(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036007
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】金属帯の表面検査装置、表面検査方法、及び金属帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G01N21/892 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140695
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB02
2G051BB01
2G051BB07
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA07
2G051CB01
2G051EA16
2G051ED08
(57)【要約】
【課題】 金属帯の欠陥を精度よく検出することが可能な表面欠陥装置を提供する。
【解決手段】 金属帯の表面検査装置は、一の方向に搬送される金属帯に向けて光軸が配されている複数の発光素子及び、前記金属帯に向けて光軸が配されかつ、前記複数の発光素子と対となるように設けられている複数の撮像素子を有する撮像ユニットと、前記撮像ユニットが生成した撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する判定部と、を有する。前記複数の発光素子の各々は、互いに識別可能な波長の出射光を出射しかつ、前記出射光の照射範囲が前記金属帯の幅方向を含むように設けられる。前記複数の撮像素子の各々は、前記対となる発光素子の前記照射範囲を含むように撮像範囲が設定される。前記撮像範囲の各々は、前記金属帯の幅方向に沿ったライン状をなしかつ、前記一の方向となす角度が互いに異なるように設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に搬送される金属帯に向けて光軸が配されている複数の発光素子及び、前記金属帯に向けて光軸が配されかつ、前記複数の発光素子と対となるように設けられている複数の撮像素子を有する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットが生成した撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する判定部と、を有し、
前記複数の発光素子の各々は、互いに識別可能な波長の出射光を出射しかつ、前記出射光の照射範囲が前記金属帯の幅方向を含むように設けられ、
前記複数の撮像素子の各々は、前記対となる発光素子の前記照射範囲を含むように撮像範囲が設定され、
前記撮像範囲の各々は、前記金属帯の幅方向に沿ったライン状をなしかつ、前記一の方向となす角度が互いに異なるように設けられている、金属帯の表面検査装置。
【請求項2】
前記対となる撮像素子の前記光軸が前記一の方向になす角度は、前記対となる発光素子の前記光軸が前記一の方向になす角度と等しい、請求項1に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項3】
前記対となる撮像素子の前記光軸が前記一の方向になす角度は、前記対となる発光素子の前記光軸が前記一の方向になす角度と異なる、請求項1に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記撮像範囲の前記一の方向に対してなす角度が基準角度に近づくように、前記撮像素子が撮像した撮像データを補正する角度補正部を含み、
前記判定部は、前記角度補正部によって補正された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、請求項1に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記撮像範囲の前記一の方向に対してなす角度が基準角度に近づくように、前記撮像素子が撮像した撮像データを補正する角度補正部を含み、
前記判定部は、前記角度補正部によって補正された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、請求項2に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記撮像範囲の前記一の方向に対してなす角度が基準角度に近づくように、前記撮像素子が撮像した撮像データを補正する角度補正部を含み、
前記判定部は、前記角度補正部によって補正された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、請求項3に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項7】
前記判定部は、一の前記撮像データに含まれている前記金属帯の部位と、他の前記撮像データに含まれている前記金属帯の前記部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する位置補正部を含み、
前記判定部は、前記位置補正部によって選択された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、請求項4に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項8】
前記判定部は、一の前記撮像データに含まれている前記金属帯の部位と、他の前記撮像データに含まれている前記金属帯の前記部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する位置補正部を含み、
前記判定部は、前記位置補正部によって選択された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、請求項5に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項9】
前記判定部は、一の前記撮像データに含まれている前記金属帯の部位と、他の前記撮像データに含まれている前記金属帯の前記部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する位置補正部を含み、
前記判定部は、前記位置補正部によって選択された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、請求項6に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項10】
前記撮像素子の各々は、少なくとも2つの前記撮像範囲が1点で交わるように配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記撮像素子の前記撮像範囲は、前記金属帯の幅方向に延びる、請求項1~9のいずれか1項に記載の金属帯の表面検査装置。
【請求項12】
金属帯を一の方向に搬送する搬送ステップと、
前記金属帯の幅方向に沿って設定された複数の照射範囲に向けて、互いに識別可能な波長の複数の出射光を照射する照射ステップと、
前記照射範囲と対となるように設定されかつ、前記金属帯の幅方向に沿って延びるライン状の複数の撮像範囲を、前記一の方向に対して互いに異なる角度をなすように設定する設定ステップと、
前記撮像範囲と対となる前記照射範囲を含むように撮像された前記金属帯の撮像データを、前記設定ステップで設定された前記撮像範囲に応じて生成する撮像データ生成ステップと、
複数の前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する判定ステップと、を含む金属帯の表面検査方法。
【請求項13】
前記判定ステップは、
前記撮像範囲の各々が前記一の方向になす角度を取得する角度情報取得ステップと、
前記角度情報取得ステップにおいて取得された前記角度が基準角度に近づくように前記撮像データを補正する角度補正ステップと、を含む請求項12に記載の表面検査方法。
【請求項14】
