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  • 特開-ボールペン用油性インク組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003603
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ボールペン用油性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20240105BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C09D11/18
B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102846
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】美濃部 有美子
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
4J039AE01
4J039BC07
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA10
4J039EA42
4J039EA47
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】ボテ現象抑制効果に優れ、滑らかな筆記感を有し、初筆性(書き出し時に擦れない)が良好であり、速乾性、ボテによる擦過時のインク伸びもなく、線飛びが改善されるため、チップのインク流量設計によらず、安定したインク流量を確保でき、しかも、前記ボテ抑制と速乾性のため、裏抜け性も改善することができるボールペン用油性インク組成物、並びに、油性ボールペンを提供する。
【解決手段】 本発明は、少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、前記溶剤と水の含有量が前記インク組成物全量に対して40質量%以上であり、前記樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を含有する場合、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物全量に対して0.5質量%以下であり、50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aが25%以上であり、かつ、前記重量減少率Aと、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bとの比、A/Bが0.8~1.2であることを特徴とするボールペン用油性インク組成物。
本発明の油性ボールペンは、ボールペン用油性インク組成物を搭載したことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、
前記溶剤と水の含有量が前記インク組成物全量に対して40質量%以上であり、
前記樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を含有する場合、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物全量に対して0.5質量%以下であり、
50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aが25%以上であり、かつ、
前記重量減少率Aと、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bとの比、A/Bが0.8~1.2であることを特徴とするボールペン用油性インク組成物。
【請求項2】
前記樹脂成分として、質量平均分子量40000未満の樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載のボールペン用油性インク組成物。
【請求項3】
前記ボールペン用油性インク組成物は、25℃、コーンプレート使用時のレオメーターの粘度が、せん断速度200~2000s-1の間で1~200mPa・sであり、25℃でのレオメーターのせん断速度20s-1時粘度/せん断速度200s-1時粘度で表す比が0.90~1.10であることを特徴とする請求項1又は2に記載のボールペン用油性インク組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のボールペン用油性インク組成物を搭載したことを特徴とする油性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用油性インク組成物、油性ボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油性ボールペンの筆記感は、比較的重い傾向がある。これを改善するために、従来の技術として、低粘度のインク設計、例えば、粘度5rpmで約1000mPa・s程度にすることがあったが、それではボテの低減などの品質が不十分であった。
【0003】
そこで、従来より、油性ボールペンにおいて、前記ボテ現象を抑制したり、筆記感を滑らかにしたりするボールペン用油性インク組成物が知られている。
例えば、(イ) 着色剤と、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、炭素数4以下の脂肪族アルコールから選ばれる1種または複数の溶剤と、前記溶剤に可溶であり、互いには相溶しない、親水基を有する樹脂及び疎水基を有する樹脂とより少なくともなる油性インキ(例えば、特許文献1参照)、
