(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036010
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】トレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法
(51)【国際特許分類】
B62D 53/00 20060101AFI20240308BHJP
B60P 1/64 20060101ALI20240308BHJP
B63B 25/24 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B62D53/00 Z
B60P1/64 A
B63B25/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140699
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】初田 広樹
(72)【発明者】
【氏名】口木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武田 信玄
(57)【要約】
【課題】船舶におけるトレーラーの配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラーの横滑りを抑制することが可能なトレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法を提供する。
【解決手段】本開示に係るトレーラー固定装置は、セミトレーラーのトレーラー架台と船舶の床面との間に設けられて、床面上でトレーラー架台の荷重を支持する支持台と、支持台に固定されて、磁力を切り替えることにより床面に対して着脱可能とされた磁力固定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セミトレーラーのトレーラー架台と船舶の床面との間に設けられて、前記床面上で前記トレーラー架台の荷重を支持する支持台と、
前記支持台に固定されて、磁力を切り替えることにより前記床面に対して着脱可能とされた磁力固定部と、
を備えるトレーラー固定装置。
【請求項2】
前記支持台は、
前記トレーラー架台の下面に接する上部支持部と、
前記船舶の床面に接する下部支持部と、
前記上部支持部と前記下部支持部との間に延びて上下に伸縮可能な高さ調整部と、を備え、
前記磁力固定部は、
前記下部支持部が前記船舶の床面に接しているときに前記船舶の床面に接する吸着面を有する
請求項1に記載のトレーラー固定装置。
【請求項3】
前記支持台は、前記船舶の床面上を走行可能な走行装置を有する
請求項2に記載のトレーラー固定装置。
【請求項4】
前記支持台は、
前記トレーラー架台の下面に設けられたキングピンに着脱可能に連結される支持台カプラーと、
前記トレーラー架台の車幅方向に延びて前記支持台カプラーを下方から支持する上部フレームと、
前記上部フレームの車幅方向の両端部から下方に延びて下端部が前記船舶の床面に接する脚部と、
前記上部フレームの下面から下方に向かって突出し、前記セミトレーラーのトラクターに設けられたカプラーに連結可能な支持台キングピンと、
を備え、
前記磁力固定部は、
前記脚部にそれぞれ設けられ、前記脚部の下端部が前記船舶の床面に接しているときに前記船舶の床面に接する吸着面を有する
請求項1に記載のトレーラー固定装置。
【請求項5】
前記磁力固定部は、
永久磁石と、
前記永久磁石により前記船舶の床面に固定される吸着状態と、前記船舶の床面に固定されない吸着解除状態とに切り替える切替レバーを有する
請求項1から4の何れか一項に記載のトレーラー固定装置。
【請求項6】
セミトレーラーのトレーラー架台と船舶の床面との間に支持台を載置して、前記支持台により前記床面上で前記トレーラー架台の荷重を支持させる工程と、
磁力により前記床面に対して前記支持台を固定する工程と、
前記トレーラー架台を、ラッシングベルトにより固縛する工程と、
を含むトレーラー固縛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーフェリーやRO-RO船等の船舶は、セミトレーラーのうちトレーラーのみを貨物として搭載する場合がある。セミトレーラーは、船内の車両甲板までトレーラーをトラクターにより牽引して、車両甲板の所定位置でトラクターからトレーラーを切り離す。
【0003】
トレーラーのトレーラー架台には、トラクターが切り離された際にトレーラー前部の高さ位置を保持するためのランディングギアが設けられている。しかし、このランディングギアは、陸上での利用を想定したものであり、船体の動揺に対して十分な強度を有していない場合がある。そのため、車両甲板に搭載されたトレーラーの前部を、トレーラー台車等の専用部材により下方から支持する必要がある。
また、セミトレーラーのトレーラーは、航海中に横滑りしないために、複数個所でラッシングベルトにより船体に固縛される。このような固縛作業には人員と時間を要してしまう。
【0004】
一方で、特許文献1には、逆U字状のトレーラーサポートを用いてトレーラーの前部を車両甲板に固定する技術が提案されている。この特許文献1のトレーラーサポートの上部には、トレーラーのキングピンに対して連結可能なカプラーが設けられ、トレーラーサポートの二つの脚部の下端には、それぞれツイストロックが設けられている。これら複数のツイストロックは、トレーラーサポートの脚部を車両甲板に固定可能となっており、これによりトレーラー架台の前部の横滑りを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ツイストロックを固定するための溝を車両甲板に形成する必要があるため、溝が形成されている位置以外にトレーラーを配置することができず、トレーラーの配置自由度が低下する。また、溝を多数設けてトレーラーの配置自由度を向上しようとすると車両甲板の構造が複雑化してしまうという課題がある。
さらに、特許文献1では、ツイストロックを固定するための溝に対してトレーラーサポートを正確に位置決めする必要があるため、トレーラーを車両甲板に搬入する際のトラクターの操作に熟練を要するという課題がある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、船舶におけるトレーラーの配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラーの横滑りを抑制することが可能なトレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
