(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036039
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/15 20210101AFI20240308BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240308BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240308BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20240308BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20240308BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M50/15
H01M50/103
H01M50/119
H01M50/159
H01M50/169
H01M10/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140739
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴彦
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD06
5H011DD13
5H011KK01
5H028AA07
5H028BB05
5H028BB15
5H028HH05
(57)【要約】
【課題】閉塞工程において、「封口角部の削れ」が発生した場合でも、従来に比べて封口角部の削れ量を低減することができる蓄電デバイスの製造方法を提供する
【解決手段】閉塞工程で用いる封口板10は、外周縁部11が、矩形環状をなし、互いに平行な一対の封口長辺部11b,11cと、互いに平行な一対の封口短辺部11d,11eと、これらを結ぶ4つの円弧状の封口角部11f~11iと、を有する。さらに、当該封口板10の外周面13のうち最も外側に位置する外周端面14が、当該封口板10の厚み方向DTに平行に延びる形態を有する。さらに、外周端面14のうち、封口角部11f~11iに含まれる角部端面14f~14iの厚み方向DTの長さLKが、封口長辺部11b,11cに含まれる長辺端面14b,14cの厚み方向DTの長さLLよりも短い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を収容する金属製のケースと、前記ケースの矩形状の開口に挿入されて前記開口を閉塞する金属製で矩形状の封口板と、を有し、前記開口を囲む前記ケースの開口壁部と前記封口板の外周縁部とが全周にわたって溶接されている蓄電デバイスの製造方法において、
前記電極体を前記ケースの内部に収容すると共に、前記ケースの前記開口に前記封口板を挿入して、前記封口板によって前記開口を閉塞する閉塞工程と、
前記封口板によって前記ケースの前記開口が閉塞された状態で、前記封口板の前記外周縁部と前記ケースの前記開口壁部とを全周にわたってレーザ溶接する溶接工程と、を備え、
前記閉塞工程で用いる前記ケースの前記開口壁部は、矩形環状をなし、互いに平行な一対の開口長辺部と、互いに平行な一対の開口短辺部と、前記開口長辺部と前記開口短辺部を結ぶ4つの円弧状の開口角部と、を有し、
前記閉塞工程で用いる前記封口板は、
前記外周縁部が、矩形環状をなし、互いに平行な一対の封口長辺部と、互いに平行な一対の封口短辺部と、前記封口長辺部と前記封口短辺部を結ぶ4つの円弧状の封口角部と、を有し、
当該封口板の外周面のうち最も外側に位置する外周端面が、当該封口板の厚み方向に平行に延びる形態を有し、
前記外周端面のうち、前記封口角部に含まれる角部端面の前記厚み方向の長さLKが、前記封口長辺部に含まれる長辺端面の前記厚み方向の長さLLよりも短い
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記閉塞工程で用いる前記封口板は、
前記厚み方向の一方側を向く表面と他方側を向く裏面とを有し、
前記外周縁部のうち前記裏面側が、全周にわたって面取りされており、
