(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036046
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240308BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20240308BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/32
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140755
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 仁
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AB01
2H149BA02
2H149DA02
2H149EA02
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA63
2H199CA65
2H199CA68
2H199CA84
2H199CA97
2H249CA04
2H249CA05
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】表示品位の低下を抑制する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置は、直線偏光の表示光を出射するように構成された表示パネルと、前記表示パネルに対向する第1ホログラフィック光学素子と、前記第1ホログラフィック光学素子に対向する第2ホログラフィック光学素子と、前記第2ホログラフィック光学素子に対向し、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を吸収する偏光板と、前記偏光板に対向し、前記第2ホログラフィック光学素子を透過した光のうち、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するレンズ素子と、前記第1ホログラフィック光学素子と前記第2ホログラフィック光学素子との間に位置する第1位相差板と、前記偏光板と前記レンズ素子との間に位置する第2位相差板と、前記第2ホログラフィック光学素子と前記偏光板との間に位置する第3位相差板と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示パネルと、
前記表示パネルに対向する第1ホログラフィック光学素子と、
前記第1ホログラフィック光学素子に対向する第2ホログラフィック光学素子と、
前記第2ホログラフィック光学素子に対向し、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を吸収する偏光板と、
前記偏光板に対向し、前記第2ホログラフィック光学素子を透過した光のうち、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するレンズ素子と、
前記第1ホログラフィック光学素子と前記第2ホログラフィック光学素子との間に位置する第1位相差板と、
前記偏光板と前記レンズ素子との間に位置する第2位相差板と、
前記第2ホログラフィック光学素子と前記偏光板との間に位置する第3位相差板と、
を備える、表示装置。
【請求項2】
前記第1ホログラフィック光学素子及び前記第1位相差板は、積層され、
前記第1位相差板と前記第2ホログラフィック光学素子との間に空気層が介在している、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2ホログラフィック光学素子、前記第3位相差板、前記偏光板、前記第2位相差板、及び、前記レンズ素子は、積層されている、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1位相差板、前記第2ホログラフィック光学素子、前記第3位相差板、前記偏光板、前記第2位相差板、及び、前記レンズ素子は、積層され、
前記第1ホログラフィック光学素子と前記第1位相差板との間に空気層が介在している、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示パネルと、
前記表示パネルに対向する第1ホログラフィック光学素子と、
前記第1ホログラフィック光学素子に対向する第2ホログラフィック光学素子と、
前記第2ホログラフィック光学素子に対向し、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を吸収する偏光板と、
前記偏光板に対向し、前記第2ホログラフィック光学素子を透過した光のうち、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するレンズ素子と、
前記第1ホログラフィック光学素子と前記第2ホログラフィック光学素子との間に位置する第1位相差板と、
前記偏光板と前記レンズ素子との間に位置する第2位相差板と、
前記表示パネルと前記第1ホログラフィック光学素子との間に位置する第3位相差板と、
を備える、表示装置。
【請求項6】
前記第3位相差板、前記第1ホログラフィック光学素子、及び、前記第1位相差板は、積層され、
前記第1位相差板と前記第2ホログラフィック光学素子との間に空気層が介在している、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2ホログラフィック光学素子、前記偏光板、前記第2位相差板、及び、前記レンズ素子は、積層されている、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第3位相差板及び前記第1ホログラフィック光学素子は、積層され、
前記第1位相差板と前記第1ホログラフィック光学素子との間に空気層が介在している、請求項5に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1位相差板、前記第2ホログラフィック光学素子、前記偏光板、前記第2位相差板、及び、前記レンズ素子は、積層されている、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1位相差板、前記第2位相差板、及び、前記第3位相差板は、1/4波長板である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1ホログラフィック光学素子は、第1特定入射角の光を反射し、前記第1特定入射角とは異なる入射角の光を透過し、