本開示に係るトレーラー固定装置は、セミトレーラーのトレーラー架台と船舶の床面との間に設けられて、床面上でトレーラー架台の荷重を支持する支持台と、支持台に設けられて、磁力を切り替えることにより床面に対して着脱可能とされた磁力固定部と、を備える。
【0009】
本開示に係るトレーラー固縛方法は、セミトレーラーのトレーラー架台と船舶の床面との間に支持台を載置して、前記支持台により前記床面上で前記トレーラー架台の荷重を支持させる工程と、磁力により前記床面に対して前記支持台を固定する工程と、前記トレーラー架台を、ラッシングベルトにより固縛する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るトレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法によれば、船舶におけるトレーラーの配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラーの横滑りを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るセミトレーラーの概略構成を示す側面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るトレーラー固定装置の側面図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係るトレーラー固定装置によりトレーラー架台を支持した状態を示す側面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るトレーラー固縛方法を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第二実施形態に係るトレーラー固定装置の概略構成を示す正面図である。
【
図7】本開示の第二実施形態に係るトレーラー固定装置によりトレーラー架台を支持した状態を示す側面図である。
【
図8】本開示の第二実施形態に係るトレーラー固縛方法のフローチャートである。
【
図9】本開示の第二実施形態に係る船舶の内部に搬入する際のセミトレーラーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係るトレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法について図面を参照して説明する。
【0013】
<第一実施形態>
(船舶)
本開示の第一実施形態に係るトレーラー固定装置は、自動車やトラックを貨物として運搬可能なカーフェリーやRO-RO船(roll-on/roll-off ship)等の船舶に適用できる。この第一実施形態では、船舶としてRO-RO船を一例にして説明する。
【0014】
図1は、本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す側面図である。
図1に示すように、RO-RO船である船舶1は、船体2と、上部構造3と、を備えている。船体2は、舷側4と、船底5と、複数の甲板10と、を有している。舷側4は、左右舷側をそれぞれ構成する一対の舷側外板を有している。船底5は、これら舷側4を接続する船底外板を有している。上部構造3は、船体2の上甲板10Bの上に形成され、船橋3Aと居住区3Bとを備えている。
【0015】
この実施形態における船体2は、車両等の貨物を搬入・搬出させるための2つのショアランプ12を備えている。船舶1は、船尾2Aと、右側の舷側4の船首尾方向の中間位置にそれぞれショアランプ12(スターンランプ12A、センターランプ12B)が設けられた場合を例示している。これらショアランプ12は、階層状に形成された船体2の甲板10のうち、中間層に配置された乗り込み甲板である乾舷甲板10Aに繋がっている。
【0016】
これらショアランプ12を倒して展開させると、乗用車やトラック等の車両が岸壁からショアランプ12を通じて自走して乾舷甲板10Aに乗り込むことが可能となる。乗船した車両(図示せず)は、例えば、上下に隣り合う甲板10同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイ13を介して、それぞれ所定の階層の車両甲板10C上の所定位置に搭載され固縛される。ここで、船体2のうち少なくとも車両甲板10Cは、鋼材等の強磁性体により形成されている。
【0017】
(セミトレーラー)
図2は、本開示の実施形態に係るセミトレーラーの概略構成を示す側面図である。
図2に示すように、セミトレーラー20は、単体で走行不能な被けん引車(以下、単にトレーラー21と称する)と、けん引車(以下、単にトラクター22と称する)と、連結部30と、を備える。本実施形態の船舶1は、上記トレーラー21単体を貨物として運搬可能となっている。
本実施形態で例示するトレーラー21は、バン型のトレーラーであって、トレーラー架台24と、箱体25と、トレーラー車輪26と、ランディングギア27と、キングピン28と、を少なくとも備えている。なお、以下の説明では、セミトレーラー20の前後方向を車両前後方向Da、セミトレーラー20上下方向を上下方向Dcと称する。また、以下の説明において「前」及び「後」は、車両前後方向Daにおける「前」及び「後」を意味する。
【0018】
トレーラー架台24は、箱体25を下方から支持している。トレーラー架台24は、車両前後方向Daに延びている。箱体25は、その内部に貨物を収容する空間を有した車両前後方向Daを長手方向とした中空の直方体形状をなしている。箱体25は、トレーラー架台24上に固定されている。トレーラー車輪26は、トレーラー架台24の後部を下方から支持すると共に、車幅方向(車両前後方向Daに垂直な水平方向)に延びる回転軸回りに回転可能とされている。なお、本実施形態では、トレーラー車輪26が前後に二組並んで配置されている場合を例示しているが、この構成に限られない。トレーラー車輪26の個数や配置は、適宜変更してもよい。
【0019】
