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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036005
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
   A43C 11/14 20060101AFI20240308BHJP
   A43B 11/00 20060101ALI20240308BHJP
   A43C 7/02 20060101ALI20240308BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A43C11/14
A43B11/00
A43C7/02
A43B23/02 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140691
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】兼松 慧
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC26
4F050BC34
(57)【要約】
【課題】 履物の脱ぎ履きを容易にするとともに、人の足甲形状に関わらずアッパーを効果的に締め付けることができる履物を提供する。
【解決手段】 本発明の履物1は、ソール10と、ソール10の上方に設けられ足を収容するアッパー20と、を備え、履物1の内側面1aまたは外側面1bの少なくとも一方の側面に配置され、ソール10、アッパー20またはソール10とアッパー20の界面のいずれかに固定され、下方から上方に向かって延びる複数のループ31、32、33を有するループ係合部3と、ループ係合部3の複数のループを通る単一のループを有するループ締付部4と、ループ締付部4に設けられた固定部41と、アッパー20またはソール10に配置され、固定部41が固定される被固定部60と、を備え、ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態において固定部41を被固定部60に固定可能に構成される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールと、前記ソールの上方に設けられ足を収容するアッパーと、を備える履物であって、
前記履物の内側面または外側面の少なくとも一方の側面に配置され、前記ソール、前記アッパーまたは前記ソールと前記アッパーの界面のいずれかに固定され、下方から上方に向かって延びる複数のループを有するループ係合部と、
前記ループ係合部の複数のループを通る単一のループを有するループ締付部と、
前記ループ締付部に設けられた固定部と、
前記アッパーまたはソールに配置され、前記固定部が固定される被固定部と、を備え、
前記ループ締付部が前記ループ係合部を引っ張った状態において前記固定部を前記被固定部に固定可能に構成される、
履物。
【請求項2】
前記ループ係合部は、前記履物の内側面または外側面のどちらか一方の側面に配置され、
前記ループ締付部は、前記一方の側面の反対側の他方の側面に配置され、前記ソール、前記アッパーまたは前記ソールと前記アッパーの界面のいずれかに固定され、前記ソールからアッパーに向かって延びる、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記ループ係合部及び前記ループ締付部は、紐状部材により構成される、請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記ループ締付部に前記固定部が移動自在に設けられている、請求項3に記載の履物。
【請求項5】
前記履物が、前足部、中足部、後足部を有し、
前記ループ係合部の複数のループが前記中足部に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の履物。
【請求項6】
前記被固定部が複数の被固定部材からなり、前記被固定部材は、少なくとも前記アッパーの前足部、中足部、前記アッパーの足を挿入するための履き口近傍に設けられる、請求項5に記載の履物。
【請求項7】
前記ループ係合部の前記複数のループの中で、足長方向の最前方に配置されるループの前方の端点が、前記履物の足長方向のMP関節相当部より前方に配置され、足長方向の最後方に配置されるループの後方の端点が前記後足部に配置される、請求項5に記載の履物。
【請求項8】
前記ループ係合部が前記履物の内側面に配置され、
前記ループ締付部が前記履物の外側面に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の履物。
【請求項9】
前記ループ係合部は、足長方向に並んだ3つの前記ループを有し、
前記ループ締付部が、前記ループ係合部が配置された側面の反対側の側面から前記ループ係合部が配置された側面に案内され、3つの前記ループの中で足長方向において前方と後方のループを通過し、前記ループ係合部が配置された側面の反対側の側面に向かって折り返され、3つの前記ループのうち足長方向において中央のループを通過し、中央のループを通過した前記ループ締付部の箇所に前記固定部が設けられる、請求項2または3に記載の履物。
【請求項10】
前記ループ係合部は、複数のループが多段に編み込まれて形成され、前記ループの数を下段の層より上段の層を少なくし、最上層の段が3つのループで形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の履物。
【請求項11】
前記複数のループの頂点高さが、前記ソールの接地面と平行になるように配置した、請求項1から3のいずれか1項に記載の履物。
【請求項12】
前記複数のループの頂点高さが、後足部に向かって増加するように配置した、請求項5に記載の履物。
【請求項13】
前記ループ係合部及び前記ループ締付部のうち少なくとも一部が前記アッパー内部に配設されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の履物。
【請求項14】
前記ループ係合部及び前記ループ締付部が連続した1本の紐状部材で形成される請求項3に記載の履物。
【請求項15】
前記ループ係合部及び前記締付部は、異なる紐状部材により構成される、請求項3に記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関する。
【背景技術】
【0002】
履物の脱ぎ履きを容易にする履物が知られている。例えば、特許文献1には、脱着を比較的容易にし、引き締めを確実にする履物が開示されている。この履物は、ソール構造体と、該ソール構造体に固定されたアッパーと、アッパー及びソール構造体の少なくとも一方に固定された近位端部を有しアッパーから外方へ延びている複数の引張りケーブルと、を備える。この履物は、ストラップが、複数の引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部を有するとともに、アッパーに取外し可能に固定され得る遠位端部を有し、引張りケーブルを引き締めるように構成されている。