前記第2ホログラフィック光学素子は、前記第1特定入射角とは異なる第2特定入射角の光を反射し、前記第2特定入射角とは異なる入射角の光を透過する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示光の前記第1ホログラフィック光学素子への入射角をβとし、前記第1特定入射角をθ1とし、前記第2特定入射角をθ2としたとき、
β=2・(θ2-θ1)
の関係が成り立つ、請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
さらに、前記表示パネルの背面に配置された照明装置を備え、
前記照明装置は、第1波長の光を出射するように構成された第1発光素子と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を出射するように構成された第2発光素子と、前記第1波長及び前記第2波長とは異なる第3波長の光を出射するように構成された第3発光素子と、を備え、前記入射角βの光を形成するように構成されている、請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び、前記第3発光素子は、それぞれレーザー素子である、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記レンズ素子は、第1液晶層と、前記第1液晶層に重畳する第2液晶層と、前記第2液晶層に重畳する第3液晶層と、を備え、
前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々は、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化しており、
前記第1液晶層は、前記第1波長の前記第1円偏光を集光し、
前記第2液晶層は、前記第2波長の前記第1円偏光を集光し、
前記第3液晶層は、前記第3波長の前記第1円偏光を集光する、請求項13に記載の表示装置。
【請求項16】
前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々は、平面視において、複数の第1液晶分子が同一方向に配向した第1環状領域と、前記第1環状領域の外側で複数の第2液晶分子が同一方向に配向した第2環状領域と、を有し、
前記第1液晶分子の配向方向は、前記第2液晶分子の配向方向とは異なる、請求項15に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイを用いて、例えば仮想現実(VR:VirtualReality)を提供する技術が注目されている。ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの眼前に設けられたディスプレイに画像が表示されるように構成されている。これにより、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザは、臨場感のある仮想現実空間を体験することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003-504663号公報
【特許文献2】特表2003-529795号公報
【特許文献3】特開2018-106160号公報
【特許文献4】特開2019-53152号公報
【特許文献5】特開2019-148626号公報
【特許文献6】特開2019-148627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、表示品位の低下を抑制することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置は、
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示パネルと、前記表示パネルに対向する第1ホログラフィック光学素子と、前記第1ホログラフィック光学素子に対向する第2ホログラフィック光学素子と、前記第2ホログラフィック光学素子に対向し、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を吸収する偏光板と、前記偏光板に対向し、前記第2ホログラフィック光学素子を透過した光のうち、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するレンズ素子と、前記第1ホログラフィック光学素子と前記第2ホログラフィック光学素子との間に位置する第1位相差板と、前記偏光板と前記レンズ素子との間に位置する第2位相差板と、前記第2ホログラフィック光学素子と前記偏光板との間に位置する第3位相差板と、を備える。
【0006】
他の実施形態によれば、表示装置は、
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示パネルと、前記表示パネルに対向する第1ホログラフィック光学素子と、前記第1ホログラフィック光学素子に対向する第2ホログラフィック光学素子と、前記第2ホログラフィック光学素子に対向し、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を吸収する偏光板と、前記偏光板に対向し、前記第2ホログラフィック光学素子を透過した光のうち、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するレンズ素子と、前記第1ホログラフィック光学素子と前記第2ホログラフィック光学素子との間に位置する第1位相差板と、前記偏光板と前記レンズ素子との間に位置する第2位相差板と、前記表示パネルと前記第1ホログラフィック光学素子との間に位置する第3位相差板と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る表示装置を適用したヘッドマウントディスプレイ1の外観の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したヘッドマウントディスプレイ1の構成の概要を説明するための図である。
【
図3】