ランディングギア27は、トラクター22からトレーラー21を切り離した際(以下、単に分離時と称する)に、トレーラー21を下方から支持してトレーラー21の前部の高さ位置を保持する。ランディングギア27は、トレーラー架台24の車幅方向Dbの両側部にそれぞれ配置され、上下方向Dcに伸縮可能とされている。ランディングギア27は、トラクター22とトレーラー21とを連結しているとき(以下、単に連結時と称する)に縮短状態とされ、上記の分離時に伸長状態とされる。本実施形態のランディングギア27は、車両前後方向Daで、トレーラー21の中央位置とキングピン28との間に配置されている。なお、
図2では、伸長状態のランディングギア27を破線で示している。
【0020】
キングピン28は、トラクター22の後部上面に配置されたカプラー29(後述する)に連結可能とされている。キングピン28は、このカプラー29と共に連結部30を構成している。キングピン28は、連結時にトラクター22の後部の上方に位置するトレーラー架台24の前部下面から下方に向かって突出する柱状をなしている。
【0021】
本実施形態のトラクター22は、シャシー31と、キャブ32と、トラクター車輪33と、カプラー29と、を少なくとも備えている。
シャシー31は、車両前後方向Daに延びている。このシャシー31の後部は、連結時にトレーラー架台24の前部の下方に配置される。キャブ32は、シャシー31の前部に配置され運転室を形成している。この実施形態におけるトラクター22のキャブ32は、走行用のエンジン(図示せず)の上に配置される、いわゆるキャブオーバー型である場合を例示している。トラクター車輪33は、それぞれシャシー31の前部と後部とに設けられている。本実施形態では、トラクター車輪33のうちシャシー31前部に設けられた一対が操舵輪をなし、後部に設けられた一対が駆動輪をなしている。
【0022】
カプラー29は、上述したキングピン28と共に連結部30を構成している。カプラー29は、シャシー31の後部上面に配置されている。カプラー29は、トラクター22の後方からキングピン28を挿抜可能とされている。また、カプラー29は、キングピン28を挿入した状態で所定の操作を行うことで、キングピン28を抜き去ることが不能なロック状態にすることが可能となっている。カプラー29は、ロック状態でキングピン28がその軸線回りへ回動することを可能としつつ、キングピン28がカプラー29に対して車両前後方向Da、車幅方向Db、上下方向Dcへの相対変位を規制する。
【0023】
上記構成を備えたトレーラー21は、トラクター22によってけん引されるセミトレーラー20の状態で岸壁からショアランプ12を通じて船体2内に搬入される。本実施形態では、セミトレーラー20は、傾斜路であるランプウェイ13を介して、複数階層設けられた甲板10のうちトレーラー21を搭載する所定階層の車両甲板10Cに移動する。セミトレーラー20が所定階層の車両甲板10Cに到着すると、トレーラー21を所定の搭載位置に停車させる。そして、ランディングギア27を縮短状態から伸長状態にして、連結部30のロックを解除する。さらに、この状態で、トラクター22を前進させる。これにより、トレーラー21からトラクター22を分離され、トレーラー21がランディングギア27によって自立した状態となる。トレーラー21から分離されたトラクター22は、ショアランプ12を通じて下船する。
【0024】
(トレーラー固定装置)
図3は、本開示の第一実施形態に係るトレーラー固定装置の側面図である。
図3に示すように、第一実施形態のトレーラー固定装置40は、ランディングギア27の代わりに所定の搭載位置に停車されたトレーラー21の荷重を支持する。トレーラー固定装置40は、支持台41と、磁力固定部42と、を備える。
【0025】
図4は、本開示の第一実施形態に係るトレーラー固定装置によりトレーラー架台を支持した状態を示す側面図である。
図3、
図4に示すように、支持台41は、セミトレーラー20のトレーラー架台24と車両甲板10Cの上面(以下、床面14と称する)との間に設けられて、床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持する。支持台41は、一般に、トレーラー台車と称されるものと同様の構成である。支持台41は、上部支持部44と、下部支持部45と、高さ調整部46と、走行装置47と、を備えている。
【0026】
上部支持部44は、支持台41のうち、トレーラー架台24の下面に接する部分である。本実施形態における上部支持部44の上面視の輪郭は矩形状(図示せず)をなしている。本実施形態におけるトレーラー固定装置40は、キングピン28よりも車両後方のトレーラー架台24の下面に上部支持部44が接するように載置される。なお、トレーラー固定装置40は、キングピン28よりも車両前方や、キングピン28の位置のトレーラー架台24の下面に上部支持部44が接するように載置されてもよい。また、上部支持部44の上面44uは、平面に限られず、例えば、トレーラー架台24の下面に凹凸が形成されている場合には、この凹凸に倣う形状であってもよい。また、上部支持部44の上面44uは、トレーラー架台24の下面に対する滑り止めとして、例えば、摩擦係数の高いゴムや合成樹脂などの材料で形成したり、ローレット加工をしたりしてもよい。また、上部支持部44は、トレーラー架台24の下面に設けられたキングピン28に連結可能なカプラー(図示せず)を備えていてもよい。
【0027】
下部支持部45は、支持台41のうち、トレーラー架台24の荷重を支持する際に床面14と接する部分である。本実施形態における下部支持部45は、上方から見て、矩形(図示せず)をなしている。さらに、下部支持部45は、上方から見て、その内側に下部開口48を有している。この下部開口48を介して、後述する走行装置47の車輪58を、下部支持部45の下面よりも下方へ突出させることが可能となっている。
【0028】
高さ調整部46は、上部支持部44と下部支持部45との間に延びている。より具体的には、高さ調整部46は、上部支持部44と下部支持部45とを上下方向Dcで繋いでいる。高さ調整部46は、上下方向Dcに伸縮可能に構成されている。つまり、高さ調整部46は、下部支持部45から上部支持部44までの距離である支持台41の高さを調整することが可能となっている。本実施形態の高さ調整部46は、ベース部49と、伸縮機構部50と、を備えている。
【0029】
