(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036034
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20240308BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240308BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240308BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240308BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240308BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/6568
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140733
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】複数の電池の少なくとも一つに火災等の異常発生又はそのおそれがある場合に、複数の電池の対応する冷却手段への冷媒の流入を抑制し、異常の被害を抑制すること。
【解決手段】電池システム1は、リチウムイオンを用いた複数の電池スタック11A-11Fと、電池スタック毎に設けられ、冷媒が流れる冷却配管12と、それら冷却配管に冷媒を供給するために冷媒配管が並列に接続された冷媒回路3と、それら冷却配管のうち一部の冷却配管にのみ冷媒を選択的に供給可能とする三方弁36、入口側二方弁21B-21F及び出口側二方弁22B-22Fとを備える。電池システムは、複数の電池スタックのうち少なくとも一つの温度が所定の閾値以上となった場合に、三方弁、入口側二方弁及び出口側二方弁を動作させて、少なくとも温度が閾値以上となった電池スタックの冷却配管に供給される冷媒を遮断するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを用いた複数の電池と、
複数の前記電池それぞれを冷媒により冷却するために、複数の前記電池毎に設けられ、前記冷媒が流れる冷却手段と、
複数の前記冷却手段に前記冷媒を供給するための冷媒供給手段と、
複数の前記冷却手段が前記冷媒供給手段に対し並列に接続されることと、
複数の前記冷却手段のうち一部の前記冷却手段にのみ前記冷媒を選択的に供給可能とするための供給選択手段と
を備えた電池システムにおいて、
複数の前記電池のうち少なくとも一つの前記電池の温度が所定の閾値以上となった場合に、前記供給選択手段を動作させることにより、少なくとも前記温度が前記閾値以上となった前記電池に設けられる前記冷却手段に供給される前記冷媒を遮断するように構成した
ことを特徴とする電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池システムにおいて、
前記冷却手段は、前記冷媒を導入する入口側と前記冷媒を導出する出口側を含み、
前記供給選択手段は、前記冷却手段それぞれの前記入口側に設けられる逆止弁と前記出口側に設けられる電磁弁により構成される
ことを特徴とする電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池システムにおいて、
前記冷媒供給手段は、前記冷媒を圧送するための容積ポンプを含み、
前記冷媒供給手段には、複数の前記冷却手段のうちそれら前記冷却手段に供給されて流れ出た前記冷媒の流れの最下流側に位置する前記冷却手段よりも下流にて前記冷媒を排出するための排出通路が設けられる
ことを特徴とする電池システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電池システムにおいて、
前記冷媒供給手段は、前記冷媒を圧送するための容積ポンプと遠心ポンプを含み、
前記容積ポンプは、前記遠心ポンプの下流側で、複数の前記冷却手段のうちそれら前記冷却手段に供給される前記冷媒の流れの最上流側に位置する前記冷却手段の近傍に設けられ、
前記冷媒供給手段には、複数の前記冷却手段のうちそれら前記冷却手段に供給されて流れ出た前記冷媒の流れの最下流側に位置する前記冷却手段よりも下流にて前記冷媒を排出するための排出通路が設けられる
ことを特徴とする電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、充放電可能な二次電池(リチウムイオン電池)を冷媒により冷却するように構成した電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン等の非水電解質を用いた二次電池は、エネルギー密度が高く長寿命であることから、電気自動車を含む各種分野で多用されている。二次電池では、性能と安全を確保するために、その温度を適正に管理する必要があり、特に過度な温度上昇を抑えるために冷却水等の冷媒を用いた冷却設備が設けられている。
【0003】
この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「電池システム」が知られている。この電池システムは、複数の単電池と、複数の単電池のそれぞれに設けられ、冷媒を流す冷却配管を有し、冷却配管を流れる冷媒により単電池を冷却する冷却部と、複数の単電池は、互いの冷却部が並列に接続されることと、複数の冷却部に冷媒を供給する供給部と、供給部による冷媒の供給量を制御する制御部と、単電池の温度を検出する温度検出部と、冷媒の供給状態を検出する冷媒検出部と、複数の冷却部のうち、一部の冷却部にのみ冷媒を供給可能とする選択切替部とを備える。そして、制御部は、複数の単電池のうちの少なくとも一つの温度が第1閾値以上となり、かつ、供給部からの冷媒の供給圧が第2閾値以下になった場合に、温度が第1閾値以上となった単電池に設けられる冷却部にのみ冷媒が供給されるように選択切替部を切り替えるようになっている。この電池システムは、その異常時に内部の流体を外部に逃がす安全弁が単電池に設けられており、異常時に安全弁から噴出する流体が接触することで破損する材質で形成され、安全弁から噴出する流体と接触可能な位置で、かつ、破損により噴出する冷媒が安全弁に到達可能となる位置に配置された消火用配管を更に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の電池システムでは、異常発生時の火災対策として消火用配管が設けられてはいるが、異常のある単電池に冷媒が供給され続けることで、冷却配管から漏れ出た冷媒が単電池の非水電解質と反応し、火災を拡大させるおそれがある。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の電池の少なくとも一つに火災等の異常発生又はそのおそれがある場合に、複数の電池の対応する冷却手段への冷媒の流入を抑制し、異常の被害を抑制することを可能とした電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、リチウムイオンを用いた複数の電池と、複数の電池それぞれを冷媒により冷却するために、複数の電池毎に設けられ、冷媒が流れる冷却手段と、複数の冷却手段に冷媒を供給するための冷媒供給手段と、複数の冷却手段が冷媒供給手段に対し並列に接続されることと、複数の冷却手段のうち一部の冷却手段にのみ冷媒を選択的に供給可能とするための供給選択手段とを備えた電池システムにおいて、複数の電池のうち少なくとも一つの電池の温度が所定の閾値以上となった場合に、供給選択手段を動作させることにより、少なくとも温度が閾値以上となった電池に設けられる冷却手段に供給される冷媒を遮断するように構成したことを趣旨とする。