図3は、表示装置DSPの構成例1を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したレンズ素子LEの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した液晶層LC1における配向パターンの一例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示した表示装置DSPの光学作用の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した第1ホログラフィック光学素子HE1の第1特定入射角θ1及び第2ホログラフィック光学素子HE2の第2特定入射角θ2を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図3に示した表示装置DSPに適用可能な照明装置3の一構成例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、ヘッドマウントディスプレイ1の一構成例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、表示装置DSPの構成例2を示す断面図である。
【
図11】
図11は、表示装置DSPの構成例3を示す断面図である。
【
図12】
図12は、表示装置DSPの構成例4を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X-Y平面を見ることを平面視という。
【0010】
図1は、本実施形態に係る表示装置を適用したヘッドマウントディスプレイ1の外観の一例を示す斜視図である。
ヘッドマウントディスプレイ1は、例えば、右眼用の表示装置DSPRと、左眼用の表示装置DSPLと、を備えている。ユーザがヘッドマウントディスプレイ1を頭部に装着した状態では、表示装置DSPRは当該ユーザの右眼の眼前に位置するように配置され、また、表示装置DSPLは当該ユーザの左眼の眼前に位置するように配置される。
【0011】
図2は、
図1に示したヘッドマウントディスプレイ1の構成の概要を説明するための図である。
【0012】
表示装置DSPRは、表示パネル2Rと、照明装置3Rと、点線で示した光学システム4Rと、を備えている。照明装置3Rは、表示パネル2Rの背面に配置され、表示パネル2Rを照明するように構成されている。光学システム4Rは、表示パネル2Rの前面(あるいはユーザの右眼ERと表示パネル2Rとの間)に配置され、表示パネル2Rからの表示光を右眼ERに導くように構成されている。
【0013】
表示パネル2Rは、例えば、液晶パネル及び偏光板を含んでいる。表示パネル2Rは、照明装置3Rと光学システム4Rとの間に配置されている。表示パネル2Rには、例えば、ドライバICチップ5R及びフレキシブルプリント回路基板6Rが接続されている。ドライバICチップ5Rは、表示パネル2Rの駆動を制御する(特に、表示パネル2Rの表示動作を制御する)。
【0014】
表示装置DSPLは、表示パネル2Lと、照明装置3Lと、点線で示した光学システム4Lと、を備えている。照明装置3Lは、表示パネル2Lの背面に配置され、表示パネル2Lを照明するように構成されている。光学システム4Lは、表示パネル2Lの前面(あるいはユーザの左眼ELと表示パネル2Lとの間)に配置され、表示パネル2Lからの表示光を左眼ELに導くように構成されている。
【0015】
表示パネル2Lは、例えば、液晶パネル及び偏光板を含んでいる。表示パネル2Lは、照明装置3Lと光学システム4Lとの間に配置されている。表示パネル2Lには、例えば、ドライバICチップ5L及びフレキシブルプリント回路基板6Lが接続されている。ドライバICチップ5Lは、表示パネル2Lの駆動を制御する(特に、表示パネル2Lの表示動作を制御する)。
【0016】
表示装置DSPLは、表示装置DSPRと実質的に同様に構成されている。
つまり、表示装置DSPRを構成する表示パネル2R、照明装置3R、及び、光学システム4Rは、それぞれ表示装置DSPLを構成する表示パネル2L、照明装置3L、及び、光学システム4Lと同様に構成されている。
【0017】
本実施形態に係る表示装置DSPにおいては、表示パネル2R及び2Lは、液晶パネルを含む例に限らず、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、マイクロLED、ミニLEDなどの自発光型の発光素子を備えた表示パネルを含んでいてもよい。表示パネル2R及び2Lが発光素子を備えた表示パネルである場合、照明装置3R及び3Lは省略される。詳細については後述するが、表示パネル2R及び2Lは、直線偏光の表示光を出射するように構成されており、必要に応じて偏光板を含んでいる。
【0018】
外部に設けられたホストコンピュータHは、表示パネル2L及び2Rとそれぞれ接続されている。ホストコンピュータHは、表示パネル2L及び2Rに表示される画像に対応した画像データを出力する。表示パネル2Lに表示される画像は、左眼用の画像(あるいはユーザの左眼ELで視認される画像)である。また、表示パネル2Rに表示される画像は、右眼用の画像(あるいはユーザの右眼ERで視認される画像)である。
【0019】
例えば、ヘッドマウントディスプレイ1がVR用として利用される場合、左眼用の画像及び右眼用の画像は、両目の視差を再現した互いに類似する画像である。表示パネル2Lに表示された左眼用の画像がユーザの左眼ELで視認され、また、表示パネル2Rに表示された右眼用の画像がユーザの右眼ERで視認された場合には、ユーザは仮想現実空間として立体的な空間(3次元空間)を把握することができる。
【0020】
なお、表示パネル2R及び2Lは、左眼ELの眼前及び右眼ERの眼前に亘って延びた単一の表示パネルとして構成されていてもよい。また、照明装置3R及び3Lは、左眼ELの眼前及び右眼ERの眼前に亘って延びた単一の照明装置として構成されてもよい。
【0021】
次に、本実施形態に係る表示装置DSPのいくつかの構成例について説明する。
【0022】
《構成例1》
図3は、表示装置DSPの構成例1を示す断面図である。
表示装置DSPは、表示パネル2と、照明装置3と、光学システム4と、を備えている。なお、ここでは、表示パネル2及び照明装置3の詳細な図示を省略する。ここで説明する表示装置DSPは、上記の表示装置DSPR及びDSPLの各々に適用することができる。また、表示パネル2は、上記の表示パネル2R及び2Lの各々に適用することができる。また、照明装置3は、上記の照明装置3R及び3Lの各々に適用することができる。また、光学システム4は、上記の光学システム4R及び4Lの各々に適用することができる。
【0023】
表示パネル2は、X-Y平面に亘って延在した平板状に形成されている。表示パネル2は、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、第1偏光板PL1と、第2偏光板PL2と、を備えている。第1基板SUB1及び第2基板SUB2は、第3方向Zにおいて対向している。液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持され、シールSEによって封止されている。第1偏光板PL1は、照明装置3と第1基板SUB1との間に配置され、例えば第1基板SUB1に接着されている。第2偏光板PL2は、第2基板SUB2と光学システム4との間に配置され、例えば第2基板SUB2に接着されている。
