を一致させる。そして、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75を、位置規制の基準点とする。
【0127】
さらに、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させた状態から、第2キャリパ側規制部32の凸円筒面状のキャリパ側規制面34bの径方向外側の端部を、第2ハウジング側規制部76の平坦面状のハウジング側規制面77cに当接させる。つまり、本例では、キャリパ側規制面34bとハウジング側規制面77cとを径方向に当接させる。これにより、基準点である第1キャリパ側規制部31の中心軸O31回りの、キャリパ2とハウジング48との相対回転位置(回転位相)を規制する。本例では、このようにして、キャリパ2に対するハウジング48の位置を規制する。
【0128】
本例では、ハウジング48の径方向内側部が鉛直方向下側を向くように、ハウジング48の向きを規制した状態で、キャリパ対向面66をハウジング対向面25に重ね合わせる。これにより、ハウジング48に作用する重力を利用して、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させ、かつ、第2キャリパ側規制部32と第2ハウジング側規制部76とを当接させることができる。そして、重力の作用により、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させ、かつ、第2キャリパ側規制部32と第2ハウジング側規制部76とを当接させた状態で、固定手段8によりキャリパ2に対してハウジング48を固定する。
【0129】
あるいは、取付ボルト74a、74bを締め付ける際に、取付ボルト74a、74bからハウジング48に作用する回転力(モーメント力)を利用するか、又は、取付ボルト74cを締め付ける際に、取付ボルト74cからキャリパ2に作用する回転力を利用して、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させ、かつ、第2キャリパ側規制部32と第2ハウジング側規制部76とを当接させることもできる。
【0130】
本例では、キャリパ2とハウジング48との間を密封するために、ハウジング対向面25とキャリパ対向面66との間に、第1環状シール6a及び第2環状シール6bを配置している。
【0131】
本例では、第1環状シール6aを、第1スピンドル36aと同軸に配置して、ハウジング対向面25の円輪面27aとキャリパ対向面66の環状凹部68aの底面との間で、軸方向に弾性的に挟持している。また、第2環状シール6bを、第2スピンドル36bと同軸に配置して、ハウジング対向面25の円輪面27bとキャリパ対向面66の環状凹部68bの底面との間で、軸方向に弾性的に挟持している。これにより、キャリパ2とハウジング48との間を密封している。
【0132】
[ディスクブレーキ装置の動作説明]
本例のディスクブレーキ装置1によりサービスブレーキを作動させる際には、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bに、図示しない通油路を通じてブレーキオイルを送り込む。これにより、第1ピストン3a及び第2ピストン3bを、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bから押し出し、インナパッド10bをロータ11の軸方向内側面に押し付ける。また、押し付けに伴う反力により、キャリパ2を、サポート9に対し軸方向内側に変位させる。そして、キャリパ2の押圧部20により、アウタパッド10aをロータ11の軸方向外側面に押し付ける。これにより、アウタパッド10a及びインナパッド10bとロータ11との接触面に作用する摩擦により、制動力を得る。このように、ディスクブレーキ装置1は、サービスブレーキによる制動力を、ブレーキオイルの導入により、第1ピストン3a及び第2ピストン3bを押し出すことにより得る。
【0133】
ディスクブレーキ装置1によりパーキングブレーキを作動させる際には、モータギヤユニット5を構成する電動モータ45に通電し、減速機構46を介して、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bを正回転方向に回転駆動する。これにより、第1ナット37a及び第2ナット37bを軸方向外側に移動させる。そして、第1ピストン3a及び第2ピストン3bをロータ11に向けて押し出すことで、インナパッド10bをロータ11の軸方向内側面に押し付ける。また、押し付けに伴う反力により、キャリパ2を、サポート9に対し軸方向内側に変位させる。そして、キャリパ2の押圧部20により、アウタパッド10aをロータ11の軸方向外側面に押し付ける。これにより、インナパッド10b及びアウタパッド10aとロータ11との接触面に作用する摩擦により、制動力を得る。このように、ディスクブレーキ装置1は、パーキングブレーキによる制動力を、モータギヤユニット5を利用して第1ピストン3a及び第2ピストン3bを押し出すことにより得る。