【0008】
上記技術の構成によれば、リチウムイオンを用いた複数の電池のうち少なくとも一つの電池の温度が、火災等の異常発生時に、所定の閾値以上となった場合には、供給選択手段を動作させることにより、温度が閾値以上となった電池に設けられる冷却手段への冷媒の供給が遮断される。従って、温度が上昇した電池への冷媒の流入が抑えられる。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、冷却手段は、冷媒を導入する入口側と冷媒を導出する出口側を含み、供給選択手段は、冷却手段それぞれの入口側に設けられる逆止弁と出口側に設けられる電磁弁により構成されることを趣旨とする。
【0010】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、冷却手段の出口側に設けられる電磁弁を閉弁させることで、冷却手段への冷媒の供給が確実に遮断される。また、冷却手段の入口側に設けられる逆止弁により、冷却手段からの冷媒の逆流が抑えられる。また、逆止弁は電磁弁よりも構成が簡略化される。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、冷媒供給手段は、冷媒を圧送するための容積ポンプを含み、冷媒供給手段には、複数の冷却手段のうちそれら冷却手段に供給されて流れ出た冷媒の流れの最下流側に位置する冷却手段よりも下流にて冷媒を排出するための排出通路が設けられることを趣旨とする。
【0012】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、冷媒供給手段において、冷媒は容積ポンプにより圧送される。容積ポンプは、冷媒にエアが混入しても冷媒の圧送が可能である。ここで、少なくとも一つの冷却手段の温度が閾値以上となった場合には、複数の冷却手段から流れ出た冷媒及び冷媒供給手段の中の冷媒が、容積ポンプにより圧送され、冷媒の流れの最下流側に位置する冷却手段よりも下流にて排出通路から排出される。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、冷媒供給手段は、冷媒を圧送するための容積ポンプと遠心ポンプを含み、容積ポンプは、遠心ポンプの下流側で、複数の冷却手段のうちそれら冷却手段に供給される冷媒の流れの最上流側に位置する冷却手段の近傍に設けられ、冷媒供給手段には、複数の冷却手段のうちそれら冷却手段に供給されて流れ出た冷媒の流れの最下流側に位置する冷却手段よりも下流にて冷媒を排出するための排出通路が設けられることを趣旨とする。
【0014】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、冷媒供給手段において、冷媒は容積ポンプと遠心ポンプにより圧送される。遠心ポンプは、冷媒にエアが混入すると冷媒の圧送が困難になるが、その駆動に要する電力が比較的少なくなる。一方、容積ポンプは、その駆動に要する電力が遠心ポンプよりも多くなる。ここで、少なくとも一つの冷却手段の温度が閾値以上となった異常時には、容積ポンプを動作させることで、複数の冷却手段から流れ出た冷媒及び冷媒供給手段の中の冷媒が、容積ポンプにより圧送され、冷媒の流れの最下流側に位置する冷却手段よりも下流にて排出通路から排出される。一方、少なくとも一つの冷却手段の温度が閾値以上とならない通常時には、遠心ポンプを動作させることで、冷媒供給手段から複数の冷却手段へ冷媒を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の技術によれば、複数の電池の少なくとも一つに火災等の異常発生又はそのおそれがある場合に、複数の電池の対応する冷却手段への冷媒の流入を抑制することができ、異常の被害を抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、出口側の電磁弁により電池での火災等の異常被害の拡大抑制効果を高めることができ、入口側の逆止弁により電池システムの製造コストを抑えることができる。
【0017】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、電池に火災等の異常が発生した場合は、容積式のポンプを動作させることで、複数の電池周辺の冷媒を冷媒供給手段から外部へ排出することができ、その異常被害の拡大を防止することができる。
【0018】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、電池に火災等の異常が発生した場合は、容積式のポンプを動作させることで、複数の電池周辺の冷媒を冷媒供給手段から外部へ排出することができ、その異常被害の拡大を防止することができる。また、通常の運転時には、遠心式のポンプを動作させることで、電池システムの電費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係り、電池システムを示す概略図。
【
図2】第1実施形態に係り、電池パック冷却制御の内容の一例を示すフローチャート。
【
図3】第2実施形態に係り、電池システムを示す概略図。
【
図4】第3実施形態に係り、電池システムを示す概略図。
【
図5】第4実施形態に係り、電池システムを示す概略図。
【
図6】第4実施形態に係り、電池パック冷却制御の内容の一例を示すフローチャート。
【
図7】第5実施形態に係り、電池システムを示す概略図。
【
図8】第5実施形態に係り、電池パック冷却制御の内容の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、電池システムを具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態につき、
図1、
図2を参照して詳細に説明する。以下の説明では、一例として、電気自動車に搭載される電池パックを冷媒により冷却するように構成した電池システムについて説明する。
【0022】
[電池システムの概略について]
