IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 文化シヤッター株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図1
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図2
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図3
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図4
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図5
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図6
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図7
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図8
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図9
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図10
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図11
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図12
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図13
  • 特開-鉄骨階段の組立補助金具 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035980
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】鉄骨階段の組立補助金具
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/02 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
E04F11/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140651
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】坪井 健一
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC47
2E301CC53
2E301CD04
2E301CD43
(57)【要約】
【課題】踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、施工性の向上、施工品質の標準化に加え、作業の安全性の向上を可能とする補助金具を提供する。
【解決手段】踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に踊場を構成する妻梁6を固定するための補助金具10であって、妻梁6はフランジ部を有する溝形鋼からなり、補助金具10は壁面に固定される取付部と妻梁6を保持する保持部とを備え、保持部は取付部が壁に固定されたときに、該取付部の下端から壁から離れるように延長する前後片と前後片の先端から下向きに延長する上下片と上下片の下端から壁に向け壁面との間に空隙を有するように延長する爪片とを備え空隙は妻梁6を構成する一方のフランジ部が取付片、前後片及び上下片で囲まれた空間への侵入を可能な寸法とされ、空間に侵入したフランジ部が爪片の上面に接触することにより妻梁6を保持可能に構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に前記踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、
前記妻梁は、フランジ部を有する溝形鋼からなり、
前記補助金具は、壁面に固定される取付部と、
妻梁を保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記取付部が壁に固定されたときに、前記取付部の下端から壁から離れるように延長する前後片と、
前記前後片の先端から下向きに延長する上下片と、
前記上下片の下端から壁に向け、壁面との間に空隙を有するように延長する爪片と、
を備え、
前記空隙は、
妻梁を構成する一方のフランジ部が取付片、前後片及び上下片で囲まれた空間への侵入を可能な寸法とされ、
空間に侵入したフランジ部が前記爪片の上面に接触することにより前記妻梁を保持可能に構成されたことを特徴とする補助金具。
【請求項2】
踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に前記踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、
前記妻梁は、フランジ部に延長方向に沿って延長する長孔を有する溝形鋼からなり、