(ロ) 先端ボールを抱持するチップに継ぎ手を介してインキ収容管が連通しているボールペンリフィールを具備することからなり、該インキ収容管は、蒸気圧0.2mmHg(25℃)以下の有機溶媒を60重量%以上含有する溶剤、着色剤および添加剤からなり、インキ粘度が300mPa・S(20rpm,25℃)以下でありかつTI値(5rpm/20rpm,25℃)が1.1以上である低粘度油性ボールペンインキ、および該インキの後端面にフォロアを充填してなり、非筆記時には、前記先端ボールがチップ先端のボール抱持部の内縁に密接して、筆記時には密接状態が解除されるように該先端ボールを常時押圧するスプリングを前記チップ内に有することからなる低粘度油性ボールペン(例えば、本出願人の先行出願となる特許文献2参照)、
【0004】
(ハ) インキ収容管に(1)蒸気圧0.1mmHg(20℃)以下の有機溶媒を60重量%以上含有する溶剤、着色剤、添加剤とからなり、インキの粘度が剪断速度400S-1において200mPa・S以下でかつ、剪断速度5s-1において300mPa・S以上である低粘度油性ボールペンインキおよび(2)該インキの後端面に難揮発性有機溶剤および不揮発性有機溶剤からなる群から選ばれた少なくとも一種の溶剤、微粒子シリカからなるゲル化剤、およびシラン系の表面改質剤を含むフォロアを充填して構成されたリフィールを具備する低粘度油性ボールペン(例えば、本出願人の先行出願となる特許文献3参照)。
(ニ) 油溶性樹脂と、油溶性染料と、沸点が160℃~200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルとから少なくともなるボールペン用油性インキ(特許文献4参照)などが知られている。
【0005】
従来の前記各種の油性インク組成物を搭載した油性ボールペンは、インク中に含有した樹脂種、その他の成分との組み合わせ等により、インクの曳糸性を高めてチップ周りの余剰のインクをチップ内に回収することで、ボテを抑制することが従来のボテ改善のメカニズムであった。
しかしながら、この手法では、チップ内に回収されなかった余剰インクが、筆記が進むにつれてチップのカシメ付近に堆積し、大きなボテとなって描線に落ちるため、描線品位が悪くなり、ボテ低減への効果が未だ不十分であるという課題があった。特に、筆記感を滑らかにするために、インク粘度を低めに設計したインクの場合でも、ボテ改善効果は薄く、更なるボテ改善効果と共に、更なる滑らかな筆記感、初筆性(書き出し時に擦れない)の改善、並びに、筆記した際に実線の一部が抜け点線となってしまったり、一部が大きく抜けたりカスレる、いわゆる線飛びの更なる改善などが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-139273号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平8-134392号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平8-192594号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2009ー197205号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、ボテ現象を極力抑制すると共に、滑らかな筆記感を有し、初筆性(書き出し時に擦れない)が良好であり、線飛びが改善されるため、チップのインク流量設計によらず、安定したインク流量を確保できるボールペン用油性インク組成物、この油性インク組成物を搭載した油性ボールペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、前記樹脂成分の含有量と、前記溶剤と水の含有量を、それぞれ最適化し、かつ、インク物性となる2種の測定条件下の重量減少率の比を所定の範囲などとすることにより、前記目的のボールペン用油性インク組成物、油性ボールペンが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明のボールペン用油性インク組成物は、少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、前記溶剤と水の含有量が前記インク組成物全量に対して40質量%以上であり、前記樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を含有する場合、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物全量に対して0.5質量%以下であり、50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aが25%以上であり、かつ、前記重量減少率Aと、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bとの比、A/Bが0.8~1.2であることを特徴とする。
前記樹脂成分として、質量平均分子量40000未満の樹脂を含有することが好ましい。
前記ボールペン用油性インク組成物は、25℃、コーンプレート使用時のレオメーターの粘度が、せん断速度200~2000s-1の間で1~200mPa・sであり、25℃でのレオメーターのせん断速度20s-1時粘度/せん断速度200s-1時粘度で表す比が0.90~1.10であることが好ましい。
本発明の油性ボールペンは、前記組成のボールペン用油性インク組成物を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボテ現象を極力抑制すると共に、初筆性(書き出し時に擦れない)が良好であり、速乾性、ボテによる擦過時のインク伸びもなく、線飛びが改善されるため、チップのインク流量設計によらず、安定したインク流量を確保でき、しかも、前記ボテ抑制と速乾性のため、裏抜け性も改善することができるボールペン用油性インク組成物、並びに、油性ボールペンが提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のボールペン用油性インク組成物を搭載した油性ボールペンのボールペンチップの要部の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
