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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035966
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ガス処理方法及びガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240308BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240308BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240308BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/14 311
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D19/00 C
B01D19/00 D
B01D19/00 F
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140628
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D011
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC03
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA11
4D002BA12
4D002BA20
4D002CA01
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA07
4D002EA08
4D002GA01
4D002GB20
4D011AA12
4D011AA15
4D011AA16
4D011AA18
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC02
4D020BC04
4D020BC10
4D020CB25
4D020CC09
4D020CD03
4D020DA03
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC28
(57)【要約】
【課題】使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができるガス処理方法及びガス処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスを、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液に接触させることによって、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに前記処理液を相分離する吸収器11と、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する分離器12と、分離した前記第2液に脱酸素処理を施す脱酸素処理部13と、前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる放出器14とを備えるガス処理装置100を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスを、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液に接触させることによって、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる工程と、
前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに相分離した前記処理液を、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する工程と、
分離した前記第2液に脱酸素処理を施す工程と、
前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる工程とを備えるガス処理方法。
【請求項2】
前記処理液が、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含み、
前記第1相部分は、前記アミン化合物の含有率が前記第2相部分における前記アミン化合物の含有率より高く、
前記第2相部分は、前記有機溶剤の含有率が前記第1相部分における前記有機溶剤の含有率より高い請求項1に記載のガス処理方法。
【請求項3】
前記脱酸素処理が、前記第2液を加熱する処理、前記第2液を脱酸素剤と接触させる処理、前記第2液を減圧する処理、及び前記第2液に超音波を照射する処理からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のガス処理方法。
【請求項4】
前記脱酸素処理が、前記第2液に水素を供給する水素供給処理である請求項1又は請求項2に記載のガス処理方法。
【請求項5】
前記脱酸素処理が、前記水素供給処理で前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を貴金属触媒に接触させる処理である請求項4に記載のガス処理方法。
【請求項6】
前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる際に、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる請求項3に記載のガス処理方法。
【請求項7】
前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる際に、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる請求項4に記載のガス処理方法。
【請求項8】
前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる際に、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる請求項5に記載のガス処理方法。
【請求項9】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスを、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液に接触させることによって、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、
前記吸収器内で、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに相分離した前記処理液を、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する分離器と、
分離した前記第2液に脱酸素処理を施す脱酸素処理部と、
前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる放出器とを備えるガス処理装置。
【請求項10】
前記処理液が、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含み、
前記第1相部分は、前記アミン化合物の含有率が前記第2相部分における前記アミン化合物の含有率より高く、
前記第2相部分は、前記有機溶剤の含有率が前記第1相部分における前記有機溶剤の含有率より高い請求項9に記載のガス処理装置。
【請求項11】
前記脱酸素処理部が、前記第2液を加熱する処理部、前記第2液を脱酸素剤と接触させる処理部、前記第2液を減圧する処理部、及び前記第2液に超音波を照射する処理部からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9又は請求項10に記載のガス処理装置。
【請求項12】
前記脱酸素処理部が、前記第2液に水素を供給する水素供給部を備える請求項9又は請求項10に記載のガス処理装置。
【請求項13】
前記脱酸素処理部が、前記水素供給部で前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を接触させる貴金属触媒をさらに備える請求項12に記載のガス処理装置。
【請求項14】
前記放出器に水素を供給して、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる水素供給部をさらに備える請求項11に記載のガス処理装置。
【請求項15】
前記放出器に水素を供給して、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる水素供給部をさらに備える請求項12に記載のガス処理装置。
【請求項16】
前記放出器に水素を供給して、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる水素供給部をさらに備える請求項13に記載のガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理方法及びガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所からの排ガス及び高炉での副生ガス等の、二酸化炭素(CO)を含有する大容量のガス(CO含有ガス)からCOを回収する方法としては、種々の方法が知られている。このような方法としては、例えば、アミン吸収法等の化学吸収法等が挙げられる。化学吸収法とは、例えば、アミン水溶液等のアルカリ性水溶液を、吸収液(処理液)として用い、この吸収液にCO含有ガスを接触させて、COを吸収させた後、COを吸収させた吸収液を加熱して、前記吸収液からCOを放出させ、この放出したCOを回収する方法である。
【0003】