【0024】
表示パネル2は、直線偏光の表示光DLを出射するように構成された表示領域DAを有している。表示領域DAは、照明装置3からの照明光を選択的に変調するように構成されている。照明光の一部は、第2偏光板PL2を透過し、直線偏光の表示光DLに変換される。
【0025】
ここで説明する構成例1に限らず、他の構成例においても同様に、表示パネル2は、液晶パネルを含む例に限らない。表示パネル2が有機EL素子などの自発光型の発光素子を備えた表示パネルを含む場合、上記の通り照明装置3は省略される。また、この場合、発光素子から出射された表示光DLは、第2偏光板PL2を透過して直線偏光の表示光DLに変換される。
【0026】
光学システム4は、第1構造体4A及び第2構造体4Bを備えている。第1構造体4Aは、第2構造体4Bから離間している。
図3に示す例では、第1構造体4Aと第2構造体4Bとの間には、空気層4Cが設けられている。第1構造体4Aは、表示パネル2と第2構造体4Bとの間(あるいは表示パネル2と空気層4Cとの間)に配置されている。
【0027】
第1構造体4Aは、第1ホログラフィック光学素子HE1と、第1位相差板R1と、を備えている。第1ホログラフィック光学素子HE1は、第3方向Zにおいて表示パネル2に対向している。
【0028】
第1ホログラフィック光学素子HE1及び第1位相差板R1は、X-Y平面において、表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。第1ホログラフィック光学素子HE1及び第1位相差板R1は、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。第1ホログラフィック光学素子HE1は、表示パネル2の第2偏光板PL2に接着されている。
【0029】
第2構造体4Bは、第2ホログラフィック光学素子HE2と、偏光板PLと、レンズ素子LEと、第2位相差板R2と、第3位相差板R3と、を備えている。第2ホログラフィック光学素子HE2は、第3方向Zにおいて第1ホログラフィック光学素子HE1に対向している。偏光板PLは、第3方向Zにおいて第2ホログラフィック光学素子HE2に対向している。レンズ素子LEは、第3方向Zにおいて偏光板PLに対向している。
【0030】
第1位相差板R1は、第3方向Zにおいて、第1ホログラフィック光学素子HE1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間に位置している。空気層4Cは、第3方向Zにおいて、第1位相差板R1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間に介在している。
第2位相差板R2は、第3方向Zにおいて、偏光板PLとレンズ素子LEとの間に位置している。第3位相差板R3は、第3方向Zにおいて、第2ホログラフィック光学素子HE2と偏光板PLとの間に位置している。
【0031】
第2ホログラフィック光学素子HE2、第3位相差板R3、偏光板PL、第2位相差板R2、及び、レンズ素子LEは、X-Y平面において、表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。第2ホログラフィック光学素子HE2、第3位相差板R3、偏光板PL、第2位相差板R2、及び、レンズ素子LEは、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。
【0032】
第1位相差板R1、第2位相差板R2、及び、第3位相差板R3は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するように構成されている。
【0033】
偏光板PLは、第1直線偏光を透過し、第1直線偏光と直交する第2直線偏光を吸収するように構成されている。
【0034】
第1ホログラフィック光学素子HE1及び第2ホログラフィック光学素子HE2は、干渉縞のパターンを有し、また、厚さ方向(第3方向Z)に波長に応じた周期の屈折率分を有している。このような第1ホログラフィック光学素子HE1及び第2ホログラフィック光学素子HE2は、入射光のうちの一部の光を反射・回折するように構成されている。より具体的には、第1ホログラフィック光学素子HE1は仮想的な反射面RS1を有し、また、第2ホログラフィック光学素子HE2は仮想的な反射面RS2を有している。これらの反射面RS1及び反射面RS2は、互いに非平行である。
【0035】
第1ホログラフィック光学素子HE1は、反射面RS1の法線に対して第1特定入射角で入射した光を反射し、第1特定入射角とは異なる入射角で入射した光を透過するように構成されている。第1ホログラフィック光学素子HE1を透過する光は、第1特定入射角に対して±10°以上の入射角で入射した光である。
【0036】
第2ホログラフィック光学素子HE2は、反射面RS2の法線に対して第2特定入射角で入射した光を反射し、第2特定入射角とは異なる入射角で入射した光を透過するように構成されている。第2特定入射角は、第1特定入射角とは異なる角度である。第2ホログラフィック光学素子HE2を透過する光は、第2特定入射角に対して±10°以上の入射角で入射した光である。
【0037】
レンズ素子LEは、後に詳述するが、液晶層LC1を備えている。液晶層LC1は、特定波長の光に対して1/2波長の位相差を付与するとともに、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するように構成されている。なお、円偏光を集光するレンズ作用を有する素子は、液晶を利用した素子に限定されるものではない。
【0038】
表示領域DAは、第1方向Xにおいて、第1端部E1と、第1端部E1とは反対側の第2端部E2と、を有している。第1ホログラフィック光学素子HE1、第1位相差板R1、第2ホログラフィック光学素子HE2、第3位相差板R3、偏光板PL、第2位相差板R2、及び、レンズ素子LEは、第1端部E1よりも外側に延在した第1部分P11と、第2端部E2よりも外側に延在した第2部分P12と、を有している。
図3に示す例では、第1部分P11及び第2部分P12は、第1方向Xに沿って延在している。第1部分P11の第1方向Xに沿った幅W1は、第2部分P12の第1方向Xに沿った幅W2より大きい(W1>W2)。
【0039】
図3において、第1部分P11は表示領域DAに対して右側に位置し、第2部分P12は表示領域DAに対して左側に位置している。表示光DLは、
図3において、左上から右下に向かった出射される。
【0040】
図4は、
