(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035964
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、熱伝導組成物、及び熱伝導シート
(51)【国際特許分類】
C07C 271/16 20060101AFI20240308BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240308BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240308BHJP
C08F 20/36 20060101ALI20240308BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C07C271/16 CSP
H01L23/36 D
C09K5/14 E
C08F20/36
C08F2/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140623
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長島 稔
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】岩田 侑記
(72)【発明者】
【氏名】趙 奕靖
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
4J100
5F136
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB46
4H006AB93
4H006AC56
4J011AA05
4J011PA03
4J011PA05
4J011PA34
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J100AL08P
4J100BA03P
4J100BA16P
4J100BA38P
4J100CA01
4J100DA36
4J100FA03
4J100JA43
5F136BA04
5F136BC03
5F136BC07
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA55
5F136FA62
5F136FA66
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い接着強度と良好なフラックス効果を発揮できる新規な(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、前記(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物を含有し、高熱伝導性及び低熱抵抗性を実現できる熱伝導組成物、及び熱伝導シートの提供。
【解決手段】例えば、式(1)表される(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物。
(R
1、R
3、及びR
4はアルキル基;R
2は単結合、又はアルキル基;Aはアクリル基又はメタクリル基を表す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び下記一般式(2)の少なくともいずれかで表されることを特徴とする(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
3はアルキル基を表す。R
2は単結合、又はアルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R
1及びR
2はアルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。R
5は水素原子又はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)において、前記R2が単結合であり、前記R1及び前記R3が-CH2-である、請求項1に記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物。
【請求項3】
前記R4がエチル基である、請求項1から2のいずれかに記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物。
【請求項4】
フラックス活性を有する、請求項1から2のいずれかに記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物。
【請求項5】
請求項1から2のいずれかに記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、硬化成分、ラジカル重合開始剤、熱伝導粒子、及び低融点金属粒子を含有することを特徴とする熱伝導組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の含有量が、1体積%以上10体積%以下である、請求項5に記載の熱伝導組成物。
【請求項7】
前記硬化成分がオキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである、請求項5に記載の熱伝導組成物。
【請求項8】
前記熱伝導粒子が銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかである、請求項5に記載の熱伝導組成物。
【請求項9】
前記低融点金属粒子がSnと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種とを含む、請求項5に記載の熱伝導組成物。
【請求項10】
請求項5に記載の熱伝導組成物の硬化物を含むことを特徴とする熱伝導シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、熱伝導組成物、及び熱伝導シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器におけるLSI(Large Scale Integration)等では、用いられている素子の発熱によりLSI自身が長時間高温に晒されると動作不良や故障につながる恐れがある。このため、LSI等の昇温を防ぐために熱伝導材料が広く用いられている。前記熱伝導材料は素子の発熱を拡散させるか、あるいは大気等の系外に放出させるための放熱部材に伝えることによって機器の昇温を防ぐことができる。
【0003】