前記封口角部が前記封口長辺部よりも大きく面取りされていることで、前記長さLKが前記長さLLよりも短くされており、
前記閉塞工程では、前記封口板を前記裏面側から前記ケースの前記開口に挿入する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記閉塞工程で用いる前記封口板は、前記外周端面のうち、前記封口短辺部に含まれる短辺端面の前記厚み方向の長さLSと、前記長さLLとが、LS≦LLの関係を満たしている
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極体と、電極体を収容する金属製のケースと、ケースの矩形状の開口に挿入されて開口を閉塞する金属製で矩形状の封口板と、を有する蓄電デバイスが開示されている。この蓄電デバイスでは、ケースの開口を囲む開口壁部と封口板の外周縁部とが全周にわたって溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
前述の蓄電デバイスは、以下のようにして製造される。まず、閉塞工程において、電極体をケースの内部に収容すると共に、ケースの開口に封口板を挿入して、封口板によって開口を閉塞する。次に、溶接工程において、封口板によってケースの開口が閉塞された状態で、封口板の外周縁部とケースの開口壁部とを全周にわたってレーザ溶接する。
【0005】
なお、閉塞工程で用いるケースの開口壁部は、矩形環状をなし、互いに平行な一対の開口長辺部と、互いに平行な一対の開口短辺部と、これらを結ぶ4つの円弧状の開口角部と、を有する。さらに、閉塞工程では、以下のような封口板を用いる。具体的には、封口板の外周縁部が、矩形環状をなし、互いに平行な一対の封口長辺部と、互いに平行な一対の封口短辺部と、これらを結ぶ4つの円弧状の封口角部と、を有する。さらに、封口板の外周面のうち最も外側に位置する外周端面が、封口板の厚み方向に平行に延びる形態を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、閉塞工程において、前述のような形状を有する封口板とケースを用いた場合、封口板をケースの開口に挿入したときに、封口板の封口角部において「削れ」が発生することがあった。ここで、封口角部の「削れ」とは、封口板をケースの開口に挿入するとき、ケースの開口角部に封口板の封口角部の一部が厚み方向に重なるようにして、封口板がケースの開口に挿入されることで、封口角部の一部(具体的には、開口角部に対して厚み方向に重なる部分)が削られることをいう。封口角部の削れによって金属粉が発生し、この金属粉は、封口角部の表面及び開口角部の表面に堆積する。
【0007】
具体的には、例えば、ケースの開口壁部の内周面の短辺寸法と封口板の短辺寸法が同等で、ケースの開口壁部の内周面の長辺寸法と封口板の長辺寸法が同等で、且つ、ケースの開口角部の内側半径に対し、封口板の封口角部の外側半径が小さい場合がある。このような場合には、閉塞工程において、ケースの開口角部に、封口板の封口角部の一部が厚み方向に重なるようにして、封口板がケースの開口に挿入される。これにより、封口板の封口角部の一部(具体的には、ケースの開口壁部に対して厚み方向に重なる部分)が削られて、金属粉が発生する。
【0008】
前述のように、封口角部の削れによって発生した金属粉は、封口角部の表面及び開口角部の表面に堆積する。このため、閉塞工程の後、溶接工程において、封口板の外周縁部とケースの開口壁部とを全周にわたってレーザ溶接したとき、この金属粉に起因して、スパッタやボイドが発生することがあった。
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、閉塞工程において、「封口角部の削れ」が発生した場合でも、従来に比べて封口角部の削れ量(すなわち、削られる封口角部の体積)を低減することができる蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様は、電極体と、前記電極体を収容する金属製のケースと、前記ケースの矩形状の開口に挿入されて前記開口を閉塞する金属製で矩形状の封口板と、を有し、前記開口を囲む前記ケースの開口壁部と前記封口板の外周縁部とが全周にわたって溶接