本発明のボールペン用油性インク組成物は、少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、
前記溶剤と水の含有量が前記インク組成物全量に対して40質量%以上であり、
前記樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を含有する場合、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物全量に対して0.5質量%以下であり、
50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aが25%以上であり、かつ、前記重量減少率Aと、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bとの比、A/Bが0.8~1.2であることを特徴とするものである。
【0013】
〈着色剤〉
用いることができる着色剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、アルミナホワイト、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、カドミウムイエロー、朱、ガドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、バライト粉、鉛白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキニトロ顔料、ニトロソ顔料等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
【0014】
また、酸性染料、反応染料、塩基性染料、分散性染料、直接染料、蛍光染料、C.I.ベーシックイエロー35、C.I.ベーシックイエロー40、C.I.アシッドオレンジ28、C.I.アシッドブルー92、エオシン、フロキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB、ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBBローダミン、メチルバイオレット等の少なくとも1種の着色剤を用いることもできる。
更に、樹脂や界面活性剤などで表面改質した加工顔料、分散トナー、アクリル系樹脂やベンゾグアナミン樹脂などを顔料や染料で着色して微粒子化した着色剤、熱変色性マイクロカプセル顔料、光変色性マイクロカプセル顔料の少なくとも1種等も用いることができる。
【0015】
これらの着色剤の含有量は、油性ボールペン種、インク収容形態(中綿式、直液式)、分散性、保存安定性等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、0.5~40質量%程度である。
【0016】
〈樹脂成分〉
本発明に用いる樹脂成分としては、例えば、ポリビニルブチラール、ケトン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレンアクリル樹脂などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)使用することができる。
本発明では、ボテ抑制の点、線飛びの点から、樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を使用する場合は、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物全量に対して固形分量で0.5質量%以下であり、好ましくは、0.4質量%以下、更に好ましくは、0(ゼロ)~0.3質量%とすることが望ましい。本発明では、質量平均分子量40000以上の樹脂を前記含有量の範囲を超過する場合、本発明の効果を発揮しづらくなり、線飛びが発生する場合もあり、好ましくない。
【0017】
好ましい樹脂成分としては、質量平均分子量40000未満の樹脂を用いることが望ましい。更なるボテ抑制の点、並びに、更なる線飛びの点から、質量平均分子量40000未満のポリビニルブチラール、ケトン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレンアクリル樹脂などの少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも、前記質量平均分子量40000未満のポリビニルブチラール、ケトン樹脂、ポリビニルピロリドンを用いることが好ましく、更に好ましくは、質量平均分子量20000以下のポリビニルブチラール、ケトン樹脂の使用が望ましい。本発明において、質量平均分子量は、GPC法によりスチレン換算で測定した値を用いる。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
【0018】
具体的に用いることができる樹脂としては、ポリビニルブチラールでは、積水化学社製の商品名;ポリビニルブチラールBL-1、同BL-10、同BM-1、BM-5、BH-3、また、クラレ社製のモビタールB14S、B30Tなどが挙げられる。
ケトン樹脂では、荒川化学工業株式会社製の商品名;ケトンレジンK-90、また、デグッサ社製のレジンSKなどが挙げられる。
ポリビニルピロリドンでは、第一工業製薬社製の商品名;ピッツコールK-17、Ashland社製の商品名:PVP K90などが挙げられる。
