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特開2024-35960活性エネルギー線硬化性組成物及び構造体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035960
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物及び構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/10 20060101AFI20240308BHJP
   C08L 39/00 20060101ALI20240308BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20240308BHJP
   C08F 226/02 20060101ALI20240308BHJP
   G03F 7/26 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C08L33/10
C08L39/00
C08F220/18
C08F226/02
G03F7/26 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140618
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 駿也
(72)【発明者】
【氏名】田澤 洋志
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 俊一
【テーマコード(参考)】
2H196
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H196HA28
4J002BG05W
4J002BG07W
4J002BJ00X
4J002GP03
4J100AL08P
4J100AM21P
4J100AN04Q
4J100AQ01Q
4J100AQ06Q
4J100AQ08Q
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA36Q
4J100BC43P
4J100CA04
4J100DA39
4J100FA18
4J100JA37
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】溶解性に優れる硬化物が得られる活性エネルギー線硬化性組成物及び前記活性エネルギー線硬化性組成物を用いたリフトオフにより微細構造体を作製できる構造体の製造方法の提供。
【解決手段】(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶である活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、
前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
更に(c)光重合開始剤を含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーと前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物との質量比(a:b)が35:65~55:45である、請求項1から2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーが、環状で水素結合能を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1から2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物が、環状で水素結合能を有する単官能N-ビニルアミド化合物である、請求項1から2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物の一部を除去する第1の除去工程と、
前記支持体及び前記硬化物上に無機材料を製膜する無機材料製膜工程と、
前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する第2の除去工程と、を含み、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた前記硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶である前ことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項7】
支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物上に無機材料を製膜する無機材料製膜工程と、
前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する除去工程と、を含み、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた前記硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶であることを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項8】
前記支持体がポリマー基材である、請求項6から7のいずれかに記載の構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物及び構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リフトオフ法はフォトリソグラフィー法と共に使用されてきた微細加工方法の一つであり、金属、酸化物、半導体等の無機材料の微細構造体を作製可能である。前記リフトオフ法は無機材料のドライエッチングを介さずに微細構造体が作製可能なことから、基板の深堀加工に必要とされる難加工材料のハードマスクや成膜時の結晶構造・組成比がエッチング時に変化しやすい化合物の微細加工方法として有用である。