されている蓄電デバイスの製造方法において、前記電極体を前記ケースの内部に収容すると共に、前記ケースの前記開口に前記封口板を挿入して、前記封口板によって前記開口を閉塞する閉塞工程と、前記封口板によって前記ケースの前記開口が閉塞された状態で、前記封口板の前記外周縁部と前記ケースの前記開口壁部とを全周にわたってレーザ溶接する溶接工程と、を備え、前記閉塞工程で用いる前記ケースの前記開口壁部は、矩形環状をなし、互いに平行な一対の開口長辺部と、互いに平行な一対の開口短辺部と、前記開口長辺部と前記開口短辺部を結ぶ4つの円弧状の開口角部と、を有し、前記閉塞工程で用いる前記封口板は、前記外周縁部が、矩形環状をなし、互いに平行な一対の封口長辺部と、互いに平行な一対の封口短辺部と、前記封口長辺部と前記封口短辺部を結ぶ4つの円弧状の封口角部と、を有し、当該封口板の外周面のうち最も外側に位置する外周端面が、当該封口板の厚み方向に平行に延びる形態を有し、前記外周端面のうち、前記封口角部に含まれる角部端面の前記厚み方向の長さLKが、前記封口長辺部に含まれる長辺端面の前記厚み方向の長さLLよりも短い蓄電デバイスの製造方法である。
【0011】
この製造方法では、ケースの開口に封口板を挿入して開口を閉塞する閉塞工程において、以下のような封口板を用いる。具体的には、封口板の外周縁部が、矩形環状をなし、互いに平行な一対の封口長辺部と、互いに平行な一対の封口短辺部と、これらを結ぶ4つの円弧状の封口角部と、を有する。さらに、封口板の外周面のうち最も外側に位置する外周端面が、封口板の厚み方向に平行に延びる形態を有している。そして、外周端面のうち封口角部に含まれる部位(これを角部端面という)の前記厚み方向の長さLKが、外周端面のうち封口長辺部に含まれる部位(これを長辺端面という)の前記厚み方向の長さLLよりも短い。すなわち、LK<LLの関係を満たしている。
【0012】
これにより、閉塞工程において、封口板をケースの開口に挿入したときに、「封口角部の削れ」が発生した場合でも、LK=LLとしていた従来例に比べて、封口角部の削れ量(すなわち、削られる封口角部の体積)を低減することができる。これにより、封口角部の削れによって発生する金属粉の量が少なくなるので、封口板の外周縁部の表面及びケースの開口壁部の表面に堆積する金属粉の量を低減できる。これにより、閉塞工程の後、溶接工程において、封口板の外周縁部とケースの開口壁部とを全周にわたってレーザ溶接したとき、金属粉に起因するスパッタの発生やボイドの発生を低減することができる。
【0013】
なお、封口角部の「削れ」とは、閉塞工程において、ケースの開口角部に封口板の封口角部の一部が厚み方向に重なるようにして、封口板がケースの開口に挿入されることで、封口角部の一部(具体的には、開口角部に対して厚み方向に重なる部分)が開口角部によって削られることをいう。封口角部の削れによって金属粉が発生し、この金属粉は、封口角部の表面及び開口角部の表面に堆積する。
【0014】
(2)さらに、前記(1)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記閉塞工程で用いる前記封口板は、前記厚み方向の一方側を向く表面と他方側を向く裏面とを有し、前記外周縁部のうち前記裏面側が、全周にわたって面取りされており、前記封口角部が前記封口長辺部よりも大きく面取りされていることで、前記長さLKが前記長さLLよりも短くされており、前記閉塞工程では、前記封口板を前記裏面側から前記ケースの前記開口に挿入する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0015】
この製造方法では、ケースの開口に封口板を挿入する閉塞工程において、以下のような封口板を用いる。封口板の外周縁部のうち裏面側が、全周にわたって面取りされている。詳細には、封口角部が封口長辺部よりも大きく面取りされていることで、長さLKが長さLLよりも短くされている。なお、封口板の外周面は、前述の外周端面と面取りされている部位の表面とによって構成される。閉塞工程において、この封口板を裏面側から(すなわち、面取りされている側から)ケースの開口に挿入することで、封口角部の削れ量を低減することができる。
【0016】