図1に、この実施形態の電池システム1を概略図により示す。電池システム1は、概略的には、一つの電池パック2と、冷媒回路3と、冷媒回路3における冷媒の流れを制御するための電子制御装置(ECU)4とを備える。電池パック2は、並列に配置された複数の電池スタック11A~11Fと、複数の電池スタック11A~11Fそれぞれを冷却するために、各電池スタック11A~11F毎に設けられ、冷媒が流れる複数の冷却配管12とを含む。冷媒回路3は、複数の冷却配管12へ冷媒を供給するためのものである。この実施形態で、冷媒は、例えば、水より構成される。複数の冷却配管12は、後述するように冷媒回路3に対し並列に接続される。この電池システム1は、冷媒を冷媒回路3により複数の冷却配管12へ流して複数の電池スタック11A~11Fそれぞれを冷却するようになっている。冷媒回路3は、この開示技術の「冷媒供給手段」の一例に相当する。電池スタック11A~11Fは、この開示技術の「電池」の一例に相当する。冷却配管12は、この開示技術の「冷却手段」の一例に相当する。なお、
図1の電池パック2において、隣り合う電池スタック11A~11Fの間隔は便宜上広めに示すが、実際の間隔は狭く、搭載性向上のためには隙間はなく接触するようになっている(以後に説明する他の図においても同様。)。
【0023】
[電池スタックについて]
この実施形態で、各電池スタック11A~11Fは、一列に並んだ複数の電池セル13がケース14に収容されて構成され(
図1の電池スタック11A,11Fに電池セル13とケース14の符号を例示的に示す。)。電池セル13は、リチウムイオンを使用して充放電可能に構成された二次電池である。これら電池スタック11A~11Fが、一つのハウジング15に収容されることで一つの電池パック2が構成される。各電池スタック11A~11Fは、各電池セル13の電極が並列に接続されたスタック電極(図示略)を有する。ここで、複数の電池セル13それぞれには、その温度(電池セル温度TBC)を検出するためのセル温度センサ19が設けられる(
図1には、便宜上、各電池スタック11A~11Fに一つのセル温度センサ19のみを例示的に示す。)。これらセル温度センサ19は、電池スタック11A~11Fそれぞれの温度を検出するための温度検出手段の一例に相当する。
【0024】
[冷却配管について]
図1に示すように、各電池スタック11A~11Fにおいて、対応する冷却配管12は、一端に冷媒を導入する入口12aを有し、他端に冷媒を導出する出口12bを含む。この冷却配管12は、電池スタック11A~11Fの長手方向中央に沿って通直に配設される。この構成により、冷却配管12は、各電池スタック11A~11Fにて、一列に並んだ複数の電池セル13に対し冷媒が順次流れる。各電池スタック11B~11Fの対応する冷却配管12の入口12aの側には、電磁弁より構成される入口側二方弁21B~21Fがそれぞれ設けられる。また、各電池スタック11B~11Fの対応する冷却配管12の出口12bの側には、電磁弁より構成される出口側二方弁22B~22Fがそれぞれ設けられる。なお、この実施形態では、冷媒回路3に最も近い最上流側の電池スタック11Aに対応した冷却配管12には、システム簡略化のために入口側二方弁も出口側二方弁も設けられていない。この実施形態では、
図1に示すように、各冷却配管12の入口12aは、第1共通配管17に並列に接続され、各冷却配管12の出口12bは、第2共通配管18に並列に接続される。
【0025】
[冷媒回路について]
図1に示すように、この実施形態の冷媒回路3は、一端31aが第1共通配管17に接続され、他端31bが第2共通配管18に接続された冷媒配管31と、冷媒配管31の他端31bの側に設けられた逆止弁32と、逆止弁32より下流の冷媒配管31に設けられ、冷媒を外気と熱交換するためのラジエータ33と、ラジエータ33より下流の冷媒配管31に設けられ、ラジエータ33にて熱交換された冷媒を圧送するための電動遠心式のポンプ34と、ポンプ34より下流の冷媒配管31を逆止弁32より下流の冷媒配管31へ迂回させるバイパス配管35と、ポンプ34より下流の冷媒配管31とバイパス配管35との分岐部に設けられ、電磁弁より構成された三方弁36とを備える。
【0026】
三方弁36は、第1ポート36a、第2ポート36b及び第3ポート36cを有する。第1ポート36aと第3ポート36cは、それぞれ冷媒配管31に接続され、第2ポート36bは、バイパス配管35の一端に接続される。ここで、三方弁36は、各電池スタック11A~11Fを冷却するときはオン(通電)され、冷媒配管31を第1共通配管17を介して各冷却配管12につなぐ。三方弁36は、各電池スタック11A~11Fを冷却しないときはオフ(非通電)され、冷媒配管31の一端31aの側をバイパス配管35を介して冷媒配管31の他端31bの側へつなぐ。上記構成により、冷媒回路3は、複数の電池スタック11A~11Fを冷却するために、ポンプ34、三方弁36、複数の入口側二方弁21B~21F及び複数の出口側二方弁22B~22Fを制御することで、ラジエータ33により熱交換された冷媒をポンプ34により圧送し、各電池スタック11A~11Fの対応する冷却配管12へ選択的に流して循環させるように構成される。
【0027】
[電池システムの電気的構成について]
この実施形態において、ECU4は、電池システム1の制御を司り、制御手段の一例に相当する。すなわち、上記した多数のセル温度センサ19は、それぞれECU4に接続される。また、上記したポンプ34、三方弁36、複数の入口側二方弁21B~21F及び複数の出口側二方弁22B~22Fは、それぞれECU4に接続される。そして、ECU4は、各セル温度センサ19の検出値に基いてポンプ34、三方弁36、複数の入口側二方弁21B~21F及び複数の出口側二方弁22B~22Fを制御するようになっている。この実施形態において、三方弁36、複数の入口側二方弁21B~21F及び複数の出口側二方弁22B~22Fは、複数の冷却配管12のうち一部の冷却配管12にのみ冷媒を選択的に供給可能とする、この開示技術の「供給選択手段」の一例に相当する。また、出口側二方弁22B~22Fは、この開示技術の「出口側に設けられる電磁弁」の一例に相当する。
【0028】
ここで、各電池セル13に使用されるリチウムは、水と反応すると火災を発生、拡大させるおそれがある。そのため、万が一、電池スタック11A~11Fの異常時(火災発生時)に、冷却配管12から冷媒(水)が漏れると、電池セル13から漏れたリチウムと冷媒とが反応し、火災を拡大させるおそれがある。従前の電池パックを冷媒(水)で冷却する電池システムでは、電池パックの異常時に、ポンプ及び三方弁をオフにすることで、ラジエータから流れ出る大量の冷媒が電池パックに流入することを抑制し、電池火災の拡大を抑制することができた。しかし、電池スタックの中の冷媒は、電池パックの中に排出されるおそれがあり、電池パックの中で火災が拡大するおそれがあった。
【0029】
例えば、