【0134】
また、自動車のエンジンを停止し、電動モータ45への通電が停止した無通電時には、無励磁作動型ブレーキ47を構成する電磁コイルへの通電を停止する。このため、無励磁作動型ブレーキ47によって、モータ軸50の回転を阻止することができる。このため、本例のディスクブレーキ装置1は、電動モータ45への通電が停止した状態においても、パーキングブレーキによる制動力を保持することができる。
【0135】
本例のディスクブレーキ装置1によれば、第1スピンドル36aと第1出力軸51aとの同軸度、及び、第2スピンドル36bと第2出力軸51bとの同軸度を、それぞれ確保できるとともに、キャリパ2とハウジング48との間の密封性を確保できる。
【0136】
すなわち、本例では、キャリパ2にハウジング48を固定する以前の状態で、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させることで、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75のそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。つまり、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75のそれぞれの周方向位置及び径方向位置を一致させる。さらにこの状態から、第2キャリパ側規制部32と第2ハウジング側規制部76とを当接させることで、基準点となる第1キャリパ側規制部31の中心軸О31回りの、キャリパ2とハウジング48との相対回転位置を規制する。これにより、本例では、キャリパ2に対するハウジング48の位置(周方向位置、径方向位置及び相対回転位置)を厳密に規制できる。
【0137】
また、本例では、第1キャリパ側規制部31の位置を基準として、第1スピンドル36a及び第2スピンドル36bのそれぞれの中心軸の位置(周方向位置及び径方向位置)を規制し、かつ、第1ハウジング側規制部75の位置を基準として、第1出力軸51a及び第2出力軸51bのそれぞれの中心軸の位置(周方向位置及び径方向位置)を規制している。
【0138】
したがって、本例のディスクブレーキ装置1によれば、第1スピンドル36aと第1出力軸51aとの同軸度、及び、第2スピンドル36bと第2出力軸51bとの同軸度を、それぞれ確保することができる。このため、第1回転直動変換機構4a及び第2回転直動変換機構4bの変換効率の低下を防止できる。また、各摺動部の異常摩耗を防止できる。さらには、ブレーキオイルの液漏れを防止することもできる。
【0139】
また、本例では、第1環状シール6aを、第1スピンドル36aと同軸に配置して、ハウジング対向面25の円輪面27aとキャリパ対向面66の環状凹部68aの底面との間で、軸方向に弾性的に挟持している。また、第2環状シール6bを、第2スピンドル36bと同軸に配置して、ハウジング対向面25の円輪面27bとキャリパ対向面66の環状凹部68bの底面との間で、軸方向に弾性的に挟持している。このため、第1環状シール6a及び第2環状シール6bにより、キャリパ2とハウジング48との間を密封することができる。具体的には、ハウジング対向面25に開口した挿通孔24a、24bを通じて、第1シリンダ18a及び第2シリンダ18bの内側に異物が侵入することを防止できるとともに、キャリパ対向面66に開口した挿入孔67a、67を通じて、ハウジング48の内側に異物が侵入することを防止できる。特に本例では、第1環状シール6aを、円輪面27aと環状凹部68aの底面との間で軸方向に挟持しており、インロー嵌合部に配置していない。また、第2環状シール6bを、円輪面27bと環状凹部68bの底面との間で軸方向に挟持しており、インロー嵌合部に配置していない。このため、第1環状シール6aを挟持する円輪面27a及び環状凹部68aの底面、並びに、第2環状シール6bを挟持する円輪面27b及び環状凹部68bの底面のそれぞれの平面度を確保することで、第1スピンドル36aと第1出力軸51aとの同軸度、及び、第2スピンドル36bと第2出力軸51bとの同軸度を確保することから切り離して、第1環状シール6a及び第2環状シール6bのそれぞれの締め代を全周にわたって均一にすることが可能になり、設計の自由度の向上を図れる。