(3)さらに、前記(1)または(2)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記閉塞工程で用いる前記封口板は、前記外周端面のうち、前記封口短辺部に含まれる短辺端面の前記厚み方向の長さLSと、前記長さLLとが、LS≦LLの関係を満たしている蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0017】
ところで、ケースの開口長辺部は、開口角部に比べて弾性変形し易い。このため、閉塞工程において、ケースの開口長辺部に、封口板の封口長辺部の一部が厚み方向に重なるような位置関係で、ケースの開口への封口板の挿入が開始される場合でも、封口長辺部が開口長辺部に接触したときに開口長辺部が封口長辺部に倣って外側へ弾性変形することで、開口長辺部に対して封口長辺部が厚み方向に重ならないようにして、封口板がケースの開口に挿入される傾向にある。これにより、封口長辺部の「削れ」が抑制される。
【0018】
また、ケースの開口短辺部は、開口角部に比べて弾性変形し易い。このため、封口板の封口短辺部は、封口角部に比べて、「削れ」が生じ難い。しかしながら、ケースの開口短辺部は、開口長辺部に比べて弾性変形し難いため、封口板の封口短辺部は、封口長辺部に比べて「削れ」が生じ易いといえる。このため、LS≦LLの関係を満たすようにするのが好ましい。このようにすることで、封口板をケースの開口に挿入したときに、封口短辺部において「削れ」が発生した場合でも、LS=LLとしていた従来例に比べて、封口短辺部の削れ量を同等以下にすることができる。
【0019】
なお、本願において「削れ」とは、閉塞工程において、ケースの開口壁部の少なくとも一部に、封口板の外周縁部の少なくともの一部が厚み方向に重なるようにして、封口板がケースの開口に挿入されることで、封口板の外周縁部のうち開口壁部に対して厚み方向に重なる部分が削られることをいう。この「削れ」によって金属粉が発生し、この金属粉は、外周縁部の表面及び開口壁部の表面に堆積する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態にかかる蓄電デバイスの平面図(上面図)である。
【
図4】
図3のC-C断面図、D-D断面図、E-E断面図、及びF-F断面図である。
【
図9】実施形態にかかる閉塞工程を説明する図である。
【
図14】実施形態にかかる溶接工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の蓄電デバイス1は、リチウムイオン二次電池である。この蓄電デバイス1は、電極体50と、電極体50を収容するケース20と、ケース20の開口20bを閉塞する封口板10と、を備える(
図1及び
図2参照)。ケース20は、直方体箱状をなす金属製のハードケースであり、矩形状の開口20bを有する(
図7及び
図8参照)。封口板10は、矩形板状をなす金属製であり、ケース20の開口20bに挿入されて開口20bを閉塞している(
図1及び
図2参照)。
【0022】
ケース20の開口壁部21と封口板10の外周縁部11とは、全周にわたって溶接されて、環状の溶接部Wを形成している(
図2参照)。ここで、ケース20の開口壁部21は、ケース20の開口20bを囲む部位であり、平面視矩形環状をなしている(
図7参照)。また、封口板10の外周縁部11は、封口板10の外周面13を含む部位であり、平面視矩形環状をなしている(
図3~
図6参照)。
【0023】
電極体50は、正極板51と、負極板52と、正極板51と負極板52との間に介在するセパレータ53と、を有する(
図2参照)。より具体的には、電極体50は、帯状の正極板51と、帯状の負極板52と、帯状のセパレータ53とを備え、正極板51と負極板52とがセパレータ53を間に挟んで捲回された扁平捲回型の電極体である。なお、電極体50の内部には、図示しない電解液が含まれている。ケース20の内部の底面側にも、図示しない電解液が収容されている。
【0024】
さらに、蓄電デバイス1は、電極体50の正極板51に接続する正極集電部材60、及び、電極体50の負極板52に接続する負極集電部材70を有する(