このような熱伝導材料として金属又はセラミックスを用いると、軽量化しにくい、加工性が悪い、又は柔軟性が低くなるという問題がある。そこで、樹脂又はゴム等からなる高分子材料を母材とする熱伝導材料が種々提案されている。例えば、(A)分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する高分子化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)熱伝導フィラー、及び(D)活性エステル硬化剤、を含有し、(A)成分は、数平均分子量(Mn)が1,000~1,000,000であり、又はガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂、及び25℃で液状である樹脂から選択される1種以上であり、(A)成分の含有量は、樹脂成分を100質量%とした場合、10質量%以上65質量%以下であり、(C)成分の含有量が、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、85質量%以上である樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、ベースポリマーとして熱可塑性樹脂を用いているので、加熱温度が熱可塑性樹脂の融点を超えると、接着強度が大幅に低下してしまうという問題がある。また、硬化成分としてのオキセタン化合物とポリカルボン酸との硬化反応は、オキセタン化合物の分子構造の制約を受けるため、接着強度が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い接着強度と良好なフラックス効果を発揮できる新規な(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、前記(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物を含有し、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導組成物、及び熱伝導シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(1)及び下記一般式(2)の少なくともいずれかで表されることを特徴とする(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物である。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
3はアルキル基を表す。R
2は単結合、又はアルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R
1及びR
2はアルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。R
5は水素原子又はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
<2> 前記一般式(1)において、前記R
2が単結合であり、前記R
1及び前記R
3が-CH
2-である、前記<1>に記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物である。
<3> 前記R
4がエチル基である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物である。
<4> フラックス活性を有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物である。
<5> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、硬化成分、ラジカル重合開始剤、熱伝導粒子、及び低融点金属粒子を含有することを特徴とする熱伝導組成物である。
<6> 前記(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の含有量が、1体積%以上10体積%以下である、前記<5>に記載の熱伝導組成物である。
<7> 前記硬化成分がオキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである、前記<5>に記載の熱伝導組成物である。
<8> 前記熱伝導粒子が銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかである、前記<5>に記載の熱伝導組成物である。
<9> 前記低融点金属粒子がSnと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種とを含む、前記<5>に記載の熱伝導組成物である。
<10> 前記<5>に記載の熱伝導組成物の硬化物を含むことを特徴とする熱伝導シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高い接着強度と良好なフラックス効果を発揮できる新規な(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、前記(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物を含有し、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導組成物、及び熱伝導シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明で用いられる放熱構造体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
((メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物)
本発明の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物は、下記一般式(1)及び一般式(2)の少なくともいずれかで表される。
【0011】
【化3】
ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
3はアルキル基を表す。R
2は単結合、アルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
【0012】
【化4】
ただし、前記一般式(2)中、R
1及びR
2はアルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。R
5は水素原子又はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
【0013】
前記一般式(1)において、R1、R2、及びR3のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、tert-オクチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0014】
前記一般式(2)において、R1、R2、及びR5のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、tert-オクチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0015】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)において、R4のアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)において、R2が単結合であり、R1及びR3が-CH2-であることが好ましい。この場合、ヒドロキシトリカルボン酸としてクエン酸を用いて合成した場合に該当する。