【0003】
前記リフトオフ法を用いる場合には、使用する樹脂は転写性が優れると共に、使用後の除去性にも優れていることが必要である。一般に熱可塑性樹脂は溶解性に優れるが、塗膜形成において溶剤に溶解した樹脂溶液として使用する必要があると共に、樹脂のガラス転移温度(Tg)付近まで加熱し、熱インプリント法によりモールド転写した後、室温付近まで温度を下げて転写モールドを剥離して転写工程が終了する。このため、加熱及び冷却に多くの時間が必要であり、スループットの点から問題がある。更に、熱膨張・収縮によりパターン転写精度が低下するという問題がある。
【0004】
一方、紫外線(UV)硬化を利用したUVナノインプリント法が注目されている。このUVナノインプリント法は基板上に液状の重合性モノマーを塗布した後、転写モールドを載せ、UV等の光により硬化させモールド形状を精度良く基板上の樹脂組成物に転写する方法である。
前記UVナノインプリント法に用いられる樹脂組成物として、例えば、N-ビニルアミド化合物、多官能(メタ)アクリレートモノマー、及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2017/082432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の光硬化性組成物の硬化物は三次元化学架橋構造を有するため、溶媒に対する溶解性が悪く、硬化物を溶解除去することが困難であり、リフトオフ法には適用できないという問題がある。
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、溶解性に優れる硬化物が得られる活性エネルギー線硬化性組成物及び前記活性エネルギー線硬化性組成物を用いたリフトオフにより微細構造体を作製できる構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、
前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物である。
<2> 更に(c)光重合開始剤を含む、前記<1>に記載の活性エネルギー線硬化性組成物である。
<3> 前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーと前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物との質量比(a:b)が35:65~55:45である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物である。
<4> 前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーが、環状で水素結合能を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物である。
<5> 前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物が、環状で水素結合能を有する単官能N-ビニルアミド化合物である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物である。
<6> 支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物の一部を除去する第1の除去工程と、
前記支持体及び前記硬化物上に無機材料を製膜する無機材料製膜工程と、
前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する第2の除去工程と、を含み、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた前記硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶である前ことを特徴とする構造体の製造方法である。
<7> 支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物上に無機材料を製膜する無機材料製膜工程と、
前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する除去工程と、を含み、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた前記硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶であることを特徴とする構造体の製造方法である。
<8> 前記支持体がポリマー基材である、前記<6>から<7>のいずれかに記載の構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、溶解性に優れる硬化物が得られる活性エネルギー線硬化性組成物及び前記活性エネルギー線硬化性組成物を用いたリフトオフにより微細構造体を作製できる構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、実施例における離型性及び溶解性の評価に用いるサンプルの概略側面図である。
図1B図1Bは、実施例における離型性及び溶解性の評価に用いるサンプルの概略平面図である。
図1C図1Cは、上面側のガラス基板を剥離した状態のサンプルの概略平面図である。
図2A図2Aは、実施例14における、活性エネルギー線硬化性組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に付与し、Siモールドで押印し、PETフィルム側からの紫外線照射後にSiモールドを離型し、ドットパターンを形成する工程を示す図である。