図2参照)。さらに、蓄電デバイス1は、正極集電部材60と接続して、封口板10に形成された第1貫通孔(図示なし)を通じて蓄電デバイス1の外部に露出する正極端子部材(図示なし)を有する。さらに、蓄電デバイス1は、負極集電部材70と接続して、封口板10に形成された第2貫通孔(図示なし)を通じて蓄電デバイス1の外部に露出する負極端子部材(図示なし)を有する。
【0025】
次に、本実施形態の蓄電デバイス1の製造方法について説明する。まず、蓋構造体100を形成する。具体的には、封口板10に、正極集電部材60と負極集電部材70と正極端子部材(図示なし)と負極端子部材(図示なし)とを組み付けて、これらが一体となった蓋構造体100を形成する。次に、電極体50を用意し、この電極体50の正極板51に、蓋構造体100の正極集電部材60を接続すると共に、電極体50の負極板52に、蓋構造体100の負極集電部材70を接続して、蓋構造体100と電極体50とを一体にする(
図9参照)。
【0026】
次に、閉塞工程において、蓋構造体100と一体にされた電極体50を、開口20bを通じてケース20の内部に収容すると共に、ケース20の開口20bに封口板10を挿入して、封口板10によってケース20の開口20bを閉塞する(
図9参照)。なお、封口板10は、その裏面10c側からケース20の開口20bに挿入される。また、閉塞工程に供されるケース20の開口壁部21は、矩形環状をなし、互いに平行な一対の開口長辺部21b,21cと、互いに平行な一対の開口短辺部21d,21eと、これらを結ぶ4つの円弧状の開口角部21f~21iと、を有している(
図7参照)。なお、開口角部21fは、開口長辺部21bと開口短辺部21dとを結ぶ部位である。また、開口角部21gは、開口長辺部21cと開口短辺部21dとを結ぶ部位である。また、開口角部21hは、開口長辺部21cと開口短辺部21eとを結ぶ部位である。また、開口角部21iは、開口長辺部21bと開口短辺部21eとを結ぶ部位である。
【0027】
また、閉塞工程に供される封口板10は、以下の形態を有している。具体的には、封口板10の外周縁部11は、矩形環状をなし、互いに平行な一対の封口長辺部11b,11cと、互いに平行な一対の封口短辺部11d,11eと、これらを結ぶ4つの円弧状の封口角部11f~11iと、を有している(
図3~
図6参照)。なお、封口角部11fは、封口長辺部11bと封口短辺部11dとを結ぶ部位である。また、封口角部11gは、封口長辺部11cと封口短辺部11dとを結ぶ部位である。また、封口角部11hは、封口長辺部11cと封口短辺部11eとを結ぶ部位である。また、封口角部11iは、封口長辺部11bと封口短辺部11eとを結ぶ部位である。また、封口板10の外周面13のうち最も外側に位置する外周端面14が、当該封口板10の厚み方向DTに平行に延びる形態を有している(
図3~
図6参照)。なお、封口板10の外周面13は、外周端面14と後述する面取り部15の表面とによって構成されている。
【0028】
なお、外周端面14のうち、封口長辺部11bに含まれる部位を長辺端面14b、封口長辺部11cに含まれる部位を長辺端面14cとする(
図6参照)。また、外周端面14のうち、封口短辺部11dに含まれる部位を短辺端面14d、封口短辺部11eに含まれる部位を短辺端面14eとする(
図5参照)。また、外周端面14のうち、封口角部11fに含まれる部位を角部端面14f、封口角部11gに含まれる部位を角部端面14g、封口角部11hに含まれる部位を角部端面14h、封口角部11iに含まれる部位を角部端面14iとする(
図4参照)。長辺端面14b,14c、短辺端面14d,14e、及び、角部端面14g~14iは、いずれも、封口板10の厚み方向DT(
図4~
図6において上下方向)に延びる平面である。
【0029】
また、本実施形態では、ケース20と封口板10とは、閉塞工程においてケース20の開口20bに封口板10を挿入するとき、ケース20の開口角部21f~21iの少なくともいずれかに、封口板10の封口角部11f~11iの少なくともいずれかが、厚み方向DTに重なり得る寸法関係を有している。より具体的には、ケース20と封口板10とは、封口角部11f~11iの外側半径R1と開口角部21f~21iの内側半径R2との寸法公差範囲内での寸法の違いに起因して、開口角部21f~21iのうち少なくともいずれかと封口角部11f~11iのうち少なくともいずれかとが、厚み方向DTに重なる場合があり得る関係を有している(
