(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036053
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】減速機構付モータ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/06 20060101AFI20240308BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20240308BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20240308BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
F16H55/06
F16H55/17 A
F16H1/16
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140762
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正士
【テーマコード(参考)】
3J009
3J030
5H607
【Fターム(参考)】
3J009EA06
3J009EA32
3J009EB06
3J009EB14
3J009EC01
3J009FA03
3J030BA03
3J030BA05
3J030BB02
3J030BC01
3J030BC02
3J030BD01
3J030BD06
3J030CA10
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD19
5H607EE32
(57)【要約】
【課題】減速機構付モータにおいて出力軸の高トルクを確保しつつ材料費及び加工費を低減化する。
【解決手段】回転軸を有するモータ部と減速機構を有するギヤ部とを備えた減速機構付モータである。前記ギヤ部は、ウォームホイールと前記ウォームホイールの回転を外部に出力する出力シャフト26とを含む。出力シャフト26は、金属製のシャフト部27と、シャフト部27の軸方向A1の一端側に設けられた樹脂製のセレーション部(鋸歯状部)28と、を有する。シャフト部27は、セレーション部28のシャフト部27に対する回転を係止させる回転方向係止部29と、シャフト部27の軸方向A1の他端側に形成され、前記ウォームホイールからの回転力が入力される連結部30と、回転方向係止部29と連結部30との間に設けられる軸支部31と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータ部と、前記回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部と、を備えた減速機構付モータであって、
前記ギヤ部は、
前記回転軸により回転されるウォームホイールと、
前記ウォームホイールの回転を外部に出力する出力シャフトと、を含み、
前記出力シャフトは、
金属製のシャフト部と、
前記シャフト部の軸方向一端側に設けられた樹脂製の鋸歯状部と、を有し、
前記シャフト部は、
前記鋸歯状部に埋没され、前記鋸歯状部の前記シャフト部に対する回転を係止させる回転方向係止部と、
前記シャフト部の軸方向他端側に形成され、前記ウォームホイールからの回転力が入力される連結部と、
前記回転方向係止部と前記連結部との間に設けられ、前記ギヤ部を支持するギヤフレームに軸支される軸支部と、
を備える、減速機構付モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の減速機構付モータにおいて、
前記ウォームホイールと前記出力シャフトとの間に前記ウォームホイールと前記出力シャフトとの相対回転により弾性変形されるダンパ部材が設けられ、
前記シャフト部は、前記鋸歯状部の前記シャフト部に対する前記シャフト部の軸方向の移動を係止させる軸方向係止部を備える、減速機構付モータ。
【請求項3】
前記鋸歯状部の端面には前記シャフト部の軸方向に沿って凹んだ円形の凹部が形成され、
前記シャフト部の端部の直径と前記凹部の直径とが等しい、請求項1または請求項2に記載の減速機構付モータ。
【請求項4】
前記軸方向係止部は、前記シャフト部の軸方向において前記回転方向係止部より端部側に設けられる、請求項2に記載の減速機構付モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を有するモータ部と、該回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部とを備えた減速機構付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるパワーウィンド装置などの駆動源には、小型でありながら大きな出力が得られる減速機構付モータが用いられている。このような減速機構付モータは、回転軸を有するモータ部と、該回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部とを備えている。そして、モータ部を駆動することにより、回転軸の回転がギヤ部において減速機構により所定の速度まで減速され、この減速されて高トルク化された出力が出力軸を介してウィンドレギュレータなどに向けて出力される。