更に好ましくは、ボテ抑制の点、線飛びの点から、10%質量の該当樹脂を溶かした3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール溶液の25℃、レオメーターせん断速度100s-1における粘度が1000mPa・s以下、より好ましくは、500mPa・s以下を示す樹脂が好ましい。
【0019】
これらの樹脂成分(固形分)の含有量は、前記質量平均分子量40000以上の樹脂を使用する場合は、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物に対して固形分量で0.5質量%以下であり、これ以外の樹脂成分(固形分)の含有量は、油性ボールペン種、インク収容形態(中綿式、直液式)、分散性、保存安定性等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、固形分量で、好ましくは、25質量%以下であり、更に好ましくは、15質量%以下、特に好ましくは、1~5質量%が望ましい。
インク全量中における前記質量平均分子量40000以上の樹脂を使用する場合以外の樹脂の含有量を25質量%以下とすることにより、ボテを抑制することができ、一方、25質量%超過となると、ボテが出やすく、線飛び、初筆性も悪くなる傾向となる。
【0020】
〈溶剤〉
本発明における溶剤としては、例えば、芳香族類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素類、エステル類等を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
芳香族類としては、例えば、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等を用いることができる。
【0022】
アルコール類としては、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール等を用いることができる。
【0023】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,3ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等を用いることができる。
【0024】
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキ
シルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0025】
炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類を用いることができる。
【0026】
エステル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等を用いることができる。
【0027】
これらの溶剤の中で、好ましく、ボテ抑制の点、描線乾燥性の点から、蒸気圧が25℃で100Pa以上を示す溶剤の使用が望ましい。より好ましくは、蒸気圧が25℃で1000Pa以上を示す溶剤、さらに好ましくは蒸気圧が25℃で5000Pa以上を示す溶剤の使用が望ましい。
特に好ましく用いることができる溶剤としては、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(25℃、蒸気圧:125Pa)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(25℃、蒸気圧:1667Pa)、エチルアルコール(25℃、蒸気圧:7906Pa)、イソプロピルアルコール(25℃、蒸気圧:5870Pa)、キシレン(25℃、蒸気圧:1121Pa)などが挙げられる。
これらの溶剤の含有量は、インク組成物全量に対して、30~80質量%、好ましくは
40~70質量%とすることが好ましい。
【0028】
本発明において、水を含有せしめることが望ましく、精製水、イオン交換水、純水、超純水などいずれのものを用いてもよく、インク組成物全量に対して、具体的には0.5~10質量%であることが望ましい。本発明のボールペン用油性インク組成物を搭載することとなるボールペンリフィールは、長年放置されると徐々に空気中の水分を吸湿するため、予め水を添加することにより、吸湿による物性変化を抑制することができる。この点から水を含有せしめることが望ましい。
本発明では、前記溶剤と水の合計含有量が、前記インク組成物全量に対して40質量%以上とすることが必要であり、好ましくは、40~80質量%とすることが望ましい。
前記溶剤と水の合計含有量が40質量%未満であると、インクの揮発性が下がることでカシメ周りのボテが蓄積しやすくなり、好ましくない。
【0029】
〈他の成分〉
本発明のボールペン用油性インク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を適宜量含有していてもよい。他の成分としては、例えば、レベリング剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤等が挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤等を用いることができる。潤滑剤としては、例えば、リン酸エステル等が挙げられる。
【0030】
本発明のボールペン用油性インク組成物は、少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、前記溶剤と水の含有量が前記インク組成物全量に対して40質量%以上であり、前記樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を含有する場合、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物に対して0.5質量%以下であり、50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aが25%以上であり、かつ、前記重量減少率Aと、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bとの比、A/Bが0.8~1.2であることを特徴とするものである。
