(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003599
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】清掃用ウェットシート
(51)【国際特許分類】
A47L 13/19 20060101AFI20240105BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20240105BHJP
A01N 35/04 20060101ALI20240105BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A47L13/19
A01P7/02
A01N35/04
A01M7/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102839
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 侑平
【テーマコード(参考)】
2B121
3B074
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CC22
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074CC03
3B074EE01
4H011AC06
4H011BB05
4H011CC02
4H011DA07
4H011DC10
(57)【要約】
【課題】拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる清掃用ウェットシートを実現する。
【解決手段】pH8.0~9.0の弱アルカリ性に調整され、ダニ忌避剤であるキサントキシリンが溶け込んでいる薬液が含浸された清掃用ウェットシート100であれば、その清掃用ウェットシート100を用いて被清掃面に付着している皮脂や油汚れを好適に除去することができ、拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、少なくともキサントキシリンを含有していることを特徴とする清掃用ウェットシート。
【請求項2】
前記薬液は、水を溶媒としており、エタノールと界面活性剤の少なくとも一方を含有していることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項3】
前記薬液は、弱アルカリ性を呈するように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項4】
前記原紙シートには、第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスと、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスとがそれぞれ複数形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる清掃用ウェットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内塵性ダニの忌避成分が含浸されているドライタイプの清掃シートが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
この清掃シートで拭き掃除を行うと被清掃面にダニ忌避成分が擦り付けられるので、拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111563号公報
【特許文献2】特許第5004468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1,2の清掃シートはドライタイプであるので、その清掃シートで塵や埃を捕捉するようにして被清掃面から塵や埃を除去することはできるが、被清掃面に付着している皮脂や油汚れを拭き取ったり拭い去ったりすることには不向きなものであった。
そして、上記特許文献1,2の清掃シートに含浸されているダニ忌避成分は有機酸エステル類であって水への溶解性が悪いことから、この清掃シートをウェットタイプに展開するのは困難であった。
また、皮脂や油汚れを拭き取る用途の清掃シート(ウェットタイプ)に含浸される薬液は概ね弱アルカリ性であるので、上記特許文献1,2の清掃シートをウェットタイプに展開しても、有機酸エステル類が加水分解されるなどしてその薬効が十分に発揮されない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる清掃用ウェットシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、少なくともキサントキシリンを含有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用ウェットシートにおいて、