【0003】
上記した減速機構を備えたモータとして、例えば、特許文献1には、モータ部の駆動により回転するウォーム部と、該ウォーム部と係合されるとともに出力軸と一体回転可能な出力ギヤ部と、を備えた構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたモータでは、金属製の出力軸(出力シャフト)と出力ギヤ部とが一体構造となっている。金属製の出力軸と出力ギヤ部とを一体構造とする場合、製品形状の鋸歯状部(出力ギヤ部)の寸法を保証するため、予め圧造によって鋸歯状部を大きめに加工し、加工後に鋸歯状部の不要な部分を切削して鋸歯状部を所望の大きさに加工する。具体的には、圧造によって鋸歯状部を形成した際に鋸歯状部の両端側にダレが発生するため、このダレを切削加工で除去しなければならない。
【0006】
その結果、モータの製造における材料費と加工費に無駄が発生する。
【0007】
本発明の目的は、出力軸の高トルクを確保しつつ材料費及び加工費が低減化された減速機構付モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、回転軸を有するモータ部と、前記回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部と、を備えた減速機構付モータであって、前記ギヤ部は、前記回転軸により回転されるウォームホイールと、前記ウォームホイールの回転を外部に出力する出力シャフトと、を含み、前記出力シャフトは、金属製のシャフト部と、前記シャフト部の軸方向一端側に設けられた樹脂製の鋸歯状部と、を有し、前記シャフト部は、前記鋸歯状部に埋没され、前記鋸歯状部の前記シャフト部に対する回転を係止させる回転方向係止部と、前記シャフト部の軸方向他端側に形成され、前記ウォームホイールからの回転力が入力される連結部と、前記回転方向係止部と前記連結部との間に設けられ、前記ギヤ部を支持するギヤフレームに軸支される軸支部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
減速機構付モータにおいて、出力軸の高トルクを確保しつつ材料費及び加工費を低減化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る減速機構付モータを備えたパワーウィンド装置の概要を説明する説明図である。
【
図2】
図1の減速機構付モータの構造を説明する外観斜視図である。
【
図3】
図2の減速機構付モータの内部構造を説明する平面図である。
【
図4】
図3の減速機構付モータのギヤ部の内部構造を説明する平面図である。
【
図5】
図2の減速機構付モータに設けられる出力シャフトの構造を示す側面図である。
【
図6】
図5の出力シャフトにおけるシャフト部とセレーション部の接合状態を一部断面にして示す側面図である。
【
図7】
図6のシャフト部の構造を示す側面図である。
【
図8】
図7のシャフト部における回転方向係止部と軸方向係止部の構造を示す斜視図である。
【
図9】
図2の減速機構付モータのギヤ部の内部構造を説明する断面図である。
【
図10】
図9のギヤ部で発生する慣性力を説明する模式図ある。
【
図11】
図9のギヤ部の内部構造をロックプレート側から眺めた分解斜視図である。
【
図12】
図9のギヤ部の内部構造をウォームホイール側から眺めた分解斜視図である。
【
図13】
図5の出力シャフトにおけるセレーション部端面の形状を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1に示されるように、自動車などの車両の側部に設けられる開閉ドア10には、ケーブル式のパワーウィンド装置11が搭載されている。パワーウィンド装置11は、開閉ドア10を形成するドア枠10aに設けられたウィンドガラス12を開閉駆動するようになっている。
【0013】
パワーウィンド装置11は、パワーウィンドモータ20とウィンドレギュレータ40とを備えている。本実施の形態のパワーウィンドモータ20は、減速機構付モータであり、モータ部21とギヤ部22とを備えている。ギヤ部22には、外周部に駆動ケーブル14が巻き掛けられたドラム23が設けられている。ウィンドレギュレータ40は、開閉ドア10の上下方向、つまりウィンドガラス12の開閉方向に延びるガイドレール41を備え、ガイドレール41の図中上側および下側には、駆動ケーブル14の移動方向を折り返す上側プーリ42および下側プーリ43がそれぞれ回転自在に設けられている。
【0014】
ガイドレール41には、ウィンドガラス12の下端部を支持するキャリアプレート44が摺動自在に設けられ、キャリアプレート44には、上側プーリ42と下側プーリ43によって折り返された駆動ケーブル14の一側端部14aと他側端部14bとが連結されている。
【0015】
そして、車室内に設けられる操作スイッチ(図示せず)を「開操作」することにより、パワーウィンドモータ20は正方向に回転駆動され、ドラム23が時計方向に回転する。これにより、駆動ケーブル14の他側端部14bが、図中破線矢印のように引っ張られてキャリアプレート44がガイドレール41に沿って下降し、ひいてはウィンドガラス12が図中破線矢印の方向に移動する。その結果、ウィンドガラス12を開けることができる(開動作)。