【0140】
本例では、ハウジング48に備えられた補強リブ69の一部を、第1ハウジング側規制部75及び第2ハウジング側規制部76として利用しているため、部品点数の増加を抑制できるとともに、ディスクブレーキ装置1の軽量化を図れる。
【0141】
また、本例では、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれの軸方向外側の半部を、キャリパ対向面66に備えられた補強リブ69の間に存在する凹み部79の内側に挿入配置している。このため、位置規制手段7を設けたことに起因して、ディスクブレーキ装置1の軸方向寸法が大型化することを防止できる。
【0142】
また、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32のそれぞれは、円筒面状のキャリパ側規制面34a、34bを有している。このため、第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32を固定孔33に挿入する際の位相が制限されずに済み、組立コストの低減を図れる。
【0143】
また、本例では、ハウジング48に作用する重力を利用して、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させ、かつ、第2キャリパ側規制部32と第2ハウジング側規制部76とを当接させることができるため、当接不良を防止できるとともに、組立工数の低減を図ることができる。また、取付ボルト74a~74cを締め付ける際の回転力を利用して、第1キャリパ側規制部31と第1ハウジング側規制部75とを当接させる、又は/及び、第2キャリパ側規制部32と第2ハウジング側規制部76とを当接させることもできる。この場合にも、組立工数の低減を図ることができる。
【0144】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図17を用いて説明する。
【0145】
本例では、キャリパ2に形成する固定孔33aの内径を、段階的に異ならせることで、固定孔33aの内周面に段差面80を設けている。そして、第1キャリパ側規制部31(及び第2キャリパ側規制部32)の軸方向外側の端面を段差面80に突き当てている。なお、固定孔を止まり孔として、キャリパ側規制部の端面を固定孔の底面に突き当てる構成を採用することもできる。
【0146】
また、第1キャリパ側規制部31(及び第2キャリパ側規制部32)の軸方向内側の端面を、キャリパ対向面66のうちで、斜格子状の補強リブ69の間部分に備えられた凹み部79の底面79aに対向させている。
【0147】
このように本例では、第1キャリパ側規制部31(及び第2キャリパ側規制部32)を、段差面80と凹み部79の底面79aとの間で軸方向両側から挟持している。
【0148】
以上のような本例では、第1キャリパ側規制部31(及び第2キャリパ側規制部32)が、固定孔33aから軸方向に抜け出ることを、段差面80及び凹み部79の底面79aにより有効に防止することができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0149】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、図18を用いて説明する。
【0150】
本例では、位置規制手段7の構造のみを、実施の形態の第1例の構造から変更している。具体的には、ハウジング対向面25に設ける第1キャリパ側規制部31a及び第2キャリパ側規制部32aのそれぞれを、軸方向に凹んだ凹形状を有するものとし、かつ、キャリパ対向面66に設ける第1ハウジング側規制部75a及び第2ハウジング側規制部76aのそれぞれを、軸方向に突出した凸形状を有するものとしている。
【0151】
本例では、第1キャリパ側規制部31a及び第2キャリパ側規制部32aのそれぞれは、キャリパ2に対して直接形成されている。これに対し、第1ハウジング側規制部75a及び第2ハウジング側規制部76aのそれぞれは、ハウジング48とは別体に構成され、かつ、ハウジング48にモールド固定されたピン部材から構成されているか、又は、ハウジング48と一体成形されている。
【0152】
