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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035987
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】スイッチギヤ
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20240308BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01H33/662 R
H02B13/035 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140660
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏光
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 芳充
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】竪山 智博
【テーマコード(参考)】
5G017
5G026
【Fターム(参考)】
5G017AA23
5G017BB01
5G026RA02
5G026RB05
(57)【要約】
【課題】絶縁バリアの誘電率を低下させるとともに、絶縁バリアの機械的強度及び絶縁破壊電圧の維持が可能なスイッチギヤを得る。
【解決手段】実施形態に係るスイッチギヤは、例えば、電圧が印加される電極と、電極から離間して位置する接地と、第一層と、複数の第二層と、を有し、電極と接地との間に位置する絶縁バリアと、を備える。第二層は、第一層より機械的強度と絶縁破壊電圧と誘電率とが低い。第一層は、第二層に挟まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加される電極と、
前記電極から離間して位置する接地と、
第一層と、前記第一層より誘電率が低い複数の第二層と、を有し、前記電極と前記接地との間に位置する絶縁バリアと、
を備え、
前記第一層は、前記第二層より機械的強度と絶縁破壊電圧とが高く、前記第二層に挟まれている、
スイッチギヤ。
【請求項2】
前記絶縁バリアには、複数の空隙が設けられ、
前記第一層は、前記第二層よりも空隙が少ない、
請求項1に記載のスイッチギヤ。
【請求項3】
前記複数の空隙は、中空構造を有する粒子で満たされている、
請求項2に記載のスイッチギヤ。
【請求項4】
前記空隙は、積み重なった糸状の素材同士の隙間である、
請求項2に記載のスイッチギヤ。
【請求項5】
前記第一層は、固体の絶縁物であり、
前記第二層は、糸状の前記素材である、
請求項4に記載のスイッチギヤ。
【請求項6】
電圧が印加される電極と、
前記電極から離間して位置する接地と、
前記電極と前記接地との間に位置するとともに、中央から外側に向かうにつれて機械的強度と絶縁破壊電圧と誘電率とが低くなる絶縁バリアと、
を備える、
スイッチギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スイッチギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧が印加される電極と、当該電極と対向する接地電極と、高電圧が印加される電極と接地電極との間を遮る絶縁バリアと、を備えるスイッチギヤが知られている。絶縁バリアは、気体が充満しているスイッチギヤの筐体に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-49329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスイッチギヤにおいて、絶縁バリアは、筐体内部の気体よりも誘電率が高い。一方で、絶縁破壊電圧は、筐体内部の気体よりも絶縁バリアの方が高い。そのため、電圧を印加した場合、電圧は気体に多く分担されてしまい、気体部分で絶縁破壊が起こりやすくなる。
【0005】
そこで、気体部分での絶縁破壊の発生を抑制するために低誘電率の材料で絶縁バリアを作製することが検討されている。しかし、低誘電率の材料を用いて絶縁バリアを作製した場合、従来に比して絶縁バリアの機械的強度及び絶縁破壊電圧は低下してしまう。