図2B図2Bは、実施例14における、酸素反応性イオンエッチングによる残膜除去工程を示す図である。
図2C図2Cは、実施例14における、マグネトロンスパッタリングによりSi膜を成膜する工程を示す図である。
図2D図2Dは、実施例14における、水-エタノール混合液に浸漬し、超音波洗浄を行い、リフトオフを行う工程を示す図である。
図3図3は、実施例14における、レーザー顕微鏡によるSi膜を成膜後のドットパターンを示す写真である。
図4図4は、実施例14における、レーザー顕微鏡によるリフトオフ後のホールパターンを示す写真である。
図5図5は、実施例14における、走査型電子顕微鏡によるSi膜を成膜後のドットパターンを示す写真である。
図6図6は、実施例14における、走査型電子顕微鏡によるリフトオフ後のホールパターンを示す写真である。
図7A図7Aは、実施例15における、活性エネルギー線硬化性組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に付与し、Siモールドで押印し、PETフィルム側からの紫外線照射後にSiモールドを離型し、ドットパターンを形成する工程を示す図である。
図7B図7Bは、実施例15における、酸素反応性イオンエッチングによる残膜除去工程を示す図である。
図7C図7Cは、実施例15における、マグネトロンスパッタリングによりSi膜を成膜する工程を示す図である。
図7D図7Dは、実施例15における、水-エタノール混合液に浸漬し、超音波洗浄を行い、リフトオフを行う工程を示す図である。
図8図8は、実施例15における、レーザー顕微鏡によるSi膜を成膜後のドットパターンを示す写真である。
図9図9は、実施例15における、レーザー顕微鏡によるリフトオフ後のホールパターンを示す写真である。
図10図10は、実施例15における、走査型電子顕微鏡によるSi膜を成膜後のドットパターンを示す写真である。
図11図11は、実施例15における、走査型電子顕微鏡によるリフトオフ後のホールパターンを示す写真である。
図12A図12Aは、実施例16における、活性エネルギー線硬化性組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に付与し、Siモールドで押印し、PETフィルム側からの紫外線照射後にSiモールドを離型し、ドットパターンを形成する工程を示す図である。
図12B図12Bは、実施例16における、酸素反応性イオンエッチングによる残膜除去工程を示す図である。
図12C図12Cは、実施例16における、マグネトロンスパッタリングによりSi膜を成膜する工程を示す図である。
図12D図12Dは、実施例16における、水-エタノール混合液に浸漬し、超音波洗浄を行い、リフトオフを行う工程を示す図である。
図13図13は、実施例16における、レーザー顕微鏡によるSi膜を成膜後のドットパターンを示す写真である。
図14図14は、実施例16における、レーザー顕微鏡によるリフトオフ後のホールパターンを示す写真である。
図15図15は、実施例16における、走査型電子顕微鏡によるSi膜を成膜後のドットパターンを示す写真である。
図16図16は、実施例16における、走査型電子顕微鏡によるリフトオフ後のホールパターンを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(活性エネルギー線硬化性組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有し、(c)光重合開始剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0012】
本発明においては、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物が、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶である。即ち、前記硬化物は、PETフィルム等のポリマー基材を浸食しない溶解度パラメータの値がエタノール(26.5(MPa)1/2)以上の溶媒に可溶である。
ここで、前記硬化物が溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に可溶(溶解)であるとは、ガラス基板上に平均厚み100μmの硬化物を形成したサンプルを溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒に浸漬し、10分間超音波洗浄前後での下記数式(1)で表される硬化物の平均厚みの変化率が90%以上であり、かつ前記超音波洗浄後の溶媒が白濁していないことを意味する。
平均厚みの変化率(%)=[(超音波洗浄前の硬化物の平均厚み-超音波洗浄後の硬化物の平均厚み)/超音波洗浄前の硬化物の平均厚み]×100・・・数式(1)
ただし、硬化物の平均厚みは、デジマチックインジケータ(装置名:ID-H0530、株式会社ミツトヨ製)を用い、硬化物の3~5箇所の厚みを測定し、平均した値である。
【0013】
前記溶解度パラメータ(以下、「溶解パラメータ」、「SP値」と称することもある。)とは、どれだけ互いに溶けやすいかということを数値化したものをいい、溶媒単体の固有の物性値である。溶解度パラメータは、互いの分子間の引き合う力、即ち凝集エネルギー密度CED(Cohesive Energy Density)の平方根で表される。なお、CEDとは、1mLの溶媒を蒸発させるのに要するエネルギー量をいう。
溶解度パラメータの計算方法は諸説あるが、本発明においては一般的に用いられているハンセンの溶解度パラメータを用いる。ハンセンの溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、ハンセン(Hansen)が分散項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)の3成分に分割し、3次元空間に示したものである。