前記薬液は、水を溶媒としており、エタノールと界面活性剤の少なくとも一方を含有していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用ウェットシートにおいて、
前記薬液は、弱アルカリ性を呈するように調整されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートにおいて、
前記原紙シートには、第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスと、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスとがそれぞれ複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる清掃用ウェットシートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の清掃用ウェットシートが取り付けられた清掃具を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の清掃用ウェットシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃用ウェットシート100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されず、あくまで特許請求の範囲の記載を基に判断される。
なお、以下においては、
図1に示したように、前後、左右、上下、X方向、Y方向及びZ方向を定めて説明する。また、本明細書において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0013】
[1.構成の説明]
まず、清掃用ウェットシート100の構成について説明する。
【0014】
[(1)使用時の状態]
図1に示すように、清掃用ウェットシート100は、例えば、矩形の平板状のヘッド部201と、ヘッド部201の上面に取り付けられた柄部202と、を備えた清掃具200に交換可能に装着されて主に床面の清掃に用いられるシートであり、原紙シートに薬液が含浸されたシートである。
長尺な棒状の柄部202を備えている清掃具200のヘッド部201に清掃用ウェットシート100を装着して使用することで、フローリングや畳など居住空間における床面はもちろん、家具や家電などで覆われている床面(隙間にある床面)の拭き掃除を行い易くなる。
なお、ここで原紙シートとは、清掃用ウェットシート100の薬液が含浸される前の状態のことを言う。
【0015】
清掃用ウェットシート100は、
図2に示すように矩形状に形成されており、清掃具200のヘッド部201の底面を覆う清掃面を有している。
具体的には、
図1に示すように、清掃用ウェットシート100は、清掃具200のヘッド部201の底面をシートの清掃面で覆い、清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り線Sで折り曲げられてヘッド部201の上面に係止され、清掃具200に装着された状態で使用される。
なお、長手縁部201aとは、ヘッド部201の長手方向に沿った縁部を指す。すなわち、矩形のヘッド部201の4つの縁部のうちの、長い方の2つの縁部を指す。
【0016】
[(2)原紙シート]
原紙シートは、所定の繊維間をスパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術によって結合することで製造される不織布である。
【0017】
具体的には、原紙シートとしては、例えば、親水性繊維と疎水性繊維とを混合させた上で、これら繊維を結合させることで製造された不織布を用いる。
【0018】
[a 親水性繊維]
親水性繊維としては、綿、パルプ、麻等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維等を使用することができるが、保水性を維持する観点からパルプ、レーヨン、ポリプロピレンスパンボンド繊維(PPSB)等を使用することが好ましい。
また、原紙シートを構成する繊維中の親水性繊維の配合割合は、35質量%~75質量%であることが好ましい。
【0019】
[b 疎水性繊維]
疎水性繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテフレタレート(PBT)等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の複合繊維としては、相対的に融点の低い樹脂(低融点樹脂)を鞘部、相対的に融点の高い樹脂(高融点樹脂)を芯部とした芯鞘型や、低融点樹脂と高融点樹脂とが所定方向に並列したサイドバック型等が挙げられる。