図11及び
図12参照)。
【0030】
ここで、本実施形態の閉塞工程について詳細に説明する。なお、ここでは、閉塞工程においてケース20の開口20bに封口板10を挿入するときに、ケース20の開口角部21fに、封口板10の封口角部11fが、厚み方向DTに重なる場合を例に挙げて説明する。
図9に示すように、まず、蓋構造体100と一体にされた電極体50を、開口20bを通じてケース20の内部に収容してゆく。さらには、蓋構造体100を構成する封口板10を、ケース20の開口20b(換言すれば、開口壁部21の内側)に挿入して、封口板10によってケース20の開口20bを閉塞する。
【0031】
図10は、封口板10をケース20の開口20bに挿入するときの封口板10とケース20との位置関係を示す図であり、封口板10の表面10b側から見た平面図である。
図11は、
図10のJ部拡大図であり、封口板10をケース20の開口20bに挿入するときの封口板10の封口角部11fとケース20の開口角部21fとの位置関係を示している。
図11に示すように、この例では、ケース20の開口角部21fの内側半径R2に対し、封口板10の封口角部11fの外側半径R1が小さい寸法関係を有している。なお、開口角部21fの内側半径R2は、開口壁部21の内周面23のうち開口角部21fに含まれる角部内周面23fを平面視した円弧の半径である。また、封口角部11fの外側半径R1は、封口板10の外周端面14のうち封口角部11fに含まれる角部端面14fを平面視した円弧の半径である。
【0032】
このため、
図12に示すように、閉塞工程において、ケース20の開口角部21fに、封口板10の封口角部11fの一部が厚み方向DT(
図12において上下方向)に重なるようにして、ケース20の開口20bに封口板10が挿入される。これにより、ケース20の開口20bに封口板10を挿入したとき、封口板10の封口角部11fにおいて「削れ」が発生する。
【0033】
ここで、封口角部11fの「削れ」とは、ケース20の開口角部21fに、封口板10の封口角部11fの一部が厚み方向DTに重なるようにして、ケース20の開口20bに封口板10が挿入されることで、封口板10の封口角部11fの一部(具体的には、ケース20の開口角部21fに対して厚み方向DTに重なる部位である重なり部11f1)が削られることをいう。
図13に示すように、封口角部11fの重なり部11f1は、削られることによって金属粉MPとなり、この金属粉MPは、封口角部11fの表面及び開口角部21fの表面に堆積する。
【0034】
なお、ケース20の開口角部21f~21iは、開口長辺部21b,21c及び開口短辺部21d,21eに比べて弾性変形し難い。このため、
図12に示すような位置関係、すなわち、ケース20の開口角部21fに対して封口板10の封口角部11fの一部が厚み方向DTに重なる位置関係で、ケース20の開口20bへの封口板10の挿入が開始される場合は、開口角部21fが封口角部11fに倣って外側(
図12において左側)へ弾性変形しない。このため、ケース20の開口角部21fによって封口板10の封口角部11fの重なり部11f1が削られつつ、ケース20の開口20bに封口板10が挿入されてゆくことになる。
【0035】
ところで、封口角部11fの削れによって発生した金属粉MPは、封口角部11fの表面及び開口角部21fの表面に堆積する(
図13参照)。このため、閉塞工程の後、溶接工程において、封口板10の外周縁部11とケース20の開口壁部21とを全周にわたってレーザ溶接したとき、この金属粉MPに起因して、スパッタやボイドが発生することがある。
【0036】
これに対し、本実施形態では、閉塞工程で用いる封口板10について、外周端面14のうち、封口角部11f~11iに含まれる角部端面14f~14iの厚み方向DTの長さLKを、封口長辺部11b,11cに含まれる長辺端面14b,14cの厚み方向DTの長さLLよりも短くしている。すなわち、LK<LLの関係を満たしている(
図4及び
図6参照)。
【0037】
