(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036059
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電動消防ポンプ装置、及び消防車
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140769
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】横井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤川 基
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA04
(57)【要約】
【課題】製造効率やメンテナンス性に優れてコンパクト化も可能であり、さらに電気自動車のみならずエンジン駆動の車両にも搭載可能な電動消防ポンプ装置、及び当該電動消防ポンプ装置を備えた消防車を提供すること。
【解決手段】電動消防ポンプ装置10は、台座11と、台座11の上方を囲うケージ12と、バッテリを電源とするモータ15と、モータ15により駆動され圧力水を吐出する水ポンプ13と、モータ15の動力を水ポンプ13に伝達する動力伝達装置16と、水ポンプ13の一次側に接続した給水管26と、水ポンプ13の二次側に接続した吐水管29と、モータ15の制御又は冷却に用いる機器を備え、モータ15、水ポンプ13、動力伝達装置16、給水管26及び吐水管29が配設された台座11に、モータ15の制御又は冷却に用いる機器が配設されたケージ12が取り付けられた状態で車両へ架装できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、
前記台座の上方を囲うケージと、
バッテリを電源とするモータと、
前記モータにより駆動され圧力水を吐出する水ポンプと、
前記モータの動力を前記水ポンプに伝達する動力伝達装置と、
前記水ポンプの一次側に接続した給水管と、
前記水ポンプの二次側に接続した吐水管と、
前記モータの制御又は冷却に用いる機器を備え、
前記モータ、前記水ポンプ、前記動力伝達装置、前記給水管及び前記吐水管が配設された前記台座に、前記モータの制御又は冷却に用いる前記機器が配設された前記ケージが取り付けられた状態で車両へ架装できることを特徴とする電動消防ポンプ装置。
【請求項2】
前記ケージは、前記モータの制御又は冷却に用いる前記機器が配設された状態で前記台座に対して取付け及び取外しができることを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項3】
前記モータと前記水ポンプが並列に配置され、
前記動力伝達装置は、前記モータの軸が接続されるモータ歯車と、前記水ポンプの軸が接続されるポンプ歯車と、前記モータ歯車と前記ポンプ歯車とに噛み合わされた中間歯車と、前記モータ歯車、前記ポンプ歯車及び前記中間歯車が設けられたギヤケースを有することを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項4】
前記モータの前記軸と前記モータ歯車との接続は、前記モータの前記軸に形成された外歯と、前記モータ歯車に形成された内歯とが噛み合うスプライン接続であることを特徴とする請求項3に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項5】
前記モータの制御に用いる前記機器として前記モータの回転数を変化させるインバータを備え、前記モータの冷却に用いる前記機器として冷媒が循環する循環配管を有する冷却装置を備え、
前記循環配管は、前記モータに設けられている冷却路、前記インバータに設けられている冷却路、及び前記ギヤケースに設けられている冷却路に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項6】
前記冷却装置は、前記冷媒を冷却するラジエタと、前記ラジエタに送風するファンを有し、
前記ラジエタ及び前記ファンは、前記ケージの上部において、水平に対して斜めに設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動消防ポンプ装置を備えたことを特徴とする消防車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動消防ポンプ装置、及び当該電動消防ポンプ装置を備えた消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の消防ポンプ車は、エンジン駆動の車両に搭載した水ポンプ(消防ポンプ)をPTOにより動作させるものが主流である。例えば特許文献1には、過給機を設けたエンジンと、エンジンを冷却するラジエ-タと、過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラーと、エンジンの後方に配置されるトランスミッションとを有し、トランスミッションと荷台側の後輪車軸との間にスプリットシャフトPTOを取り付け、スプリットシャフトPTOに接続した水ポンプドライブシャフトによって水ポンプを駆動する消防ポンプ車が開示されている。