また、原紙シートを構成する繊維中の疎水性繊維の配合割合は、25質量%~65質量%であることが好ましい。
【0020】
[c 目付け量]
原紙シートの目付け量は、汚れの保持能力と、シートの柔軟性とを両立する観点から、50~100g/m2であることが好ましい。なお、目付け量は、JIS P8124:2011に従って測定した坪量のことをいう。
【0021】
[(3)薬液]
上記のような原紙シートに含浸される薬液としては、水素イオン指数(pH)が8.0~9.0の弱アルカリ性であり、少なくともキサントキシリンを含有しているものを使用する。
キサントキシリンは、花椒、山椒、南京櫨、高砂菊(艾納香)、柘榴などの果皮に含まれている植物由来成分であり、ダニ忌避剤として用いることができる。
薬液中、キサントキシリンの含有量は0.01質量%以上0.02質量%以下であることが好ましい。この範囲内であれば、製造コストを適正な範囲に抑えつつ、良好なダニ忌避効果を発揮する。ここでのダニ忌避効果は、屋内塵性ダニに対する忌避効果である。
【0022】
また、この薬液は、水を溶媒としており、エタノールと界面活性剤の少なくとも一方を含有している。より好ましくは、エタノールと界面活性剤を両方とも含有している。
水を溶媒としている薬液がエタノールと界面活性剤の少なくとも一方を含有していることで、キサントキシリンを薬液中に溶かし込み易くなる。
【0023】
また、薬液は、原紙シートの乾燥時の質量に対して、150質量%~450質量%含浸させるが、好ましくは180質量%~350質量%である。
薬液は、乾燥させた原紙シートに対して含浸され、清掃用ウェットシート100の使用時にシートの清掃面から放出されることとなる。
【0024】
[(4)エンボス]
図1及び
図2に示すように、清掃用ウェットシート100には、シートに凹凸を生じさせ、当該凹凸によって汚れを掻き取ることで、被清掃面の汚れに対する拭き取り性能を向上させるため、シートがZ方向に圧縮された部分であるエンボス20が配置されている。
エンボス20は、例えば
図2に示すように、平面視において、一方向に短尺で幅が狭い細長の楕円形状であり、長軸方向略中央部にくびれ部を有する、いわゆるひょうたん形に形成されている。エンボス20の形状としてはこれに限られず、例えば、多角形等種々の形状や、各形状を組み合わせた形状としてもよいが、汚れの掻き取り性向上の観点からは、このようなひょうたん形とするのが好ましい。
【0025】
かかるエンボス20は、例えば、温度80℃~200℃、エンボス圧0.2MPa~1.0MPaの条件による熱エンボスにて形成することができる。熱エンボスによりエンボス20を形成する場合、凸エンボスロールとしては、少なくとも外周面が炭素鋼、ステンレス鋼あるいはポリプロピレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等の硬化樹脂等からなるものを用いることができるが、中でも耐久性や耐熱性の観点から、ステンレス鋼からなるものを用いるのが好ましい。
また、熱エンボスによりエンボス加工を行う場合は、清掃用ウェットシート100に薬液を含浸させる工程の前に行うのが、凹凸形状の付与し易さの観点から好ましい。
【0026】
[a 凸エンボス、凹エンボス]
エンボス20としては、Z方向上側(清掃用ウェットシート100の第1面側)に凸型となる凸エンボス21と、下側(清掃用ウェットシート100の第2面側)に凸型となる(すなわち、Z方向上側に凹型となる)凹エンボス22と、が形成されている。なお、各図においては、凸エンボス21を実線、凹エンボス22を破線で示している。
【0027】
凸エンボス21は、長軸方向において5mm~10mm、好ましくは6mm~8mmであり、長軸方向と直交する短軸方向において2mm~5mm、好ましくは3mm~4mmであり、Z方向において(中間部(後述)からの高さ)0.5mm~2mm、好ましくは0.7mm~1.5mmに形成される。凹エンボス22は、断面視において、凸エンボス21と上下逆さまに、かつ、略同一の形状に形成され、Z方向下側に向かって凸となる形状に形成されている。
【0028】
[b 中間部]
清掃用ウェットシート100に形成された各エンボス20の間には、中間部が形成されている。中間部は、エンボス20が形成されていない部分であるため、Z方向において、凸エンボス21よりも低く、凹エンボス22よりも高い位置となる。
【0029】
[c エンボスパターン]
本実施形態の清掃用ウェットシート100においては、例えば
図2に示すように、第1の辺aから直交する第1方向(
図2においてはX方向)と長軸方向のなす角度が、5°~45°、好ましくは15°~35°となるような凸エンボス21と凹エンボス22との組み合わせからなる、ひし形状の第1のエンボスブロック30が、第1の辺aから第2の辺bまで連続してエンボスブロック列31をなし、当該エンボスブロック列31が、第3の辺cから第4の辺dまで連続して複数配置され、隣り合う第1のエンボスブロック列31と第2のエンボスブロック列31において、当該第1のエンボスブロック列31内の第1のエンボスブロック30が、当該第2のエンボスブロック31列内の隣り合う第2のエンボスブロック30と、第1方向と直交する第2方向(