【0003】
特許文献1に記載された履物は、アッパーの中足部の足甲部分の一方に、複数の引張ケーブルが引き出され、アッパーの中足部の足甲部分の他方に設けられた複数のループ状ケーブルに、複数の引張ケーブルがそれぞれ挿通され、複数の引張ケーブルがストラップに接続されている。
【0004】
上記履物は、複数の引張ケーブルを接続したストラップを緩めてアッパーを緩め、履物内部に足を差し入れ、ストラップを引っ張り、複数の引張ケーブルを引き締めてアッパーに固定することにより、アッパーを容易に引き締めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2021-520918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明等は、履物の脱ぎ履きを簡便にできるとともに、効果的な引き締め効果が得られる構造について検討した。履物の脱ぎ履きを簡便にするためには、アッパーを簡単に緩めることができるとともに、アッパーを容易に締め付けることが望ましい。特に、紐靴を脱ぎ履きすることが困難な人の場合には、アッパーを大きく緩めることができるとともに、アッパーを片手で容易に締め付けることが望まれる。
【0007】
ところで、履物の脱ぎ履きを容易にするように構成した上記特許文献1の履物は、アッパーの中足部の足甲部分に引き出された複数の引張ケーブルと複数の引張ケーブルが挿通されるループ状ケーブルでアッパーを引き締めるので、足甲部分に引張り力を加える構成となる。
【0008】
足甲の高さなど人の足甲形状は様々であり、足甲部分に引張り力が付与される特許文献1の履物においては、人の足甲部分に沿って複数の引張ケーブルのいずれかの引張ケーブルの引張方向が沿わない場合がある。このような場合には、引張ケーブルの撓みや引張力の偏りが起こり、十分な締付が得られないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、履物の脱ぎ履きを容易にするとともに、人の足甲形状に関わらずアッパーを効果的に締め付けることができる履物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、履物の脱ぎ履きを容易にするとともに、履物を効果的に締め付けることができる履物について検討した。本発明者等は、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0011】
本発明の一実施形態に係る履物は、ソールと、前記ソールの上方に設けられ足を収容するアッパーと、を備える履物であって、前記履物の内側面または外側面の少なくとも一方の側面に配置され、前記ソール、前記アッパーまたは前記ソールと前記アッパーの界面のいずれかに固定され、下方から上方に向かって延びる複数のループを有するループ係合部と、前記ループ係合部の複数のループを通る単一のループを有するループ締付部と、前記ループ締付部に設けられた固定部と、前記アッパーまたはソールに配置され、前記固定部が固定される被固定部と、を備え、前記ループ締付部が前記ループ係合部を引っ張った状態において前記固定部を前記被固定部に固定可能に構成される。
【0012】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0013】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、単一のループを有するループ締付部を緩めることにより、履物の脱ぎ履きを容易にできる。さらに、ループ係合部とループ締付部がアッパー内に挿入された足を広範囲に締め付けることができるので、人の足甲形状に関わらずアッパーを効果的に締め付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る履物の内側面側を示す側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る履物の外側面側を示す側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る履物の平面図であり、ループ締付部の固定部を被固定部に固定した状態を示している。
図4図4は、本発明の実施形態に係る履物の平面図であり、ループ締付部の固定部を被固定部から解放した状態を示している。
図5図5は、本発明の実施形態に係る履物と着用者の足骨格との位置関係を示す模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る履物に足を挿入する状態を示す内側面側の側面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る履物を履いた状態を示す外側面側の側面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る履物の外足面側の側面図であり、ループ締付部の固定部を履物の前足部近傍の被固定部に固定した状態を示している。
図9図9は、本発明の実施形態に係る履物の外足面側の側面図であり、ループ締付部の固定部を履物の履き口近傍の被固定部に固定した状態を示している。
図10図10は、本発明の第1変形例の履物を示す平面図である。
図11図11は、本発明の第2変形例の履物を示す平面図である。
図12図12は、本発明の履物の第3変形例のループ係合部部分を示す模式図である。
図13図13は、本発明の履物の第3変形例の異なるループ係合部部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る履物に基づいて図面を参照して具体的に説明する。なお、本発明に係る履物は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
本発明の実施形態、変形例においては、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要でない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
また、第1、第2などの序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0018】
[実施の形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る履物1の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る履物1の内側面側を示す側面図、図2は、本発明の実施形態に係る履物1の外側面側を示す側面図である。図1及び図2を含め、以下の図では、特に説明しない限り、右足用の履物を示すが、左足用の履物1にも同様に適用される。図3は、本発明の実施形態に係る履物の平面図であり、ループ締付部の固定部を被固定部に固定した状態を示している。また、図4は、本発明の実施形態に係る履物の平面図であり、ループ締付部の固定部を被固定部から解放した状態を示している。図5は、本発明の実施形態に係る履物と着用者の足骨格との位置関係を示す模式図である。
