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  • 特開-ガスバリア積層体および包装袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036029
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240308BHJP
   B32B 25/06 20060101ALI20240308BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B25/06
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140726
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 寛之
(72)【発明者】
【氏名】神永 純一
(72)【発明者】
【氏名】越山 良樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】石井 里佳
(72)【発明者】
【氏名】古田 薫
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA29
3E086DA08
4F100AA20C
4F100AK03D
4F100AK24D
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AK54B
4F100AL07D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA02B
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100EH46D
4F100EH66C
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100JB13B
4F100JD04
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】無機酸化物が蒸着した際でも、十分な水蒸気バリア性を有する紙を使用したガスバリア積層体を提供すること。
【解決手段】紙基材とアンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えた、ガスバリア積層体であって、アンカーコート層とオーバーコート層は、シリカ蒸着層と直接接して、かつ該ガスバリア積層体の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定されたアンカーコート層の軟化温度が180℃以上であることを特徴とするガスバリア積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材とアンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えたガスバリア積層体であって、
前記アンカーコート層と前記オーバーコート層は、前記シリカ蒸着層と直接に接しており、
前記ガスバリア積層体の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定された前記アンカーコート層の軟化温度は180℃以上である、
ことを特徴とするガスバリア積層体。
【請求項2】
紙基材と、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えた、ガスバリア積層体であって、
前記アンカーコート層は、エポキシ、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の少なくとも一種を有する、
ことを特徴とするガスバリア積層体。
【請求項3】
前記オーバーコート層が、極性基を少なくとも一種を有するポリオレフィンを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア積層体。
【請求項4】
前記シリカ蒸着層の厚みが10nm以上100nm以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア積層体。
【請求項5】
前記オーバーコート層の厚みが2μm以上10μm以下である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア積層体。
【請求項6】
前記紙基材の厚みが30μm以上100μm以下であり、且つ前記紙基材の厚みがガスバリア積層体全体の厚みの70%以上である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア積層体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のガスバリア積層体を含む包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバリア積層体及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品及び化学品等の多くの分野では、それぞれの内容物に応じた包装材が使用されている。包装材は、内容物の変質の原因となる水蒸気等の透過防止性(ガスバリア性)が求められる。
【0003】
近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、脱プラスチックの機運が高まっている。プラスチック材料の使用量削減の観点から、種々の分野において、プラスチック材料の代わりに、紙を使用することが検討されている。
【0004】
