(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036001
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140684
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中居 和雄
(72)【発明者】
【氏名】深津 幸弘
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087EE14
5E087FF03
5E087FF08
5E087GG24
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】取付部材(フロントリテーナ)の剛性を確保する。
【解決手段】コネクタ10は、互いに嵌合可能な第1ハウジング11及び第2ハウジング12と、第1ハウジング11に装着されるフロントリテーナ13と、を備えている。第1ハウジング11は、内部に雌端子金具30を収容するハウジング本体11Aを有し、フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aの外周面を包囲する周壁部13Bを有している。第2ハウジング12は、内部にハウジング本体11A及びフロントリテーナ13を収容するフード部12Bを有している。周壁部13Bは、外周面にフード部12Bの内周面に接する複数の突部13Kを有している。各突部13Kは、周壁部13Bの外周面において、周壁部13Bの内部空間Sを挟んで対向する位置に対をなして配置されている。周壁部13Bは、対をなす突部13K間を繋ぐように内部空間Sを延びる架設部13Mを有している。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な第1ハウジング及び第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに装着される取付部材と、
を備え、
前記第1ハウジングは、内部に端子金具を収容するハウジング本体を有し、
前記取付部材は、前記ハウジング本体の外周面を包囲する周壁部を有し、
前記第2ハウジングは、内部に前記ハウジング本体及び前記取付部材を収容するフード部を有し、
前記周壁部は、外周面に前記フード部の内周面に接する複数の突部を有し、
各前記突部は、前記周壁部の外周面において、前記周壁部の内部空間を挟んで対向する位置に対をなして配置され、
前記周壁部は、対をなす前記突部間を繋ぐように前記内部空間を延びる架設部を有している、コネクタ。
【請求項2】
対をなす前記突部は、前記周壁部に複数組設けられ、前記架設部は、対をなす前記突部の全ての組に対応して設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向を前後方向とした場合に、各前記突部は、前記架設部の前記前後方向の長さ範囲内に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合側を前側とした場合に、前記取付部材は、前記ハウジング本体の前端を覆う前壁部を有し、
前記架設部は、前記前壁部の後面に沿って延び、且つ前記前壁部の後面に連結されている、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記周壁部は、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合側から見た上下左右にそれぞれ上下壁と左右壁とを有し、
前記架設部は、前記左右壁間に左右方向に架設される第1架設部と、前記上下壁間に上下方向に架設される第2架設部を有している、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1架設部は、前記端子金具を前記ハウジング本体から抜け止めする抜け止め部を有している、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジング本体は、左右方向に隣接するキャビティタワーを有し、
前記第2架設部は、前記隣接するキャビティタワーの間に配置される、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記突部が前記フード部の内周面に接する方向を第1方向とし、前記第1方向と交差する方向を第2方向とした場合に、前記第1ハウジングは、前記架設部に対して前記第2方向から接する内側接触部を有している、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記架設部は、対向する前記突部間を繋ぐ架設方向と交差する方向に板厚を向けた板状をなし、