図2においてはY方向)に重なりを有し、第3の辺c上の任意の点から第4の辺dに垂直に伸ばした直線上に、少なくとも一つの凸エンボス21及び凹エンボス22が存在するように配置される。
【0030】
[d 非エンボス部]
図2に示すように、隣り合うエンボスブロック30同士の間には、清掃用ウェットシート100のエンボス20が形成された部分と比較してZ方向に圧縮されておらず、起毛を有している部分である非エンボス部40が設けられている。
【0031】
非エンボス部40は、エンボス20を形成する凸エンボスロールを、非エンボス部40の形状を除くようにデザインすることで、あるいは、起毛が残存する程度に、エンボス20の圧縮がなされている部分と比較して軽度に圧縮することで形成することができる。
このような非エンボス部40が、清掃用ウェットシート100の面積に対して25%~50%設けられていることで、拭き筋の発生を低減し、拭き取り性に優れた清掃用ウェットシート100とすることができる。なお、非エンボス部40は、清掃用ウェットシート100の面積に対して25%設けることが最も好ましい。
【0032】
なお、清掃具200に清掃用ウェットシート100を取り付けて拭き掃除を行う場合は、X方向又はY方向に略垂直に動かされるのが通常であるが、
図2に示すように、非エンボス部40が一直線状となるように形成されている場合、清掃用ウェットシート100を動かす角度によっては拭き筋が発生しやすくなるおそれがある。そこで、非エンボス部40が一直線状とならないようにエンボスブロック30を配置するのが、より望ましい。
【0033】
[2.効果の説明]
本実施形態の清掃用ウェットシート100には、第1の面に凸となるエンボスである凸エンボス21と、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボス22とがそれぞれ複数形成されてなる、エンボスブロック30(エンボスブロック列31)が設けられている。
また、本実施形態の清掃用ウェットシート100には、水素イオン指数(pH)が8.0~9.0である弱アルカリ性の薬液が含浸されている。
このような清掃用ウェットシート100であれば、エンボス20(凸エンボス21、凹エンボス22)の凹凸によって被清掃面の汚れを掻き取るようにして、被清掃面に付着している皮脂や油汚れを除去することができ、好適に汚れを拭き取る拭き掃除を行うことを可能にする。
この清掃用ウェットシート100に含浸されている薬液が弱アルカリ性であることにより、床面等の被清掃面を傷める可能性を抑えつつ、被清掃面に付着している皮脂や油汚れを好適に除去するのを可能にしている。
【0034】
特に、本実施形態の清掃用ウェットシート100には、ダニ忌避剤であるキサントキシリンを含有している薬液が含浸されているので、清掃用ウェットシート100で拭いた被清掃面にその薬液を塗布することができ、その被清掃面にキサントキシリンによるダニ忌避効果を付与することができる。
【0035】
このように、本実施形態の清掃用ウェットシート100であれば、拭き掃除を行った後の被清掃面にダニ忌避効果を付与することができるので、床面に付着した皮脂汚れなどを拭き取りつつ、その被清掃面にダニ忌避効果を付与することができる。
もちろん、清掃用ウェットシート100のエンボス20(凸エンボス21、凹エンボス22)の凹凸によって塵や埃を捕捉するようにして被清掃面から塵や埃を好適に除去することもできる。
【0036】
また、本実施形態の清掃用ウェットシート100によれば、上記のようにエンボス20が配置されていることで、シートの凹凸によって汚れに対する拭き取り性能を向上させることができるとともに、以下の効果を得ることができる。
【0037】
すなわち、通常、ヘッド部201を有する清掃具200に清掃用ウェットシート100を取り付けて拭き掃除を行う際には、第1方向(
図2においてはX方向)又は第2方向(
図2においてはY方向)に動かされるが、凸エンボスがこのような第1方向又は第2方向に沿って揃うように直列に配置されていると、凸エンボスによる拭き取りが行われなかった箇所(いわゆる「拭き筋」)が被清掃面に発生してしまうことがあり、拭き筋を視認した使用者は、薬液がまだシート内に残存しているにも関わらず、薬液が尽きて乾燥してきたと判断してシートを破棄してしまい、不要に多くのシートを使用してしまうことがある。
【0038】
これに対し、上記のようなエンボスパターンを有し、第3の辺c上の任意の点から第4の辺dに垂直に伸ばした直線上に、凸エンボス21が少なくとも一つ存在するように配置されている清掃用ウェットシート100が取り付けられている場合、少なくとも第2方向(