前記補助金具は、壁に取り付けられる取付部と、
妻梁を保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記取付部が壁に固定されたときに、前記取付部の下端から、壁から離れるように延長する前後片と、
前記前後片の先端から下向きに延長する上下片と、
前記上下片の下端から壁から離れるように延長する爪片と、
を備え、
前記上下片及び爪片は、前記長孔に挿入可能、かつ長孔の延長方向に移動可能な寸法とされ、
前記長孔に侵入した前記爪片の上面が前記フランジ部の下面に接触することにより前記妻梁を保持可能に構成されたことを特徴とする補助金具。
【請求項3】
踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に前記踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、
前記妻梁は、フランジ部に延長方向に沿って延長する長孔を有する溝形鋼からなり、
前記補助金具は、壁面に固定される取付部と、
妻梁を保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、
前記取付部が壁面に固定されたときに、該取付部の下端から壁面から離れるように延長する前後片と、
前記前後片を上下方向に貫通する円孔と、
前記円孔を貫通するボルトと、
前記ボルトにかみ合うナットと、
を備え、
前記フランジ部の有する長孔に前記ボルトを貫通させた後にナットをかみ合わせることで前記妻梁を保持することを特徴とする補助金具。
【請求項4】
踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に前記踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、
前記妻梁は、フランジ部にねじ孔を有する溝形鋼からなり、
前記補助金具は、壁面に固定される取付部と、
妻梁を保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、
前記取付部が壁面に固定されたときに、前記取付部の下端から壁面から離れるように延長する前後片と、
前記前後片を上下方向に貫通し、壁面に沿って延長する長孔と、
前記長孔を貫通し、前記フランジ部の有するねじ孔に噛み合うボルトと、
を備え、
前記フランジ部に有するねじ孔に前記ボルトを噛み合わせることで前記妻梁を保持することを特徴とする補助金具。
【請求項5】
前記取付部は、補助金具の壁面へのねじ止めを可能にする貫通孔を備え、
前記貫通孔を介して補助金具が壁面にねじ止めにより固定され、前記妻梁を保持したときに、前記妻梁のフランジ部の上面と前記ねじ跡の上端との距離が、妻梁の上に敷設される床材の厚さ以下とされたことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の補助金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段室に鉄骨折り返し階段を組み立てるときの組立補助金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁に囲まれた階段室に鉄骨を組み合わせて形成された折り返し階段が知られている(特許文献1参照)。折り返し階段は、例えば、各階毎に設けられ、各階のフロアーとの間に設けられる踊場と、3方が壁に囲まれ、階と階の間に設けられた踊場(中間踊場)と、一つ階下の踊場から中間踊場に至る階段と、中間踊場から一つ階上の踊場に逆向きで至る階段とを備えた構成とされる。以下、踊場及び中間踊場を纏めて単に踊場という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-168663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁に囲われた階段室の踊場は、階段を形成するササラ桁で連結された収まりであるため、製品と躯体の寸法誤差による「出入り」「高さ」方向の調整が必要とされる。
しかしながら、これまで踊場側には調整機能がないため、ササラ桁の一方の端部を一方側の踊場に取り付けた後に、ササラ桁の他方の端部側を短管パイプなどで支え、この他方の端部に、現物合わせで妻梁の位置を調整し、固定するなど作業者の独自の工夫によって折り返し階段の組み立てがなされている。
このため、組み立て後の仕上がりにばらつきが生じたり、組み立てに時間が掛かるなどの問題を生じさせていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解消すべく、踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、施工性の向上、施工品質の標準化に加え、作業の安全性の向上を可能とする補助金具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための補助金具の構成として、踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、妻梁は、フランジ部を有する溝形鋼からなり、補助金具は、壁面に固定される取付部と、妻梁を保持する保持部と、を備え、保持部は、取付部が壁に固定されたときに、取付部の下端から壁から離れるように延長する前後片と、前後片の先端から下向きに延長する上下片と、上下片の下端から壁に向け、壁面との間に空隙を有するように延長する爪片とを備え、空隙は、妻梁を構成する一方のフランジ部が取付片、前後片及び上下片で囲まれた空間への侵入を可能な寸法とされ、空間に侵入したフランジ部が爪片の上面に接触することにより妻梁を保持可能に構成されたことを特徴とする。