前記内側接触部は、前記架設部を前記架設部の板厚方向の両側から挟むように前記架設部に接触している、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記内側接触部は、前記周壁部の内周面に隣接して配置されている、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記第1ハウジングは、互いに対向する対向面間に前記架設部を受ける受容凹部を有し、
前記内側接触部は、前記対向面から前記受容凹部の開口幅を狭める方向に突出している、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合側を前側とした場合に、前記取付部材は、前記ハウジング本体の前端を覆う前壁部を有するフロントリテーナである、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雌ハウジングに設けられたタワー部を雄ハウジングのフード部によって覆う構成が開示されている。タワー部の前端部には、フロントホルダが取り付けられる。フロントホルダの周壁の外面には複数の外側突部が設けられ、各外側突部に対応する位置の内面には内側突部が設けられている。雌ハウジングのタワー部及び雄ハウジングのフード部は、それぞれフロントホルダの外側突部及び内側突部に接触することでガタ詰めを図る構成である。また、雌ハウジング及び雄ハウジングのガタ詰めを図る構成として、特許文献2から特許文献5に開示された構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-16262号公報
【特許文献2】特開2014-59960号公報
【特許文献3】特開2017-33700号公報
【特許文献4】特開2008-166046号公報
【特許文献5】特開2015-220048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、外側突部及び内側突部は、フロントホルダの周壁の適宜箇所に、背中合わせで配置されている。雌ハウジング及び雄ハウジングが嵌合状態にあるときに、周壁の適宜箇所には、外側突部とフード部との接触によって径方向内側への圧縮力が作用するとともに、内側突部とタワー部との接触によって径方向外側への圧縮力が作用する。このように周壁の適宜箇所に径方向両側から過剰な圧縮力が作用すると、その圧縮力を吸収するように、周壁の適宜箇所に連なる部分が撓んでしまう懸念がある。フロントホルダと同様、端子金具を係止する機能を備えたフロントリテーナも、雌ハウジングと雄ハウジングとの間に挟み込まれる周壁を有し、周壁にガタ詰め用の突部を設けることがある。そうすると、フロントリテーナの周壁も過剰な圧縮力を受けて変形する可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、フロントホルダやフロントリテーナ等の取付部材の剛性を確保できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
互いに嵌合可能な第1ハウジング及び第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに装着される取付部材と、
を備え、
前記第1ハウジングは、内部に端子金具を収容するハウジング本体を有し、
前記取付部材は、前記ハウジング本体の外周面を包囲する周壁部を有し、
前記第2ハウジングは、内部に前記ハウジング本体及び前記取付部材を収容するフード部を有し、
前記周壁部は、外周面に前記フード部の内周面に接する複数の突部を有し、
各前記突部は、前記周壁部の外周面において、前記周壁部の内部空間を挟んで対向する位置に対をなして配置され、
前記周壁部は、対をなす前記突部間を繋ぐように前記内部空間を延びる架設部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、取付部材の剛性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1のコネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1ハウジングを前方下側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1ハウジングを前方から見た正面図である。
【
図4】
図4は、第2ハウジングを後方から見た背面図である。
【
図5】
図5は、取付部材を後方右側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、取付部材を前方から見た正面図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態の第1ハウジングを前方下側から見た斜視図である。
【
図14】