例えば下記特許文献1では、紙にバリア層を積層するガスバリア積層体が開示されており、紙基材上に、アンカーコート層、蒸着層、オーバーコート層がこの順で設けられた紙製バリア材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022―16714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、「アンカーコート層には、極性基を有する第一のポリオレフィンを含む。このようなアンカーコート層は柔軟性に優れ、屈曲後に蒸着層の割れを抑制することができるとともに、アンカーコート層と蒸着層との密着性を向上させることができる」、とあり、屈曲後の蒸着層の割れを抑制する試みはされている。しかし、上記特許文献1においては、蒸着膜として無機酸化物を蒸着した際に、金属を蒸着した際よりもバリア性が安定しないことについての検討はなされていない。
【0007】
そこで、本開示は、紙及び無機酸化物を使用したガスバリア積層体であって、紙成分比率が高く、かつ安定して優れたガスバリア性を有するガスバリア積層体、およびこれを含む包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示のガスバリア積層体の一つは、紙基材と、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えた、ガスバリア積層体であって、アンカーコート層とオーバーコート層はシリカ蒸着層と直接に接しており、かつ、該ガスバリア積層体の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定されたアンカーコート層の軟化点が180℃以上である。
本開示はまた、上記本開示に係るガスバリア積層体を含む包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、紙及び無機酸化物蒸着を使用したガスバリア積層体であって、紙成分比率が高く、かつ安定して優れたガスバリア性を有するガスバリア積層体、およびこれを含む包装袋を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本開示の一実施形態に係るガスバリア積層体を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<ガスバリア積層体>
図1は、一実施形態に係るガスバリア積層体を示す模式断面図である。一実施形態に係るガスバリア積層体10は、紙基材1と、アンカーコート層2と、蒸着層3と、オーバーコート層4と、をこの順に備える。アンカーコート層2は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、および、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む。
【0013】
上記ガスバリア積層体10を用いることで脱プラスチックや海洋ごみ問題に対応した、紙成分の高い、安定して優れた水蒸気バリア性を有し、屈曲後のバリア性劣化が少なく袋開封時の見た目が良好であり、マイクロ波加熱(電子レンジ)に利用できる、紙製包装材料を提供することができる。
【0014】
[紙基材]
紙基材1は、植物由来のパルプを主成分としている紙であれば特に制限はない。紙基材1は、ガスバリア積層体10が適用される包装袋の用途に応じて適宜選択すればよい。紙基材1の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙、グラシン紙が挙げられる。
【0015】
紙の重量は、ガスバリア積層体10の全体を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。紙の重量がガスバリア積層体10の全体を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、ガスバリア積層体10の全体が紙製であるということができる。また、このような積層体10は、リサイクル性に優れる。
【0016】
紙基材1の厚さは、例えば、30μm以上100μm以下であり、30μm以上70μm以下がより好ましい。また、紙基材1の厚さは、ガスバリア積層体10の全体の厚さの70%以上であってよい。紙基材1の厚さが、ガスバリア積層体10の全体の厚さの70%以上であれば、環境適性に優れているといえる。
【0017】
紙基材1には、少なくとも後述するアンカーコート層2と接する側にコート層を設けてあってもよい。コート層を設けることで、紙にアンカーコート層2が染み込むことを防ぐことができるほか、紙の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともでき、アンカーコート層2を欠陥なく均一に製膜することができる。コート層には、バインダー樹脂として、例えば、スチレン-ブタジエン系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系などの各種共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等を用い、填料として、例えばクレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。
【0018】
クレーコート層の厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、1~10μm、または3~8μmであってよい。
【0019】
[アンカーコート層]
アンカーコート層2は紙基材1の表面上に設けられ、少なくとも一種の極性基を含んでおり、ポリオレフィンを含んでいてもよく。ポリビニルアルコール系樹脂を含んでいてもよい。
【0020】
アンカーコート層2における極性基を有する樹脂の合計の含有量は、例えば50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であってよく、100質量%がさらに好ましい。
【0021】
極性基を有するポリオレフィンは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基およびカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも一種を有していてもよい。