このような化学吸収法では、COを吸収させた吸収液を加熱して、前記吸収液からCOを放出させる工程、いわゆる、吸収液の再生工程で、多量の熱エネルギーが必要である。このことから、化学吸収法でCOを回収する方法は、COを分離回収するためのコスト(ランニングコスト)が高くなってしまう。このランニングコストを低減させるためにも、CO等の酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させること等が検討されている。
【0004】
ランニングコストを低減することができる化学吸収法としては、例えば、特許文献1に記載の方法等が挙げられる。特許文献1には、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを、吸収器内において接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物が吸収された前記処理液を前記吸収器から再生器に送る送液工程と、前記再生器において、前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離する再生工程と、を含み、前記吸収工程では、前記被処理ガス中の前記酸性化合物と接触した前記処理液が、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離し、前記送液工程では、前記相分離した前記第1相部分及び前記第2相部分が混合された状態の前記処理液を前記再生器内に導入させる、ガス処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-187553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、上述したように、CO等の酸性化合物の吸収により相分離する処理液を用いる。この処理液としては、例えば、水、化学吸収剤として作用しうるアミン化合物、及び、物理吸収剤として作用しうる有機溶媒(代表的な成分としてはエーテル化合物)を含む処理液等が挙げられる。このような処理液は、酸性化合物が吸収されていないときには、均一な1相であるものの、酸性化合物が吸収されると、2相に相分離する。具体的には、酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分(アミン相)と酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分(有機溶媒相、エーテル相)との2相に相分離する。このような特許文献1に記載の処理液のような、酸性化合物の吸収により相分離する処理液を用いると、前記再生工程における処理液の再生温度(例えば、100℃未満)が、酸性化合物の吸収により相分離しない一般的な処理液を用いた場合の再生温度(例えば、120℃以上)より低くなる。また、特許文献1によれば、第2相部分を第1相部分と一緒に再生器に導入するほうが、酸性化合物の含有率が低い第2相部分を除去するよりも、酸性化合物を分離するために必要なエネルギーを低減することができる。このことは、前記再生工程において、酸性化合物と相互作用(結合)していないアミン化合物は、前記第1相部分から前記第2相部分に移行するため、前記第1相部分から酸性化合物が放出されやすくなることによると考えられる。
【0007】
しかしながら、前記処理液には、酸性化合物の回収を長期間にわたって使用することにより、化学的に徐々に変化する成分が含まれる。この化学的に変化する成分は、前記処理液が相分離した後の前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)である。この成分としては、具体的には、アミン化合物と有機溶媒とを含む処理液であれば、前記アミノ化合物である。この変化により、前記処理液の性能が低下することから、前記処理液の性能を維持するために、アミン化合物等の前記第1相部分を構成する成分の補充(又は入替)をする必要がある。CO等の酸性化合物を分離回収するためのコスト(ランニングコスト)を低減させるためには、処理液の劣化、すなわち、アミン化合物等の前記第1相部分を構成する成分の劣化を抑制することが求められている。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされた発明であって、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができるガス処理方法及びガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0010】
本発明の一態様に係るガス処理方法は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスを、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液に接触させることによって、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる工程と、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに相分離した前記処理液を、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する工程と、分離した前記第2液に脱酸素処理を施す工程と、前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる工程とを備えるガス処理方法である。
【0011】
このような構成によれば、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0012】
酸性化合物の分離回収を長期間にわたって行うことによる、処理液の劣化とは、上述したように、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)の劣化であると考えられる。
【0013】
このような劣化としては、まず、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分、例えばアミン化合物)が加熱されることによって変質する劣化、すなわち、熱劣化が挙げられる。前記処理液として、前記のような、酸性化合物の吸収により、前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離する処理液を用いると、他の処理液(相分離しない処理液)を用いた場合より、前記処理液の再生温度を低下させることができる。すなわち、酸性化合物を吸収した処理液の加熱温度を低下させても、前記処理液から前記酸性化合物を放出させることができる。このことから、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)の熱劣化が抑制されると考えられる。よって、前記処理液の加熱による劣化、すなわち熱劣化が抑制されると考えられる。
【0014】
前記劣化としては、前記熱劣化以外に、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)が、前記処理液に溶存されている酸素(溶存酸素)で酸化されることによって変質する劣化、すなわち、酸化劣化も挙げられる。酸性化合物の吸収により、前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離する処理液を用いる場合、上述したように、熱劣化が抑制されることから、前記処理液の劣化には、この酸化劣化の影響が大きいと考えられる。この影響の大きいと考えられる酸化劣化を抑制するために、本発明者等は、前記処理液に脱酸素処理を施すことによって、前記処理液から溶存酸素を減らすことに着目した。その際、前記処理液全体に対して、脱酸素処理を施すことや、酸化劣化の対象である成分を多く含む前記第1相部分を主として含む第1液に対して、脱酸素処理を施すことも検討した。本発明者等は、さらに種々検討した結果、前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分は、前記第1相部分より極性が低いことから、前記第2相部分には、前記第1相部分より、溶存されている酸素(溶存酸素)の量が多いことに着目した。このことから、本発明者等は、前記第2相部分を主として含む第2液に、前記脱酸素処理を施すことが、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)の酸化劣化を抑制するのに有効であることを見出した。すなわち、本発明者等は、酸化劣化の対象である成分を多く含む前記第1相部分を主として含む第1液ではなく、前記第2液に、前記脱酸素処理を施すことが、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)の酸化劣化を抑制するのに有効であることを見出した。
【0015】
上記のように、前記第2相部分を主として含む第2液に、前記脱酸素処理を施すことによって、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)の酸化劣化を抑制することができると考えられる。よって、前記処理液の酸化による劣化(酸化劣化)が抑制されると考えられる。前記処理液全体に対して、脱酸素処理を施すことなく、前記第2相部分を主として含む第2液に、前記脱酸素処理を施すことによって、前記酸化劣化を効率的に抑制することができると考えられる。
【0016】
また、排ガス等の酸化性雰囲気ガスを処理する際には、熱劣化より酸化劣化のほうが問題になることが一般的である。この点からも、酸化劣化を効率的に抑制できることは、使用する処理液の劣化を効率的に抑制することに好適に寄与すると考えられる。
【0017】
さらに、前記ガス処理方法では、前記第1液と前記第2液とを混合させる前に、前記第2液に前記脱酸素処理を施す。このことから、前記処理液を加熱して、前記処理液から酸性化合物を放出させる前の前記処理液の一部である前記第2液に前記脱酸素処理が施されることになる。このことから、前記処理液から酸性化合物を放出する際の加熱時には、脱酸素処理された処理液になっている。酸化劣化は、温度が高いほど起こりやすいことから、前記第1液と混合させる前の処理液である第2液に前記脱酸素処理を施すことにより、前記処理液から前記酸性化合物を放出させるための加熱前に前記脱酸素処理を施すことになり、酸化劣化を有効に抑制できると考えられる。
