(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036023
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】エレベーターシステム及びエレベーター制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/44 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B66B1/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140715
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西江 聡
(72)【発明者】
【氏名】西迫 竜一
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HC07
3F502JB04
3F502KA11
3F502KA23
(57)【要約】
【課題】エレベーターを乗客が利用する場合とロボットが利用する場合のいずれでも、利用効率を低下させずに適切に運転できるようにする。
【解決手段】乗場の床と乗りかご1の床の停止位置の誤差が、第一の閾値を超えて第二の閾値の間であるかどうかどうかを検出する停止位置検出部12と、移動体30が乗りかご1に搭乗しているかどうかを監視する移動体状態監視部14と、移動体状態監視部14から受け取った情報で、移動体30が乗りかごに搭乗していることを検出した際に、停止位置検出部12が検出した停止位置の誤差が第一の閾値を超えて第二の閾値の間であったとき、第一の閾値より小さい誤差となるよう乗りかごを移動させる床合わせ運転を行うエレベーター運転制御部11とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を搭載可能なエレベーターシステムであって、
乗場の床と乗りかごの床の停止位置の誤差が、第一の閾値を超えて第二の閾値の間であるかどうかどうかを検出する停止位置検出部と、
前記移動体が前記乗りかごに搭乗しているかどうかを監視する移動体状態監視部と、
前記移動体状態監視部から受け取った情報で、前記移動体が前記乗りかごに搭乗していることを検出した際に、前記停止位置検出部が検出した停止位置の誤差が前記第一の閾値を超えて前記第二の閾値の間であったとき、前記第一の閾値より小さい誤差となるよう前記乗りかごを移動させる床合わせ運転を行うエレベーター運転制御部と、を備える
エレベーターシステム。
【請求項2】
前記移動体状態監視部で前記移動体が搭乗していることを検出し、前記停止位置検出部が乗場の床と乗りかごの床の停止位置の誤差が第一の閾値を超えて第二の閾値の間であると検出したとき、前記移動体状態監視部は、前記エレベーター運転制御部へ床合わせ運転を実行する指示を行い、前記エレベーター運転制御部は、床合わせ運転完了後に、前記乗りかごのドア開指示を行う
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記移動体を制御するサーバ又は前記移動体と通信を行う通信部を備え、
前記通信部は、前記エレベーター運転制御部からのドア開完了が出力された後、前記サーバ又は前記移動体で前記乗りかごからの降車処理を行う
請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記移動体状態監視部で前記移動体が搭乗していない状態、並びに前記移動体が搭乗しようとしていない状態を検出したとき、前記エレベーター運転制御部は、前記乗りかごのドア開指示を行った後、前記床合わせ運転を行う
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記通信部での通信で、前記移動体状態監視部が搭乗中の前記移動体の行先階を取得し、前記エレベーター運転制御部は、前記乗りかごが前記行先階以外に停止した際に、前記乗りかごのドア開指示を行った後、前記床合わせ運転を行う
請求項3に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記移動体を制御するサーバ又は前記移動体と通信を行う通信部を備え、
前記通信部での通信で、前記移動体状態監視部が、停止階で搭乗予定の移動体があることを検出したとき、前記エレベーター運転制御部へ床合わせ運転を実行する指示を行い、前記エレベーター運転制御部は、床合わせ運転完了後に、前記乗りかごのドア開指示を行う