【0016】
一方、操作スイッチを「閉操作」することにより、パワーウィンドモータ20は逆方向に回転駆動され、ドラム23が反時計方向に回転する。これにより、駆動ケーブル14の一側端部14aが、図中実線矢印のように引っ張られてキャリアプレート44がガイドレール41に沿って上昇し、ひいてはウィンドガラス12が図中実線矢印の方向に移動する。その結果、ウィンドガラス12を閉じることができる(閉動作)。
【0017】
次に、本実施の形態のパワーウィンドモータ(減速機構付モータ)20について説明する。パワーウィンドモータ20は、
図2~
図4に示されるように、回転軸24を有するモータ部21と、モータ部21に組み付けられるギヤフレーム32と、ギヤフレーム32に収容され、回転軸24の回転を減速する減速機構25を有するギヤ部22と、を備えている。また、モータ部21の回転軸(ウォーム軸)24の外周にはウォーム24aが一体に設けられている。
【0018】
一方、ギヤ部22には、ウォーム24aと係合し、かつ、回転軸24により回転されるウォームホイール38と、ウォームホイール38を収容する収容部が形成されるとともにモータ部21に組み付けられるギヤフレーム32とが設けられている。具体的には、ウォーム24aとウォームホイール38の歯部38a(後述する
図10参照)とが噛み合わされており、回転軸24の回転がウォーム24aとウォームホイール38とによって減速され高トルク化される。すなわち、ウォーム24aおよびウォームホイール38によって減速機構25が形成される。これらウォーム24aおよびウォームホイール38は、ギヤフレーム32内に回転自在に設けられている。
【0019】
また、ギヤ部22には、ウォームホイール38の回転を外部に出力する出力シャフト26が設けられている。そして、減速機構25においては、ウォーム24aおよびウォームホイール38によって回転軸24の回転方向が90°変換されて出力シャフト26へ伝達される。なお、出力シャフト26の一端側は、ギヤフレーム32の外側に露出するとともにこの露出した部分にセレーション部(鋸歯状部)28が設けられている。そして、このセレーション部28に
図1に示されるドラム23が係合されている。
【0020】
以上のようにパワーウィンドモータ20においては、ウォーム24aおよびウォームホイール38は、回転軸24の回転を所定の速度にまで減速して高トルク化し、この高トルク化した回転をギヤフレーム32の外部に設けられたドラム23に出力シャフト26を介して出力するようになっている。なお、
図2に示されるように、ギヤフレーム32から露出したセレーション部28は、両方向(回転方向R1)に回転可能に設けられている。
【0021】
次に、出力シャフト26の詳細構造について説明する。
【0022】
出力シャフト26は、
図5~
図7に示されるように、金属製のシャフト部27と、シャフト部27の軸方向A1の一端側に設けられた樹脂製のセレーション部(鋸歯状部)28と、を有する。具体的には、セレーション部28は、樹脂製であるとともに略円筒形である。そして、セレーション部28には、シャフト部27の回転方向R1(
図8参照)において複数の歯部28aと歯溝28bとが交互に設けられており、ギヤ状となっている。別の言い方をすると、セレーション部28には、シャフト部27の回転方向R1において複数の歯部28aが所定の間隔で設けられている。
【0023】
一方、シャフト部27は、金属製であるとともに略円筒形の棒状である。そして、シャフト部27は、セレーション部28に埋没され、かつ、セレーション部28のシャフト部27に対する回転を係止させる回転方向係止部29を備えている。この回転方向係止部29は、
図8に示されるように、シャフト部27の回転方向R1において交互に設けられた複数の歯部29aと歯溝29bとからなる。具体的には、回転方向係止部29は、シャフト部27の回転方向R1において所定の間隔で設けられた複数の歯部29aを備えており、複数の歯部29aおよび隣り合う歯部29aの間に設けられた歯溝29bからなる。
【0024】
そして、回転方向係止部29は、
図6に示されるように樹脂製のセレーション部28に埋設されるため、複数の歯溝29bのそれぞれには、セレーション部28を形成する樹脂が埋め込まれる。例えば、インサート成形によって金属製のシャフト部27の回転方向係止部29は、樹脂製のセレーション部28に埋設される。これにより、セレーション部28の樹脂が回転方向係止部29の歯溝29bに高い強度で食い付いた状態となり、セレーション部28と回転方向係止部29との接合強度を高めることができる。すなわち、シャフト部27が回転した際にセレーション部28の空回りを防止することができ、出力シャフト26として高出力を発生させることができる。
【0025】
また、シャフト部27は、該シャフト部27の軸方向A1の他端側に形成され、かつ、
図3に示されるウォームホイール38からの回転力が入力される連結部30と、回転方向係止部29と連結部30との間に設けられ、かつ、ギヤ部22を支持するギヤフレーム32に軸支される軸支部31と、を備えている。連結部30には、シャフト部27の回転方向R1において所定の間隔で設けられた複数の歯部30aと、複数の歯部30aに対してシャフト部27の回転方向R1に沿って設けられた切込部30bとが形成されている。すなわち、連結部30もギヤ状に形成されている。連結部30の複数の歯部30aには、