ベース部49は、複数の柱部51と、上部環状部52と、備えている。複数の柱部51は、それぞれ下部支持部45から上方に向かって延びている。具体的には、複数の柱部51は、上方に向かうに従って互いの間隔が狭くなるように傾斜して延びている。複数の柱部51の上端は、何れも上部環状部52に固定されている。本実施形態の柱部51は、矩形をなす下部支持部45の四つの角部53からそれぞれ上方に向かって延びている。上部環状部52は、上下方向Dcに貫通する貫通孔54を内側に有した環状をなしている。この上部環状部52には、伸縮機構部50が支持されている。
【0030】
伸縮機構部50は、本体部55と、ロッド部56と、を備えている。本体部55は、上方に向かって開口する上部開口部(図示せず)を有している。本実施形態では、本体部55は、上部環状部52の鉛直下方に配置され、少なくとも上部環状部52に対して相対移動不能に取り付けられている。ロッド部56は、上部開口部(図示せず)を介して本体部55内に収容されて、本体部55の上部開口部(図示せず)から上方に向かって延びている。ロッド部56は、本体部55に対して出没可能とされている。ロッド部56は、上部環状部52の貫通孔54を通じて上部支持部44の下面に固定されている。本体部55は、操作レバー部57を備えており、この操作レバー部57を操作することで、上部環状部52よりも上方へ突出するロッド部56の長さを調節することが可能となっている。伸縮機構部50としては、例えば、流体圧シリンダーやボールねじ機構を例示できる。
【0031】
走行装置47は、床面14上を走行可能とされている。走行装置47は、複数の車輪58と、これら複数の車輪58を回転自在に支持する車輪支持体59と、車輪支持体59を上下に移動させる車輪昇降機構60と、を備えている。本実施形態の走行装置47は、上面視で矩形状に形成された車輪支持体59の外周に沿って間隔をあけて三つ以上の複数の車輪58が下方に突出するように配置されている。
【0032】
走行装置47は、車輪昇降機構60を操作することで、車輪支持体59を昇降させることができ、これにより下部開口48を通じて下部支持部45よりも下方に車輪58が配置される走行可能状態と、下部支持部45よりも上方に車輪58が配置される格納状態とに切り替える可能となっている。走行装置47は、トレーラー固定装置40をトレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に載置させる際や、トレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間から撤去する際には、走行可能状態とされる。その一方で、走行装置47は、トレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に載置されて支持台41によってトレーラー架台24を支持する際には、格納状態とされる。本実施形態では、車輪昇降機構60の操作レバー部60aを操作することで、走行可能状態と格納状態とを切替可能となっている。
【0033】
磁力固定部42は、支持台41に設けられている。磁力固定部42は、磁力を切り替えることにより車両甲板10Cの床面14に対して着脱可能とされている。本実施形態の磁力固定部42は、取付フレーム61と、磁力固定部本体62と、を備えている。取付フレーム61は、磁力固定部本体62を、支持台41に対して固定するための部材である。磁力固定部本体62は、支持台41の下部支持部45が車両甲板10Cの床面14に接しているときに、同時に床面14に接する吸着面63を有している。
【0034】
本実施形態で例示する磁力固定部本体62は、永久磁石64と、切替レバー65と、を備えている。切替レバー65は、永久磁石64により吸着面63を床面14に吸着させる磁力を発生させるオン状態(吸着状態)と、吸着面63を床面14に吸着させる磁力を無効にするオフ状態(吸着解除状態)と、にそれぞれ切り替えることが可能となっている。本実施形態では、二つの磁力固定部42が設けられており、これら二つの磁力固定部42が、支持台41を間に挟み込むように配置されている。本実施形態の磁力固定部本体62は、矩形状の輪郭を有した下部支持部45のうち平行に延びる二つの辺にそれぞれ沿って延びている。なお、本実施形態では、車両前後方向Daに間隔をあけて二つの磁力固定部42が配置されている場合を例示している。
【0035】
また本実施形態の切替レバー65は、磁力固定部本体62の長手方向の端面から突出すると共に上方に向かって延びている。この切替レバー65は、磁力固定部本体62の長手方向に延びる揺動軸回りに揺動可能とされている。この磁力固定部本体62の切替レバー65は、例えば、オフ状態のときに鉛直上方に向かって延び、オフ状態からオン状態に切り替えるときに切替レバー65の上端部を支持台41から離間する方向へ揺動させるようになっている。なお、磁力固定部42の個数、取付フレーム61の形状、取付フレーム61と磁力固定部本体62及び支持台41との固定箇所などは、上記実施形態の構成に限られず適宜変更してもよい。
【0036】
(トレーラー固縛方法)
次に、第一実施形態に係るトレーラー固縛方法を、図面を参照しながら説明する。
図5は、本開示の実施形態に係るトレーラー固縛方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態に係るトレーラー固縛方法では、トレーラー21をトラクター22によりけん引して(
図2参照)、岸壁から船体2内の車両甲板10Cに乗り込ませる。そして、トレーラー21を所定の搭載位置に停車させる(ステップS01)。この際、トレーラー車輪26には、適宜車止め(図示せず)が取り付けられる。
【0037】
次に、トレーラー21からトラクター22を切り離す(ステップS02)。この際、トラクター22を切り離す直前に、トレーラー21のランディングギア27を縮短状態から伸長状態にする。この伸長状態のランディングギア27により、トラクター22が分離されたトレーラー21は、自立した状態となる。トレーラー21を切り離したトラクター22は、トレーラー21を船内に残して下船する。
【0038】
