(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036027
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】組立家屋
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20240308BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E04H1/12 A
E04B1/343 L
E04H1/12 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140724
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100105418
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 聖
(72)【発明者】
【氏名】青木 智徳
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で十分な構造強度を確保できる組立家屋を提供する。
【解決手段】天井2は、外縁部に沿って折曲片21A~21C,23A,23B,25A~25Cを有し、折曲片は側壁パネル4A~4Dの上縁部に重畳した状態で左右に複数の連結手段12により固定され、床3は、外縁部に沿って折曲片31A~31C,33A~33Cを有し、折曲片は側壁パネル4A~4Dの下縁部に重畳した状態で左右に複数の連結手段12により固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル体が連結されて自立可能な立体構造を成す組立家屋であって、
前記パネル体は中空板材から成る天井、床、連接されて筒状体を成す複数の側壁パネルをそれぞれ構成し、
前記天井は、外縁部に沿って折曲片を有し、該折曲片は前記側壁パネルの上縁部に重畳した状態で左右に複数の連結手段により固定され、
前記床は、外縁部に沿って折曲片を有し、該折曲片は前記側壁パネルの下縁部に重畳した状態で左右に複数の連結手段により固定されていることを特徴とする組立家屋。
【請求項2】
前記中空板材は、表板と裏板との間に中空状の多数の気泡が均等配置されて成ることを特徴とする請求項1に記載の組立家屋。
【請求項3】
前記側壁パネルは左右に連接される複数のパネル体により構成され、隣接するパネル体の側部同士には上下に亘って重畳された中空板材から成るジョイント用パネルと連結手段により上下方向に複数箇所で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の組立家屋。
【請求項4】
前記ジョイント用パネルは、上端が前記天井の折曲片の下端に当接し、下端が前記床パネルの折曲片の上端に当接していることを特徴とする請求項3に記載の組立家屋。
【請求項5】
前記組立家屋の室内を挟んで対向する前記側壁パネルの両面に、それぞれ排気口と給気口とが対向して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の組立家屋。
【請求項6】
前記排気口と前記給気口とは、前記天井体の前記折曲片の近傍に複数並設され、前記排気口と前記給気口を挟んで前記ジョイント用パネルが配設されていることを特徴とする請求項5に記載の組立家屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネル体を組み立てて立体構造を成す簡易的な組立家屋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物内や屋外等において、簡易な更衣室や緊急用の医療室等の設営を目的として、複数のパネル体を組み立てて立体空間を成す組立家屋がある。このような組立家屋は、特に合成樹脂製などの軽量のパネル体を用いる場合が多く、特別な知識を必要とせずに比較的容易に組み立てを行えるとともに、分解状態での持ち運びが簡単である。