図1に示す電池システム1において、複数の電池スタック11A~11Fのうちの一つ(例えば、電池スタック11E)に異常(火災)が発生し、その電池スタック11Eの冷却配管12に孔が空いていた場合、電池パック2の電池スタック11Eの冷却配管12から冷媒が電池パック2の中に排出され、電池パック2で火災が拡大するおそれがある。この場合、電池パック2の火災をできる限り小さく抑えるためには、万が一、冷却配管12に孔が空いていても、電池パック2の中の冷媒の排出量を抑制する必要がある。そこで、この実施形態の電池システム1は、複数の電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つの電池パックの温度が所定の閾値以上となった場合に、三方弁36、複数の入口側二方弁21B~21F及び複数の出口側二方弁22B~22Fを制御することにより、少なくとも温度が閾値以上となった電池スタック11A~11Fに設けられた冷却配管12に供給される冷媒を遮断するように構成される。具体的には、この実施形態では、電池パック2の中での冷媒の排出量を抑制するために、ECU4は、次のような「電池パック冷却制御」を実行するようになっている。
【0030】
[電池パック冷却制御について]
図2に、この「電池パック冷却制御」の内容の一例をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、ECU4は、複数の電池スタック11A~11Fにつき、各電池セル13のセル温度センサ19により検出される電池セル温度TBCを取り込む。
【0031】
次に、ステップ110で、ECU4は、取り込まれた複数の電池セル温度TBCの中から各電池スタック11A~11Fの最高電池セル温度TBCMXを求める。
【0032】
次に、ステップ120で、ECU4は、各電池スタック11A~11Fの最高電池セル温度TBCMXより、複数の電池スタック11A~11Fの中の最高電池スタック温度TBSMXを求める。
【0033】
次に、ステップ130で、ECU4は、最高電池スタック温度TBSMXが、基準となる「30℃」以上か否かを判断する。「30℃」は一例である。ECU4は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ140へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、各電池スタック11A~11Fが適温に達していないとして処理をステップ180へ移行する。
【0034】
ステップ140では、ECU4は、最高電池スタック温度TBSMXが、基準となる「200℃」未満か否かを判断する。「200℃」は一例である。ECU4は、この判断結果が肯定となる場合は、各電池スタック11A~11Fが適温に達していると判定して処理をステップ150へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、各電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つに火災(異常)が発生していると判定して処理をステップ180へ移行する。
【0035】
ステップ150では、ECU4は、各電池スタック11B~11Fの対応する入口側二方弁21B~21F及び出口側二方弁22B~22Fをそれぞれオン(開弁)する。これにより、全ての冷却配管12が、第1共通配管17及び第2共通配管18に連通する。
【0036】
次に、ステップ160で、ECU4は、三方弁36をオンする。これにより冷媒配管31が第1共通配管17及び第2共通配管18に連通する。
【0037】
次に、ステップ170で、ECU4は、ポンプ34をオンした後、処理をステップ100へ戻す。これにより、ポンプ34が通電により動作し、ラジエータ33で熱交換された冷媒が冷媒配管31の一端31aから第1共通配管17、各冷却配管12及び第2共通配管18を流れ、冷媒配管31の他端31bから逆止弁32へ流れ、ラジエータ33へ戻り、この経路を循環する。このとき、二方弁が設けられていない電池スタック11Aの対応する冷却配管12にも冷媒が流れる。
【0038】
一方、ステップ130又はステップ140から移行してステップ180では、各電池スタック11B~11Fの対応する入口側二方弁21B~21F及び出口側二方弁22B~22Fをそれぞれオフ(閉弁)する。これにより、全ての冷却配管12が、第1共通配管17及び第2共通配管18に対し遮断される。
【0039】
次に、ステップ190で、ECU4は、三方弁36をオフする。これにより冷媒配管31がバイパス配管35に連通し、第1共通配管17及び第2共通配管18に対し遮断される。
【0040】
次に、ステップ200で、ECU4は、ポンプ34をオフした後、処理をステップ100へ戻す。これにより、ポンプ34が停止し、冷媒配管31における冷媒の流れが止まる。このとき、二方弁が設けられていない電池スタック11Aの対応する冷却配管12にも冷媒が流れない。
【0041】
上記した「電池パック冷却制御」によれば、ECU4は、セル温度センサ19の検出結果に基き、複数の電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つの電池スタックの温度が所定の閾値(例えば、200℃)以上となった場合に、全ての電池スタック11A~11Fに設けられる冷却配管12に供給される冷媒を遮断するために三方弁36、入口側二方弁21B~21F及び出口側二方弁22B~22Fをオフ制御するようになっている。
【0042】
すなわち、この実施形態の電池システム1は、複数の電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つの電池スタックの温度が所定の閾値(200℃)以上となった場合に、三方弁36、入口側二方弁21B~21F及び出口側二方弁22B~22F(供給選択手段)を制御することにより、全ての電池スタック11A~11Fに設けられる冷却配管12に供給される冷媒を遮断するように構成される。
【0043】
[電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電池システム1の構成によれば、リチウムイオンを用いた複数の電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つの電池スタックの温度、すなわち最高電池スタック温度TBSMXが、火災等の異常発生時に、所定の閾値(例えば、200℃)以上となった場合には、ECU4が三方弁36、入口側二方弁21B~21F及び出口側二方弁22B~22F(供給選択手段)を制御して動作させることにより、全ての冷却配管12への冷媒の供給が遮断される。従って、各電池スタックへの冷媒の流入が抑えられる。このため、複数の電池スタック11A~11F(電池)の少なくとも一つに火災等の異常発生又はそのおそれがある場合に、各電池スタック11A~11Fに対応する冷却配管12(冷却手段)への冷媒の流入を抑制することができ、火災等の異常被害を抑制することができる。