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
移動体を搭載可能なエレベーターを制御するエレベーター制御方法であって、
乗場の床と乗りかごの床の停止位置の誤差が、第一の閾値を超えて第二の閾値の間であるかどうかどうかを検出する停止位置検出処理と、
前記移動体が前記乗りかごに搭乗しているかどうかを監視する移動体状態監視処理と、
前記移動体状態監視処理により受け取った情報で、前記移動体が前記乗りかごに搭乗していることを検出した際に、前記停止位置検出処理が検出した停止位置の誤差が前記第一の閾値を超えて前記第二の閾値の間であったとき、前記第一の閾値より小さい誤差となるよう前記乗りかごを移動させる床合わせ運転を行うエレベーター運転制御処理と、を含む
エレベーター制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターシステム及びエレベーター制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のエレベーターは、乗客の搬送だけでなく、自律移動可能なロボットの搬送を行うことが要請されている。ロボットの搬送を行うには、ロボットからエレベーターシステムの制御装置に、ロボットが存在している階(乗り場)と、ロボットが移動しようとする行先階(目的階)の制御データを送り、エレベーターによるロボットの移動の要請を行うようにしている。
制御装置は、この制御データに基づいて、乗りかごをロボットが存在している階に向かわせ、ロボットが搭乗後に、行先階に搬送する制御を実行する。
【0003】
しかし、ロボットを乗りかごに搭乗させて搬送するエレベーターシステムにおいて、ロボットが乗りかごに乗降する際に、乗りかごと乗り場間に段差が存在するとロボットが転倒してしまう可能性がある。
【0004】
特許文献1には、エレベーター利用者の転倒を防止するために、乗りかご着床時に、乗りかごの床と乗場の床との間の段差を補正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される従来の段差補正技術は、乗りかごが階に停止して、かごドアが開いた状態で段差を補正する技術である。
特許文献1に記載される段差補正技術は、基本的には、最大でも数センチ程度の段差を補正するものであり、段差がないことが好ましいが、補正実行前であっても乗降する上で許容できる程度の段差である。
【0007】
一方、ロボットが乗りかごに乗降するようにした場合、ロボットの転倒を防止する観点から、ドア開時には、完全に段差がないことが好ましい。
しかし、運転中のエレベーターが全ての階に停止するような場合には、全ての階で常に段差を補正するようにすると、各階に停止してからドアが開くまでに相当の時間がかかることになる。つまり、エレベーターが各階に停止してからドアが開くまでに、常時段差補正処理を実行することになるので、各停止階でドアが開くまでに時間がかかり、エレベーターの利用効率が低下するという問題がある。
【0008】
一方、段差補正を行わない場合には、ロボットが乗降時に段差で転倒して、乗りかごのドアを閉められなくなったり、最悪の状態ではロボットが故障したりすることも起こり得る。そして、転倒したロボットの救出作業が行われるまで、エレベーターによるサービスができない状況になることも考えられる。
したがって、段差補正を行わないと、やはりエレベーターの利用効率が低下すると共に、ロボットも利用できなくしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、乗客が利用する場合とロボットが利用する場合のいずれでも利用効率を低下させずに適切に運転を行うことができるエレベーターシステム及びエレベーター制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、移動体を搭載可能なエレベーターシステムであって、乗場の床と乗りかごの床の停止位置の誤差が、第一の閾値を超えて第二の閾値の間であるかどうかどうかを検出する停止位置検出部と、移動体が乗りかごに搭乗しているかどうかを監視する移動体状態監視部と、移動体状態監視部から受け取った情報で、移動体が乗りかごに搭乗していることを検出した際に、停止位置検出部が検出した停止位置の誤差が第一の閾値を超えて第二の閾値の間であったとき、第一の閾値より小さい誤差となるよう乗りかごを移動させる床合わせ運転を行うエレベーター運転制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動体がエレベーターを利用する際に、乗りかごの床と乗場の床との床合わせ運転が行われるので、エレベーター利用時のロボットの転倒を防止することができ、エレベーターの利用率の低下を防止できると共に、ロボットの故障を防ぐことができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムの構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例によるエレベーター制御装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例によるロボット利用時の処理の例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施の形態例によるエレベーター制御装置のロボット利用時の処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)によるエレベーターシステム及びエレベーター制御方法を、添付図面を参照して説明する。
【0014】
[システム全体の構成]
図1を用いて、本例のエレベーターシステムの構成を説明する。
本例のエレベーターシステムは、乗りかご1、巻上機2、釣合い重り3、プーリ4、主ロープ5、乗り場ドア6、位置検出板7、かご停止位置検出装置8、ロータリーエンコーダ9、及びエレベーター制御装置10を備える。
【0015】
乗りかご1は、釣合い重り3と主ロープ5で接続され、巻上機2による駆動で昇降路を昇降する。
主ロープ5は、プーリ4に掛けられ、釣合い重り3が乗りかご1と接触しない構成としてある。
乗り場ドア6は、乗りかご1が停止したとき、乗りかご1に設置されたかごドア1aに連動して開閉する。
【0016】
位置検出板7は、昇降路内の各階に設置される。また、かご停止位置検出装置8は、乗りかご1に設置される。そして、かご停止位置検出装置8は、位置検出板7を検出することで、かご位置が各階の停止位置であることを検出する。
ロータリーエンコーダ9は、巻上機2に設置される。ロータリーエンコーダ9が巻上機2の回転数を計測することで、乗りかご1の昇降位置が検出される。
【0017】
エレベーター制御装置10は、エレベーター運転制御部11、かご停止位置検出部12、エレベーター状態監視部13、ロボット状態監視部14、遠隔制御部15、及び通信部17を備える。
エレベーター運転制御部11は、乗りかご1の昇降を制御すると共に、かごドア1a及び乗り場ドア6の開閉を制御する。また、エレベーター運転制御部11は、以下に説明するように、乗りかご1の床面と乗場の床面とを一致させる床合わせ運転(着床位置ずれ補正運転)も制御して実行する。
【0018】
乗りかご1の着床位置ずれ補正運転は、以下の動作で行われる。
すなわち、乗りかご1が停止すると、まず停止位置検出部12は、かご停止位置検出装置8の検出信号に基づいて、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置の誤差を検出する停止位置検出処理を行う。
具体的には、停止位置検出部12は、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置の誤差が第一の閾値を超えて第二の閾値の間であるかどうかを検出する。ここでの第一の閾値は、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置との間に、ほぼ段差がないと見なせる値(例えば数mm程度)である。また、第二の閾値は、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置との間の段差が、乗客の乗降に支障がない程度に段差がある値(例えば1cmから数cm程度)である。
【0019】
エレベーター運転制御部11は、この停止位置検出部12による段差の検出値に基づいて、段差が第一の閾値を超えて第二の閾値の間である場合に、乗りかご1の昇降位置を調整する運転を行う。すなわち、エレベーター運転制御部11は、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置の誤差が、第一の閾値以内になるように着床位置ずれ補正運転を行う。
なお、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置の誤差が、第二の閾値を超えた場合とは、かごドア1a及び乗り場ドア6が開できない程度に着床位置が大きくずれている状況であるから、エレベーター運転制御部11は、着床位置ずれ補正とは別の補正運転を行う。