前記判定ステップは、前記一の前記撮像データに含まれている前記金属帯の部位と、他の前記撮像データに含まれている前記金属帯の前記部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する位置補正ステップと、を含む請求項13に記載の表面検査方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の金属帯の表面検査装置を用いて金属帯を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯の表面欠陥の検査を行うための金属帯の表面検査装置、表面検査方法、及び金属帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄鋼板などに代表される金属帯は、様々な工程を経て製造される。金属帯の製造工程は、例えば、まず製鋼工程でスラブが鋳造される。スラブは、熱間圧延工程で熱延金属帯となる。熱延金属帯は、酸洗工程において表面の酸化物が除去される。酸化物が除去された熱延金属帯は、冷間圧延工程で所定の板厚まで冷間圧延が行われる。これらの加工工程において硬質化された金属帯は、焼鈍工程で軟質化される。焼鈍工程が行われた金属帯は、めっき、調質圧延等の複数の処理が行われる。
【0003】
これらの工程間では、金属帯の欠陥が検査される。金属帯の欠陥が検出されると、その欠陥の程度に応じた処置がなされる。例えば、重篤な欠陥の場合、マーキング処置やその欠陥を除去する等の処置が行われる。また、軽微な欠陥の場合、作業者に対して軽微な欠陥が検出されたことを通知することが行われる。さらに、ごく軽微な欠陥の場合、欠陥として検出されないような設定が行われる。
【0004】
金属帯の製造工程では、欠陥が検出された際にその重要度の程度も判別されている。例えば、ロール等に起因する疵が金属帯に転写される場合に、表面に凹凸が発生する凹凸状欠陥が発生する。このような凹凸状欠陥は、ロールの回転ごとに金属帯に転写されるため、品質への影響が大きくなる。そのため、凹凸状欠陥は、他の種類の欠陥に比べて重要度が高めに設定されている。このような凹凸状欠陥を高精度に検出するために様々な取り組みがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、3つ以上の線光源からのそれぞれ波長の異なる光をそれぞれ異なる方向から平行照射し、当該照射されたラインをラインスキャンカメラでスキャンことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、1つのラインスキャンカメラでスキャンが行われている。すなわち、当該スキャンカメラの撮像情報のみで検査を行うため、凹凸状欠陥の微細な形状を得ることが難しい問題がある。このため、例えば、緩やかな傾斜を有する凹凸状欠陥に対して検出精度が低下する問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、金属帯の表面に形成された凹凸状の欠陥を精度よく検出することが可能な金属帯の表面検査装置、金属帯の表面検査方法及び、金属帯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0010】
[1]
一の方向に搬送される金属帯に向けて光軸が配されている複数の発光素子及び、前記金属帯に向けて光軸が配されかつ、前記複数の発光素子と対となるように設けられている複数の撮像素子を有する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットが生成した撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する判定部と、を有し、
前記複数の発光素子の各々は、互いに識別可能な波長の出射光を出射しかつ、前記出射光の照射範囲が前記金属帯の幅方向を含むように設けられ、
前記複数の撮像素子の各々は、前記対となる発光素子の前記照射範囲を含むように撮像範囲が設定され、
前記撮像範囲の各々は、前記金属帯の幅方向に沿ったライン状をなしかつ、前記一の方向となす角度が互いに異なるように設けられている、金属帯の表面検査装置。
[2]
前記対となる撮像素子の前記光軸が前記一の方向になす角度は、前記対となる発光素子の前記光軸が前記一の方向になす角度と等しい、[1]に記載の金属帯の表面検査装置。
[3]
前記対となる撮像素子の前記光軸が前記一の方向になす角度は、前記対となる発光素子の前記光軸が前記一の方向になす角度と異なる、[1]に記載の金属帯の表面検査装置。
[4]
前記判定部は、前記撮像範囲の前記一の方向に対してなす角度が基準角度に近づくように、前記撮像素子が撮像した撮像データを補正する角度補正部を含み、
前記判定部は、前記角度補正部によって補正された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、[1]~[3]のいずれかに記載の金属帯の表面検査装置。
[5]
前記判定部は、一の前記撮像データに含まれている前記金属帯の部位と、他の前記撮像データに含まれている前記金属帯の前記部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する位置補正部を含み、
前記判定部は、前記位置補正部によって選択された前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する、[4]に記載の金属帯の表面検査装置。
[6]
前記撮像素子の各々は、少なくとも2つの前記撮像範囲が1点で交わるように配置されている、[1]~[5]のいずれかに記載の金属帯の表面検査装置。
[7]
少なくとも1つの前記撮像素子の前記撮像範囲は、前記金属帯の幅方向に延びる、[1]~[6]のいずれかに記載の金属帯の表面検査装置。
[8]
金属帯を一の方向に搬送する搬送ステップと、
前記金属帯の幅方向に沿って設定された複数の照射範囲に向けて、互いに識別可能な波長の複数の出射光を照射する照射ステップと、
前記照射範囲と対となるように設定されかつ、前記金属帯の幅方向に沿って延びるライン状の複数の撮像範囲を、前記一の方向に対して互いに異なる角度をなすように設定する設定ステップと、
前記撮像範囲と対となる前記照射範囲を含むように撮像された前記金属帯の撮像データを、前記設定ステップで設定された前記撮像範囲に応じて生成する撮像データ生成ステップと、
複数の前記撮像データに基づいて前記金属帯の欠陥を判定する判定ステップと、を含む金属帯の表面検査方法。
[9]
前記判定ステップは、
前記撮像範囲の各々が前記一の方向になす角度を取得する角度情報取得ステップと、
前記角度情報取得ステップにおいて取得された前記角度が基準角度に近づくように前記撮像データを補正する角度補正ステップと、を含む[8]に記載の表面検査方法。
[10]
前記判定ステップは、前記一の前記撮像データに含まれている前記金属帯の部位と、他の前記撮像データに含まれている前記金属帯の前記部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する位置補正ステップと、を含む[9]に記載の表面検査方法。
[11]
[1]~[6]のいずれかに記載の金属帯の表面検査装置を用いて金属帯を製造する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る金属帯の表面検査装置によれば、一の方向に対する撮像範囲がなす角度が互いに異なる複数の撮像データであってかつ、互いに識別可能な波長の出射光が照射された被検査物の複数の撮像データを用いて欠陥の有無を判定することができる。これにより、表面検査装置は、凹凸状欠陥の形状に関する詳細なデータを取得することができるため、金属帯の凹凸状欠陥を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】金属帯の表面検査装置の構成を示す説明図である。
【
図3】
図2の第1の発光素子と、第1の撮像素子と、の配置関係を示す説明図である。
【
図4】
図2の第1の発光素子と、第1の撮像素子と、他の配置関係を示す説明図である。
【
図5】
図3の第1の発光素子と、第1の撮像素子と、他の配置関係を示す説明図である。
【
図6】金属帯の上方から見た第1の発光素子及び、第1の撮像素子の配置の態様を示す説明図である。
【
図7】第1の発光素子~第3の発光素子及び、第1の撮像素子~第3の撮像素子の配置例を示す説明図である。
【
図8】金属帯における照射範囲の各々の態様を示す説明図である。
【
図9】金属帯における照射範囲の各々の他の態様を示す説明図である。
【
図10】金属帯における照射範囲の各々の他の態様を示す説明図である。
【
図12】
図11の判定ステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【
図13】第1の撮像素子が所定の期間において生成した撮像データと、金属帯の表面の位置と、を対応付けた模式図である。
【
図14】第1の撮像素子が所定の期間において生成した撮像データと、金属帯の表面の位置と、を対応付けた模式図である。