ハンセンの溶解度パラメータの定義及び計算方法は、下記の文献に記載されている。Charles M. Hansen著、「Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook」、CRCプレス、2007年。
溶媒が2種以上の溶媒を組み合わせた混合溶媒の場合は、混合溶媒の混合比(体積比)から平均のハンセンの溶解度パラメータを求める。
【0014】
前記溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上である溶媒としては、例えば、水(47.8(MPa)1/2)、エタノール(26.5(MPa)1/2)、水とエタノールの混合溶媒(含水エタノール)、メタノール(29.4(MPa)1/2)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、エタノール、及び水とエタノールの混合溶媒(含水エタノール)が、PETフィルム等のポリマー基材を浸食しない(ポリマー基材にダメージを与えない)溶媒である点から特に好ましい。
前記水とエタノールの混合溶媒(含水エタノール)における体積比(水:エタノール)は99:1~1:99が好ましく、90:10~90:10がより好ましく、70:30~30:70が更に好ましい。
【0015】
<(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー>
(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、環状で水素結合能を有する単官能の(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、例えば、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、メタクリロイルモルフォリン、メタクリル酸2-モルホリノエチル、3-アクリロイル-2-オキサゾリジノン、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化物の溶解性、汎用性、及び入手のし易さ等の観点からアクリロイルモルフォリン(ACMO)が好ましい。ここで、本明細書及び本発明において、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートモノマーとメタクリレートモノマーとを包含する意味で用いるものとする。
環状とは、分子内に環状構造を有することを意味し、前記環状構造としては、例えば、シロクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン等の脂肪族環状構造、ピリジン、チオフェン、ピロール、オキサゾリジン、モルフォリン、チオモルフォリン等の複素環状構造、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環状構造などが挙げられる。
水素結合能を有するとは、分子内に水素結合能を有する親水性の原子団を有することを意味し、前記水素結合能を有する親水性の原子団としては、例えば、カルボニル基、エステル基、エーテル基、水酸基、アミノ基、アミン、アミド、アミジン、グアニジン、ヒドラジンなどが挙げられる。
前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、15質量%以上55質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下がより好ましい。
【0016】
<(b)単官能N-ビニルアミド化合物>
(b)単官能N-ビニルアミド化合物としては、環状で水素結合能を有する単官能のN-ビニルアミド化合物が好適であり、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム(NVC)、N-ビニル-β-ラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、N-ビニルフタルイミド、1-ビニルイミダゾールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化物の溶解性、汎用性、及び入手のし易さ等の観点からN-ビニル-ε-カプロラクタム(NVC)が好ましい。
前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物が環状及び水素結合能を有することについては、上記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマーと同様である。
前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、45質量%以上85質量%以下が好ましく、45質量%以上65質量%以下がより好ましい。
【0017】
前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物のうち、環状構造を有し、かつ水素結合能を有する単官能モノマーは、剛直な構造を有しかつ非共有結合であるπ-π相互作用と水素結合による分子間相互作用が働くので、環状構造を有し、かつ水素結合能を有する単官能モノマーだけを用いても、疑似的な三次元網目構造を形成し得、十分に硬化することができ、硬化物の溶解性にも優れる。
【0018】
前記(a)成分と前記(b)成分との質量比(a:b)は35:65~55:45が好ましく、40:60~50:50がより好ましい。
前記(a)成分と前記(b)成分との質量比(a:b)が35:65~55:45であると、硬化物の溶解性と離型性を両立できる点から好ましい。
【0019】
<(c)光重合開始剤>