本構成によれば、階段室に折り返し階段を組み立てるときに、踊場を構成する妻梁を補助金具によりその位置を調整可能に保持させておくことにより、作業者が妻梁を支える必要がなくなるので、階段と妻梁との両方で階段室における収まりの調整を調整することが可能とされる。
また、階段を構成するササラ桁を単管パイプなどで支えるなど、不安定な状態で作業をしなくてすむので、施工時の安全性を向上させることができる。また、例えば、妻梁を図面に基づく位置に補助金具で支持させておくことにより、階段室における妻梁の出入り方向における位置、上下方向の位置の調整が容易となり、施工性を向上させることができ、補助金具の調整範囲で妻梁の位置を調整することになるため、施工を標準化することができる。
また、補助金具の他の構成として、踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、妻梁は、フランジ部に延長方向に沿って延長する長孔を有する溝形鋼からなり、補助金具は、壁に取り付けられる取付部と、妻梁を保持する保持部とを備え、保持部は、取付部が壁に固定されたときに、取付部の下端から、壁から離れるように延長する前後片と、前後片の先端から下向きに延長する上下片と、上下片の下端から壁から離れるように延長する爪片とを備え、上下片及び爪片は、長孔に挿入可能、かつ長孔の延長方向に移動可能な寸法とされ、長孔に侵入した爪片の上面がフランジ部の下面に接触することにより妻梁を保持可能に構成しても良い。
また、補助金具の他の構成として、踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に前記踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、妻梁は、フランジ部に延長方向に沿って延長する長孔を有する溝形鋼からなり、補助金具は、壁面に固定される取付部と、妻梁を保持する保持部とを備え、保持部は、取付部が壁面に固定されたときに、該取付部の下端から壁面から離れるように延長する前後片と、前後片を上下方向に貫通する円孔と、円孔を貫通するボルトと、ボルトにかみ合うナットとを備え、フランジ部の有する長孔にボルトを貫通させた後にナットをかみ合わせることで妻梁を保持する構成としても良い。
また、補助金具の他の構成として、踊場を有する折り返し階段を階段室に組み立てるときに、階段室を形成する壁面に踊場を構成する妻梁を固定するための補助金具であって、妻梁は、フランジ部にねじ孔を有する溝形鋼からなり、補助金具は、壁面に固定される取付部と、妻梁を保持する保持部と、を備え、保持部は、取付部が壁面に固定されたときに、取付部の下端から壁面から離れるように延長する前後片と、前後片を上下方向に貫通し、壁面に沿って延長する長孔と、長孔を貫通し、フランジ部の有するねじ孔に噛み合うボルトとを備え、フランジ部に有するねじ孔に前記ボルトを噛み合わせることで妻梁を保持する構成としても良い。
また、補助金具の他の構成として、取付部は、補助金具の壁面へのねじ止めを可能にする貫通孔を備え、貫通孔を介して補助金具が壁面にねじ止めにより固定され、妻梁を保持したときに、妻梁のフランジ部の上面とねじ跡の上端との距離が、妻梁の上に敷設される床材の厚さ以下とされた構成とすると良い。本構成によれば、ねじ跡が床材に隠れるので組み立て後の美観を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】廊下室に設けられた折り返し階段の概略平面図である。
図2】補助金具の外観斜視図である(実施形態1)。
図3】補助金具と妻梁の関係を示す側面図及び正面図である(実施形態1)。
図4】補助金具の作用を示す図である(実施形態1)。
図5】補助金具の外観斜視図である(実施形態2)。
図6】補助金具との妻梁の関係を示す側面図である(実施形態2)。
図7】補助金具と妻梁の関係を示す平面図である(実施形態2)。
図8】補助金具の作用を示す図である(実施形態2)。
図9】補助金具の外観斜視図である(実施形態3)。
図10】補助金具と妻梁の関係を示す側面図である(実施形態3)。
図11】補助金具と妻梁の関係を示す正面図である(実施形態3)。
図12】補助金具の外観斜視図である(実施形態4)。
図13】補助金具と妻梁の関係を示す側面図である(実施形態4)。
図14】補助金具と妻梁の関係を示す正面図である(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、階段室1に設けられた折り返し階段の概略平面図である。図1に示すように、折り返し階段は、例えば、各階毎に踊場2A(廊下)が設けられるとともに、階と階の間に中間踊場2Bが設けられ、中間踊場2Bを挟んで一つ階下の踊場2Aから中間踊場2Bに向かう階段部4(階下階段部4Aという)と、中間踊場2B(廊下)から一つ階上の踊場2Aに向かう階段部4(階上階段部4Bという)とが逆向きに配置された構成である。以下、踊場2A及び中間踊場2Bを纏めて単に廊下2という。