一方、特許文献2には、電池装置と、電池装置により駆動される電動モータと、電動モータに接続され電動モータの駆動により作動する車輌走行部と、電動モータに接続され電動モータの駆動により作動する消防用機器とを備えた電気駆動式の消防車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-171902号公報
【特許文献2】特開2013-5932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のように水ポンプを電動モータで作動させることで排気ガスや騒音を低減することができる。しかしながら特許文献2は、電動化における製造効率やメンテナンス性、及び小型化を考慮したものでは無く、また、PTOを介して走行駆動用の電動モータを水ポンプに接続するものであるため、走行駆動用の電動モータを有しない車両には適用できない。
そこで本発明は、製造効率やメンテナンス性に優れてコンパクト化も可能であり、さらに電気自動車のみならずエンジン駆動の車両にも搭載可能な電動消防ポンプ装置、及び当該電動消防ポンプ装置を備えた消防車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の電動消防ポンプ装置10は、台座11と、台座11の上方を囲うケージ12と、バッテリを電源とするモータ15と、モータ15により駆動され圧力水を吐出する水ポンプ13と、モータ15の動力を水ポンプ13に伝達する動力伝達装置16と、水ポンプ13の一次側に接続した給水管26と、水ポンプ13の二次側に接続した吐水管29と、モータ15の制御又は冷却に用いる機器を備え、モータ15、水ポンプ13、動力伝達装置16、給水管26及び吐水管29が配設された台座11に、モータ15の制御又は冷却に用いる機器が配設されたケージ12が取り付けられた状態で車両へ架装できることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置10において、ケージ12は、モータ15の制御又は冷却に用いる機器が配設された状態で台座11に対して取付け及び取外しができることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置10において、モータ15と水ポンプ13が並列に配置され、動力伝達装置16は、モータ15の軸が接続されるモータ歯車16Bと、水ポンプ13の軸が接続されるポンプ歯車16Cと、モータ歯車16Bとポンプ歯車16Cとに噛み合わされた中間歯車16Dと、モータ歯車16B、ポンプ歯車16C及び中間歯車16Dが設けられたギヤケース16Aを有することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の電動消防ポンプ装置10において、モータ15の軸とモータ歯車16Bとの接続は、モータ15の軸に形成された外歯と、モータ歯車16Bに形成された内歯とが噛み合うスプライン接続であることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3に記載の電動消防ポンプ装置10において、モータ15の制御に用いる機器としてモータ15の回転数を変化させるインバータ17を備え、モータ15の冷却に用いる機器として冷媒が循環する循環配管24Aを有する冷却装置24を備え、循環配管24Aは、モータ15に設けられている冷却路、インバータ17に設けられている冷却路、及びギヤケース16Aに設けられている冷却路に接続されていることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の電動消防ポンプ装置10において、冷却装置24は、冷媒を冷却するラジエタ24Cと、ラジエタ24Cに送風するファン24Dを有し、ラジエタ24C及びファン24Dは、ケージ12の上部において、水平に対して斜めに設けられていることを特徴とする。