本例の場合、この着床位置ずれ補正運転が行われるタイミングについては、
図4のフローチャートで後述する。
【0020】
かご停止位置検出部12は、かご停止位置検出装置8と、ロータリーエンコーダ9からの信号に基づいて、乗りかご1の停止位置を検出する。かご停止位置検出部12が検出した乗りかご1の停止位置の上布は、エレベーター運転制御部11に供給される。
エレベーター状態監視部13は、エレベーター運転制御部11と通信して、乗りかご1の停止位置や走行状態を監視する。
【0021】
ロボット状態監視部(移動体状態監視部)14は、本例のエレベーターシステムが設置されたビル内で稼働中のロボット30の位置や動作状態を監視する移動体状態監視処理を行う。
遠隔制御部15は、エレベーター運転制御部11に対して、乗りかご1の特定階へのかご呼び登録要求などの指令を送信する。
通信部17は、所定のネットワークNWを介して、ロボット制御サーバ20との通信を行う。
【0022】
ロボット制御サーバ20は、ネットワークNWを介してロボット30との通信を行い、ロボット30からの要求指令の受信や、ロボット30への待機指令の送信などを行うことにより、ロボット30の運行を制御する。
ロボット30は、本例のエレベーターシステムが設置されたビル内を自律移動して、各種動作を行う。例えば、ロボット30として、荷物搬送ロボット、案内ロボット、清掃ロボット、監視ロボットなどがある。本例のエレベーターシステムにおけるロボット30は、ロボット制御サーバ20からの指示により、その移動が制御される。このロボット30の移動時には、エレベーターを利用することができる。
【0023】
[エレベーター制御装置のハードウェア構成例]
図2は、本例のエレベーター制御装置10を構成するコンピュータのハードウェア構成例を示す。
図1に示すエレベーター制御装置10は、例えば情報処理装置であるコンピュータにより構成することができる。
すなわち、エレベーター制御装置10としてのコンピュータは、プロセッサであるCPU(中央処理ユニット:Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、及び不揮発性ストレージ10dを備える。
不揮発性ストレージ10dとしては、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、あるいは半導体メモリなどが使用される。
また、コンピュータは、他の機器とデータの送受信を行うためのネットワークインターフェース10eと、各種情報が入力される入力部10fとを備える。
【0024】
CPU10aは、ROM10bまたは不揮発性ストレージ10dが記憶したプログラムをRAM10c上で実行することで、
図1に示すエレベーター運転制御部11などの各処理部が構成される。
不揮発性ストレージ10dには、エレベーター制御装置10としての制御処理を行うプログラムが記憶される他に、エレベーターの制御状態やロボット30の動作状態などの情報が記憶される。乗りかご1の着床位置ずれ補正運転を行うプログラムについても、不揮発性ストレージ10dに記憶される。
【0025】
ネットワークインターフェース10eは、ロボット制御サーバ20などとの通信機能を有する。
入力部10fは、乗りかご1の制御盤からの情報や、かご停止位置検出装置8やロータリーエンコーダ9からの信号が入力される。
【0026】
[ロボット乗降時の処理]
次に、本例のエレベーターシステムの乗りかご1を、ロボット30が利用する際の制御処理について説明する。
図3は、ロボット30が乗りかご1に乗降する際の、ロボット30及びロボット制御サーバ20の処理を示すフローチャートである。
まず、エレベーターの乗り場に到着したロボット30は、ロボット制御サーバ20に対して、ロボット30の乗車階と行先階、利用するエレベーター(乗りかご)を識別する識別ID情報を含むエレベーター利用要求を送信する(ステップS11)。
【0027】
ロボット30からのエレベーター利用要求を受信したロボット制御サーバ20は、受信したエレベーター利用要求に含まれる識別IDより、ロボット30が利用する乗りかご1のエレベーター制御装置10を識別する。そして、ロボット制御サーバ20は、識別したエレベーター制御装置10に対して、エレベーター利用要求を送信する。このときロボット制御サーバ20は、エレベーター利用要求に含まれるロボットの乗車階と降車階のデータを保持する。
【0028】
通信部17は、ロボット制御サーバ20よりエレベーター利用要求を受信し、遠隔制御部15にエレベーター利用要求を送る。遠隔制御部15は、取得したエレベーター利用要求を、エレベーター運転制御部11に供給し(ステップS12)、エレベーター運転制御部11は、乗りかご1の運転を開始する。