【0044】
すなわち、この実施形態では、複数の電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つの電池スタックに火災等の異常が発生したとしても、そのときは、全ての電池スタック11A~11Fの対応した冷却配管12への新たな冷媒の供給が遮断される。加えて、電池スタック11Aを除く他の全ての電池スタック11B~11Fについては、それに対応する冷却配管12の入口12aと出口12bとの間を各二方弁21B~21F,22B~22Fで閉じることにより、各冷却配管12の中に冷媒が閉じ込められる。従って、仮に、冷却配管12に孔が空いていたとしても、その孔から漏れる冷媒量を、冷却配管12に滞留していた冷媒量に制限することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態につき、
図3を参照して説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0046】
第1実施形態の電池システム1では、各電池スタック11B~11Fに対応した冷却配管12の入口12a及び出口12bの両方に、電磁弁よりなる二方弁21B~22F,22B~22Fを設けて冷媒の流れを制御するように構成したが、コストが増大し、電池システム1の車両への搭載性が悪化することになった。そこで、この実施形態では、電池システムの構成を次のように簡略化した。
【0047】
[冷却配管について]
図3に、この実施形態の電池システム6を概略図により示す。
図3に示すように、この実施形態では、各電池スタック11B~11Fの対応する冷却配管12の入口12aの側には、入口側二方弁21B~21Fの代わりに入口側逆止弁23がそれぞれ設けられる。また、各電池スタック11B~11Fの冷却配管12の出口12bの側には、出口側二方弁22B~22Fの代わりに出口側逆止弁24がそれぞれ設けられる。これら逆止弁23,24は、ポンプ34により圧送される冷媒の正方向の流れを許容し、その反対方向の流れを規制するように配置される。すなわち、入口側と出口側の二方弁21B~21F,22B~22Fの両方が逆止弁23,24に置き換えられる。ただし、この実施形態では、出口側逆止弁24の開弁圧を、冷却配管12の中の停留冷媒の自重で開弁しないように、それらの開弁圧力が設定される。また、入口側逆止弁23の開弁圧力が、出口側逆止弁24の開弁圧力よりも小さく設定することができる。この実施形態において、三方弁36、複数の入口側逆止弁23及び複数の出口側逆止弁24は、この開示技術の「供給選択手段」の一例に相当する。
【0048】
[冷媒回路について]
図3に示すように、この実施形態の冷媒回路3の構成は、基本的には第1実施形態のそれと同じである。
【0049】
[電池システムの電気的構成について]
この実施形態において、ECU4は、セル温度センサ19の検出値に基づきポンプ34と三方弁36のみを制御するようになっている。
【0050】
[電池パック冷却制御について]
この実施形態の「電池パック冷却制御」は、
図2に示すフローチャートのステップ150とステップ180の省略した内容となる。
【0051】
[電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電池システム6の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態の構成によれば、第1実施形態の構成に対し、各電池スタック11B~11F(電池)の対応する冷却配管12(冷却手段)の入口12a及び出口12bの両方に、電磁弁よりなる二方弁21B~21F,22B~22Fに替えて逆止弁23,24が設けられることで、「供給選択手段」の構成が簡略化される。このため、第1実施形態の電池システム1に比べ電池システム6の製造コストを抑制することができ、電池システム6の車両に対する搭載性を向上させることができる。
【0052】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態につき、
図4を参照して説明する。
【0053】
第2実施形態の電池システム6では、第1実施形態の電池システム1に対し、各電池スタック11B~11Fに対応した冷却配管12に設けられる入口側二方弁21B~21Fと出口側二方弁22B~22Fの代わりに、入口側逆止弁23と出口側逆止弁24を設けることで、コスト増大と車両への搭載性の悪化を対策した。しかし、第2実施形態では、冷却配管12の出口12bの側に出口側逆止弁24を設けたことで、その開弁圧力の増大に伴い冷却配管12の圧損が増大することになった。その結果、ポンプ34の負荷が増大し、ポンプ34を大型化することが必要になり、電池システムが大型化することになった。そこで、この実施形態では、電池システムの構成を次のように改良した。
【0054】
[冷却配管について]
図4に、この実施形態の電池システム7を概略図により示す。
図4に示すように、この実施形態では、各電池スタック11B~11Fの対応する冷却配管12の出口12bの側に、出口側逆止弁24の代わりに、電磁弁より構成される出口側二方弁22B~22Fがそれぞれ設けられる。この実施形態において、三方弁36、複数の入口側逆止弁23及び複数の出口側二方弁22B~22Fは、複数の冷却配管12のうち一部の冷却配管12にのみ冷媒を選択的に供給可能とする、この開示技術の「供給選択手段」の一例に相当する。
【0055】
[冷媒回路について]
図4に示すように、この実施形態の冷媒回路3の構成は、基本的には第1実施形態のそれと同じである。
【0056】
[電池システムの電気的構成について]
この実施形態において、ECU4は、セル温度センサ19の検出値に基づきポンプ34、三方弁36及び出口側二方弁22B~22Fを制御するようになっている。
【0057】
[電池パック冷却制御について]
この実施形態の「電池パック冷却制御」は、
図2に示すフローチャートのステップ150において入口側二方弁21B~21Fのオンする制御を省略し、ステップ180において入口側二方弁21B~21Fのオフする制御を省略した内容となる。
【0058】
[電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電池システム7の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態の構成によれば、第2実施形態の構成に対し、各電池スタック11B~11Fの対応する冷却配管12の出口12bに、出口側逆止弁24に替えて出口側二方弁22B~22Fが設けられることで「供給選択手段」が構成される。すなわち、冷却配管12それぞれの入口12aの側に設けられる入口側逆止弁23と出口12bの側に設けられる出口側二方弁22B~22Fを動作させることで、最高電池スタック温度TBSMXが閾値(例えば、200℃)以上となった電池スタックに設けられる冷却配管12への冷媒の供給が遮断される。すなわち、出口側二方弁22B~22Fを閉弁させることで、冷却配管12への冷媒の供給が確実に遮断される。また、入口側逆止弁23により、冷却配管12からの冷媒の逆流が抑えられる。また、入口側逆止弁23は出口側二方弁22B~22Fよりも構成が簡略化される。このため、出口側二方弁22B~22F(電磁弁)により電池スタック11A~11F(電池)での火災等の異常被害の拡大抑制効果を高めることができ、入口側逆止弁23(逆止弁)により電池システム7の製造コストを抑えることができる。
