(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036055
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240308BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H01L21/302 101E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140765
(22)【出願日】2022-09-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】593030923
【氏名又は名称】株式会社ニッシン
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】南光 正平
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084BB07
2G084BB35
2G084BB37
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD32
2G084DD62
2G084EE02
2G084FF04
2G084FF35
2G084FF38
2G084FF39
5F004BB14
5F004DA23
5F004DA26
(57)【要約】
【課題】プラズマの出力向上および装置の小型化を可能とする、プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】
一端側に開口部34を有する導電性の導波管である外部導体29と、外部導体29の内部において外部導体29の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブル5と接続されており、供給されたマイクロ波を一端側へ伝搬する第1誘電体31と、開口部34を閉塞するように配設され、第1誘電体31が伝搬するマイクロ波を用いてプラズマを発生させる第2誘電性体33と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口部を有する導電性の導波管と、
前記導波管の内部において前記導波管の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブルと接続されており、供給された前記マイクロ波を前記一端側へ伝搬する第1の誘電性部材と、
前記開口部を閉塞するように配設され、前記第1の誘電性部材が伝搬する前記マイクロ波を用いてプラズマを発生させる第2の誘電性部材と、
を備えることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
前記第1の誘電性部材は前記導波管の内部を充填するように前記導波管の主軸に沿って延在している
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
前記第1の誘電性部材は、前記マイクロ波供給ケーブルとの接続部において、比誘電率の変化を緩和させる比誘電率緩衝部を備えている
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ発生装置において、
前記比誘電率緩衝部は、前記第1の誘電性部材に形成されている凹部であり、
前記マイクロ波供給ケーブルは前記凹部が延びる方向へ挿入される
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項5】
請求項3に記載のプラズマ発生装置において、
前記比誘電率緩衝部は前記第1の誘電性部材より比誘電率が低い材料で構成されている接続部材であり、
前記第1の誘電性部材は前記接続部材を介して前記マイクロ波供給ケーブルと接続される
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラズマ発生装置において、
前記第1の誘電性部材は、前記第2の誘電性部材との接続部において、比誘電率の変化を緩和させる第2比誘電率緩衝部を備えている
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項7】
マイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
前記マイクロ波供給部から供給されるマイクロ波を用いてプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記プラズマ発生部が発生させたプラズマを用いてワークを処理するプラズマ処理部と、
を備え、
前記プラズマ発生部は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラズマ発生装置である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させるプラズマ発生装置、および当該プラズマ発生装置を備えておりワークに対してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品、液晶パネルなどの製造プロセスでは、表面洗浄、エッチング、CVD処理等においてプラズマが利用されている。また、これら以外にも幅広い分野において、被処理対象物(以下、「ワーク」と総称する)に対してプラズマを利用した表面改質処理や撥水処理などが行われている。
【0003】
ワークに対してプラズマ処理を行う装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、マイクロ波エネルギーを用いてプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、プラズマ発生装置と接続されておりワークを収容するプラズマ処理部とを備えている。プラズマ処理部は一例として金属製の真空チャンバであり、プラズマ処理部には1または2以上のプラズマ発生装置が接続されている。
【0004】
プラズマ処理装置に用いられるプラズマ発生装置としては、同軸管構造を備えており先端部においてプラズマを発生させる装置(同軸照射装置)が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る従来のプラズマ発生装置100は、
図17または
図18に示すように、中央コア101と、アウターシールド102と、接続機構105と、誘電体107とを備えている。中央コア101は導電性を有する棒状部材で構成されており、プラズマ発生装置100の主軸APに沿って延在する。中央コア101はプラズマ装置100において、いわゆる内部導体に相当する。