図3に示したレンズ素子LEの一例を示す断面図である。
レンズ素子LEは、基板11と、配向膜AL11と、液晶層LC1と、配向膜AL12と、基板12と、を備えている。基板11及び12は、光を透過する透明基板であり、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。
【0041】
配向膜AL11は、基板11の内面11Aに配置されている。
図4に示す例では、配向膜AL11は、基板11に接しているが、配向膜AL11と基板11との間に他の薄膜が介在していてもよい。
配向膜AL12は、基板12の内面12Aに配置されている。
図4に示す例では、配向膜AL12は、基板12に接しているが、配向膜AL12と基板12との間に他の薄膜が介在していてもよい。配向膜AL12は、第3方向Zにおいて、配向膜AL11と対向している。
配向膜AL11及びAL12は、例えば、ポリイミドによって形成され、いずれもX-Y平面に沿った配向規制力を有する水平配向膜である。
【0042】
液晶層LC1は、配向膜AL11及びAL12の間に配置され、配向膜AL11及びAL12に接している。液晶層LC1は、第3方向Zに沿った厚さd1を有している。液晶層LC1は、第3方向Zに沿った配向方向が揃ったネマティック液晶を有している。
【0043】
すなわち、液晶層LC1は、複数の液晶構造体LMS1を有している。1つの液晶構造体LMS1に着目すると、液晶構造体LMS1は、その一端側に位置する液晶分子LM11と、その他端側に位置する液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は配向膜AL11に近接し、液晶分子LM12は配向膜AL12に近接している。液晶分子LM11の配向方向、及び、液晶分子LM12の配向方向は、ほぼ一致している。また、液晶分子LM11と液晶分子LM12との間の他の液晶分子LM1の配向方向も、液晶分子LM11の配向方向とほぼ一致している。なお、ここでの液晶分子LM1の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子の長軸の方向に相当する。
【0044】
また、液晶層LC1において、第1方向Xに沿って隣接する複数の液晶構造体LMS1は、互いに配向方向が異なっている。同様に、第2方向Yに沿って隣接する複数の液晶構造体LMS1についても、互いに配向方向が異なっている。配向膜AL11に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向、及び、配向膜AL12に沿って並んだ複数の液晶分子LM12の配向方向は、連続的(あるいは線形)に変化している。
【0045】
このような液晶層LC1は、液晶分子LM11及び液晶分子LM12を含む液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、レンズ素子LEは、配向制御のための電極を備えていない。
【0046】
液晶層LC1の屈折率異方性あるいは複屈折性(液晶層LC1の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)をΔnとしたとき、液晶層LC1のリタデーション(位相差)Δn・d1は、特定波長λの1/2に設定されている。
【0047】
図5は、
図4に示した液晶層LC1における配向パターンの一例を示す平面図である。
図5には、液晶層LC1のX-Y平面における空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、液晶構造体LMS1に含まれる液晶分子LM1のうち、配向膜AL11に近接する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0048】
図中の点線で示した同心円では、空間位相が揃っている。あるいは、隣接する2つの同心円で囲まれた環状領域では、液晶分子LM11の配向方向が揃っている。但し、隣接する環状領域の液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。
【0049】
例えば、液晶層LC1は、平面視において、第1環状領域C1と、第2環状領域C2と、を有している。第2環状領域C2は、第1環状領域C1の外側に位置している。第1環状領域C1は、同一方向に配向した複数の第1液晶分子LM111によって構成されている。また、第2環状領域C2は、同一方向に配向した複数の第2液晶分子LM112によって構成されている。第1液晶分子LM111の配向方向は、第2液晶分子LM112の配向方向とは異なっている。
【0050】
同様に、同心円の中心の領域から、径方向に沿って並んだ液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なり、連続的に変化している。つまり、図示したX-Y平面内において、液晶層LC1の空間位相は、径方向に沿って異なり、連続的に変化している。
【0051】
このような構成のレンズ素子LEに特定波長λの第1円偏光が入射した場合、第1円偏光は、同心円の中心に向かって集光され、しかも、レンズ素子LEの透過光は、第1円偏光とは逆回りの第2円偏光に変換される。
【0052】
図6は、
図3に示した表示装置DSPの光学作用の一例を説明するための図である。なお、照明装置の図示を省略し、表示パネル2は簡略化して示している。
【0053】
まず、表示パネル2は、第1直線偏光LP1である表示光DLを出射する。ここでの第1直線偏光LP1とは、例えば紙面に垂直な方向に振動する直線偏光である。表示光DLは、表示パネル2の法線NPに対して斜め方向に出射される。表示光DLは、第1ホログラフィック光学素子HE1に入射する。第1ホログラフィック光学素子HE1に入射する第1直線偏光LP1の入射角θAは、第1ホログラフィック光学素子HE1における第1特定入射角θ1とは異なる。ここでの入射角は、仮想の反射面RS1の法線N1と入射光とのなす角度である。このため、入射角θAの第1直線偏光LP1は、第1ホログラフィック光学素子HE1を透過する。
【0054】
第1ホログラフィック光学素子HE1を透過した第1直線偏光LP1は、第1位相差板R1を透過する際に、1/4波長の位相差が付与される。このため、第1直線偏光LP1は、第1位相差板R1を透過する際に、第1円偏光CP1に変換される。ここでの第1円偏光CP1とは、例えば左回りの円偏光である。
【0055】