前記一般式(1)及び一般式(2)において、R4がエチル基であることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル変性イソシアネートとして2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートを用いて合成した場合に該当する。
【0017】
上記一般式(1)及び一般式(2)の少なくともいずれかで表される(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物は、以下に説明するように、水酸基を有するポリカルボン酸に(メタ)アクリル変性イソシアネートを作用させることにより合成することができる。
【0018】
<(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の製造方法>
本発明に用いられる(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の製造方法は、水酸基を有するポリカルボン酸と(メタ)アクリル変性イソシアネートをウレタン化反応させる工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0019】
前記水酸基を有するポリカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシジカルボン酸、ヒドロキシトリカルボン酸などが挙げられる。
前記ヒドロキシジカルボン酸としては、例えば、酒石酸、リンゴ酸、タルトロン酸などが挙げられる。
前記ヒドロキシトリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸などが挙げられる。
【0020】
前記(メタ)アクリル変性イソシアネートとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートなどが挙げられる。
前記(メタ)アクリル変性イソシアネートとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)などが挙げられる。
【0021】
以下に、水酸基を有するポリカルボン酸と(メタ)アクリル変性のイソシアネートとのウレタン化反応の一例を示す。
【0022】
【化5】
ただし、前記反応式中、R
1及びR
3はアルキル基を表す。R
2は単結合、又はアルキル基を表す。R
4はアルキル基を表す。Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。
【0023】
水酸基を有するポリカルボン酸と(メタ)アクリル変性イソシアネートのウレタン化反応の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、恒温に保たれた温度雰囲気下、均一攪拌する方法などが挙げられる。
【0024】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濃縮工程、分離精製工程などが挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)及び一般式(2)の少なくともいずれかで表される(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物は、良好なフラックス効果と(メタ)アクリル樹脂としての接着機能とを両立できる。そして、成膜中は反応が起こらず塗工液の濡れ性を向上させ、製品として使用する際に段階的に加熱され第1段階の加熱により、フラックスの効果を発揮し、次いで、第2段階の加熱により共に配合していた重合開始剤により(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の硬化が始まり、(メタ)アクリル樹脂としての接着機能及び膜機能が発揮される。更に、硬化成分及び硬化剤を併用することにより、ハイブリッド硬化を達成できる。
前記第1段階の加熱は、例えば、120℃~150℃であることが好ましい。
前記第2段階の加熱は、例えば、150℃~190℃であることが好ましい。
【0026】
(熱伝導組成物)
本発明の熱伝導組成物は、本発明の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、硬化成分、ラジカル重合開始剤、熱伝導粒子、及び低融点金属粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0027】
<(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物>
上記一般式(1)及び一般式(2)の少なくともいずれかで表される本発明の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導組成物の全体積に対して、1体積%以上10体積%以下が好ましく、1体積%以上5体積%以下がより好ましい。
上記一般式(1)及び一般式(2)の少なくともいずれかで表される本発明の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物は、硬化前の熱伝導組成物をフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)などにより分析することができる。
【0028】
<硬化成分>
硬化成分としては、オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0029】
-オキシラン環化合物-
前記オキシラン環化合物は、オキシラン環を有する化合物であり、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール-キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール-キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール-ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
-オキセタン化合物-
前記オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物であり、脂肪族化合物、脂環式化合物、又は芳香族化合物であってもよい。
前記オキセタン化合物は、オキセタニル基を1つのみ有する1官能のオキセタン化合物であってもよいし、オキセタニル基を2つ以上有する多官能のオキセタン化合物であってもよい。
【0031】