【
図15】所定時刻において取得した撮像データを金属帯の位置と対応付けた例である。
【
図16】角度補正部による角度補正の例を示す説明図である。
【
図17】
図12の位置補正ステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【
図18】位置補正部による複数の補正データの位置補正の態様を示している。
【
図19】凹凸状欠陥の態様を示す金属帯の断面図である。
【
図21】金属帯の平坦部位において正反射光を受光している態様を示す説明図である。
【
図22】金属帯の負の傾斜部位において正反射光が反射している態様を示す説明図である。
【
図23】金属帯の正の傾斜部位において正反射光が反射している態様を示す説明図である。
【
図24】
図19の凹凸状欠陥の正反射光を撮像した撮像データの一例を示す説明図である。
【
図25】金属帯の平坦部位において乱反射光を受光している態様を示す説明図である。
【
図26】金属帯の負の傾斜部位において乱反射光が反射している態様を示す説明図である。
【
図27】金属帯の正の傾斜部位において乱反射光が反射している態様を示す説明図である。
【
図28】
図19の凹凸状欠陥の乱反射光を撮像した撮像データの一例を示す説明図である。
【
図29】凹凸状欠陥の態様を示す金属帯の断面図である。
【
図31】3つの撮像データを合成した合成データを示す説明図である。
【
図32】凹凸状欠陥の撮像データの他の一例である。
【
図33】3つの撮像データを合成した合成データの他のデータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、金属帯の表面検査装置の構成を示している。金属帯10は、
図1において示されている矢印の方向である一の方向Dに搬送される。金属帯10は、例えば、金属帯10の生産ラインに設けられている搬送部20によって搬送される。表面検査装置100は、このように一の方向Dに搬送される金属帯10の欠陥を検出する。
【0014】
尚、搬送部20は、金属帯10の生産ラインに設けられている搬送ローラである。本実施形態においては、搬送部20は、一の方向Dに沿って設けられた2つの搬送ローラにより構成されている。
【0015】
表面検査装置100は、任意の製造工程がなされた金属帯10の表面の欠陥を検出するために用いることができる。具体的には、表面検査装置100は、熱間圧延工程、酸洗工程、冷間圧延工程、焼鈍工程、めっき工程、調質圧延工程の各工程及び、金属帯の品質保証を行う最終検査工程のうち、いずれかの製造工程がなされた金属帯10に対して用いることができる。表面検査装置100は、これらの工程の設備における入側から出側にかけての任意の位置に設置することができる。
【0016】
金属帯10としては、特には限定されないが、例えば、薄鋼板を用いることができる。より具体的には、検査対象の金属帯10として、熱間圧延工程以降の任意の工程、例えば、酸洗工程、冷間圧延工程、焼鈍工程、めっき工程、調質圧延工程の各工程及び、最終検査工程等の工程がなされた薄鋼板を用いることができる。尚、金属帯10としての薄鋼板は、熱間圧延工程以降ではコイル状に巻かれた状態で上記の工程が実行される。
【0017】
金属帯10は、コイル状の薄鋼板に限られず、例えば、厚鋼板等のシート状で上記等の工程が実行されるものであってもよい。また、金属帯10は、鉄鋼材料に限定されることはなく、アルミニウムや銅等を含む金属材料であってもよい。
【0018】
金属帯10の表面検査装置100は、金属帯10の表面を撮像する撮像ユニット31と、撮像ユニット31が撮像した撮像データに基づいて欠陥を判定する判定部32と、を有する。
【0019】
判定部32は、例えば、凹部、凸部又は、これらの組み合わせで構成される凹凸状欠陥を判定することができる。凹凸状欠陥としては、例えば、目視により凹凸形状を認識することが可能な欠陥が挙げられる。
【0020】
具体的には、金属帯10の表面から垂直な方向からみて、直径0.1~1.0mm程度の円状、楕円状、筋状又は不規則形状の凹凸状欠陥を検査対象とすることができる。また、凹凸状欠陥は、例えば、表面からの深さ(又は高さ)が概ね5~1000μm程度のものを検査対象とすることができる。
【0021】
尚、凹凸状欠陥は、慣用的にはさらに細かく分類されている。具体的には、デンツ、ダルハゲ、圧着疵、掻き疵等がある。デンツは、金属帯10が何らかの固い異物がライン通板途中で巻き込まれた際に凹状に生成される欠陥である。
【0022】
ダルハゲとは、ダル加工が施された圧延ロールによる圧延工程(冷間圧延工程や調質圧延工程)において、金属帯10に圧延ロールの凹凸(ダル目)が転写されない部分の欠陥である。ダルハゲは、圧延ロールの摩耗や圧延ロールへの異物の付着等が原因で生じる。
【0023】
圧着疵とは、コイル状の金属帯10に対してバッチ焼鈍を行う際、凝着された金属帯10の層間の一部が引き剥がされることで生じる欠陥である。掻き疵とは、金属帯10が設備部品等の異物と接触して、金属帯10の表面に摺動痕として生成される欠陥である。
【0024】
このように金属帯10の表面に発生する凹凸状欠陥は、発生原因に応じて多様な形状を呈する。このため、その発生原因に対応した適切な対策を講じる上でも、判定部32によって凹凸状欠陥の形状を判別することが重要である。
【0025】
図2は、金属帯10の表面検査装置100の構成を示している。
図2に示すように、撮像ユニット31は、第1の発光素子311、第2の発光素子312、第3の発光素子313を有する。
【0026】
第1の発光素子311、第2の発光素子312及び、第3の発光素子313の各々は、互いに識別可能な波長の出射光を出射可能である。より具体的には、第1の発光素子311、第2の発光素子312及び、第3の発光素子313の各々は、例えば、互いに異なる色調で出射光を出射可能である。
【0027】
本実施形態においては、第1の発光素子311は、例えば、435~500nmの任意の帯域にピークを有する波長の光、すなわち、青色の光を出射可能である。第2の発光素子312は、例えば、600~800nmの任意の帯域にピークを有する波長の光、すなわち、赤色の光を出射可能である。第3の発光素子313は、例えば、500~580nmの任意の帯域にピークを有する波長の光、すなわち、緑色の光を出射可能である。
【0028】
尚、各々の出射光は、後述する撮像素子によって識別可能な態様であればよい。例えば、第1の発光素子311~第3の発光素子313の各々が同程度の色調の出射光を出射した場合であっても、各々の出射光のピークの帯域が異なりかつ、各々の当該帯域がBPF(Band Pass Filter)によって分離可能であればよい。このようにすることで、後述の撮像素子が各々の出射光を識別することができるからである。
【0029】
第1の発光素子311、第2の発光素子312及び、第3の発光素子313の各々は、例えば、所定の方向に沿って列状に配列されているLEDを用いることができる。例えば、第1の発光素子311、第2の発光素子312及び、第3の発光素子313の各々は、一の方向Dからみて金属帯10の幅方向に沿って列状に配列されているLEDを用いることができる。
【0030】
撮像ユニット31は、第1の撮像素子314、第2の撮像素子315、第3の撮像素子316を有する。各々の撮像素子314~316は、各々の発光素子311~313と対となるように設けられている。
【0031】
具体的には、第1の撮像素子314は、第1の発光素子311と対となるように設けられている。第1の撮像素子314は、第1の発光素子311から出射された出射光を選択的に受光可能である。第1の撮像素子314は、例えば、当該出射光に応じた帯域を通過するBPFによって第1の発光素子311から出射された出射光を選択的に受光可能である。
【0032】
第2の撮像素子315は、第2の発光素子312と対となるように設けられている。第2の撮像素子315は、第2の発光素子312から出射された出射光を選択的に受光可能である。第2の撮像素子315は、例えば、当該出射光に応じた帯域を通過するBPFによって第2の発光素子312から出射された出射光を選択的に受光可能である。
【0033】
第3の撮像素子316は、第3の発光素子313と対となるように設けられている。第3の撮像素子316は、第3の発光素子313から出射された出射光を選択的に受光可能である。第3の撮像素子316は、例えば、当該出射光に応じた帯域を通過するBPFによって第3の発光素子313から出射された出射光を選択的に受光可能である。
【0034】