請求項7記載の本発明の消防車は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動消防ポンプ装置10を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造効率やメンテナンス性に優れてコンパクト化も可能であり、さらに電気自動車のみならずエンジン駆動の車両にも搭載可能な電動消防ポンプ装置、及び当該電動消防ポンプ装置を備えた消防車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例による電動消防ポンプ装置がシャシフレームに搭載された状態を示す斜視図
【
図3】同電動消防ポンプ装置の台座に機器及び配管を配設した状態を示す斜視図
【
図5】同電動消防ポンプ装置のケージに機器を配設した状態を示す斜視図
【
図6】同電動消防ポンプ装置の動力伝達装置の一部を示す図
【
図7】同電動消防ポンプ装置を搭載した消防車のイメージ図
【
図8】同バッテリ装置と電動消防ポンプ装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置は、台座と、台座の上方を囲うケージと、バッテリを電源とするモータと、モータにより駆動され圧力水を吐出する水ポンプと、モータの動力を水ポンプに伝達する動力伝達装置と、水ポンプの一次側に接続した給水管と、水ポンプの二次側に接続した吐水管と、モータの制御又は冷却に用いる機器を備え、モータ、水ポンプ、動力伝達装置、給水管及び吐水管が配設された台座に、モータの制御又は冷却に用いる機器が配設されたケージが取り付けられた状態で車両へ架装できるものである。
本実施の形態によれば、電動消防ポンプ装置はユニット化されているため、車両への取り付け工数が少なくて済む。また、モータや水ポンプ等は台座に配設し、モータの制御に用いる電装品などは台座の上方を囲うケージに配設するため、電動消防ポンプ装置の製造効率が向上すると共に、メンテナンス性を考慮して機器や配管等の間に適度なスペースを持たせつつ電動消防ポンプ装置全体のコンパクト化を図ることができる。また、電動消防ポンプ装置にはモータが含まれ、水ポンプの駆動に車両の走行用モータを利用する必要がないため、走行用モータを備えない車両にも適用することができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、ケージは、モータの制御又は冷却に用いる機器が配設された状態で台座に対して取付け及び取外しができるものである。
本実施の形態によれば、電動消防ポンプ装置の組立時やメンテナンス時等における作業効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、モータと水ポンプが並列に配置され、動力伝達装置は、モータの軸が接続されるモータ歯車と、水ポンプの軸が接続されるポンプ歯車と、モータ歯車とポンプ歯車とに噛み合わされた中間歯車と、モータ歯車、ポンプ歯車及び中間歯車が設けられたギヤケースを有するものである。
本実施の形態によれば、モータと水ポンプを直列に配置する場合よりも、モータの長さ方向における装置寸法を短くできる。また、中間歯車を介してモータ歯車とポンプ歯車を接続することで、モータ歯車とポンプ歯車とを直接噛合わせた場合よりも両歯車の径を小さくして回転に対する負荷を軽減できる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、モータの軸とモータ歯車との接続は、モータの軸に形成された外歯と、モータ歯車に形成された内歯とが噛み合うスプライン接続としたものである。
本実施の形態によれば、カップリングを用いて接続する場合よりも芯出し作業が容易となり、また、モータとギヤケースとの距離を小さくして電動消防ポンプ装置全体のコンパクト化に寄与することができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第3の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、モータの制御に用いる機器としてモータの回転数を変化させるインバータを備え、モータの冷却に用いる機器として冷媒が循環する循環配管を有する冷却装置を備え、循環配管は、モータに設けられている冷却路、インバータに設けられている冷却路、及びギヤケースに設けられている冷却路に接続されているものである。
本実施の形態によれば、モータとインバータの冷却に用いる冷媒をギヤケースの冷却にも用いることで、ギヤケースの冷却装置を別途設ける場合よりも構成を簡素化し、電動消防ポンプ装置全体のコンパクト化に寄与することができる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、冷却装置は、冷媒を冷却するラジエタと、ラジエタに送風するファンを有し、ラジエタ及びファンは、ケージの上部において、水平に対して斜めに設けられているものである。