図14は、他の実施形態の取付部材を後方左側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)互いに嵌合可能な第1ハウジング及び第2ハウジングと、第1ハウジングに装着される取付部材と、を備えている。第1ハウジングは、内部に端子金具を収容するハウジング本体を有し、取付部材は、ハウジング本体の外周面を包囲する周壁部を有している。第2ハウジングは、内部にハウジング本体及び取付部材を収容するフード部を有している。周壁部は、外周面にフード部の内周面に接する複数の突部を有している。各突部は、周壁部の外周面において、周壁部の内部空間を挟んで対向する位置に対をなして配置されている。周壁部は、対をなす突部間を繋ぐように内部空間を延びる架設部を有している。この構成によれば、対をなす突部間には架設部が配置されるので、架設部の配置側であるハウジング本体側から周壁部に圧縮力が作用することを回避できる。また、周壁部は、対をなす突部間の架設部によって、自身の剛性を維持することができる。その結果、周壁部が撓むことを抑制することができる。
【0010】
(2)本開示のコネクタにおいて、対をなす突部は、周壁部に複数組設けられ、架設部は、対をなす突部の全ての組に対応して設けられていることが好ましい。この構成によれば、周壁部が撓むことをより確実に抑制できる。
【0011】
(3)本開示のコネクタは、第2ハウジングに対する第1ハウジングの嵌合方向を前後方向とした場合に、各突部は、架設部の前後方向の長さ範囲内に配置されていることが好ましい。この構成によれば、フード部から各突部を介して周壁部に作用する圧縮力を、架設部が確実に受け止めることができる。
【0012】
(4)本開示のコネクタは、第2ハウジングに対する第1ハウジングの嵌合側を前側とした場合に、取付部材は、ハウジング本体の前端を覆う前壁部を有し、架設部は、前壁部の後面に沿って延び、且つ前壁部の後面に連結されていることが好ましい。この構成によれば、架設部が前壁部に連結されるため、架設部の強度を高めることができる。
【0013】
(5)本開示のコネクタにおいて、周壁部は、第2ハウジングに対する第1ハウジングの嵌合側から見た上下左右にそれぞれ上下壁と左右壁とを有している。架設部は、左右壁間に左右方向に架設される第1架設部と、上下壁間に上下方向に架設される第2架設部を有していることが好ましい。この構成によれば、フード部から各突部を介して周壁部に作用する圧縮力を、第1架設部及び第2架設部が、左右方向及び上下方向で受け止めることができ、周壁部が撓むことをより確実に抑制することができる。
【0014】
(6)本開示のコネクタにおいて、第1架設部は、端子金具をハウジング本体から抜け止めする抜け止め部を有していることが好ましい。この構成によれば、第1架設部が取付部材を補強する機能と端子金具を抜け止めする機能とを兼備するので、両機能が別々に設けられる場合と比べ、取付部材の構成が複雑になるのを回避できる。
【0015】
(7)本開示のコネクタにおいて、ハウジング本体は、左右方向に隣接するキャビティタワーを有し、第2架設部は、隣接するキャビティタワーの間に配置されることが好ましい。この構成によれば、第2架設部が隣接するキャビティタワーの間にスペース効率良く配置される。
【0016】
(8)本開示のコネクタにおいて、突部がフード部の内周面に接する方向を第1方向とし、第1方向と交差する方向を第2方向とした場合に、第1ハウジングは、架設部に対して第2方向から接する内側接触部を有していることが好ましい。この構成によれば、第2ハウジングと取付部材との間のがた付きが突部によって規制され、且つ第1ハウジングと取付部材との間のがた付きが内側接触部によって規制される。その結果、第1ハウジングと第2ハウジングとの間のがた付きが取付部材を介して規制される。また、突部がフード部の内周面に接する方向である第1方向と、内側接触部が架設部に接する方向である第2方向とが交差する。このため、周壁部に対して周壁部の厚み方向両側(第1方向とその反対方向)から過剰な圧縮力が加わることがなく、周壁部の撓みを抑制することができる。
【0017】
(9)本開示のコネクタにおいて、架設部は、対向する突部間を繋ぐ架設方向と交差する方向に板厚を向けた板状をなし、内側接触部は、架設部を架設部の板厚方向の両側から挟むように架設部に接触していることが好ましい。この構成によれば、架設部に特別な加工を施すことなく、第1ハウジングと取付部材との間のガタ付きをより確実に抑えることができる。
【0018】
(10)本開示のコネクタにおいて、内側接触部は、周壁部の内周面に隣接して配置されていることが好ましい。この構成によれば、架設部に対して内側接触部が接触する位置を第1ハウジングの外縁部に配置できるので、第1ハウジングに対する取付部材のガタ付きを抑え易い。
【0019】
(11)本開示のコネクタにおいて、第1ハウジングは、互いに対向する対向面間に架設部を受ける受容凹部を有し、内側接触部は、対向面から受容凹部の開口幅を狭める方向に突出していることが好ましい。この構成によれば、内側接触部の突出量を調整することにより、第1ハウジングと取付部材との間のガタ詰め構造を、組み付け抵抗を大きくせずに、形成することができる。
【0020】