【0029】
遠隔制御部15は、エレベーター運転制御部11に対してエレベーター利用要求を送信した後、エレベーター状態監視部13に対してエレベーター状態チェック指令を送信する。
エレベーター状態監視部13は、エレベーター状態チェック指令を受信すると、エレベーター運転制御部11との通信を行い、乗りかご1の現在階、乗りかご1に設置されたかごドア1aの開閉状態、乗りかご1の着床状態などのエレベーター運転状態を取得する。
そして、エレベーター状態監視部13は、取得したエレベーター運転状態のデータを、通信部17を介して定期的にロボット制御サーバ20に送信する(ステップS13)。
【0030】
ロボット制御サーバ20は、受信したエレベーター運転状態に含まれる乗りかご1の着床状態及び乗りかご1の現在階情報から、乗りかご1がロボット乗車階に到着したか否かを判断する(ステップS14)。
ステップS14で、乗りかご1がロボット乗車階に到着したと判断したとき(ステップS14のYes)、ロボット制御サーバ20は、乗りかご1のドア開が完了したか否かを判断する(ステップS15)。
ステップS14で、乗りかご1がロボット乗車階に到着していないと判断したとき(ステップS14のNo)、並びにステップS15で、乗りかご1のドア開が完了していないと判断したとき(ステップS15のNo)、ロボット制御サーバ20は、ステップS14の判断に戻る。
【0031】
ステップS15で、乗りかご1のドア開が完了したと判断したとき(ステップS15のYes)、ロボット制御サーバ20は、ロボット30に対して乗車開始指令を送信し、乗車開始指令を受信したロボット30は、乗りかご1への乗車を開始する(ステップS16)。
ロボット30は、乗りかご1への乗車が完了後、ロボット制御サーバ20に対して乗車完了信号を送信する(ステップS17)。
【0032】
ロボット制御サーバ20は、ロボット30から受信した乗車完了信号をエレベーター制御装置10に送信する。エレベーター制御装置10の通信部17は、ロボット30の乗車完了信号を受信すると、遠隔制御部15を介してエレベーター運転制御部11に乗車完了信号を送信する。
エレベーター運転制御部11は、ロボット30の乗車完了信号を受信すると、エレベーターの運転を開始し、乗りかご1を出発させる(ステップS18)。
【0033】
次に、ロボット制御サーバ20は、エレベーター制御装置10から受信したエレベーター運転状態に含まれる乗りかご1の着床状態及び乗りかご1の現在階情報から、乗りかご1がロボット降車階に到着したか否かを判断する(ステップS19)。
ステップS19で、乗りかご1がロボット降車階に到着したと判断したとき(ステップS19のYes)、ロボット制御サーバ20は、乗りかご1のドア開が完了したか否かを判断する(ステップS20)。
【0034】
ステップS19で、乗りかご1がロボット降車階に到着していないと判断したとき(ステップS19のNo)、及びステップS20で、乗りかご1のドア開が完了していないと判断したとき(ステップS20のNo)、ロボット制御サーバ20は、ステップS19の判断に戻る。
そして、ステップS20で、乗りかご1のドア開が完了したと判断したとき(ステップS20のYes)、ロボット制御サーバ20は、ロボット30に対して降車開始指令を送信する。ロボット30は、ロボット制御サーバ20からの降車開始指令を受信すると、乗りかご1からの降車を開始する(ステップS21)。
ロボット30は、乗りかご1からの降車完了後に、ロボット制御サーバ20に対して降車完了信号を送信する。ロボット制御サーバ20は、エレベーター制御装置10にロボット30の降車完了信号を送信する(ステップS22)。
このように乗りかご1の着床状態及びドア開閉状態と連動してロボット30の乗降を行う。
【0035】
[エレベーター制御装置のロボット利用時の処理]
図4は、エレベーター制御装置10での、ロボット30の利用時の処理の例を示すフローチャートである。
エレベーター運転制御部11は、遠隔制御部15からのエレベーター利用指令の受信の有無をチェックする(ステップS31)。ステップS31で、エレベーター利用指令を受信した場合(ステップS31のYes)、エレベーター運転制御部11は、乗りかご1をロボット連動運転モードに切り替える(ステップS32)。
【0036】
次に、エレベーター運転制御部11は、かご停止位置検出部12が検出した乗りかご1の現在階と、エレベーター利用指令に含まれるロボット乗車階とが一致して、ロボット乗車階に到着しているか否かを判断する(ステップS33)。