前記オキセタン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(フェノキシ)メチルオキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル(OXIPA)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記オキセタン化合物としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、東亞合成株式会社から販売されている「アロンオキセタン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社から販売されている「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
【0033】
上記オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の中でも、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、4,4′-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル(OXIPA)が好ましい。
【0034】
前記硬化成分の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導組成物の全量に対して、0.5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0035】
<熱伝導粒子>
前記熱伝導粒子としては、銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかが好ましい。
前記銀被覆粒子としては、例えば、銀被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆アルミニウム粒子などが挙げられる。
前記熱伝導粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
前記熱伝導粒子の体積平均粒径は、10μm以上300μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましい。熱伝導粒子の体積平均粒径が10μm以上300μm以下であると、熱伝導粒子の低融点金属粒子に対する体積割合を大きくすることができ、熱伝導組成物の高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
前記体積平均粒径は、例えば、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:Microtrac MT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)により、測定することができる。
【0036】
<低融点金属粒子>
前記低融点金属粒子としては、JIS Z3282-1999に規定されているはんだ粒子が好適に用いられる。
前記はんだ粒子としては、例えば、Sn-Pb系はんだ粒子、Pb-Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Pb-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Cu系はんだ粒子、Sn-Pb-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子、Sn-Ag系はんだ粒子、Sn-Pb-Ag系はんだ粒子、Pb-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含むはんだ粒子が好ましく、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子がより好ましい。
【0037】
前記低融点金属粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
前記低融点金属粒子の融点は、100℃以上250℃以下が好ましく、120℃以上200℃以下がより好ましい。
前記低融点金属粒子の融点は前記熱伝導組成物の熱硬化処理温度よりも低いことが、熱伝導組成物の硬化物中に溶融した低融点金属粒子により熱伝導粒子を介してネットワーク(金属の連続相)を形成でき、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる点から好ましい。
前記低融点金属粒子が、前記熱伝導組成物の熱硬化処理条件下で前記熱伝導粒子と反応して、前記低融点金属粒子より高い融点を示す合金となることにより、高温下で溶融することを防止でき、信頼性が向上する。また、熱伝導組成物の硬化物の耐熱性が向上する。
前記熱伝導組成物の熱硬化処理は、例えば、150℃以上200℃の温度で30分間以上2時間以下の条件で行われる。
【0038】
前記低融点金属粒子の体積平均粒径は、10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。低融点金属粒子の体積平均粒径が10μm以下であると、低融点金属粒子の熱伝導粒子に対する体積割合を小さくすることができ、熱伝導組成物の高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
前記低融点金属粒子の体積平均粒径は、上記熱伝導粒子の体積平均粒径と同様にして測定することができる。
【0039】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、有機過酸化物が好ましい。
前記有機過酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
前記熱伝導組成物における前記ラジカル重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
<その他の成分>
前記熱伝導組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいてその他の成分を含有してもよい。前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フラックス成分、金属以外の熱伝導粒子(例えば、窒化アルミ、アルミナ、炭素繊維等)、添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤、難燃剤等)などが挙げられる。
【0041】
-フラックス成分-
フラックス成分としては、例えば、レブリン酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のカルボン酸を用いることが好ましい。これにより、良好なはんだ接続を得ることができるとともに、硬化成分の硬化剤として機能させることができる。
また、前記フラックス成分として、カルボキシル基がアルキルビニルエーテルでブロック化されたブロック化カルボン酸を用いてもよい。これにより、フラックス効果、及び硬化剤機能が発揮される温度をコントロールすることができる。また、樹脂に対する溶解性が向上するため、フィルム化する際の混合・塗布ムラを改善することができる。
【0042】