【0009】
階下階段部4A及び階上階段部4Bは、それぞれ階段室1を形成する壁面1aに沿って設けられ、階下階段部4A及び階上階段部4Bは、階下階段部4Aを構成する一対のササラ桁5;5の上端と、階上階段部4Bを構成する一対のササラ桁5;5の下端とがササラ桁5の沿う壁面1a;1a間に架橋された桁材7に連結される。
【0010】
廊下2は、階下階段部4Aを構成する壁面1a側のササラ桁5の上端、階上階段部4Bを構成する壁面1a側のササラ桁5の下端にそれぞれに妻梁6の一端が連結され、妻梁6の他端同士がササラ桁5の沿う壁面1a;1a間に架橋された桁材8に連結され、桁材7と桁材8とに根太材3を連結した上に床材9を敷設して構成される。
【0011】
妻梁6は、ウェブ部61と、ウェブ部61の各端部から直交状に延長するフランジ部6B;6Cが形成されたいわゆる溝形鋼からなり、ササラ桁5が沿う壁面1aに水平に延長するように階段室1を形成する壁面1aにねじなどを打ち付けることで固定される。
【0012】
[実施形態1]
図2は、補助金具の外観斜視図である。図3は、補助金具の使用時の平面図である。本実施形態に係る補助金具10は、前述のように壁面に固定される妻梁の設置作業に好適とされる。補助金具10は、階段室1を形成する壁面1aにねじ止めなどにより固定される。補助金具10は、妻梁6を壁面1aに固定するときに、例えば2つ用いると良い(図3(b)参照)。
【0013】
補助金具10は、壁面1aに接触して固定される取付片12と、取付片12の下端から、壁面1aから離れるように前後方向に延長する前後片14と、前後片14の先端から上下方向下向きに延長する上下片16と、上下片16の下端から壁面1aに向けて延長する爪片18とを備えた構成とされる(図2図3(a)参照)。
【0014】
補助金具10は、例えば、取付片12;前後片14;上下片16;爪片18が、それぞれ平板状とされ、一枚の平板を曲げ加工等により一体的に形成することができる。補助金具10は、壁面1aに取り付けられたときに、前後片14;上下片16;爪片18が妻梁6の上側のフランジ部62を収容可能な空間Sを形成するように構成される。
【0015】
取付片12は、例えば、壁面1aに対して面接触となるように平面状とされた接触面12aと、接触面12aに対して垂直となるように板厚方向に貫通する貫通孔13とを備える。補助金具10は、貫通孔13に例えば、コーチねじ等のねじVを貫通させ、接触面12aを壁面1aに接触させながら打ち込むことで固定される。
【0016】
前後片14は、上下片16が壁から所定距離離間するように、前後方向に延長する寸法が設定される。上下片16は、壁面1aに対向する対向面16aを備えるように構成される。対向面16aは、例えば、平面状とされ、補助金具10が壁面1aに取り付けられたときに、壁面1aと平行となるように形成されている。
【0017】
前後片14は、壁面1aから上下片16の対向面16aまでの距離w14が、妻梁6の上側のフランジ部62の幅w62よりも長くなるように上下片16から延長する長さが設定される。
【0018】
爪片18は、補助金具10を壁面1aに取り付けたときに、壁面1aに向かって延長する先端18tが壁面1aとの間に所定の空隙を有するように延長する長さxが設定される。図3(a)に示すように、爪片18の先端18tが壁面1aから離間する距離Dは、空間Sへの妻梁6の上側のフランジ部62の取り込みが可能となるように設定される。また、爪片18が延長する長さxは、妻梁6の上部側が空間Sに取り込まれ、爪部18の上面18aにフランジ部62の下面62aが接触したときに妻梁6が脱落しない寸法とされる。
【0019】
図4は、補助金具10の使用形態を示す図である。まず、階段室1に設置される廊下2や階段4の位置(例えば、ササラ桁5;5の位置)、階段室1を形成する壁面1aなどとの関係を図面に基づいて、妻梁6の位置を決定する。そして、その位置における妻梁6の上側のフランジ部62の位置を想定し、フランジ部62が補助金具10の空間Sに含まれるように2つの補助金具10を取り付ける位置を設定する(図4(a))。なお、設定した位置は、マーカーなどでマーキングしておくと良い。また、2つの補助金具10が取り付けられる位置は、厳密に水平の位置にある必要はなく、上下方向にある程度のずれが許容される。次に、設定した位置にねじVを打ち込み、各補助金具10の取付片12の接触面12aを壁面1aに接触させてねじ止めして固定する(図4(b))。
次に、壁面1aに固定された左右の補助金具10の下側の隙間Cから、空間Sに妻梁6の上側のフランジ部62の先端側62tを挿入し、回転させながら妻梁6の上側のフランジ部62を空間S内に侵入させる(図4(c))。
さらに妻梁6を回転させて、妻梁6のウェブ部61の背面61aを壁面1aに接触させ、フランジ部62の下面62aが爪片18の上面18a側に接触するように妻梁6を配置する(図4(d))。以上の工程により、妻梁6は、2つの補助金具10;10により壁面1aに対して保持される。
【0020】