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている組立家屋は、縦長のパネル体を幅方向に複数連接し、これらパネル体の両側部を縦方向に沿って連結金具により連結して筒状体を成すとともに、筒状体の天井側すなわちパネル体の上端部に亘って上端部金具を取り付けて立体構造を成す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-295907号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような組立家屋の利用用途は多岐にわたり、特許文献1のように人が所定時間以上滞在するもののように、特に高さが必要となるものは、立体構造が崩れるのを防止する必要があり、特許文献1では天井側に上端部金具を備えるとともに、上端部金具に十字の剛体である十字金具が固定されて天井部の強度が確保されている。これら上端部金具と十字金具のような剛体からなるフレーム構造を有することで、筒状に連接したパネル体の水平方向の変形を効果的に防止できる一方で、天井側の重量が増大してしまい、これを支えるために縦方向の柱が必要になる。引用文献1ではパネル体の両側縁が縦方向に延びる連結金具で連結されており、この剛体からなる連結金具が縦方向の柱として機能している。組立家屋は、持ち運びが簡単であることが当初の目的であるところ、引用文献1では上記したようにフレーム構造や柱が必要になることから、組立作業が煩雑化するとともに、その重量から持ち運びが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡素な構成で十分な構造強度を確保できる組立家屋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の組立家屋は、
複数のパネル体が連結されて自立可能な立体構造を成す組立家屋であって、
前記パネル体は中空板材から成る天井、床、連接されて筒状体を成す複数の側壁パネルをそれぞれ構成し、
前記天井は、外縁部に沿って折曲片を有し、該折曲片は前記側壁パネルの上縁部に重畳した状態で左右に複数の連結手段により固定され、
前記床は、外縁部に沿って折曲片を有し、該折曲片は前記側壁パネルの下縁部に重畳した状態で左右に複数の連結手段により固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、天井の外縁部に沿う折曲片が側壁パネルの上縁部に固定されることで、折曲片が天井の外形に沿うフレームとして機能し強度を高めることができ、同様に床の外縁部に沿う折曲片が側壁パネルの下縁部に固定されることで、折曲片が床の外形に沿うフレームとして機能して強度が高められる。そのため、天井の荷重の増大を防ぎながら、これら天井と床との間に連結された側壁パネルが成す筒状体の変形を効果的に防止でき、立体構造を維持するのに十分な構造強度を確保することできる。加えて、天井の折曲片と床の折曲片を側壁にそれぞれだけの固定する簡素な構造で構造強度を確保した立体構造を成すことができる。
【0008】
前記中空板材は、表板と裏板との間に中空状の多数の気泡が均等配置されて成ることを特徴としている。
この特徴によれば、中空板材は縦方向と横方向のいずれの曲げ変形に対しても強いため、立体構造において脆弱部が偏在することがない。
【0009】
前記側壁パネルは左右に連接される複数のパネル体により構成され、隣接するパネル体の側部同士には上下に亘って重畳された中空板材から成るジョイント用パネルと連結手段により上下方向に複数箇所で固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、中空板材から成る軽量のジョイント用パネルが上下方向に複数本配設されることで、側壁パネルが成す筒状体の構造強度を高めることができる。
【0010】
前記ジョイント用パネルは、上端が前記天井の折曲片の下端に当接し、下端が前記床の折曲片の上端に当接していることを特徴としている。
この特徴によれば、天井側の荷重がジョイント用パネルを介して床側に支持されるため、天井側の荷重が側壁パネルに掛かり難く、側壁パネルが成す筒状体の変形を長期間に亘って効果的に抑制することができる。
【0011】
前記組立家屋の室内を挟んで対向する前記側壁パネルの両面に、それぞれ排気口と給気口とが対向して形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、排気口と給気口とが対向して形成されているため、室内の空気の換気能力が高く、居住性に優れる。
【0012】