【0059】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態につき、
図5、
図6を参照して説明する。
【0060】
第1~第3の実施形態の電池システム1,6,7は、各電池スタック11A~11Fの少なくとも一つに火災(異常)が発生した場合、対応する冷却配管12の中の冷媒を電池パック2から離れた箇所に排水することができなかった。そこで、この実施形態では、電池システムの構成を次のように改良した。
【0061】
[冷却配管について]
図5に、この実施形態の電池システム8を概略図により示す。
図5に示すように、この実施形態の冷却配管12に関連した構成は、基本的には、第3実施形態のそれと同じである。ただし、この実施形態では、電池スタック11Aに対応した冷却配管12の入口12aの側にも入口側逆止弁23が設けられ、出口12bの側にも出口側二方弁22Aが設けられる。
【0062】
[冷媒回路について]
図5に示すように、この実施形態の冷媒回路3は、前記各実施形態の構成に加え、次のような構成要素を有する。すなわち、三方弁36を「第1三方弁36」とすると、ポンプ34とラジエータ33との間の冷媒配管31には、電磁弁より構成される第2三方弁37が設けられる。第2三方弁37は、第1ポート37a、第2ポート37b及び第3ポート37cを有する。第1ポート37aと第3ポート37cは、それぞれ冷媒配管31に接続され、第2ポート37bは、外気配管38を介してエアクリーナ39に接続される。また、逆止弁32とラジエータ33との間の冷媒配管31には、電磁弁より構成される第3三方弁40が設けられる。第3三方弁40は、第1ポート40a、第2ポート40b及び第3ポート40cを有する。第1ポート40aと第3ポート40cは、それぞれ冷媒配管31に接続され、第2ポート40bは、排出通路41に接続される。
【0063】
ここで、第2三方弁37は、オン(通電)されることで、冷媒配管31を外気配管38に連通させる。第2三方弁37は、オフ(非通電)されることで、ポンプ34の側の冷媒配管31をラジエータ33に連通させる。また、第3三方弁40は、オン(通電)されることで、冷媒配管31を排出通路41に連通させる。第3三方弁40は、オフ(非通電)されることで、逆止弁32の側の冷媒配管31をラジエータ33に連通させる。なお、この実施形態で、ポンプ34は電動容積式のポンプとなっている。
【0064】
[電池システムの電気的構成について]
この実施形態において、ECU4は、セル温度センサ19の検出値に基づき、ポンプ34、第1三方弁36、第2三方弁37、第3三方弁40及び出口側二方弁22A~22Fを制御するようになっている。
【0065】
[電池パック冷却制御について]
図6に、この実施形態の「電池パック冷却制御」の内容の一例をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ200で、ECU4は、複数の電池スタック11A~11Fにつき、各電池セル13のセル温度センサ19により検出される電池セル温度TBCを取り込む。
【0066】
次に、ステップ210で、ECU4は、取り込まれた複数の電池セル温度TBCより各電池スタック11A~11Fの最高電池セル温度TBCMXを求める。
【0067】
次に、ステップ220で、ECU4は、各電池スタック11A~11Fの最高電池セル温度TBCMXより、複数の電池スタック11A~11Fの中の最高電池スタック温度TBSMXを求める。
【0068】
次に、ステップ230で、ECU4は、最高電池スタック温度TBSMXが、基準となる「30℃」以上か否かを判断する。「30℃」は一例である。ECU4は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ240へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、各電池スタック11A~11Fが適温に達していないとして処理をステップ300へ移行する。
【0069】
ステップ240では、ECU4は、最高電池スタック温度TBSMXが、基準となる「200℃」未満か否かを判断する。「200℃」は一例である。ECU4は、この判断結果が肯定となる場合は、各電池スタック11A~11Fが適温に達していると判定して処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、各電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つに火災(異常)が発生していると判定して処理をステップ350へ移行する。
【0070】
ステップ250では、ECU4は、各電池スタック11A~11Fの対応する出口側二方弁22A~22Fをそれぞれオン(開弁)する。これにより、全ての冷却配管12が、第1共通配管17及び第2共通配管18に連通する。
【0071】
次に、ステップ260で、ECU4は、第1三方弁36をオンする。これにより冷媒配管31が第1共通配管17に連通する。
【0072】
次に、ステップ270で、ECU4は、第2三方弁37をオフする。これにより冷媒配管31の一端31aの側がラジエータ33に連通する。
【0073】
次に、ステップ280で、ECU4は、第3三方弁40をオフする。これにより冷媒配管31の他端31bの側がラジエータ33に連通する。
【0074】
そして、ステップ290で、ECU4は、ポンプ34をオンした後、処理をステップ200へ戻す。これにより、ポンプ34が通電により動作し、ラジエータ33で熱交換された冷媒が冷媒配管31の一端31aから第1共通配管17、各冷却配管12及び第2共通配管18を流れ、冷媒配管31の他端31bから逆止弁32へ流れ、ラジエータ33へ戻り、この経路を循環する。
【0075】
一方、ステップ230から移行してステップ300では、各電池スタック11A~11Fの対応する出口側二方弁22A~22Fをそれぞれオフ(閉弁)する。これにより、全ての冷却配管12が第2共通配管18に対し遮断される。
【0076】
次に、ステップ310で、ECU4は、第1三方弁36をオフする。これにより冷媒配管31がバイパス配管35に連通する。
【0077】
次に、ステップ320で、ECU4は、第2三方弁37をオフする。これにより冷媒配管31の一端31aの側がラジエータ33に連通する。
【0078】