【0018】
以上のことから、前記処理液の熱劣化を抑制でき、前記処理液の酸化劣化も効率的に抑制できると考えられる。よって、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができると考えられる。すなわち、前記処理液を補充したり、入れ替えることなく、長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができると考えられる。
【0019】
また、前記ガス処理方法において、前記処理液が、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含み、前記第1相部分は、前記アミン化合物の含有率が前記第2相部分における前記アミン化合物の含有率より高く、前記第2相部分は、前記有機溶剤の含有率が前記第1相部分における前記有機溶剤の含有率より高いことが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、使用する処理液の劣化をより抑制し、より長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができる。
【0021】
また、前記ガス処理方法において、前記脱酸素処理が、前記第2液を加熱する処理、前記第2液を脱酸素剤と接触させる処理、前記第2液を減圧する処理、及び前記第2液に超音波を照射する処理からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、前記脱酸素処理により、前記第2液から溶存酸素を好適に除去することができ、使用する処理液の劣化をより抑制することができる。よって、より長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0023】
また、前記ガス処理方法において、前記脱酸素処理が、前記第2液に水素を供給する水素供給処理であることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、前記脱酸素処理により、前記第2液から溶存酸素を好適に除去することができる。このことは、前記第2液に水素を供給することにより、酸素分圧が低下し、この酸素分圧の低下により、脱酸素されることによると考えられる。このように、前記第2液から溶存酸素が好適に除去され、使用する処理液の劣化をより抑制することができる。よって、より長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0025】
また、前記ガス処理方法において、前記脱酸素処理が、前記水素供給処理で前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を貴金属触媒に接触させる処理であることがより好ましい。
【0026】
このような構成によれば、前記脱酸素処理により、前記第2液から溶存酸素をより好適に除去することができる。このことは、上述した、酸素分圧の低下による脱酸素に加えて、貴金属触媒が存在することによって、酸素を水素で還元する反応(水素と酸素とから水を生成する反応)が促進されることによると考えられる。このように、前記水素供給処理による脱酸素に加え、水素を供給した前記第2液を貴金属触媒に接触させることによる脱酸素がなされることにより、前記第2液から溶存酸素がより好適に除去され、使用する処理液の劣化をより抑制することができる。よって、より長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0027】
また、前記ガス処理方法において、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる際に、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させることが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、使用する処理液の劣化をより抑制し、より長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができ、さらに、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させることができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0029】
前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる際に、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させることによって、前記処理液(前記第1液及び前記第2液)から前記酸性化合物を放出させることが可能な前記処理液の温度(再生温度)を低下させることができる。このため、前記処理液の熱劣化をより抑制できるだけではなく、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させることができると考えられる。
【0030】
さらに、前記脱酸素処理として、前記水素供給処理等の、水素を用いた脱酸素処理を用いた場合であれば、この処理時に供給する気体も、前記酸性化合物を放出させる際に用いる気体も、ともに水素である。このことから、これらの供給を容易にすることができる。例えば、前記脱酸素処理に用いる水素と、前記酸性化合物を放出させる際に用いる水素とを、同じ水素供給部から供給することも可能である。
【0031】
また、本発明の他の一態様に係るガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスを、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液に接触させることによって、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、前記吸収器内で、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに相分離した前記処理液を、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する分離器と、分離した前記第2液に脱酸素処理を施す脱酸素処理部と、前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる放出器とを備えるガス処理装置である。
【0032】
このような構成によれば、上述したように、前記処理液の再生温度を低下させることができることから、前記放出器における、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分、例えばアミン化合物)の熱劣化を抑制することができると考えられる。また、前記脱酸素処理部による脱酸素処理により、前記第1相部分を構成する成分の酸化劣化も、上述したように、効率的に抑制できると考えられる。よって、前記ガス処理装置によれば、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができる。
【0033】
また、前記ガス処理装置において、前記処理液が、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含み、前記第1相部分は、前記アミン化合物の含有率が前記第2相部分における前記アミン化合物の含有率より高く、前記第2相部分は、前記有機溶剤の含有率が前記第1相部分における前記有機溶剤の含有率より高いことが好ましい。
【0034】
このような構成によれば、使用する処理液の劣化をより抑制し、より長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができる。
【0035】
また、前記ガス処理装置において、前記脱酸素処理部が、前記第2液を加熱する処理部、前記第2液を脱酸素剤と接触させる処理部、前記第2液を減圧する処理部、及び前記第2液に超音波を照射する処理部からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
このような構成によれば、前記脱酸素処理部による脱酸素処理により、前記第2液から溶存酸素を好適に除去することができ、使用する処理液の劣化をより抑制することができる。よって、より長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0037】
また、前記ガス処理装置において、前記脱酸素処理部が、前記第2液に水素を供給する水素供給部を備えることが好ましい。
【0038】
このような構成によれば、前記脱酸素処理部による脱酸素処理により、前記第2液から溶存酸素を好適に除去することができ、使用する処理液の劣化をより抑制することができる。よって、より長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0039】
また、前記ガス処理装置において、前記脱酸素処理部が、前記水素供給部で前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を接触させる貴金属触媒をさらに備えることがより好ましい。
【0040】
このような構成によれば、前記第2液への水素供給による脱酸素に加え、水素を供給した前記第2液を貴金属触媒に接触させることによる脱酸素がなされることにより、前記第2液から溶存酸素をより好適に除去することができる。よって、使用する処理液の劣化をより抑制することができ、より長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0041】
また、前記ガス処理装置において、前記放出器に水素を供給して、前記第1液及び前記第2液に水素を接触させる水素供給部をさらに備えることが好ましい。
【0042】