前記排気口と前記給気口とは、前記天井体の前記折曲片の近傍に複数並設され、前記排気口と前記給気口を挟んで前記ジョイント用パネルが配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、排気口と給気口とが組立家屋の上方に複数並設されることで、室内の空気の換気能力を高めながら、これら排気口と給気口とが形成されて強度が低下した側壁パネルの一部は、一対のジョイント用パネルと折曲片とにより構成される強度が高められた下向きコ字状の領域に位置するため、排気口と給気口が形成されたことによる構造強度の低下の影響が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る組立家屋を示す斜視図である。
【
図3】天井を構成するパネル体を示す平面図である。
【
図5】(a)~(c)は各側壁パネルを構成する中央パネルをそれぞれ示す図である。
【
図6】(a)は連結手段を裏側から見た斜視図であり、(b)は連結手段を表側から見た斜視図である。
【
図10】(a)はパネル体の一部断面図であり、(b)はパネル体の角部の拡大図である。
【
図11】パネル体における折部が形成された箇所を示す平面図である。
【
図12】(a)は
図11のA-A断面図であり、(b)はB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る組立家屋を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る組立家屋につき、
図1から
図12を参照して説明する。
【0016】
本実施例の組立家屋は、主に屋内に設置されて、内部の音が外部に漏れにくくすることで、内部での作業に没頭し易い環境を提供することを目的としたものであり、特にコンピュータゲームを行うための個室(ゲーミングブース)として利用される場合を例に取り説明する。
【0017】
図1と
図2に示されるように、組立家屋1は、天井2と、床3と、連接されて筒状を成す複数の側壁パネル4A~4Dから成る筒状体4と、によって略直方体を成すように構成されている。
【0018】
図2及び
図3に示されるように、天井2は、3枚のパネル体2A,2B,2Cにより構成されている。パネル体2Aは、基部20と基部20の外縁部の3辺に沿って設けられた折曲片21A~21Cを備えている。中央のパネル体2Bは、基部22と基部22の外縁部の対向する2辺に沿って設けられた折曲片23A,23Bを備えている。パネル体2Cは、基部24と基部24の外縁部の3辺に沿って設けられた折曲片25A~25Cを備えている。
【0019】
パネル体2Aの基部20における折曲片21A~21Cを備えていない辺20dは、パネル体2Bの基部22における折曲片23A,23Bを備えていない一方の辺22cと連接され、パネル体2Bの基部22における折曲片23A,23Bを備えていない他方の辺22dは、パネル体2Cの基部24における折曲片25A~25Cを備えていない辺24dと連接される。連接されたパネル体2Aの基部20とパネル体2Bの基部22とパネル体2Cの基部24の合計面積及び形状は、後述する筒状体4の開口の面積及び形状と等しい。
【0020】
図2及び
図4に示されるように、床3は、2枚のパネル体3A,3Bにより構成されている。パネル体3Aは、基部30と基部30の外縁部の3辺に沿って設けられた折曲片31A~31Cを備えている。パネル体3Bは、基部32と基部32の外縁部の3辺に沿って設けられた折曲片33A~33Cを備えている。
【0021】
パネル体3Aの基部30における折曲片31A~31Cを備えていない辺30dは、パネル体3Bの基部32における折曲片33A~33Cを備えていない一方の辺32dと連接される。連接されたパネル体3Aの基部30とパネル体3Bの基部32との合計面積及び形状は、筒状体4の開口の面積及び形状と同一になっている。
【0022】
図1に示されるように、4枚の側壁パネル4A~4Dが連接されて、上下に開口を有する筒状体4が構成されている。これら側壁パネル4A~4Dはそれぞれ隣接するパネルの側端部同士が直交するように配置され、筒状体4の開口は平面視で矩形状を成している。
【0023】
図2に示されるように、側壁パネル4Aは、中央パネル40Aと側部パネル40B,40Cとをそれぞれ連結して構成されている。連結について詳しくは、
図5(a)と
図7に示されるように、中央パネル40Aの側部40d,40eには側部パネル40B,40Cの側部40f,40gがそれぞれ隣接し突き合わされており、中央パネル40Aと側部パネル40B,40Cとが上下方向に亘ってジョイント用パネル5,5がそれぞれ重畳し、連結手段12(