【0006】
本発明が解決する課題の一例は、絶縁バリアの誘電率を低下させるとともに、絶縁バリアの機械的強度及び絶縁破壊電圧の維持が可能なスイッチギヤを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るスイッチギヤは、例えば、電圧が印加される電極と、電極から離間して位置する接地と、第一層と、複数の第二層と、を有し、電極と接地との間に位置する絶縁バリアと、を備える。第二層は、第一層より誘電率が低い。第一層は、第二層より機械的強度と絶縁破壊電圧とが高く、第二層に挟まれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のスイッチギヤの断面図である。
図2図2は、第1実施形態の絶縁バリアの一例を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の絶縁バリアの一部を拡大した断面図である。
図4図4は、第2実施形態の絶縁バリアの一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本実施形態のスイッチギヤ1を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0010】
また、以下に開示される複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0011】
また、以下の実施形態では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、スイッチギヤ1の前後方向に沿う方向である。Y方向は、スイッチギヤ1の幅方向に沿う方向であり、左右方向とも称され得る。Z方向は、スイッチギヤ1の高さ方向に沿う方向であり、上下方向とも称され得る。なお、本実施形態における前後左右上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、スイッチギヤ1の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本施形態のスイッチギヤ1の断面図である。図1に示すように、スイッチギヤ1は、真空バルブ2と、絶縁バリア3と、を備える。言い換えると、真空バルブ2と、絶縁バリア3と、は、スイッチギヤ1の筐体11に収容されている。
【0013】
筐体11は、例えば、金属製であり、直方体状の箱型に構成されている。さらに、筐体11内部は、気体Gが充満している。気体Gは、例えば、SFガスや乾燥空気等の絶縁性ガスである。
【0014】
筐体11は、側壁11aを有する。側壁11aは、筐体11を構成する一部であり、上下方向(Z方向)に沿って延びている。そして、側壁11aは、前後方向(X方向)又は左右方向(Y方向)において電圧が印加される真空バルブ2から離間して位置する。なお、側壁11aは、接地の一例である。
【0015】
真空バルブ2は、絶縁容器21と、二枚の封着板22と、固定電極23と、可動電極24と、ベローズ25と、を有する。なお、固定電極23及び可動電極24は、電極の一例である。
【0016】
絶縁容器21は、円筒状の容器であり、例えば、固定電極23と、可動電極24と、ベローズ25と、を収容する。なお、絶縁容器21の形状は、円筒状に限らない。絶縁容器21の形状は、例えば、多角形の筒状でも良い。
【0017】
絶縁容器21は、碍管211と、二枚の封着板22により構成される。碍管211は、例えば、セラミック等の絶縁性を有する材料で構成されるとともに、上下方向(Z方向)に沿って延びる円筒状に形成されている。さらに、上下方向(Z方向)における碍管211の端部には、上下方向(Z方向)に延びた封着金具211aが接合されている。
【0018】
封着板22は、絶縁容器21の一部であるとともに、真空バルブ2の上下方向(Z方向)における両端を塞ぐ円盤状の板である。二枚の封着板22は、碍管211の封着金具211aと接合している。これにより、絶縁容器21の内部は密閉される。さらに、二枚の封着板22には、二つの孔部221が設けられている。各孔部221は、各封着板22の中心から上下方向(Z方向)に開口している。
【0019】
固定電極23は、例えば、アルミニウムやクロム銅等の金属で形成された円板である。なお、固定電極23は、他の金属により形成されても良い。固定電極23は、固定通電軸231を有する。
【0020】