次に、ステップ330で、ECU4は、第3三方弁40をオフする。これにより冷媒配管31の他端31bの側がラジエータ33に連通する。
【0079】
そして、ステップ340で、ECU4は、ポンプ34をオフした後、処理をステップ200へ戻す。これにより、ポンプ34が停止し、冷媒配管31における冷媒の流れが止まる。
【0080】
一方、ステップ240から移行してステップ350では、各電池スタック11A~11Fの対応する出口側二方弁22A~22Fをそれぞれオン(開弁)する。これにより、全ての冷却配管12が第2共通配管18に連通する。
【0081】
次に、ステップ360で、ECU4は、第1三方弁36をオンする。これにより冷媒配管31が第1共通配管17に連通する。
【0082】
次に、ステップ370で、ECU4は、第2三方弁37をオンする。これにより冷媒配管31が外気配管38に連通する。
【0083】
次に、ステップ380で、ECU4は、第3三方弁40をオンする。これにより冷媒配管31の他端31bの側が排出通路41に連通する。
【0084】
次に、ステップ390で、ECU4は、ポンプ34をオンする。これにより、電池パック2の中の冷媒が冷媒配管31及び排出通路41を通じて外部へ排出される。
【0085】
次に、ステップ400で、ECU4は、冷媒排出の継続時間TMOを取り込む。ECU4は、ステップ390でポンプ34をオンしてからの継続時間TMOを計測するようになっている。
【0086】
そして、ステップ410で、ECU4は、継続時間TMOが所定時間T1未満か否かを判断する。ECU4は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ200へ戻し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ300へ移行する。
【0087】
上記した電池システム8の構成によれば、電動容積式のポンプ34より下流に冷媒排出用の第3三方弁40を設け、電池パック2で火災(異常)が発生したとき、電池パック2の中の冷媒をポンプ34の動作によって電池パック2から離れた箇所に排出するようになっている。
【0088】
[電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電池システム8の構成によれば、第3実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態の構成によれば、第3実施形態の構成に対し、冷媒回路3において、冷媒は容積式のポンプ34により圧送される。容積式のポンプ34は、冷媒にエアが混入しても冷媒の圧送が可能である。ここで、少なくとも一つの冷却配管12を含む電子スタックの最高電池スタック温度TBSMXが閾値(例えば、200℃)以上となった場合には、複数の冷却配管12から流れ出た冷媒及び冷媒回路3の中の冷媒が、容積式のポンプ34により圧送され、冷媒の流れの最下流側に位置する電池スタック11Aに対応する冷却配管12よりも下流の冷媒配管31にて排出通路41から排出される。このため、各電池スタック11A~11F(電池)に火災等の異常が発生した場合は、容積式のポンプ34を動作させることで、複数の電池スタック11A~11Fの周辺の冷媒を冷媒回路3(冷媒供給手段)から外部へ排出することができ、その異常被害の拡大を防止することができる。
【0089】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態につき、
図7、
図8を参照して説明する。
【0090】
第4実施形態の電池システム1では、容積式のポンプ34を使用していたため、通常作動時のポンプ34の負荷が遠心式のポンプに比べて大きかった。このため、ポンプ34の消費電力が増え、燃(電)費が悪化するおそれがあった。そこで、この実施形態では、電池システムの構成を次のように改良した。
【0091】
[冷却配管について]
図7に、この実施形態の電池システム9を概略図により示す。
図7に示すように、この実施形態の冷却配管12に関連した構成は、基本的には、第4実施形態のそれと同じである。
【0092】
[冷媒回路について]
図7に示すように、この実施形態の冷媒回路3の構成は、第4実施形態の構成に対し次の点で異なる。すなわち、この実施形態では、第2三方弁37とそれに関連した外気配管38及びエアクリーナ39が省略され、ポンプ34が電動遠心式の「第1ポンプ34」となっている。また、冷媒配管31の一端31aと第1共通配管17の入口17aには、別の外気配管46を介してエアクリーナ47が接続され、その外気配管46には電磁弁より構成される二方弁48と電動容積式の小型の第2ポンプ49が設けられる。
【0093】
[電池システムの電気的構成について]
この実施形態において、ECU4は、セル温度センサ19の検出値に基づき、第1ポンプ34、第1三方弁36、第3三方弁40、二方弁48、第2ポンプ49及び出口側二方弁22A~22Fを制御するようになっている。
【0094】
[電池パック冷却制御について]
図8に、この実施形態の「電池パック冷却制御」の内容の一例をフローチャートにより示す。この実施形態のフローチャートは、
図6のフローチャートにおけるステップ270の代わりにステップ500が設けられ、
図6のステップ290の代わりにステップ510とステップ520が設けられる。また、この実施形態のフローチャートは、
図6のフローチャートにおけるステップ320の代わりにステップ530が設けられ、
図6のステップ340の代わりにステップ540とステップ550が設けられる。更に、この実施形態のフローチャートは、
図6のフローチャートにおけるステップ370の代わりにステップ560が設けられ、
図6のステップ390の代わりにステップ570とステップ580が設けられる。
【0095】
処理が
図8に示すルーチンへ移行すると、ECU4は、ステップ200~ステップ260の処理を実行すると、ステップ500で、二方弁48をオフ(閉弁)する。
【0096】
その後、ステップ280の処理を実行した後、ステップ510で、ECU4は、第1ポンプ34をオン(通電)し、動作させる。
【0097】
次に、ステップ520で、ECU4は、第2ポンプ49をオフ(非通電)し、停止させる。
【0098】
一方、ステップ230から移行してステップ300及びステップ310の処理を実行した後、ECU4は、ステップ530で、二方弁48をオフ(閉弁)する。
【0099】
その後、ステップ330の処理を実行した後、ステップ540で、ECU4は、第1ポンプ34をオフ(非通電)し、停止させる。
【0100】
次に、ステップ550で、ECU4は、第2ポンプ49をオフ(非通電)し、停止させる。
【0101】
一方、ステップ240から移行してステップ350及びステップ360の処理を実行した後、ECU4は、ステップ560で、二方弁48をオン(開弁)する。
【0102】
その後、ステップ380の処理を実行した後、ステップ570で、ECU4は、第1ポンプ34をオフ(非通電)し、停止させる。