以上のような本例では、第1ハウジング側規制部75a及び第2ハウジング側規制部76aを、ハウジング48にモールド固定されたピン部材とするか、又は、ハウジング48に一体成形しているため、ディスクブレーキ装置1のコスト低減を図ることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0153】
[実施の形態の第4例]
実施の形態の第4例について、図19を用いて説明する。
【0154】
本例では、位置規制手段7の構造のみを、実施の形態の第1例の構造から変更している。具体的には、位置規制手段7を構成する第1ハウジング側規制部75b及び第2ハウジング側規制部76bの構造のみを、実施の形態の第1例の構造から変更している。第1キャリパ側規制部31及び第2キャリパ側規制部32の構造は、実施の形態の第1例の構造と同じである。
【0155】
本例では、第1ハウジング側規制部75b及び第2ハウジング側規制部76bのそれぞれを、キャリパ対向面66から軸方向に凹んだ凹形状を有する円柱状凹部としている。そして、第1ハウジング側規制部75bの内径を、第1キャリパ側規制部31の外径よりもわずかに大きい程度とし、第2ハウジング側規制部76bの内径を、第2キャリパ側規制部32の外径よりも十分に大きくしている。
【0156】
本例では、第1ハウジング側規制部75bに第1キャリパ側規制部31をがたつきなく挿入する、すなわち軽圧入することで、第1ハウジング側規制部75bの内周面に備えられた凹円筒面状(曲面状)のハウジング側規制面77dと、第1キャリパ側規制部31の外周面に備えられた凸円筒面状のキャリパ側規制面34aとを全周にわたり当接させている。これにより、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75bのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。本例では、キャリパ側規制面34aとハウジング側規制面77dとを全周にわたり当接させているため、キャリパ2とハウジング48とは、第1キャリパ側規制部31の中心軸О31(又は第1ハウジング側規制部75bの中心軸О75)回りの回転以外の、すべての方向への平行移動が阻止される。
【0157】
さらに本例では、第2ハウジング側規制部76bの内周面に備えられた凹円筒面状のハウジング側規制面77eの径方向外側の端部に、第2キャリパ側規制部32の外周面に備えられたキャリパ側規制面34bのうちの径方向外側の端部を当接させる。つまり、ハウジング側規制面77eとキャリパ側規制面34bとを径方向に当接させる。これにより、基準点である第1キャリパ側規制部31の中心軸О31(又は第1ハウジング側規制部75bの中心軸О75)回りの、キャリパ2とハウジング48との相対回転位置を規制する。なお、ハウジング側規制面77eとキャリパ側規制面34bとは、ハウジング48に作用する重力を利用して当接させることができる。また、ハウジング側規制面77eの径方向内側の端部に、キャリパ側規制面34bのうちの径方向内側の端部を当接させる構成を採用した場合には、ハウジング側規制面77eとキャリパ側規制面34bとを、キャリパ2に作用する重力を利用して当接させることができる。
【0158】
以上のような本例では、第1ハウジング側規制部75bの内側に第1キャリパ側規制部31を挿入するだけで、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75bのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制できるため、組立作業の作業性の向上を図れ、組立工数の低減を図れる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0159】
[実施の形態の第5例]
実施の形態の第5例について、図20を用いて説明する。
【0160】
本例では、第2ハウジング側規制部76cの構造のみを、実施の形態の第4例の構造から変更している。第1キャリパ側規制部31、第2キャリパ側規制部32及び第1ハウジング側規制部75bの構造は、実施の形態の第4例の構造と同じである。
【0161】
本例では、第2ハウジング側規制部76cとして、補強リブ69を構成する第1補強板70aを利用している。そして、第2ハウジング側規制部76cに備えられた平坦面状のハウジング側規制面77fに、第2キャリパ側規制部32の外周面に備えられたキャリパ側規制面34bのうちの径方向外側の端部を当接させている。これにより、基準点である第1キャリパ側規制部31の中心軸О31(又は第1ハウジング側規制部75bの中心軸О75)回りの、キャリパ2とハウジング48との相対回転位置を規制する。なお、本例の場合にも、ハウジング側規制面77fとキャリパ側規制面34bとは、ハウジング48に作用する重力を利用して当接させることができる。