固定通電軸231は、孔部221を挿通するとともに、絶縁容器21の外部から固定電極23に向かって上下方向(Z方向)に延びた円柱である。下方向(-Z方向)における固定通電軸231の端部である下端部231aには、固定電極23が接合されている。
【0021】
固定通電軸231の外径は、孔部221の内径と略同一径である。固定通電軸231は、孔部221と接合されることにより、封着板22に固定されるとともに、支持されている。すなわち、固定通電軸231は、孔部221に挿通するとともに、固定されている。そして、固定通電軸231の下端部231aの反対側の端部は、例えば、筐体11に固定されている母線に接続している。言い換えると、固定電極23は、固定通電軸231を介して母線と接続している。これにより、固定電極23には電圧が印加される。
【0022】
可動電極24は、固定電極23と同様に、アルミニウムやクロム銅等の金属で形成された円板である。なお、可動電極24は、他の金属により形成されても良い。
【0023】
可動電極24は、固定電極23と対向している。なお、固定電極23及び可動電極24は、上下方向(Z方向)において、真空バルブ2の電流遮断時に固定電極23と可動電極24とが互いに接触しない位置に設けられる。
【0024】
可動電極24は、可動通電軸241を有する。可動通電軸241は、孔部221を挿通するとともに、絶縁容器21の外部から可動電極24に向かって上下方向(Z方向)に延びた円柱である。上方向(+Z方向)における可動通電軸241の端部である上端部241aには、可動電極24が接合されている。
【0025】
可動通電軸241の外径は、孔部221の内径よりも小さくなっている。そして、可動通電軸241の上端部241aの反対側の端部は、例えば、進退機構に接続されている。これにより、可動通電軸241は、上下方向(Z方向)に移動可能である。なお、可動通電軸241の外径は、可動通電軸241が上下方向(Z方向)に移動可能な程度に小さければ良い。
【0026】
ベローズ25は、絶縁容器21に収容された上下方向(Z方向)に伸縮可能な蛇腹状の伸縮管であり、例えば、金属等で形成される。ベローズ25の内部は、可動通電軸241が貫通している。
【0027】
ベローズ25の上方向(+Z方向)における端部である上端部25aは、可動通電軸241の側面に接合されている。ベローズ5の下方向(-Z方向)における端部である下端部25bは、孔部221を覆うとともに、封着板22に接合されている。すなわち、ベローズ25の外径は、孔部221の内径よりも大きい。
【0028】
これにより、ベローズ25は、可動通電軸241と孔部221との隙間から流入する大気を内部に留める。また、ベローズ25は、ベローズカバー251を有する。ベローズカバー251は、ベローズ25の上端部25aを覆うカバーである。
【0029】
本実施形態では、ベローズカバー251は、可動通電軸241と一体となっている。これにより、例えば、アークによって飛散する金属溶融物がベローズ25に付着することを抑制できる。なお、これに限らず、ベローズカバー251は、可動通電軸241とは別々に設けられても良い。
【0030】
絶縁バリア3は、例えば、合成樹脂等の絶縁物で形成され、上下方向(Z方向)に沿って延びている板状の部品である。なお、可動電極24側に位置する絶縁バリア3は、進退機構まで延びている。また、絶縁バリア3の形状は、板状に限らない。絶縁バリア3の形状は、例えば、湾曲していても良い。
【0031】
絶縁バリア3には、各封着板22を囲むように形成された埋め込み金属26が埋め込まれるとともに、封着板22と接触している。これにより、埋め込み金属26は、固定通電軸231及び可動通電軸241と同電位になる。
【0032】
絶縁バリア3は、前後方向(X方向)及び左右方向(Y方向)において、真空バルブ2と筐体11の側壁11aとの間に位置する。すなわち、絶縁バリア3は、真空バルブ2と筐体11の側壁11aとの間を遮っている。具体的には、絶縁バリア3は、固定電極23、固定通電軸231、可動電極24、可動通電軸241、封着金具211a、封着板22、埋め込み金属26と、筐体11の側壁11aとの間を遮っている。
【0033】
絶縁バリア3は、埋め込み金属26の突起26aに埋め込まれて固定される。この時、絶縁バリア3は、当該絶縁バリア3において面積が広い面が真空バルブ2及び筐体11の側壁11aを向くように固定される。
【0034】