第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1は、第2ホログラフィック光学素子HE2に入射する。第2ホログラフィック光学素子HE2に入射する第1円偏光CP1の入射角θCは、第2ホログラフィック光学素子HE2における第2特定入射角θ2とほぼ等しい。ここでの入射角は、仮想の反射面RS2の法線N2と入射光とのなす角度である。入射角θCの第1円偏光CP1は、第2ホログラフィック光学素子HE2の反射面RS2で第1ホログラフィック光学素子HE1に向けて反射される。反射面RS2での反射光は、第1円偏光CP1とは逆回りの第2円偏光CP2である。
【0056】
第2ホログラフィック光学素子HE2で反射された第2円偏光CP2は、再び、第1位相差板R1を透過した際に、第2直線偏光LP2に変換される。ここでの第2直線偏光LP2とは、例えば紙面に平行な方向に振動する直線偏光である。第1位相差板R1を透過した第2直線偏光LP2は、第1ホログラフィック光学素子HE1に入射する。第1ホログラフィック光学素子HE1に入射する第2直線偏光LP2の入射角θBは、第1ホログラフィック光学素子HE1における第1特定入射角θ1とほぼ等しい。このため、入射角θBの第2直線偏光LP2は、第1ホログラフィック光学素子HE1の反射面RS1で第2ホログラフィック光学素子HE2に向けて反射される。
【0057】
第1ホログラフィック光学素子HE1で反射された第2直線偏光LP2は、再び、第1位相差板R1を透過した際に、第2円偏光CP2に変換される。第1位相差板R1を透過した第2円偏光CP2は、第2ホログラフィック光学素子HE2に入射する。第2ホログラフィック光学素子HE2に入射する第2円偏光CP2の入射角θDは、第2ホログラフィック光学素子HE2における第2特定入射角θ2とは異なる。このため、入射角θDの第2円偏光CP2は、第2ホログラフィック光学素子HE2を透過する。
【0058】
第2ホログラフィック光学素子HE2を透過した第2円偏光CP2は、第3位相差板R3を透過した際に、第1直線偏光LP1に変換される。第3位相差板R3を透過した第1直線偏光LP1は、偏光板PLを透過する。偏光板PLを透過した第1直線偏光LP1は、第2位相差板R2を透過した際に、第1円偏光CP1に変換される。第2位相差板R2を透過した第1円偏光CP1は、レンズ素子LEにおいて、第2円偏光CP2に変換されるとともにレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0059】
このような表示装置DSPによれば、光学システム4は、第1ホログラフィック光学素子HE1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間を3回通る光路を有している。しかも、この光路は、第1ホログラフィック光学素子HE1から第2ホログラフィック光学素子HE2に至る斜めの光路と、第2ホログラフィック光学素子HE2から第1ホログラフィック光学素子HE1に至る斜めの光路と、を含んでいる。つまり、光学システム4において、第1ホログラフィック光学素子HE1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間の光学的な距離は、実際の第1ホログラフィック光学素子HE1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間隔(あるいは空気層4Cの厚さ)の3倍以上となる。表示パネル2は、レンズ作用を有するレンズ素子LEの焦点よりも内側に設置されている。これにより、ユーザは、拡大された虚像を観察することができる。
【0060】
第1ホログラフィック光学素子HE1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間を3回通る光路を実現するためには、表示光DLが第1ホログラフィック光学素子HE1を透過し且つ第2ホログラフィック光学素子HE2で反射されるような角度で表示パネル2から出射されることが重要である。
【0061】
表示光DLの一部が第1ホログラフィック光学素子HE1及び第2ホログラフィック光学素子HE2を透過するような角度で表示パネル2から出射された場合、正規の光路を通った光とは異なる倍率でユーザに観察され、多重画像(いわゆるゴースト)の原因となりうる。
【0062】
これに対して、構成例1によれば、第1ホログラフィック光学素子HE1及び第2ホログラフィック光学素子HE2を透過した光は、偏光板PLで吸収される。すなわち、第1ホログラフィック光学素子HE1を透過した第1直線偏光LP1は、第1位相差板R1を透過した際に、第1円偏光CP1に変換される。この第1円偏光CP1は、第2ホログラフィック光学素子HE2を透過し、第3位相差板R3を透過した際に、第2直線偏光に変換され、偏光板PLで吸収される。なお、正規の光路を通った光は、第3位相差板R3を透過した際に第1直線偏光LP1に変換され、偏光板PLを透過する。これにより、不所望な光がユーザに観察されず、表示品位の低下を抑制することができる。
【0063】
また、表示装置DSPを構成する各部材での吸収や各部材間での反射を無視すると、表示パネル2から出射された表示光DLのほぼ100%を瞳Eに集光することができ、光の利用効率を向上することができる。
【0064】
また、ガラスや樹脂などで形成された光学部品を備える光学システムと比較して、第3方向Zに沿った厚さを薄くすることができ、しかも、軽量化を実現することができる。
【0065】
なお、
図6を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0066】
図7は、
図6に示した第1ホログラフィック光学素子HE1の第1特定入射角θ1及び第2ホログラフィック光学素子HE2の第2特定入射角θ2を説明するための図である。
【0067】
第1ホログラフィック光学素子HE1において、反射面RS1の法線N1と基準面(X-Y平面)とのなす角度をγ1とし、入射角βの入射光と法線N1とのなす角度をα1とする。
第2ホログラフィック光学素子HE2において、反射面RS2の法線N2と基準面(X-Y平面)とのなす角度をγ2とし、反射面RS2での反射光と基準面とのなす角度をφ2とし、反射面RS1での反射光と法線N2とのなす角度をα2とする。
【0068】
図中のcで示したように、第1特定入射角θ1の光が反射面RS1で反射される条件に基づき、以下の式が導出される。
γ1=π/2-θ1
図中のbで示したように、第2特定入射角θ2の光が反射面RS2で反射される条件に基づき、以下の式が導出される。
γ2=θ2-2・θ1+π/2
図中のaで示したように、第1ホログラフィック光学素子HE1を透過する条件は、以下の通りである。
δ1=α1-θ1≠0
なお、以下の関係が成り立つ。
α1=2・θ2+φ2-γ1、φ2=π/2-2・θ1
これらの関係に基づくと、δ1については、以下の式が導出される。
δ1=2・(θ1-θ2)≠0
したがって、θ1≠θ2である。