このような構成によれば、前記放出器において、前記処理液(前記第1液及び前記第2液)から前記酸性化合物を放出させることが可能な前記処理液の温度(再生温度)を低下させることができる。このため、前記処理液の熱劣化をより抑制できるだけではなく、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させることができると考えられる。よって、使用する処理液の劣化をより抑制し、より長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができ、さらに、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させることができる。さらに、前記脱酸素処理部として、前記水素供給部を用いた場合であれば、これらの水素の供給を容易にすることができる。例えば、前記脱酸素処理部で用いる水素と、前記放出器で用いる水素とを、同じ水素供給部から供給することも可能である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができるガス処理方法及びガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係るガス処理装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の実施形態に係るガス処理方法は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物の吸収により相分離する処理液を用い、前記酸性化合物を含む被処理ガスから前記酸性化合物を分離して回収する方法である。
【0047】
前記ガス処理方法は、まず、前記酸性化合物を含む被処理ガスを前記処理液に接触させる。そうすることによって、前記酸性化合物が前記処理液に吸収される。前記酸性化合物が吸収された処理液は、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに相分離する。なお、このように、前記処理液に前記被処理ガスを接触させて、前記酸性化合物を吸収させる工程は、以下、吸収工程とも呼ぶ。
【0048】
前記ガス処理方法は、前記吸収工程の後に、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する。この分離としては、前記第1相部分からなる第1液と前記第2相部分からなる第2液とに分離することが好ましいが、前記第1液は、前記第1相部分を主として含んでいれば、前記第2相部分を含んでいてもよい。また、前記第2液は、前記第2相部分を主として含んでいれば、前記第1相部分を含んでいてもよい。主として含むとは、その相部分が、例えば、80質量%以上含むことをいい、100質量%であることが好ましい。なお、前記第1液と前記第2液とを分離する工程は、以下、分離工程とも呼ぶ。
【0049】
前記ガス処理方法は、前記分離工程で分離した前記第2液に脱酸素処理を施す。この脱酸素処理を施すことによって、前記第2液に溶解されている酸素(溶存酸素)の量を低減させることができる。なお、前記第2液に脱酸素処理を施す工程は、以下、脱酸素処理工程とも呼ぶ。
【0050】
前記ガス処理方法は、前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱する。前記加熱としては、例えば、前記第1液と、前記脱酸素処理を施した前記第2液とを混合した混合液の加熱等が挙げられる。このような加熱によって、前記混合液(前記第1液及び前記第2液)が所定温度以上になると、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出することができる。なお、前記混合液(第1液及び前記第2液)を加熱する工程は、以下、放出工程とも呼ぶ。
【0051】
前記ガス処理方法では、前記被処理ガスに含まれる成分のうち、前記処理液に吸収されない成分は、前記吸収工程で、前記処理液に吸収されず、前記放出工程で、前記処理液から放出されない。また、前記処理液に吸収されにくい成分は、前記吸収工程で、前記処理液に吸収されにくく、前記放出工程で前記処理液から放出される量が少なくなる。また、前記被処理ガスに含まれる成分のうち、前記処理液に吸収され、前記処理液を加熱しても、前記処理液から放出されない成分も、前記放出工程で、前記処理液から放出されない。これらのこと等から、前記ガス処理方法は、上述したように、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させ、前記処理液から放出されることによって、高濃度(前記被処理ガスにおける酸性化合物の濃度より高い濃度)の酸性化合物を回収することができる。また、前記ガス処理方法は、前記脱酸素処理工程で、前記第2液に脱酸素処理を施すことにより、前記第2液から溶存酸素を好適に除去できる。このことから、前記ガス処理方法は、溶存酸素による前記処理液の劣化(酸化劣化)の発生を好適に抑制でき、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができる。
【0052】
前記被処理ガスとしては、前記酸性化合物を含む気体であればよく、前記酸性化合物以外の気体を含んでいてもよい。前記酸性化合物以外の気体としては、例えば、窒素等の、前記処理液に吸収されにくい気体等が挙げられる。前記被処理ガスとしては、具体的には、発電所からの排ガス及び高炉での副生ガス等が挙げられる。この例示した被処理ガスのように、前記被処理ガスは、前記酸性化合物を含むだけではなく、前記酸性化合物以外の気体も含むことが一般的である。また、前記酸性化合物以外の気体は、前記酸性化合物より前記処理液に吸収されにくいことが多い。前記酸性化合物以外の気体が前記処理液に吸収されにくい場合、前記吸収工程では、前記酸性化合物が前記処理液に吸収されるが、前記酸性化合物以外の成分が前記処理液に吸収されにくいことになる。このことから、前記ガス処理方法では、高濃度(前記被処理ガスにおける酸性化合物の濃度より高い濃度)の酸性化合物を回収することができる。
【0053】
前記酸性化合物としては、水への溶解で酸を生じる化合物であれば、特に限定されない。前記酸性化合物としては、例えば、発電所からの排ガス及び高炉での副生ガス等に含まれる酸性化合物等が挙げられる。前記酸性化合物としては、より具体的には、二酸化炭素、及び、硫黄酸化物(SOx)及び硫化水素等の硫黄化合物等が挙げられる。
【0054】
前記処理液は、上述したように、前記酸性化合物の吸収により、前記酸性化合物の含有率が相対的に高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が相対的に低い第2相部分とに相分離する処理液である。前記処理液としては、例えば、アミン化合物の水溶液等が挙げられる。前記アミン化合物の水溶液には、有機溶剤をさらに含んでいてもよい。前記処理液としては、例えば、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含む処理液等が好ましく用いられる。すなわち、前記処理液としては、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含み、前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離する処理液が好ましい。このような処理液は、前記酸性化合物の吸収により、好適に相分離され、前記処理液から前記酸性化合物を放出させることが可能な前記処理液の温度(再生温度)を好適に低下させることができる点から好ましい。また、前記第1相部分は、前記アミン化合物の含有率が前記第2相部分における前記アミン化合物の含有率より高い相であり、以下、アミン相とも呼ぶ。前記第2相部分は、前記有機溶剤の含有率が前記第1相部分における前記有機溶剤の含有率より高い相である。このことから、前記第2相部分は、以下、前記有機溶剤の代表的な成分がエーテル化合物であることから、エーテル相、又は、有機相とも呼ぶ。
【0055】
前記アミン化合物としては、第1級アミンに限らず、第2級アミン及び第3級アミンも挙げられる。前記第1級アミンとしては、例えば、2-アミノエタノール[MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm1/2]、及び2-(2-アミノエトキシ)エタノール[AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm1/2]等が挙げられる。前記第2級アミンとしては、例えば、2-(メチルアミノ)エタノール[MAE:溶解度パラメータ=12.5(cal/cm1/2]、及び2-(エチルアミノ)エタノール[EAE:溶解度パラメータ=12.0(cal/cm1/2]等が挙げられる。前記第3級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、及びビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。前記アミン化合物は、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記有機溶剤としては、例えば、1-ブタノール[溶解度パラメータ=11.3(cal/cm1/2]、1-ペンタノール[溶解度パラメータ=11.0(cal/cm1/2]、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル[DEGDEE:溶解度パラメータ=8.2(cal/cm1/2]、及びジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられる。前記有機溶剤は、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
前記処理液は、前記アミン化合物、前記有機溶剤、及び水を含む処理液の場合、前記アミン化合物の含有率は、20質量%以上40質量%未満であることが好ましい。また、前記有機溶剤の含有率が、40質量%以上60質量%以下であることが好ましい。また、前記処理液において、水は、残部であり、水の含有率は、例えば、0質量%超20質量%以下であることが好ましい。前記処理液としては、例えば、前記アミン化合物が30質量%、前記有機溶剤が60質量%、水が10質量%である処理液等が挙げられる。また、前記処理液は、前記アミン化合物、前記有機溶剤、及び水以外にも、イオン液体等の他の成分を含んでもよい。