各々の第1の撮像素子314~第3の撮像素子316としては、例えば、CCDイメージングセンサ素子、CMOSイメージング素子が搭載されたラインスキャンカメラを用いることができる。
【0035】
ラインスキャンカメラは、他のイメージングセンサよりもスキャンレートが高いため、金属帯10で反射した反射光を高速で撮像することができる。ラインスキャンカメラのスキャンレートは、例えば、金属帯の製造ラインに対しては10MHz以上であることが好ましく、50MHz以上がより好ましい。ラインスキャンカメラのスキャンレートは、640MHz程度を上限とするとよい。このような設定値であれば金属帯10の欠陥を判別するために十分な撮像データを得ることができる。
【0036】
金属帯10の表面検査装置100は、撮像ユニット31が生成した撮像データに基づいて金属帯10の欠陥を判定する判定部32を有する。
【0037】
判定部32は、撮像ユニット31からの撮像データの入力を受けつけるインターフェースである入力部321を有する。
【0038】
判定部32は、撮像ユニット31から送信された撮像データ等を格納する記憶部322を有する。記憶部322としては、特には限定されないが、例えば、HDD(hard disk drive)、SSD(solid state drive)等の不揮発性メモリを用いることができる。
【0039】
判定部32は、判定結果を表示させる表示部33に表示データを出力するインターフェースである出力部323を有する。
【0040】
判定部32は、金属帯10の表面検査装置100の全体を制御する制御部324を有する。制御部324は、図示しないCPU、ROM、RAMからなるコンピュータによって構成されている。制御部324は、入力部321から入力された撮像データに対して補正を行う角度補正部324aを有する。制御部324は、複数の撮像データから処理に適した撮像データを選択する位置補正部324bを有する。制御部324は、撮像データに基づいて欠陥を判別する欠陥判別部324c有する。角度補正部324a、位置補正部324b及び、欠陥判別部324cは、ROMに格納されたソフトウェアをCPUが読み出すことにより実行される。
【0041】
角度補正部324aは、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の各々が撮像した撮像データを補正する。具体的には、角度補正部324aは、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の各々の配置によって定まる撮像範囲を特定し、当該撮像範囲の各々が一の方向Dに対してなす角度が予め定めた基準角度となるように、撮像データを補正する。
【0042】
位置補正部324bは、一の撮像データに含まれている金属帯の部位と、他の撮像データに含まれている金属帯の部位と、が合致する撮像データを複数の前記撮像データの中から選択する。より具体的には、位置補正部324bは、複数の撮像データにおいて、金属帯10の特定の部位が含まれているデータを選択する。位置補正部324bは、例えば、角度補正がされた複数の撮像データに対して位置補正を行うことにより、一の撮像データに含まれている金属帯10の特定の部位と、他の撮像データの当該特定の部位の撮像データ上の位置を一致させることができる。
【0043】
これにより、撮像ユニットが取得した撮像データを、金属帯の面内における同一位置のデータとして対応付ける。すなわち、金属帯の表面における同一の位置に対して、異なる波長帯の光を金属帯の搬送方向に対して異なる角度で照射する場合の反射光の情報を取得することができる。
【0044】
表面検査装置100は、位置補正部324bを備えることにより、第1の発光素子311~第3の発光素子313の各々の照射範囲を合わせるための位置関係の調整が不要となる。すなわち、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の撮像範囲の調整を行うことなく、金属帯10の同一の部位が撮像された撮像データを判定に用いることが可能となる。
【0045】
したがって、表面検査装置100は、位置補正部324bを備えることにより、第1の発光素子311~第3の発光素子313及び、これらと対となる第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の配置の自由度を高めることができる。
【0046】
欠陥判別部324cは、撮像データに基づいて検査対象に凹凸状の欠陥が形成されているか否かを判定する。欠陥判別部324cは、例えば、所定の閾値以上のコントラストを検出した場合を検査対象に凹凸状の欠陥が形成されていると判別することができる。
【0047】
表示部33は、判定部32から出力された判定結果を表示する。表示部33は、例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイを用いることができる。また、表示部33は、音声を出力するスピーカーを有していてもよい。すなわち、表示部33は、受信した判定結果に応じた音声で作業者に判定結果を知らせるようにしてもよい。
【0048】
図3~5は、第1の発光素子311と、第1の撮像素子314と、の配置関係を示している。具体的には、第1の撮像素子314は、第1の発光素子311から出射された出射光が金属帯10の表面で反射した反射光を撮像可能な位置に配置される。
【0049】
図3に示すように、第1の撮像素子314及び、第1の発光素子311は、搬送部20の上方からみて互いに対向するように配置されている。第1の発光素子311の光軸AX1は、金属帯10の表面に垂直な方向の軸AX2と角度β1をなしている。また、第1の撮像素子314の光軸AX3は、金属帯10の表面に垂直な方向の軸AX2と角度β2をなしている。
図3に示されている例では、角度β1は角度β2と同程度となっている。
【0050】
言い換えれば、対となる第1の発光素子311の光軸AX1が一の方向Dになす角度と、対となる第1の撮像素子314の光軸AX3が一の方向Dになす角度と、が同程度となる位置に配されている。このように、第1の撮像素子314を配置することで、金属帯10の凹凸状欠陥を鮮明に撮像することができる。
【0051】
このように第1の撮像素子314は、第1の発光素子311の正反射光を撮像可能な位置に配置することができる。言い換えれば、
図3に示す例では、第1の撮像素子314の撮像範囲は、正反射光を撮像可能に設定されている。
【0052】
また、
図4に示されている例では、第1の発光素子311の光軸AX1が軸AX2となす角度β1は、第1の撮像素子314の光軸AX3が軸AX2となす角度β2よりも小さい。
【0053】
言い換えれば、対となる第1の発光素子311の光軸AX1が一の方向Dになす角度と、対となる第1の撮像素子314の光軸AX3が一の方向Dになす角度と、が互いに異なる位置に配されているようにしてもよい。このように、第1の撮像素子314を配置することで、金属帯10の凹凸状欠陥を鮮明に撮像することができる。
【0054】
凹凸状欠陥の傾斜面で反射した反射光は、角度β1と角度β2との差に応じてその減衰挙動が変化する。したがって、判定部32は、凹凸状欠陥の傾斜部の輪郭形状を含む詳細な情報を得ることができ、凹凸状欠陥を詳細に判別することができる。尚、第1の撮像素子314が受光する反射光の光量を十分なものとするために、角度β1と角度β2との差は15~45°であることが好ましい。
【0055】
このように、第1の撮像素子314は、第1の発光素子311の乱反射光のうち前方散乱を撮像可能な位置に配置するようにしてもよい。言い換えれば、第1の撮像素子314の撮像範囲は、乱反射光のうち前方散乱を撮像可能に設定されているようにしてもよい。
【0056】
さらに、
図5に示されている例では、第1の発光素子311の光軸AX1が軸AX2となす角度β1は、第1の撮像素子314の光軸AX3が軸AX2となす角度β2よりも小さくかつ、
図4に示した例よりも小さい。
【0057】
このように第1の撮像素子314は、例えば、第1の発光素子311の乱反射光のうち後方散乱を撮像可能な位置に配置されるようにしてもよい。言い換えれば、第1の撮像素子314の撮像範囲は、乱反射光のうち後方散乱を撮像可能に設定されているようにしてもよい。
【0058】
このように、第1の撮像素子314を配置することで、
図4に示した例とは異なる態様で反射光を受光することができるため、金属帯10の凹凸状欠陥の情報を多角的に得ることができる。
【0059】