図6参照)でそれぞれ連結されている。
【0024】
中央パネル40Aの側部40d,40eには連結用の略矩形状の孔部10が上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して3箇所形成されている。また、側部パネル40Bの側部40fと、側部パネル40Cの側部40gにも、同様に孔部10が上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して3箇所形成されている。更に、ジョイント用パネル5には上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して形成される孔部10が左右に2列、合計で6箇所形成されている。これら孔部10の上下方向の離間距離はそれぞれ等しい。以降、これら全ての孔部10は同寸法かつ同形状である。
【0025】
中央パネル40Aは、左右中央部に下方に向けて開放する開放部40hを有して門型に形成されている。そして、この開放部40hを閉塞可能なドアパネル11が中央パネル40Aの一方の側部40dに片持状態で固定されている。開放部40hは、組立家屋1の出入口を構成し、ドアパネル11により開放部40hが開閉可能となっている。
【0026】
側壁パネル4Bは、中央パネル41Aと側部パネル41B,41Cとを連結して構成されている。側壁パネル4Dは、側壁パネル4Bと同様の構成であるため、説明を省略する。連結について詳しくは、隣接し突き合わされた端縁部に上下方向に亘ってジョイント用パネル5が重畳し、連結手段12でそれぞれ固定され、連結されている。
【0027】
図5(b)と
図9に示されるように、中央パネル41Aの側部41d,41eには連結用の孔部10が上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して3箇所形成されている。また、側部パネル41Bの側部41fと、側部パネル41Cの側部41gにも、同様に孔部10が上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して3箇所形成されている。後に詳述するが、中央パネル41Aの上部には、排気口と給気口のいずれかを構成する通気孔43が幅方向に3つ並設されている。
【0028】
側壁パネル4Cは、中央パネル42Aと側部パネル42B,42Cとを連結して構成されている。連結について詳しくは、隣接し突き合わされた端縁部に上下方向に亘ってジョイント用パネル5が重畳し、後述の連結手段12でそれぞれ固定され、連結されている。
【0029】
図5(c)と
図9に示されるように、中央パネル42Aの側部42d,42eには連結用の孔部10が上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して3箇所形成されている。また、側部パネル42Bの側部42fと、側部パネル42Cの側部42gとに同様に孔部10が上部と中央部と下部にそれぞれ上下に離間して3箇所形成されている。
【0030】
側壁パネル4A~4Dの上下端部には、連結用の孔部10がそれぞれ複数形成されている。詳しくは、
図1及び
図5(a)に示されるように、側壁パネル4Aを構成する中央パネル40Aの上端には、左右端部に2つずつ孔部10が並設されており、下端には左右端部に1つずつ孔部10が形成されている。側部パネル40B,40Cの上端と下端には、左右方向の中央に1つ孔部10が形成されている。
【0031】
図1及び
図5(b)に示されるように、側壁パネル4Bを構成する中央パネル41Aの上端には、左右端部に1つずつ孔部10が形成されており、下端には左右端部に1つずつ孔部10が形成されている。側部パネル41B,41Cの上端と下端には、左右方向の中央に1つ孔部10が形成されている。
【0032】
図1及び
図5(c)に示されるように、側壁パネル4Cを構成する中央パネル42Aの上端には、左右端部に2つずつ孔部10が並設されており、下端には左右端部に1つずつ孔部10が形成されている。側部パネル41B,41Cの上端と下端には、左右方向の中央に1つ孔部10が形成されている。
【0033】