(12)本開示のコネクタにおいて、第2ハウジングに対する第1ハウジングの嵌合側を前側とした場合に、取付部材は、ハウジング本体の前端を覆う前壁部を有するフロントリテーナであることが好ましい。この構成によれば、撓み難いフロントリテーナとすることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
【0022】
<実施形態1>
本開示を具体化したコネクタ10を、
図1から
図12を参照して説明する。図中、「前側」、「後側」、「上側」、「下側」、「右側」、及び「左側」は、それぞれ「F」、「B」、「U」、「D」、「R」、及び「L」で表される。本実施形態1では、左右方向は、幅方向に相当する。
図1に示すように、実施形態1のコネクタ10は、互いに嵌合可能な第1ハウジング11及び第2ハウジング12と、取付部材であるフロントリテーナ13と、を備えている。前側は、第1ハウジング11に対して第2ハウジング12が嵌合する側である。
【0023】
[第1ハウジングの構成]
第1ハウジング11は、合成樹脂製である。第1ハウジング11は、後方から雌端子金具30を収容可能な雌ハウジングとして構成される。
図2、3に示すように、第1ハウジング11は、左右方向(幅方向)に扁平なハウジング本体11Aと、ハウジング本体11Aの外周を包囲する筒状の包囲壁部11Bと、を有している。ハウジング本体11A内には、前後方向に貫通するキャビティ11Cが左右方向に複数並んで形成されている。各キャビティ11Cの内面には、前向きに片持ち状に延びるランス11Eが設けられている(
図10参照)。
【0024】
ハウジング本体11Aの前端部において、隣合うキャビティ11Cの間には凹部11Fが形成されている。凹部11Fのうち、左右方向中央に位置する凹部11Fは、ハウジング本体11Aの上端から下端にかけて貫通し(
図2参照)、且つ他の凹部11Fに比べて後向きに深く凹んで形成されている(
図11参照)。左右方向中央に位置する凹部11Fは、後述するフロントリテーナ13の第2架設部13Gを受ける第2受容凹部11Sである。第2受容凹部11Sは、互いに対向する対向面11R間に第2架設部13Gを受ける(
図11参照)。
【0025】
図3に示すように、ハウジング本体11Aにおいて、第2受容凹部11Sよりも左側(
図3におけるL側)の部分には、3つの第1キャビティタワー11Hが配置され、第2受容凹部11Sよりも右側(
図3におけるR側)の部分には、3つの第2キャビティタワー11Jが配置される。第1キャビティタワー11H及び第2キャビティタワー11Jは、左右方向に隣接している。第2受容凹部11Sを形成する互いに対向する対向面11Rの各々には、第2受容凹部11Sの開口幅を狭める方向に突出するように内側接触部である第2内側接触部11Nが設けられている。各対向面11Rの上端部と下端部において、第2内側接触部11Nは、左右方向に対向するように各対向面11Rに配置されている。
【0026】
ハウジング本体11Aの前端部において、第1キャビティタワー11H、及び第2キャビティタワー11Jの下方には、左端から右端にかけて貫通し、且つ後向きに凹んで形成された第1受容凹部11Pが形成されている。第1受容凹部11Pは、互いに対向する対向面11Q間に後述する第1架設部13Fを受ける(
図12参照)。第1受容凹部11Pを形成する互いに対向する対向面11Qの各々には、第1受容凹部11Pの開口幅を狭める方向に突出するように内側接触部である第1内側接触部11Mが設けられている。各対向面11Qの左端部と右端部において、第1内側接触部11Mは、上下方向に対向するように各対向面11Qに配置されている。
【0027】
包囲壁部11Bは、前方(第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の嵌合側)から見ると上下左右に上壁、下壁、左壁、及び右壁を有した角筒状をなしている。包囲壁部11Bの上壁の左右方向中央部には、ロックアーム11Kが設けられている。包囲壁部11Bの後端部には、内向きに延びる繋ぎ部11Gが設けられている。繋ぎ部11Gは、ハウジング本体11Aの外周面に連結されている。包囲壁部11Bとハウジング本体11Aとの間には、後述する第2ハウジング12を嵌合可能な嵌合空間11Dが形成されている。ハウジング本体11Aの外周面であって、繋ぎ部11Gの前方(すなわち嵌合空間11Dの奥部)には環状をなしたシールリング16が嵌めつけられる(
図10参照)。
【0028】
各キャビティ11Cには、後方から雌端子金具30が挿入される。雌端子金具30は、導電性を有した金属製である。
図1に示すように、雌端子金具30は、電線31の端末部に接続され、前部に角筒状の箱部30Aが設けられている。箱部30Aには、後述する雄端子金具32のタブ32Aが挿入されて接続される(
図10参照)。雌端子金具30は、箱部30Aの後端にランス11Eが係止されることによって、キャビティ11C内に抜け止めされる(