【0019】
本実施形態の履物1は、例えば、歩行や走行用の履物、安全靴、テニスやバスケットボールなどのスポーツ用の靴、サンダルなどとして使用でき、その用途は限定されない。履物1は、ソール10とアッパー20とを有する。図3図5に示すように、アッパー20の幅方向中心線Laから内足側(図中左側)を内足部22、幅方向中心線Laから外足側(図中右側)を外足部24という。
【0020】
本発明においては、図1に示すように、ソール10の内足側とアッパー20の内足部22とを含め履物1の内側面1a、図2に示すように、ソール10の外足側とアッパー20の外足部24を含め履物1の外側面1bという。
【0021】
本発明においては、外足側から内足側に向かう方向を内側といい、その反対方向を外側という。中心線Laに沿った方向を「足長方向」という。中心線Laに沿ってつま先側に向かう方向を「前側」または「前方」といい、その反対側を「後側」または「後方」という。したがって、幅方向は中心線Laに直交する。
【0022】
本発明においては、履物1を水平面に載置した状態(以下、「水平状態」という。)における上側を「上側」または「上方」といい、その反対側を「下側」または「下方」という。また、水平状態において、鉛直に延びる方向を「上下方向」という。
【0023】
本発明においては、図3図5に示すように、アッパー20のうち、前後方向において中足骨B2(図5参照)に対応する部分を中足部20Mという。中足部20Mは、履物1の前後長Lを100%とするとき、中心線Laと直交する直線に平行な範囲で、先端から25%~85%、より厳密には、30%~80%の長さLM分の領域である。また、アッパー20のうち、前後方向において、中足部20Mより前側の部分を前足部20Fといい、長さLF分の領域である。また、中足部20Mより後側の部分を後足部20Rといい、長さLR分の領域をいう。前足部20Fは、概ね趾骨B3(図5参照)に対応する部分であり、後足部20Rは、概ね足根骨B1(図5参照)に対応する部分である。
【0024】
図5に示すように、足は、足根骨B1、第1~第5の中足骨B2、趾骨B3で構成される。趾骨B3は基節骨B33、中節骨B32、末節骨B31で構成されている。図5の左から第1、第2、第3、第4、第5である。足の関節は、IP関節J2、PIP関節J’2、MP関節(中足趾節関節)J1、リスフラン関節J3、ショパール関節J4で構成されている。図5においては、MP関節に沿う仮想線をLbで表している。
【0025】
(ソール)
ソール10は、地面に接するための部分である。ソール10は、ミッドソール12、アウトソール13と、インソール14とを含む。ソール10の上方には、接着等の手段によりアッパー20が固定される。ソール10は、ユニソール構造でもよく、インソール14を含まなくてもよい。
【0026】
(アッパー)
アッパー20は、ソール10の上方に設けられ足を収容する。アッパー20は、足を収容するための内部空間20aを囲む。アッパー20には、足を挿入するための履き口20bが形成されている。履き口20bの後方は足の踵を覆うアッパー踵部20gが設けられている。その履き口20bから前方に中央開口部20cが形成されている。中央開口部20cは、舌片5で閉じられている。舌片5は、中央開口部20cの前方でアッパー20に縫合されている。なお、中央開口部20cは必須の構成ではなく、アッパー20がいわゆるモノソック構造であってもよい。
【0027】
アッパー20には、後述するループ締付部4に設けられた固定部41が固定される被固定部60が設けられる。本実施形態においては、アッパー20の異なる箇所に複数、具体的には3箇所に被固定部60が設けられる。本実施形態においては、被固定部60は、第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部材63により構成されている。
【0028】
ループ締付部4に設けられた固定部41は、第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部63のいずれか一つに固定される。本実施形態においては、第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部63と固定部41は、それぞれ面ファスナーで構成されている。被固定部60(第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部63)と固定部41は、固定と開放ができるものであればよく、面ファスナーに限らず、例えば、鍵ホック、スプリングホック、バックルなどで構成することもできる。
【0029】
本実施形態においては、第1の被固定部材61は、アッパー20の中足部20Mに設けられ、第2の被固定部材62はアッパー20の前足部20Fに設けられ、第3の被固定部材63は、アッパー20の後足部20Rに設けられる。
【0030】
本実施形態においては、図3に示すように、第1の被固定部材61は、上端が中央開口部20cの近傍からソール10側に向かって延びる矩形状の第1面ファスナー61mで構成される。第2の被固定部材62は、上端が中央開口部20cの近傍からソール10側に向かって延びる矩形状の第1面ファスナー62mで構成される。第3の被固定部材63は、上端が履き口20bの近傍からソール10側に向かって延びる半円状の第1面ファスナー63mで構成される。図5に示すように、第2の被固定部材62は、一部が前足部20Fから中足部20Mに跨がるように設けられている。
【0031】
足甲形状は人によって異なる。アッパー20に第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部材63と複数箇所に被固定部60を設けることにより、いろいろな人の足甲形状に応じて固定部41を固定する被固定部60を選択することができる。本実施形態においては、いろいろな人の足甲形状に応じた最適な締付力を得ることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、被固定部60として第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部材63をアッパー20の異なる箇所に設けているが、被固定部60は、一箇所だけでもよい。また、本実施形態においては、第1の被固定部材61、第2の被固定部材62、第3の被固定部材63とアッパー20の3箇所に被固定部60を設けているが、被固定部60を設ける箇所は3箇所に限らず、2箇所または3箇所より多くてもよい。
【0033】
(ループ係合部)