なお、本実施形態では、絶縁バリア3は、真空バルブ2と筐体11の側壁11aとの間に位置しているが、これに限らない。絶縁バリア3は、例えば、電位差がある電極の間に位置していれば良い。すなわち、絶縁バリア3の配置位置は、電圧が印加される電極と接地との電極間だけに限定されない。
【0035】
図2は、第1実施形態の絶縁バリア3の一例を示す断面図である。図2に示すように、絶縁バリア3は、中央層31と、二つの最外層32と、を有する。なお、中央層31は、第一層の一例であり、最外層32は、第二層の一例である。
【0036】
中央層31は、絶縁バリア3において厚さ方向の中央に位置する。なお、本実施形態では、中央層31は、最外層32よりも機械的強度、絶縁破壊電圧及び誘電率が高い。
【0037】
最外層32は、中央層31と同様な形状に形成されるとともに、絶縁バリア3の厚さ方向において最も外側に位置する。すなわち、最外層32は、絶縁バリア3の厚さ方向において筐体11内部に充満している気体Gと接触する部分である。なお、本実施形態では、最外層32の誘電率は、気体Gの誘電率に近い。すなわち、最外層32は、中央層31よりも機械的強度、絶縁破壊電圧及び誘電率が低い。
【0038】
図3は、第1実施形態の絶縁バリア3の一部を拡大した断面図である。図3に示すように、絶縁バリア3の中央層31及び最外層32の内部には、複数の空隙33が均一に設けられている。
【0039】
空隙33は、例えば、作業者によって絶縁バリア3に中空構造を有する微小な充填剤34を混合することで形成される。すなわち、空隙33は中空構造を有する充填剤34で満たされている。なお、充填剤34は、粒子の一例である。
【0040】
充填剤34は、例えば、SiO等の強固で一定の厚さがある外殻341を有する。外殻341は、充填剤34を絶縁バリア3に混合する際、外殻341が破損して空隙33が潰れることを防ぐ。
【0041】
充填剤34の中空部分342は、空気や絶縁材料の揮発成分等で満たされている。そのため、絶縁バリア3に充填剤34を混合することで、絶縁バリア3全体の誘電率を低下させることが可能である。例えば、本実施形態では、空隙33の数は、中央層31の方が最外層32よりも少ない。これにより、最外層32の誘電率は、中央層31よりも低くなる。なお、本実施形態では、中央層31には空隙33が設けられているが、中央層31に空隙33を設けなくとも良い。
【0042】
すなわち、作業者は、絶縁バリア3に混合させる充填剤34の充填量を調整することで、絶縁バリア3の誘電率を調整することが可能である。言い換えると、作業者は、絶縁バリア3の内部に設けられる空隙33の数を調整することで、絶縁バリア3の誘電率を調整することが可能である。
【0043】
なお、本実施形態では、中央層31及び最外層32は同様の素材を使用し、充填剤34の充填量を変化させることで誘電率を調整する。しかし、これに限らず、中央層31と最外層32との素材には、それぞれ誘電率が異なる素材を使用して組み合わせても良い。
【0044】
なお、空隙33のサイズは、10マイクロメートル以下とする。これにより、充填剤34では、例えば、空隙33のサイズが大きいことによって中空部分342に電圧が分担されて放電しにくくなる。
【0045】
図2に示すように、本実施形態では、絶縁バリア3は、中央層31が二つの最外層32に挟まれて形成される。言い換えると、絶縁バリア3は、中央層31と最外層32とが積層して形成される。すなわち、絶縁バリア3の機械的強度、絶縁破壊電圧及び誘電率は、最外層32に向かうにつれて低くなる。
【0046】
積層している中央層31と最外層32とを接着する方法は、例えば、お互いに一部分を溶かして接着する、接着剤を用いて中央層31と最外層32との境界面を接着する等である。なお、本実施形態では、中央層31及び最外層32の厚さは、略同等である。しかし、これに限らず、例えば、中央層31及び最外層32の厚さは、お互いに異なっても良い。
【0047】
本実施形態では、絶縁バリア3は一つの中央層31と、二つの最外層32と、が積層して形成される。しかし、これに限らず、例えば、一つの中央層31及び二つの最外層32に加えて、複数の層がさらに積層しても良い。すなわち、絶縁バリア3は、一つの中央層31に少なくとも二つの最外層32が積層していれば良い。言い換えると、絶縁バリア3は、少なくとも三つの層が積層していれば良い。
【0048】