図9に示されるように、金属製のロックプレート35が噛み合って係合されている。そして、切込部30bにCリング37が嵌め込まれてロックプレート35とシャフト部27の連結部30とが固定されている。
【0026】
軸支部31は、回転方向係止部29と連結部30との間に位置し、
図9に示されるように、ギヤフレーム32の孔部32aに回転可能に軸支されている。また、孔部32aと軸支部31との間からギヤフレーム32の内部に異物が浸入することを防ぐために軸支部31におけるセレーション部28の設置側の端部にはOリング36が嵌め込めれている。
【0027】
なお、ロックプレート35は、樹脂製のプレート保持部材39によって保持されるとともに後述するダンパ部材33とともにウォームホイール38に組み付けられる。ウォームホイール38が回転すると、ロックプレート35も回転するとともに連結部30を介してシャフト部27が回転する。
【0028】
また、ギヤフレーム32には、ウォームホイール38およびロックプレート35を覆うギヤカバー13が固定される。
【0029】
本実施の形態のパワーウィンドモータ20によれば、金属製のシャフト部27において樹脂製のセレーション部28内に埋め込まれる部分に、回転方向係止部29が設けられたことにより、出力シャフト26の高トルクを確保することができる。さらに、出力シャフト26のセレーション部28がモールド成形からなる樹脂製であることにより、パワーウィンドモータ20を製造するための材料費及び加工費を低減化することができる。すなわち、パワーウィンドモータ20において出力軸である出力シャフト26の高トルクを確保しつつ、パワーウィンドモータ20を製造するための材料費及び加工費を低減化することができる。
【0030】
また、出力シャフト26のセレーション部28が樹脂製であることにより、出力シャフト26の重量の低減化を図ることができる。これにより、パワーウィンドモータ20の特性を向上させることができる。
【0031】
さらに、パワーウィンドモータ20では、その出力シャフト26の製造において、金属製のシャフト部27の切削加工に用いられる切削機の使用を減らすことができるとともに、切削のための切削機の駆動エネルギを削減することが可能になる。その結果、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7および目標13を達成することが可能となる。
【0032】
ここで、パワーウィンドモータ20においては、
図9に示されるように、ウォームホイール38と出力シャフト26との間にウォームホイール38と出力シャフト26の相対回転により弾性変形されるダンパ部材33が設けられている。ダンパ部材33は、
図11および
図12に示されるように略リング状を成すゴム製の部材である。ダンパ部材33は、6つのダンパ片33bと、隣り合うダンパ片33bを互いに連結する6つの連結部33cと、を備えている。6つのダンパ片33bおよび6つの連結部33cは、それぞれウォームホイール38の周方向に沿って交互に等間隔(30°間隔)で配置され、各ダンパ片33bは、各連結部33cに対して径方向外側に放射状に突出して設けられている。また、ウォームホイール38には、その内側にダンパ収容部38cが形成されており、該ダンパ収容部38cにダンパ部材33が収容される。さらに、ウォームホイール38のダンパ収容部38cには、トルク出力部38bが設けられている。一方、ロックプレート35には、トルク受部35aが設けられている。そして、
図9に示されるギヤ部22を組み立てた状態において、各ダンパ片33bは、ギヤ部22の回転方向に沿って交互に配置された、ウォームホイール38のトルク出力部38bと、ロックプレート35のトルク受部35aと、の間にそれぞれ配置されている。すなわち、隣り合うダンパ片33bの間に、トルク出力部38bとトルク受部35aとが交互に配置される。
【0033】
ここで、各ダンパ片33bは、トルク出力部38bとトルク受部35aとの間に、少しだけ弾性変形された状態で保持(挟持)されている。これにより、ギヤ部22の周方向に沿うダンパ片33bの両側は、トルク出力部38bおよびトルク受部35aにそれぞれ密着されている。
【0034】
これにより、ウォームホイール38が正方向または逆方向に回転されると、トルク出力部38bからダンパ片33bを介してトルク受部35aに回転力が伝わる。その際、ダンパ片33bが回転方向に潰されることによってモータ駆動時のトルク出力部38bとトルク受部35aとの間の衝撃の伝達を緩和させることができる。
【0035】
また、ダンパ部材33は、シャフト部27の軸方向A1においてウォームホイール38及びロックプレート35に接触し、さらにダンパ部材33の径方向においてウォームホイール38の内壁に接触する凸部33aを有している(接触部B1において接触)。
【0036】
これにより、ウォームホイール38は、軸方向A1及び径方向においてダンパ部材33から弾性力が付加されている。さらに、出力シャフト26及びロックプレート35は、軸方向A1において、接触部B1でダンパ部材33から弾性力が印加された状態で組付けされており、
図9中の下方側に付勢された状態となっている。言い換えると、出力シャフト26のセレーション部28は、ギヤフレーム32の上面に対して常に押し付けられた状態となっている。
【0037】
なお、ダンパ部材33は、
図1に示されるウィンドガラス12が上昇及び下降して停止した際にウォームホイール38に掛かる慣性力を低減するものである。また、
図10に示されるように、ウォームホイール38には、回転中(回転方向R1への回転中)においても荷重F1,F2,F3が印加されている。このとき出力シャフト26に対して軸方向A1に発生する荷重が最も大きくなる。そして、出力シャフト26のセレーション部28は、ギヤフレーム32の上面に対して常に押し付けられた状態となっているため、セレーション部28にはシャフト部27から抜けるような力が作用する。
【0038】
そこで、シャフト部27は、
図8に示されるように、セレーション部28のシャフト部27に対する軸方向A1の移動を係止させる軸方向係止部34を備えている。この軸方向係止部34は、セレーション部28に作用するギヤフレーム32の上面に常に押し付ける力(セレーション部28が
図9中下方に引っ張られる力)に抗してセレーション部28が抜けないようにする部分である。具体的には、
図8に示される軸方向係止部34の側壁34aによってセレーション部28の
図9中上方への移動を拘束することができる。すなわち、回転方向係止部29の歯溝29bに入り込んだセレーション部28の樹脂部分は、セレーション部28が
図9中下方に引っ張られた際にも軸方向係止部34の側壁34aによってセレーション部28の
図9中上方への移動を拘束することができる。
【0039】
したがって、軸方向係止部34が設けられたことで、ダンパ部材33からの弾性力によりセレーション部28にシャフト部27から抜ける方向(軸方向A1)に応力が印加された際にも、セレーション部28がシャフト部27から抜けることを防止できる。
【0040】
なお、軸方向係止部34は、シャフト部27の軸方向A1において回転方向係止部29より端部側の位置に設けられることが好ましい。言い換えると、シャフト部27の軸方向A1における軸方向係止部34が設けられる位置は、回転方向係止部29より先端側の位置が好ましく、端部に設けられることが好ましい。具体的には、シャフト部27を圧造加工により形成する際に、軸方向係止部34をシャフト部27の内側寄りの箇所に形成するのは、圧造型を用いてシャフト部27を形成する際の歯部29a及び歯溝29bの精度出しが困難である。そこで、軸方向係止部34をシャフト部27の軸方向A1において回転方向係止部29より端部側の位置、好ましくは端部に設けることで、圧造型を用いてシャフト部27を形成する際の歯部29a及び歯溝29bの精度出しを容易にすることができる。
【0041】
また、
図13に示されるように、セレーション部28の端面28cにはシャフト部27の軸方向A1に沿って凹んだ円形の凹部28dが形成されている。そして、凹部28dは、シャフト部27の端部の直径D1と凹部28dの直径D2とが等しくなるように形成されていることが好ましい(D1=D2)。
【0042】
このようにセレーション部28の端面28cに形成された凹部28dの直径D2がシャフト部27の端部の直径D1と等しいことにより、セレーション部28を樹脂成形する際に、セレーション部28の歯部28a及び歯溝28bの角部C1において樹脂が端面28c側に引っ張られるのを抑制することができる。これにより、セレーション部28の歯部28a及び歯溝28bから端面28c側に形成される樹脂部分の厚みの均一化を図ることができ、セレーション部28の成形精度を高めることができる。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、シャフト部27を形成する際に、シャフト部27の軸方向A1において、軸方向係止部34をシャフト部27の端部ではなく内側寄りの箇所に形成してもよい。
【0044】
また、セレーション部28の端面28cに形成される凹部28dは、円形に限定されることはなく多角形等であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:開閉ドア,10a:ドア枠,11:パワーウィンド装置,12:ウィンドガラス,13:ギヤカバー,14:駆動ケーブル,14a:一側端部,14b:他側端部,20:パワーウィンドモータ(減速機構付モータ),21:モータ部,22:ギヤ部,23:ドラム,24:回転軸,24a:ウォーム,25:減速機構,26:出力シャフト,27:シャフト部,28:セレーション部(鋸歯状部),28a:歯部,28b:歯溝,28c:端面,28d:凹部,29:回転方向係止部,29a:歯部,29b:歯溝,30:連結部,30a:歯部,30b:切込部,31:軸支部,32:ギヤフレーム,32a:孔部,33:ダンパ部材,33a:凸部,33b:ダンパ片,33c:連結部,34:軸方向係止部,34a:側壁,35:ロックプレート,35a:トルク受部,36:Oリング,37:Cリング,38:ウォームホイール,38b:トルク出力部,38c:ダンパ収容部,39:プレート保持部材,40:ウィンドレギュレータ,41:ガイドレール,42:上側プーリ,43:下側プーリ,44:キャリアプレート,A1:軸方向,B1:接触部,C1:角部,D1,D2:直径,F1,F2,F3:荷重,R1:回転方向