【0162】
以上のような本例では、補強リブ69の一部を第2ハウジング側規制部76cとして利用できるため、コストの低減を図ることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第4例と同じである。
【0163】
[実施の形態の第6例]
実施の形態の第6例について、図21を用いて説明する。
【0164】
本例では、第1ハウジング側規制部75cの構造の構造のみを、実施の形態の第5例の構造から変更している。第1キャリパ側規制部31、第2キャリパ側規制部32及び第2ハウジング側規制部76cの構造は、実施の形態の第5例の構造と同じである。
【0165】
本例では、第1ハウジング側規制部75cを、キャリパ対向面66から軸方向に凹んだ凹形状を有する四角凹部又は四角孔としている。第1ハウジング側規制部75cは、内周面にそれぞれが平坦面状のハウジング側規制面77g、77hを2つ有する。2つのハウジング側規制面77g、77hは、互いに直角に接続されている。
【0166】
本例では、第1キャリパ側規制部31の凸円筒面状のキャリパ側規制面34aの径方向外側の端部を、第1ハウジング側規制部75cの平坦面状のハウジング側規制面77gに当接させるとともに、第1キャリパ側規制部31の凸円筒面状のキャリパ側規制面34aの周方向一方側の端部を、第1ハウジング側規制部75cの平坦面状のハウジング側規制面77hに当接させる。これにより、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75cのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。
【0167】
以上のような本例の場合には、第1ハウジング側規制部75cを四角凹部又は四角孔としているため、第1ハウジング側規制部75cを、射出成型又はプレス加工により容易に形成することができる。したがって、第1ハウジング側規制部75cの加工コストを低減できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第5例と同じである。
【0168】
[実施の形態の第7例]
実施の形態の第7例について、図22を用いて説明する。
【0169】
本例の場合にも、第1ハウジング側規制部75dの構造の構造のみを、実施の形態の第5例の構造から変更している。第1キャリパ側規制部31、第2キャリパ側規制部32及び第2ハウジング側規制部76cの構造は、実施の形態の第5例の構造と同じである。
【0170】
本例では、第1ハウジング側規制部75dを、キャリパ対向面66から軸方向に凹んだ凹形状を有する三角凹部又は三角孔としている。第1ハウジング側規制部75dは、内周面にそれぞれが平坦面状のハウジング側規制面77i、77jを2つ有する。2つのハウジング側規制面77i、77jは、挟角が鋭角になるように互いに接続されている。
【0171】
本例では、第1キャリパ側規制部31の凸円筒面状のキャリパ側規制面34aを、第1ハウジング側規制部75dの平坦面状の2つのハウジング側規制面77i、77jに当接させる。これにより、第1キャリパ側規制部31及び第1ハウジング側規制部75dのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。
【0172】
以上のような本例では、第1キャリパ側規制部31を第1ハウジング側規制部75dの内側に挿入し、キャリパ側規制面34aを2つのハウジング側規制面77i、77jに同時に当接させた状態で、ハウジング48がキャリパ2に対して周方向に相対移動することを阻止できる。このため、組立作業の作業性の向上を図れ、組立工数の低減を図れる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第5例と同じである。
【0173】
[実施の形態の第8例]
実施の形態の第8例について、図23を用いて説明する。
【0174】
本例の場合にも、第1キャリパ側規制部31b及び第2キャリパ側規制部32bの構造のみを、実施の形態の第5例の構造から変更している。第1ハウジング側規制部75b及び第2ハウジング側規制部76cの構造は、実施の形態の第5例の構造と同じである。
【0175】