【0058】
前記処理液は、前記アミン化合物、前記有機溶剤、及び水を含む処理液である場合、前記アミン化合物の溶解度パラメータから前記有機溶剤のパラメータを減じた値(溶解度パラメータ差分)が1.1(cal/cm1/2以上4.2(cal/cm1/2以下であることが好ましい。なお、溶解度パラメータは、下記式(1)で求められる。
【0059】
δ=[(ΔH-RT)/V]1/2 (1)
式(1)中、δは、溶解度パラメータを示し、ΔHは、モル蒸発潜熱を示し、Rは、ガス定数を示し、Tは、絶対温度を示し、Vは、モル体積を示す。
【0060】
前記処理液が、アミン化合物、有機溶剤、及び水を含む場合における、二酸化炭素を吸収させた後の処理液の状態について説明する。前記処理液として、アミン化合物30質量%、有機溶剤60質量%、及び水10質量%を含有する処理液を用い、前記アミン化合物と前記有機溶剤との組合せを変えて、それぞれの組合せにおける処理液の状態を観察した。その結果を、表1に示す。なお、表1には、前記アミン化合物の溶解度パラメータと、前記有機溶剤の溶解度パラメータと、前記アミン化合物の溶解度パラメータから前記有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値(溶解度パラメータ差分)と、二酸化炭素を吸収させた後の処理液の状態とを示す。表1における「良好」とは、二酸化炭素の吸収前は単一液相であり、二酸化炭素の吸収により二液相に分離したことを示す。また、表1における「混和せず」とは、二酸化炭素の吸収前から二液相状態で単一液相を形成しなかったことを示す。また、表1における「分離せず」とは、二酸化炭素の吸収後でも単一液相であったことを示す。また、表1における「-」は、この組合せにおける処理液を観察しておらず、その結果がないことを示す。なお、表1に示す、前記アミン化合物の溶解度パラメータ、及び前記有機溶剤の溶解度パラメータは、有効数字の関係で、小数点以下1桁までしか記載していないため、前記アミン化合物の溶解度パラメータから前記有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値には、丸め誤差が発生しており、表1に記載の溶解度パラメータの差分にはなっていない場合がある。
【0061】
【表1】
【0062】
前記処理液は、アミン化合物、有機溶剤、及び水を含む場合、前記アミン化合物の溶解度パラメータから前記有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値(溶解度パラメータ差分)が所定の範囲内であることが好ましいことが、表1からわかる。前記溶解度パラメータ差分としては、具体的には、1.1(cal/cm1/2以上4.2(cal/cm1/2以下であることが好ましく、1.2(cal/cm1/2以上3.8(cal/cm1/2以下であることがより好ましいことがわかる。この溶解度パラメータ差分が上記範囲内となるように、前記アミン化合物及び前記有機溶剤を選択することによって、処理液は、二酸化炭素を吸収することができ、二酸化炭素の吸収前は、1相状態であったものが、二酸化炭素の吸収後は、2相状態となる。すなわち、二酸化炭素の吸収により、相分離される処理液となる。前記溶解度パラメータ差分が小さすぎると、得られた液体に二酸化炭素を吸収させても、相分離されない傾向がある。また、前記溶解度パラメータ差分が大きすぎると、得られた液体が、二酸化炭素を吸収させる前から2相状態となる傾向がある。この2相状態は、有機溶剤と水との混和が不充分であり、アミン化合物がいずれかの相、例えば、水相のほうに多く含まれることになる。このような状態の液体に、前記被処理ガスを接触させても、前記液体と前記被処理ガスとの接触状態が不均一となり、吸収効率が低下するおそれがある。
【0063】
前記処理液は、前記のような酸性化合物の回収に長期間にわたって利用すると、徐々に劣化する。すなわち、前記処理液には、酸性化合物の回収に長期間にわたって利用すると、化学的に徐々に劣化する成分が含まれる。この劣化する代表的な成分は、前記第1相部分を構成する成分であり、アミン化合物、有機溶剤、及び水を含む処理液の場合、アミン化合物である。
【0064】
アミン化合物の劣化としては、まず、加熱されることによって変質する劣化、すなわち熱劣化が挙げられる。前記ガス処理方法では、酸性化合物の吸収により、相分離される処理液を用いることから、他の処理液(相分離しない処理液)を用いる場合より、前記再生温度を低下させることができる。よって、アミン化合物の劣化が充分に抑制されると考えられる。
【0065】
前記劣化としては、前記熱劣化以外に、前記アミン化合物が、前記処理液に溶存されている酸素(溶存酸素)で酸化されることによって変質する劣化、すなわち、酸化劣化も挙げられる。前記ガス処理方法では、熱劣化が抑制されることから、この酸化劣化の影響が大きいと考えられる。この影響の大きいと考えられる酸化劣化を抑制するために、本発明者等は、前記処理液に脱酸素処理を施すことによって、前記処理液から溶存酸素を減らすことに着目した。その際、本発明者等は、脱酸素処理を施す場所についても検討した。その結果、前記第1相部分と前記第2相部分との組成が以下のようになることを見出した。前記第1相部分であるアミン相は、前記アミン化合物の含有率が相対的に高い(前記有機溶媒:前記エーテル化合物の含有率が相対的に低い)ことから、極性が相対的に高くなる。よって、前記第1相部分であるアミン相は、水の含有率が相対的に高く、溶存酸素の含有率が相対的に低くなる。一方で、前記第2相部分であるエーテル相は、前記エーテル化合物の含有率が相対的に高い(前記アミン化合物の含有率が相対的に低い)ことから、極性が相対的に低くなる。よって、前記第2相部分であるエーテル相は、水の含有率が相対的に低く、溶存酸素の含有率が相対的に高くなる。前記処理液に脱酸素処理を施す際、前記処理液から溶存酸素を極力減らすために、前記処理液全体に対して、脱酸素処理を施すことが考えられる。また、酸化劣化の対象であるアミン化合物を多く含む前記第1相部分であるアミン相を主として含む第1液に対して、脱酸素処理を施すことも考えられる。本発明者等は、脱酸素処理を施す場所として、これら(前記処理液全体や前記第1液)に脱酸素処理を施す代わりに、又は、これらに追加して、前記第2相部分を主として含む第2液を採用することによって、前記アミン化合物の酸化劣化を抑制するのに有効であることを見出した。すなわち、前記第2相部分を主として含む第2液に、前記脱酸素処理を施すことが、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分:アミン化合物)の酸化劣化を抑制するのに有効であることを見出した。以上のことから、本発明者等は、酸化劣化の対象である成分を多く含む前記第1相部分を主として含む第1液ではなく、前記第2液に、前記脱酸素処理を施すことが、前記第1相部分を構成する成分(前記第1相部分に主に含まれる成分)の酸化劣化を抑制するのに有効であることを見出した。また、排ガス等の酸化性雰囲気ガスを処理する際には、熱劣化より酸化劣化のほうが問題になることが一般的である。この点からも、酸化劣化を効率的に抑制できることは、使用する処理液の劣化を効率的に抑制することに好適に寄与すると考えられる。
【0066】
さらに、前記ガス処理方法では、前記第1液と前記第2液とを混合させる前に、前記第2液に前記脱酸素処理を施す。このことから、前記処理液を加熱して、前記処理液から酸性化合物を放出させる前の前記処理液の一部である前記第2液に前記脱酸素処理が施されることになる。このことから、前記処理液から酸性化合物を放出する際の加熱時には、脱酸素処理された処理液になっている。酸化劣化は、温度が高いほど起こりやすいことから、前記第1液と混合させる前の処理液である第2液に前記脱酸素処理を施すことにより、前記処理液から前記酸性化合物を放出させるための加熱前に前記脱酸素処理を施すことになり、酸化劣化を有効に抑制できると考えられる。
【0067】
以上のことから、前記処理液の熱劣化を抑制でき、前記処理液の酸化劣化も効率的に抑制できる。よって、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。すなわち、前記処理液を補充したり、入れ替えることなく、長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができる。
【0068】
前記ガス処理方法が、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって連続して、酸性化合物を分離回収することができるといった有効性を示すことを確認するために、以下のことを検討した。
【0069】
前記処理液として、代表的な処理液である、アミン化合物としてEAEを30質量%、有機溶剤として、DEGDEEを60質量%、及び水10質量%を含有する処理液における溶存酸素濃度を計算した。溶存酸素濃度は、「各成分(EAE、DEGDEE、及び水)が純物質だと仮定して、ヘンリー定数から求めた溶存酸素濃度×各成分のモル分率の総和」から求めた。また、ヘンリー定数は、PSRKモデルで予測される溶存酸素濃度をもとにフィッティングして求めた。ここでの計算条件としては、温度50℃、二酸化炭素分圧15kPa、酸素分圧5kPa、EAEのヘンリー定数66,690kPa、DEGDEEのヘンリー定数63,406kPa、水のヘンリー定数5,314,267kPaを用いた。その計算結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