尚、第2の発光素子312及び、第2の撮像素子315は、第1の発光素子311及び、第1の撮像素子314と同様の態様で配置してもよいし、異なる態様で配置してもよい。また、第3の発光素子313及び、第3の撮像素子316は、第1の発光素子311及び第2の発光素子312並びに、第1の撮像素子314及び第2の撮像素子315と同様の態様で配置してもよいし、異なる態様で配置してもよい。すなわち、第1の発光素子311、第2の発光素子312、第3の発光素子313の各々は、搬送部20に向けて光軸が配されかつ、光軸の各々と一の方向とがなす角度が互いに異なるように設けられていてもよい。
【0060】
図6は、搬送部20の上方から見た第1の発光素子311及び、第1の撮像素子314の配置の態様を示している。
図6に示すように、搬送部20の上方から見た場合に、第1の発光素子311から出射された出射光は、金属帯10の幅方向を含むように金属帯10に照射される。本実施形態においては、第1の発光素子311から出射された出射光は、金属帯10の幅方向に亘って照射される。
【0061】
すなわち、本実施形態においては、搬送部20の上方から見た場合に、出射光の照射範囲AR1が金属帯10の表面においてその幅方向に亘って形成される。具体的には、出射光の照射範囲AR1は、金属帯10の幅方向に沿って延びるライン状に形成されている。出射光の照射範囲AR1は、一の方向Dと角度αをなしている。尚、角度αは、予め設定しておくとよい。また、角度α、角度β1及び、角度β2に基づいて、第1の発光素子311及び、第1の撮像素子314の位置関係を特定することができる。
【0062】
第1の撮像素子314は、出射光の照射範囲AR1を撮像範囲に含むように設置される。したがって、第1の撮像素子314は、照射範囲AR1において反射した反射光を受光可能に設けられている。本実施形態においては、照射範囲AR1と撮像範囲とは同一であるため、以後同一の符号を付して説明する。
【0063】
尚、第2の発光素子312及び、第2の撮像素子315並びに、第3の発光素子313及び、第3の撮像素子316は、第1の発光素子311及び、第1の撮像素子314と同様に配置することができる。
【0064】
図7は、第1の発光素子311~第3の発光素子313及び、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の配置例を示している。
図7において、第1の発光素子311の照射範囲AR1が示されている。第2の発光素子312の照射範囲AR2が示されている。第3の発光素子313の照射範囲AR3が示されている。
【0065】
第1の発光素子311~第3の発光素子313及び、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316は、例えば、照射範囲AR1~AR3のうちの少なくとも2つが互いに交わるように配置されていることが好ましい。言い換えれば、第1の発光素子311~第3の発光素子313の各々は、少なくとも2つの出射光の照射範囲が1点で交わるように配置されていることが好ましい。
【0066】
図7に示す態様のように、第1の発光素子311~第3の発光素子313の各々は、3つの出射光の照射範囲が1点で交わるように配置されていることがより好ましい。
図7においては、照射範囲AR1~AR3は、一の方向Dからみて金属帯10の幅方向の中央において互いに交差している。
【0067】
尚、第1の発光素子311~第3の発光素子313及び、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316は、実施の態様に応じて自由に設けることができる。
【0068】
図8~10は、金属帯10における照射範囲AR1~AR3の各々を示している。例えば、
図8に示すように、照射範囲AR1~AR3の各々が互いに交点を形成しないように第1の発光素子311~第3の発光素子313を配置してもよい。
【0069】
また、例えば、
図9に示すように、照射範囲AR1~AR3の各々が1つの交点を有するようにしてもよい。
図9においては、照射範囲AR2、AR3が一の方向Dからみて金属帯10の幅方向の中央において互いに交差している。
【0070】
さらに、
図10に示すように、照射範囲AR1~AR3の各々が2つの交点を有するようにしてもよい。
図10においては、照射範囲AR1、AR3が一の方向Dからみて金属帯10の幅方向の一端側において互いに交差している。また、照射範囲AR2、AR3が一の方向Dからみて金属帯10の幅方向の他端側において互いに交差している。尚、照射範囲AR1、AR3の交点は、照射範囲AR2、AR3の交点よりも一の方向Dにおいて上流側に位置している。
【0071】
照射範囲AR1~AR3の各々は、例えば、一の方向Dに対してなす角度が互いに異なるように設定することができる。照射範囲AR1~AR3の各々が一の方向Dに対してなす角度は、予め設定され記憶部322に格納されているとよい。
【0072】
尚、上述のように本実施形態においては、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の撮像範囲は、照射範囲AR1~AR3と合致する。このため、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の撮像範囲は、照射範囲AR1~AR3と同一の符号を用いて説明する。また、撮像範囲AR1~AR3の各々が一の方向Dに対してなす角度は、予め設定され記憶部322に格納されているとよい。
【0073】
図7に示す態様では、照射範囲AR1が一の方向Dに対してなす角度は、90°となっている。照射範囲AR2が一の方向Dに対してなす角度は、135°となっている。照射範囲AR3が一の方向Dに対してなす角度は、45°となっている。言い換えれば、第1の発光素子311の照射範囲AR1は、一の方向Dから見て金属帯10の幅方向に延びるライン状である。
【0074】
尚、第1の発光素子311~第3の発光素子313及び、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316のいずれかが一の方向Dにおいて上流側に位置してもよい。
【0075】
第1の発光素子311~第3の発光素子313は、例えば、それぞれRGBの互いに異なる波長帯から選択された光をライン状に出射する。本実施形態においては、第1の発光素子311は、青色の波長帯の光を出射する。
【0076】
第1の撮像素子314は、第1の発光素子311から出射された青色の波長帯の出射光を撮像する。第2の発光素子312は、赤色の波長帯の光を出射する。第2の撮像素子315は、第2の発光素子312から出射された赤色の波長帯の出射光を撮像する。第3の発光素子313は、緑色の波長帯の光を出射する。第3の撮像素子316は、第3の発光素子313から出射された緑色の波長帯の出射光を撮像する。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る金属帯10の表面検査装置100によれば、互いに識別可能な波長の出射光の照射範囲を含むように撮像範囲が設定されていることにより、多角的な視点で金属帯10の欠陥を検査することが可能となる。
【0078】
また、金属帯10の表面検査装置100は、角度補正部324a及び、位置補正部324bのうち少なくとも一方を有することにより、金属帯10の表面における同一位置のデータであるかのように各々の撮像データを処理することができる。これにより、欠陥判別部324cは、より詳細なデータにより凹凸状欠陥の判別を行うことが可能となる。
【0079】
金属帯10の表面検査装置100は、複数の工程からなる金属帯10の製造工程において、少なくとも1の工程がなされた後に用いられるとよい。言い換えれば、金属帯10は、金属帯10の表面検査装置100が使用されて製造されるとよい。
【0080】
尚、金属帯10の製造工程としては、例えば、スラブが鋳造される製鋼工程、スラブが熱延金属帯となる熱間圧延工程、熱延金属帯の表面の酸化物が除去される酸洗工程、酸化物が除去された熱延金属帯が所定の板厚まで冷間圧延される冷間圧延工程が挙げられる。また製造工程としては、これらの工程の他、金属帯10を軟質化させる焼鈍工程、めっき、調質圧延等の複数の工程が挙げられる。
【0081】
以上で説明した金属帯10の表面検査装置100を用いた金属帯10の表面検査方法に説明する。
図11は、金属帯10の表面検査のフロー図である。金属帯10の表面検査方法のルーティンR1は、例えば、搬送部20の開始の検知をトリガーとして開始される。
【0082】
図11に示すように、金属帯10の表面検査方法のルーティンR1が開始されると、制御部324は、搬送部20を稼働させることにより、金属帯10を一の方向Dに搬送する(ステップS101)。