より具体的には、閉塞工程で用いる封口板10は、厚み方向DTの一方側を向く表面10bと他方側を向く裏面10cとを有し、外周縁部11の裏面10c側が全周にわたってC面取りされることで、外周縁部11の裏面10c側に面取り部15が形成されている。面取り部15のうち、封口長辺部11b,11cに含まれる部位を長辺面取り部15b,15cとし、封口短辺部11d,11eに含まれる部位を短辺面取り部15d,15eとし、封口角部11f~11iに含まれる部位を角部面取り部15f~15iとする(
図4~
図6参照)。
【0038】
詳細には、封口角部11f~11iが封口長辺部11b,11cよりも大きく面取りされていることで、長さLKが長さLLよりも短くされている。具体的には、例えば、封口板10の厚みT=1.4mmである場合に、封口長辺部11b,11cの面取り寸法(すなわち、長辺面取り部15b,15cの寸法)MLを、「C0.3」とする。一方、封口角部11f~11iの面取り寸法(すなわち、角部面取り部15f~15iの寸法)MKを、「C0.7」とする。これにより、長さLL=1.1mmとなるのに対し、長さLK=0.7mmとなり、LK<LLの関係を満たすことができる。
【0039】
なお、特開2012-79476の実施例(これを従来例とする)でも、封口板の外周縁部の裏面側が、全周にわたって面取りされている。具体的には、封口板の外周縁部の裏面側の全周にわたって、一定の面取り寸法で面取りされている。詳細には、封口板の厚みT=1.4mmである場合に、封口長辺部、封口短辺部、及び封口角部の面取り寸法は、いずれも、C0.3とされている。従って、従来例では、LK=LL=1.1mmとされている。
【0040】
従って、本実施形態では、閉塞工程において、封口板10を裏面10c側から(すなわち、C面取りされている側から)ケース20の開口20bに挿入したときに、封口板10の封口角部11f~11iにおいて「削れ」が発生した場合でも、前述の従来例に比べて、封口角部11f~11iの削れ量を低減することができる。ここで、封口角部11f~11iの削れ量とは、封口角部11f~11iのうち削られた部位の体積のことである。
【0041】
これにより、
図11~
図13に示す例では、前述の従来例に比べて、封口角部11fの削れによって発生する金属粉MPの量が少なくなるので、封口板10の外周縁部11の表面及びケース20の開口壁部21の表面に堆積する金属粉MPの量を低減できる。これにより、閉塞工程の後、溶接工程において、封口板10の外周縁部11とケース20の開口壁部21とを全周にわたってレーザ溶接したとき、金属粉MPに起因するスパッタの発生やボイドの発生を低減することができる。
【0042】
ところで、ケース20の開口長辺部21b,21cは、開口角部21f~21iに比べて弾性変形し易い。このため、ケース20の開口長辺部21b,21cに、封口板10の封口長辺部11b,11cの一部が厚み方向DTに重なる位置関係で、封口板10がケース20の開口20bへの封口板10の挿入が開始される場合でも、封口長辺部11b,11cが開口長辺部21b,21cに接触したときに、開口長辺部21b,21cが封口長辺部11b,11cに倣って外側へ弾性変形することで、開口長辺部21b,21cに対して封口長辺部11b,11cが厚み方向DTに重ならないようにして、封口板10がケース20の開口20bに挿入されてゆく。これにより、封口長辺部11b,11cの削れが抑制される。
【0043】
また、ケース20の開口短辺部21d,21eも、開口角部21f~21iに比べて弾性変形し易い。このため、封口板10の封口短辺部11d,11eは、封口角部11f~11iに比べて「削れ」が生じ難い。なお、本実施形態において「削れ」とは、閉塞工程において、ケース20の開口壁部21の少なくとも一部に、封口板10の外周縁部11の少なくともの一部が厚み方向DTに重なるようにして、封口板10がケース20の開口20bに挿入されることで、封口板10の外周縁部11のうち開口壁部21に対して厚み方向DTに重なる部分が削られることをいう。この「削れ」によって金属粉MPが発生し、この金属粉MPは、外周縁部11の表面及び開口壁部21の表面に堆積する。
【0044】
しかしながら、ケース20の開口短辺部21d,21eは、開口長辺部21b,21cに比べて弾性変形し難い。このため、封口板10の封口短辺部11d,11eは、封口長辺部11b,11cに比べて「削れ」が生じ易いといえる。