第1相部分であるアミン相と第2相部分であるエーテル相との平均値(すなわち、アミン相とエーテル相との混合相)では、EAEの濃度が26.7モル%であり、溶存酸素の濃度が44ppmであると計算される。一方で、エーテル相では、EAEの濃度が5.9モル%であり、溶存酸素の濃度が64ppmであると計算される。EAEの酸化劣化の反応機構は不明であるが、反応速度がEAEの濃度と溶存酸素の濃度とに対して、1次で比例すると仮定すると、同じ温度において、前記混合相の方が、前記第2相部分より約3.1倍[=(26.7×44)/(5.9×64)]速く酸化すると算定された。この結果からも、アミン相とエーテル相を混合してから所定温度まで加熱するよりも、エーテル相のみを加熱して酸素を脱気してからアミン相と混合し、その後、所定温度まで加熱した方が、酸素劣化を抑制できることが確認できた。
【0072】
前記脱酸素処理は、前記第2液に施すことによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。前記脱酸素処理としては、例えば、前記第2液を加熱する処理(加熱処理)、前記第2液を脱酸素剤に接触させる処理(脱酸素剤接触処理)、前記第2液を減圧する処理(減圧処理)、前記第2液に超音波を照射する処理(超音波照射処理)、前記第2液に水素を供給する処理(水素供給処理)、及び、前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を貴金属触媒に接触させる処理(触媒接触処理)等が挙げられる。前記脱酸素処理は、これらの処理を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
前記加熱処理は、前記第2液を加熱することによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。前記加熱処理としては、前記第2液の温度(加熱温度)が、前記第2液から溶存酸素を除去できる温度であれば、特に限定されない。また、前記加熱処理の条件は、適宜定めることができ、例えば、以下のような条件が好ましい。前記加熱処理としては、より具体的には、前記第2液の温度(加熱温度)が、前記第2液から溶存酸素を除去できる温度以上であって、前記処理液から前記酸性化合物を放出させることが可能な前記処理液の温度(再生温度)より低い温度となる加熱処理であることが好ましい。この加熱温度が低すぎると、前記第2溶存酸素を充分に除去することができない傾向がある。また、前記加熱温度が高すぎると、前記処理剤(に含まれる成分)が蒸発する傾向がある。
【0074】
前記脱酸素剤接触処理は、前記第2液を脱酸素剤に接触させることによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。前記脱酸素剤としては、特に限定されず、溶存酸素を含む液体を接触させることによって、前記第2液から溶存酸素を除去できるものであれば、特に限定されない。
【0075】
前記減圧処理は、前記第2液を減圧することによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。また、前記減圧処理の条件は、適宜定めることができ、例えば、前記減圧処理時の圧力(減圧度)が、前記第2液に酸素が吸収されるときの圧力(吸収圧力)より低い圧力であれば、特に限定されない。また、前記減圧処理、前記第2液が沸騰しない圧力での処理が好ましい。すなわち、前記減圧処理は、前記処理液の成分で最も沸騰しやすい成分である水の蒸気圧以上で行うことが好ましい。前記減圧度が低すぎると、前記第2溶存酸素を充分に除去することができない傾向がある。また、前記減圧度が高すぎると、前記処理液(に含まれる成分)が蒸発(沸騰)する傾向がある。
【0076】
前記超音波照射処理は、前記第2液に超音波を照射することによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。また、超音波照射の条件は、適宜定めることができ、例えば、前記超音波の照射時間が、例えば、30分間以下であることが好ましい。この超音波の照射時間が短すぎると、前記第2溶存酸素を充分に除去することができない傾向がある。また、前記超音波の照射時間が長すぎると、超音波の照射による効果が飽和する傾向がある。
【0077】
前記水素供給処理は、前記第2液に水素を供給することによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。また、前記触媒接触処理は、前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を貴金属触媒に接触させることによって、前記第2液から溶存酸素を除去できる処理であれば、特に限定されない。
【0078】
前記水素供給処理及び前記触媒接触処理において、前記第2液に水素を供給する方法としては、例えば、気体透過性膜を介して水素を前記第2液に供給する方法やガスノズルを用いて水素を前記第2液に供給する方法等が挙げられる。このような、気体透過性膜を介した水素の供給やガスノズルを用いた水素の供給によって、前記第2液に水素を溶解させることができる。
【0079】
前記気体透過性膜としては、水等の液体の透過性より、水素等の気体の透過性のほうが高い膜であり、具体的には、液体を透過させずに気体が透過できる膜等が挙げられる。前記気体透過性膜としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体(PFA)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂製の膜等が挙げられる。また、前記気体透過性膜としては、その形状は限定されず、例えば、平膜であっても中空糸膜であってもよいが、中空糸膜が好ましい。また、前記ガスノズルは、前記第2液に水素を供給できるものであれば、特に限定されない。
【0080】
前記第2液を貴金属触媒に接触させる方法としては、特に限定されず、水素が供給された前記第2液を貴金属触媒に接触し、前記第2液から溶存酸素を除去できる方法であれば、特に限定されない。この方法は、具体的には、前記第2液に含まれる溶存酸素と、前記第2液に供給された水素とを、前記貴金属触媒の存在下で反応させることによって、前記第2液から溶存酸素を除去する方法である。前記貴金属触媒は、前記第2液に含まれる溶存酸素と、前記第2液に供給された水素との反応を促進させることができる触媒であれば、特に限定されない。前記貴金属触媒としては、例えば、パラジウム触媒等が挙げられ、より具体的には、種々の担体上に金属パラジウムを担持させたものが好ましい。この担体としては、例えば、イオン交換樹脂、活性炭、合成吸着剤、及び無機交換体等が挙げられる。また、前記第2液を貴金属触媒に接触させる具体的な方法は、例えば、前記パラジウム触媒等の貴金属触媒を充填した塔内に、水素が供給された前記第2液を連続的に通流させて接触させる方法等が挙げられる。
【0081】
前記放出工程は、前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出することができれば、特に限定されない。ここで放出される前記酸性化合物は、二酸化炭素であることが好ましい。このことから、前記放出工程における前記第1液及び前記第2液の温度は、前記第1液及び前記第2液に吸収された二酸化炭素が前記第1液及び前記第2液(前記処理液)から放出される温度以上であることが好ましい。この温度(加熱温度)としては、具体的には、80℃以上であることが好ましく、100℃未満であることが好ましい。
【0082】
前記放出工程は、前記混合液(前記第1液及び前記第2液)から前記酸性化合物を放出させる際に、前記処理液にほぼ溶解しないガスと前記混合液とを接触させることが好ましい。前記処理液にほぼ溶解しないガスとしては、水素が好ましい。すなわち、前記放出工程は、前記混合液から前記酸性化合物を放出させる際に、前記混合液に水素を接触させることが好ましい。このように水素を接触させることによって、前記処理液から二酸化炭素が放出される温度が低下することから、より低エネルギーで、前記被処理ガスから二酸化炭素等の酸性化合物を分離回収することができる。このように水素を供給する場合、前記放出工程における前記加熱温度としては、具体的には、50℃以上であることが好ましく、90℃以下であることが好ましい。さらに、前記脱酸素処理として、前記水素供給処理又は前記触媒接触処理等の、水素を用いた脱酸素処理を用いた場合、この放出工程で供給する水素を、前記脱酸素処理で水素を供給する供給部から供給することもできる。
【0083】
前記ガス処理方法を実施する装置(ガス処理装置)は、前記吸収工程、前記分離工程、前記脱酸素処理工程、及び前記放出工程を実施できれば、特に限定されない。前記ガス処理装置は、前記酸性化合物を含む被処理ガスを、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液に接触させることによって、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、前記吸収器内で、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて、前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離した前記処理液を、前記第1相部分を主として含む第1液と前記第2相部分を主として含む第2液とに分離する分離器と、分離した前記第2液に脱酸素処理を施す脱酸素処理部と、前記脱酸素処理を施した前記第2液とともに前記第1液を加熱することによって、前記第1液及び前記第2液から前記酸性化合物を放出させる放出器とを備えるガス処理装置等が挙げられる。このようなガス処理装置は、前記吸収器で前記吸収工程を実施し、前記分離器で前記分離工程を実施し、前記脱酸素処理部で前記脱酸素処理工程を実施し、前記放出器で前記放出工程を実施することによって、使用する処理液の劣化を抑制し、長期間にわたって、酸性化合物を分離回収することができる。
【0084】
前記ガス処理装置は、前記処理液を用いて、酸性化合物を含む被処理ガスから、高濃度の酸性化合物を回収するために利用される。前記ガス処理装置100としては、具体的には、図1に示すように、吸収器11と、分離器12と、加熱器(脱酸素処理部)13と、放出器14と、循環路15と、熱交換器16とを備える装置等が挙げられる。なお、図1は、本実施形態に係るガス処理装置の一例を示す概略図である。
【0085】