三つ以上の層を積層する場合、中央層31と最外層32との間の層の誘電率は、例えば、それぞれ隣り合う層の誘電率の中間値となるように空隙33の数を変化させることで調整される。言い換えると、中央層31と最外層32との間の層の誘電率は、それぞれ隣り合う層の誘電率との差が小さくなるように空隙33の数を変化させることで調整される。
【0049】
このような構成によれば、各層ごとの誘電率の差を小さくすることが可能である。従って、各層の境界面に剥離や異物等の欠陥があった場合、絶縁バリア3では、欠陥を起点とした絶縁破壊が発生しにくくなる。
【0050】
本実施形態のスイッチギヤ1が通電している場合、固定電極23及び可動電極24は互いに接触している。そのため、母線から流れる電流は、固定通電軸231から固定電極23と、可動電極24と、可動通電軸241と、に流れる。この時、筐体11の側壁11aは、接地の役割を果たす。
【0051】
本実施形態の絶縁バリア3は、真空バルブ2(固定電極23、固定通電軸231、可動電極24、可動通電軸241、封着金具211a、封着板22、埋め込み金属26)と側壁11aとの間に位置するとともに、中央層31が二つの最外層32に挟み込まれて形成されている。そのため、固定電極23及び可動電極24に電圧が印加された場合、電流が固定電極23及び固定通電軸231と可動電極24及び可動通電軸241から、筐体11内部の気体Gと、絶縁バリア3と、を通過して筐体11の側壁11aに向かって流れる。この時、電圧は、絶縁バリア3外部の気体Gと、絶縁バリア3の最外層32と、で分担される。
【0052】
一般的に、高電圧部分から接地までの間に複数の絶縁媒体が存在する場合、各媒体に分担される電圧は、誘電率が低い物体に多く分担される。そのため、本実施形態では、通常であれば電圧は、誘電率が低い気体Gに多く分担される。これは、気体Gの等電位線の本数が絶縁バリア3の等電位線の本数より多いためである。
【0053】
本実施形態の絶縁バリア3において気体Gと接触する部分である二つの最外層32は、気体Gの誘電率と近い値になるように誘電率が低くなっている。これにより、絶縁バリア3全体の誘電率は、従来の絶縁バリアに比して低くなる。しかし、誘電率が低い素材は、機械的強度及び絶縁破壊電圧が低い。
【0054】
一方で、本実施形態の絶縁バリア3の中央部分には、最外層32よりも機械的強度、絶縁破壊電圧及び誘電率が高い中央層31が存在する。これにより、絶縁バリア3の最外層32の機械的強度及び絶縁破壊電圧が低い場合でも、絶縁バリア3全体の機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持できる。
【0055】
さらに、本実施形態の中央層31及び最外層32の内部には、複数の空隙33が均一に設けられている。そして、空隙33は、中空構造を有する微小な充填剤34で満たされている。充填剤34の中空部分342は、筐体11内部に充満する気体Gの誘電率と近い値を有する空気や揮発成分等で満たされている。そのため、空隙33が設けられた絶縁バリア3の誘電率は、さらに気体Gの誘電率に近い値になる。
【0056】
以上のような構成によれば、スイッチギヤ1では、中央層31及び最外層32の内部に設けられる空隙33の数を各層ごとに調整することで、絶縁バリア3の誘電率を低下させるとともに、絶縁バリア3の機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持することができる。すわなち、気体Gの等電位線の本数が減り、絶縁バリア3の等電位線の本数が増える。従って、本実施形態のスイッチギヤ1は、従来に比して気体Gにかかる電圧の分担を減らすことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態のスイッチギヤ1は、固定電極23及び可動電極24と、側壁11aと、絶縁バリア3と、を備える。固定電極23及び可動電極24には、電圧が印加される。側壁11aは、固定電極23及び可動電極24から離間して位置する。絶縁バリア3は、中央層31と、複数の最外層32と、を有し、固定電極23及び可動電極24と側壁11aとの間に位置する。最外層32は、中央層31より誘電率が低い。中央層31は、最外層32より機械的強度と絶縁破壊電圧とが高く、最外層32に挟まれている。
【0058】