前記(c)の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、ジアルコキシアセトフェノン類、ヒドロキシアルキルアセトフェノン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキシド類などが挙げられる。
前記(c)の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ジフェニルアシルフェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記光重合開始剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
【0021】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、増感剤、重合禁止剤、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー、(b)単官能N-ビニルアミド化合物、(c)光重合開始剤、及び必要に応じてその他の成分をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミル等の分散機に投入し、混合させることにより調製することができる。
【0023】
(構造体の製造方法)
本発明の構造体の製造方法は、第1の形態では、支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物の一部を除去する第1の除去工程と、前記支持体及び前記硬化物上に無機材料を製膜する無機材料製膜工程と、前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する第2の除去工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
前記活性エネルギー線硬化性組成物としては、本発明の前記活性エネルギー線硬化性組成物が用いられる。
【0024】
<硬化工程>
硬化工程は、支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる工程である。
前記硬化工程においては、支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物からなる層(活性エネルギー線硬化層)にパターンを有するモールドを押し当て、活性エネルギー線を照射し、硬化する。
【0025】
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマー基材を好適に用いることができる。
前記ポリマー基材としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンなどが挙げられる。
前記支持体の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上500μm以下がより好ましい。
【0026】
前記活性エネルギー線硬化層は、活性エネルギー線硬化性組成物を支持体上に、例えば、スピンコーティング、スリットコーティング、スプレーコーティング、又はローラーコーティングなどの公知の方法で付与することにより形成できる。
前記活性エネルギー線硬化層の平均厚みは、0.1μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましい。
【0027】
前記パターンを有するモールドとしては、例えば、インプリントスタンプ(ナノスタンパ)であって、表面に凹凸からなる転写パターンが形成されたナノインプリント用転写スタンプを使用できる。具体的には、シリコン、シリコーンゴム、ガラス、及びシリカガラス等を素材とするスタンパを用いることができる。これらの中でも、シリコーンゴムスタンパによれば、パターン転写後の樹脂離れが良好である点で有利である。なお、本発明におけるインプリントスタンプとして、微細パターンが形成された金型を用いることも可能である。
【0028】
パターンの転写では、転写スタンプを活性エネルギー線硬化性組成物上に載置した後、転写スタンプを室温(約25℃)にて、0.01秒~5分、好ましくは0.1秒~120秒程度の持続時間、10kPa~100MPaの圧力下でプレスする。
【0029】
前記活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
前記転写スタンプが活性エネルギー線硬化性組成物上に静止している間に、活性エネルギー線照射による硬化を実施する。0.01秒~120秒の照射により、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる。照射時間は、好ましくは0.01秒~60秒、より好ましくは0.01秒~30秒とすることができる。
【0030】
<第1の除去工程>
第1の除去工程は、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物の一部を除去する工程である。
急峻な壁面傾斜及び高い縦横比(アスペクト比)を達成するために、硬化物の一部を取り除く必要がある。硬化物を除去するためにエッチングを行い、パターンを形成する。
前記エッチングは、ドライエッチング及びウェットエッチングの少なくともいずれかを行う。前記ドライエッチングは、例えば、酸素プラズマ、CHF又はOガス混合物により行うことができる。また、前記ウェットエッチングは、例えば、水系溶媒、テトラヒドロフラン等の有機溶剤、又はアルカリ現像液により行うことができる。
【0031】
<無機材料製膜工程>
無機材料製膜工程は、前記支持体及び前記硬化物上に無機材料を製膜する工程である。
前記第1の除去工程により作成されたパターンを有する樹脂層に無機材料を製膜する。