図3に示されるように、天井2の折曲片23A,23Bと、床3の折曲片33A~33Cには、左右端部に1つずつ孔部10が形成されている。これら天井2の折曲片23A,23Bに形成された孔部10は、側壁パネル4A~4Cの上端に形成された孔部10と対応する位置に配置されており、床3の折曲片33A~33Cに形成された孔部10は、側壁パネル4A~4Cの下端に形成された孔部10と対応する位置に配置されている。
【0034】
次いで、連結手段12について
図6を用いて説明する。
図6(a)に示されるように、連結手段12は、ベース部材13と操作部材14とから構成されている。ベース部材13の略中央には、前後に貫通する孔部13aが形成され、この孔部13aに操作部材14が回転操作可能に挿嵌されている。
【0035】
ベース部材13は、矩形状の板部130と、その裏側にそれぞれ孔部13aを囲むように突出する挿込片13b,13bと、係止爪13c,13cとを備えている。挿込片13bは、その左右寸法が孔部10の左右幅と略同寸であり、対向する挿込片13b,13bの上下端部の離間幅が孔部10の上下幅と略同寸である。
【0036】
係止爪13c,13c同士は、自然状態においてそれぞれ近接し、これら対向する係止爪13c,13cの左右端部の離間幅が孔部10の左右幅と略同寸であり、操作部材14の回転操作により外方にそれぞれ押し出され、孔部10の左右幅より大になる構成となっている。
【0037】
図6(b)に示されるように、操作部材14は、表側にツマミ14aを備え、裏側に線状に頂点を有する山部14bを備えている。係止爪13c,13cの対向面にはそれぞれ凸部13d,13dが形成されており、操作部材14の位相によっては、これら凸部13d,13dは山部14bの谷部14c,14cにそれぞれ位置し、係止爪13c,13cが近接側に位置した状態となる。この状態から操作部材14が回転操作されることにより、係止爪13c,13cの凸部13d,13dは操作部材14の側面14dと接触する位置まで案内され、これにより操作部材14の回転操作により外方にそれぞれ押し出される。これにより、係止爪13c,13cが孔部10から離脱不能な状態となる。連結手段12はパネル体同士やジョイント用パネル5の重畳された孔部10,10に挿込片13b,13bと係止爪13c,13cを挿通させ、操作部材14を回転操作させて係止爪13c,13cを孔部10,10から離脱不能な状態とすることで、パネル体やジョイント用パネル5を連結・固定することができる。
【0038】
続いて、これら天井2、床3、筒状体4の組立手順について説明する。まず、床3に筒状体4を構成する側壁パネル4A,4Cを組み付ける。この組み付けの前に、ジョイント用パネル5と連結手段12を用いてパネル体を連結し、側壁パネル4A,4Cを形成しておく。床3のパネル体3A,3Bは、折曲片31A,31C及び折曲片33A,33Cを基部30及び基部32に対して折部BEを基点として直角に曲げて上方に起立させた状態にし、これら折曲片を側壁パネル4A,4Cの下端部にそれぞれ重合させる。
【0039】
次いで、側壁パネル4A,4Cの両側部に補助フレーム50(
図2参照)を取り付ける。補助フレーム50は、アルミを屈曲させて形成された断面視L字状の長尺材であり、側壁パネル4A,4Cの両側部の裏面側に粘着剤、例えば両面テープなどで簡易的に固着される。この補助フレーム50自体は、組み立てが完了した組立家屋1の構造強度にはほぼ機能しないものの、補助フレーム50が固着させた側壁パネル4A,4Cを一時的に立たせ易くなり、これら側壁パネル4A,4Cとパネル体3A,3Bの折曲片31A,31C及び折曲片33A,33Cとの固定時の作業効率を高めることができる。
【0040】
側壁パネル4A,4Cの下端部に対して、起立させたパネル体3A,3Bの折曲片31A,31C及び折曲片33A,33Cを重畳させ、孔部10同士が表裏に重なるように揃え、それぞれ連結手段12で固定する。このように、折曲片31A,31C及び折曲片33A,33Cを側壁パネル4A,4Cに固定することで、パネル体3A,3Bが連結され、所定寸法の床3が構成される。
【0041】
図7に示されるように、中央パネル40Aと側部パネル40B,40Cとを連結するジョイント用パネル5は、中央パネル40A及び側部パネル40B,40Cの上下寸法に比べて短い上下寸法を備えており、孔部10を用いて連結された状態で、上下端部5a,5bが、これら中央パネル40A及び側部パネル40B,40Cの上下端部よりそれぞれ中央側に位置する。
【0042】
