(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000036
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】レゾルバステータ構造
(51)【国際特許分類】
H02K 24/00 20060101AFI20231225BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098553
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】岩山 達大
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA07
5H605CC06
5H605EC05
(57)【要約】
【課題】輪状ステータの外径が変更された場合でも、内径が同一であれば、現在使用中のインシュレータを用いることができるようにする手段を提供する。
【解決手段】所定角度間隔毎に突出磁極を有する輪状ステータと、輪状ステータに設けられ、インシュレータ側端子を保持するインシュレータ20と、輪状ステータに設けられ、コネクタ側端子41又はリード線41Dを有する端子保持部40と、を備え、インシュレータ側端子とコネクタ側端子41又はリード線41Dとは、互いに二層配置され、インシュレータ側端子とコネクタ側端子41又はリード線41Dとは、一体化前の状態では互いに摺動自在又は着脱自在であることを特徴とするレゾルバステータ構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度間隔毎に突出磁極(10A)を有する輪状ステータ(10)と、前記輪状ステータ(10)に設けられ、インシュレータ側端子(20A)を保持するインシュレータ(20)と、前記輪状ステータ(10)に設けられ、コネクタ側端子(41)又はリード線(41D)を有する端子保持部(40)と、を備え、
前記インシュレータ側端子(20A)と前記コネクタ側端子(41)又は前記リード線(41D)とは、互いに二層配置され、前記インシュレータ側端子(20A)と前記コネクタ側端子(41)又は前記リード線(41D)とは、一体化前の状態では互いに摺動自在又は着脱自在であることを特徴とするレゾルバステータ構造。
【請求項2】
前記一体化前の状態では、種々の大きさからなる少なくとも、前記輪状ステータ(10)、前記端子保持部(40)、前記コネクタ側端子(41)又は前記リード線(41D)及び前記インシュレータ側端子(20A)を取り換えて装着できることを特徴とする請求項1記載のレゾルバステータ構造。
【請求項3】
前記一体化は、溶接又は半田付けからなることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバステータ構造。
【請求項4】
前記一体化前の互いに二層配置の前記インシュレータ側端子(20A)と前記コネクタ側端子(41)又は前記リード線(41D)とは、前記インシュレータ(20)に設けられた孔(80)に対応している構造であることを特徴とする請求項1記載のレゾルバステータ構造。
【請求項5】
前記インシュレータ(20)は、キャップとして前記輪状ステータ(10)の一面(10G)に載置できる構造であることを特徴とする請求項1記載のレゾルバステータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバステータ構造に関し、特に、輪状ステータの内径が同じで、輪状ステータの外径のみを変更する場合における端子保持部のコネクタ側端子又はリード線と、インシュレータのインシュレータ側端子と、を二層状の摺動又は着脱自在とし、輪状ステータの外径違いに対応して端子保持部の半径方向の長さを可変とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバステータ構造を示す特許文献としては、実に多くの構造が開発され、かつ、公開されているが、例えば、代表的な構造図として
図10に示す第1従来構造を挙げることができ、この
図10には、一対のキャップ型のインシュレータ(一対の絶縁カバー又はコイルカバーに相当)を用い、一対のインシュレータ間に巻線を巻回した輪状ステータ10がサンドイッチ状に設けられた構造が開示されている。
すなわち、前述の特許文献1の構造は、輪状ステータ10と、一対からなるインシュレータ20と、複数のコイル30と、端子保持部40と、一対の第1コイルカバー60及び第2コイルカバー60Aとを備える。輪状ステータ10は、環状の本体部11と、本体部11の径方向Aに延在し本体部11の周方向Bに沿って配列される複数のティース12とを有する。前記インシュレータ20は、複数のティース12を覆う。一対の第1コイルカバー60及び第2コイルカバー60A、輪状ステータ10を挟持する。複数のコイル30は、インシュレータ20を介して複数のティース12のそれぞれに巻回される。端子保持部40は、コイル30を構成する巻線の末端が絡げられる絡げ部とリード線が接続される接続部とを有する端子が複数設けられる。第1コイルカバー60は、複数の端子の接続部と組み合わせられてコネクタハウジングを構成するハウジング部65を有し、コイル30を輪状ステータ10の軸方向Cの一方側から覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のステータ構造は、
図10の分解
図A、B、Cのように構成されていたため、次のような課題が存在していた。例えば、
図10で示す前述のステータにおいては、輪状ステータとして第1、第2輪状絶縁カバーで輪状ステータを挟み、一方の輪状絶縁カバーに一体成形された端子ピン保持部を有しているため、輪状ステータの外径が変更される場合には、端子ピン保持部の径方向の長さが一種類しかなければ、現在使用中の端子ピン保持部をより大径の輪状ステータに適用することは不可能であった。