本発明の熱伝導組成物は、本発明の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物、硬化成分、熱伝導粒子、低融点金属粒子、ラジカル重合開始剤、及び更に必要に応じてその他の成分を常法により均一に混合することにより調製することができる。
【0043】
前記熱伝導組成物は、シート状の熱伝導シート、及びペースト状の熱伝導ペースト(熱伝導接着剤、又は熱伝導グリースと称することもある)のいずれであってもよい。これらの中でも、取り扱いのし易さの点から熱伝導シートが好ましく、コストの面から熱伝導ペーストが好ましい。
【0044】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、本発明の熱伝導組成物の硬化物を含み、本発明の熱伝導組成物をシート化したものである。
前記熱伝導シートの平均厚みは、薄型化の観点から、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。前記熱伝導シートの平均厚みの下限値は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。
【0045】
前記熱伝導シートの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記熱伝導組成物を所定の形状に成型して硬化させ、熱伝導成形体を成形し、得られた熱伝導成形体をシート状にスライスし、熱伝導シートを製造する方法、(2)剥離層付き支持体上に前記熱伝導組成物の硬化物を含む硬化物層を形成し熱伝導シートを製造する方法などが挙げられる。なお、前記(2)においては、熱伝導シートを放熱基板に積層する際に支持体を剥離する。
【0046】
本発明の熱伝導組成物及び熱伝導シートは、例えば、LSI等の熱源とヒートシンクとの間の微小な間隙を埋めることで、両者の間に熱がスムーズに流れるようにするサーマルインターフェイスマテリアル(TIM1)、LEDチップ又はICチップを実装した放熱基板を、ヒートシンクに接着してパワーLEDモジュール又はパワーICモジュールを構成する際に好適に使用することができる。
ここで、パワーLEDモジュールとしては、ワイヤーボンディング実装タイプのものとフリップチップ実装タイプのものがあり、パワーICモジュールとしてはワイヤーボンディング実装タイプのものがある。
【0047】
<放熱構造体>
本発明に用いられる放熱構造体は、発熱体と、熱伝導材料と、放熱部材とから構成され、前記発熱体と前記放熱部材の間に、前記熱伝導材料としての本発明の熱伝導組成物の硬化物を有する。
【0048】
前記発熱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の電子部品などが挙げられる。
【0049】
前記放熱部材としては、電子部品(発熱体)の発する熱を放熱する構造体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、ベーパーチャンバー、ヒートパイプなどが挙げられる。
前記ヒートスプレッダは、前記電子部品の熱を他の部品に効率的に伝えるための部材である。前記ヒートスプレッダの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートスプレッダは、通常、平板形状である。
前記ヒートシンクは、前記電子部品の熱を空気中に放出するための部材である。前記ヒートシンクの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートシンクは、例えば、複数のフィンを有する。前記ヒートシンクは、例えば、ベース部と、前記ベース部の一方の面に対して非平行方向(例えば、直交する方向)に向かって延びるように設けられた複数のフィンを有する。
前記ヒートスプレッダ、及び前記ヒートシンクは、一般的に、内部に空間を持たない中実構造である。
前記ベーパーチャンバーは、中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。前記ベーパーチャンバーとしては、例えば、前記ヒートスプレッダを中空構造にしたもの、前記ヒートシンクを中空構造にしたような板状の中空構造体などが挙げられる。
前記ヒートパイプは、円筒状、略円筒状、又は扁平筒状の中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。
【0050】
ここで、
図1は、放熱構造体としての半導体装置の一例を示す概略断面図である。本発明の熱伝導組成物の硬化物(熱伝導シート)1は、半導体素子等の電子部品3の発する熱を放熱するものであり、
図1に示すように、ヒートスプレッダ2の電子部品3と対峙する主面2aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持されるものである。また、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とヒートシンク5との間に挟持される。そして、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とともに、電子部品3の熱を放熱する放熱部材を構成する。
【0051】
ヒートスプレッダ2は、例えば、方形板状に形成され、電子部品3と対峙する主面2aと、主面2aの外周に沿って立設された側壁2bとを有する。ヒートスプレッダ2は、側壁2bに囲まれた主面2aに熱伝導シート1が設けられ、また主面2aと反対側の他面2cに熱伝導シート1を介してヒートシンク5が設けられる。ヒートスプレッダ2は、高い熱伝導率を有するほど、熱抵抗が減少し、効率よく半導体素子等の電子部品3の熱を吸熱することから、例えば、熱伝導性の良好な銅又はアルミニウムを用いて形成することができる。
【0052】
電子部品3は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板6へ実装される。またヒートスプレッダ2も、側壁2bの先端面が配線基板6に実装され、これにより側壁2bによって所定の距離を隔てて電子部品3を囲んでいる。
そして、ヒートスプレッダ2の主面2aに、熱伝導シート1が接着されることにより、電子部品3の発する熱を吸収し、ヒートシンク5より放熱する放熱部材が形成される。
【実施例0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の合成例、実施例、及び比較例では、以下のようにして、熱伝導粒子及び低融点金属粒子の体積平均粒径、(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物のFT-IR吸収、並びに13C-NMRスペクトルの測定を行った、
【0054】
<熱伝導粒子及び低融点金属粒子の体積平均粒径>
熱伝導粒子及び低融点金属粒子の体積平均粒径は、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:Microtrac MT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を使用し、測定した。