エチレンやプロピレンに、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等カルボキシル基を有する不飽和化合物)や、不飽和カルボン酸エステルを共重合したもの、およびカルボン酸を塩基性化合物で中和した塩などを用いてもよく、その他、酢酸ビニル、エポキシ系化合物、塩素系化合物、ウレタン系化合物、ポリアミド系化合物等と共重合したものなどを用いてもよい。
具体的には、アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-酸化ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0022】
ポリビニルアルコール系樹脂とは、例えば、完全けん化のポリビニルアルコール樹脂、部分けん化のポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂である。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、300以上、1700以下が好ましい。重合度が300以上であれば、ガスバリア積層体10のガスバリア性および屈曲耐性が良好となり、重合度が1700以下であれば、後述するポリビニルアルコール系樹脂の塗液の粘度が低くなり、塗布性が良好になる。
【0023】
アンカーコート層2は、上記極性基を有するポリオレフィンおよびポリビニルアルコール系樹脂のほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、上記極性基を有するポリオレフィン以外のポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、メラミン、フェノール、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミド、でんぷんおよびその誘導体、およびセルロース誘導体等の樹脂、並びにシランカップリング剤、有機チタネート、グリセリン、グリコール類、カゼイン及びワックス等の添加剤が挙げられる。
【0024】
アンカーコート層2は、紙基材の密着性の向上や、ガスバリア積層体のガスバリア性向上のために設けられるものである。
アンカーコート層2が一種の極性基を含むことで、ガスバリア積層体10はガスバリア性に優れ、ポリビニルアルコール系樹脂を含むことで、水蒸気バリア性および酸素バリア性に一層優れ、ポリオレフィンを含むことで、ポリポリオレフィンの結晶性による緻密な膜の形成が可能であり、水蒸気バリア性が発現する。
【0025】
アンカーコート層2の厚さは、例えば、1μm以上であり、より好ましくは2μm以上である。また上限は、20μm以下であってよく、より好ましくは10μm以下であり、5μm以下がさらに好ましい。アンカーコート層2の厚さが1μm以上であれば、蒸着層3を均一に積層させることができる。アンカーコート層が厚いほど、紙基材1の凹凸を効率的に埋めることができ、蒸着層3をさらに均一に積層させることができる。また、アンカーコート層2の厚さが20μm以下であれば、コストを抑えつつ上記の各層を均一に積層させることができる。
【0026】
アンカーコート層2は、局所熱分析法により測定される軟化温度は180℃以上であり、さらに好ましくは185℃以上であってよく、190℃以上がさらに好ましい。特に軟化温度の上限はない。アンカーコート層2の軟化温度を180℃以上であれば、蒸着層3の緻密さの低下を抑制することができる。軟化温度が高いほど、蒸着の際にSiOx粒子の熱により、アンカーコート層2が軟化し伸びるため、シリカ蒸着層3に発生するマクロなクラックや、蒸着層3の緻密さの低下をさらに抑制することができる。
【0027】
アンカーコート層2を設ける方法としては、紙基材1上に上述したアンカーコート層2の構成材料及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0028】
[蒸着層]
蒸着層3は、無機化合物を蒸着した層であり、酸化ケイ素(SiOx)等を含むものであってもよい。
【0029】
蒸着層3の厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、10nm以上あり、より好ましくは20nm以上であり、30nm以上がさらに好ましい。蒸着層3の厚さの上限は、100nm以下であり、80nm以下がより好ましい。蒸着層3の厚さを10nm以上とすることで蒸着層3の連続性を十分なものとしやすく、100nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能および可撓性を達成しやすい。
【0030】
蒸着層3を備えることで、ガスバリア積層体10は良好な水蒸気バリア性を得ることができる。透明蒸着層3は金属光沢を有さないため、ガスバリア積層体10を用いた包装袋は、袋開封時の見た目が良好であるとともに、マイクロ波加熱(電子レンジ)に利用できる。なお、袋開封時の見た目を良好とし、マイクロ波加熱への利用を可能とする点から、ガスバリア積層体10は、金属の蒸着により形成された層を備えないことが好ましい。
【0031】
蒸着層3は、真空成膜手段によって成膜することが、水蒸気および酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法のなかでも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで抑制しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0032】
[オーバーコート層]
オーバーコート層4は、蒸着層3の表面上に蒸着層3に接するように設けられる。オーバーコート層4は、極性基を有するポリオレフィンを含んでいてよい。
【0033】
極性基を有するポリオレフィンは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基およびカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも一種を有していてもよい。
具体的には、アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等を用いてもよい。
【0034】