【0005】
アウターシールド102は導電性を有する円筒状部材であり、中央コア101を囲むように配置される。アウターシールド102はプラズマ発生装置100において、いわゆる外部導体に相当する。アウターシールド102の先端側(
図17では左側)は開口部が形成されており、アウターシールド102の基端側(
図17では右側)は隔壁106によって閉鎖されている。中央コア101とアウターシールド102との間には、マイクロ波エネルギーを伝搬する伝搬媒体103が備えられている。伝搬媒体103の一例として、空気などが挙げられる。
【0006】
接続機構105は、図示しないマイクロ波発生部とプラズマ装置100とを接続させる。接続機構105は一例として
図17に示すように、アウターシールド102の側壁のうち隔壁106に近い部分に配置されている。図示しないマイクロ波発生部から延びるマイクロ波伝送ケーブル108は、開口となっている接続機構105を通ってプラズマ発生装置100の内部に案内される。
【0007】
誘電体107はマイクロ波を伝搬する絶縁体で構成されており、アウターシールド102の先端側の開口を閉塞するように配設されている。誘電体107は、中央コア101と接続されている。誘電体107は、プラズマ発生装置100の伝搬媒体103とプラズマ発生部の内部空間とを接続する。誘電体107の外表面109は、アウターシールド102の基端側から先端側に向かって先細りとなるテーパ状となっている。
【0008】
従来のプラズマ発生装置100では、マイクロ波発生部から出力されるマイクロ波によってプラズマが発生する。すなわち、マイクロ波伝送ケーブル108によって入力されるマイクロ波エネルギーは、接続機構105を経由してプラズマ発生装置100の内部に伝搬される。さらにマイクロ波エネルギーはプラズマ発生装置100の内部において誘電体107へと伝搬され、誘電体107の外表面109に接触するガスが励起されることでプラズマが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
【0011】
従来例における第1の問題として、従来のプラズマ発生装置100は大出力のマイクロ波を投入すると容易に絶縁破壊が発生するという点が挙げられる。そのため、従来のプラズマ発生装置100では高出力のプラズマを発生させることが困難である。
【0012】
従来の装置において絶縁破壊の問題が発生する原因として、以下のようなものが考えられる。すなわち従来のプラズマ発生装置100では円筒状のアウターシールド102の中心部に導電性の中央コア101が配置されているので、絶縁距離はアウターシールド102の内面から中央コア101の表面までの距離P1となる。すなわち絶縁距離はアウターシールド102の半径より短い距離に限定されるので、プラズマ発生装置100において絶縁破壊が発生し易くなる。絶縁破壊の発生を回避すべく絶縁距離を十分に確保するにはアウターシールド102の径を大きくする必要があるので、絶縁破壊を回避しつつプラズマ発生装置100を小型化することは非常に困難である。
【0013】
従来例における第2の問題として、従来のプラズマ発生装置100では内部において熱が蓄積しやすく、当該熱を外部へと逃がすことが困難であるという点が上げられる。すなわちプラズマ発生装置100において熱の蓄積を抑制すべくマイクロ波の出力を低く抑える必要があるので、高出力のプラズマを発生させることがより困難となる。
【0014】
従来の装置において熱が蓄積しやすいという問題が発生する原因として、以下のようなものが考えられる。すなわちプラズマ発生装置100において、中央コア101がアウターシールド102に接触している部分は非常に狭い領域に限定されている。中央コア101はプラズマ発生装置100の基端部のみにおいてアウターシールド102に直接接触している。そのため、中央コア101の表面で発生する熱(ジュール熱)をプラズマ発生装置100の外部へと効率良く排出することは困難である。
【0015】
従来例における第3の問題として、プラズマ発生装置100の製造コストが高くなるという問題が挙げられる。すなわちプラズマ発生装置100において、誘電体107を単純な円筒形状とするとインピーダンスの整合性が低下するという問題が発生する。プラズマ発生装置100においてインピーダンスの整合性を向上するには、誘電体107の外表面109をテーパ状に加工する必要がある。すなわち誘電体107の外表面109を加工することによって、プラズマ発生装置100の製造コストが上昇することとなる。
【0016】
またプラズマ発生装置100のインピーダンスをより向上するには、
図18に示すように誘電体107の外表面109のみならず、伝搬媒体103と接触する誘電体107の内表面110もテーパ状に加工する必要がある。外表面109に加えて内表面110をテーパ状に加工する場合、プラズマ発生装置100の製造コストがさらに上昇する。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、プラズマの出力向上および装置の小型化を可能とする、プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るプラズマ発生装置は、一端側に開口部を有する導電性の導波管と、
前記導波管の内部において前記導波管の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブルと接続されており、供給された前記マイクロ波を前記一端側へ伝搬する第1の誘電性部材と、
前記開口部を閉塞するように配設され、前記第1の誘電性部材が伝搬する前記マイクロ波を用いてプラズマを発生させる第2の誘電性部材と、
を備えることを特徴とするものである。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、一端側に開口部を有する導電性の導波管が用いられており、当該導波管の内部には第1の誘電性部材が導波管の主軸に沿って延在している。また導波管の開口部は第2の誘電性部材によって閉塞されており、第1の誘電性部材が一端側へ伝搬させたマイクロ波は第2の誘電性部材に受信され、第2の誘電部材は当該マイクロ波を用いてプラズマを発生させる。
【0020】
すなわち本発明に係るプラズマ発生装置は全体として導波管構造を備えており、内部に導体を有していない。内部導体を有していないことによって、内部導体の存在に起因してプラズマ発生装置の絶縁距離が短くなるという事態を回避できるので、高出力のマイクロ波を供給した場合であっても絶縁破壊が発生することを回避できる。従って、絶縁破壊の発生をより確実に防止しつつ、プラズマ発生装置におけるプラズマの出力を向上させることが可能となる。