【0103】
次に、ステップ580で、ECU4は、第2ポンプ49をオン(通電)し、動作させる。その後、ECU4は、ステップ400及びステップ410の処理を実行した後、処理をステップ300へ移行する。
【0104】
上記した電池システム9の構成によれば、電動遠心式の第1ポンプ34と小型の電動容積式の第2ポンプ49を設け、通常運転時には、遠心式の第1ポンプ34を使用して各冷却配管12に冷媒を流すことで各電池スタック11A~11F、延いては電池パック2を冷却するようになっている。また、電池パック2に火災(異常)が発生したときは、電池パック2の中の冷媒を小型の容積式の第2ポンプ49の動作によって電池パック2から離れた箇所に排出するようになっている。
【0105】
[電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電池システム9の構成によれば、第3実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態の構成によれば、冷媒回路3において、冷媒は容積式の第2ポンプ49と遠心式の第1ポンプ34により圧送される。遠心式の第1ポンプ34は、冷媒にエアが混入すると冷媒の圧送が困難になるが、その駆動に要する電力は比較的少なくなる。一方、容積式の第2ポンプ49は、その駆動に要する電力が遠心式の第1ポンプ34よりも多くなる。ここで、少なくとも一つの冷却配管12を含む電子スタックの最高電池スタック温度TBSMXが閾値(例えば、200℃)以上となった異常時には、容積式の第2ポンプ49を動作させることで、複数の冷却配管12から流れ出た冷媒及び冷媒回路3の中の冷媒が、容積式の第2ポンプ49により圧送され、冷媒の流れの最下流側に位置する電池スタック11Aの対応する冷却配管12よりも下流の冷媒配管31にて排出通路41から排出される。一方、少なくとも一つの冷却配管12を含む電子スタックの最高電池スタック温度TBSMXが閾値(例えば、200℃)以上とならない通常時には、遠心式の第1ポンプ34を動作させることで、冷媒回路3から複数の冷却配管12へ冷媒を供給することが可能となる。このため、電池スタック11A~11F(電池)に火災等の異常が発生した場合は、容積式の第2ポンプ49を動作させることで、複数の電池スタック11A~11Fの周辺の冷媒を冷媒回路3(冷媒供給手段)から外部へ排出することができ、その異常被害の拡大を防止することができる。また、通常の運転時には、遠心式の第1ポンプ34を動作させることで、電池システム9の電費を抑えることができる。
【0106】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0107】
(1)前記第1~第3の実施形態では、
図1、
図3及び
図4において、電池パック2の左端に配置された電池スタック11Aの対応する冷却配管12に、入口側二方弁や出口側二方弁、又は入口側逆止弁や出口側逆止弁を設けなかったが、この左端の電池スタックの対応する冷却配管にも、入口側二方弁や出口側二方弁、又は入口側逆止弁や出口側逆止弁を設けることもできる。
【0108】
(2)前記第1実施形態では、各電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つに火災(異常)が発生していると判定した場合は、各電池スタック11B~11Fの対応する入口側二方弁21B~21F及び出口側二方弁22B~22Fをそれぞれオフ(閉弁)した。これに対し、各電池スタックのうち少なくとも一つに火災(異常)が発生していると判定した場合は、異常が発生している電池スタックの対応する入口側二方弁及び出口側二方弁のみをオフ(閉弁)するように構成してもよい。
【0109】
(3)前記第4及び第5の実施形態では、各電池スタック11A~11Fのうち少なくとも一つに火災(異常)が発生していると判定した場合は、各電池スタック11A~11Fの対応する出口側二方弁22A~22Fをそれぞれオン(開弁)した。これに対し、各電池スタックのうち少なくとも一つに火災(異常)が発生していると判定した場合は、異常が発生している電池スタックの対応する出口側二方弁のみをオン(開弁)するように構成してもよい。
【0110】
<付記的事項>
前記各実施形態は、次のような構成の開示技術を含むことから、以下にその開示技術を付記的に記載する。
[付記請求項]
リチウムイオンを用いた複数の電池と、
複数の前記電池それぞれを冷媒により冷却するために、複数の前記電池毎に設けられ、前記冷媒が流れる冷却手段と、
複数の前記冷却手段に前記冷媒を供給するための冷媒供給手段と、
複数の前記冷却手段が前記冷媒供給手段に対し並列に接続されることと、
前記電池それぞれの温度を検出するための温度検出手段と、
複数の前記冷却手段のうち一部の前記冷却手段にのみ前記冷媒を選択的に供給可能とするための供給選択手段と、
複数の前記電池への前記冷媒の供給を制御するために、前記冷媒供給手段及び前記供給選択手段を制御する制御手段と
を備えた電池システムにおいて、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基き、複数の前記電池のうち少なくとも一つの前記電池の温度が所定の閾値以上となった場合に、少なくとも前記温度が前記閾値以上となった前記電池に設けられる前記冷却手段に供給される前記冷媒を遮断するために前記供給選択手段を制御する
ことを特徴とする電池システム。
【0111】
上記の構成によれば、リチウムイオンを用いた複数の電池のうち少なくとも一つの電池の温度が、火災等の異常発生時に、所定の閾値以上となった場合には、制御手段が供給選択手段を制御することにより、温度が閾値以上となった電池に設けられる冷却手段への冷媒の供給が遮断される。従って、温度が上昇した電池への冷媒の流入が抑えられる。このため、複数の電池の少なくとも一つに火災等の異常発生又はそのおそれがある場合に、複数の電池の対応する冷却手段への冷媒の流入を抑制することができ、異常の被害を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
この開示技術は、充放電可能な二次電池(リチウムイオン電池)を冷媒により冷却するように構成した電池システムに適用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 電池システム
3 冷媒回路(冷媒供給手段)
6 電池システム
7 電池システム
8 電池システム
9 電池システム
11A~11F 電池スタック(電池)
12 冷却配管(冷却手段)
12a 入口
12b 出口
21B~21F 入口側二方弁(供給選択手段)
22A~22F 出口側二方弁(供給選択手段)
23 入口側逆止弁(供給選択手段)
24 出口側逆止弁(供給選択手段)
34 ポンプ,第1ポンプ(遠心式ポンプ、容積式ポンプ)
36 三方弁、第1三方弁(供給選択手段)
41 排出通路
49 第2ポンプ(容積式ポンプ)