図10参照)。電線31には、ゴム栓33が嵌着される。ゴム栓33は、雌端子金具30のバレル部30Bに保持された状態で、キャビティ11Cの後部の内面に密着し、キャビティ11C内を液密にシールする(
図10参照)。
【0029】
[第2ハウジングの構成]
第2ハウジング12は、合成樹脂製である。第2ハウジング12は、雄端子金具32を装着可能な雄ハウジングとして構成される。
図4に示すように、第2ハウジング12は、板状をなして板厚方向を前後方向に向けた端子保持部12Aと、端子保持部12Aの外周縁から後向きに角筒状をなして延びるフード部12Bと、を有している。フード部12B内には、端子保持部12Aを前後方向に貫通した雄端子金具32のタブ32Aが複数突出して配置されている。フード部12Bの上壁の左右方向中央部には、上向きに突出してロック部12Cが設けられている。フード部12Bの内周面には、内向きに突出する接触部12Dが複数設けられている。これら接触部12Dは、フード部12Bを構成する上壁、下壁、左壁、及び右壁の内面に1つずつ配置されている。
【0030】
[フロントリテーナの構成]
フロントリテーナ13は、合成樹脂製である。フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aに対して前方から取り付けられる(
図10参照)。フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aに装着されることによって、雌端子金具30を抜止めする機能を発揮する。
【0031】
図5、6に示すように、フロントリテーナ13は、前壁部13Aと、前壁部13Aの外周縁から後向きに筒状をなして突出する周壁部13Bと、を有している。フロントリテーナ13がハウジング本体11Aに装着された状態において、前壁部13Aがハウジング本体11Aの前端の下部を覆うように配置され(
図10参照)、周壁部13Bがハウジング本体11Aの前端部の外周を覆うように配置される(
図12参照)。
【0032】
前壁部13Aには、各キャビティ11Cに対応して複数の窓孔13Cが貫通して形成されている。この窓孔13Cにハウジング本体11Aの前端部が挿入されることによって、ハウジング本体11Aの前端と、前壁部13Aの前面とが、面一に配置される(
図10参照)。
【0033】
図7、8、9に示すように、フロントリテーナ13は、架設部13Mを有している。架設部13Mは、左右方向に延びる第1架設部13Fと、上下方向に延びる第2架設部13Gと、を有している。第1架設部13Fは、平板状をなし、板厚方向を上下方向に向けて配置される。第1架設部13Fは、前壁部13Aの後面に沿って延びて連結している。第1架設部13Fの左端及び右端は、それぞれ周壁部13Bの左壁及び右壁(左右壁)に連結している。
【0034】
図7に示すように、第1架設部13Fには、複数の抜け止め部13Hが設けられている。これら抜け止め部13Hは、左右方向に並んでおり、第1架設部13Fの後端縁から後向きに延びている。抜け止め部13Hは、フロントリテーナ13がハウジング本体11Aに正規に取付けされた状態において、ランス11Eの前端部の下面に沿うように配置される(
図10参照)。これによって、抜け止め部13Hは、ランス11Eが下向きに撓むのを規制して、キャビティ11C内に配置された雌端子金具30をハウジング本体11Aから抜け止めする。抜け止め部13Hは、各ランス11Eに個別に対応して設けられている。
【0035】
図7、8、9に示すように、第2架設部13Gは、平板状をなし、板厚方向を左右方向に向けて前壁部13Aの左右方向中央に配置されている。第2架設部13Gは、前壁部13Aの後面に沿って延びて連結している。第2架設部13Gの上端及び下端は、それぞれ周壁部13Bの上壁及び下壁(上下壁)に連結している。
図9に示すように、第2架設部13Gの左方、及び右方には、2つずつ仕切り壁13Jが配置されている。仕切り壁13Jは、平板状をなし、板厚方向を左右方向に向けて、隣合う窓孔13Cを仕切るように配置されている。これら仕切り壁13Jは、周壁部13Bの上壁及び第1架設部13Fを繋ぐように形成されている。仕切り壁13Jの上部の後端は、第2架設部13Gの上部の後端よりも前方に位置している(
図11参照)。言い換えると、前後方向における仕切り壁13Jの上部の寸法は、前後方向における第2架設部13Gの上部の寸法よりも短い。第2架設部13Gの上端部は、下部における幅寸法よりも小さく形成された幅狭部13Nとして形成されている(
図9参照)。第2架設部13Gの左右方向の寸法は、幅狭部13Nを除いて仕切り壁13Jと同じである。
【0036】
図7、8、9に示すように、周壁部13Bの外周面には、外向きに突出する複数の突部13Kが設けられている。これら突部13Kは、前後方向に延びて形成されている。
図7、8に示すように、各突部13Kの前後方向中央部13Lは、周壁部13Bの外周面に対して前後方向に平行をなして形成されている。各突部13Kの前端部及び後端部は、周壁部13Bの外周面に向けて傾斜している。