本例では、第1キャリパ側規制部31b及び第2キャリパ側規制部32bのそれぞれを、ハウジング対向面25から軸方向に突出した凸形状を有する四角柱としている。第1キャリパ側規制部31bは、径方向外側面と周方向一方側の側面とを接続するキャリパ側規制角部81aを有し、かつ、径方向外側面と周方向他方側の側面とを接続するキャリパ側規制角部81bを有する。これに対し、第2キャリパ側規制部32bは、径方向外側面に平坦面状のキャリパ側規制面34cを有する。
【0176】
本例では、第1ハウジング側規制部75bに第1キャリパ側規制部31bを挿入することで、第1ハウジング側規制部75bの内周面に備えられた凹円筒面状のハウジング側規制面77dに、第1キャリパ側規制部31bに備えられた2つのキャリパ側規制角部81a、81bを当接させる。これにより、第1キャリパ側規制部31b及び第1ハウジング側規制部75bのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。
【0177】
さらに本例では、第2ハウジング側規制部76cに備えられた平坦面状のハウジング側規制面77fに、第2キャリパ側規制部32bに備えられたキャリパ側規制面34cを面接触させる。これにより、基準点である第1ハウジング側規制部75bの中心軸О75回りの、キャリパ2とハウジング48との相対回転位置を規制する。
【0178】
以上のような本例では、キャリパ側規制面34cとハウジング側規制面77fとを面接触させるため、キャリパ2とハウジング48との相対回転位置を厳密に規制できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第5例と同じである。
【0179】
[実施の形態の第9例]
実施の形態の第9例について、図24を用いて説明する。
【0180】
本例では、第1キャリパ側規制部31cの構造のみを、実施の形態の第8例の構造から変更している。第2キャリパ側規制部32b、第1ハウジング側規制部75b及び第2ハウジング側規制部76cの構造は、実施の形態の第8例の構造と同じである。
【0181】
本例では、第1キャリパ側規制部31cを、ハウジング対向面25から軸方向に突出した凸形状を有する三角柱としている。第1キャリパ側規制部31cは、径方向外側面と周方向一方側の側面とを接続するキャリパ側規制角部81cを有し、かつ、径方向外側面と周方向他方側の側面とを接続するキャリパ側規制角部81dを有する。
【0182】
本例の場合にも、第1ハウジング側規制部75bに第1キャリパ側規制部31cを挿入することで、第1ハウジング側規制部75bの内周面に備えられた凹円筒面状のハウジング側規制面77dに、第1キャリパ側規制部31cに備えられた2つのキャリパ側規制角部81c、81dを当接させる。これにより、第1キャリパ側規制部31c及び第1ハウジング側規制部75bのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。
【0183】
本例の場合には、第1ハウジング側規制部75bに第1キャリパ側規制部31cを挿入した際に、第1キャリパ側規制部31cの周方向一方側の側面と周方向他方側の側面とを接続する残りの角部を、ハウジング側規制面77dに軽く接触させることもできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第8例と同じである。
【0184】
[実施の形態の第10例]
実施の形態の第10例について、図25を用いて説明する。
【0185】
本例では、第1キャリパ側規制部31dの構造のみを、実施の形態の第8例の構造から変更している。第2キャリパ側規制部32b、第1ハウジング側規制部75b及び第2ハウジング側規制部76cの構造は、実施の形態の第8例の構造と同じである。
【0186】
本例では、第1キャリパ側規制部31dを、ハウジング対向面25から軸方向に突出した凸形状を有する星型角柱としている。
【0187】
本例の場合には、第1ハウジング側規制部75bに第1キャリパ側規制部31dを挿入することで、第1ハウジング側規制部75bの内周面に備えられた凹円筒面状のハウジング側規制面77dに、第1キャリパ側規制部31dの径方向外側部に備えられた少なくとも2つのキャリパ側規制角部81e、81fを当接させる。これにより、第1キャリパ側規制部31d及び第1ハウジング側規制部75bのそれぞれの周方向位置及び径方向位置を規制する。
【0188】
本例の場合には、第1ハウジング側規制部75bに第1キャリパ側規制部31dを挿入した際に、第1キャリパ側規制部31dの外周面に備えられたその他の角部を、ハウジング側規制面77dに軽く接触させることもできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第8例と同じである。