【0069】
図中のdで示したように、第2ホログラフィック光学素子HE2を透過する条件は、以下の通りである。
δ2=α2-θ2≠0
なお、以下の関係が成り立つ。
α2=π/2-γ2
δ2については、以下の式が導出される。
δ2=2・(θ1-θ2)≠0
したがって、θ1≠θ2である。
【0070】
つまり、第1特定入射角θ1が第2特定入射角θ2とは異なることで、構成例1の光学システム4が成り立つ。また、第1特定入射角θ1と第2特定入射角θ2との差分が大きいほど、第1ホログラフィック光学素子HE1及び第2ホログラフィック光学素子HE2を透過する条件が緩和されるため、好ましい。
【0071】
このとき、入射角βは以下の通りである。
β=α1+γ1-π/2=2・(θ2-θ1)
【0072】
図8は、
図3に示した表示装置DSPに適用可能な照明装置3の一構成例を示す平面図である。なお、
図8では、照明装置3の主要部のみを示している。
照明装置3は、導光板LGと、第1光源部LS1と、第2光源部LS2と、を備えている。
【0073】
導光板LGは、側面S1と、側面S2と、を有している。側面S1及び側面S2は、第1方向Xにおいて対向している。また、導光板LGは、領域A1と、領域A2と、領域A3と、を有している。領域A2の第3方向Zに沿った厚さは、ほぼ一定である。領域A1の厚さは、側面S1から領域A2に向かって次第に増大する。領域A3の厚さは、側面S2から領域A2に向かって次第に増大する。
【0074】
第1光源部LS1は、側面S1に沿って配置されている。第2光源部LS2は、側面S2に沿って配置されている。第1光源部LS1及び第2光源部LS2の各々は、複数の発光素子LDを備えている。すなわち、第1光源部LS1及び第2光源部LS2は、発光素子LDとして、青波長(第1波長)の光を出射するように構成された第1発光素子LDBと、緑波長(第2波長)の光を出射するように構成された第2発光素子LDGと、赤波長(第3波長)の光を出射するように構成された第3発光素子LDRと、を備えている。第1発光素子LDB、第2発光素子LDG、及び、第3発光素子LDRは、間隔をおいて並んでいる。
【0075】
発光素子LDからの出射光は、スペクトル幅が狭い(あるいは、色純度が高い)ことが望ましい。このため、発光素子LDとしては、レーザー素子を適用することが望ましい。第1発光素子(第1レーザー素子)LDBから出射される青レーザー光の中心波長をλbとし、第2発光素子(第2レーザー素子)LDGから出射される緑レーザー光の中心波長をλgとし、第3発光素子(第3レーザー素子)LDRから出射される赤レーザー光の中心波長をλrとする。
【0076】
このような照明装置3は、表示パネル2を照明し、表示パネル2から出射される表示光DLの第1ホログラフィック光学素子HE1への入射角が
図7を参照して説明した入射角βの関係を満足するように構成されている。
【0077】
図9は、ヘッドマウントディスプレイ1の一構成例を示す断面図である。
ヘッドマウントディスプレイ1は、単一の表示パネル2と、
図8に示した単一の照明装置3と、光学システム4R及び4Lと、フレームFRと、を備えている。表示パネル2は、
図2に示した右眼用の表示パネル2R及び左眼用の表示パネル2Lとして機能する。照明装置3は、右眼用の照明装置3R及び左眼用の照明装置3Lとして機能する。
【0078】
照明装置3は、第1光源部LS1及び第2光源部LS2と、導光板LGと、プリズムシートPSと、拡散シートDSと、を備えている。プリズムシートPSは、第3方向Zにおいて、導光板LGと拡散シートDSとの間に配置されている。拡散シートDSは、第3方向Zにおいて、プリズムシートPSと表示パネル2との間に配置されている。
【0079】
第1光源部LS1は、図の左側に位置しながら、主に、光学システム4Rに導かれる光を出射する。第2光源部LS2は、図の右側に位置しながら、主に、光学システム4Lに導かれる光を出射する。第1光源部LS1及び第2光源部LS2の各々は、
図8を参照して説明したように、第1発光素子LDBと、第2発光素子LDGと、第3発光素子LDRと、を備えている。
【0080】
表示パネル2は、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、第1偏光板PL1と、第2偏光板PL2と、を備えている。液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持され、シールSEによって封止されている。第1偏光板PL1は、照明装置3と第1基板SUB1との間に配置されている。第2偏光板PL2は、第2基板SUB2と光学システム4R及び4Lとの間に配置されている。
【0081】
光学システム4Lは、第1ホログラフィック光学素子HE1Lと、第1位相差板R1Lと、第2ホログラフィック光学素子HE2Lと、第3位相差板R3Lと、偏光板PLLと、第2位相差板R2Lと、レンズ素子LELと、を備えている。
光学システム4Rは、第1ホログラフィック光学素子HE1Rと、第1位相差板R1Rと、第2ホログラフィック光学素子HE2Rと、第3位相差板R3Rと、偏光板PLRと、第2位相差板R2Rと、レンズ素子LERと、を備えている。
【0082】
第1ホログラフィック光学素子HE1L及びHE1Rの各々は、第1特定入射角θ1の青波長(第1波長)λbの光、第1特定入射角θ1の緑波長(第2波長)λgの光、及び、第1特定入射角θ1の赤波長(第3波長)λrの光をそれぞれ反射面RS1で反射するように構成されている。
【0083】
第2ホログラフィック光学素子HE2L及びHE2Rの各々は、第2特定入射角θ2の青波長(第1波長)λbの光、第2特定入射角θ2の緑波長(第2波長)λgの光、及び、第2特定入射角θ2の赤波長(第3波長)λrの光をそれぞれ反射面RS2で反射するように構成されている。
【0084】
レンズ素子LEL及びLERの各々は、第1液晶層LCBと、第2液晶層LCGと、第3液晶層LCRと、を備えている。第1液晶層LCB、第2液晶層LCG、及び、第3液晶層LCRは、第3方向Zに沿って積層されている。なお、第1液晶層LCB、第2液晶層LCG、及び、第3液晶層LCRの積層順に関しては、図示した例に限らない。
【0085】
第1液晶層LCB、第2液晶層LCG、及び、第3液晶層LCRの各々は、
図4及び
図5を参照して説明した液晶層LC1に相当し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化している。
【0086】