【0021】
また、内部導体の存在に起因してプラズマ発生装置の絶縁距離が短くなるという事態を回避できるので、導波管の径を短くする場合であっても絶縁破壊の発生をより確実に回避できる。すなわち、絶縁破壊の発生をより確実に回避しつつ、プラズマ発生装置を小型化することが可能となる。
【0022】
また、上述した発明において、前記第1の誘電性部材は前記導波管の内部を充填するように前記導波管の主軸に沿って延在していることが好ましい。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、第1の誘電性部材は導波管の内部を充填している。すなわち第1の誘電性部材は表面全体が導波管と接している。導波管の内部を第1の誘電性部材で充填させることにより、マイクロ波を伝搬させる第1の誘電性部材は広い範囲において、外部導体である導波管と接触している。従って、第1の誘電性部材において発生する熱を効率良く導波管へと伝導させてプラズマ発生装置の外部へと逃がすことができる。その結果、高出力のマイクロ波を供給させる場合であっても第1の誘電性部材に熱が蓄積することを回避できるので、プラズマ発生装置の高温化を防止しつつ、プラズマ発生装置におけるプラズマの出力を向上させることが可能となる。
【0024】
また、上述した発明において、前記第1の誘電性部材は、前記マイクロ波供給ケーブルとの接続部において、比誘電率の変化を緩和させる比誘電率緩衝部を備えていることが好ましい。
【0025】
(作用・効果)この構成によれば、第1の誘電性部材は比誘電率緩衝部を備えている。比誘電率緩衝部は、マイクロ波供給ケーブルと第1の誘電性部材との接続部において、比誘電率の変化を緩和させる。比誘電率緩衝部を介してマイクロ波供給ケーブルと第1の誘電性部材とを接続させることにより、マイクロ波供給ケーブルから第1の誘電性部材までの部分における比誘電率の変化が小さくなる。そのため比誘電率緩衝部を備えることにより、比誘電率の急激な変化に起因するインピーダンス整合性の低下を回避できる。
【0026】
また、上述した発明において、前記比誘電率緩衝部は、前記第1の誘電性部材に形成されている凹部であり、
前記マイクロ波供給ケーブルは前記凹部が延びる方向へ挿入されることが好ましい。
【0027】
(作用・効果)この構成によれば、第1の誘電性部材に凹部が形成されており、マイクロ波供給ケーブルは凹部に挿入される。この場合、マイクロ波供給ケーブルが挿入される凹部の領域では、第1の誘電性部材が満たす領域とマイクロ波供給ケーブル周辺の気体が満たす領域とが混在する。すなわち、マイクロ波供給ケーブルが挿入される凹部における比誘電率は、第1の誘電性部材の比誘電率より低くマイクロ波供給ケーブル周辺の気体の比誘電率より高い。そのため、マイクロ波供給ケーブルから第1の誘電性部材までの部分における比誘電率の変化が小さくなる。従って、凹部を形成させるという単純な設計を行うことで、比誘電率の急激な変化に起因するインピーダンス整合性の低下を回避できる。
【0028】
また、上述した発明において、前記比誘電率緩衝部は前記第1の誘電性部材より比誘電率が低い材料で構成されている接続部材であり、
前記第1の誘電性部材は前記接続部材を介して前記マイクロ波供給ケーブルと接続されることが好ましい。
【0029】
(作用・効果)この構成によれば、第1の誘電性部材より比誘電率が低い材料で構成されている接続部材を備え、第1の誘電性部材は当該接続部材を介してマイクロ波供給ケーブルと接続される。接続部材は第1の誘電性部材より比誘電率が低い材料で構成されているので、マイクロ波供給ケーブルから第1の誘電性部材までの部分における比誘電率の変化が小さくなる。そのため、マイクロ波供給ケーブルと第1の誘電性部材との間に接続部材を配設するという単純な構成によって、比誘電率の急激な変化に起因するインピーダンス整合性の低下を回避できる。
【0030】
また、上述した発明において、前記第1の誘電性部材は、前記第2の誘電性部材との接続部において、比誘電率の変化を緩和させる第2比誘電率緩衝部を備えていることが好ましい。
【0031】
(作用・効果)この構成によれば、第1の誘電性部材は第2比誘電率緩衝部を備えている。第2比誘電率緩衝部は、第1の誘電性部材と第2の誘電性部材との接続部において、比誘電率の変化を緩和させる。第2比誘電率緩衝部を介して第1の誘電性部材と第2の誘電性部材とを接続させることにより、第1の誘電性部材から第2の誘電性部材までの部分における比誘電率の変化が小さくなる。そのため第2比誘電率緩衝部を備えることにより、比誘電率の急激な変化に起因するインピーダンス整合性の低下をより確実に回避できる。
【0032】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るプラズマ処理装置は、マイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
前記マイクロ波供給部から供給されるマイクロ波を用いてプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記プラズマ発生部が発生させたプラズマを用いてワークを処理するプラズマ処理部と、
を備え、
前記プラズマ発生部は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラズマ発生装置であることを特徴とするものである。
【0033】
(作用・効果)この構成によれば、本発明に係るプラズマ発生装置にマイクロ波を供給してプラズマを発生させ、当該プラズマを用いてワークに対するプラズマ処理を行う。そのため、ワークに対してプラズマ処理を行う装置において本発明の効果を奏することができる。すなわち、本発明に係るプラズマ発生装置は高出力のマイクロ波を供給しても絶縁破壊等の発生をより確実に回避できるので、絶縁破壊等の発生を防止しつつ高出力のプラズマによるワークのプラズマ処理を実現できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るプラズマ発生装置およびプラズマ処理装置によれば、一端側に開口部を有する導電性の導波管が用いられており、当該導波管の内部には第1の誘電性部材が導波管の主軸に沿って延在している。また導波管の開口部は第2の誘電性部材によって閉塞されており、第1の誘電性部材が一端側へ伝搬させたマイクロ波は第2の誘電性部材に受信され、第2の誘電部材は当該マイクロ波を用いてプラズマを発生させる。
【0035】