その後、トレーラー固定装置40を、トレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に移動して載置する(ステップS03)。そして、支持台41により床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持させる(ステップS04)。本実施形態では、作業者が、例えば、船内の所定の保管場所に保管されていたトレーラー固定装置40を人力により移動させる。この際、作業者は、トレーラー固定装置40を走行装置47によって走行可能な状態に切り替えて、車両甲板10Cの床面14上を走行させて移動させる。さらに作業者は、トレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に移動させたトレーラー固定装置40の走行装置47を格納状態となるように操作する。その後、作業者は、トレーラー架台24の下面に上部支持部44の上面が接触するように伸縮機構部50を操作する。これにより、下部支持部45の下面が床面14に接触し、上部支持部44の上面がトレーラー架台24の下面に接触して、支持台41により床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持された状態となる。この状態では、トレーラー固定装置40の磁力固定部42の吸着面63も床面14に接した状態となる(
図4参照)。
【0039】
次に、磁力により床面14に対して支持台41を固定する(ステップS05)。これには、作業者が磁力固定部42の切替レバー65を操作してオフ状態からオン状態にする。
その後、トレーラー21をラッシングベルト70(
図4参照)により適宜固縛する(ステップS06)。これには、作業者が、例えば、トレーラー21に設けられている複数の固縛用リング(図示せず)と、船体2に設けられている所定箇所の固縛用金具(例えば、車両甲板10Cの埋込金物;図示せず)とをそれぞれラッシングベルト70により繋ぎ、各ラッシングベルト70を固く張る。
なお、ステップS05の後にステップS06を行う場合について説明したが、ステップS05よりも前にステップS06を行ったり、ステップS05とステップS06とを複数の作業者によって並行して行うようにしたりしてもよい。
【0040】
(作用効果)
上記第一実施形態のトレーラー固定装置40は、トレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に配置されて、床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持する支持台41を備えている。さらに、トレーラー固定装置40は、支持台41に固定されて磁力を切り替えることにより車両甲板10Cの床面14に対して着脱可能とされた磁力固定部42を備えている。
これにより、トレーラー架台24の荷重を支持台41に支持させた状態で、支持台41に固定された磁力固定部42の磁力を切り替えて支持台41を床面14に固定することができる。そのため、磁力により固定可能な場所であれば、車両甲板10C上の如何なる場所にも支持台41を固定することが可能となる。したがって、トレーラー21の配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラー21の横滑りを抑制することができる。
とりわけ、トレーラー固定装置40によりトレーラー21の前部の横滑りを抑制することができるため、トレーラー架台24の前部を固縛するラッシングベルト70の本数を削減して、作業者の負担軽減及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0041】
上記第一実施形態のトレーラー固定装置40の支持台41は、トレーラー架台24の下面に接する上部支持部44と、車両甲板10Cの床面14に接する下部支持部45と、上部支持部44と下部支持部45との間に延びて上下に伸縮可能な高さ調整部46と、を備えている。また、第一実施形態のトレーラー固定装置40の磁力固定部42は、下部支持部45が車両甲板10Cの床面14に接しているときに車両甲板10Cの床面14に接する吸着面63を有している。
このように構成することで、支持台41によってトレーラー架台24の荷重を支持させた状態で、磁力固定部42の吸着面63を車両甲板10Cの床面14に接した状態にすることができる。
したがって、支持台41を車両甲板10Cの床面14に容易に固定することができる。
【0042】
また、上記第一実施要形態のトレーラー固定装置40によれば、車両甲板10Cの床面14上を走行可能な走行装置47を有しているため、支持台41と磁力固定部42と、を同時に移動させることができると共に、支持台41と、支持台41に固定された磁力固定部42と、容易に移動させることが可能となる。したがって、トレーラー21の固縛作業を行う作業者の負担を軽減することができる。
【0043】
また、磁力固定部42が、永久磁石64と、切替レバー65とを備え、切替レバー65によって、永久磁石64の磁力により吸着面63を車両甲板10Cに吸着させるオン状態と、永久磁石64の磁力による吸着を解除させるオフ状態とに切替可能となっている。そのため、磁力を発生させるために、外部から磁力固定部42に電力を供給する必要が無いため、電源ケーブル等によりトレーラー固定装置40の機動性が損なわれることを抑制できる。
【0044】
上記第一実施形態のトレーラー固縛方法は、セミトレーラー20のトレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に支持台41を載置して、支持台41により床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持させる工程と、磁力により床面14に対して支持台41を固定する工程と、トレーラー架台24を、ラッシングベルト70により固縛する工程と、を含んでいる。
このようにすることで、支持台41が船体2の動揺により横滑りすることを抑制できるため、トレーラー架台24の前部をラッシングベルト70により固縛する固縛箇所の数を削減することができる。したがって、固縛作業を行う作業者の荷役作業省力化を図ることができる。さらに、固縛箇所の数が削減されることで、船体2側に設ける固縛用金具の数量を削減できるため、船体2の構造が複雑化することを抑制できる。
【0045】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係るトレーラー固定装置について図面を参照しながら説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態に対してトレーラー固定装置の構成が異なる。そのため、
図1、
図2を援用し、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0046】