【0189】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、実施の形態の各例の構造は、矛盾を生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【0190】
位置規制手段を構成するキャリパ側規制部及びハウジング側規制部の構造は、実施の形態の各例で示した構造に限定されず、適宜変更することができる。
【0191】
実施の形態の各例では、キャリパ側規制部及びハウジング側規制部を2つずつ設けた場合について説明したが、キャリパ側規制部及びハウジング側規制部の数は、2つずつに限定されない。たとえば、1つのキャリパ側規制部と1つのハウジング側規制部とにより、周方向位置、径方向位置及び相対回転位置を同時に規制することができれば、キャリパ側規制部及びハウジング側規制部は1つずつ設けても良い。たとえば、このようなキャリパ側規制部及びハウジング側規制部としては、キャリパ側規制部又はハウジング側規制部の一方を、三角柱、四角柱などの角柱形状とし、キャリパ側規制部又はハウジング側規制部の他方を、三角凹部(三角孔)、四角凹部(四角孔)などの角柱状凹部(角孔)として、キャリパ側規制部とハウジング側規制部とを隙間なく嵌合させる構造が挙げられる。
【0192】
また、キャリパ側規制部及びハウジング側規制部のそれぞれの設置位置についても、実施の形態の各例で示した構造に限定されず、ハウジング対向面及びキャリパ対向面の任意の位置に設置することができる。
【符号の説明】
【0193】
1 ディスクブレーキ装置
2 キャリパ
3a 第1ピストン
3b 第2ピストン
4a 第1回転直動変換機構
4b 第2回転直動変換機構
5 モータギヤユニット
6a 第1環状シール
6b 第2環状シール
7 位置規制手段
8 固定手段
9 サポート
10a アウタパッド
10b インナパッド
11 ロータ
12 サポート基部
13 外側連結部
14a、14b 連結腕部
15 取付孔
16 ライニング
17 裏板
18a 第1シリンダ
18b 第2シリンダ
19 クランプ基部
20 押圧部
21a、21b 腕部
22a、22b ガイドピン
23a、23b 底部
24a、24b 挿通孔
25 ハウジング対向面
26a、26b 環状凸部
27a、27b 円輪面
28a~28c 取付フランジ
29a、29b 通孔
30 雌ねじ孔
31、31a~31d 第1キャリパ側規制部
32、32a、32b 第2キャリパ側規制部
33、33a 固定孔
34a~34c キャリパ側規制面
35a、35b 雌スプライン
36a 第1スピンドル
36b 第2スピンドル
37a 第1ナット
37b 第2ナット
38a、38b ボール
39a、39b 大径軸部
40a、40b 小径軸部
41a、41b 雄セレーション
42a、42b 支承リング
43a、43b スラストベアリング
44a、44b 雄スプライン
45 電動モータ
46 減速機構
47 無励磁作動型ブレーキ
48 ハウジング
49 モータ本体
50 モータ軸
51a 第1出力軸
51b 第2出力軸
52a、52b セレーション孔
53 ウォーム減速機構
54 動力分配機構
55a~55e 歯車
56a、56b 伝達軸
57 ウォーム
58 ウォームホイール
59 支持軸
60 入力要素
61a、61b 中間歯車
62 第1出力要素
62a 入力歯部
62b 出力歯部
63 第2出力要素
63a 入力歯部
63b 出力歯部
64a、64b 支持環
65a、65b ピン
66 キャリパ対向面
67a、67b 挿入孔
68a、68b 環状凹部
69 補強リブ
70a 第1補強板
70b 第2補強板
71a~71c 筒状部
72a、72b 雌ねじ孔
73 貫通孔
74a~74c 取付ボルト
75、75a~75d 第1ハウジング側規制部
76、76a~76c 第2ハウジング側規制部
77a~77i ハウジング側規制面
79 凹み部
79a 底面
80 段差面
81a~81d キャリパ側規制角部
100 ディスクブレーキ装置
101 サポート
102 キャリパ
103a アウタパッド
103b インナパッド
104 シリンダ
105 ピストン
106 回転直動変換機構
107 スピンドル
108 ナット
109 モータギヤユニット
110 ハウジング
111 出力軸
112 Oリング
113 インロー嵌合部
114 嵌合軸部
115 嵌合孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26