本実施の形態によれば、ケージの上部においてラジエタ及びファンを斜めに設けることで、熱を斜め上方に逃がしやすくなり、他の機器や配管等とのクリアランスを確保しやすくなり、また水平方向の所要設置スペースを小さくできる。
【0014】
本発明の第7の実施の形態による消防車は、第1から第6のいずれか一つの実施の形態による電動消防ポンプ装置を備えたものである。
本実施の形態によれば、コンパクトかつメンテナンス性に優れる電動消防ポンプ装置を備えた、電動又はエンジン駆動方式の消防車を提供できる。
【実施例0015】
以下、本発明の一実施例による電動消防ポンプ装置及び消防車について説明する。
図1は本実施例による電動消防ポンプ装置がシャシフレームに搭載された状態を示す斜視図である。
図2は電動消防ポンプ装置の斜視図であり、
図2(a)(b)はパネルの前方側から見た図、
図2(c)、(d)はパネルの後方側から見た図である。
電動消防ポンプ装置10は、台座11と、台座11の上方を囲うケージ12と、消火に用いる圧力水を吐出する水ポンプ(消防ポンプ)13と、水ポンプ13のケーシングや給水管26を呼び水で満たすのに用いる真空ポンプ14と、バッテリを電源とし水ポンプ13及び真空ポンプ14を駆動するPMモータ等のモータ15と、モータ15の動力を水ポンプ13に伝達する動力伝達装置16と、モータ15の回転数を変化させるインバータ17と、バッテリと電線で接続されるジャンクションボックス(JB:Junction Box)18と、電動消防ポンプ装置10を制御する制御装置19と、放水圧やバッテリ残量等といった各種情報が表示されるモニタを有する表示装置20と、圧力計21と、連成計22と、人により操作される制御スイッチや制御ダイヤル等を備える操作盤23と、モータ15、動力伝達装置16及びインバータ17を冷却する水冷式の冷却装置24と、一端が水ポンプ13の一次側に接続され他端に給水口25が設けられた給水管26と、一端が水ポンプ13の二次側に接続され分岐した他端それぞれに吐水口27及び吐水弁28が設けられた吐水管29と、パネル30を備え、車両のシャシフレーム3に搭載される。
ジャンクションボックス18は、高電圧/低電圧電源接続口と制御線接続口を有し、インバータディスチャージ回路を内蔵している。
冷却装置24は、LLCを冷媒(冷却水)として用いる水冷式であり、冷媒が循環する循環配管24Aと、冷媒の循環に用いる電動ウォータポンプ24Bと、冷媒を冷却するラジエタ(冷却器)24Cと、ラジエタ24Cに送風するファン(送風機)24Dを有する。
冷却装置24の循環配管24Aは、モータ15、インバータ17及び動力伝達装置16にそれぞれ設けられている冷却路に接続されている。
【0016】
図3は電動消防ポンプ装置の台座に機器及び配管を配設した状態を示す斜視図である。なお、冷却装置の循環配管については記載を省略している。
台座11は、車両のシャシフレーム3の上に取り付けるフレーム(サブフレーム)であり、複数の板材が溶接等で組み合わされて成る。
台座11には、水ポンプ13、真空ポンプ14、モータ15、動力伝達装置16、給水管26及び吐水管29等が配設される。
水ポンプ13とモータ15は並列に配置され、真空ポンプ14は水ポンプ13の上方に配置されている。また、モータ15の上方にはジャンクションボックス18が配置されている。水ポンプ13及び真空ポンプ14は、動力伝達装置16を介してモータ15により駆動される。動力伝達装置16は、歯車が複数配置されたギヤケース16Aを有し、ギヤケース16Aは台座11の一辺に沿って横向きに配置されている。給水口25や吐水口27は、ギヤケース16Aが配置されている側とは反対側に設けられている。
モータ15と水ポンプ13を並列に配置することで、モータ15と水ポンプ13を直列に配置する場合よりも、モータ15の長さ方向における装置寸法を短くできる。
また、各吐水弁28にはチャッキ弁を用いており、これにより、吐水管29に一つのメインチャッキ弁を設ける場合よりも電動消防ポンプ装置10の高さ寸法を抑制できる。また、配管構造をシンプルにして容積を小さくし、配管内エア抜き用ラインは1本としており、これにより、止水弁が1台で済むなど、配管内エア抜き用ラインが2本以上の場合と比べて電動消防ポンプ装置10をコンパクトにできると共に、部品点数を削減してエア漏れのリスクを低減できる。
【0017】
図4は電動消防ポンプ装置のケージを示す斜視図、
図5は電動消防ポンプ装置のケージに機器を配設した状態を示す斜視図である。なお、冷却装置の循環配管については記載を省略している。
ケージ12は、パイプや金具などで骨組状に構成され、4本の脚12Aと、各脚12Aの上部を繋ぐように連接された梁12Bを有し、脚12Aの下端には台座11への固定に用いる固定プレート12Cが設けられている。