ステップS33でロボット乗車階に到着していないと判断した場合(ステップS33のNo)、エレベーター運転制御部11は、ロボット乗車階へのかご呼び指令を作成する(ステップS34)。
【0037】
また、ステップS33でロボット乗車階に到着していると判断した場合(ステップS33のYes)、エレベーター運転制御部11は、ロボット30の乗車完了信号を受信したか否かを判断する(ステップS35)。ステップS35でロボット30の乗車完了信号を受信した場合(ステップS35のYes)、エレベーター運転制御部11は、ロボット降車階を行先階として呼び登録する(ステップS36)。
【0038】
ステップS31でエレベーター利用指令を受信しない場合(ステップS31のNo)と、ステップS34でかご呼び指令を作成した後と、ステップS36でロボット降車階を行先階に呼び登録した後と、ステップS35でロボット乗車完了信号を受信しない場合(ステップS35のNo)、エレベーター運転制御部11は呼び登録状況をチェックする(ステップS37)。
【0039】
次に、エレベーター運転制御部11は、呼び登録があるか否かを判断する(ステップS38)。ステップS38で呼び登録があるとき(ステップS38のYes)、エレベーター運転制御部11は、呼び登録階に乗りかご1を走行させる(ステップS39)。そして、エレベーター運転制御部11は、乗りかご1の着床制御を開始する(ステップS40)。
ステップS40の着床制御を開始した後、及びステップS38で呼び登録がないとき(ステップS38のNo)、エレベーター運転制御部11は、自身がロボット連動運転モードであるか否かを判断する(ステップS41)。
ステップS41でロボット連動運転モードである場合(ステップS41のYes)、エレベーター運転制御部11は、乗りかご1がロボット乗車階又はロボット降車階に着床したか否かを判断する(ステップS42)。
【0040】
ステップS42でロボット乗車階又はロボット降車階に着床した場合(ステップS42のYes)、エレベーター運転制御部11は、かごドア1a及び乗り場ドア6が閉状態のままで、停止位置検出部12の検出信号から着床位置ずれ補正運転が必要な状況であるか否かを判断する(ステップS43)。ここでの着床位置ずれ補正運転が必要な状況とは、先に説明したように、乗場の床と乗りかご1の床の停止位置の誤差が、第一の閾値を超えて第二の閾値の間にある場合である。
【0041】
ステップS43で着床位置ずれ補正運転が必要な状況のとき(ステップS43のYes)、エレベーター運転制御部11は、かごドア1a及び乗り場ドア6が閉状態の状態で、着床位置ずれ補正運転を行う(ステップS44)。
ステップS44で着床位置ずれ補正運転を行った後、及びステップS43で着床位置ずれ補正運転が必要でない状況のとき(ステップS43のNo)、エレベーター運転制御部11は、着床完了の処理を行い(ステップS45)、かごドア1a及び乗り場ドア6の開を開始し、ドア開を完了させる(ステップS46)。
このドア開完了に伴って、本例のエレベーターシステム10の通信部17は、ロボット制御サーバ20に、ドア開完了の通知を送る。ここでロボット30が乗りかご1からの降車時である場合には、ロボット制御サーバ20がロボット30に、乗りかご1からの降車指示を行うことになる。
【0042】
一方、ステップS41でロボット連動運転モードでない場合(ステップS41のNo)、並びにステップS42でロボット乗車階とロボット降車階以外の階に着床した場合(ステップS42のNo)、エレベーター運転制御部11は、かごドア1a及び乗り場ドア6の開を開始させる(ステップS47)。
そして、エレベーター運転制御部11は、停止位置検出部12の検出信号から着床位置ずれ補正運転が必要な状況であるか否かを判断する(ステップS48)。
【0043】
ステップS48で着床位置ずれ補正運転が必要な状況のとき(ステップS48のYes)、エレベーター運転制御部11は、着床位置ずれ補正運転を行う(ステップS49)。
ステップS49で着床位置ずれ補正運転を行った後、及びステップS48で着床位置ずれ補正運転が必要でない状況のとき(ステップS48のNo)、エレベーター運転制御部11は、着床完了の処理を行う(ステップS50)。
【0044】
[本実施の形態例による効果]
以上説明したように、本例のエレベーターシステムによると、ロボット30が乗降する際には、ドア開の前に着床位置ずれ補正運転が行われるようになる。したがって、ロボット30は確実に乗りかご1と乗り場に段差がない状態で乗降することができる。これにより、乗りかご1と乗り場との間に段差がある状態でロボット30が乗降し転倒することを効果的に防止することができる。