【0037】
図9に示すように、周壁部13Bの上壁、及び下壁に設けられた突部13Kは、周壁部13Bの内部空間Sを挟んで対向する位置に対をなして配置されている。第2架設部13Gは、周壁部13Bの上壁及び下壁に対をなして設けられた突部13Kの間を繋ぐように、周壁部13Bの内部空間Sを上下方向に縦断している。第2架設部13Gは、周壁部13Bの上壁、及び下壁に設けられた突部13K(対向する突部13K)間を繋ぐ架設方向(上下方向)と交差する方向(左右方向)に板厚を向けている。上下の突部13K間は、周壁部13Bの上壁及び下壁と、第2架設部13Gとによって、上下方向に中実状に連続している。
【0038】
周壁部13Bの左壁、及び右壁に設けられた突部13Kは、周壁部13Bの内部空間Sを挟んで対向する位置に対をなして配置されている。第1架設部13Fは、周壁部13Bの左壁及び右壁に対をなして設けられた突部13Kの間を繋ぐように、周壁部13Bの内部空間Sを左右方向に横断している。第1架設部13Fは、周壁部13Bの左壁、及び右壁に設けられた突部13K(対向する突部13K)間を繋ぐ架設方向(左右方向)と交差する方向(上下方向)に板厚を向けている。左右の突部13K間は、周壁部13Bの左壁及び右壁と、第1架設部13Fとによって、左右方向に中実状に連続している。
【0039】
周壁部13Bには、対をなして設けられた突部13Kが2組設けられており、架設部13Mは、対をなす突部13Kの全ての組に対応して設けられている。前後方向において、突部13Kの前後方向中央部13Lは、第1架設部13F及び第2架設部13Gの前後方向の長さの範囲内に配置されている(
図7、8参照)。
【0040】
[コネクタにおける各部材の組付け形態]
図10に示すように、キャビティ11Cに後方から雌端子金具30を挿入し、ハウジング本体11Aに対して前方からフロントリテーナ13を装着した状態では、ランス11Eの前端が雌端子金具30の箱部30Aの後端に後方から対向する。そして、フロントリテーナ13の抜け止め部13Hは、ランス11Eの前端部の下面に沿うように配置される。これによって、抜け止め部13Hは、ランス11Eが下向きに撓むのを規制して、キャビティ11C内に配置された雌端子金具30を抜け止め状態に保持する。
【0041】
図11に示すように、ハウジング本体11Aに対してフロントリテーナ13を装着した状態において、ハウジング本体11Aの各凹部11Fには、前方から仕切り壁13Jが挿入される。そして、第2受容凹部11Sには、前方から第2架設部13Gが挿入される。言い換えると、第2架設部13Gは、隣接する第1キャビティタワー11Hと第2キャビティタワー11Jとの間に配置される。
【0042】
雌端子金具30及びフロントリテーナ13が取り付けられた第1ハウジング11に対して第2ハウジング12を組み付けた状態において、フード部12Bは、第1ハウジング11の前方から第1ハウジング11の嵌合空間11Dに挿入される。そして、ロック部12Cが第1ハウジング11のロックアーム11Kに係止する(
図10参照)。これとともに、雄端子金具32のタブ32Aが雌端子金具30の前方から箱部30Aに挿入される。第2ハウジング12のフード部12B内には、ハウジング本体11A及びフロントリテーナ13が収容される。
【0043】
図12に示すように、フロントリテーナ13の突部13Kの前後方向中央部13Lは、フード部12Bの内周面に設けられた接触部12Dに接触する。第1ハウジング11において、第1内側接触部11M、及び第2内側接触部11Nは、フロントリテーナ13の周壁部13Bの内周面に隣接して配置されている。第1内側接触部11Mは、第1架設部13Fの左右方向両端部において、第1架設部13Fを第1架設部13Fの板厚方向(上下方向)から挟むように接触している。第2内側接触部11Nは、フロントリテーナ13の周壁部13Bの上下方向両端部において、第2架設部13Gを第2架設部13Gの板厚方向(左右方向)から挟むように接触している。上側の第2内側接触部11Nは、第2架設部13Gの幅狭部13Nを板厚方向(左右方向)から挟むように接触している。
【0044】
フロントリテーナ13の周壁部13Bの上壁及び下壁に配置された各突部13Kがフード部12Bの内周面の接触部12Dに接触する方向(上下方向)を第1方向としたとき、上下方向と交差する左右方向を第2方向とした場合、第2内側接触部11Nは、第2架設部13Gに対して第2方向から接する。
【0045】
フロントリテーナ13の周壁部13Bの左壁及び右壁に配置された各突部13Kがフード部12Bの内周面の接触部12Dに接触する方向(左右方向)を第1方向としたとき、左右方向と交差する上下方向を第2方向とした場合、第1内側接触部11Mは、第1架設部13Fに対して第2方向から接する。
【0046】
次に、実施形態1の作用を説明する。