すなわち内部に導体を有しておらず誘電性部材を有する導波管にマイクロ波を供給してプラズマを発生させる。内部導体を有していないことによって、内部導体の存在に起因して絶縁距離が短くなるという事態を回避できるので、高出力のマイクロ波を供給した場合であっても絶縁破壊が発生することを回避できる。従って、絶縁破壊の発生をより確実に防止しつつ、プラズマ発生装置におけるプラズマの出力を向上させることが可能となる。
【0036】
また、内部導体の存在に起因して絶縁距離が短くなるという事態を回避できるので、導波管の径を短くする場合であっても絶縁破壊の発生をより確実に回避できる。すなわち、絶縁破壊の発生をより確実に回避しつつ、プラズマ発生装置を小型化することが可能となる。よって、プラズマの出力向上および装置の小型化を可能とする、プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施例1に係るプラズマ処理装置の全体構成を説明する概略図である。
【
図2】実施例1に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。
【
図3】実施例1に係るプラズマ発生部の構成を説明する斜視図である。
【
図4】実施例1に係るプラズマ処理装置について、プラズマ発生部とプラズマ処理部とを組み合わせる状態を示す図である。
【
図5】実施例1に係るプラズマ発生部について、第1誘電体と第2誘電体と外部導体とを組み合わせる状態を示す図である。
【
図6】比較例に係るプラズマ発生部における比誘電率の変化を示す図である。(a)はプラズマ発生部の基端側を示す縦断面図であり、(b)はプラズマ発生部の基端側について、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。
【
図7】実施例1に係るプラズマ発生部における比誘電率の変化を示す図である。(a)はプラズマ発生部の基端側を示す縦断面図であり、(b)はプラズマ発生部の基端側について、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。
【
図8】実施例1の構成による効果を説明する図である。(a)は従来例における排熱効率を示す縦断面図であり、(b)は実施例1における排熱効率を示す縦断面図である。
【
図9】変形例に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。(a)は第2誘電体の先端が円柱状である変形例を示す図であり、(b)は第2誘電体の先端が先端側に向かって先太りとなるテーパ状である変形例を示す図である。
【
図10】実施例2に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。
【
図11】実施例2に係るプラズマ発生部における比誘電率の変化を示す図である。(a)はプラズマ発生部の基端側を示す縦断面図であり、(b)はプラズマ発生部の基端側について、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。
【
図12】実施例3に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。
【
図13】実施例3に係るプラズマ発生部における比誘電率の変化を示す図である。(a)はプラズマ発生部の基端側を示す縦断面図であり、(b)はプラズマ発生部の基端側について、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。
【
図14】変形例に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。
【
図15】変形例に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。
【
図16】変形例に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。
【
図17】従来例に係るプラズマ発生装置の構成を説明する縦断面図である。
【
図18】従来例に係るプラズマ発生装置の構成を説明する縦断面図である。
【
図19】変形例に係るプラズマ発生部における比誘電率の変化を示す図である。(a)はプラズマ発生部を示す縦断面図であり、(b)はプラズマ発生部について、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0038】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は実施例1に係るプラズマ処理装置1の概略図である。
【0039】
<全体構成の説明>
実施例1に係るプラズマ処理装置1は、マイクロ波発生部3と、マイクロ波供給ケーブル5と、プラズマ発生部7と、プラズマ処理部9と、を備えている。なお
図1および
図4において、プラズマ処理部9は縦断面図を示している。
【0040】
マイクロ波発生部3は、周波数を可変にして特定の周波数のマイクロ波を発振する。本実施例において、マイクロ波発生部3は2.45GHzのマイクロ波を発振するものとする。マイクロ波供給ケーブル5は、マイクロ波発生部3およびプラズマ発生部7の各々に接続されており、マイクロ波発生部3から発振したマイクロ波を伝搬してプラズマ発生部7へと供給する。
【0041】
プラズマ発生部7は、マイクロ波発生部3から供給されたマイクロ波のエネルギーを用いて、先端部においてプラズマを発生させる。プラズマ発生部7はプラズマ処理部9と接続されており、プラズマを発生させる先端部はプラズマ処理部9の内部空間Lに接触するように構成されている。
【0042】
本実施例において、プラズマ処理装置1は3つのプラズマ発生部7を備える構成を例示しているが、プラズマ発生部7の数は適宜変更してよい。プラズマ処理装置1はプラズマ発生部7の数に応じた本数のマイクロ波供給ケーブル5を備えている。マイクロ波供給ケーブル5は、各々のプラズマ発生部7に接続されている。プラズマ発生部7の構成については後述する。プラズマ発生部7は、本発明におけるプラズマ発生装置に相当する。
【0043】
プラズマ処理部9は、ワークWに対してプラズマ処理を行う。すなわちプラズマ処理部9は、プラズマ発生部7によって発生したプラズマを用いて、ワークWに対する所定の処理を行う。ワークWの例として、半導体製品、液晶パネル、太陽電池アレイなどが挙げられる。
【0044】
プラズマ処理部9は、チャンバ11と、ワーク保持部13とを備えている。チャンバ11は接続プレート15を備えており、
図1に示すように、電磁バルブ16を備えた排気用流路17を介して排気装置19と連通接続されている。排気装置19が作動することにより、チャンバ11の内部空間Lは脱気されて減圧する。
【0045】