無機材料の製膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学気相析出法(CVD法)、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
前記無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、酸化物、半導体などが挙げられる。
前記無機材料としては、具体的には、Si、クロム、金、銀、銅、アルミニウム、TiC、TiN、TiB、WC、SiC、BN、Al、ITOなどが挙げられる。
前記無機材料からなる膜の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5nm~5μmであることが好ましい。
【0032】
<第2の除去工程>
第2の除去工程は、前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する工程である。
前記第2の除去工程において、溶媒で無機材料を形成した硬化物を除去することにより支持体上に無機材料がパターン状に製膜された構造体を作製することができる。
前記溶媒としては、前記(a)単官能(メタ)アクリレートモノマー及び前記(b)単官能N-ビニルアミド化合物を含有する組成物を硬化させた硬化物を可溶である、溶解度パラメータの値が26.5(MPa)1/2以上の溶媒を用いることができる。具体的には、水、エタノール、水とエタノールの混合溶媒(含水エタノール)などが好適に用いられる。PETフィルム等のポリマー基材を浸食しない(ポリマー基材にダメージを与えない)溶媒である点から特に好ましい。
【0033】
本発明の構造体の製造方法は、第2の形態では、支持体上に付与した活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物上に無機材料を製膜する無機材料製膜工程と、前記無機材料を形成した前記硬化物を除去する除去工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
前記活性エネルギー線硬化性組成物としては、本発明の前記活性エネルギー線硬化性組成物が用いられる。
この第2の形態に係る構造体の製造方法は、上記第1の形態に係る構造体の製造方法において、第1の除去工程を有さない以外は、第1の形態に係る構造体の製造方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0034】
本発明の構造体の製造方法は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いた光ナノインプリント成形により硬化物表面への微細構造形成が可能であり、単層でのリフトオフによりポリマー基材上での無機材料の微細加工が実現可能となる。同様に、多層の光ナノインプリント成形とリフトオフにより、ポリマー基材上での無機材料の微細加工が実現可能となる。
【0035】
<構造体>
本発明の構造体の製造方法により得られる構造体は、溶解性に優れる硬化物を得ることができる活性エネルギー線硬化性組成物を使用しているため、リフトオフにより微細構造体を作製することができ、例えば、電磁波・誘導体メタルマテリアル、フォトニック結晶、ウェアラブルデバイス、導波路、プラズモンデバイス、ホログラム、偏光板などに適用することができる。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1~13及び比較例1~6)
表1及び表2に示す組成及び含有量で、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしてのアクリロイルモルフォリン(ACMO、KJケミカルズ株式会社製)、単官能N-ビニルアミド化合物としてのN-ビニル-ε-カプロラクタム(NVC、メルク株式会社製)、及び光重合開始剤としてのIrgacure184(IGM Resins社製)を、自転公転撹拌機(株式会社シンキー製、ARE-310)で3分間撹拌し、実施例1~13及び比較例1~6の活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0038】
次に、図1Aに示すように、フッ素系離型剤(3M社製、Novec 1720)の液相処理により離型層修飾を施したガラス基板1上に5mm角に開口したシリコーンフィルム2(厚さ0.1mm)を貼り付け、開口部に各活性エネルギー線硬化性組成物3を滴下し、離型層修飾を施したガラス基板1で挟み込み、積層体を得た(図1B参照)。
【0039】
次に、図1Bの積層体をコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィック株式会社製、ECS-401GX)にて速度98cm/min、照射1回の条件で硬化させ、上面側のガラス基板1を剥離することにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物3’(平均厚み:0.1mm(100μm))を露出させたサンプルを作製した(図1C)。この際、以下のようにして、硬化物の離型性を評価した。結果を表1及び表2に示した。
硬化物3’の平均厚みは、デジマチックインジケータ(装置名:ID-H0530、株式会社ミツトヨ製)を用い、硬化物の3箇所の厚みを測定し、平均した値である。
【0040】
<離型性>
各積層体から上面側のガラス基板を剥離した際に、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物に欠損が生じるか否かを観察し、下記の基準で離型性を評価した。
[評価基準]
〇:硬化膜に欠損なし
△:硬化膜の一部に欠損あり
×:硬化膜の大部分が欠損あり
【0041】
次に、得られた各サンプルについて、以下のようにして、硬化物の溶媒に対する溶解性を評価した。
【0042】
<溶解性>
得られた各サンプルを表1から表3に示す溶媒に浸漬した状態で、超音波洗浄装置(ASU-3、アズワン株式会社製)を用い、10分間超音波洗浄を行った。