本開示のコネクタ10は、互いに嵌合可能な第1ハウジング11及び第2ハウジング12と、第1ハウジング11に装着されるフロントリテーナ13と、を備えている。第1ハウジング11は、内部に雌端子金具30を収容するハウジング本体11Aを有し、フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aの外周面を包囲する周壁部13Bを有している。第2ハウジング12は、内部にハウジング本体11A及びフロントリテーナ13を収容するフード部12Bを有している。周壁部13Bは、外周面にフード部12Bの内周面に接する複数の突部13Kを有している。各突部13Kは、周壁部13Bの外周面において、周壁部13Bの内部空間Sを挟んで対向する位置に対をなして配置されている。周壁部13Bは、対をなす突部13K間を繋ぐように内部空間Sを延びる架設部13Mを有している。この構成によれば、対をなす突部13K間には架設部13Mが配置されるので、架設部13Mの配置側であるハウジング本体11A側から周壁部13Bに圧縮力が作用することを回避できる。また、周壁部13Bは、対をなす突部13K間の架設部13Mによって、自身の剛性を維持することができる。その結果、周壁部13Bが撓むことを抑制することができる。
【0047】
本開示のコネクタ10において、対をなす突部13Kは、周壁部13Bに2組設けられ、架設部13Mは、対をなす突部13Kの全ての組に対応して設けられている。この構成によれば、周壁部13Bが撓むことをより確実に抑制できる。
【0048】
本開示のコネクタ10は、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の嵌合方向を前後方向とした場合に、各突部13Kは、架設部13Mの前後方向の長さ範囲内に配置されている。この構成によれば、フード部12Bから各突部13Kを介して周壁部13Bに作用する圧縮力を、架設部13Mが確実に受け止めることができる。
【0049】
本開示のコネクタ10は、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の嵌合側を前側とした場合に、フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aの前端の下部を覆う前壁部13Aを有する。架設部13Mは、前壁部13Aの後面に沿って延び、且つ前壁部13Aの後面に連結されている。この構成によれば、架設部13Mが前壁部13Aに連結されるため、架設部13Mの強度を高めることができる。
【0050】
本開示のコネクタ10において、周壁部13Bは、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の嵌合側から見た上下左右にそれぞれ上下壁と左右壁とを有する。架設部13Mは、左右壁間に左右方向に架設される第1架設部13Fと、上下壁間に上下方向に架設される第2架設部13Gを有している。この構成によれば、フード部12Bから各突部13Kを介して周壁部13Bに作用する圧縮力を、第1架設部13F及び第2架設部13Gが、左右方向及び上下方向で受け止めることができ、周壁部13Bが撓むことをより確実に抑制することができる。
【0051】
本開示のコネクタ10において、第1架設部13Fは、雌端子金具30をハウジング本体11Aから抜け止めする抜け止め部13Hを有している。この構成によれば、第1架設部13Fがフロントリテーナ13を補強する機能と雌端子金具30を抜け止めする機能とを兼備するので、両機能が別々に設けられる場合と比べ、フロントリテーナ13の構成が複雑になるのを回避できる。
【0052】
本開示のコネクタ10において、ハウジング本体11Aは、左右方向に隣接する第1キャビティタワー11H及び第2キャビティタワー11Jを有し、第2架設部13Gは、隣接する第1キャビティタワー11H及び第2キャビティタワー11Jの間に配置される。この構成によれば、第2架設部13Gが隣接する第1キャビティタワー11H及び第2キャビティタワー11Jの間にスペース効率良く配置される。
【0053】
本開示のコネクタ10において、突部13Kがフード部12Bの内周面に接する方向を第1方向とし、第1方向と交差する方向を第2方向とした場合に、第1ハウジング11は、架設部13Mに対して第2方向から接する第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nを有している。この構成によれば、第2ハウジング12とフロントリテーナ13との間のがた付きが突部13Kによって規制され、且つ第1ハウジング11とフロントリテーナ13との間のがた付きが第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nによって規制される。その結果、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間のがた付きがフロントリテーナ13を介して規制される。また、突部13Kがフード部12Bの内周面に接する方向である第1方向と、第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nが架設部13Mに接する方向である第2方向とが交差する。このため、周壁部13Bに対して周壁部13Bの厚み方向両側(第1方向とその反対方向)から過剰な圧縮力が加わることがなく、周壁部13Bの撓みを抑制することができる。