第二実施形態に係るトレーラー固定装置140は、第一実施形態と同様に、自動車やトラックを貨物として運搬可能なカーフェリーやRO-RO船(roll-on/roll-off ship)等の船舶に適用できる。
この第二実施形態では、第一実施形態と同様に、船舶1が、セミトレーラー20のトレーラー21を単体で運搬する。トレーラー21は、トレーラー架台24と、箱体25と、トレーラー車輪26と、ランディングギア27と、キングピン28と、を少なくとも備えている。
【0047】
図6は、本開示の第二実施形態に係るトレーラー固定装置140の概略構成を示す正面図である。
図7は、本開示の第二実施形態に係るトレーラー固定装置によりトレーラー架台を支持した状態を示す側面図である。
図6、
図7に示すように、第二実施形態に係るトレーラー固定装置140は、セミトレーラー20のトレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に設けられて、この床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持する支持台141と、この支持台141に固定されて、磁力を切り替えることにより床面14に対して着脱可能とされた磁力固定部42と、を備えている。この第二実施形態に係る支持台141は、支持台カプラー80と、上部フレーム81と、脚部82と、支持台キングピン83と、を少なくとも備えている。なお、第二実施形態の支持台141は、例えば、トレーラーサポートと言い換えることもできる。
【0048】
支持台カプラー80は、トレーラー架台24の下面に設けられたキングピン28に着脱可能に連結される。この支持台カプラー80は、トラクター22に設けられたカプラー29と同一構成であってもよいが、トレーラー21のキングピン28に着脱可能に連結されるものであれば、トラクター22のカプラー29と同一構成のものに限られない。
【0049】
上部フレーム81は、支持台カプラー80を下方から支持する。上部フレーム81は、支持台カプラー80がキングピン28に連結された状態で、トレーラー架台24の車幅方向Dbに延びるように形成されている。脚部82は、上記のように車幅方向Dbに延びた上部フレーム81の両端部から下方に延びている。支持台141は、これら一つの上部フレーム81と、二つの脚部82とによって逆U字状をなし、二つの脚部82によって床面14上に自立可能に形成されている。本実施形態の上部フレーム81及び脚部82は、互いに同一幅寸法W1及び同一厚さ寸法D1で形成され、厚さ寸法D1よりも幅寸法W1の方が大きい場合を例示している。
【0050】
支持台キングピン83は、上部フレーム81の下面から下方に向かって突出している。この支持台キングピン83は、セミトレーラー20のトラクター22に設けられたカプラー29に連結可能に形成されている。本実施形態の支持台キングピン83は、トレーラー21に設けられたキングピン28と同じ形状であるが、トラクター22のカプラー29に連結可能であれば、必ずしも同じ形状である必要は無い。
【0051】
磁力固定部42は、脚部82にそれぞれ設けられている。磁力固定部42は、磁力により車両甲板10Cの床面14に吸着可能な吸着面63を有している。吸着面63は、脚部82の下端部が車両甲板10Cの床面14に接しているときに、車両甲板10Cの床面14に接する。第二実施形態の磁力固定部42は、第一実施形態の磁力固定部42と同様に、取付フレーム61と、磁力固定部本体62と、を備えている。第二実施形態では、トレーラー固定装置140に二つの磁力固定部42が設けられており、これら二つの磁力固定部42が、それぞれ背合わせの配置となる脚部82の外側面84に固定されている。第二実施形態の磁力固定部本体62は、脚部82の幅方向に延びて上述した幅寸法W1と同一の長さを有している場合を例示している。なお、磁力固定部42の固定される位置は、脚部82の外側面84に限られない。磁力固定部42は、例えば、脚部82の内側面や脚部82の下面に設けてもよい。また、磁力固定部42は、例えば、脚部82の外側面84、脚部82の内側面、及び脚部82の下面のうちの複数個所に設けるようにしてもよい。
【0052】
(トレーラー固縛方法)
次に、第二実施形態に係るトレーラー固縛方法を、図面を参照しながら説明する。
図8は、本開示の第二実施形態に係るトレーラー固縛方法のフローチャートである。
図9は、本開示の第二実施形態に係る船舶1の内部に搬入する際のセミトレーラーの側面図である。なお、この第二実施形態では、船体2内へトレーラー21を搬入する専用のトラクター22を用いる場合を一例にして説明する。すなわち、陸上には、予め複数のトレーラー21が単体でランディングギア27によって自立した状態で載置されている(図示せず)。
【0053】
図8に示すように、第二実施形態に係るトレーラー固縛方法では、トレーラー21をトラクター22により牽引して岸壁から船体2内の車両甲板10Cに乗り込ませる前に、トラクター22にトレーラー固定装置140を連結する(ステップS11)。具体的には、トレーラー固定装置140は、陸上の所定の保管場所に自立した状態で保管されている。この保管場所では、トラクター22の後部をトレーラー固定装置140の上部フレーム81の下方に挿入させて、トラクター22のカプラー29を支持台キングピン83に連結させる。この状態でトラクター22は、カプラー29を上昇させてトレーラー固定装置140を地面から浮かせて搬送する。
【0054】
次いで、トラクター22とトレーラー21とを連結してセミトレーラー20の状態で船体2内に乗り込む(ステップS12)。具体的には、ランディングギア27によって自立しているトレーラー21の前部の下方に、トラクター22の後部を入り込ませる。そして、トラクター22のカプラー29を上昇させることでトレーラー固定装置140を上昇させて、
図9に示すように、トレーラー21のキングピン28にトレーラー固定装置140の支持台カプラー80を連結させる。この際、ランディングギア27は、縮短状態とされる。これにより、トラクター22とトレーラー21とがトレーラー固定装置140を介して連結されたセミトレーラー20の状態となり、この状態で船体2内に乗り込む。その後、第一実施形態と同様に、トレーラー21を所定の搭載位置に停車させる。この際、トレーラー車輪26には、適宜車止め(図示せず)が取り付けられる。
【0055】