前記重量減少率Aが25%以上とし、かつ、前記重量減少率の比A/Bを0.8~1.2とすることにより、本発明の効果を効率的に発揮でき、具体的には、ボテ抑制のためのインク乾燥性が得られると同時に良好な初筆性も維持できるものとなる。
本発明において、前記重量減少率A、Bの各測定湿度が相違するのは、ドライ環境下でも湿度が高い環境下でもある一定の揮発性を維持していることを担保するためである。
【0031】
前記重量減少率Aが25%未満であると、速乾性が悪くなる。
前記重量減少率の比A/Bが0.8未満であると、描線乾燥性が悪くなり、一方、前記比A/Bが1.2超過であると、インクの経時安定性が悪くなる。
この重量減少率の比A/Bを前記所定の範囲とするためには、蒸気圧が25℃で100Pa以上を示す溶剤の量と固形分量を調整することなどより行うことができる。
【0032】
更に、本発明の効果を更に発揮せしめるために、すなわち、ボテ現象を極力抑制すると共に、滑らかな筆記感を高度に両立せしめ、本発明の効果を更に発揮せしめるために、前記ボールペン用油性インク組成物は、下記1)~2)の条件を充足することが好ましい。
1)25℃、せん断速度200~2000s-1の間でインク粘度が1~200mPa・sであること。
2)コーンプレート(CP25-1、株式会社アントンパール製)使用時のインク粘度が25℃でのレオメーター(MCR302、株式会社アントンパール製)のせん断速度20s-1時粘度/せん断速度200s-1時粘度で表す比が0.90~1.10であること。
【0033】
前記1)のインク粘度が200mPa・s以下とする条件は、ボテ現象の発生に関係し、この条件を更に充足することにより、更なるボテ現象の抑制、良好な初筆性にすることができる。
更に好ましくは、25℃、せん断速度200~2000s-1の間でインク粘度が1~110mPa・sであることが望ましい。
前記2)の比が0.90~1.10とする条件は、染顔料や樹脂の量、揮発性溶剤の割合に関係し、この条件を更に充足することにより、更なるボテ現象の抑制を向上することができる。
前記1)、2)の条件を充足するボールペン用油性インク組成物を調整するためには、用いる着色剤種、樹脂種、溶剤種の好ましい選択と、各成分などの含有量の最適化、後述する混練方法などを好適に組み合わせることにより調整することができる。
【0034】
本発明のボールペン用油性インク組成物は、他の油性インク組成物の製造方法に準拠して製造することができる。
すなわち、本発明のボールペン用油性インク組成物は、少なくとも、前記着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むものであって、前記樹脂成分の含有量をインク組成物全量に対して、6質量%以下、前記溶剤と水の含有量をインク組成物全量に対して40質量%以上とし、その他の各成分をボールペン用インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ミキサー等、更に、例えば、強力な剪断を加えることができるビーズミル、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて撹拌条件を好適な条件に設定等して混合撹拌することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって、ボールペン用油性インク組成物を製造することができる。
【0035】
本発明のボールペン用油性インク組成物は、例えば、ボールペンチップなどのペン先部を備えたボールペンに搭載される。
本発明におけるボールペンとしては、前記組成のボールペン用油性インク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容されるものが挙げられ、例えば、該ボールペン用油性インク組成物を、直径が0.18~2.0mm、好ましくは、直径が0.28~1.0mmのボールを有するボールペンチップを備えた油性ボールペン体に充填することにより作製することができる。
【0036】
本発明の前記物性のボールペン用油性インク組成物を搭載した油性ボールペンにおいて、更にボールペンの構造面から更なるボテ現象の抑制を発揮せしめるために、インク収容体(リフィール)の先端に固定したボールペンチップXの構造においては、例えば、図1に示すように、ボール10と、ボール10を保持するためのホルダー20とを備え、ホルダー20の先端付近には、ボール10を収納するためのボールハウス25が設けられ、ホルダー20の先端には、ボールハウス25に収納したボール10がボールハウス25から飛び出さないようにするためのカシメ部26が設けられ、カシメ部26内周面とボール10とのシール面Yの長さが20~170μmであることが好ましく、ボール10の直径も直径が0.28~1.0mmが望ましい。
これにより、前記ボールペン用油性インク組成物との特性と相俟ってボールペンの構造面からも、筆記が進むにつれてチップのカシメ付近に残存油性インクも堆積することがないので、ボテとなって描線に落ちることもなくなり、描線品位も良好となり、ボテ低減への効果が更に増強できることとなる。上述の溶剤種とインク組成物中の溶剤、水分など含有量の最適化と、前記1)~2)の条件を更に充足することにより、紙面に転写しきれなかったボテに影響を及ぼす余剰インクを更にコントロールせしめ、カシメ付近に付着するインクだまりを大きくさせない