そして、中央パネル40A及び側部パネル40B,40Cの下端部40Fからジョイント用パネル5の下端部5bまでの離間寸法L2と、折曲片の延出方向の寸法L1(
図3参照)とは、略同寸となっている。尚、折曲片(折曲片21A~21Cと折曲片23A,23Bと折曲片25A~25C)は、延出方向の寸法L1が全て同寸となっている。
【0043】
次いで、天井2を組み付ける。側壁パネル4A,4Cの上端部には、中央部左右に凹部45(
図5(a),(c)参照)がそれぞれ形成されている。これら対向する側壁パネル4A,4Cの凹部45には、天井フレーム51,51をそれぞれ架設させる。天井フレーム51は、アルミで板状に形成されており、その上下寸法が凹部45の深さ寸法と略等しい。
【0044】
一方の天井フレーム51は、パネル体2Aの辺20dとパネル体2Bの辺22cとの突き当てられた端部に亘ってその下方に配置され、他方の天井フレーム51は、パネル体2Bの辺22dとパネル体2Cの辺24dとの突き当てられた端部に亘ってその下方に配置され、パネル体2A~2Cを下方から支えることができる。天井フレーム51,51は、それぞれパネル体2A~2Cの境界部分のみに配されるため、必要最低限の構成でパネル体2A~2Cの各境界の下垂れを効果的に防止するとともに、音漏れや光漏れを防止できる。
【0045】
次いで、パネル体2A~2Cを側壁パネル4A,4Cの上端部に載せ、垂下させた折曲片21A,21C,折曲片23A,23B,折曲片25A,25Cを重畳させ、孔部10同士が表裏に重なるように揃え、それぞれ連結手段で連結する。このように、折曲片21A,21C,折曲片23A,23B,折曲片25A,25Cを側壁パネル4A,4Cに固定することで、パネル体2A~2Cが連結され、所定寸法の天井2が構成される。
【0046】
そして、中央パネル40A及び側部パネル40B,40Cの上端部40Rからジョイント用パネル5の上端部5aまでの離間寸法L2と、折曲片の延出方向の寸法L1とは、略同寸となっている。
【0047】
次いで、これまでに組み上がったものに、側壁パネル4B,4Dを組み付ける。まず、ジョイント用パネル5と連結手段12を用いてパネル体を連結し、側壁パネル4B,4Dを形成しておく。床3を構成するパネル体3A,3Bは、折曲片31B,33Bを基部30及び基部32に対して折部BEを基点として直角に曲げ、上方に起立させた状態にして側壁パネル4B,4Dの下端部とそれぞれ重合させる。
【0048】
天井2を構成するパネル体2A,2Cは、垂下させた折曲片21B,25Bを側壁パネル4B,4Dの上端部に重畳させる。そして、床3の折曲片31B,33B及び天井2の折曲片21B,23Bの孔部10を側壁パネル4B,4Dの上端部の孔部10と表裏に重なるように揃え、それぞれ連結手段12で連結する。
【0049】
次いで、側壁パネル4B,4Dの両側部を補助フレーム50に粘着剤で簡易的に固着させる。これにより、立体形状が仮保持されるため、側壁パネル4B,4Dと天井2及び床3との連結手段12を用いた固定時の作業を行いやすくなる。
【0050】
側壁パネル4Bを構成する中央パネル41A及び側部パネル41B,41Cの上端部41Rからジョイント用パネル5の上端部5aまでの離間寸法L2と、中央パネル41A及び側部パネル41B,41Cの下端部41Fからジョイント用パネル5の下端部5bまでの離間寸法L2と折曲片の延出方向の寸法L1とが、略同寸となっている。
【0051】
上記したように、天井2の外縁部に沿う折曲片21A~21C、折曲片23A,23B、折曲片25A~25Cが筒状体4の上縁部に固定されることで、これら折曲片が天井2の外形に沿うフレームとして機能して強度を高めることができる。同様に床3の外縁部に沿う折曲片31A~31C、折曲片33A~33Cが筒状体4の下縁部に固定されることで、これら折曲片が床3の外形に沿うフレームとして機能して強度が高めることができる。これにより、これら天井2と床3との間に連結された筒状体4の変形を効果的に防止することができる。また、天井2の荷重の増大を防ぎながら、立体構造を維持するのに十分な構造強度を確保することできる。加えて、天井2の折曲片と床3の折曲片を筒状体4にそれぞれ固定する簡素な構造で構造強度を確保した立体構造を成すことができる。
【0052】