【0083】
ステップS101の搬送ステップが行われると、制御部324は、互いに識別可能な波長で第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射光を金属帯10に照射させる(ステップS102)。
【0084】
ステップS102の照射ステップにおいては、制御部324は、金属帯10の幅方向に沿って設定された照射範囲AR1~AR3に向けて、各々の出射光を出射させる。制御部324は、例えば、第1の発光素子311から青色の出射光を出射させる。制御部324は、第2の発光素子312から赤色の出射光を出射させる。制御部324は、第3の発光素子313から緑色の出射光を出射させる。
【0085】
制御部324は、照射範囲AR1~AR3と対となるように設定されかつ、金属帯10の幅方向に沿って延びるライン状の複数の撮像範囲AR1~AR3を、一の方向Dに対して互いに異なる角度をなすように設定する(ステップS103)。
【0086】
ステップS103の設定ステップは、表面検査方法のルーティンR1が開始される以前に予め行われてもよい。制御部324は、例えば、記憶部322に記憶された撮像範囲AR1~AR3を読み出すことにより、撮像範囲AR1~AR3を設定してもよい。
【0087】
第1の撮像素子314~第3の撮像素子316は、受光した特定の帯域の光を用いて撮像データを生成する(ステップS104)。具体的には、第1の撮像素子314は、撮像範囲AR1と対となる照射範囲AR1を含むように撮像された金属帯10の撮像データを生成する。第2の撮像素子315は、撮像範囲AR2と対となる照射範囲AR2を含むように撮像された金属帯10の撮像データを生成する。第3の撮像素子316は、撮像範囲AR3と対となる照射範囲AR3を含むように撮像された金属帯10の撮像データを生成する。撮像ユニット31は、ステップS103の撮像データ生成ステップにおいて生成された各々の撮像データを判定部32に送信する。
【0088】
制御部324は、撮像データを受信すると記憶部322に時系列に従って保存する。制御部324は、受信した撮像データに基づいて金属帯10の欠陥を判定する(ステップS105)。
【0089】
ステップS105の判定ステップは、サブルーチンR2として実行される。
図12は、判定ステップのサブルーチンR2を示している。
図12に示すように、制御部324は、記憶部322を参照して、撮像範囲AR1~AR3が一の方向Dに対してなす角度を取得する(ステップS201)。
【0090】
角度補正部324aは、ステップS201の角度情報取得ステップにおいて取得された角度が基準角度に近づくように撮像データを補正する(ステップS202)。
【0091】
例えば、
図6に示した例では、第1の撮像素子314は、一の方向Dに対して角度α分傾斜した撮像データを生成する。また、
図7に示す例では、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316は、各々が一の方向Dに対して互いに異なる角度で傾斜した撮像データを生成する。
【0092】
ステップS202の角度補正ステップは、角度補正部324aによって、これらの撮像データを基準角度に近づくように補正する。角度補正部324aは、例えば、撮像範囲AR1を基準角度とし、撮像範囲AR2、AR3を当該基準角度に近づくように補正する。
【0093】
図13は、第1の撮像素子314が所定の期間において生成した撮像データと、金属帯10の表面の位置と、を対応付けた模式図である。例えば、時刻t0の撮像データは、一の方向Dからみて金属帯10の幅方向の位置がずれて生成される。具体的には、
図13の下側が、上側よりも一の方向D側にずれた位置で撮像データが生成される。
【0094】
図14は、角度補正部324aにより各時刻における検出データの角度補正を行う態様を模式的に示している。角度補正部324aは、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316が生成した各撮像データのうち、処理対象となる撮像データ(本実施形態においては、第2の撮像素子315及び第3の撮像素子316の撮像データ)を時系列ごとに配置する。角度補正部324aは、当該時系列ごとの撮像データに対して、金属帯10の幅方向の同一位置にとなるように、各画素を移動置させる(再配置データ)。
【0095】
角度補正部324aは、例えば、時刻t0における検出データを板幅中央部の位置の画素を基準とし、当該基準から金属帯10の幅方向に延在するように(図の上下方向に延在するように)画素を移動する。言い換えれば、角度補正部324aは、例えば、撮像範囲AR2、AR3の一の方向Dに対してなす角度が基準角度(90°)となるように、撮像素子が撮像した撮像データを補正する。
【0096】
撮像データは、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316において予め設定されたスキャンレートごとに生成される。すなわち、角度補正部324aは、当該スキャンレート及び搬送部20の搬送速度を記憶部322から読み出すことにより、金属帯10の表面の位置と、撮像データと、を対応付けることができる。
【0097】
また、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の撮像タイミングと、金属帯10の搬送速度とを、同期させて実施するとよい。具体的には、金属帯10が撮像範囲AR1~AR3の各々に到達するタイミングと、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316の撮像タイミングと、同期させるとよい。これらを同期することにより、撮像データが金属帯10の表面に対して一定のピッチで生成されるため、撮像データと金属帯10の表面の位置との対応付けを容易にすることができる。
【0098】
角度補正部324aは、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316から取得される撮像データに対して角度補正を実行することが好ましい。例えば、基準角度を90°とした場合、撮像データは、金属帯10の表面において板幅方向に配列したデータに変換される。
【0099】
尚、例えば、撮像範囲AR1が一の方向Dに対してなす角度が90°である場合は、撮像範囲AR2及び、AR3の撮像データを撮像範囲AR1の撮像データを基準として合わせて補正してもよい。
【0100】
また、角度補正部324aは、
図7,9,10に示すように、それぞれの撮像範囲AR1~AR3によって少なくとも1つの交点が設けられる場合、当該撮像範囲同士の交点を中心に撮像データを回転させるように角度補正を行うことが好ましい。これにより、位置補正処理が不要となるため、補正処理を簡素にすることができる。
【0101】
角度補正部324aは、撮像データの生成タイミングに応じて、補完処理を実行してデータの再配置を行ってもよい。
図15は、所定時刻において取得した撮像データを金属帯10の表面の位置と対応付けた例である。角度補正部324aは、例えば、時刻t1における1例目の位置の画素データa1を基準とする。角度補正部324aは、時刻t1における2例目の位置の画素データb1、3例目の位置の画素データc1、4例目の位置の画素データd1を、基準となる画素データa1の位置に移動させる。すなわち、金属帯10の幅方向において、画素データa1の位置に、画素データb1、c1,d1を移動させる。2列目以降の撮像データは、隣り合う画素をまたぐ形で選択される場合がある。この場合には、角度補正部324aは、隣り合う画素における輝度を、画素の位置が重複する度合いによって重みづけを行い、新たな輝度値としてもよい。
【0102】
例えば、
図15の例では、1例目の位置での画素データa1を基準にする場合に、a1と板幅方向で同一の位置は、2列目の画素b1、b2をまたぐ範囲となる。このとき、1列目の画素と2列目の画素との板幅方向の間隔と、照射範囲の角度αとから、2列目の画素b1、b2に対する重み係数を決定することができる。したがって、2列目の画素b1、b2に重み係数をかけた値の和を、再配置データの輝度値とすることができる。
【0103】
図16は、角度補正部324aによる角度補正の例を示している。
図16は、
図8において示した例と同様に、撮像範囲AR1~AR3が金属帯10において互いに交わらない例を示している。
【0104】