ループ係合部3は、ループ締付部4とともにアッパー20に締付力を与える。ループ係合部3は、履物1の内側面1aまたは外側面1bの少なくとも一方の側面に配置される。本実施形態のループ係合部3は、履物1の内側面1aに配置される。ループ係合部3は、ソール10、アッパー20またはソール10とアッパー20の界面のいずれかに固定される。本実施形態においては、アッパー20近傍のソール10に固定されている。ループ係合部3は、下方から上方に向かって延びる複数のループを有し、本実施形態においては、3個のループが履物1の前方から後方へ向かって第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33の順で配置される。
【0034】
ここで、ループは、部材の折り返しによって形成され、半円状、U字状、V字状などの山部または谷部を有するものをいう。ループは閉じている必要はなく、一部が開いたループでもよい。
【0035】
なお、本実施形態においては、ループ係合部3は、ソール10に固定されているが、ソール10とアッパー20の界面、またはアッパー20に固定されてもよい。
【0036】
本実施形態においては、図1に示すように、ループ係合部3は、シューレースなどの紐状部材30により構成される。ソール10の前方に設けられた穴部10aに紐状部材30の一端が挿入され、紐状部材30が接着剤等により固定される。
【0037】
紐状部材30は第1の穴部10aから上方に向かって延び、所定の位置で折り返され、第1のループ31を形成する。そして、第1のループ31を形成した後、紐状部材30はソール10の第1の穴部10aより後方に設けられた第2の穴部10bに向かって下方向に延び、第2の穴部10bに挿入され、第2の穴部10bで折り返されて接着剤等により固定される。
【0038】
紐状部材30は第2の穴部10bから上方に向かって延び、所定の位置で折り返され第2のループ32を形成する。そして、第2のループ32を形成した後、ソール10の第2の穴部10bより後方に設けられた第3の穴部10cに向かって下方向に延び、第3の穴部10cに挿入され、第3の穴部10cで折り返されて接着剤等により固定される。
【0039】
紐状部材30は第3の穴部10cから上方に向かって延び、所定の位置で折り返され第3のループ33を形成する。そして、第3のループ33を形成した後、ソール10の第3の穴部10cより後方に設けられた第4の穴部10dに向かって下方向に延び、第4の穴部10dに紐状部材30の他端部が挿入され、接着剤等により固定される。
【0040】
このようにして、履物1の内側面1aに第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33が配置される。そして、ループ係合部3を紐状部材30により構成することにより、紐状部材30の一方端をソール10の第1の穴部10aに挿入し、固定し、順次、ループを形成しながら、第2の穴部10b、第3の穴部10cに挿入し、第4の穴部10dに紐状部材30の他端部を挿入して固定することにより、複数のループを履物1の内側面1aに容易に配置することができる。
【0041】
本実施形態においては、ループ係合部3の第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33が中足部20Mに配置されている。このように、ループ係合部3の複数のループを中足部20Mに配置することにより、履物1の中足部20Mを中心として足を締め付けることができる。なお、本実施形態においては、3つのループが中足部20Mに配置されているが、2つのループを中足部20Mに配置することによっても、履物1の中足部20Mを中心として足を締め付ける効果は得られる。
【0042】
図1及び図5に示すように、本実施形態においては、ループ係合部3の複数のループの中で、足長方向の最前方に配置される第1のループ31の前方の端点が、履物1の足長方向のMP関節相当部(図5Lb線)より前方に配置される。さらに、足長方向の最後方に配置される第3のループ33の後方の端点が後足部20Rに配置される。このように、中足部20Mを含めた前後の場所にループ係合部3を配置することにより、アッパー20を広範囲に引き締めることができる。
【0043】
本実施形態においては、複数のループ(第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33)の頂点高さが、前足部20Fから後足部20Rに向かって増加するように配置されている。ループの頂点高さは、第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33の順で増加するように構成されている。足の甲は、つま先から踵に向かって高くなっているので、足の甲の高さに対応してループの頂点高さを高くする。これにより、ループ係合部3の第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33の各ループが足の甲に沿うようにして、アッパー20を締め付けることができる。なお、複数のループ(第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33)の頂点高さが、前記ソールの接地面と平行になるように配置してもよい。
【0044】
(ループ締付部)
ループ締付部4は、ループ係合部3を引っ張り、中央開口部20cを幅方向に閉じるような締付力を与えて、アッパー20を締め付ける。ループ締付部4は、ループ係合部3の複数のループである第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33を通る単一のループを有する。すなわち、ループ締付部4は、ループ係合部3の第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33に編み込まれた状態で単一のループを形成する。ループ締付部4は、被固定部60に固定される固定部41が設けられている。ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態において固定部41を被固定部60に固定することができるように構成されている。
【0045】
ここで、単一のループとは、ループの一端から他端まで1つのループを構成することをいい、ループは閉じている必要はなく、一部が開いたループでもよい。
【0046】
ループ締付部4を引き上げることにより、ループ係合部3の第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33がそれぞれ引き上げられ、ループ係合部3全体に引き締め力が与えられる。この状態で固定部41が被固定部60に固定される。これにより、ループ係合部3とループ締付部4とによりアッパー20内に挿入された足8の足裏から足甲までアッパー20を広範囲に締め付けることができる。
【0047】