極性基を有するポリオレフィンを含むことで、オーバーコート層4は柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)に蒸着層3の割れを抑制することができるとともに、蒸着層3との密着性に優れる。さらに、上述した極性基を有するポリオレフィンを含むことで、水蒸気バリア性に優れるガスバリア積層体10を得ることができる。また、オーバーコート層4は、上記極性基を有するポリオレフィンを含むことで、ヒートシール層としての役割も兼ねることができるため、ヒートシール層を別途設けなくともよい。
【0035】
オーバーコート層4における極性基を有するポリオレフィンの含有量は、例えば、50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%がさらに好ましい。
【0036】
オーバーコート層4は、上記極性基を有するポリオレフィンのほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール等が挙げられる。
【0037】
オーバーコート層4の厚さは、例えば、2μm以上であり、3μm以上がより好ましい。オーバーコート層4の厚さの上限は、10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、5μm以下がさらに好ましい。オーバーコート層4の厚さが2μm以上であれば、上述したヒートシール層としての役割を十分に発揮することができる。また、オーバーコート層4の厚さが10μm以下であれば、コストを抑えつつ蒸着層3との密着性やバリア性を十分に発揮することができる 。
【0038】
オーバーコート層4を設ける方法としては、蒸着層3上に上述したポリオレフィン及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0039】
アンカーコート層2及びオーバーコート層4にそれぞれ含まれる極性基を有するポリオレフィンは、それぞれ同種のものであっても異種のものであってもよいが、製造の容易性等を考慮すれば、それぞれ同種のものであることが好ましい。
【0040】
以上、本実施形態に係るガスバリア積層体の一実施形態について説明したが、本開示はこれ以外のガスバリア積層体を含んでいてもよい。
【実施例0041】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0042】
<ガスバリア積層体の作成>
(実施例1)
紙(クレーコート紙、紙の厚み:50μm、クレーコート層の厚み:5μm)のクレーコート表面上に、ポリエポキシ樹脂の溶液をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、厚さ3μmのアンカーコート層を形成した。溶液は、メタノールと酢酸エチルの1:1混合溶媒17質量部に、マクシーブC93AT(三菱ガス化学社製)を24質量部と、マクシーブM-100(三菱ガス化学社製)を2質量部とを混合して調製した。続いて、アンカーコート層上に厚さ30nmのSiOx蒸着を施し、シリカ蒸着層を形成した。その上に、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィンの水分散液をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、厚さ3μmのオーバーコート層を形成した。これによりガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は82質量%であった。
【0043】
(実施例2)
アンカーコート層に、アクリルポリオールとポリイソシアネートの硬化物であるウレタン硬化型アクリル樹脂を、厚さ1μmで塗工した以外は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、85質量%であった。
【0044】
(実施例3)
アンカーコート層に、アクリルポリオールとポリイソシアネートの硬化物であるウレタン硬化型アクリル樹脂を、厚さ3μmで塗工した以外は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、82質量%であった。
【0045】
(実施例4)
シリカ蒸着層の厚さを、10nmとした以外は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、82質量%であった。
【0046】
(実施例5)
無機セラミック層の厚さを、100nmとした以外は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、82質量%であった。
【0047】
(実施例6)
オーバーコート層の厚さを、2μmとした以外は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、82質量%であった。
【0048】
(実施例7)
オーバーコート層の厚さを、10μmとした以外は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、73質量%であった。
【0049】
(比較例1)
紙のクレーコート表面上に、けん化度98%、重合度500のポリビニルアルコール樹脂を、水・IPA=8/2の溶媒に溶解したと液をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、厚さ3μmのアンカーコート層を得た。シリカ蒸着層とオーバーコート層は、実施例1と同様の操作によってガスバリア積層体を形成した。ガスバリア積層体における紙の重量は、83質量%であった。
【0050】
(比較例2)
アンカーコート層の厚さを、6μmとした以外は、比較例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、78質量%であった。
【0051】
(比較例3)
アンカーコート層を、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィンとした以外は、比較例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、83質量%であった。