本図においては、角度補正部324aは、90°を基準角度として撮像データを補正する例を説明する。撮像範囲AR1は、角度αが90°であり、板幅方向に延びたライン状である。角度補正部324aは、撮像範囲AR1で得られた撮像データについては補正を要しないので、補正を行わない。
【0105】
角度補正部324aは、撮像範囲AR2が一の方向Dに対してなす角度が90°となるように補正して、仮想撮像範囲AR21を生成する。角度補正部324aは、撮像範囲AR3が一の方向Dに対してなす角度が90°となるように補正して、仮想撮像範囲AR31を生成する。
【0106】
このように角度補正が行われることにより、撮像データの各々の画素値を金属帯10の表面において板幅方向に配列することができる。これにより、金属帯10の長手方向に対して同一の位置における複数の撮像データを生成することができる。
【0107】
位置補正部324bは、例えば、角度補正部324aによって補正された複数の撮像データから、一の撮像データに含まれている金属帯10の部位と、他の撮像データに含まれている金属帯の当該部位と、が合致する撮像データを選択する。(ステップS203)。ステップS203の位置補正ステップは、サブルーチンR3として実行される。
【0108】
図17は、ステップS203の位置補正ステップのサブルーチンR3を示している。
図17に示すように、位置補正部324bは、ステップS202の角度補正ステップによって補正された撮像データである補正データを取得する(ステップS301)。
【0109】
位置補正部324bは、ステップS301の補正データ取得ステップが実行されると、取得した複数の補正データの中から、特定の金属帯10の部位が含まれている撮像データを選択する(ステップS302)。
【0110】
図18は、位置補正部324bによる複数の補正データの位置補正の態様を示している。
図18に示すように、撮像範囲AR1、仮想撮像範囲AR21、31は、一の方向Dに対して90°をなしている。
【0111】
撮像範囲AR1、仮想撮像範囲AR21、31は、互いに一の方向Dにおいてずれて配置されている。すなわち、仮想撮像範囲AR21、31の補正データは、同一の時刻に生成された撮像範囲AR1の撮像データとは、一の方向Dにおいてずれた位置のデータとなっている。
【0112】
位置補正部324bは、撮像範囲AR1で撮像された金属帯10の特定の部位を含む、撮像データを仮想撮像範囲AR21の撮像データの中から選択する。同様に、位置補正部324bは、撮像範囲AR1で撮像された金属帯10の特定の部位を含む、撮像データを仮想撮像範囲AR31の撮像データの中から選択する。これにより、すべての撮像データが、金属帯10の表面において板幅方向に配列され、かつ金属帯の長手方向に対して同一の位置における撮像データの組を生成することができる。
【0113】
尚、位置補正部324bは、例えば、撮像範囲AR1、仮想撮像範囲AR21、31と、基準位置と、の距離を予め記憶部322に記憶しておき、当該距離と搬送部20の搬送速度とを参照することにより位置補正を行うことができる。
【0114】
図19は、凹凸状欠陥の一例を示す金属帯10の断面図である。
図19に示されるように、金属帯10は、表面から窪んで形成された凹凸状欠陥11を有する。
図20は、
図19の凹凸状欠陥11の撮像データの一例である。
図20に示すように、凹凸状欠陥を有する領域は、その周囲の領域よりも濃い(暗い)色彩となっている。
【0115】
欠陥判別部324cは、例えば、位置補正部324bによって補正された撮像データに基づいて、金属帯10に凹凸状欠陥11が形成されているかを判別する。以下、
図19に示す金属帯10が円形の形状の凹凸状欠陥11を有する場合について説明する。
【0116】
図21~23は、第1の撮像素子314の撮像範囲が第1の発光素子311の正反射光を撮像可能な位置に設定されている態様を示している。
図24は、
図21~23の凹凸状欠陥の撮像データの一例である。
【0117】
図21に示されているような凹凸状欠陥が形成されていない平坦な部位では、
図24においては(a)のように一様な明度の撮像データが得られる。
【0118】
図22に示すように、凹凸状欠陥11の傾斜が第1の発光素子311の光軸に沿っている(負の傾斜:金属帯10の搬送方向に対して凹部が深くなる方向の傾斜)場合、凹凸状欠陥11の傾斜に応じて反射光が散乱する。このため、
図24においては(b)のように、第1の撮像素子314が受光する反射光の光量は、平坦な部位で反射した反射光よりも低下する。
【0119】
図23に示すように、凹凸状欠陥11の傾斜が第1の発光素子311の光軸に沿っていない(正の傾斜:金属帯の搬送方向に対して凹部が浅くなる方向の傾斜)場合、凹凸状欠陥11の傾斜に応じて反射光が散乱する。このため、
図24においては(c)のように、第1の撮像素子314が受光する反射光の光量は、平坦な部位で反射した反射光よりも低下する。
【0120】
図24に示すように、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥に相当する領域と、その周囲の領域と、のコントラストが高くなった撮像データに基づいて凹凸状欠陥の有無を判別する。このため、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥を明瞭に検出することができる。
【0121】
図25~27は、第1の撮像素子314の撮像範囲が第1の発光素子311の乱反射光を撮像可能な位置に設定されている態様を示している。
図28は、
図25~27の凹凸状欠陥の撮像データの一例である。
【0122】
図25に示されているような凹凸状欠陥が形成されていない平坦な部位では、
図28においては(a)のように一様な明度の撮像データが得られる。
【0123】
図26に示すように、凹凸状欠陥11の傾斜が第1の発光素子311の光軸に沿っている(負の傾斜:金属帯10の搬送方向に対して凹部が深くなる方向の傾斜)場合、凹凸状欠陥11の傾斜に応じて反射光が散乱する。このため、
図28においては(b)のように、第1の撮像素子314が受光する反射光の光量は、平坦な部位で反射した反射光よりも低下し暗くなる。
【0124】
図27に示すように、凹凸状欠陥11の傾斜が第1の発光素子311の光軸に沿っていない(正の傾斜:金属帯の搬送方向に対して凹部が浅くなる方向の傾斜)場合、凹凸状欠陥11の傾斜に応じて反射光が散乱する。具体的には、反射光の方向が乱反射光の光軸に近づくように反射するこのため、
図28においては(c)のように、第1の撮像素子314が受光する反射光の光量は、平坦な部位で反射した反射光よりも高くなり明るくなる。
【0125】
このように、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316を、乱反射光を撮像可能に設ける場合、凹凸状欠陥の傾斜部の傾きに応じて乱反射光を受光する光量が変化する。このため、欠陥判別部324cは、反射光の光量の変化によって凹凸状欠陥の傾斜部の傾き等を判別できる。
【0126】
図28に示すように、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316を、乱反射光を撮像可能に設けることにより、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥の傾斜部の傾きに関する情報を取得することができる。
【0127】
次に、第1の発光素子311~第3の発光素子313から互いに異なる色調の出射光が出射される場合について説明する。具体的には、第1の発光素子311から青色の色調の出射光、第2の発光素子312から赤色の色調の出射光、第3の発光素子313から緑色の色調の出射光が出射される場合について説明する。
【0128】
図7に示すように、第1の発光素子311~第3の発光素子313及び、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316を配置すると、撮像範囲AR1~AR3が一の方向Dに対して互いに異なる角度をなす。また、撮像範囲AR1~AR3の各々は、一の方向Dからみて、金属帯10の幅方向の中央において交わる。尚、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316は、第1の発光素子311~第3の発光素子313の正反射光を受光可能に配置されている例について説明する。
【0129】
図29は、凹凸状欠陥の一例を示す金属帯10の断面図である。
図29に示されるように、金属帯10は、表面から窪んで形成された凹凸状欠陥11を有する。
図30は、
図29の凹凸状欠陥11の撮像データの一例である。