第1液晶層LCBは、入射光のうち、青波長(第1波長)λbの第1円偏光を集光するとともに1/2波長の位相差を付与するように構成されている。第2液晶層LCGは、入射光のうち、緑波長(第2波長)λgの第1円偏光を集光するとともに1/2波長の位相差を付与するように構成されている。第3液晶層LCRは、入射光のうち、赤波長(第3波長)λrの第1円偏光を集光するとともに1/2波長の位相差を付与するように構成されている。
【0087】
このような構成の光学システム4R及び4Lは、それぞれ
図6を参照して説明した光学作用を発揮する。
【0088】
上記のヘッドマウントディスプレイ1において、照明装置3の第1光源部LS1は、側面S1に向けて光を照射し、また、第2光源部LS2は、側面S2に向けて光を照射する。側面S1から入射した光、及び、側面S2から入射した光は、導光板LGの上面T1及び下面B1との間で反射を繰り返しながら伝播される。そして、側面S1から入射した光のうち、上面T1での全反射条件から外れた光は、光学システム4Rに向かうように斜め方向に出射され、右眼用の照明光を形成する。側面S2から入射した光のうち、上面T1での全反射条件から外れた光は、光学システム4Lに向かうように斜め方向に出射され、左眼用の照明光を形成する。
【0089】
表示パネル2は、照明装置3からの照明光を選択的に変調する。左眼用の照明光の一部は、第2偏光板PL2を透過し、左眼用の直線偏光である表示光DLLに変換される。右眼用の照明光の一部は、第2偏光板PL2を透過し、右眼用の直線偏光である表示光DLRに変換される。
【0090】
表示光DLLは、上記した光学システム4Lの光学作用により、ユーザの左眼に集光される。表示光DLRは、上記した光学システム4Rの光学作用により、ユーザの右眼に集光される。
【0091】
このようなヘッドマウントディスプレイ1によれば、照明装置3はスペクトル幅が狭い光を出射するレーザー素子を備え、また、第1ホログラフィック光学素子HE1、第2ホログラフィック光学素子HE2、及び、レンズ素子LEはレーザー素子から出射される光の中心波長に合わせて最適化されている。これにより、各波長の光を効率よく集光することができ、また、色収差を低減することができ、鮮明な画像をユーザに視認させることができる。
【0092】
次に、表示装置DSPの他の構成例について説明する。なお、以下の説明では、構成例1と同一の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0093】
《構成例2》
図10は、表示装置DSPの構成例2を示す断面図である。
図10に示す構成例2は、
図3に示した構成例1と比較して、第1位相差板R1が第2構造体4Bを構成し、第1ホログラフィック光学素子HE1と第1位相差板R1との間に空気層4Cが介在している点で相違している。
【0094】
第1構造体4Aは、第1ホログラフィック光学素子HE1によって構成されている。第1ホログラフィック光学素子HE1は、表示パネル2の第2偏光板PL2に接着されている。
【0095】
第2構造体4Bは、第1位相差板R1と、第2ホログラフィック光学素子HE2と、第2位相差板R2と、偏光板PLと、第3位相差板R3と、レンズ素子LEと、を備えている。第1位相差板R1、第2ホログラフィック光学素子HE2、第3位相差板R3、偏光板PL、第2位相差板R2、及び、レンズ素子LEは、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。
【0096】
このような構成例2においても、上記の構成例1と同様の効果が得られる。
【0097】
《構成例3》
図11は、表示装置DSPの構成例3を示す断面図である。
図11に示す構成例3は、
図3に示した構成例1と比較して、第3位相差板R3が表示パネル2と第1ホログラフィック光学素子HE1との間に位置する点で相違している。
【0098】
第1構造体4Aは、第1ホログラフィック光学素子HE1と、第1位相差板R1と、第3位相差板R3と、を備えている。第3位相差板R3、第1ホログラフィック光学素子HE1、及び、第1位相差板R1は、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。第3位相差板R3は、表示パネル2の第2偏光板PL2に接着されている。
【0099】
第2構造体4Bは、第2ホログラフィック光学素子HE2と、偏光板PLと、第2位相差板R2と、レンズ素子LEと、を備えている。空気層4Cは、第3方向Zにおいて、第1位相差板R1と第2ホログラフィック光学素子HE2との間に介在している。第2ホログラフィック光学素子HE2、偏光板PL、第2位相差板R2、及び、レンズ素子LEは、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。
【0100】
このような構成例3においても、上記の構成例1と同様の効果が得られる。
【0101】
《構成例4》
図12は、表示装置DSPの構成例4を示す断面図である。
図12に示す構成例4は、
図11に示した構成例3と比較して、第1位相差板R1が第2構造体4Bを構成し、第1ホログラフィック光学素子HE1と第1位相差板R1との間に空気層4Cが介在している点で相違している。
【0102】
第1構造体4Aは、第1ホログラフィック光学素子HE1と、第3位相差板R3と、を備えている。第3位相差板R3及び第1ホログラフィック光学素子HE1は、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。第3位相差板R3は、表示パネル2の第2偏光板PL2に接着されている。
【0103】
第2構造体4Bは、第1位相差板R1と、第2位相差板R2と、第2ホログラフィック光学素子HE2と、偏光板PLと、レンズ素子LEと、を備えている。第1位相差板R1、第2ホログラフィック光学素子HE2、偏光板PL、第2位相差板R2、及び、レンズ素子LEは、第3方向Zに沿って積層され、互いに接着されている。
【0104】
このような構成例4においても、上記の構成例1と同様の効果が得られる。
【0105】
上記の構成例2乃至4で説明した光学システム4についても、
図9を参照して説明したヘッドマウントディスプレイ1に適用することができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態によれば、表示品位の低下を抑制することが可能な表示装置を提供することができる。
【0107】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1…ヘッドマウントディスプレイ DSP…表示装置
2…表示パネル 3…照明装置 4…光学システム
HE1…第1ホログラフィック光学素子 RS1…反射面
HE2…第2ホログラフィック光学素子 RS2…反射面
PL…偏光板 LE…レンズ素子 LC1…液晶層
R1…第1位相差板 R2…第2位相差板 R3…第3位相差板