前記循環路15は、前記吸収器11から処理液を抜き出して、前記放出器14に導入させる第1流路21と、前記放出器14から処理液を抜き出して、前記吸収器11に還流させる第2流路22とを含む。なお、前記熱交換器16は、省略することが可能である。
【0086】
前記吸収器11は、被処理ガスを供給するガス供給路24と、前記吸収器11での処理後のガスを排出するガス排出路25と、処理液を前記放出器14に送るための第1流路21と、前記放出器14から処理液を前記吸収器11に戻すための第2流路22とが接続されている。前記ガス供給路24は、前記吸収器11内に被処理ガスを供給することができる。前記ガス排出路25は、前記吸収器11内から、前記被処理ガスを前記処理液に接触させても吸収されなかったガスを排出することができる。前記第1流路21は、前記吸収器11内に溜まった処理液を抜き出すことができる。前記第2流路22は、前記放出器14から還流された処理液を上から流下させることができる。
【0087】
前記吸収器11は、被処理ガスと処理液とを接触させることにより、被処理ガス中の二酸化炭素等の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去されたガスを排出する。このような吸収器11は、被処理ガスと処理液とを連続的に接触させられるものであればよい。前記吸収器11としては、例えば、被処理ガスの流路に処理液を噴霧するもの、被処理ガスの流路に配置される充填剤を伝って処理液を流下させるもの、及び被処理ガス及び処理液をそれぞれ多数の微細な流路に導入して被処理ガスの微細流路と処理液の微細流路とをそれぞれ合流させるもの等を用いることができる。なお、処理液への酸性化合物の吸収は発熱反応である。
【0088】
前記放出器14には、前記第1流路21と、前記第2流路22とが接続されている。前記第1流路21は、前記吸収器11から導出された処理液を、前記放出器14内に導入させることができる。前記第2流路22は、前記放出器14内に貯留された処理液を導出させることができる。
【0089】
前記放出器14は、処理液が貯留され、この貯留された処理液を、前記酸性化合物を放出可能な温度以上に加熱することによって、酸性化合物を放出させる。この処理液からの酸性化合物の放出、すなわち、処理液に含まれる成分からの酸性化合物の脱離は、吸熱反応である。なお、前記放出器14において、前記処理液を上記のように加熱すると、酸性化合物が放出されるだけでなく、処理液に含まれる水も蒸発する。すなわち、前記放出器14では、前記処理液から、酸性化合物及び水蒸気が放出される。
【0090】
前記第1流路21には、前記分離器12が設けられている。前記分離器12には、隔壁31により第1領域32と第2領域33とに区画されている。前記第1領域32には、前記吸収器11から排出された処理液が貯留される。そのとき、前記処理液が前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離されており、前記第2相部分が前記第1相部分より上層に位置する。このため、前記第1領域32に貯留される処理液の量が増えると、前記第2相部分が優先的に前記隔壁31を越えて、前記第2領域33に流れ込み、前記第2領域33に貯留される。前記第1領域32に貯留された処理液は、前記第1領域32の下部に接続された第1液流路35から排出する。また、前記第2領域33に貯留された処理液は、前記第2領域33の下部に接続された第2液流路36から排出する。このように排出することによって、前記第1液流路35には、前記第1相部分を主とする第1液が流通し、前記第2液流路36には、前記第2相部分を主とする第2液が流通する。前記分離器12は、このようにして、前記第1液と前記第2液とを分離する。なお、前記第1液流路35及び前記第2液流路36には、それぞれポンプ37及びポンプ38が設けられている。
【0091】
前記第2液流路36には、前記加熱器13が接続されている。前記第2液流路36から供給された第2液を、前記加熱器13で加熱することによって、前記第2液から溶存酸素を除去する。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記加熱処理を施す。前記加熱器13は、前記第2液を加熱する処理部である。前記加熱器13としては、例えば、電気、蒸気、及びバーナ等の任意の熱源により、直接又は間接的に処理液を加熱するものを用いることができる。前記脱酸素処理を施すことによって、前記第2液から除去された酸素(溶存酸素由来の酸素)は、酸素排出路41を介して、放出路51に流される。また、前記脱酸素処理を施した後の第2液は、第2液供給路42を介して、前記第1液流路35を流通する第1液に混合される。前記第1液と前記脱酸素処理を施した後の第2液とが混合された混合液を、前記第1流路21を介して、前記放出器14に導入する。
【0092】
前記放出器14には、放出路51と加熱流路52とが接続されている。前記放出路51には、酸性化合物分離器53が設けられている。前記酸性化合物分離器53は、処理液から放出した酸性化合物と水蒸気との混合気体を冷却することによって、水蒸気を凝縮させ、凝縮された水と、酸性化合物とを分離する。前記酸性化合物分離器53には、供給路54と環流路55とが接続される。前記供給路54は、前記酸性化合物分離器53で分離された酸性化合物を供給先に供給する。前記酸性化合物分離器53で分離された水は、前記環流路55を介して、前記放出器14に還流される。なお、前記酸性化合物分離器53及び前記環流路55は、省略することが可能である。
【0093】
前記加熱流路52には、第1加熱部56が設けられている。前記第1加熱部56は、前記処理液を加熱し、前記処理液の一部を、環流路57を介して前記放出器14に戻し、前記処理液の残部を、前記第2流路22を介して前記吸収器11に戻す。前記第2流路22には、ポンプ59が設けられている。前記第1加熱部56は、前記放出器14の内部で処理液を加熱するよう配設してもよいが、図示するように、前記放出器14から外部に抜き出された処理液を加熱するように構成してもよい。なお、前記第1加熱部56としては、例えば、電気、蒸気、及びバーナ等の任意の熱源により、直接又は間接的に処理液を加熱するものを用いることができる。
【0094】
前記熱交換器16は、前記第1流路21及び前記第2流路22に接続され、前記第1流路21を流れる処理液と前記第2流路22を流れる処理液との間で熱交換させる。前記熱交換器16は、例えば、プレート熱交換器等によって構成されるが、温度差が比較的小さい流体間での熱交換が可能なマイクロチャネル熱交換器によって構成され得る。これにより、エネルギー効率を向上することができる。
【0095】
前記ガス処理装置100は、前記吸収器11で前記吸収工程を実施し、前記分離器12で前記分離工程を実施し、前記加熱器13で前記脱酸素処理工程を実施し、前記放出器14で前記放出工程を実施することによって、酸性化合物を含む被処理ガスから、高濃度の酸性化合物を回収することができる。また、前記ガス処理装置100は、前記加熱器13で前記脱酸素処理工程を実施することによって、使用する処理液の劣化を抑制し、前記酸性化合物の回収に前記処理液を長期間にわたって使用することができる。
【0096】
前記ガス処理方法を実施する他の装置としては、例えば、図2に示すガス処理装置200及び図3に示すガス処理装置300のように、前記分離工程を、前記吸収器11に備えられた分離器12で行うガス処理装置が挙げられる。
【0097】
ガス処理装置200は、図2に示すように、前記吸収器11に分離器12が備えられる。前記分離器12は、前記吸収器11の下部に設けられ、隔壁31により第1領域32と第2領域33とに区画されている。また、前記分離器12には、前記第2領域の上部を覆うように隔壁34が備えられている。前記第1領域32には、前記吸収器11内の処理液が貯留される。そのとき、前記処理液が前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離されており、前記第2相部分が前記第1相部分より上層に位置する。このため、前記第1領域32に貯留される処理液の量が増えると、前記第2相部分が優先的に前記隔壁31を越えて、前記第2領域33に流れ込み、前記第2領域33に貯留される。なお、前記第2領域33には、前記隔壁34があることから、前記隔壁31を越えて流入される分以外は、流入されない。前記第1領域32に貯留された処理液は、前記第1領域32の下部に接続された第1液流路35から排出する。また、前記第2領域33に貯留された処理液は、前記第2領域33の下部に接続された第2液流路36から排出する。このように排出することによって、前記第1液流路35には、前記第1相部分を主とする第1液が流通し、前記第2液流路36には、前記第2相部分を主とする第2液が流通する。前記分離器12は、このようにして、前記第1液と前記第2液とを分離する。前記ガス処理装置200は、このような分離器12を備えること以外は、図1に示すガス処理装置100と同様である。
【0098】
ガス処理装置300は、図3に示すように、前記吸収器11内に貯留されている処理液が、酸性化合物の吸収により、前記第1相部分と前記第2相部分とに相分離されており、前記第2相部分が前記第1相部分より上層に位置する。そして、前記吸収器11の下部に第1液流路35が接続されており、第2液流路36が前記第1液流路35より上に接続されている。具体的には、前記第2液流路36は、第2相部分の液面27より下部で、第1相部分と第2相部分との界面28より上部になるように接続する。また、前記第1液流路35は、第1相部分と第2相部分との界面28より下部になるように接続する。このように接続された第1液流路35から処理液を排出することによって、前記第1液流路35には、前記第1相部分を主とする第1液が流通する。また、上記のように接続された第2液流路36から処理液を排出することによって、前記第2液流路36には、前記第2相部分を主とする第2液が流通する。前記分離器12は、このようにして、前記第1液と前記第2液とを分離する。前記ガス処理装置300は、このような分離器12を備えること以外は、図1に示すガス処理装置100と同様である。
【0099】