図30に示すように、凹凸状欠陥を有する領域は、その周囲の領域よりも濃い(暗い)色彩となっている。
【0130】
図31は、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316によって撮像された撮像データを角度補正及び位置補正処理がなされた後に各々を合成した合成データである。
図31においては、各色彩の濃淡を模式的に示している。凹凸状欠陥は、上面視で円状に形成されている。凹凸状欠陥においては、特定の波長帯の出射光が特定の方向で減衰する。
図31に示す例では、正反射光に基づいて撮像データが生成されている。このため、凹凸状欠陥は、正の傾斜と負の傾斜のいずれも同程度の反射光の強度となっている。尚、金属帯10の平坦部においては、青、赤、緑の色調が混ざり合うため白色となる。ただし、金属帯の表面検査技術の分野においては、平坦部を白色で表示すると、金属光沢などのムラを検出できない場合がある。このため、明度を調整し平坦部がグレーに表示されるように撮像データの補正が行われることが多い。そのため、
図31における金属帯10の平坦部も白色ではなくグレーとなるように調整された画像を示している。
【0131】
例えば、
図31において、左右方向に位置する画像領域IM1においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、青の色彩の影響が小さくなる。このため、画像領域IM1の領域は黄色に着色されている。
【0132】
左上から右下方向に位置する画像領域IM2においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、緑の色彩の影響が小さくなる。このため、画像領域IM2の領域は桃色に着色されている。
【0133】
左下から右上方向に位置する画像領域IM3においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、赤の色彩の影響が小さくなる。このため、画像領域IM3の領域は薄い(明るい)青色に着色されている。
【0134】
このように、凹凸状欠陥が形成されている領域では、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316が受光する正反射光の強度が変化する。このため、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥を色によって判別することができる。
【0135】
次に、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316は、第1の発光素子311~第3の発光素子313の乱反射光を受光可能に配置されている例について説明する。尚、金属帯10の断面形状は
図29と同一であるので説明を省略する。
【0136】
図32は、
図29の凹凸状欠陥11の撮像データの一例である。
図32に示すように、凹凸状欠陥を有する領域は、その中心から左側の領域においては、その周囲の領域よりも薄い(明るい)色彩となっている。
【0137】
凹凸状欠陥を有する領域は、その中心から右側の領域においては、その周囲の領域よりも濃い(暗い)色彩となっている。
【0138】
図33は、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316によって撮像された撮像データを角度補正及び位置補正処理がなされた後に各々を合成した合成データである。
図33においては、各色彩の濃淡を模式的に示している。凹凸状欠陥は、上面視で円状に形成されている。凹凸状欠陥においては、特定の波長帯の出射光が特定の方向で減衰する。
図33に示す例では、乱反射光に基づいて撮像データが生成されている。尚、金属帯10の平坦部においては、青、赤、緑の色調が混ざり合うため白色となる。
【0139】
例えば、
図33において、左方向に位置する画像領域IM4においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、青の色彩の影響が大きくなる。このため、画像領域IM4の領域は青色に着色されている。
【0140】
左上に位置する画像領域IM5においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、緑の色彩の影響が大きくなる。このため、画像領域IM5の領域は緑色に着色されている。
【0141】
左下位置する画像領域IM6においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、赤の色彩の影響が大きくなる。このため、画像領域IM6の領域は赤色に着色されている。
【0142】
右方向に位置する画像領域IM7においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、青の色彩の影響が小さくなる。このため、画像領域IM7の領域は薄い(明るい)黄色に着色されている。
【0143】
右上方向に位置する画像領域IM8においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、赤の色彩の影響が小さくなる。このため、画像領域IM8の領域は薄い(明るい)青色に着色されている。
【0144】
右下方向に位置する画像領域IM9においては、第1の発光素子311~第3の発光素子313から出射された出射光のうち、緑の色彩の影響が小さくなる。このため、画像領域IM9の領域は桃色に着色されている。
【0145】
図33に示すように、一の方向Dに対して正の傾斜であるか、負の傾斜であるかによって、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316が受光する乱反射光の強度が変化する。このため、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥の有無を色によって判別することができる。また、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥の傾斜面の傾斜方向に関する情報、すなわち正の傾斜であるか、負の傾斜であるかを、色によって判別することができる。
【0146】
具体的には、凹凸状欠陥の一の方向Dに対してなす傾斜の程度に応じて、特定の出射光の色が強調して撮像される。したがって、欠陥判別部324cは、凹凸状欠陥の一の方向Dに対してなす傾斜の程度を撮像データの色彩により判別することができる。
【0147】
このように、第1の撮像素子314~第3の撮像素子316が乱反射光を撮像するように設けることにより、凹凸状欠陥の傾斜部の傾きの方向を判別できる。すなわち、当該態様においては、凹凸状欠陥の上面視の輪郭形状だけでなく、その傾斜面の形状に関する情報を取得することができる。
【0148】
以上のように本発明の金属帯10の表面検査方法によれば、金属帯10の凹凸状欠陥を高精細に検出することができる。したがって、微細な形状の凹凸状欠陥や、緩やかな形状の凹凸状欠陥であっても高精度に検出することができる。
【0149】
また、撮像範囲AR1~AR3で生成された撮像データの各々に対して、角度補正処理及び位置補正処理が施されたデータを凹凸状欠陥の判定に用いることにより、より詳細な情報を得ることができる。これにより、凹凸状欠陥の検出精度を高めることができる。すなわち、これらのデータを合成した合成データを凹凸状欠陥の判定に用いることにより、凹凸状欠陥の輪郭形状だけでなく、その傾斜面の形状や傾きの程度を検出することができる。
【0150】
尚、判別対象となる凹凸状欠陥の代表例について、本実施形態の表面検査装置を用いて検出した合成画像を見本として記憶部322に蓄積しておくとよい。欠陥判別部324cは、当該代表例と、撮像データ(合成データを含む)と、を対比して凹凸状欠陥を判別するようにしてもよい。欠陥判別部324cは、このように判別することにより、凹凸状欠陥の判別精度をより高めることができる。
【0151】
以上のように、本発明の金属帯10の表面検査装置100を用いて金属帯10を製造することにより、凹凸状欠陥が少ない状態で顧客に提供することができる。これにより、顧客の満足度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0152】
100 金属帯の表面検査装置
10 金属帯
20 搬送部
30 欠陥検出部
31 撮像ユニット
311~313 発光素子
314~316 撮像素子
32 判定部
324a 角度補正部
324b 位置補正部
324c 欠陥判別部
AR1~AR3 撮像範囲(照射範囲)