【0055】
<(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物のFT-IR吸収の測定>
(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物のFT-IR吸収は、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Nicolet iS10を使用し、ATR法で測定を行った。
【0056】
<(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の13C-NMRスペクトルの測定>
(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物の13C-NMRスペクトルは、JNM-ECZ400R/S3核磁気共鳴装置(JEOL RESONANCE社製)で測定した。
【0057】
(合成例1)
<アクリル基含有トリカルボン酸化合物の合成>
熱電対、攪拌装置、冷却管、及び加温装置を備えたガラス製の三口フラスコに、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)68.0質量部、これに2-ブタノン(超脱水)(富士フイルム和光純薬株式会社製)50質量部を添加し、良く攪拌して完全に溶解させた。完全に溶解させた後、下記構造式で表されるクエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)50質量部を計量し、三口フラスコ内にジョーゴを用いて固形状のまま滴下した。温度が上昇すると副反応を生じるため、上記を完全に反応が終了するまで、30℃で一定に保ち、24時間攪拌させた。得られた合成物を常温に冷却後、ナスフラスコに移しエバポレーターで濃縮した後、減圧乾燥(30℃で48時間)して目的のアクリル基含有トリカルボン酸化合物を合成した(収率93%)。なお、得られた合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物のFT-IR吸収の測定を行い合成前後のピークを確認し、NCOのピーク(約2270cm-1~2240cm-1)がすべて消失していることを確認した。
【0058】
【0059】
<同定データ>
合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物のFT-IR吸収を以下に示す。
809cm-1、982cm-1、1064cm-1、1181cm-1、1268cm-1、1408cm-1、1557cm-1、1713cm-1及び2700cm-1~3700cm-1にカルボン酸由来のブロードな吸収振動が見られた。
【0060】
得られた合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物の13C-NMRのピークについて、以下に示す。
13C-NMR(CDCl3,δppm);39.49(15),39.83(15),40.13(3;8),40.46(3,8),40.79(3;8),62.08(16),62.44(16),62.80(16),76.75(2),127.82(22)131.10(23),131.51(23),131.92(23),154.27(6),165.71(18),173.05(11),173.34(4;9)
【0061】
上記
13C-NMRのピークにおける括弧書きの部分の数字は以下のとおりである。
【化7】
【0062】
(合成例2)
<メタクリル基含有トリカルボン酸化合物の合成>
合成例1において、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)を、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)に代えた以外は、合成例1と同様にして、メタクリル基含有トリカルボン酸化合物を合成した(収率93%)。なお、得られた合成例2のメタクリル基含有トリカルボン酸化合物のFT-IR吸収の測定を行い合成前後のピークを確認し、NCOのピーク(約2270cm-1~2240cm-1)がすべて消失していることを確認した。
【0063】
<同定データ>
合成例2のメタクリル基含有トリカルボン酸化合物のFT-IR吸収を以下に示す。
810cm-1、983cm-1、1067cm-1、1126cm-1、1182cm-1、1270cm-1、1336cm-1、1408cm-1、1566cm-1、1634cm-1、1703cm-1及び2700cm-1~3700cm-1にカルボン酸由来のブロードな吸収振動が見られた。
【0064】
得られた合成例2のメタクリル基含有トリカルボン酸化合物の13C-NMRのピークについて、以下に示す。
13C-NMR(CDCl3,δppm);17.75(23),39.26(15),39.60(15),40.13(3;8),40.46(3;8),40.79(3;8),62.48(16),62.84(16),63.20(16),76.75(2),125.52(24),125.92(24),126.32(24),135.76(22),166.52(18),173.05(11),173.34(4;9)
【0065】
上記
13C-NMRのピークにおける括弧書きの部分の数字は以下のとおりである。
【化8】
【0066】
(合成例3)
<アクリル基含有ジカルボン酸化合物の合成>
合成例1において、クエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)50質量部を、下記構造式で表されるL(+)-酒石酸(関東化学株式会社製)26.6質量部に変更した以外は、合成例1と同様にして、アクリル基含有ジカルボン酸化合物を合成した(収率93%)。なお、合成物3のアクリル基含有ジカルボン酸化合物のFT-IR吸収の測定を行い合成前後のピークを確認し、NCOのピーク(約2270cm-1~2240cm-1)がすべて消失していることを確認した。
【0067】
【0068】
<同定データ>
合成物3のアクリル基含有ジカルボン酸化合物のFT-IR吸収を以下に示す。
810cm-1、987cm-1、1081cm-1、1121cm-1、1218cm-1、1383cm-1、1409cm-1、1634cm-1、1722cm-1及び2700cm-1~3700cm-1にカルボン酸由来のブロードな吸収振動が見られた。
【0069】
得られた合成物3のアクリル基含有ジカルボン酸化合物の13C-NMRのピークについて、以下に示す。
13C-NMR(CDCl3,δppm);40.03(20;40),61.99(21;15),62.35(21;15),62.71(21;15),73.62(2;3),73.99(2;3),127.82(29;27),131.10(30;28),131.51(30;28),131.92(30;28),154.11(7;5),170.61(9;11)
【0070】
上記
13C-NMRのピークにおける括弧書きの部分の数字は以下のとおりである。