すなわち、
図10で明らかなように、(B)図で示される輪状ステータ10の第1面10Bには、各突起10Aを図で見て裏面側から覆うための第1コイルカバー60が設けられている。
図10の(C)で示す前記第1コイルカバー60の外縁には半径方向rに沿って外方に延出するハウジング部65が設けられている。
【0005】
図10(B)で示される輪状ステータ10は、既にコイル巻きが終了した状態の半完成品としてのものであり、前記輪状ステータ10に設けられた前記端子保持部40に対し、次の工程として、第2コイルカバー60Aが前記端子保持部40上に設けられる。
【0006】
従って、前記端子保持部40は、前記輪状ステータ10の片面に載置され、かつ、ハウジング部65と一体状に設けられ、さらに、前記端子保持部40の外縁40Eが輪状ステータ10の外周縁10Fに係合して一体状に形成されていた。
そのため、外径が普通のサイズの輪状ステータ10を用いてレゾルバを製作している時に、これよりも外径が大型のサイズの輪状ステータ10を用いることになった場合、大径の輪状ステータに従来のサイズの端子保持部を取り付け換えることは困難であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子とは、互いに二層配置され、前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子とは、一体化前の状態で互いに摺動自在又は着脱自在とし、小径の輪状ステータから大径の輪状ステータに切替える場合には、この状態では、コネクタを本体部であるインシュレータから引き離し、互いに二層状であるコネクタ側端子とインシュレータ側端子を摺動又は着脱自在によってその全長Yを所望の長さとし、各端子を溶接又は半田付けによって、前記コネクタ側端子とインシュレータ側端子を所望の長さで固定できる端子保持部を有するコネクタ付きインシュレータを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるレゾルバステータ構造は、所定角度間隔毎に突出磁極を有する輪状ステータと、前記輪状ステータに設けられ、インシュレータ側端子を保持するインシュレータと、前記輪状ステータに設けられ、コネクタ側端子又はリード線を有する端子保持部と、を備え、前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子又は前記リード線とは、互いに二層配置され、前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子又は前記リード線とは、一体化前の状態では互いに摺動自在又は着脱自在である構造であり、また、前記一体化前の状態では、種々の大きさからなる少なくとも、前記輪状ステータ、前記端子保持部、前記コネクタ側端子又は前記リード線及び前記インシュレータ側端子を取り換えて装着できる構造であり、また、前記一体化は、溶接又は半田付けからなる構造であり、また、前記一体化前の互いに二層配置の前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子又は前記リード線とは、前記インシュレータに設けられた孔に対応している構造であり、また、前記インシュレータは、キャップとして前記輪状ステータの一面に載置できる構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレゾルバステータ構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、本発明によるレゾルバステータ構造は、所定角度間隔毎に突出磁極を有する輪状ステータと、前記輪状ステータに設けられ、インシュレータ側端子を保持するインシュレータと、前記輪状ステータに設けられ、コネクタ側端子又はリード線を有する端子保持部と、を備え、前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子又は前記リード線とは、互いに二層配置され、前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子又は前記リード線とは、一体化前の状態では互いに摺動自在又は着脱自在であることにより、コネクタ側端子又は前記リード線とインシュレータ側端子とは、二層状に摺動又は着脱自在であるため、各端子を摺動させて各端子を重ねてずらせた時の全長を調整することができ、径の異なる輪状ステータに合わせることができ、径に合わせたインシュレータを可変的に取り付けることができ、生産性の向上を得ることができる。
また、前記一体化前の状態では、種々の大きさからなる少なくとも、前記輪状ステータ、前記端子保持部、前記コネクタ側端子又は前記リード線及び前記インシュレータ側端子を取り換えて装着できることにより、組立てが容易となる。
また、前記一体化は、溶接又は半田付けからなることにより、任意の長さで強固に固定することができる。
また、前記一体化前の互いに二層配置の前記インシュレータ側端子と前記コネクタ側端子又は前記リード線とは、前記インシュレータに設けられた孔に対応している構造であることにより、この孔を用いて溶接等が容易にできる。
また、前記インシュレータは、キャップとして前記輪状ステータの一面に載置できる構造であることにより、これまでにない、端子保持部の絶対長さを変えることができ、この絶対長さの可変化を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態によるレゾルバステータ構造の左側面図を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施の形態におけるレゾルバステータ構造の輪状ステータの外径が80mmの場合を示す平面図である。
【
図7】
図6の変形として、輪状ステータの外径が106mmの場合を示す平面図である。