また、側壁パネル4A~4Dはそれぞれ、左右に連接される複数のパネル体により構成され、隣接するパネル体の側部同士には上下に亘って重畳された中空板材から成るジョイント用パネル5と連結手段12により上下に亘って複数箇所で固定されている。このように中空板材から成る軽量のジョイント用パネル5が上下方向に複数本配設されることで、側壁パネル4A~4Dが成す筒状体4の構造強度を高めることができる。加えて、側壁パネル4A~4Dを分割して可搬性が高められている。
【0053】
また、ジョイント用パネル5は、その上端部5aが天井2の折曲片21A,21C,折曲片23A,23B,折曲片25A,25Cの下端2Rに当接し、下端部5bが床3の折曲片31A~31C、折曲片33A~33Cの上端3Fに当接しており、天井2側の荷重がジョイント用パネル5を介して床3側に支持されることで、天井2側の荷重が筒状体4に掛かり難く、長期間に亘って筒状体4の変形を効果的に抑制することができる。
【0054】
また、天井2の折曲片及び床3の折曲片は、同一の折曲片がそれぞれ分割された側壁パネル4A~4Dを構成するパネル体同士の間に跨ってそれぞれ連結手段12により固定されているため、これらパネル体同士の一体性を高めることができる。
【0055】
次いで、
図10を用いて各パネル体を構成する中空板材について説明する。尚、本実施例における天井2、床3、側壁パネル4A~4D、ジョイント用パネル5は同様の中空板材のパネル体で構成されており、
図10はこれらいずれかを構成するパネル体の一部として説明する。尚、説明の便宜上、パネル体15として説明する。
【0056】
図10(a)に示されるように、パネル体15は合成樹脂から形成され、中空構造をなすための立体加工を有するコア材であるキャップシート60の表裏両面に平板状の外装材であるライナーシート61とバックシート62がそれぞれ積層されて構成されている。
【0057】
詳しくは、キャップシート60の表面には中空状に膨出する多数の突起63が成形されている。キャップシート60は、例えば、図示しない多数のキャビティ孔が設けられた成形ロールの外周面に、シート状に連続して繰り出される溶融樹脂を接触させることで中空状に膨出する多数の突起63が真空成形される。
【0058】
キャップシート60は、突起63の開口側にバックシート62が積層され、突起63の頂面側にライナーシート61が積層され、これらバックシート62とライナーシート61とでキャップシート60を挟み込んだ状態で熱融着により積層一体化される。これにより、パネル体15が形成される。
【0059】
また、
図10(b)に示されるように、パネル体15は、切断端面に樹脂製のシート64を接着してもよい。これによれば、突き当てられたパネル体15の端面同士の変形を防止し、組立家屋1の構造強度を維持し易い。
【0060】
尚、パネル体15の形成方法は、上記に限らない。また、パネル体15の材料樹脂としては、例えば、ポリプロピレン, ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂などを挙げることができる。但し、これらに限定はされない。
【0061】
折曲片(折曲片21A~21C,折曲片23A,23B,折曲片25A~25C,折曲片31A~31C、折曲片33A~33C)は、パネル体15に所定の加工を施すことにより形成される。尚、ここでは説明の便宜上、折曲片16として説明する。
図12に示されるように、バックシート62側、ライナーシート61側のいずれか一方に所定箇所に切り込み(いわゆるハーフカット)加工を施し、残った他方側に切り込み箇所を基点として折り曲げ加工することで、折部BEを形成する。これにより、この折部BEに沿ってパネル体15の自由端が折曲片16となる。
【0062】
本実施例では、バックシート62側に切り込みを入れることによってライナーシート61側に折部BEを形成しており、折曲片16はバックシート側からライナーシート側に折り曲げ可能となっている。つまり、天井2または床3を構成するパネル体の基部は、それぞれライナーシート61が空間内側に、バックシート62が空間外側に位置するように配置される。
【0063】
図11はパネル体15をライナーシート61側から見た拡大図であり、突起63がない部位では、キャップシート60とバックシート62との融着部が切断されるように切り込みが入っている。これによれば、ライナーシート61のみが屈曲し、
図12(a)に示されるように、突起63がある部位では、バックシート62と突起63の側壁部とが切断されるように切り込みが入り、
図12(b)に示されるように、ライナーシート61に突起63の頂面が融着された部分が屈曲して折部BEが形成されるようになる。