またチャンバ11は、電磁バルブ20を備えた供給用流路21を介して気体供給装置23と連通接続されている。気体供給装置23は、チャンバ11の内部空間Lへ所定のガスGを供給する。気体供給装置23が供給するガスGの例として、アルゴンガスを例とする稀ガス、または酸素などが挙げられる。
【0046】
またチャンバ11は開閉扉25を備えている。開閉扉25は一例としてチャンバ11の側面に形成されており、開閉可能に構成されている。開閉扉25が開状態となることにより、図示しないワーク搬送機構によってワークWをチャンバ11へ搬入または搬出することが可能となる。電磁バルブ16および電磁バルブ20の開閉、排気装置19および気体供給装置23の動作、並びに開閉扉25の開閉は、コンピュータなどを備える図示しない制御機構によって統括制御される。当該制御機構は、プラズマ処理装置1におけるその他の各種動作についても統括制御を行う。
【0047】
ワーク保持部13は、チャンバ11の内部空間Lに収納されており、ワークWを保持する。ワーク保持部13の例として、チャックテーブルなどが挙げられる。開閉扉25を介してチャンバ11の内部へ搬入されたワークWは、ワーク保持部13によって安定保持される。
【0048】
接続プレート15は、チャンバ11の外壁部(筐体)のうち一方の面を構成している。本実施例ではチャンバ11の上面に接続プレート15が配置されている。チャンバ11の筐体と同様に、接続プレート15は金属を例とする導電性材料で構成されている。プラズマ発生部7は、接続プレート15を介してプラズマ処理部9と接続されている。すなわち
図4に示すように、接続プレート15にはプラズマ発生部7の先端部の形状に応じた貫通孔27が形成されており、各々のプラズマ発生部7の先端部が貫通孔27に嵌合可能に構成されている。各々のプラズマ発生部7の先端部が貫通孔27に嵌合することで、
図1に示すように接続プレート15の表面側の空間と接続プレート15の裏面側の空間(チャンバ11の内部空間L)とは遮断され、内部空間Lは密閉状態となる。
【0049】
ここでプラズマ発生部7の構成について説明する。
図2はプラズマ発生部7の縦断面図である。プラズマ発生部7は
図2に示すように、外部導体29と、第1誘電体31と、第2誘電体33と、マイクロ波供給口35とを備えている。外部導体29は、金属を例とする導電性材料で構成されている筒状部材である。外部導体29はマイクロ波の伝搬モードに応じた形状の導波管であり、先端側に開口部34が形成されている。外部導体29の基端側(
図2の右側)は、隔壁36によって閉鎖されている。実施例1では外部導体29として、TMモードのマイクロ波を伝搬する円筒形導波管を例として説明する。
【0050】
第1誘電体31は、外部導体29の主軸方向(
図2などではx方向)に延びる棒状部材であり、外部導体29の内部に配設される。第1誘電体31はマイクロ波を伝搬する誘電性材料で構成されており、構成材料の一例としては酸化アルミニウムまたは石英などが挙げられる。第1誘電体31は基端側においてマイクロ波供給ケーブル5と接続されており、マイクロ波供給ケーブル5が供給するマイクロ波を基端側から先端側へと伝搬する。
【0051】
また実施例1において第1誘電体31は、外部導体29の内部を充填するように径の大きさおよび形状が定められる。本実施例において、第1誘電体31は酸化アルミニウム製の円柱状部材であり、第1誘電体の外径は外部導体29の内径と等しくなるように構成されているものとする。第1誘電体31の基端側には凹部37が形成されている。実施例1において凹部37はx方向に延在しており、マイクロ波供給ケーブル5をx方向へ挿入可能に構成されている。
【0052】
第2誘電体33は、外部導体29の先端側において開口部34を閉塞するように配設されており、第1誘電体31と接続されている。第2誘電体33は第1誘電体31と同様にマイクロ波を伝搬する誘電性材料で構成されており、構成材料の一例としては酸化アルミニウムまたは石英などが挙げられる。本実施例において、第2誘電体33は酸化アルミニウムで構成されているものとする。
【0053】
第1誘電体31と第2誘電体33は、
図2および
図4に示すように、接続部39を介して接続されている。接続部39は、第1誘電体31の先端部に形成されている第1接続部39Aと、第2誘電体33の基端部に形成されている第2接続部39Bによって構成されている。接続部39が第1誘電体31と第2誘電体33とを接続させる構成は、螺合、嵌合、または係合する構成などを適宜用いてよい。
【0054】
実施例1において、接続部39は螺合によって第1誘電体31と第2誘電体33とを接続させるものとする。具体的な構成の例として、第1接続部39Aは雌ネジが形成されている凹部であり第2接続部39Bは雄ネジが形成されている凸部である。そして
図5に示すように、第1接続部39Aと第2接続部39Bとが互いに螺合することによって、第1誘電体31と第2誘電体33とは安定に接続される。
【0055】
第2誘電体33の先端側における表面を外表面41とする。
図1および
図4に示すように、プラズマ発生部7の先端部すなわち第2誘電体33が貫通孔27に嵌合することにより、第2誘電体33の外表面41は接続プレート15を通り抜けてチャンバ11の内部空間Lに延出する。すなわち第2誘電体33を介して第1誘電体31とチャンバ11の内部空間Lとが接続される。
【0056】
第1誘電体31と第2誘電体33とが接続されることにより、第1誘電体31の基端部から先端部へと伝搬されるマイクロ波エネルギーはさらに第2誘電体33の基端部に伝搬される。そして当該マイクロ波エネルギーは第2誘電体33の先端部である外表面41へと伝搬され、外表面41の周囲においてプラズマを発生させることができる。なお本実施例において、第2誘電体33の外表面41(先端側の表面)は、外部導体29の基端側から先端側に向かって先細りとなるテーパ状となっている。
【0057】
実施例1では接続部39を介して第1誘電体31と第2誘電体33とが接続されることにより、全体として1つの誘電性部材43を形成させる。第1誘電体31と第2誘電体33からなる誘電性部材43は、基端側から先端側へとマイクロ波を伝搬させる1つの誘電性部材として作用する。そして第1誘電体31と第2誘電体33とを接続させる構成とすることで、外表面41の形状が異なる複数種類の第2誘電体33を第1誘電体31に対して適宜換装させることで、誘電性部材43の先端部の形状を適宜変更することができる。
【0058】
一例として、先端側に向かって先細りとなっている形状の外表面41を有する第2誘電体33を第1誘電体31から取り外し、