【
図10】(A)は第2コイルカバーの斜視図、(B)は輪状ステータを示す斜視図、(C)は第1コイルカバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるレゾルバステータ構造においては、コネクタとインシュレータとが分離されているため、インシュレータにインシュレータ側端子を設け、このインシュレータ側端子の半径に沿う外側にコネクタを設け、前記コネクタに設けられたコネクタ側端子と前記インシュレータ側端子は、
図5に示されるように、前記各溶接又は半田付けで互いに所定の位置で一体化させる一体接続できる構造である。
従って、前記一体接続が行われる前であれば、輪状ステータ10の外径が異なっていても、変更された外径に対して、
図6及び
図7と同様の直径の異なる輪状ステータ10に対する前記インシュレータ20に対してコネクタ70の長さ位置を調節することができる。
【実施例0012】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバステータ構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明すると共に、断面図は半断面とする。
図1において符号100で示されるものは、インシュレータ形状部(周知のハーフシェルのこと)であり、このインシュレータ形状部100は、従来から用いられていた一対のハーフシェル100を作り、一方のハーフシェル200のことをインシュレータ20として述べている。
輪状ステータ10は、
図6に示すように、環状の本体部と、本体部の径方向に延在し、本体部の周方向に沿って所定角度間隔毎に配列された突出磁極10Aとを有している。輪状ステータ10には、
図1に示すように、インシュレータ20と端子保持部40とが備えられている。
【0013】
図1の前記インシュレータ20(すなわち、輪状絶縁キャップ又はハーフシェルという)は、現在、広く行われている一体成形による輪状ステータ10のインシュレータ化が最適であるが、この輪状ステータ10を内包させたインサート成形は容易かつ正確であることは申し分なしである。
すなわち、
図1及び
図2においては、輪状ステータ10を一体成形するのではなく、図示しないが、金型内の中子(図示せず)によって位置決めして、射出成形により前記インシュレータ20がインシュレータ側端子20A及びコネクタ側端子41と共にインサート成形されるが、前述したように、最初に決められた外径の輪状ステータ10のみに適用される。
また、輪状ステータの内径が同じで、輪状ステータの外径のみを変更する場合、すなわち、他の外径の輪状ステータ10に一体成形を行う場合には、金型及びピン等の変更となり、多大の設備投資を必要としていた。
【0014】
そこで、本実施の形態においては、
図1から
図5で示されるように、コネクタ70とインシュレータ20とを別々の分離自在な形状で成形し、前記コネクタ70内にはコネクタ側端子41が設けられ、このコネクタ側端子41には、その中央に1つの曲折部41Aが形成されている。コネクタ側端子41の一端41Cは、外部への引出線と接続するために外方に向けて配置され、他端41Bは、
図9に示すように、インシュレータ側端子41と重なる第1摺動片を構成している。
【0015】
前記インシュレータ20に設けられた前記インシュレータ側端子20Aの他端20Bは、
図9に示すように、第2摺動片を構成しており、丸棒又は平坦状に形成された前記コネクタ側端子41の他端41Bに対して互いに重なると共に二層状になっており、互いに重なってわずかではあるが相互摺動可能、又は、着脱自在となる摺動部250を有するように構成されている。
【0016】
前述においては、前記コネクタ70と前記インシュレータ20は、互いに射出成形されると共に、次工程を待つ状態である。
前述の状態で、前記インシュレータ20内に輪状ステータ10を
図6、
図7のように収納し、前記コネクタ側端子41とインシュレータ側端子20Aとの一体化前の状態では、前記コネクタ側端子41とインシュレータ側端子20Aとの層状状態の全長Yを専用治具で調整して、輪状ステータ10の外径が種々変更になった場合でも、ある程度の端子保持部40の長さYを調整することができる。
また、一体化前の状態では、種々の大きさからなる少なくとも、輪状ステータ10、端子保持部40、コネクタ側端子41及びインシュレータ側端子20Aを取り換えて装着できるように構成されている。
このように、小径の輪状ステータから大径の輪状ステータに切替える場合には、一体化前の状態では、コネクタ70を本体部であるインシュレータ20から引き離し、互いに二層状であるコネクタ側端子41とインシュレータ側端子20Aとを摺動又は着脱自在することによって、
図4に示す全長Yを所望の長さとし、各端子41A、20Aを溶接又は半田付けによって、前記コネクタ側端子41Aとインシュレータ側端子20Aとを所望の長さで固定することができる。
【0017】
尚、前記コネクタ側端子41と前記インシュレータ側端子20Aとを一体化する場合には、前記インシュレータ20のほぼ中央位置に形成されている貫通孔又は一側部のみからなる孔80を介して、溶接又は半田付けによって行うことができる。すなわち、前記一体化前の互いに二層配置の前記インシュレータ側端子20Aと前記コネクタ側端子41とは、前記インシュレータ20に設けられた孔80に対応している構造である。この溶接又は半田付けにより、前記コネクタ側端子41と前記インシュレータ側端子20Aとは、一体化部分Gにより一体化される。
また、前記インシュレータ20は、キャップとして、
図7に示す前記輪状ステータ10の一面10Gに載置できる構造である。尚、前記コネクタ側端子41の代わりに
図10、
図11で示される通りのリード線41Dを用いることができ、リード線41Dは前記コネクタ側端子41と機能及び動作共、全く同一の動作を得ることができる。