【化10】
【0071】
(実施例1)
ベース樹脂として合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物3.26体積%、低融点フラックス(P303K、デクセリアルズ株式会社製)2.24体積%、及びオキセタン化合物(OXBP、UBE株式会社製)2.24体積%を加え、更に、熱伝導粒子としてAgコートCu粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:40μm)56.30体積%、及び低融点金属粒子としてSn58Bi42粒子(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径Dv:4μm)35.96体積%を加えて、攪拌装置(泡とり練太郎・自動公転ミキサー、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合した。更に、ラジカル重合開始剤(パーロイルTCP、日油株式会社製)0.025体積%を加えて良く攪拌し、実施例1の熱伝導組成物を調製した。
得られた熱伝導組成物を、厚み38μmの剥離フィルム(38GS、リンテック株式会社製)上にバーコート法により付与し、80℃で15分間加熱し、乾燥させて、平均厚み100μmの熱伝導シートを作製した。
【0072】
(実施例2)
実施例1において、合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物を、合成例2のメタクリル基含有トリカルボン酸化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱伝導組成物及び熱伝導シートを作製した。
【0073】
(実施例3)
実施例1において、合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物を、合成例3のアクリル基含有ジカルボン酸化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱伝導組成物及び熱伝導シートを作製した。
【0074】
(実施例4)
実施例1において、合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物の含有量3.26体積%を1体積%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱伝導組成物及び熱伝導シートを作製した。
【0075】
(実施例5)
実施例1において、合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物の含有量3.26体積%を10体積%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の熱伝導組成物及び熱伝導シートを作製した。
【0076】
(比較例1)
実施例1において、合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物3.26体積%を、M-1276(ポリアミド樹脂、アルケマ株式会社製)3.26体積%に変更し、ラジカル重合開始剤(パーロイルTCP、日油株式会社製)を添加しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱伝導組成物及び熱伝導シートを作製した。
【0077】
(比較例2)
実施例1において、合成例1のアクリル基含有トリカルボン酸化合物3.26体積%を、アクリルモノマー(UA-306H、共栄社化学株式会社製)3.26体積%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の熱伝導組成物及び熱伝導シートを作製した。
【0078】
<硬化物の作製>
次に、30mm×30mm×2mmのアルミニウム板(A5052P)2枚の間に0.125mmのスペーサを配置し、直径20mmに打ち抜いた各熱伝導組成物を挟み込み、150℃で60分間オーブンキュアを施し、各熱伝導組成物の硬化物(界面Al)を得た。
【0079】
次に、得られた各硬化物について、以下のようにして、接着性及び熱伝導率を評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0080】
<接着性>
各熱伝導組成物の硬化物を130℃に加熱したホットプレート上で1分間加熱し、引き剥がしの状況を確認し、下記の基準で接着性を評価した。
[評価基準]
A:2枚のアルミニウム板を引き剥がすことができない
B:ペンチなどを用いて引き剥がすことができる
C:2枚のアルミニウム板をずらすと簡単に引き剥がすことができる
【0081】
<熱伝導率>
30mm×30mm×2mmの銅板2枚の間に0.125mmのスペーサを配置し、直径20mmに打ち抜いた各熱伝導組成物を挟み込み、150℃で60分間オーブンキュアを施し、各熱伝導組成物の硬化物(界面Cu)について、ASTM-D5470に準拠した方法で熱抵抗(℃・cm2/W)を測定した。その結果から銅板の熱抵抗を引いて硬化物の熱抵抗を算出し、熱抵抗と硬化物の厚みから熱伝導率(W/m・K)を求め、下記の基準で評価した。
[評価基準]
A:熱伝導率が11.0W/m・K以上
B:熱伝導率が8.0W/m・K以上11.0W/m・K未満
C:熱伝導率が8.0W/m・K未満
【0082】
【0083】
【0084】
表1及び表2中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
*アクリルモノマー:UA-306H、共栄社化学株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー
*ポリアミド樹脂:M-1276、アルケマ株式会社製
*P303K:低融点フラックス、デクセリアルズ株式会社製
*OXBP:オキセタン化合物、UBE株式会社製、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル
*熱伝導粒子:AgコートCu粒子、福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:40μm
*低融点金属粒子:Sn58Bi42粒子、三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径Dv:4μm
*ラジカル重合開始剤:パーロイルTCP、日油株式会社製
本発明の(メタ)アクリル基含有ポリカルボン酸化合物を用いた本発明の熱伝導組成物及び熱伝導シートは、高い接着強度と良好なフラックス効果を発揮し得、高熱伝導性を実現できるので、例えば、温度によって素子動作の効率や寿命等に悪影響が生じるCPU、MPU、パワートランジスタ、LED、レーザーダイオード、各種電池(リチウムイオン電池等の各種二次電池、各種燃料電池、キャパシタ、アモルファスシリコン、結晶シリコン、化合物半導体、湿式太陽電池等の各種太陽電池等)などの各種の電気デバイス周り、熱の有効利用が求められる暖房機器の熱源周り、熱交換器、床暖房装置の熱配管周りなどに好適に用いられる。