次に、支持台141により床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持させる(ステップS13)。具体的には、トラクター22のカプラー29を下降させることでトレーラー固定装置140を下降させる。すると、支持台141の脚部82の下端が車両甲板10Cの床面14に接し、トレーラー21の前部が支持台141によって下方から支持された状態となるため、トラクター22によるカプラー29の下降を停止する。
【0056】
次に、磁力により床面14に対して支持台141を固定する(ステップS14)。これには、作業者が磁力固定部42の切替レバー65を操作してオフ状態からオン状態にする。
さらに、トレーラー21からトラクター22を切り離す(ステップS15)。具体的には、カプラー29をロック解除した状態でトラクター22を前進させ、トラクター22のカプラー29を支持台キングピン83から離脱させる。
【0057】
その後、トレーラー21をラッシングベルト70(
図7参照)により適宜固縛する(ステップS16)。これには、作業者が、例えば、トレーラー21に設けられている複数の固縛用リング(図示せず)と、船体2に設けられている所定箇所の固縛用金具(例えば、車両甲板10Cの埋込金物;図示せず)とをそれぞれラッシングベルト70により繋ぎ、各ラッシングベルト70を固く張る。
なお、ステップS14の後にステップS15を行う場合について説明したが、ステップS14よりも前にステップS15を行ったり、ステップS14と並行してステップS15やステップS16を行うようにしたりしてもよい。
【0058】
(作用効果)
上記第二実施形態のトレーラー固定装置140は、トレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に配置されて、床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持する支持台141を備えている。さらに、トレーラー固定装置140は、支持台141に固定されて磁力を切り替えることにより車両甲板10Cの床面14に対して着脱可能とされた磁力固定部42を備えている。
これにより、第一実施形態と同様に、トレーラー架台24の荷重を支持台141に支持させた状態で、支持台141に固定された磁力固定部42の磁力を切り替えて支持台141を床面14に固定することができる。したがって、磁力により固定可能な場所であれば、車両甲板10C上の如何なる場所にも支持台141を固定することが可能となる。したがって、トレーラー21の配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラー21の横滑りを抑制することができる。
【0059】
さらに、第二実施形態のトレーラー固定装置140の支持台141は、支持台カプラー80と、上部フレーム81と、脚部82と、支持台キングピン83とを備えている。さらに、第二実施形態の磁力固定部42は、脚部82にそれぞれ設けられ、脚部82の下端部が車両甲板10Cの床面14に接しているときに車両甲板10Cの床面14に接する吸着面63を有している。
このように構成することで、支持台141によってトレーラー架台24の荷重を支持させた状態で、磁力固定部42の吸着面63を車両甲板10Cの床面14に接した状態にすることができる。したがって、支持台141を車両甲板10Cの床面14に容易に固定することができる。
また、車両甲板10Cに搭載されたトレーラー21からトラクター22を分離する際に、ランディングギア27を用いずに支持台141により自立させることができる。そのため、船体2内における工数を削減して、より短時間でトレーラー21の積み込みを完了させることができる。したがって、円滑に積荷作業を行うことが可能となり、作業者の負担軽減及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0060】
また、第二実施形態の磁力固定部42は、第一実施形態と同様に、切替レバー65により永久磁石64の磁力により吸着面63を車両甲板10Cに吸着させるオン状態と、永久磁石64の磁力による吸着を解除させるオフ状態と、に切替可能となっている。そのため、磁力を発生させるために、外部から磁力固定部42に電力供給する必要が無いため、電源ケーブル等によりトレーラー固定装置140の機動性が損なわれることを抑制できる。
【0061】
第二実施形態のトレーラー固縛方法では、セミトレーラー20のトレーラー架台24と車両甲板10Cの床面14との間に支持台141を載置して、支持台141により床面14上でトレーラー架台24の荷重を支持させる工程と、磁力により床面14に対して支持台141を固定する工程と、トレーラー架台24を、ラッシングベルト70により固縛する工程と、を含んでいる。
このようにすることで、支持台141が船体2の動揺により横滑りすることを抑制できるため、トレーラー架台24の前部をラッシングベルト70により固縛する固縛箇所の数を削減することができる。したがって、固縛作業を行う作業者の荷役作業省力化を図ることができる。さらに、固縛箇所の数が削減されることで、船体2側に設ける固縛用金具の数量を削減できるため、船体2の構造が複雑化することを抑制できる。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した各実施形態では、船舶1としてRO-RO船を一例にして説明したが、トレーラー21を単体で運搬する船舶であればよく、例えば、カーフェリー等であってもよい。
【0063】
また、上述した各実施形態では、トレーラー21として、バン型のトレーラーを一例にして説明したが、トレーラー21は、バン型以外の如何なる型のトレーラーであってもよい。
【0064】
さらに、上述した各実施形態では、永久磁石64を備えた磁力固定部42を一例にして説明したが、磁力固定部42は、永久磁石64に代えて電磁石を用いる構成としてもよい。
【0065】
さらに、第一実施形態では、一つのトレーラー21に対して、一つのトレーラー固定装置40を用いる場合について説明したが、二つ以上のトレーラー固定装置40を用いて一つのトレーラー21を固定するようにしてもよい。
【0066】
また、第二実施形態では、車両甲板10Cにおいてランディングギア27を縮短状態に維持する場合について説明したが、ランディングギア27を伸長状態にして、トレーラー架台24の荷重をランディングギア27とトレーラー固定装置140との両方により支持するようにしてもよい。