ケージ12には、インバータ17、制御装置19及び冷却装置24など、モータ15の制御又は冷却に用いる機器が、台座11とケージ12を組み合わせたときに台座11に配設されている機器や配管等に干渉しない位置に取り付けられる。また、ケージ12の一面には取付枠31を介してパネル30が取り付けられる。
ケージ12の梁12Bは、上面視で略矩形であり、パネル30が配置される側から略中央までは略水平で、そこから先は下方へ傾斜している。インバータ17と制御装置19は、梁12Bのうちの略水平部分に配設され、ラジエタ24Cとファン24Dは傾斜部分に配設される。これにより、
図1に示すように、インバータ17やラジエタ24C等は水ポンプ13や吐水管29の上方の空いたスペースに配置されることとなるため、電動消防ポンプ装置10における無駄なスペースを低減してコンパクト化に寄与することができる。
また、ラジエタ24C及びファン24Dをケージ12の上部において水平に対して斜めに設けることで、熱を斜め上方に逃がしやすくなり、他の機器や配管等とのクリアランスを確保しやすくなり、また水平方向の所要設置スペースを小さくできる。
また、電装品は基本的にケージ12に取り付けることにより、ラジエタ24C及びファン24Dを制御装置19や操作盤23から離れた位置に設けることや、制御装置19や操作盤23に排熱風が直接当たらないようにファン24Dの向きを設定することが容易となる。
パネル30には、給水管26や吐水管29等が通される開口や、表示装置20や圧力計21等が位置する開口が設けられており、制御装置19、表示装置20、圧力計21及び連成計22は、パネル30又は取付枠31に直接又は間接的に固定される。
【0018】
図2に示すように、表示装置20、圧力計21及び連成計22は、操作盤23よりも上方に配置され、表示装置20、圧力計21及び連成計22は、車両に搭載したときに地上からの高さが概ね160cm~180cm程度、操作盤23及び吐水弁28は車両に搭載したときに地上からの高さが概ね100cm~120cm程度となる位置に設けられる。これにより、立位姿勢の消防隊員の目線高さ付近に表示装置20等が位置し、腰の高さ付近に操作盤23等が位置するため、表示装置20等に対する視認性や、操作盤23等に対する操作性が向上する。また、操作盤23は、操作スイッチの数を極力減らすことで、シンプルかつ分かりやすい配置としている。
【0019】
このように電動消防ポンプ装置10は、水ポンプ13やモータ15、配管等が設けられた台座11にモータ15等の制御又は冷却に用いる機器が複数設けられたケージ12を取り付けた状態としてユニット化されている。これにより、電動消火ポンプ装置10を搭載する車両まで一体的に運搬し、そのままシャシフレーム3に載せて固定できるため、車両への取り付け工数が少なくて済む。
また、モータ15や水ポンプ13等は台座11に配設し、モータ15等の制御に用いる電装品などは台座11の上方を囲うケージ12に配設するため、電動消防ポンプ装置10の製造効率が向上すると共に、メンテナンス性を考慮して機器や配管等の間に適度なスペースを持たせつつ電動消防ポンプ装置10のコンパクト化を図ることができる。
また、電動消防ポンプ装置10にはモータ15が含まれ、水ポンプ13の駆動に車両の走行用モータを利用する必要がないため、走行用モータを備えない車両にも適用することができ、さらに、モータ15の制御方法の対象を電動消防ポンプ装置10に特化して定めることができる。
また、モータ15は車両の走行用の駆動源としては用いないため、水ポンプ13との接続にPTOは不要である。また、走行に与える影響を基本的に考慮しなくてよいので、モータ15の制御方法を電動消防ポンプ装置10に特化して定めることができる。
【0020】
ケージ12は、モータ15等の制御や冷却に用いるインバータ17やラジエタ24C等が配設された状態のまま台座11への取り付けと取り外しが可能である。これにより、電動消防ポンプ装置10の組立時やメンテナンス時などにおける作業効率を向上させることができる。
なお、台座11へのケージ12の脚12Aの取り付けは、例えばボルト留めなど、固定と解除が可能な方式とする。
【0021】
図6は電動消防ポンプ装置の動力伝達装置の一部を示す図であり、
図6(a)はギヤケースに配置されている歯車を示す図、
図6(b)はギヤケースと歯車の横断面図である。
動力伝達装置16のギヤケース16Aには、モータ15の軸が接続されるモータ歯車16Bと、水ポンプ13の軸が接続されるポンプ歯車16Cと、モータ歯車16Bとポンプ歯車16Cとに噛み合わされた中間歯車16Dが設けられている。ギヤケース16Aは極力薄型とすることによりコンパクト化及び軽量化を図ることが好ましい。