履物1を脱ぐ時には、固定部41を被固定部60から外すことにより、ループ係合部3の各ループ31、32、33に編み込まれたループ締付部4の部分が簡単に緩み、アッパー20の締付が解放され、容易に足8をアッパー20から外に出すことができる。よって、本実施形態の履物1は容易に脱ぐことができる。このように、アッパー20の締付を緩める際には、固定部41を被固定部60から外すという一動作で行うことができる。
【0048】
図2図4に示すように、本実施形態においては、ループ締付部4は、ループ係合部3が配置された履物1の側面と反対側の側面である履物1の外側面1bに配置される。そして、ループ締付部4は、一端が履物1の外側面1bのソール10、アッパー20またはソール10とアッパー20の界面のいずれかに固定される。本実施形態においては、履物1の外側面1bのアッパー20近傍のソール10に固定されている。
【0049】
なお、本実施形態においては、ループ締付部4は、ソール10に固定されているが、ソール10とアッパー20の界面、またはアッパー20に固定されてもよい。
【0050】
ループ締付部4は、ソール10からアッパー20に向かって延び、アッパー20の内足部22にまで延びる。アッパー20の内足部22に位置するループ係合部3の第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33に編み込まれる。そして、第3のループ33を通ったループ締付部4は、アッパー20の外足部24側へ戻り、ループ締付部4の他端が履物1の外側面1bのアッパー20近傍のソール10に固定されている。
【0051】
ループ締付部4には、アッパー20に設けられた被固定部60に固定される固定部41が設けられている。本実施形態においては、第2のループ32に編み込まれたループ締付部4に固定部41が設けられる。固定部41は、矩形状の本体部41aとループ締付部4に取り付ける取付部41bを有する。本実施形態においては、ループ締付部4に対して、取付部41bを介して固定部41が取り付けられることにより、固定部41がループ締付部4上を自在に移動することができる。固定部41がループ締付部4に移動自在に取り付けられていることにより、足甲の高さなどにより、単一のループを有するループ締付部4の引張方向を変えても、ループ締付部4の適当な位置に固定部41が移動し、多方向へのループ締付部4の引張力を損なうことはない。
【0052】
本実施形態においては、固定部41の本体部41aに第2面ファスナー41mが設けられている。固定部41の第2面ファスナー41mは、被固定部60の第1面ファスナー61m、62m、63mに対して固定または開放可能に構成されている。
【0053】
被固定部60の第1面ファスナー61m、62m、63mと固定部41の第2面ファスナー41mは、一方がフック面を有し、他方がループ面を有する。したがって、第2面ファスナー41mは、第1面ファスナー61m、62m、63mに着脱自在である。第2面ファスナー41mが、第1面ファスナー61m、62m、63mに固定されることにより、アッパー20は締付けられる。第2面ファスナー41mが、第1面ファスナー61m、62m、63mから分離されることにより、アッパー20への締付けは解除される。
【0054】
本実施形態においては、図1及び図2に示すように、ループ締付部4は、シューレースなどの紐状部材40により構成される。ループ係合部3が配置された側面である内側面1aから反対側の外側面1bのソール10の前方に設けられた穴部10eに紐状部材40の一端部が挿入され、紐状部材40が接着剤等により固定される。紐状部材40は、第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33を編み込まれるようにして通過する。紐状部材40の他端部が外側面1bのソール10の後方に設けられた穴部10fに挿入され接着剤等により固定される。本実施形態においては、ループ締付部4を構成する紐状部材40の一端と他端がソール10に固定されている。
【0055】
本実施形態においては、ループ締付部4の紐状部材40が、ループ係合部3が配置された内側面1aの反対側の外側面1bからループ係合部3が配置された内側面1aに案内される。そして、3つのループの中で足長方向において前方と後方の第1のループ31、第3のループ33を通過し、ループ係合部3が配置された内側面1aの反対側の外側面1bに向かって折り返される。3つのループのうち足長方向において中央の第2のループ32を通過し、中央の第2のループ32を通過したループ締付部4の箇所に固定部41が設けられる。
【0056】
本実施形態においては、固定部41の取付部41bは、紐状部材40が通過可能に構成され、固定部41が移動自在にループ締付部4に取り付けられている。
【0057】
ループ係合部3の紐状部材30とループ締付部4の紐状部材40は、同じ素材でも異なる素材でもよく、両者間の滑りの良い材料が好適である。紐状部材30、40は、断面が円形、断面が楕円形、断面が略矩形の材料、または、帯状の材料を用いることができ、紐状部材30、40の材質は、シューレースに用いられているものに限らず、可撓性の樹脂材料、ワイヤなどの金属材料なども用いることができる。
【0058】
図3及び図4を参照して、ループ係合部3とループ締付部4を用いた履物1について更に説明する。本実施形態においては、履物1の内側面1aに配置されるループ係合部3は、複数のループとして、第1のループ31、第2のループ32、第3のループ33を有する。ループ係合部3は、ソール10のアッパー20との近傍に設けられた穴部10a、10b、10c、10dに挿入され、接着剤等により固定され、ソール10の4箇所に固定されている。
【0059】
履物1の外側面1bに配置されるループ締付部4は、ソール10のアッパー20との近傍に設けられた穴部10e、10fに挿入され、接着剤等により固定され、ソール10の2箇所で固定されている。
【0060】
ループ締付部4の紐状部材40がループ係合部3の前足部20F側の第1のループ31、後足部20R側の第3のループ33の中をアッパー20の舌片5側から内足部22を経て、履物1の内側面1aから履物1の外部まで通過する。そしてループ係合部3の中間に位置する第2のループ32に履物1の内側面1aから履物1の外部から舌片5方向へ戻って行くようにして、ループ係合部3の各ループにループ締付部4が編み込まれ状態で、ループ係合部3とループ締付部4が配置される。ここで、履物の外部とは、履物とは離間した位置を意味する。
【0061】
ループ係合部3の中間に位置する第2のループ32に編み込まれるループ締付部4の紐状部材40に固定部41が取付部41bを介して移動自在に設けられている。固定部41がアッパー20に設けられた被固定部60に対して固定と開放が行われる。
【0062】