【0045】
これに対し、本実施形態では、閉塞工程で用いる封口板10について、外周端面14のうち、封口短辺部11d,11eに含まれる短辺端面14d,14eの厚み方向DTの長さLSと、封口長辺部11b,11cに含まれる長辺端面14b,14cの厚み方向DTの長さLLとが、LS<LLの関係を満たしている(
図5及び
図6参照)。具体的には、例えば、封口板10の厚みT=1.4mmである場合に、封口長辺部11b,11cの面取り寸法(すなわち、長辺面取り部15b,15cの寸法)MLを「C0.3」とする。一方、封口短辺部11d,11eの面取り寸法(すなわち、短辺面取り部15d,15eの寸法)MSを「C0.5」とする。これにより、長さLL=1.1mmとなるのに対し、長さLS=0.9mmとなり、LS<LLの関係を満たすことができる。
【0046】
このようにすることで、閉塞工程において、封口板10をケース20の開口20bに挿入したときに、封口短辺部11d,11eにおいて「削れ」が発生した場合でも、前述の従来例に比べて、封口短辺部11d,11eの削れ量を低減することができる。なお、封口短辺部11d,11eの削れ量とは、封口短辺部11d,11eのうち削られる部位の体積のことである。
【0047】
次に、溶接工程において、封口板10によってケース20の開口20bが閉塞された状態で、封口板10の外周縁部11とケース20の開口壁部21とを全周にわたってレーザ溶接する。具体的には、
図14に示すように、封口板10の外周縁部11及びケース20の開口壁部21に対し、封口板10の表面10b側から(すなわち、
図14において上方から)レーザビームLBを照射して、封口板10の外周縁部11とケース20の開口壁部21とを溶接する。これにより、ケース20と封口板10とが接合されて一体になる。
【0048】
前述したように、本実施形態の閉塞工程では、封口板10の外周縁部11の表面及びケース20の開口壁部21の表面に堆積する金属粉MPの量が低減されている。このため、閉塞工程の後、溶接工程において、封口板10の外周縁部11とケース20の開口壁部21とを全周にわたってレーザ溶接したとき、金属粉MPに起因するスパッタの発生やボイドの発生を低減することができる。
【0049】
その後、封口板10に形成されている注液孔(図示なし)を通じてケース20の内部に電解液(図示なし)を注入する。その後、注液孔を封止することで、蓄電デバイス1が完成する。
【0050】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0051】
例えば、実施形態では、閉塞工程で用いる封口板10の具体例として、封口板10の厚みT=1.4mmである場合に、長さLL=1.1mm、長さLK=0.7mmとして、LK<LLの関係を満たす例を示した。しかしながら、本発明は、このような具体例に限定されるものではなく、LK<LLの関係を満たしていれば、LK及びLLの長さはいずれの長さであっても良い。また、封口板の厚みTも、1.4mmに限定されることなく、いずれの厚み寸法であっても良い。
【0052】
さらに、実施形態では、閉塞工程で用いる封口板10の具体例として、封口板10の厚みT=1.4mmである場合に、長さLL=1.1mm、長さLS=0.9mmとして、LS<LLの関係を満たす例を示した。しかしながら、本発明は、このような具体例に限定されるものではなく、LS及びLLの長さはいずれの長さであっても良い。本発明は、LS<LLの関係を満たす場合のほか、LS=LLの関係を満たす場合や、LS>LLの関係を満たす場合も含む。しかしながら、LS≦LLの関係を満たすのが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 蓄電デバイス
10 封口板
11 外周縁部
11b,11c 封口長辺部
11d,11e 封口短辺部
11f~11i 封口角部
13 外周面
14 外周端面
14b,14c 長辺端面
14d,14e 短辺端面
14f,14g,14h,14i 角部端面
15 面取り部
20 ケース
20b 開口
21 開口壁部
21b,21c 開口長辺部
21d,21e 開口短辺部
21f~21i 開口角部
50 電極体
60 正極集電部材
70 負極集電部材