中間歯車16Dを介してモータ歯車16Bとポンプ歯車16Cを接続することで、モータ歯車16Bとポンプ歯車16Cとを直接噛合わせた場合よりも両歯車の径を小さくして回転に対する負荷を軽減できる。各歯車の径や歯幅は、水ポンプ13を回転させるために必要な強度を考慮して決定する。なお、中間歯車16Dは二つ以上とすることも可能である。
また、本実施例のような歯車方式ではなく、プーリー等を用いたベルト駆動方式によりモータ15から水ポンプ13への動力伝達を行うことも可能であるが、ベルト駆動方式の場合はモータ15や水ポンプ13の軸にテンションが掛かりラジアル荷重が生じることへの対策が必要になるのに対し、歯車方式の場合はそのような対策が不要である。但し、ベルト駆動方式は歯車方式に比べて静音性に優れるという利点を有する。
なお、水ポンプ13の上方に配置されている真空ポンプ14は、軸が水ポンプ13の軸とベルトで接続されており、これによりモータ15からの動力が真空ポンプ14へも伝達される。
【0022】
モータ15の軸とモータ歯車16Bとの接続は、モータ15の軸に形成された外歯と、モータ歯車16Bに形成された内歯とが噛み合うスプライン接続としている。これにより、モータ15の軸とモータ歯車16Bとの接続は芯出し作業が不要で、カップリングを用いて連結する水ポンプ13の軸とポンプ歯車16Cとの接続についてのみ芯出し作業を行えばよいため、組み立て時間を短縮できる。また、モータ15とギヤケース16Aとの距離を小さくして電動消防ポンプ装置10のコンパクト化に寄与することができる。
また、ギヤケース16Aには、モータ15のケーシングの一部を嵌め込み可能な凹部が設けられている。このインロー構造により、モータ15の軸とモータ歯車16Bとの連結を、さらに容易かつ確実に行うことができる。
また、ギヤケース16Aには、歯車の回転で生じる発熱による温度上昇を抑制するため、循環配管24Aが接続される冷却路が設けられている。モータ15とインバータ17の冷却に用いる冷媒をギヤケース16Aの冷却にも用いることで、ギヤケース16Aの冷却装置を別途設ける場合よりも構成を簡素化し、電動消防ポンプ装置10のコンパクト化に寄与することができる。
【0023】
図7は電動消防ポンプ装置を搭載した消防車のイメージ図である。なお、
図7では電動消防ポンプ装置とバッテリ装置以外の架装品等については記載を省略している。
消防車は、車両前部に位置し運転席を有するキャビン1と、キャビン1よりも後方に位置する荷台2と、走行用のディーゼルエンジン等とを備えた車両をベースとし、電動消防ポンプ装置10及びバッテリ装置40が荷台2のシャシフレーム3に架装されている。
電動消防ポンプ装置10は、パネル30が設けられている側を外方へ向けて車両に設置される。電動消防ポンプ装置10は荷台2の後端に配置されており、消火ホースが車両後方側から接続される。バッテリ装置40は電動消防ポンプ装置10よりも前方に配置されており、電力ケーブルを介して電動消防ポンプ装置10へ電力を供給する。バッテリ装置40を設けることで、エンジン駆動等の車両に対しても電動消防ポンプ装置10を架装することが可能となり、コンパクトかつメンテナンス性に優れる電動消防ポンプ装置10を備えた消防車を提供できる。
バッテリ装置40は一つのユニットとしてまとめられており、このままシャシフレーム3に載せて固定することができるため、車体への取り付け工数が少なくて済む。
【0024】
図8はバッテリ装置と電動消防ポンプ装置のブロック図である。
電動消防ポンプ装置10へ給電するバッテリ装置40は、複数の高電圧バッテリパックからなる水冷式の高電圧バッテリ41と、バッテリ制御ユニット(BCU:Battery Control Unit)42と、バッテリ温調システム(BTMS:Battery Thermal Management System)43と、高電圧を低電圧に変換するDCDCコンバータ44と、高電圧用ジャンクションボックス(HVJB:High Voltage Junction Box)45と、低電圧用ジャンクションボックス(LVJB:Low Voltage Junction Box)46と、制御用の低電圧バッテリ47と、高電圧バッテリ41の普通充電用(AC入力-DC出力)の充電器48と、高電圧バッテリ41の高速充電用(DC入力-DC出力)の高速充電口49と、バッテリ装置40を制御するバッテリ制御装置50を備える。
【0025】
なお、電力取り出しが可能なバッテリ駆動の電気自動車(EVトラック等)をベース車両とした場合は、バッテリ装置40の搭載は不要で、車両の走行に用いる車両駆動用バッテリから電動消防ポンプ装置10へ給電すればよい。この場合、電動消防ポンプ装置10のジャンクションボックス18には、車両駆動用バッテリからの電線を接続する。
これにより、コンパクトかつメンテナンス性に優れる電動消防ポンプ装置10を備えた電動消防車とすることができる。