【0052】
(比較例4)
アンカーコート層を、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィンとし、厚さを6μmとした以外は、比較例1と同様の操作によってガスバリア積層体を得た。ガスバリア積層体における紙の重量は、78質量%であった。
アンカーコート
【0053】
<水蒸気透過度の測定>
実施例および比較例にかかわるガスバリア積層体の水蒸気透過度をMOCON法で測定した。測定条件は、温度40℃、相対湿度90%とした。同一のガスバリア積層体を5つ用意し、N=5の測定結果の平均値、最小値および最大値を求めた、表1、2に結果を単位[g/m・day]で表記した。
<局所熱分析の測定>
【0054】
[軟化温度測定]
以下に示す方法で、樹脂層の軟化温度を測定した。
【0055】
試料を底辺1.0mm×高さ5.0mmの短冊型にカミソリにて裁断し光硬化樹脂で包理し、ハロゲンランプKTX―100Rにて硬化した。光硬化樹脂には東亜合成製のD-800を用いた。光硬化後の試験片をAFM試料ホルダー用インサートで固定し、常温(25℃)においてガラスナイフでフィルムの断面切削を行った。その後、常温においてダイヤモンドナイフで切削スピード2.0mm/s、切削膜厚200nm設定で最終的な断面切削を実施し、鏡面となったところで切削終了とした。断面切削装置として、ウルトラミクロトーム(ライカ社製EM UC7)、クライオシステム(ライカ社EM FC7)を用いた。また、ナイフの切削方向は、層の膜厚方向に対し垂直とした。断面出しした試験片はAFM試料ホルダー用インサートで固定して軟化温度測定に用いた。
【0056】
原子間力顕微鏡(AFM)はオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社性のMFP-3D-SA、局所熱分析オプションはZtermシステム、カンチレバーはばね定数:0.5~3.5N/mの仕様のアナシス・インスツルメンツ社製のAN2-200を用いて、軟化温度測定と形状測定を行った。
【0057】
カンチレバーの触圧(カンチレバーのたわみ量(Deflectin)の変化量)を2.0V、電圧印加速度(昇温速度)を0.5V/秒、最大印加電圧を7.1V,としてDetrend補正後に測定面、すなわり、アンカーコート層の断面を加熱したところ、測定面が膨張し、カンチレバーの高さ一が上昇した。さらに、測定面を加熱すると、測定面が軟化しカンチレバーの高さ位置が20nm下降したところで、測定終了とした。高さ位置が変化点から20nm下降せずに最大印加電圧に達したい場合はDetrend補正時と測定時の最大印加電圧を0.5V昇圧して再度実施した。
【0058】
カンチレバーの垂直方向の高さ位置が最大の地点の印加電圧とし、電圧値を読み取る。
【0059】
アンカーコート層の軟化温度を算出するため、構成曲線の作成を行った。校正用試料としては、ポリカプロラクトン(融点:60℃)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点
112℃)、ポリプロピレン(PP,融点:166℃)、ポリエチレンテレフタレートを7.2V、とした。カンチレバーの触圧(カンチレバーのたわみ量(Deflection)の変化量)を2.0V、電圧印加速度(昇温速度)を0.5V/秒とした。校正用試料の測定位置を変えて10回測定し、軟化点の印加電圧の平均値と融点を最小二乗法により3次関数で近似した検量線を作成して、校正曲線を作成した。また、この時軟化温度の誤差として±10℃が考えられる。
【0060】
印加電圧と融点(融解ピーク温度)の構成曲線を用いて、樹脂層の軟化点の印加電圧を温度に換算し、軟化温度とし、結果を表1、2に表記した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1,2に示される通り、実施例のガスバリア積層体は、アンカーコート層の軟化点温度が高い場合に水蒸気透過度が低く、水蒸気バリア性が良好であった。また、中間層を挟まないことで、紙質量%が高く、良好な水蒸気バリア性が得られるガスバリア積層体が得られた。
【0064】
本開示には以下の態様も含まれる。
(態様1)
紙基材とアンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えたガスバリア積層体であって、
前記アンカーコート層と前記オーバーコート層は、前記シリカ蒸着層と直接に接しており、
前記ガスバリア積層体の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定された前記アンカーコート層の軟化温度は180℃以上である、
ことを特徴とするガスバリア積層体。
(態様2)
紙基材と、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えた、ガスバリア積層体であって、
前記アンカーコート層は、エポキシ、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の少なくとも一種を有する、
ことを特徴とするガスバリア積層体。
(態様3)
前記オーバーコート層が、極性基を少なくとも一種を有するポリオレフィンを含む、ことを特徴とする態様1又は2に記載のガスバリア積層体。
(態様4)
前記シリカ蒸着層の厚みが10nm以上100nm以下である、
ことを特徴とする態様1~3いずれか一つに記載のガスバリア積層体。
(態様5)
前記オーバーコート層の厚みが2μm以上10μm以下である、ことを特徴とする態様1から4いずれか一つに記載のガスバリア積層体。
(態様6)
前記紙基材の厚みが30μm以上100μm以下であり、且つ前記紙基材の厚みがガスバリア積層体全体の厚みの70%以上である、ことを特徴とする態様1~5いずれか一つに記載のガスバリア積層体。
(態様7)
態様1~6いずれか一つに記載のガスバリア積層体を含む包装袋。
【符号の説明】
【0065】
1・・・紙基材
2・・・アンカーコート層
3・・・蒸着層
4・・・オーバーコート層
10・・・ガスバリア積層体
図1