そして、作業者は、ササラ桁5や壁面1aとの妻梁6の収まりを確認しながら、妻梁6の上下方向の位置や出入り方向の位置を調整し、妻梁6を壁面1aにねじ止めなどにより固定する。この場合、爪片18の上面18aと前後片14の下面14aとの上下方向の距離yが、補助金具10;10に保持された妻梁6の上下方向の位置の調整範囲とされる。また、2つの補助金具10;10により保持された妻梁6を出入り方向に移動させたときに、妻梁6が補助金具10の一方から脱落しない範囲が、出入り方向の調整範囲とされる。
【0021】
妻梁6を固定した後、補助金具10を固定していたねじVを緩め、壁面1aから2つの補助金具10を除去する。補助金具10の除去後、壁面1aに残されたねじ跡は、コーキング等により塞がれる。なお、妻梁6の固定に使用した補助金具10は、必ずしも壁面1aから取り外す必要はなく、例えば、意匠上何かに覆われる場合には残置しても良い。
【0022】
このように妻梁6の取付作業において、補助金具10により妻梁6を保持させることにより、作業者が妻梁6を支える必要がなくなり、階段4と妻梁6との両方で階段室1における収まりの調整をすることが可能となる。また、従来のようにササラ桁5を単管パイプなどで支えるなど、不安定な状態で作業をしなくてすむので、施工時の安全性を向上させることができる。また、例えば、妻梁6を図面に基づく位置に補助金具10;10で保持させておくことにより、階段室1における妻梁6の出入り方向における位置、上下方向の位置の調整が容易となり、施工性を向上させることができ、補助金具10の調整範囲で妻梁6の位置を調整することになるため、施工を標準化することができる。
【0023】
補助金具10は、例えば、妻梁6の上側のフランジ部62の下面62aが爪片18の上面18aに接触した状態で妻梁6が壁面1aに固定されたときに、妻梁6のフランジ部62の上面62bからねじ穴hまでの距離J(図3)が床材9の厚さよりも短い寸法となるように、各部(取付片12;前後片14;上下片16;爪片18)の寸法を設定すると良い。好ましくは、補助金具10は、妻梁6を壁面1aに固定し、床材9を敷設し、補助金具10を取り外したときに壁面1aに残るねじ跡(ねじ穴h)が、床材9により隠れるように補助金具10の各部の寸法が設定されていれば良い。
【0024】
[実施形態2]
図5乃至図8は、補助金具10の他の実施形態である。
実施形態1で説明した補助金具10は、妻梁6を抱え込むようにして保持するように構成したが、例えば、実施形態2に示すように構成しても良い。
【0025】
実施形態2に係る補助金具10は、壁面1aに接触して固定される取付片12と、取付片12の下端と接続し、壁面1aから前後方向に延長する前後片14と、前後片14の先端から上下方向下向きに延長する上下片16と、上下片16の下端と接続し、壁から離れるように前後方向に所定長さ延長する爪片18とを備えた構成とされる(図5,6参照)。
【0026】
前述の実施形態と同様に本形態に係る補助金具10は、例えば、取付片12;前後片14;上下片16;爪片18が、それぞれ平板状とされ、一枚の平板を曲げ加工等により一体的に形成される。補助金具10は、壁面1aに取り付けられたときに、前後片14;上下片16;爪片18が妻梁6の上側のフランジ部62を収容可能な空間Sを形成するように構成される。
【0027】
図5に示す補助金具10は、上下片16及び爪片18を妻梁6の上側のフランジ部62に設けられた長孔60に挿入して使用される。即ち、本実施形態2の補助金具10は、フランジ部62に長孔60を有する形態の妻梁6に使用可能である。
【0028】
取付片12は、例えば、壁面1aに対して面接触となるように平面状とされた接触面12aと、接触面12aに対して垂直となるように板厚方向に貫通する貫通孔13とを備える。補助金具10は、貫通孔13に例えば、コーチねじ等のねじVを貫通させ、接触面12aを壁面1aに接触させながら打ち込むことで固定される。
【0029】
前後片14は、上下片16が壁から所定距離離間するように前後方向に延長する寸法に設定される。上下片16は、壁面1aに対向する対向面16aを有して構成される。対向面16aは、例えば、平面状とされ、補助金具10が壁面1aに取り付けられたときに、壁面1aと平行となるように形成されている。爪片18は、上下片16の下端から、壁面1aから離れる向きに延長する。
【0030】
図7に示すように、本実施形態に好適とされる妻梁6は、上側のフランジ部62に2つの長孔60を有する構成とされる。なお、長孔60の数量は2つに限定されない。長孔60は、補助金具10の少なくとも爪片18及び上下片16を挿入可能な幅w60を有して形成される。また、長孔60の妻梁6の延長方向に沿う長さL60は、爪片18の幅w18及び上下片16の幅w16よりも広く設定され、好ましくは、補助金具10が妻梁6の延長方向に沿って所定距離移動可能な寸法とすると良い。この移動可能な距離は、妻梁6の出入り方向の調整可能範囲として利用される。
【0031】
図8は、実施形態2に係る補助金具10の使用形態を示す図である。