本実施形態の絶縁バリア3は、固定電極23及び可動電極24と側壁11aとの間に位置するとともに、中央層31が最外層32に挟まれて形成されている。そのため、固定電極23及び可動電極24に電圧が印加された場合、当該電圧は、絶縁バリア3外部の気体Gと、絶縁バリア3の最外層32と、で分担される。これにより、本実施形態の絶縁バリア3は、従来の絶縁バリアに比して気体Gにかかる電圧の分担を減らすことができる。
【0059】
一方で、最外層32は、従来の絶縁バリアよりも誘電率が低いために機械的強度及び絶縁破壊電圧も低い。しかし、本実施形態では、最外層32に挟まれている中央層31は、最外層32よりも機械的強度及び絶縁破壊電圧が高い。これにより、本実施形態のスイッチギヤ1は、絶縁バリア3の誘電率を低下させるとともに、機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持することができる。
【0060】
また、本実施形態では、絶縁バリア3には、複数の空隙33が設けられる。中央層31は、最外層32よりも空隙33の数が少ない。空隙33が多く含まれる材料の誘電率は、低くなる。そのため、最外層32の誘電率は、中央層31の誘電率より低くなる。これにより、絶縁バリア3は、機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持するとともに、より誘電率を低下させることが可能である。
【0061】
また、本実施形態では、複数の空隙33は、中空構造を有する充填剤34で満たされている。例えば、空隙33が気泡の場合、作業者は、絶縁バリア3に複数の空隙33を均一に設けることが困難である。一方で、空隙33が中空構造を有する充填剤34で満たされている場合、作業者は、絶縁バリア3に含まれる充填剤34を分散させることで、複数の空隙33を均一に設けることが可能になる。これにより、作業者は、絶縁バリア3に複数の空隙33を均一に設けることが容易になる。
【0062】
<第2実施形態>
第2実施形態のスイッチギヤ1は、下記に説明される構成を除き、前記第1実施形態のスイッチギヤ1と同様の構成を備えている。よって、第2実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の構成に基づく効果が得られる。
【0063】
図4は、第2実施形態の絶縁バリア3Aの一部を拡大した断面図である。図4に示すように、第2実施形態では、スイッチギヤ1は、前記第1実施形態の絶縁バリア3と異なる絶縁バリア3Aを備える。絶縁バリア3Aは、前記第1実施形態の中央層31及び最外層32と異なる構造の中央層31Aと、最外層32Aと、を有する。
【0064】
中央層31A及び最外層32Aは、合成樹脂等の糸状の素材35が積み重なって形成される。中央層31A及び最外層32Aを形成する方法は、例えば、エレクトロスピニング等である。エレクトロスピニングとは、熱可塑性樹脂の溶融体が貯留されたシリンジに高電圧を印加することで、当該シリンジの先端部から糸状の素材を射出する手法である。
【0065】
絶縁バリア3Aの中央層31A及び最外層32Aの内部には、前記第1実施形態と同様に複数の空隙33が均一に設けられている。ここで、空隙33とは、お互いに積み重なった糸状の素材35同士の隙間である。
【0066】
空隙33は、空気や絶縁材料の揮発成分等で満たされている。そのため、素材35の密度(積み重ねる量)を小さくすることで、絶縁バリア3A全体の誘電率を低下させることが可能である。例えば、本実施形態では、素材35の密度は、中央層31Aよりも最外層32Aの方が小さい。これにより、最外層32Aの誘電率は、中央層31Aよりも低くなる。
【0067】
すなわち、作業者は、絶縁バリア3Aを形成する素材35の密度を調整することで、絶縁バリア3Aの誘電率を調整することが可能である。
【0068】
なお、絶縁バリア3Aの誘電率を調整する方法は、これに限らない。例えば、絶縁バリア3Aの誘電率は、糸状の素材35が硬化する前にプレス機等でプレスして当該素材35の密度を変化させて調整しても良い。
【0069】
また、本実施形態では、中央層31A及び最外層32Aは、糸状の素材35が積み重なって形成されているが、中央層31A以外の層を糸状の素材35で形成し、中央層31Aは固体の絶縁物で形成しても良い。このような構成によれば、絶縁バリア3Aでは、中央層31Aの機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持するとともに、中央層31A以外の層の誘電率を低下させることが可能である。