図2においてはY方向)に拭き掃除を行った際に、凸エンボス21同士が重なりしろを有するようになるため、拭き筋の発生を低減することができる。
【0039】
また、清掃用ウェットシート100の全面にエンボス20を設けずに、各エンボスブロック30の間に、非エンボス部40を、清掃用ウェットシート100の面積に対して25%~50%設けることで、清掃用ウェットシート100で拭き掃除を行う際に、非エンボス部40よりも突出した凸エンボス21がより大きい圧力を受けるため、薬液の放出性が向上して拭き筋の発生をより低減することができる。
また、凸エンボス21がより大きい圧力を受けることで、凸エンボス21の掻き取り性が向上し、かつ、非エンボス部40にゴミが溜まりやすくなるため、ごみの捕集性を高めることができる。また、凸エンボス21の掻き取り性や清掃用ウェットシート100のごみの捕集性が高まっても、凸エンボス21によって非エンボス部40が被清掃面に接地しにくくなる分、拭き抵抗の増加を抑制することができる。
【0040】
また、エンボスブロック30が、第1方向と長軸方向のなす角度が5°~45°、好ましくは15°~35°となるようなエンボス20からなる、ひし形状のものであることで、第1の辺aから第2の辺bまで連続して配置してなるエンボスブロック列31を、第3の辺cから第4の辺dまで連続して複数配置した際に、エンボスブロック30が必然的に清掃用ウェットシート100の第1方向に対してずれるように配置される。また、使用者が拭き掃除を行う際に、清掃用ウェットシート100を動かす角度に余裕が生まれるようになる。
【0041】
また、エンボス20が、楕円形状であり、長軸方向の略中央部にくびれ部を有する形状であることで、汚れの掻き取り性能を高めることができる。
【実施例0042】
次に、本発明の実施例および比較例について評価した結果を説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<薬液サンプル作成>
防ダニ掃除用の薬液として、表1に示す成分とその配合(質量%)によって、実施例1、比較例1、比較例2の薬液を調整した。
実施例1の薬液には濁りは無く、ほぼ透明な液体であった。
比較例1,2の薬液は、白濁した液体であった。
なお、各薬液は皮脂や油汚れを拭き取る清掃用の薬液として、弱アルカリ性に調整している。
【0044】
【0045】
また、原紙シートとして、繊維の配合がPET/パルプ/レーヨン/PP/PP・PE=15/38/30/12/5であって、目付量が100g/m
2の不織布に、
図2に示したエンボス加工を施したものを用いた。
この原紙シートに、各薬液を300%含浸させた清掃用ウェットシートのサンプルを3種(実施例1のサンプル、比較例1のサンプル、比較例2のサンプル)作成した。
【0046】
<防ダニ試験方法;試験片作成>
フローリングによく使用される床材の表面を清掃用ウェットシート100で拭き掃除する際の再現試験を行った。ここでは27mm×27mmの床材を用いて再現試験を行った。
具体的には、27mm×27mmの床材の左右に、床材と同じ厚さの添え木を設置し、右側の添え木に清掃用ウェットシートのサンプルを置き、そのサンプルの上に150gの錘を載せる。
次いで、錘を載せた状態の清掃用ウェットシートのサンプルを左側の添え木に約2秒かけて移動させた後、左側の添え木から右側の添え木に約2秒かけて移動させる。
このように左右の添え木の間の床材上を清掃用ウェットシートのサンプルを1往復させる模擬拭き掃除を行った。
ここでは、300mlビーカーの底に清掃用ウェットシートのサンプルを輪ゴムで括り付け、そのビーカーに水を10ml程度入れて150gとしたものを1往復させた。なお、錘の150gは、フロアワイパーとしての清掃具200を用いて拭き掃除する際の再現として設定した。
この模擬拭き掃除を行った床材を本試験に用いる。
こうして、各薬液が含浸された清掃用ウェットシートのサンプル(実施例1のサンプル、比較例1のサンプル、比較例2のサンプル)で拭き掃除された床材(試験片)を、それぞれ5枚用意した。
実施例1のサンプルで拭き掃除された床材を試験片A、比較例1のサンプルで拭き掃除された床材を試験片B、比較例2のサンプルで拭き掃除された床材を試験片Cとした。
【0047】
<防ダニ試験方法;本試験>
上記した模擬拭き掃除をした試験片を用いて、JIS L 1920に準拠した屋内塵性ダニに対する忌避試験を実施し、各試験片の忌避効果を確認した。なお、ブランク(未処理床材)を用いた参照試験も実施した。
ここでは、各試験片(A,B,C,ブランク)を5枚用意し、5回の忌避試験を行った。
その試験方法(手順)について説明する(
図3参照)。
1.模擬拭き掃除後1時間以内の試験片1を直径4cmのガラスシャーレ(小シャーレ)2に敷き、試験片1の中央部分に誘引餌3を50mg載せる。誘引餌3はマウス用飼料とビール酵母を等量混合して粉砕したものを使った。