図9(a)に示すように、円柱形状を有する第2誘電体33Aを第1誘電体31と接続して誘電性部材43を形成させることができる。第2誘電体33Aは基端側から先端側に向かって外径が一定であり、外表面41Aの外径は外部導体29の外径とほぼ同じとなっている。第2誘電体33Aは第2誘電体33と異なりテーパ状に加工する必要がないので、プラズマ発生部7が第2誘電体33Aを備える構成である場合、プラズマ発生部7の製造コストをより低く抑えることができる。
【0059】
また他の例として
図9(b)に示すように、先端側から基端側に向かって先細りとなっている形状を有する第2誘電体33Bを第1誘電体31と接続させて誘電性部材43を形成させることもできる。第2誘電体33Bが備える外表面41Bの径は、外部導体29の径より長くなるように構成されている。すなわち外表面41Bは外表面41および外表面41Aと比べて広い面積の平面を有している。よって、第2誘電体33Bを備えるプラズマ発生部7を用いてプラズマ処理を行うことで、ワークWにおけるより広い範囲に対してプラズマ処理を行うことができる。従って、プラズマ処理装置1におけるプラズマ処理効率をより向上できる。
【0060】
図9(a)および
図9(b)に示すように、実施例1に係るプラズマ発生部7はプラズマを発生させる範囲やプラズマ処理の用途に応じて、外表面41の形状がそれぞれ異なる第2誘電体33、33A、33Bなどを適宜換装できる。そのため、プラズマ発生部7の汎用性をより高めることができる。
【0061】
外部導体29の先端部における外周面にはリング状のストッパ40が設けられている。
図1および
図4に示すように、接続プレート15に設けられている貫通孔27にプラズマ発生部7を嵌合させることによって、外部導体29の外周部に設けられているストッパ40が接続プレート15の外表面に当接する。ストッパ40が接続プレート15に当接することで、プラズマ処理部9に接続されたプラズマ発生部7の姿勢を安定に維持できる。
【0062】
マイクロ波供給口35は外部導体29の基端部に配設されており、マイクロ波供給ケーブル5を第1誘電体31へと案内させる。実施例1ではTMモードのマイクロ波を伝搬させるので、マイクロ波供給口35は導波管である外部導体29の基端側(底面)において軸方向に延出するように構成されている。すなわちマイクロ波供給口35は、外部導体29の隔壁36をx方向へ貫通するように配置されている。マイクロ波ケーブル5はマイクロ波供給口35の内部を経由して第1誘電体31の凹部37へ案内され、凹部37の延出方向(実施例1ではx方向)へ挿入されて第1誘電体31に接続される。
【0063】
実施例1ではマイクロ波供給ケーブル5と第1誘電体31との接続部において、凹部37はインピーダンスを整合させる空隙部として作用する。すなわち凹部37は、マイクロ波が入力(供給)される方向について比誘電率の変化を緩和させることで、より好適にインピーダンスを整合させる。ここで
図6および
図7を用いることで、第1誘電体31に凹部37を形成させ、凹部37を介してマイクロ波供給ケーブル5を第1誘電体31に接続させる構成の効果について説明する。
【0064】
図6の各図は第1誘電体31が凹部37を有しない比較例の構成を示しており、
図7の各図は第1誘電体31が凹部37を有する実施例1の構成を示している。なお
図6に示す比較例に係るプラズマ発生部については符号7Fを付し、実施例1に係るプラズマ発生部7と区別する。
【0065】
図6(a)は比較例に係るプラズマ発生部7Fの基端部を示す縦断面図であり、
図6(b)はマイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。
図6(a)に示すように、凹部37を有しない比較例の構成において、マイクロ波供給ケーブル5は筒状部材である第1誘電体31の底面に当接することで両者は接続される。この場合、マイクロ波供給ケーブル5の周囲に存在する媒体は一般的に空気である。そして空気の比誘電率(比誘電率ε)は1.0であるので、マイクロ波が入力される方向であるx方向について、マイクロ波供給ケーブル5が延びる領域R1では、
図6(b)に示すようにε=1.0となる。なお、マイクロ波供給ケーブル5の周囲に存在する媒体が空気と異なる物質である場合、当該媒体の比誘電率に応じて領域R1における比誘電率は変化する。
【0066】
一方で、第1誘電体31を構成する酸化アルミニウムの比誘電率は9.8である。そのためx方向において第1誘電体31が配置される領域R2では、ε=9.8となる。その結果、
図6(b)に示すように、マイクロ波供給ケーブル5と第1誘電体31との接続部(領域R1と領域R2との境界部分)において、比誘電率が1.0から9.8へと急激に変化する。このようにマイクロ波が入力される方向について比誘電率が急激に変化すると、プラズマ発生部7Fにおいて入力側と出力側とのインピーダンスを整合させることが比較的困難となる。
【0067】
このような凹部37を有しない構成に対し、凹部37を有するプラズマ発生部7では、マイクロ波が入力される方向であるx方向について3つの領域に分割される。
図7(a)は実施例1に係るプラズマ発生部7の基端部を示す縦断面図であり、
図7(b)はマイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。凹部37を備えるプラズマ発生部7は、マイクロ波供給ケーブル5が延びる領域R1と、第1誘電体31のうち凹部37が延在していない領域R2と、第1誘電体31のうち凹部37が延在している領域R3とに分けられる。凹部37が配置されている領域R3は、領域R1と領域R2との間に存在する領域となる。
【0068】
図7において、領域R1ではマイクロ波供給ケーブル5の周囲に存在する媒体は空気である。そのため、
図7においても
図6と同様に領域R1における比誘電率は1.0である。また領域R2において、第1誘電体31が外部導体29の内部を充填している。そのため、
図6と同様に
図7のプラズマ発生部7についても、領域R2における比誘電率は第1誘電体31を構成する材料(ここでは酸化アルミニウム)の比誘電率に相当する。すなわち領域R2における比誘電率は9.8である。
【0069】
ここで、凹部37が形成されている領域R3における比誘電率は、領域R1における比誘電率より高く、かつ領域R2における比誘電率より低い。すなわち領域R3では、外部導体29の径方向(y方向)において、凹部37を充填する媒体(空気)と、第1誘電体31を構成する材料(酸化アルミニウム)とが混在している。その結果、領域R3における比誘電率ε3は、空気の比誘電率1.0と酸化アルミニウムの比誘電率9.8との間の値となる。領域R3において凹部37が配置される部分と第1誘電体31が配置される部分との比を調整することにより、比誘電率ε3の具体的な値を任意の値に定めることができる。
【0070】
その結果、