【0070】
前記第1実施形態と同様に三つ以上の層を積層する場合、例えば、中央層31Aと最外層32Aとの間の層の誘電率は、それぞれ隣り合う層の誘電率の中間値となるように素材35の密度を変化させることで調整する。
【0071】
本実施形態の中央層31A及び最外層32Aは、糸状の素材35が積み重なって形成されている。中央層31A及び最外層32Aには、お互いに積み重なっている糸状の素材35の隙間である空隙33が設けられている。そして、空隙33は、筐体11内部に充満する気体Gの誘電率と近い値を有する空気や揮発成分等で満たされている。
【0072】
中央層31Aと最外層32Aとを比較した場合、素材35の密度は、最外層32Aの方が小さい。すなわち、空隙33の数は、中央層31Aよりも最外層32Aの方が多い。これにより、気体Gと接触する部分である最外層32Aの誘電率は、気体Gの誘電率に近い値になる。しかし、空隙33の数が多い素材は、機械的強度及び絶縁破壊電圧が低い。
【0073】
一方で、本実施形態の絶縁バリア3Aの中央部分には、最外層32Aよりも素材35の密度が高い中央層31Aが存在する。これにより、最外層32Aの空隙33の数が多くとも、絶縁バリア3A全体の機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持できる。
【0074】
以上のような構成によれば、スイッチギヤ1では、中央層31A及び最外層32Aを形成する糸状の素材35の密度を各層ごとに調整することで、絶縁バリア3Aの誘電率を低下させるとともに、絶縁バリア3Aの機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態の空隙33は、積み重なった糸状の素材35同士の隙間である。すなわち、糸状の素材35が積み重なって形成された絶縁バリア3Aには、素材35同士の間に空隙33ができる。これにより、絶縁バリア3Aでは、充填剤34を使用しなくとも空隙33を設けることが可能になる。従って、絶縁バリア3Aの特性は、本来の素材の特性に近づく。
【0076】
また、本実施形態では、中央層31Aは、固体の絶縁物であり、最外層32Aは、糸状の素材35であっても良い。絶縁バリア3A全体が糸状の素材35で形成されている場合、絶縁バリア3Aの機械的強度は、従来の絶縁バリアと比して低下する可能性がある。一方で、絶縁バリア3Aの中央層31Aが固体であり最外層32Aが糸状の素材35で形成されている場合、中央層31Aが固体であるため、スイッチギヤ1では絶縁バリア3Aの機械的強度の低下をさらに抑制することができる。
【0077】
(変形例)
前記第1及び第2実施形態のスイッチギヤ1では、絶縁バリア3、3Aが、複数の層(中央層31、31Aと、最外層32、32A)を有する場合を例として説明した。しかし、絶縁バリア3、3Aは、複数の層ではなく一つの層で形成されても良い。言い換えると、絶縁バリア3、3Aは、当該絶縁バリア3、3Aの中央から外側に向かうにつれて機械的強度と絶縁破壊電圧と誘電率とが低くなるように連続的に変化しても良い。
【0078】
前記第1実施形態の絶縁バリア3の場合、例えば、空隙33の数を連続的に変化させて、絶縁バリア3の中央部分は空隙33の数を少なくし、絶縁バリア3の外側部分は空隙33の数を多くする方法でも良い。
【0079】
前記第2実施形態の絶縁バリア3Aの場合、例えば、エレクトロスピニング等によって生成される糸状の素材35を途切れさせることなく連続で射出して、絶縁バリア3Aの中央部分は素材35の密度を大きくし、絶縁バリア3Aの外側部分は素材35の密度を小さくする方法でも良い。
【0080】
以上のような構成によれば、スイッチギヤ1では、絶縁バリア3の内部に設けられる空隙33の数又は、絶縁バリア3Aを構成する糸状の素材35の密度を中央部分と外側部分ごとに調整することで、絶縁バリア3、3Aを層状に分けずとも、絶縁バリア3、3Aの誘電率を低下させるとともに、絶縁バリア3、3Aの機械的強度及び絶縁破壊電圧を維持することができる。
【0081】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 スイッチギヤ
11a 側壁(接地)
23 固定電極(電極)
24 可動電極(電極)
3、3A 絶縁バリア
31、31A 中央層(第一層)
32、32A 最外層(第二層)
33 空隙
34 充填剤(粒子)
35 素材
図1
図2
図3
図4