超音波洗浄後、デジマチックインジケータ(装置名:ID-H0530、株式会社ミツトヨ製)を用いて膜厚計測を行い、下記数式(1)から硬化物の平均厚みの変化率を求めると共に、超音波洗浄後の溶媒の目視観察を行い、下記の基準に基づき、溶解性を評価した。
平均厚みの変化率(%)=[(超音波洗浄前の硬化物の平均厚み-超音波洗浄後の硬化物の平均厚み)/超音波洗浄前の硬化物の平均厚み]×100・・・数式(1)
[評価基準]
〇(溶解):超音波洗浄前後の硬化物の厚みの変化率が90%以上(洗浄後の厚みが10μm以下)であり、目視観察で超音波洗浄後の溶媒が白濁していない
×(難溶):超音波洗浄前後の硬化物の厚みの変化率が90%未満(洗浄後の厚みが10μm超)であり、目視観察で超音波洗浄後の溶媒中に膜や硬化物片が存在する
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
(実施例14)
<リフトオフ性能>
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の単層におけるリフトオフ性能について、以下のとおり評価した。
図2Aに示すように、実施例5で用いた活性エネルギー線硬化性組成物(質量比(ACMO:NVC)=50:50)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11(厚み:125μm、両面易接着、東洋紡株式会社製)上に厚み0.12μmとなるようにスピン塗布し、活性エネルギー線硬化層12を形成した。この活性エネルギー線硬化層12に対し離型処理を施したSiモールド(DTM-4-1、株式会社協同インターナショナル製)で押印し、PETフィルム側からのコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィック株式会社製、ECS-401GX)にて速度98cm/min、照射1回の条件で硬化させた後、Siモールドを離型し、ドットパターン(活性エネルギー線硬化層)を形成した。
【0047】
次に、図2Bに示すように、酸素反応性イオンエッチング(O RIE)による残膜除去を行い、高さ0.8μmのドットパターン(活性エネルギー線硬化層)12を形成した。
【0048】
次に、図2Cに示すように、支持体11及びドットパターン(活性エネルギー線硬化層)12上に、マグネトロンスパッタリング(FESP-132V、富士R&D株式会社製)による厚さ50nmのSi膜13を成膜した。
【0049】
次に、Si膜13を形成した支持体11及び、Si膜13を形成したドットパターン(活性エネルギー線硬化層)12を、水-エタノール混合液(体積比50:50)に浸漬し、超音波洗浄装置(ASU-3、アズワン株式会社製)を用い、3分間超音波洗浄を行ったところ、図2Dに示すように、Si膜13を形成したドットパターン(活性エネルギー線硬化層)12が除去され、ホールパターンがリフトオフできた。
【0050】
次に、レーザー顕微鏡(VK-X3000、株式会社キーエンス製、倍率:100倍)によるSi膜を成膜後のドットパターンを図3に、リフトオフ後のホールパターンを図4に示した。
また、走査型電子顕微鏡(Helios G5 UC、FEI社製)によるSi膜を成膜後のドットパターンを図5に、リフトオフ後のホールパターンを図6に示した。
図3から図6の結果から、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物表面での微細構造形成とリフトオフによるSi反転構造の形成が確認できた。
【0051】
(実施例15)
<リフトオフ性能>
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の2層におけるリフトオフ性能について、以下のとおり評価した。
図7Aに示すように、実施例5で用いた第1の活性エネルギー線硬化性組成物(質量比(ACMO:NVC)=50:50)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:125μm、両面易接着、東洋紡株式会社製)上に厚み0.3μmとなるようにスピン塗布し、PETフィルム側からのコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィック株式会社製、ECS-401GX)にて速度98cm/min、照射1回の条件で硬化させ、第1の活性エネルギー線硬化層12を形成した。
【0052】
次に、図7Bに示すように、第1の活性エネルギー線硬化層12上に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを含む第2の活性エネルギー線硬化性組成物を厚み0.3μmとなるようにスピン塗布し、第2の活性エネルギー線硬化層を形成した。この第2の活性エネルギー線硬化層に対し離型処理を施したSiモールド(DTM-4-1、株式会社協同インターナショナル製)で押印し、PETフィルム側からのコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィック株式会社製、ECS-401GX)にて速度98cm/min、照射1回の条件で硬化させた後、Siモールドを離型し、ドットパターン(第2の活性エネルギー線硬化層)を形成した。
【0053】
次に、酸素反応性イオンエッチング(O RIE)による残膜除去を行い、高さ0.9μmのドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第2の活性エネルギー線硬化層14)を形成した。
【0054】
次に、図7Cに示すように、支持体11及びドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第2の活性エネルギー線硬化層14)上に、マグネトロンスパッタリング(FESP-132V、富士R&D株式会社製)による厚さ50nmのSi膜13を成膜した。