【0064】
このように、折部BEは、ライナーシート61のみからなる部分と、ライナーシート61に突起63の頂面が融着されて二重構造となっている部分とが交互に配置されて形成されることになる。したがって、切り込みを入れて形成された折部BEは、ライナーシート61に突起63の頂面が融着された二重構造となっている部分によって部分的に補強されて、折部BEの曲げ易さを損なわない程度に強度が高められている。すなわち、折部BEを補強するために、例えば、折部を形成しようとする部位にシート材を積層して二重構造としただけでは、折部が折り曲げにくくなって、パネル体15の組み立てに支障をきたすおそれがあるが、本実施形態にあっては、折部BEが部分的に二重構造となるために、その曲げ易さを損なうことなく適度に折部が補強されることになり、軽量化と構造強度を両立できる。
【0065】
図2に示されるように、組立家屋の室内を挟んで対向する側壁パネル4B,4Dには、それぞれ通気孔43が対向して形成されている。側壁パネル4B,4Dには、天井2側の折曲片21B及び折曲片25Bの近傍にそれぞれ3つ並設されている。これにより、室内の空気の換気能力を高められている。
【0066】
通気孔43には、それぞれ図示しない送風装置が取り付けられている。そして、側壁パネル4B,4Dの一方には送風装置が室内側に送風するように設置されて給気口を成し、他方には送風装置が室外側に送風するように設置されて排気口を成している。これによれば、排気口と給気口とが室内に対向して形成されているため、組立家屋1の室内の空気の換気能力が高く、居住性に優れる。組立家屋1をゲーミングブースとして利用する際等には、コンピュータからの排熱を効率よく排出し、かつ室内のエアコンの空気を取り込むことで快適な室温とすることができ、特に有用である。
【0067】
また、排気口と給気口と同じ高さ位置に、中央パネル41Aと側部パネル41Bとの連結手段12及び対応する孔部10、中央パネル41Aと側部パネル41Cとの連結手段12及び対応する孔部10が位置している。そのため、排気口と給気口とが形成された中央パネル41Aの上部に、中央パネル41Aと一対のジョイント用パネル5,5との連結箇所が位置することで、排気口と給気口とに取り付けられた送風装置の荷重を一対のジョイント用パネル5,5及び側部パネル41B,41Cに分散でき、排気口と給気口の変形や破損を効果的に防止できるとともに、送風装置の振動に抗するのに十分な構造強度を達成でき、確実に保持することができる。
【0068】
また、これら排気口と給気口とは天井2側の折曲片の近傍に複数並設され、排気口と給気口を挟んで一対のジョイント用パネル5,5が配設されている。そのため、これら排気口と給気口とが形成されて強度が低下した側壁パネルの一部は、一対のジョイント用パネル5,5と折曲片とにより構成される強度が高められた下向きコ字状の領域に位置するため、通気孔43が形成されたことによる構造強度の低下の影響が少ない。
【0069】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0070】
例えば、前記実施例においてパネル体同士は、連結手段12と孔部10とにより連結・固定されている例を用いて説明したが、これに限らず種々の連結構造を採用することができるのはいうまでもなく、例えばドアパネル11は中央パネル40Aに対して上下位置を調整可能に取り付けるようにし、部屋の床面との離間距離を調整できるようにしてもよい。
【0071】
また、天井2、床3、側壁パネル4A~4Dは、それぞれ分割構造でなく一体でもよく、その場合には、運搬を簡単にするために複数の折部を形成して折りたたみ構造としてもよい。
【0072】
また、補助フレームについては、組立家屋1の構造強度にはほぼ機能しないため、省略してもよい。
【0073】
同様に、天井フレームに関しても、パネル体2A~2Cの境界付近の下垂れを防止するものであり、組立家屋1の構造強度にはほぼ機能しないため、例えばパネル体2A~2Cの各境界をテープなどで接合することで天井フレームを省略し、音漏れや光漏れを防止してもよい。
【0074】
また、側壁パネル4A~4Dには、配線を組立家屋1内に引き込むための貫通孔が形成さえていてもよく、強度の低下を抑制するために、貫通孔はジョイント用パネル5に対応する位置に設け、ジョイント用パネル5側に形成した貫通孔と連通するようにすることが好ましい。