なお、ボールペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に前記構成のボールペン用油性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式の油性ボールペンなどであってもよいものである。
【0037】
このように構成される本発明のボールペン用油性インク組成物にあっては、少なくとも、着色剤と、樹脂成分と、溶剤と、水とを含むボールペン用油性インク組成物であって、前記溶剤と水の含有量が前記インク組成物全量に対して40質量%以上であり、前記樹脂成分として、質量平均分子量40000以上の樹脂を含有する場合、該樹脂成分の含有量は前記インク組成物全量に対して0.5質量%以下であり、50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aが25%以上であり、かつ、前記重量減少率Aと、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bとの比、A/Bが0.8~1.2であることを特徴とすることで、ドライ環境下でも湿度が高い環境下でもある一定の揮発性を維持していることを担保することができるので、ボテ現象を極力抑制すると共に、滑らかな筆記感を有し、初筆性(書き出し時に擦れない)が良好であり、速乾性、ボテによる擦過時のインク伸びもなく、線飛びが改善されるため、チップのインク流量設計によらず、安定したインク流量を確保でき、しかも、前記ボテ抑制と速乾性のため、裏抜け性も改善することができるボールペン用油性インク組成物、並びに、油性ボールペンが得られることとなる。
【0038】
更に、前記ボールペン用油性インク組成物において、25℃、コーンプレート使用時のレオメーターの粘度がせん断速度200~2000s-1の間で1~200mPa・sであり、25℃でのレオメーターのせん断速度20s-1時粘度/せん断速度200s-1時粘度で表す比が0.90~1.10とすることにより、更に、チップから出た余剰インクを回収せずに、カシメ周りにインクが溜まっても揮発することでボテにならずに筆記することができるので、ボテ現象を極力抑制すると共に、滑らかな筆記感を高度に両立せしめ、本発明の効果を更に発揮せしめるものとなる。
本発明のボールペン用油性インク組成物及びこれを搭載した油性ボールペンでは、本発明の上述の作用効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れており、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、経時的な安定性にも優れたものとなる。
【実施例0039】
次に、ボールペン用油性インク組成物及びこれを搭載した油性ボールペンの実施例1~14及び比較例1~6により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1~14及び比較例1~6〕
下記表1に示す、着色剤、樹脂成分、溶剤、水などの配合処方にしたがって、材料投入後60℃で加熱撹拌し各ボールペン用油性インク組成物を調製した。なお、樹脂成分は固形分量で表示したものである。また、使用する樹脂においては、10%質量の該当樹脂を溶かした3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール溶液の25℃、レオメーター(アントンパール社製)100s-1における粘度を表1の欄外に記載した。
得られた各ボールペン用油性インク組成物(全量100質量%)について、下記各測定方法により各ボールペン用油性インク組成物の重量減少率Aと、重量減少率Bとを求め、その比A/Bを算出した。
また、下記各測定方法により、得られた各ボールペン用油性インク組成物の25℃、コーンプレート(CP25-1、株式会社アントンパール製)使用時のレオメーター(MCR302、株式会社アントンパール製)のせん断速度200~2000s-1の間でのインク粘度、25℃でのコーンプレート(CP25-1、株式会社アントンパール製)使用時のレオメーター(MCR302、株式会社アントンパール製)のせん断速度20s-1時粘度/せん断速度200s-1時粘度で表す比を算出した。
更に、下記構造の油性ボールペンを作製して、下記評価方法によりボテ現象の抑制評価、初筆性(書き出し時に擦れない)、速乾性、線飛び、裏抜け性改善効果の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0041】
〔重量減少率A、重量減少率Bの測定方法〕
口径4.5cmの金属容器に得られた各ボールペン用油性インク組成物1gを入れ、50℃、相対湿度35±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Aを求めた。前記金属容器を用いて同様に、50℃、相対湿度85±5%RH環境下に前記インク組成物を開放状態で2時間静置した際の重量減少率Bを求めた。この重量減少率Aと重量減少率Bとの比、A/Bを算出した。
【0042】
〔25℃、せん断速度200~2000s-1の間でのインク粘度値:25℃でのコーンプレート(CP25-1、株式会社アントンパール製)使用時のレオメーター(MCR302、株式会社アントンパール製)のせん断速度20s-1時粘度/せん断速度200s-1時粘度で表す比の測定方法〕
得られた各ボールペン用油性インク組成物について、コーンプレート(CP25-1、株式会社アントンパール製)使用時のレオメーター(MCR302、株式会社アントンパール製)を用いて、25℃、せん断速度200~2000s-1の間の各インク粘度値を測定し、その比(せん断速度20s-1/せん断速度200s-1)を表す比を算出した。
【0043】
(油性ボールペンの作製)