【0067】
<付記>
実施形態に記載のトレーラー固定装置及びトレーラー固縛方法は、例えば以下のように把握される。
【0068】
(1)第1の態様によればトレーラー固定装置40,140は、セミトレーラー20のトレーラー架台24と船舶1の床面14との間に設けられて、前記床面14上で前記トレーラー架台24の荷重を支持する支持台41,141と、前記支持台41,141に固定されて、磁力を切り替えることにより前記床面14に対して着脱可能とされた磁力固定部42と、を備える。
船舶1の例としては、RO-RO船、カーフェリーが挙げられる。支持台41,141の例としては、トレーラー台車、トレーラーサポートが挙げられる。
【0069】
これにより磁力により固定可能な場所であれば、車両甲板10C上の如何なる場所にも支持台41を固定することが可能となる。したがって、トレーラー21の配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラー21の横滑りを抑制することができる。
【0070】
(2)第2の態様によればトレーラー固定装置40は、(1)のトレーラー固定装置40であって、前記支持台41は、前記トレーラー架台24の下面に接する上部支持部44と、前記船舶1の床面14に接する下部支持部45と、前記上部支持部44と前記下部支持部45との間に延びて上下に伸縮可能な高さ調整部46と、を備え、前記磁力固定部42は、前記下部支持部45が前記船舶1の床面14に接しているときに前記船舶1の床面14に接する吸着面63を有する。
支持台41の例としては、トレーラー台車が挙げられる。
【0071】
これにより、支持台41によってトレーラー架台24の荷重を支持させた状態で、磁力固定部42の吸着面63を車両甲板10Cの床面14に接した状態にすることができるため、支持台41を車両甲板10Cの床面14に容易に固定することができる。
【0072】
(3)第3の態様によればトレーラー固定装置40は、(2)のトレーラー固定装置40であって、前記支持台41は、前記船舶1の床面14上を走行可能な走行装置47を有する。
これにより、支持台41と、支持台41に固定された磁力固定部42と、を同時に移動させることができると共に、容易に移動させることが可能となるため、トレーラー21の固縛作業を行う作業者の負担を軽減することができる。
【0073】
(4)第4の態様によればトレーラー固定装置140は、(1)のトレーラー固定装置140であって、前記支持台141は、前記トレーラー架台24の下面に設けられたキングピン28に着脱可能に連結される支持台カプラー80と、前記トレーラー架台24の車幅方向Dbに延びて前記支持台カプラー80を下方から支持する上部フレーム81と、前記上部フレーム81の車幅方向Dbの両端部から下方に延びて下端部が前記船舶1の床面14に接する脚部82と、前記上部フレーム81の下面から下方に向かって突出し、前記セミトレーラー20のトラクター22に設けられたカプラー29に連結可能な支持台キングピン83と、を備え、前記磁力固定部42は、前記脚部82にそれぞれ設けられ、前記脚部82の下端部が前記船舶1の床面14に接しているときに前記船舶1の床面14に接する吸着面63を有する。
支持台141の例としては、トレーラーサポートが挙げられる。
【0074】
これにより、支持台141によってトレーラー架台24の荷重を支持させた状態で、磁力固定部42の吸着面63を車両甲板10Cの床面14に接した状態にすることができるため、支持台141を車両甲板10Cの床面14に容易に固定することができる。また、ランディングギア27を用いずにトレーラー21を支持台141により自立させることができるため、船体2内における工数を削減して、より短時間でトレーラー21の積み込みを完了させることができる。したがって、円滑に積荷作業を行うことが可能となり、作業者の負担を軽減できる。
【0075】
(5)第5の態様によればトレーラー固定装置40,140は、(1)から(4)の何れか一つのトレーラー固定装置40,140であって、前記磁力固定部42は、永久磁石64と、前記永久磁石64により前記船舶1の床面14に固定される吸着状態と、前記船舶1の床面14に固定されない吸着解除状態とに切り替える切替レバー65を有する。
これにより、磁力を発生させるために、外部から磁力固定部42に電力供給する必要が無いため、電源ケーブル等によりトレーラー固定装置140の機動性が損なわれることを抑制できる。
【0076】
(6)第6の態様によればトレーラー固縛方法は、セミトレーラー20のトレーラー架台24と船舶1の床面14との間に支持台41,141を載置して、前記支持台41,141により前記床面14上で前記トレーラー架台24の荷重を支持させる工程と、磁力により前記床面14に対して前記支持台41,141を固定する工程と、前記トレーラー架台24を、ラッシングベルト70により固縛する工程と、を含む。
これにより、トレーラー21の配置自由度を向上すると共に、容易にトレーラー21の横滑りを抑制することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…船舶 2…船体 3…上部構造 3A…船橋 3B…居住区 4…舷側 5…船底 10…甲板 10A…乾舷甲板 10B…上甲板 10C…車両甲板 12…ショアランプ 12A…スターンランプ 12B…センターランプ 13…ランプウェイ 14…床面 20…セミトレーラー 21…トレーラー 22…トラクター 22R…後部 24…トレーラー架台 25…箱体 26…トレーラー車輪 27…ランディングギア 28…キングピン 29…カプラー 30…連結部 31…シャシー 32…キャブ 33…トラクター車輪 40,140…トレーラー固定装置 41,141…支持台 42…磁力固定部 44…上部支持部 44u…上面 45…下部支持部 46…高さ調整部 47…走行装置 48…下部開口 49…ベース部 50…伸縮機構部 51…柱部 52…上部環状部 53…角部 54…貫通孔 55…本体部 56…ロッド部 57…操作レバー部 58…車輪 59…車輪支持体 60…車輪昇降機構 61…取付フレーム 62…磁力固定部本体 63…吸着面 64…永久磁石 65…切替レバー 70…ラッシングベルト 80…支持台カプラー 81…上部フレーム 82…脚部 83…支持台キングピン 84…外側面 W1…幅寸法 D1…厚さ寸法 Da…車両前後方向 Db…車幅方向 Dc…上下方向