図3は、ループ締付部4の固定部41を被固定部60に固定した状態を示している。図3においては、第1の被固定部材61に固定部41を固定している。図3に示すように、ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態で固定部41を第1の被固定部材61に固定することにより、一般的な足甲高さに対して中央開口部20cを幅方向に閉じるような適正な締付力を与えて、アッパー20の内部空間20aに収納された足8を締め付け固定する。この構造では、1つの固定部41でアッパー20の被固定部60に固定することになるが、本実施形態では、ループ係合部3の各ループにループ締付部4が編み込まれた状態で構成されているため、ループ係合部3全体に引張り力が作用し、アッパー20を広範囲で締め付けることができる。よって、紐靴に近い引き締め効果が得られる。
【0063】
図4は、ループ締付部4の固定部41を被固定部60から解放した状態を示している。図4に示すように、ループ締付部4の固定部41をアッパー20に設けた被固定部60から開放するだけで、ループ係合部3の各ループに編み込まれた状態のループ締付部4が簡単に緩み、アッパー20全体の締付力が開放される。紐靴においては、アッパー20の全体の締付力を緩めるためには、はと目からシューレースを順次緩める必要がある。これに対して、本実施形態の履物1においては、ループ締付部4の固定部41を被固定部60から外すという一動作で行え、履物1への脱ぎ履きが容易に行える。
【0064】
また、引き締める際には、固定部41をつまみ、引き上げるだけで簡単に引き締めることができる。
【0065】
また、履物1を脱ぐ際には、ループ締付部4の固定部41を被固定部60から解放することにより、ループ係合部3の各ループに編み込まれた状態のループ締付部4がほどける方向に容易に力を加えることができる。これにより、靴紐形式の履物やベルト締め構造の履物では時間がかかるアッパー20の締付を緩めるという動作を簡単に行うことができる。
【0066】
上記したように、本実施形態においては、ループ係合部3を履物1の内側面1aに配置しているので、履物1の内側面1a側のホールド性を高めることができるとともに、足の土踏まず部の落ち込みを抑制することができる。
【0067】
次に、図6及び図7を参照して、ループ係合部3とループ締付部4を用いた履物1を履く動作につき説明する。
【0068】
図6に示すように、ループ締付部4の固定部41を被固定部60から解放し、ループ係合部3の各ループに編み込まれた状態のループ締付部4を緩めた状態にする。この状態で、履き口20bから足8をアッパー20内の内部空間20aにつま先から挿入する。この時、アッパー20全体を大きく緩めることができるので、簡単に足8をアッパー20内の内部空間20aに挿入することができる。
【0069】
続いて、図7に示すように、固定部41をつまみ、引き上げることで、アッパー20の中央開口部20cを幅方向に閉じるようにして、アッパー20全体に適正な締付力を与えることができる。そして、ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態で固定部41を第1の被固定部材61に固定することにより、履物1を履くことができる。よって、片手で簡単に履物1を履くことができ、紐靴を脱ぎ履きすることが困難な人においても容易に履物1の脱ぎ履きが行える。
【0070】
なお、本実施形態においては、被固定部60は、アッパー20に設けられているが、ソール10に設けてもよい。
【0071】
次に、足甲の高さに応じて被固定部60を選択する例につき説明する。
一般的には、図3に示すように、中足部20Mに設けられた第1の被固定部材61に固定部41を固定する。ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態で固定部41を第1の被固定部材61に固定することにより、一般的な足甲高さに対して中央開口部20cを幅方向に閉じるような適正な締付力を与えて、アッパー20の内部空間20aに収納された足8を締め付け固定する。
【0072】
足の甲が低い場合には、図8に示すように、前足部20Fに設けられた第2の被固定部材62に固定部41を固定する。ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態で固定部41を第2の被固定部材62に固定することにより、足の甲の高さが低い場合において中央開口部20cを幅方向に閉じるような適正な締付力を与えて、アッパー20の内部空間20aに収納された足8を締め付け固定する。
【0073】
足の甲が高い場合には、図9に示すように、後足部20Rの履き口20b近傍に設けられた第3の被固定部63に固定部41を固定する。ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態で固定部41を第3の被固定部63に固定することにより、足の甲が高い場合において中央開口部20cを幅方向に閉じるような適正な締付力を与えて、アッパー20の内部空間20aに収納された足8を締め付け固定する。
【0074】
このように、被固定部60をアッパー20の複数箇所に設けることにより、いろいろな人の足甲形状に応じて固定部41を固定する被固定部材61、62、63を選択することができ、最適な締付力を得ることができる。
【0075】
以上のように構成された本実施形態の履物1の特徴を説明する。履物1は、ソール10と、ソール10の上方に設けられ足を収容するアッパー20と、を備える。履物1の内側面1aまたは外側面1bの少なくとも一方の側面に配置され、ソール10、アッパー20またはソール10とアッパー20の界面のいずれかに固定され、下方から上方に向かって延びる複数のループ31、32、33を有するループ係合部3と、ループ係合部3の複数のループを通る単一のループを有するループ締付部4と、ループ締付部4に設けられた固定部41と、アッパー20またはソール10に配置され、固定部41が固定される被固定部60と、を備える。ループ締付部4がループ係合部3を引っ張った状態において固定部41を被固定部60に固定可能に構成される。この構成によれば、単一のループを有するループ締付部4を緩めることにより、履物1の脱ぎ履きを容易にできる。さらに、ループ係合部3とループ締付部4がアッパー20内に挿入された足をアッパー20により広範囲に締め付けることができるので、人の足甲形状に関わらず履物1を効果的に締め付けることができる。
【0076】
ループ係合部3は、履物1の内側面1aまたは外側面1bのどちらか一方の側面に配置され、ループ締付部4は、一方の側面の反対側の他方の側面に配置され、ソール10、アッパー20またはソール10とアッパー20の界面のいずれかに固定される。この場合、ループ係合部3とループ締付部4により、アッパー20は、両側から包み込むように締付力が与えられ、アッパー内に挿入された足をアッパー全体で締め付けることができる。
【0077】
ループ係合部3及びループ締付部4は、紐状部材30、40により構成される。ループ係合部3を紐状部材30とした場合、紐状部材30の少なくとも一方の端点を固定し、複数のループ31、32、33を容易に構成できる。ループ締付部4を紐状部材40とした場合、複数のループ31、32、33にループ締付部4を通し、編み込んだ紐構造を構成することができる。これにより、ループ締付部4を上に引き上げ引き締めることにより、アッパー20を足甲に沿って締め付けることができる。