図7(b)に示すように、マイクロ波供給ケーブル5が凹部37に挿入される部分(領域R1と領域R3との境界部分)において、比誘電率が1.0からε3へと変化する。そして凹部37に挿入されたマイクロ波供給ケーブル5と第1誘電体31との接続部(領域R3と領域R2との境界部分)において、比誘電率がε3から9.8へと変化する。1.0とε3との差、および9.8とε3との差は、いずれも9.8と1.0との差より小さい。すなわち凹部37を備える構成では、凹部37が設けられている領域R3が比誘電率の変化を緩衝する領域として作用し、マイクロ波入力方向について比誘電率は緩やかに変化する。
【0071】
このように凹部37を備える構成ではマイクロ波が入力される方向について比誘電率の変化を緩和できる。すなわち緩衝領域に相当する領域R3を設けることによって比誘電率の急激な変化を防止できるので、実施例1に係るプラズマ発生部7では入力側と出力側とのインピーダンスを整合させることがより容易となる。実施例1において、凹部37は本発明における比誘電率緩衝部に相当する。
【0072】
<動作の説明>
ここで、プラズマ処理装置1の動作について説明する。まずは図示しないワーク搬送機構を用いて開閉扉25からワークWをチャンバ11の内部へと搬入させ、ワーク保持部13に載置させる。ワーク保持部13は、吸着保持などの方法によってワークWを安定に保持する。そしてワーク保持部13を適宜移動させ、ワークWにおいてプラズマ処理を行う領域をプラズマ発生部7の外表面41へと近接させる。
【0073】
ワークWを外表面41に近接させることによってワークWの配置が完了すると、チャンバ11の内部空間Lを調整する。すなわち、制御機構は開閉扉25を閉じてチャンバ11を密閉状態にした後、電磁バルブ16を開いて排気装置19を作動させる。排気装置19が作動することにより、チャンバ11の内部空間Lに滞留していた空気が排気される。
【0074】
チャンバ11の内部空間Lを排気させた後、制御機構は電磁バルブ16を閉じるとともに電磁バルブ20を開いて気体供給装置23を作動させる。気体供給装置23が作動することにより、チャンバ11の内部空間Lへ励起用のガスGが供給される。
【0075】
チャンバ11の内部空間LへガスGが供給されると、マイクロ波発生部5を作動させてマイクロ波を発振させる。発振されたマイクロ波はマイクロ波供給ケーブル5によってプラズマ発生部7へと供給される。供給されたマイクロ波は、接続機構35において第1誘電体31へ伝搬される。すなわち凹部37に挿入されているマイクロ波供給ケーブル5から第1誘電体31の基端部へとマイクロ波が伝搬される。
【0076】
このとき、第1誘電体31に形成された凹部37にマイクロ波供給ケーブル5を挿入させることにより、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化が緩和されている。そのため、マイクロ波のインピーダンスはより好適に調整されるので、不要な反射電力が発生することをより確実に防止できる。
【0077】
第1誘電体31の基端部に供給されたマイクロ波は第1誘電体31の内部を伝搬する。すなわちマイクロ波は第1誘電体31が延びるx方向へ伝搬し、第1誘電体31の先端部から第2誘電体33の基端部へと伝搬される。第2誘電体33の基端部に伝搬されたマイクロ波は、第2誘電体33の外表面41へと伝搬される。第2誘電体33がマイクロ波の供給を受けると、チャンバ11の内部空間Lのうち外表面41の周囲においてガスGが励起されてプラズマが発生する。プラズマ発生部7によって発生したプラズマにより、外表面41に近接配置されていたワークWが所定の処理を受ける。ワークWに対するプラズマ処理が完了した後、制御機構は開閉扉25を開状態にしてワークWをチャンバ11から搬出させ、ワークWのプラズマ処理に関する一連の工程が終了する。
【0078】
<実施例1の構成による効果>
実施例1に係るプラズマ処理装置1では、プラズマ発生部7は全体として導波管構造を有しており、導波管である外部導体29の内部には誘電性材料で構成される第1誘電体31が配設されている。そして、第1誘電体31と第1誘電体31に接続されている第2誘電体33を用いてマイクロ波を基端部から先端部へと伝搬させる。すなわち実施例1に係るプラズマ発生部7は外部導体29の内部に導電体を有していないので、絶縁距離を長くとることができる。
【0079】
ここで従来の装置と比較しつつ、実施例1の構成による効果について説明する。従来のプラズマ発生装置100は同軸管構造を用いている。すなわちプラズマ発生装置100では
図17に示すように、外部導体に相当するアウターシールド102の内部に導電体である中央コア101が配設されている。そのため、従来のプラズマ発生装置100の絶縁距離P1はアウターシールド102から中央コア101までの距離に相当するので、当該絶縁距離P1はアウターシールド102の内径の半分より短い距離となる。その結果、アウターシールド102の径に比べて絶縁距離P1が短くなるので、プラズマ発生装置100において絶縁破壊が発生しやすくなる。絶縁破壊を回避すべく絶縁距離P1を長くとるにはアウターシールド102の径を長くする必要があるので、プラズマ発生装置100の大型化を回避することは困難となる。
【0080】
また従来の装置において絶縁破壊を回避する他の方法としては、供給するマイクロ波の出力を低減させる方法が挙げられる。しかしながらマイクロ波の出力を低減させると、プラズマ発生装置100におけるプラズマの出力が低下するので、プラズマ発生装置100を用いたプラズマ処理の効率が低下するという問題が発生する。
【0081】
その一方、実施例1に係るプラズマ処理装置1では誘電性材料で構成される第1誘電体31および第2誘電体33を用いてマイクロ波を先端部へと伝搬させる。すなわち
図2などに示すように、外部導体29の内部に導電体を配設する必要がないので、プラズマ発生部7の絶縁距離P2は外部導体29の内径に相当する。つまり従来の装置と比べて、実施例1に係るプラズマ発生部7は外部導体29の内径が同じであっても絶縁距離を2倍以上の長さに確保できる。そのため絶縁破壊を回避しつつ、外部導体29のコンパクト化を実現できる。
【0082】
またプラズマ発生部7では高出力のマイクロ波をプラズマ発生部7へ供給しつつ絶縁破壊を回避できるので、プラズマ発生部7におけるプラズマの出力を向上できる。よって、絶縁破壊を防止しつつプラズマ処理装置1におけるプラズマ処理効率を向上できる。
【0083】
特に、主要な伝搬モードであるTE11モードまたは第1高次モードであるTM01モードだけでマイクロ波を伝搬させる場合、誘電体材料で構成される第1誘電体31を外部導体29の内部に配設して、外部導体29を径方向に小さくする必要がある。よって、実施例1に係る構造を備えることにより、絶縁破壊を防止しつつ、マイクロ波を主要な伝搬モードまたは第1高次モードだけで伝搬させることが可能となる。