【0055】
次に、Si膜13を形成した支持体11及び、Si膜13を形成したドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第2の活性エネルギー線硬化層14)を、水-エタノール混合液(体積比50:50)に浸漬し、超音波洗浄装置(ASU-3、アズワン株式会社製)を用い、3分間超音波洗浄を行ったところ、図7Dに示すように、Si膜13を形成したドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第2の活性エネルギー線硬化層14)が除去され、ホールパターンがリフトオフできた。
【0056】
次に、レーザー顕微鏡(VK-X3000、株式会社キーエンス製、倍率:100倍)によるSi膜を成膜後のドットパターンを図8に、リフトオフ後のホールパターンを図9に示した。
また、走査型電子顕微鏡(Helios G5 UC、FEI社製)によるSi膜を成膜後のドットパターンを図10に、リフトオフ後のホールパターンを図11に示した。
図8から図11の結果から、第1の活性エネルギー線硬化層と第2の活性エネルギー線硬化層の2層構造表面での微細構造形成とリフトオフによるSi反転構造の形成が確認できた。
【0057】
(実施例16)
<リフトオフ性能>
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物2層及び無機材料層の3層におけるリフトオフ性能について、以下のとおり評価した。
図12Aに示すように、実施例5で用いた第1の活性エネルギー線硬化性組成物(質量比(ACMO:NVC)=50:50)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:125μm、両面易接着、東洋紡株式会社製)上に厚み120μmとなるようにスピン塗布し、PETフィルム側からのコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィック株式会社製、ECS-401GX)にて速度98cm/min、照射1回の条件で硬化させて、第1の活性エネルギー線硬化層12を形成した。
この第1の活性エネルギー線硬化層12上に、マグネトロンスパッタリング(FESP-132V、富士R&D株式会社製)による厚さ10nmの第1のSi膜13を成膜した。
【0058】
次に、図12Bに示すように、第1のSi膜13上に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを含む第2の活性エネルギー線硬化性組成物を厚み0.3μmとなるようにスピン塗布し、第2の活性エネルギー線硬化層を形成した。この第2の活性エネルギー線硬化層に対し離型処理を施したSiモールド(DTM-4-1、株式会社協同インターナショナル製)で押印し、PETフィルム側からのコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィック株式会社製、ECS-401GX)にて速度98cm/min、照射1回の条件で硬化させた後、Siモールドを離型し、ドットパターン(第2の活性エネルギー線硬化層)を形成した。
【0059】
次に、酸素反応性イオンエッチング(O RIE)による第2の活性エネルギー線硬化層の残膜除去、CFのRIEによる第1のSi膜13の除去、O RIEによる第1の活性エネルギー線硬化層12の残膜除去を行い、高さ0.4μmのドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第1のSi膜13+第2の活性エネルギー線硬化層14)を形成した。
【0060】
次に、図12Cに示すように、支持体11及びドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第1のSi膜13+第2の活性エネルギー線硬化層14)上に、マグネトロンスパッタリング(FESP-132V、富士R&D株式会社製)による厚さ50nmの第2のSi膜15を成膜した。
【0061】
次に、第2のSi膜15を形成した支持体11及び、第2のSi膜15を形成したドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第1のSi膜13+第2の活性エネルギー線硬化層14)を、水-エタノール混合液(体積比50:50)に浸漬し、超音波洗浄装置(ASU-3、アズワン株式会社製)を用い、3分間超音波洗浄を行ったところ、図12Dに示すように、第2のSi膜15を形成したドットパターン(第1の活性エネルギー線硬化層12+第1のSi膜13+第2の活性エネルギー線硬化層14)が除去され、ホールパターンがリフトオフできた。
【0062】
次に、レーザー顕微鏡(VK-X3000、キーエンス社製、倍率:100倍)による第2のSi膜を成膜後のドットパターンを図13に、リフトオフ後のホールパターンを図14に示した。
また、走査型電子顕微鏡(Helios G5 UC、FEI社製)による第2のSi膜を成膜後のドットパターンを図15に、リフトオフ後のホールパターンを図16に示した。
図13から図16の結果から、第1の活性エネルギー線硬化層と第1のSi膜と第2の活性エネルギー線硬化層の3層構造表面での微細構造形成とリフトオフによるSi反転構造の形成が確認できた。
【符号の説明】
【0063】
1 ガラス基板
2 シリコーンフィルム
3 活性エネルギー線硬化性組成物
3’ 活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物
11 支持体
12 活性エネルギー線硬化層
13 Si膜
14 第2の活性エネルギー線硬化層
15 第2のSi膜

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16