【0078】
ループ締付部4に固定部41が移動自在に設けられている。この場合、足甲の高さなどにより、単一のループを有するループ締付部4の引張方向を変えても、ループ締付部4の適当な位置に固定部41が移動し、多方向へのループ締付部4の引張力を損なうことはない。
【0079】
履物1が、前足部20F、中足部20M、後足部20Rを有し、ループ係合部3の複数のループ31、32、33が中足部20Mに配置される。この場合、履物1の中足部20Mを中心として足を締め付けることができる。
【0080】
被固定部60が複数の被固定部材61、62、63からなり、被固定部材61、62、63は、少なくともアッパー20の前足部20F、中足部20M、アッパー20の足を挿入するための履き口20b近傍に設けられる。この場合、いろいろな人の足甲形状に応じて固定部41を固定する被固定部材61、62、63を選択することができる。
【0081】
ループ係合部3の複数のループ31、32、33の中で、足長方向の最前方に配置されるループ31の前方の端点が、履物1の足長方向のMP関節相当部より前方に配置され、足長方向の最後方に配置されるループ33の後方の端点が後足部20Rに配置される。この場合、中足部20Mを含めた場所にループ係合部3を配置し、アッパー20を広範囲に引き締めることができる。
【0082】
ループ係合部3が履物1の内側面1aに配置され、ループ締付部4が履物1の外側面1bに配置される。この場合、履物1の内側面1a側のホールド性を高めることができるとともに、土踏まず部の落ち込みを抑制することができる。
【0083】
ループ係合部3は、足長方向に並んだ3つのループ31、32、33を有し、ループ締付部4が、ループ係合部3が配置された側面の反対側の側面からループ係合部3が配置された側面に案内され、3つのループの中で足長方向において前方のループ31と後方のループ33を通過し、ループ係合部3が配置された側面の反対側の側面に向かって折り返され、3つのループのうち足長方向において中央のループ32を通過し、中央のループ32を通過したループ締付部4の箇所に固定部41が設けられる。この場合、ループ係合部3とループ締付部4により、アッパー20は、両側から包み込むように締付力が与えられ、アッパー内に挿入された足をアッパー全体で締め付けることができる。
【0084】
複数のループ31、32、33の頂点高さが、後足部に向かって増加するように配置した。足の甲は、つま先から踵に向かって高くなっているので、足の甲の高さに対応してループの頂点高さを高くする。これにより、ループ係合部3の複数ループ31、32、33の各ループが足の甲に沿うようにして、アッパー20を締め付けることができる。
【0085】
また、複数のループ31、32、33の頂点高さが、ソール10の接地面と平行になるように配置してもよい。
【0086】
ループ係合部3及び締付部4は、異なる紐状部材により構成してもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0088】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一符号を付する。実施形態と重複する説明は適宜省略し、実施形態と相違する構成について詳細に説明する。
【0089】
[第1変形例]
実施の形態の説明では、ループ係合部3の紐状部材30とループ締付部4の紐状部材30はそれぞれ独立した別部材で構成される例を示したが、本発明はこれに限定されない。図10は、本発明の第1変形例の履物1を示す平面図である。本変形例は、ループ係合部3及びループ締付部4が連続した1本の紐状部材300で形成される。一本の紐状部材300によりループ係合部3及びループ締付部4を構成するために、本変形例においては、前足部20Fの穴部10aから紐状部材300がインソール14の下を通り、ループ締付部4の前方の穴部10eを通り、ループ締付部4に連なる。一方、後足部20Rの穴部10dからループ係合部3を構成する紐状部材300がインソール14の下を通り、ループ締付部4の後方の穴部10fを通りループ締付部4に連なる。
【0090】
このように、インソール14の下において、ループ係合部3及びループ締付部4を連続させることにより、ループ係合部3及びループ締付部4が連続した1本の紐状部材300で構成させることができる。
【0091】
[第2変形例]
実施の形態においては、ループ係合部3は、履物1の内側面1aまたは外側面1bのどちらか一方の側面に配置され、ループ締付部4は、一方の側面の反対側の他方の側面に配置される構成の例を示したが、本発明はこれに限定されない。図11は、本発明の第2変形例の履物を示す平面図である。本変形例は、履物1の内側面1aに第1のループ係合部3aと外側面1bに第2のループ係合部3bをそれぞれ配置する。第1のループ係合部3a及び第2のループ係合部3bはそれぞれ複数のループを有する。例えば、第1のループ係合部3aは、第1のループ31a、第2のループ32a、第3のループ33aを備える。第2のループ係合部3bは、第1のループ31b、第2のループ32b、第3のループ33bを備える。
【0092】
第1のループ係合部3aの複数のループ、第2のループ係合部3bの複数のループにそれぞれ編み込まれるように単一のループを有するループ締付部4aが設けられる。このループ締付部4aは、ソール10、アッパー20またはソール10とアッパー20の界面のいずれにも固定されていない。
【0093】
これらループ係合部3a、3bをループ締付部4aで引き上げて締め付け、ループ締付部4aに設けられた固定部41をアッパー20の被固定部60に固定する。
【0094】
[第3変形例]
実施の形態の説明では、ループ係合部3は複数のループが1段で構成される例を示したが、本発明はこれに限らない。第3変形例のループ係合部3cは、複数のループが多段に編み込まれて形成され、ループの数を下段の層より上段の層を少なくし、最上層の段が3つのループで形成されるように構成することができる。図12は、本発明の履物の第3変形例のループ係合部部分を示す模式図であり、ループ係合部が2段の例を示している。
【0095】
図12に示す変形例は、第1段目のループ係合部3c1が4つのループを有し、この4つのループに2段目のループが編み込まれている。2段目のループ係合部3c2は3つのループを有する。そして、2段目のループにループ締付部4が編み込まれるように配置されている。
【0096】
図13は、本発明の履物の第3変形例の異なるループ係合部部分を示す模式図である。図13に示す変形例は、ループ係合部3dを3段で構成している。第1段目のループ係合部3d1が6つのループを有し、この6つのループに2段目のループが編み込まれている。2段目3d2のループ係合部は4つのループを有する。そして、この4つのループに3段目のループが編み込まれている。3段目のループ係合部3d3は3つのループを有する。そして、3段目のループにループ締付部4が編み込まれるように配置されている。