例えば、階段室1に設置される廊下2や階段4の位置(例えば、ササラ桁5;5の位置)、階段室1を形成する壁面1aなどとの関係を図面に基づいて妻梁6の位置を決定する。そしてその位置における妻梁6の上側のフランジ部62の位置を想定し、フランジ部62が補助金具10の空間Sに含まれるように2つの補助金具10を取り付ける位置を設定する。なお、設定した位置は、マーカーなどでマーキングしておくと良い。また、2つの補助金具10が取り付けられる位置は、厳密に水平の位置にある必要はなく、上下方向にある程度のずれが許容される。次に、設定した位置にねじVを打ち込み、各補助金具10の取付片12の接触面12aを壁面1aに接触させてねじ止めして固定する。階段4を形成するササラ桁5の位置に基づいて、妻梁6の上下方向の取り付け位置を、図面や目視により見当をあて、妻梁6のフランジ部62が補助金具10の空間Sに含まれるように、(ササラ桁5に近い位置)の壁面1aに一方の補助金具10を取り付ける位置を設定し、一方の補助金具10の取付片12の接触面12aを壁面1aに接触させてねじVにより固定する(図8(a))。もう1つの補助金具10についても、同様に壁面1aに固定する。なお、この際、妻梁6が有する2つの長孔60に補助金具10が侵入するように取り付けることは言うまでもない。次に、壁面1aに固定された左右の補助金具10の2つの爪片18を妻梁6の2つの長孔60に侵入させ、妻梁6のウェブ部61の背面61aが壁面1aに接するように回転させて、爪片18の下側から妻梁6の上側のフランジ部62の先端側を挿入しつつ回転させ、ウェブ部61の背面61aを壁面1aに接触させるとともにフランジ部62の下面62aを爪片18の上面側18aに接触させる(図8(b))。以上の工程により、妻梁6は、2つの補助金具10;10により保持される。
次に、作業者は、ササラ桁5や壁面1aに対する上下方向の位置、及び出入り方向の位置を片側ずつ調整しつつ、壁面1aに妻梁6をねじ止めする(図8(c))。次に、補助金具10を固定していたねじVを緩め、壁面1aから2つの補助金具10を除去する。補助金具10の除去後、壁面1aに開口する2つのねじ跡hは、コーキング等により塞げば良い。
【0032】
[実施形態3]
図9乃至図11は、補助金具10の他の実施形態である。
実施形態2で説明したように、妻梁6が長孔60を有する場合、補助金具10は、図9に示すように構成しても良い。補助金具10は、壁面1aに接触して固定される取付片22と、取付片22の下端から、壁面1aに対して前後方向に延長する前後片24とを有する略L字状とされる。
【0033】
取付片22が補助金具10を壁面1aに取り付けるための貫通孔23を有し、前後片24が板厚方向に貫通する貫通孔25を有する構成とされる。貫通孔23は、前述の各実施形態と同様に補助金具10の壁面1aへの固定に使用される。
【0034】
図10に示すように、貫通孔25は、ボルト26が貫通可能に形成される。貫通孔25を貫通したボルト26
は、妻梁6の長孔60に貫通し、ナット27が取り付けられることで、補助金具10が妻梁6を保持するように構成される。即ち、実施形態3に係る補助金具10は、ボルト26,ナット27とともに使用される。
【0035】
本実施形態によれば、妻梁6の高さ方向の調整は、ボルト26に対するナット27の位置によって可能とされる。なお、妻梁6の高さ方向の調整範囲は、ボルト26の首下長さL26により自在に設定することができる。
また、妻梁6の出入り方向の調整は、実施形態2と同様に、妻梁6の有する長孔60の長さL60によって可能とされる。このように補助金具10を構成しても上記実施形態1,2と同様な効果を得ることができる。
【0036】
[実施形態4]
図12は、補助金具10の他の形態を示す図である。
実施形態3では、妻梁6の長孔60を利用して妻梁6の出入り方向の調整を可能としたが、例えば、前後片24に設けた円孔25を長孔25’とし、妻梁6の長孔60を円孔60’、好ましくは、ボルト26が噛み合うねじ孔を備えた構成とすると良い。
【0037】
このように補助金具10及び妻梁6を構成することにより、実施形態3に比べてナット27を省略することができる。また、妻梁6を固定するときの調整は、妻梁6の高さ方向については、妻梁6のフランジ部6Bへのボルト26の侵入長さによって可能とされる。なお、妻梁6の高さ方向の調整範囲は、ボルト26の首下長さL26により自在に設定することができる。
また、妻梁6の出入り方向の調整は、補助金具10の前後片24の長孔25’の長さL25によって可能とされる。
【0038】
以上説明したように、階段室1に折り返し階段を組み立てるときに、廊下2を構成する妻梁6を補助金具10によりその位置を調整可能に保持させておくことにより、作業者が妻梁6を支える必要がなくなるので、階段4と妻梁6との両方で階段室1における収まりの調整を調整することが可能とされる。また、従来のようにササラ桁5を単管パイプなどで支えるなど、不安定な状態で作業をしなくてすむので、施工時の安全性を向上させることができる。
また、例えば、妻梁6を図面に基づく位置に補助金具10;10で保持させておくことにより、階段室1における妻梁6の出入り方向における位置、上下方向の位置の調整が容易となり、施工性を向上させることができ、補助金具10の調整範囲で妻梁6の位置を調整することになるため、施工を標準化することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 階段室、
1a 壁面、
2 廊下、
4 階段、
5 ササラ桁、
6 妻梁、
10 補助金具。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14