【0054】
本開示のコネクタ10において、架設部13Mは、対向する突部13K間を繋ぐ架設方向と交差する方向に板厚を向けた板状をなし、第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nは、架設部13Mを架設部13Mの板厚方向の両側から挟むように架設部13Mに接触している。この構成によれば、架設部13Mに特別な加工を施すことなく、第1ハウジング11とフロントリテーナ13との間のガタ付きをより確実に抑えることができる。
【0055】
本開示のコネクタ10において、第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nは、周壁部13Bの内周面に隣接して配置されている。この構成によれば、架設部13Mに対して第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nが接触する位置を第1ハウジング11の外縁部に配置できるので、第1ハウジング11に対するフロントリテーナ13のガタ付きを抑え易い。
【0056】
本開示のコネクタ10において、第1ハウジング11は、互いに対向する対向面11R間及び対向面11Q間に架設部13Mを受ける第1受容凹部11P及び第2受容凹部11Sを有する。第1内側接触部11Mは、対向面11Qから第1受容凹部11Pの開口幅を狭める方向に突出している。第2内側接触部11Nは、対向面11Rから第2受容凹部11Sの開口幅を狭める方向に突出している。この構成によれば、第1内側接触部11M及び第2内側接触部11Nの突出量を調整することにより、第1ハウジング11とフロントリテーナ13との間のガタ詰め構造を、組み付け抵抗を大きくせずに、形成することができる。
【0057】
本開示のコネクタ10において、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の嵌合側を前側とした場合に、取付部材は、ハウジング本体11Aの前端を覆う前壁部13Aを有するフロントリテーナ13である。この構成によれば、撓み難いフロントリテーナ13とすることができる。
【0058】
[本開示の他の実施形態]
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではない。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
【0059】
キャビティの数は、実施形態1に開示された数に限らない。例えば、
図13に示すように、第1ハウジング111において、ハウジング本体111Aにキャビティ111Cが1つのみ形成された構成としてもよい。この場合、第1受容凹部111Pがハウジング本体111Aの左端から右端にかけて貫通して形成されている。また、第2受容凹部111Sは、キャビティ111Cよりも下方に形成されている。
図14に示すように、取付部材であるフロントリテーナ113の第1架設部113Fは、周壁部113Bの左壁及び右壁に対をなして設けられた突部113Kの間を繋ぐように、周壁部113Bの内部空間S2を左右方向に横断している。第2架設部113Gは、周壁部113Bの下壁及び第1架設部113Fに繋がって形成されている。第2架設部113Gは、周壁部113Bの下壁に設けられた突部113Kに繋がるように配置されている。
【0060】
実施形態1とは異なり、第1ハウジングに雄端子金具を取り付ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…コネクタ
11,111…第1ハウジング
11A,111A…ハウジング本体
11B…包囲壁部
11C,111C…キャビティ
11D…嵌合空間
11E…ランス
11F…凹部
11G…繋ぎ部
11H…第1キャビティタワー(キャビティタワー)
11J…第2キャビティタワー(キャビティタワー)
11K…ロックアーム
11M…第1内側接触部
11N…第2内側接触部
11P,111P…第1受容凹部
11Q,11R…対向面
11S,111S…第2受容凹部
12…第2ハウジング
12A…端子保持部
12B…フード部
12C…ロック部
12D…接触部
13,113…フロントリテーナ(取付部材)
13A…前壁部
13B,113B…周壁部
13C…窓孔
13F,113F…第1架設部(架設部)
13G,113G…第2架設部(架設部)
13H…抜け止め部
13J…仕切り壁
13K,113K…突部
13L…方向中央部
13M…架設部
13N…幅狭部
16…シールリング
30…雌端子金具
30A…箱部
30B…バレル部
31…電線
32…雄端子金具
32A…タブ
33…ゴム栓
S,S2…内部空間