【0097】
このように、ループ係合部のループ数を増やす場合には、ループ係合部を多段に構成することにより、容易に構成することができる。
【0098】
[その他の変形例]
実施の形態の説明では、ループ係合部3及びループ締付部4がアッパー20の外側に露出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。ループ係合部3及びループ締付部4の内少なくとも一部がアッパー20内部に配設されてもよい。本発明は、ベルト締め構造の履物より、折り返し構造を少なくできるので、ループ係合部3及びループ締付部4の重なり量が少なくなる。これにより、ループ係合部3及びループ締付部4の内少なくとも一部を容易にアッパー20の内部に配設することができる。このような履物1は、接触プレーなどを行う競技に用いる履物1として好適である。
【0099】
実施の形態の説明では、ループ係合部3が履物1の内側面1a、ループ締付部4が履物1の外側面1bに配置されているが、本発明はこれに限定されない。ループ締付部4が履物1の内側面1a、ループ係合部3が履物1の外側面1bに配置されてもよい。ループ係合部3が履物1の外側面1bに配置されることにより、外側に滑るような動作を行った際に、ソール10から足が落ちる、いわゆる棚落ちを防ぐ効果が期待できる。
【0100】
実施の形態の説明では、ループ係合部3及びループ締付部4は、履物1の異なる側面に配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。ループ係合部3及びループ締付部4は、履物1の同じ側面に配置されてもよい。この場合、被固定部60は、ループ係合部3及びループ締付部4が配置される側面とは反対側の側面のアッパー20またはソール10に設けられる。
【0101】
実施の形態の説明では、アッパー20の履き口20bの後方は足の踵を覆うアッパー踵部20gが設けられている例を示したが、本発明はこれに限定されない。アッパー20にアッパー踵部20gを備えない履物1、すなわち、サンダルにも本発明は適用できる。
【0102】
上述の各変形例は上述の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0103】
上述した実施形態と変形例の任意の組合せもまた本発明の実施形態として有用である。組合せによって生じる新たな実施形態は、組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、アッパーを締め付ける履物に利用することができる。
【0105】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
(1)ソールと、前記ソールの上方に設けられ足を収容するアッパーと、を備える履物であって、
前記履物の内側面または外側面の少なくとも一方の側面に配置され、前記ソール、前記アッパーまたは前記ソールと前記アッパーの界面のいずれかに固定され、下方から上方に向かって延びる複数のループを有するループ係合部と、
前記ループ係合部の複数のループを通る単一のループを有するループ締付部と、
前記ループ締付部に設けられた固定部と、
前記アッパーまたはソールに配置され、前記固定部が固定される被固定部と、を備え、
前記ループ締付部が前記ループ係合部を引っ張った状態において前記固定部を前記被固定部に固定可能に構成される、履物。
(2)前記ループ係合部は、前記履物の内側面または外側面のどちらか一方の側面に配置され、
前記ループ締付部は、前記一方の側面の反対側の他方の側面に配置され、前記ソール、
前記アッパーまたは前記ソールと前記アッパーの界面のいずれかに固定され、前記ソールからアッパーに向かって延びる、上記(1)に記載の履物。
(3)前記ループ係合部及び前記ループ締付部は、紐状部材により構成される、上記(1)または(2)に記載の履物。
(4)前記ループ締付部に前記固定部が移動自在に設けられている、上記(1)から(3)のいずれかに記載の履物。
(5)前記履物が、前足部、中足部、後足部を有し、
前記ループ係合部の複数のループが前記中足部に配置される、上記(1)から(4)のいずれかに記載の履物。
(6)前記被固定部が複数の被固定部材からなり、前記被固定部材は、少なくとも前記アッパーの前足部、中足部、前記アッパーの足を挿入するための履き口近傍に設けられる、上記(5)に記載の履物。
(7)前記ループ係合部の前記複数のループの中で、足長方向の最前方に配置されるループの前方の端点が、前記履物の足長方向のMP関節相当部より前方に配置され、足長方向の最後方に配置されるループの後方の端点が前記後足部に配置される、上記(1)から(6)のいずれかに記載の履物。
(8)前記ループ係合部が前記履物の内側面に配置され、
前記ループ締付部が前記履物の外側面に配置される、上記(1)から(7)のいずれかに記載の履物。
(9)前記ループ係合部は、足長方向に並んだ3つの前記ループを有し、
前記ループ締付部が、前記ループ係合部が配置された側面の反対側の側面から前記ループ係合部が配置された側面に案内され、3つの前記ループの中で足長方向において前方と後方のループを通過し、前記ループ係合部が配置された側面の反対側の側面に向かって折り返され、3つの前記ループのうち足長方向において中央のループを通過し、中央のループを通過した前記ループ締付部の箇所に前記固定部が設けられる、上記(2)または(3)に記載の履物。
(10)前記ループ係合部は、複数のループが多段に編み込まれて形成され、前記ループの数を下段の層より上段の層を少なくし、最上層の段が3つのループで形成される、上記(1)から(3)のいずれかに記載の履物。
(11)前記複数のループの頂点高さが、前記ソールの接地面と平行になるように配置した、上記(1)から(3)のいずれかに記載の履物。
(12)前記複数のループの頂点高さが、後足部に向かって増加するように配置した、上記(5)に記載の履物。
(13)前記ループ係合部及び前記ループ締付部のうち少なくとも一部が前記アッパー内部に配設されている、上記(1)から(12)のいずれかに記載の履物。
(14)前記ループ係合部及び前記ループ締付部が連続した1本の紐状部材で形成される上記(3)に記載の履物。
(15)前記ループ係合部及び前記締付部は、異なる紐状部材により構成される、上記(3)に記載の履物。
【符号の説明】
【0106】
1 :履物
1a :内側面
1b :外側面
3 :ループ係合部
4 :ループ締付部
5 :舌片
10 :ソール
20 :アッパー
20F :前足部
20M :中足部
20R :後足部
20a :内部空間
20b :履き口
20c :中央開口部
20g :アッパー踵部
22 :内足部
24 :外足部
30 :紐状部材
40 :紐状部材
41 :固定部
図1
図2
図3
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図5
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