また、ロボット乗車階やロボット降車階でない階に着床した際には、ドア開を優先して行い、その後着床位置ずれ補正運転を行うようにしたので、着床後迅速にドア開が行われ、ドア開までの時間を短縮でき、エレベーターの効率のよい運転が可能になる。
【0045】
特に、本例のエレベーターシステムでは、運転モードとして、ロボット連動運転モードであり、ロボット30が乗りかご1に搭乗している場合、あるいは乗降しようとしている場合に、ドア開の前に着床位置ずれ補正運転を行うようにしたので、ロボット30の乗降時の段差階床を確実に行うことができる。
【0046】
さらに、乗りかごからの降車指示を行うエレベーター運転制御部からのドア開完了が出力された後、ロボット制御サーバ20で、乗りかごからの降車処理を行うようにしたことで、着床位置が適正な状態でのドア開完了で、良好にロボット30が乗りかご1から降車できるようになる。
【0047】
さらに、ロボット連動運転モードでない場合、つまり移動体状態監視部14で監視したロボット30の位置が乗りかご1内でないとき、並びにロボット30が乗りかご1に搭乗しようとしていないときには、ドア開指示を行った後、床合わせ運転を行うようにしたことで、乗客の乗降時には迅速にドア開を行うことが可能になる。
【0048】
さらに、停止階で搭乗予定の移動体があることを検出したときにも、床合わせ運転完了後に、乗りかごのドア開指示を行うことで、ロボット30の乗りかご1への搭乗時にも、ドア開の前に着床位置ずれ補正運転が行なえ、適切に制御できるようになる。
【0049】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した実施の形態例で説明した構成や処理は、各種変形や変更が可能である。
【0050】
例えば、上述した実施の形態例では、ロボット30は、ロボット制御サーバ20からの指令に基づいて自律移動などの動作を行うようにした。これに対して、ロボット30は、自身が直接自律移動などの動作を行うようにし、エレベーター制御装置10は、ロボット30と通信を行うようにしてもよい。この場合、ロボット30は、エレベーター制御装置10からのドア開完了などの指令に基づいて、乗りかご1への搭乗などの動作を行う。
【0051】
また、上述した実施の形態例では、自律移動可能なロボット30がエレベーターを利用する場合について説明したが、本発明は、ロボット以外の移動体がエレベーターを利用する場合にも適用が可能である。
また、上述した実施の形態例では、ロボット30が乗りかご1に搭乗して、行先階で降車するときと、ロボット30が乗りかご1に乗り込むときの双方で、ドア開の前に着床位置ずれ補正運転が行われるようにしたが、例えばロボット30が乗りかご1に搭乗中のときだけ、着床位置ずれ補正運転を行うようにしてもよい。
【0052】
また、
図1に示す構成では、エレベーター制御装置10が、ロボット状態監視部14などを備えて、ロボットと連携して処理を行うようにしたが、既存のエレベーターシステムの制御装置に実装されたプログラムを修正して、同様の処理を行うようにしてもよい。
この場合のプログラムについては、
図2に示したコンピュータ内の不揮発性ストレージやメモリに用意する他に、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
さらに、エレベーター制御装置10の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0053】
また、
図1に示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、
図3~
図4に示すフローチャートについても、処理結果が同じであれば、処理順序を変更したり、複数の処理を同時に実行してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…乗りかご、1a…かごドア、2…巻上機、4…プーリ、5…主ロープ、6…乗り場ドア、7…位置検出板、8…停止位置検出装置、9…ロータリーエンコーダ、10…エレベーターシステム、10a…CPU、10b…ROM、10c…RAM、10d…不揮発性ストレージ、10e…ネットワークインターフェース、10f…入力部、11…エレベーター運転制御部、12…停止位置検出部、13…エレベーター状態監視部、14…ロボット状態監視部、15…遠隔制御部、17…通信部、20…ロボット制御サーバ、30…ロボット