【0084】
また、実施例1に係るプラズマ発生部7では、マイクロ波を基端側から先端側へ伝搬させる第1誘電体31は外部導体29の内部を充填する構成となっている。このような構成を有することにより、プラズマ発生部7における熱の蓄積を防止できる。以下、
図8を用いて従来例と比較しつつ、実施例1の構成において熱の蓄積を防止する効果について説明する。
【0085】
従来のプラズマ発生装置100では
図17に示すように、中央コア101の側面とアウターシールド102との間には空気を例とする伝搬媒体103が配置されている。そのため、中央コア101は基端部のみにおいて外部導体に相当するアウターシールド102と接する構成となる。よって、従来のプラズマ発生装置100では中央コア101とアウターシールド102との接触面積が非常に狭くなる。
【0086】
このような従来のプラズマ発生装置100では、中央コア101において発生した熱を外部へと逃がすことが困難である。中央コア101の大部分と接している伝搬媒体103は一般的に空気であり、熱伝導性が低い。すなわち
図8(a)に示すように、マイクロ波を伝搬する中央コア101において発生した熱Hは、アウターシールド102に伝導されてプラズマ発生装置100の外部へと放出される。しかしながら従来のプラズマ発生装置100では中央コア101とアウターシールド102との接触面積が狭いので、熱Hの排出効率は非常に低くなる。その結果、中央コア101において発生した熱がアウターシールド102の内部で蓄積して容易に高熱化する。よって、プラズマ発生装置100へ供給するマイクロ波の出力が低い場合であっても、高熱化に起因する問題が容易に発生することとなる。
【0087】
その一方、実施例1に係るプラズマ発生部7では外部導体29の内部を第1誘電体31が充填している。すなわちマイクロ波を伝搬させる第1誘電体31は外周面全体にわたって外部導体29と接しているので、第1誘電体31と外部導体29との接触面積が非常に広くなる。よって
図8(b)に示すように、第1誘電体31において発生する熱Hは広範囲にわたって外部導体29へと伝導されてプラズマ発生部7の外部へと放出される。その結果、プラズマ発生部7の排熱効率を大きく向上できるので、外部導体29の内部において熱が蓄積することをより確実に防止できる。従って、高出力のマイクロ波をプラズマ発生部7へ供給しつつプラズマ発生部7の高熱化を回避できるので、プラズマ発生部7におけるプラズマの出力を向上できる。
【0088】
さらに、実施例1に係るプラズマ発生部7では第1誘電体31の熱Hは外部導体29の全体にわたって伝導されるので、外部導体29の外部に冷却部材を配置させることで第1誘電体31を迅速に冷却できる。一例として、外部導体29を水冷することで第1誘電体31を迅速に冷却できる。よって、プラズマ発生部7における排熱効率をより向上させることができるとともに、容易にプラズマ発生部7の排熱を行うことができる。
【0089】
さらに実施例1に係るプラズマ発生部7では外表面41の形状を適宜変更できるので、プラズマ処理の汎用性を向上できる。同軸管構造を有している従来のプラズマ発生装置100において、誘電体107の外表面109はインピーダンスの整合性の観点から、基端側から先端側に向かって先細りとなるテーパ状である必要がある。すなわち従来のプラズマ発生装置100では外表面109の形状が限定されているのでプラズマ処理の汎用性が低い。また誘電体107をテーパ状にすることで、外表面109の最先端部の面積が狭くなる。その結果、ワークWに対して一度にプラズマ処理を実行できる面積が狭くなるのでプラズマ処理の効率が低下する。
【0090】
一方、実施例1に係るプラズマ発生部7は全体として導波管構造を有しているので、誘電性部材43の先端部がテーパ状以外の形状であってもインピーダンスを整合させることができる。よって、誘電性部材43の先端部(第2誘電体33の先端部)について、円柱状または先端側に向かって先太りとなる形状を例とする、様々な形状とすることができる。すなわち実施例1に係るプラズマ発生部7ではインピーダンスの整合をとりつつ、プラズマ処理を行う範囲や用途に応じて誘電性部材43の先端部を適宜変更させることができるので、プラズマ発生部7の汎用性を向上できる。
【0091】
なお従来のプラズマ発生装置100では、アウターシールド102の先端側のみに誘電体107が配置されている。そのため、インピーダンスをより好適に整合させるには誘電体107の先端側における外表面109のみならず基端側における外表面110についてもテーパ状に加工する必要がある。一方、実施例1に係るプラズマ発生部7では外部導体29の内部を第1誘電体31で充填しているので、外部導体29の内部において第1誘電体31をテーパ状に加工することなくインピーダンスを好適に整合させることができる。すなわちプラズマ発生部7では誘電体部材43の両面をテーパ状に加工する必要がないので、インピーダンス整合効率を確保しつつ、プラズマ発生部7の製造コストを低減させることができる。
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1で説明したプラズマ処理装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。実施例2に係るプラズマ発生部7Aは、マイクロ波供給ケーブル5が接続される部分の構成において、実施例1に係るプラズマ発生部7と相違する。
接続部材45は、第1誘電体31よりも比誘電率が低い誘電性材料で構成される。一例として第1誘電体31が酸化アルミニウム(ε=9.8)で構成されている場合、接続部材45の構成材料として石英(ε=3.78)が挙げられる。また接続部材45は、マイクロ波供給ケーブル5の周囲に存在する媒体よりも比誘電率が高い誘電性材料で構成される。実施例2では実施例1と同様、マイクロ波供給ケーブル5の媒体は空気(ε=1.0)であるので、実施例2における第1誘電体31の構成材料として石英は好ましい誘電性材料の一例となる。
このように接続部材45を備える実施例2の構成では凹部37を備える実施例1の構成と同様に、マイクロ波が入力される方向について比誘電率の変化を緩和できる。すなわち緩衝領域に相当する領域R3を設けることによって比誘電率の急激な変化を防止できるので、実施例2に係るプラズマ発生部7Aでは入力側と出力側とのインピーダンスを整合させることがより容易となる。実施例2において、接続部材45は本発明における比誘電率緩衝部に相当する。実施例2に係るプラズマ発生部7Aを備えるプラズマ処理装置1の動作は実施例1と共通するので、動作に関する説明は省略する。