油性ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:SA―R〕の軸を使用し、内径1.7mm、長さ115mmのポリプロピレン製インク収容体とボールペンチップ(ホルダー:ステンレス製、ボール:超硬合金ボール、ボール径0.7mm)、ボールとカシメ部のクリアランス(隙間)は、13μm、シール面は70μm、該収容管と該チップを連結する継手からなる各リフィールに、前記で得られた各油性インク組成物を充填して油性ボールペン(各5本)を作製した。
【0044】
(ボテ現象抑制効果の評価方法)
前記油性ボールペンを用いて、JIS規格:S6039-2001に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)で、筆記速度4.5m/min、角度60°、筆記荷重40g、自転無し、1周筆記-1周休みの間欠筆記の条件で、JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行い、5m筆記したときのボテ現象抑制効果を下記の基準で評価を行った。
評価基準:
◎:描線ボテ、付着ボテがなく、描線状態良好
○:描線ボテ、付着ボテともにほとんど出ておらず、描線状態良好。
△:描線ボテ、付着ボテのどちらかに目立つボテが発生している。
×:描線ボテ、付着ボテの両方に目立つボテが発生していて描線が汚い。
【0045】
(初筆性(書き出し時に擦れないか否か)の評価法)
前記油性ボールペンを用いてPPC用紙に螺旋書きで筆記し、下記評価基準で初筆性を評価した。
評価基準:
○:書き始めから問題なく筆記可能。
△:書き始めから0mm超、5mm未満のカスレが確認される。
×:書き始めから5mm以上のカスレが確認される。
【0046】
(速乾性の評価法)
前記油性ボールペンを用いてPPC用紙に「三菱鉛筆」と筆記し、直後に手で描線を擦って、下記評価基準で速乾性を評価した。
評価基準:
○:描線のインクが全く伸びておらず、描線状態良好。
△:描線のインクが少し伸びている。
×:描線のインクがかなり伸びている。
【0047】
(線飛びの評価法)
前記油性ボールペンを用いてJIS規格:S6039-2001に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)で筆記速度6.0m/min、角度60°、筆記荷重100g、自転有り、連続筆記で100m筆記した際の線飛びを、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:筆記描線に線飛びがない。
△:筆記描線に一部線飛びが発生している。
×:筆記描線全体的に線飛びが発生している。
【0048】
(裏抜け性改善効果)
前記油性ボールペンを用いてJIS規格:S6039-2001に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)で筆記速度2.25m/min、角度60°、筆記荷重200g、自転有り、連続筆記の条件で、JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行い、100m筆記した際の筆記面となる紙面の裏抜け性を、下記評価基準で評価した。裏抜け性は、描線が濃く見えるかで判断した。
評価基準:
◎:インクの裏抜けがない。
○:描線の一部に濃くなっている部分が見られる。
△:描線の半分程度に濃くなっている部分が見られる。
×:全体的に色が濃くなっている。
【0049】
【表1】
【0050】
前記表1中の*1~*17は、下記のとりである。
*1:printex#35、デグッサ社製
*2:クロモフタルブルーA-3R、チバガイギー社製
*3:DPP BP、チバガイギー社製
*4:スピロンバイオレットCR-H、保土谷化学工業社製
*5:スピロンイエローC-GNH、保土谷化学工業社製
*6:スピロンブルーCR-H、保土谷化学工業社製
*7:スピロンレッドC-GH、保土谷化学工業社製
*8:ケトンレジンK-90、荒川化学工業株式会社製、質量平均分子量:450、25℃・レオメーター(100s-1)における粘度:48mPa・s
*9:ポリビニルピロリドン ピッツコールK-17、第一工業製薬社製、質量平均分子量:9000、25℃・レオメーター(100s-1)における粘度:59mPa・s
*10:ポリビニルブチラールBL-1、積水化学社製、質量平均分子量:19000、25℃・レオメーター(100s-1)における粘度:219mPa・s
*11:ポリビニルピロリドン、PVP K-90、Ashland社製、質量平均分子量:1200000、25℃・レオメーター(100s-1)における粘度:3393mPa・s
*12:ポリビニルブチラールBH-3、積水化学社製、質量平均分子量:110000、25℃・レオメーター(100s-1)における粘度:9685mPa・s
*13:ポリビニルブチラールBM-5、積水化学社製、質量平均分子量:56000、25℃・レオメーター(100s-1)における粘度:1513mPa・s
*14:25℃、蒸気圧:125Pa
*15:25℃、蒸気圧:1667Pa
*16:25℃、蒸気圧:7906Pa
*17:25℃、蒸気圧:12.5Pa
【0051】
前記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~14のボールペン用油性インク組成物を搭載した油性ボールペンは、本発明の範囲外となる比較例1~6に較べ、ボテ現象抑制効果に優れ、滑らかな筆記感を有し、初筆性(書き出し時に擦れない)が良好であり、速乾性、ボテによる擦過時のインク伸びもなく、線飛びが改善されるため、チップのインク流量設計によらず、安定したインク流量を確保でき、しかも、前記ボテ抑制と速乾性のため、裏抜け性も改善することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
油性ボールペンに好適なボールペン用油性インク組成物、これを搭載した油性ボールペンが得られる。
図1