前記ガス処理装置200及び前記ガス処理装置300は、前記ガス処理装置100と同様、酸性化合物を含む被処理ガスから、高濃度の酸性化合物を回収することができる。また、使用する処理液の劣化を抑制し、前記酸性化合物の回収に前記処理液を長期間にわたって使用することができる。
【0100】
前記ガス処理方法を実施する他の装置としては、例えば、図4~8に示すように、前記脱酸素工程を、前記加熱器13以外で行うガス処理装置が挙げられる。
【0101】
ガス処理装置400は、図4に示すように、減圧器17が備えられる。前記減圧器17は、前記第2液流路36に接続されている。前記第2液流路36には、前記減圧器17より上流にバルブ45を備える。前記減圧器17には、前記減圧器17で前記第2液から除去された酸素(溶存酸素由来の酸素)を排出する酸素排出路41が接続されている。前記酸素排出路41には、前記減圧器17より下流に圧縮機46を備える。前記バルブ45を絞って、前記圧縮機46により前記減圧器17内を減圧することによって、前記第2液流路36から供給された第2液から溶存酸素を除去する。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記減圧処理を施す。前記減圧器17は、前記第2液を減圧する処理部である。前記圧縮機46としては、特に限定されず、遠心式圧縮機等を用いることができる。前記脱酸素処理を施すことによって、前記第2液から除去された酸素(溶存酸素由来の酸素)は、酸素排出路41を介して、放出路51に流される。また、前記脱酸素処理を施した後の第2液は、第2液供給路42を介して、前記第1液流路35を流通する第1液に混合される。前記第1液流路35には、ポンプ43が設けられている。前記第1液と前記脱酸素処理を施した後の第2液とが混合された混合液を、前記第1流路21を介して、前記放出器14に導入する。前記ガス処理装置400は、前記脱酸素処理を前記減圧器17で実施すること以外は、図1に示すガス処理装置100と同様である。
【0102】
ガス処理装置500は、図5に示すように、超音波照射器18が備えられる。前記超音波照射器18は、前記第2液流路36に接続されている。前記超音波照射器18により、前記第2液に超音波を照射することによって、前記第2液流路36から供給された第2液から溶存酸素を除去する。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記超音波照射処理を施す。前記超音波照射器18は、前記第2液に超音波を照射する処理部である。前記超音波照射器18としては、一般的な超音波発生器等を用いることができる。前記脱酸素処理を施すことによって、前記第2液から除去された酸素(溶存酸素由来の酸素)は、酸素排出路41を介して、放出路51に流される。また、前記脱酸素処理を施した後の第2液は、第2液供給路42を介して、前記第1液流路35を流通する第1液に混合される。前記第1液と前記脱酸素処理を施した後の第2液とが混合された混合液を、前記第1流路21を介して、前記放出器14に導入する。前記ガス処理装置500は、前記脱酸素処理を前記超音波照射器18で実施すること以外は、図1に示すガス処理装置100と同様である。
【0103】
ガス処理装置600は、図6に示すように、気液接触部19が備えられる。前記気液接触部19は、前記第2液流路36に接続されている。前記気液接触部19には、その内部に機能材61が備えられる。前記気液接触部19を流通させた第2液は、前記機能材61に接触する。また、前記気液接触部19には、第1水素供給部62を備える。前記第1水素供給部62は、前記気液接触部19に水素を供給することによって、前記気液接触部19内の第2液に水素を供給することができる。前記機能材61としては、例えば、充填材(前記吸収器11内に配置される充填剤と同様の充填材等)及び貴金属触媒等が挙げられる。なお、前記機能材61は備えていなくてもよい。前記機能材61として貴金属触媒を用いた場合、前記第1水素供給部62により、前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を前記貴金属触媒に接触させることになる。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記触媒接触処理を施す。そうすることによって、前記第2液流路36から供給された第2液から溶存酸素を除去する。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記触媒接触処理を施す。また、前記機能材61として、貴金属触媒以外(例えば、充填材)を用いる場合及び前記機能材61を備えない場合であっても(前記機能材61として、貴金属触媒を用いる場合であっても)、前記第1水素供給部62により、前記第2液に水素を供給することによって、前記第2液流路36から供給された第2液から溶存酸素を除去する。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記水素供給処理を施す。前記触媒接触処理は、前記水素供給処理よりも、第2液から溶存酸素を好適に除去することができる。前記貴金属触媒としては、上述した貴金属触媒等を用いることができる。前記第1水素供給部62は、水素が供給できれば、特に限定されない。
【0104】
また、前記放出器14には、第2水素供給部64及び第2加熱部65を備える。前記第2水素供給部64は、前記放出器14に水素を供給することによって、前記放出器14内の処理液に水素を供給することができる。前記第2加熱部65は、前記放出器14内の処理液を加熱することによって、前記処理液から酸性化合物を放出することができる。前記第2水素供給部64により、前記放出器14内の処理液に水素を供給することによって、前記処理液(前記第1液及び前記第2液)から前記酸性化合物を放出させることが可能な前記処理液の温度(再生温度)を低下させることができる。このように再生温度を低下させることができるので、前記第2加熱部65による前記処理液の加熱温度を低下させることができる。また、前記第2液に水素を供給しながら、前記第2液を貴金属触媒に接触させる処理部を用いた場合、この放出器14に供給する水素を、前記水素供給処理又は前記触媒接触処理で水素を供給する第1水素供給部62から供給することもできる。すなわち、前記第1水素供給部62と前記第2水素供給部64とが同じであってもよい。
【0105】
また、前記放出器14にも水素を供給することから、前記気液接触部19に前記貴金属触媒を備えるだけではなく、図7に示すガス処理装置700のように、前記放出器14にも貴金属触媒66を備えてもよい。
【0106】
前記ガス処理装置600及び前記ガス処理装置700において、前記脱酸素処理を施すことによって、前記第2液から除去された酸素(溶存酸素由来の酸素)は、酸素排出路41を介して、放出路51に流される。また、前記脱酸素処理を施した後の第2液は、第2液供給路42を介して、前記第1液流路35を流通する第1液に混合される。前記第1液と前記脱酸素処理を施した後の第2液とが混合された混合液を、前記第1流路21を介して、前記放出器14に導入する。前記ガス処理装置600及び前記ガス処理装置700は、前記脱酸素処理を前記気液接触部19で実施し、前記放出器14を上記構成に変えること以外は、図1に示すガス処理装置100と同様である。また、前記第2水素供給部64は、図6に示すガス処理装置600及び図7に示すガス処理装置700に限らず、他のガス処理装置において、前記放出器14に備えていてもよい。前記第2水素供給部64を備えることによって、上述したように、前記第2水素供給部64から前記放出器14内の処理液に水素を供給し、そうすることによって、前記処理液(前記第1液及び前記第2液)から前記酸性化合物を放出させることが可能な前記処理液の温度(再生温度)を低下させることができる。
【0107】
ガス処理装置800は、図8に示すように、脱酸素剤接触部20が備えられる。前記脱酸素剤接触部20は、前記第2液流路36に接続されている。前記脱酸素剤接触部20に前記第2液を接触させることによって、前記第2液流路36から供給された第2液から溶存酸素を除去する。すなわち、前記第2液に対して、前記脱酸素処理として前記脱酸素剤接触処理を施す。前記脱酸素剤接触部20は、前記第2液に脱酸素剤を接触させる処理部である。前記第2液に対して前記脱酸素処理を施した後、前記第1液と前記脱酸素処理を施した後の第2液とを混合させた混合液を前記放出器14に導入する。なお、前記脱酸素剤接触処理では、前記第2液から除去された酸素(溶存酸素由来の酸素)の発生量が少ないため、酸素排出路を介した放出路への流出はなくてもよい。また、前記ガス処理装置800には、図1に示すガス処理装置100と同様、酸素排出路を備えていてもよい。前記ガス処理装置800は、この酸素排出路を備えていないこと及び前記脱酸素処理を前記脱酸素剤接触部20で実施すること以外は、図1に示すガス処理装置100と同様である。
【0108】
前記各ガス処理装置200、300、400、500、600、700、及び800は、前記ガス処理装置100と同様、酸性化合物を含む被処理ガスから、高濃度の酸性化合物を回収することができる。また、使用する処理液の劣化を抑制し、前記酸性化合物の回収に前記処理液を長期間にわたって使用することができる。
【符号の説明】
【0109】
11 吸収器
12 分離器
13 加熱器(脱酸素処理部)
14 放出器
15 循環路
16 熱交換器
17 減圧器
18 超音波照射器
19 触媒接触部
20 脱酸素剤接触部
21 第1流路
22 第2流路
24 ガス供給路
25 ガス排出路
27 第2相部分の液面
28 第1相部分と第2相部分との界面
31,34 隔壁
32 第1領域
33 第2領域
35 第1液流路
36 第2液流路
37,38,43,59 ポンプ
41 酸素排出路
42 第2液供給路
45 バルブ
46 圧縮機
51 放出路
52 加熱流路
53 酸性化合物分離器
54 供給路
55,57 環流路
56 第1加熱部
61 機能材
66 貴金属触媒
62 第1水素供給部
64 第2水素供給部
65 第2加熱部
100,200,300,400,500,600,700,800 ガス処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8