2.試験片1を敷いたガラスシャーレ(小シャーレ)2を直径9cmのガラスシャーレ(大シャーレ)4上に設置し、その大シャーレ4内であって小シャーレ2の周囲に約10000匹のダニを含むダニ培地5を均し入れる。
3.小シャーレ2及びダニ培地5が入った大シャーレ4を、粘着マット6が敷かれている密閉容器7内にセットする。また、飽和食塩水を入れたガラス容器8を湿度調節のために密閉容器7内にセットする。
4.密閉容器8に蓋9をして、25℃の恒温器で24時間静置する。
5.24時間後に小シャーレ2内(試験片1上)に侵入したダニの数を計測する。そして、下記の式(1)により、ダニの忌避率を算出した。
忌避率(%)=((b-a)/b)×100 ・・・(1)
a;試験片を入れた小シャーレ内のダニ数
b;ブランク(未処理床材)を入れた小シャーレ内のダニ数
【0048】
<試験結果>
以下に、各試験片のダニ忌避率(評価結果)を示す。
この忌避率は5回の忌避試験で計測したダニの数の合計数をもとに算出した。
つまり、式(1)のaは、試験片(A,B,C)毎の5回の忌避試験で計測されたダニの数の合計数であり、式(1)のbは、未処理床材(ブランク)の5回の忌避試験で計測されたダニの数の合計数である。
・試験片A(実施例1):忌避率54.8%
・試験片B(比較例1):忌避率31.1%
・試験片C(比較例2):忌避率45.0%
この結果から、ダニ忌避剤として有機酸エステル(安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、セバシン酸ベンジル)を含有している比較例1,2の薬液が含浸されたシートサンプルで模擬拭き掃除された試験片B,Cよりも、ダニ忌避剤としてキサントキシリンを含有している実施例1の薬液が含浸されたシートサンプルで模擬拭き掃除された試験片Aの防ダニ効果(忌避効果)が高いことがわかる。
【0049】
有機酸エステルは水に難溶であるため、ダニ忌避剤としての有機酸エステルをウェットタイプの清掃用シートに展開することが困難であることを、本発明者らは予想しており、上記したように比較例1,2の薬液が白濁していたことからも、有機酸エステルが薬液中に完全に溶け込んでいないことがわかる。
有機酸エステルを含有している薬液が白濁した状態であって、有機酸エステルが薬液中に溶け込んでいないと、その薬液の性状や品質が安定しておらず、模擬拭き掃除された試験片B,Cにダニ忌避剤である有機酸エステルが十分に塗布されなかったことなどに起因し、ダニの忌避率が低くなったことが考えられる。
また、弱アルカリ性の薬液中に混ぜ入れられた有機酸エステルが加水分解してしまい、有機酸エステルの含有量が減ってその薬液の薬効が低下しているために、ダニの忌避率が低くなったことが考えられる。
【0050】
これに対し、実施例1の薬液には濁りがなく、ほぼ透明であったことからも、ダニ忌避剤としてのキサントキシリンが薬液に溶け込んでいることがわかる。
実施例1の薬液にはキサントキシリンが溶け込んでおり、その薬液の性状や品質が安定しているので、比較例1,2の薬液で処理された試験片B,Cよりも、実施例1の薬液で処理された試験片Aのダニ忌避効果が高くなったと考えられる。
【0051】
なお、キサントキシリンも水に難溶であるが、皮脂や油汚れを拭き取る清掃用の薬液にキサントキシリンが溶け込むことを、本発明者らは薬液調整の実験中に確認した。
そして本発明者らは、キサントキシリンには、清掃用の薬液に含まれているエタノールや界面活性剤との相溶性があるため、エタノールや界面活性剤を併用することでキサントキシリンを水系の薬液に溶け込ませることができることを見出し、本発明をするに至った。
つまり、皮脂や油汚れを拭き取る用途の清掃用シート100に含浸される弱アルカリ性の薬液によって分解されることのないキサントキシリン(ダニ忌避剤)を、その薬液に溶け込ませることを可能にしたことで、被清掃面に付着している汚れを好適に除去する拭き掃除と、その拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる清掃用シート100を実現した。
【0052】
以上のように、pH8.0~9.0の弱アルカリ性に調整され、キサントキシリンが溶け込んでいる薬液が含浸された清掃用ウェットシート100であれば、その清掃用ウェットシート100を用いて被清掃面に付着している皮脂や油汚れを好適に除去することができ、拭き掃除を行った後の被清掃面に屋内塵性ダニに対する忌避効果を付与することができる。
【0053】
なお、以上の実施の形態においては、清掃用ウェットシート100を清掃具200に取り付けて掃除する態様を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、清掃具200を使わずに、手に持った清掃用ウェットシート100で拭き掃除するようにしてもよい。
【0054】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。